IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DSGジャパン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-吸収体及び使い捨ておむつ 図1
  • 特許-吸収体及び使い捨ておむつ 図2
  • 特許-吸収体及び使い捨ておむつ 図3
  • 特許-吸収体及び使い捨ておむつ 図4
  • 特許-吸収体及び使い捨ておむつ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】吸収体及び使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20220502BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220502BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
A61F13/535 200
A61F13/53 300
A61F13/537 220
A61F13/535 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020186640
(22)【出願日】2020-11-09
(62)【分割の表示】P 2020002913の分割
【原出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021109091
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】519372272
【氏名又は名称】DSGジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝利
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-046021(JP,A)
【文献】特開2019-208803(JP,A)
【文献】特開2005-185563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着繊維で形成された繊維層(但し、パルプ繊維を含む繊維層を除く)の内部に吸収性ポリマーが混入されていて、液体の吸収により膨張するシート状の吸収体であって、
一方のシート面にシート長手方向に延びる溝部が形成されており、
他方のシート面を形成する第1吸収層と、
前記一方のシート面を形成し、シート幅方向に間隔をあけて前記第1吸収層に積層された複数の第2吸収層と、
を有し、
前記溝部は、隣り合う前記第2吸収層のそれぞれの対向面と前記第1吸収層の表面とで前記一方のシート面の全長に亘って形成されており、
前記第2吸収層の前記第1吸収層と反対側の部分を形成する繊維には、前記第2吸収層の前記第1吸収層側の部分を形成する繊維よりも、繊維の親水性を持続させる耐久親水性が付与されている、吸収体。
【請求項2】
前記第2吸収層のシート幅方向の端部が、前記第1吸収層のシート幅方向の端部と前記一方のシート面の全長に亘って一致している、請求項に記載の吸収体。
【請求項3】
前記第1吸収層の前記第2吸収層と反対側の部分を形成する繊維には、前記第1吸収層の前記第2吸収層側の部分を形成する繊維よりも、繊維の親水性を持続させる耐久親水性が付与されている、請求項1又は請求項2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記第2吸収層は、前記第1吸収層のシート幅方向の中央線を挟んでシート幅方向両側に一対配置されている、請求項~請求項のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の吸収体を用いた使い捨ておむつであって、
前記吸収体と、前記吸収体を包む液透過性を有するラップシートと、を含んで構成される吸収性本体と、
前記吸収性本体の肌側に配置された液透過性を有する肌側シート材と、
前記吸収性本体の肌側と反対側に配置された液不透過性且つ透湿性を有する非肌側シート材と、
を備え、
前記吸収体の溝部が形成された一方のシート面が肌側シート材側に位置し、前記吸収体の他方のシート面が非肌側シート材側に位置する、使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収体及び使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、使い捨ておむつの吸収体として、パルプ繊維等の液体吸収性繊維によって形成される繊維層に吸収性ポリマーを含有させたシート状の吸収性コアが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-99439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、両シート面が平坦状とされた吸収性コアを用いて、液体を周囲に拡散させながら吸収することで吸収性を向上させているが、市場では、更なる吸収性の向上が望まれている。
【0005】
上記事実を考慮して、本開示の一態様は、シート状の吸収体において、液体のシート長手方向の拡散を早めて液体の吸収性を向上させた吸収体、及びこの吸収体を用いた使い捨ておむつを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様の吸収体は、熱融着繊維で形成された繊維層(但し、パルプ繊維を含む繊維層を除く)の内部に吸収性ポリマーが混入されていて、液体の吸収により膨張するシート状の吸収体であって、一方のシート面にシート長手方向に延びる溝部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、シート状の吸収体において、液体のシート長手方向の拡散を早めて液体の吸収性を向上させた吸収体、及びこの吸収体を用いた使い捨ておむつを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態の吸収体を用いた使い捨ておむつの展開且つ伸長させた状態を示す平面図である。
図2図1の使い捨ておむつの中央帯状領域における前部及び股下部を展開且つ伸長させた状態を示す平面図である。
図3図2の3X-3X線に沿った断面の概略図である。
図4】本開示の一実施形態の吸収体の展開且つ伸長させた状態を示す平面図である。
図5図4の5X-5X線に沿った断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本開示の一実施形態の吸収体及び使い捨ておむつについて説明する。図1は、おむつを展開且つ伸長させた状態について示す平面図である。なお、おむつを展開且つ伸長させた状態とは、おむつの展開状態において、おむつに生じていた皺が実質的に視認されなくなる程に伸長させた状態であり、おむつを構成する各部材(例えば、後述するトップシート等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまでおむつが伸長した状態である。
【0010】
(使い捨ておむつ)
本実施形態のおむつ20は、所謂オープンタイプの使い捨ておむつであり、図1に示されるように、前部22と、股下部24と、後部26とを有している。前部22は、着用者の前部(腹側、前胴回り)に位置することになる部分である。また、後部26は、着用者の後部(背側、後胴回り)に位置することになる部分である。股下部24は、前部22と後部26との間に位置することになる部分である。
【0011】
以下では、図1に示されるように、おむつ20の各方向を定義する。前部22から後部26に向かう方向をおむつ20の長手方向(図1では矢印Lで示す方向)とし、おむつ20の長手方向と直交する方向をおむつ20の幅方向(図1では矢印Wで示す方向)とする。また、図3に示されるように、おむつ20の長手方向及び幅方向と直交する方向をおむつ20の厚み方向とし、おむつ20の厚み方向で着用者の肌の側を肌側(図3では矢印INで示す側)とし、その逆側を非肌側とする。
【0012】
おむつ20は、中央帯状領域28と、サイドフラップ30とを有する。
【0013】
中央帯状領域28は、おむつ20の幅方向の中央部に位置する帯状の領域(図1参照)であり、前部22、股下部24及び後部26に亘っている。この中央帯状領域28は、おむつ20において、着用者によって排泄された尿等の液体を吸収し保持する部位である。この中央帯状領域28は、主に、吸収性本体40、トップシート42(本開示における肌側シート材の一例)、防漏シート44(本開示における非肌側シート材の一例)及びバックシート46を有する(図3参照)。
【0014】
吸収性本体40は、尿等の排泄物を吸収することが可能な部材である。この吸収性本体40については詳細を後述する。
【0015】
トップシート42は、吸収性本体40の肌側に配置された液透過性の部材である。
【0016】
防漏シート44は、吸収性本体40の非肌側に配置された液不透過性と透湿性を有する部材である。
【0017】
バックシート46は、おむつ20の非肌側の外装を構成する部材(外装シート)であり、例えば不織布で構成されている。このバックシート46と吸収性本体40との間に防漏シート44が配置されている(図3参照)。
【0018】
中央帯状領域28の少なくとも股下部24には、吸収性本体40とバックシート46との間に、おむつ20の長手方向に伸縮可能な一対の脚回り弾性部材(図示せず)の一例としての糸ゴムが設けられている。この脚回り弾性部材は、股下部24の中央帯状領域28に伸縮性を付与している。この脚回り弾性部材によって中央帯状領域28の股下部24に対して長手方向に沿った収縮力が発現され、おむつ20のフィット感が向上し、且つ、排泄物がおむつ20の外部に漏れるのを抑制しやすくなる。
【0019】
中央帯状領域28の前部22には、ターゲットテープ50が設けられている(図1参照)。ターゲットテープ50は、前部22のバックシート46の非肌側に配置されている。このターゲットテープ50は、ファスニングテープ48の係合部と係合可能な部材であり、例えば不織布によって形成されている。
【0020】
サイドフラップ30は、中央帯状領域28の少なくとも後部26の幅方向の両側部に位置する部位である(図1参照)。これらのサイドフラップ30のおむつ20の幅方向両端側には、係合部を有するファスニングテープ48がそれぞれ設けられている。これらのファスニングテープ48は、例えば、面ファスナーであり、中央帯状領域28の前部22に設けられたターゲットテープ50に貼り付けることが可能である。
【0021】
(吸収体)
吸収性本体40は、図5に示されるように、吸収体52と、この吸収体52を包む液透過性を有するラップシート54とを含んで構成されている。なお、以下では、吸収体52の長手方向をシート長手方向(図4における矢印SLで示す方向)、吸収体52の幅方向をシート幅方向(図4における矢印SWで示す方向)、吸収体52の厚み方向をシート厚み方向(図5における矢印STで示す方向)として記載する。また、吸収体の52のシート長手方向、シート幅方向、シート厚み方向は、それぞれおむつ20の長手方向、幅方向、厚み方向に対応している。
【0022】
吸収体52は、吸収性ポリマーを含有し、液体の吸収により膨張するシート状の吸収体である。この吸収体52の一方のシート面52Aには、シート長手方向に沿って延びる溝部56が形成されている。この溝部56は、吸収体52の全長に亘って形成されている。すなわち、溝部56は、吸収体52のシート長手方向の一端から他端までシート長手方向に沿って連続して延びており、吸収体52のシート長手方向の両端にそれぞれ開口している。具体的には、吸収体52は、他方のシート面52Bを形成する第1吸収層58と、一方のシート面52Aを形成し、シート幅方向に間隔をあけて第1吸収層58に積層された複数の第2吸収層60と、を有しており、溝部56は、隣り合う第2吸収層60のそれぞれの対向面60Sと第1吸収層58の表面58Sとで形成されている。なお、本実施形態では、第2吸収層60が第1吸収層58のシート幅方向の中央線CLを挟んでシート幅方向両側に一対配置されている。このため、溝部56は、第1吸収層58の中央線CL上に該中央線CLに沿って形成されている。また、本実施形態では、一対の第2吸収層60が同一寸法形状とされている。
【0023】
また、図5に示されるように、吸収体52を構成する第1吸収層58及び第2吸収層60のそれぞれの厚みは、略同じ厚みになっている。
【0024】
吸収体52を構成する第1吸収層58及び第2吸収層60は、それぞれ吸収性ポリマーを含有する繊維層である。具体的には、第1吸収層58及び第2吸収層60は、熱融着繊維(例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維)を所定形状に成形した繊維層であり、その内部には吸収性ポリマー(所謂SAP)等が混入されている。なお、本実施形態では、繊維層としてポリオレフィン系繊維を用いたエアスルー不織布を用いているが、本開示はこの構成に限定されない。
【0025】
また、吸収体52では、第2吸収層60における単位面積当たりの吸収性ポリマーの含有量C2が、第1吸収層58における単位面積当たりの吸収性ポリマーの含有量C1よりも多くなっている。具体的には、含有量C2は、含有量C1の150%~500%の範囲内、好ましくは、250%~400%の範囲内とされている。
【0026】
また、第2吸収層60の第1吸収層58と反対側の部分60Aを形成する繊維には、第2吸収層60の第1吸収層58側の部分60Bを形成する繊維よりも、繊維の親水性を持続させる耐久親水性が付与されている。なお、繊維への親水性の付与については、公知の方法を用いることができる。なお、本実施形態では、第2吸収層60の部分60Aを形成する繊維に、公知の親水性繊維処理剤(一例として特許3362348号公報に記載された処理剤)を用いて耐久親水性を付与している。一方、第2吸収層60の部分60Bを形成する繊維には、一般的な親水性が付与されている。本実施形態では、第2吸収層60を2層構造とし、部分60Aと部分60Bとをそれぞれ別の処理を施した繊維層(一例としてエアスルー不織布)を積層することで、第2吸収層60を形成している。
【0027】
第1吸収層58の第2吸収層60と反対側の部分58Aを形成する繊維には、第1吸収層58の第2吸収層60側の部分58Bを形成する繊維よりも、繊維の親水性を持続させる耐久親水性が付与されている。なお、本実施形態では、第1吸収層58の部分58Aを形成する繊維に、第2吸収層60の部分60Aと同様に、公知の親水性繊維処理剤を用いて耐久親水性を付与している。一方、第1吸収層58の部分58Bを形成する繊維には、一般的な親水性が付与されている。本実施形態では、第1吸収層58を2層構造とし、部分58Aと部分58Bとをそれぞれ別の処理を施した繊維層(一例としてエアスルー不織布)を積層することで、第1吸収層58を形成している。
【0028】
このように構成された吸収体52を有する吸収性本体40は、トップシート42と防漏シート44との間で、吸収体52の溝部56が形成された一方のシート面52Aがトップシート42側に位置し、吸収体52の他方のシート面52Bが防漏シート44側に位置するように配置されている。
【0029】
次に本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の吸収体52には、一方のシート面52Aにシート長手方向に延びる溝部56が形成されている。ここで、吸収体52に対して一方のシート面52A側から液体が流入した場合、流入した液体の一部が溝部56を通ってシート長手方向に移動しながら吸収体52に吸収される。このように吸収体52では、一方のシート面52A(トップシート42側)に溝部56を形成するため、例えば、一方のシート面が平坦な構成と比べて、液体のシート長手方向の拡散を早めることができる。これにより、吸収体52の吸収性が向上する。
【0030】
また、吸収体52では、溝部56が全長に亘って形成されているため、例えば、溝部56を断続的に形成する構成と比べて、液体が吸収体52のシート長手方向の両端まで連続して移動可能であり、液体をより広い範囲に拡散させることができる。これにより、液体のシート長手方向の拡散をより早めることができる。
【0031】
また、吸収体52では、複数の第2吸収層60がシート幅方向に間隔をあけて第1吸収層58に積層されて、隣り合う第2吸収層60のそれぞれの対向面60Sと第1吸収層58の表面58Sとで溝部56が形成されている。このように吸収体52では、第1吸収層58に複数の第2吸収層60を積層することで溝部56が形成されるため、例えば、一層の吸収層に溝部56が加工された吸収体と比べて、製造が容易になる。
【0032】
また、吸収体52では、第2吸収層60の含有量C2が第1吸収層の含有量C1よりも多いため、例えば、第1吸収層58及び第2吸収層60の単位面積当たりの吸収性ポリマーの含有量が同じ吸収体と比べて、液体吸収時における第2吸収層60の厚み方向の膨張量が大きくなり、溝部56の溝深さが深くなる。このように吸収体52では、液体を吸収することで溝部56の溝深さが深くなるため、溝部56を通してより多くの液体をシート長手方向に拡散させることが可能となり、液体の吸収性が向上する。
【0033】
また、吸収体52では、第2吸収層60の部分60Aを形成する繊維に耐久親水性が付与され、第2吸収層の部分60Bを形成する繊維に一般的な親水性(耐久親水性と比べて、繊維の親水性を持続させる効果がない親水性)が付与されている。
ここで、吸収体52は、液体吸収初期では、第1吸収層58の一般的な親水性が付与された部分58Bと、第2吸収層60の一般的な親水性が付与された部分60Bとで主に液体が吸収される。そして、液体吸収中期以降において、第2吸収層60の一般的な親水性が付与された部分の親水性の低下にともなって吸収性が低下しても、第2吸収層60の耐久親水性が付与された部分60Aによって液体を吸収することが可能なため、液体の逆戻り抑制効果を期待できる。
【0034】
また、吸収体52では、第2吸収層60を第1吸収層58の中央線CLを挟んでシート幅方向両側に一対配置しているため、例えば、第2吸収層を3つ以上形成する構成と比べて、第2吸収層60を構成する部材の部品点数を減らすことができる。特に、本実施形態では、一対の第2吸収層60を同一寸法形状としていることから、更に部品点数を減らすことができる。
【0035】
以上のように、おむつ20では、液体のシート長手方向の拡散を早めて液体の吸収性を向上させた吸収体52を用いるため、着用者の快適性が向上する。
【0036】
前述の実施形態の吸収体52では、溝部56を第1吸収層58の中央線CLに沿って1本形成しているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、第1吸収層58に複数の溝部56を形成してもよい。また、溝部を複数形成する場合のそれぞれの溝の断面形状については、同じでも異なっていてもよい。なお、本実施形態では、溝部56の断面形状を略四角形状としているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、溝部56の形状は、略V字状、略台形状、略円弧状であってもよい。また、溝部56を第1吸収層58の中央線CLに沿ってジグザグ状、サイン波状、方形波状に形成してもよい。
【0037】
前述の実施形態の吸収体52では、溝部56を全長に亘って形成しているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、溝部56がシート長手方向に断続的に形成されてもよい。例えば、吸収体52のシート長手方向の両端近傍のみを残して、溝部56が連続する構成であってもよい。
【0038】
前述の実施形態の吸収体52では、第1吸収層58の部分58Aの繊維に耐久親水性を付与し、部分58Bの繊維に一般的な親水性を付与しているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、第1吸収層58の部分58Aの繊維及び部分58Bの繊維のどちらにも耐久親水性を付与してもよい。
【0039】
また、前述の実施形態の吸収体52では、第1吸収層58と第2吸収層60をそれぞれ2層構造としているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、第1吸収層58と第2吸収層60をそれぞれ単層構造としてもよいし、3層以上の構造としてもよい。なお、第2吸収層60を3層以上の構造とする場合には、最上層を構成する繊維に耐久親水性を付与することが好ましい。
【0040】
前述の実施形態の吸収体52では、第1吸収層58と第2吸収層60のそれぞれの厚みを略同じにしているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、第1吸収層58と第2吸収層60のそれぞれの厚みが異なる厚みであってもよい。
【0041】
前述の実施形態の吸収体52は、オープンタイプ(テープタイプ)のおむつ20に用いられたが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、吸収体52をパンツタイプの使い捨ておむつに用いてもよいし、それ以外のテープタイプとパンツタイプを組み合わせた使い捨ておむつに用いてよい。
【0042】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0043】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
【0044】
(付記1)
付記1の吸収体は、吸収性ポリマーを含有し、液体の吸収により膨張するシート状の吸収体であって、一方のシート面にシート長手方向に延びる溝部が形成されている。
【0045】
付記1の吸収体には、一方のシート面にシート長手方向に延びる溝部が形成されている。ここで、上記吸収体に対して一方のシート面側から液体が流入した場合、流入した液体の一部が溝部を通ってシート長手方向に移動しながら吸収体に吸収される。このように上記吸収体では、一方のシート面に溝部を形成するため、例えば、一方のシート面が平坦な構成と比べて、液体のシート長手方向の拡散を早めることができる。これにより、上記吸収体の吸収性が向上する。
【0046】
(付記2)
付記2の吸収体は、付記1の吸収体において、前記溝部が全長に亘って形成されている。
【0047】
付記2の吸収体では、溝部が全長に亘って形成されているため、例えば、溝部を断続的に形成する構成と比べて、液体が吸収体のシート長手方向の両端まで連続して移動可能であり、液体をより広い範囲に拡散させることができる。これにより、液体のシート長手方向の拡散をより早めることができる。
【0048】
(付記3)
付記3の吸収体は、付記2の吸収体において、他方のシート面を形成する第1吸収層と、前記一方のシート面を形成し、シート幅方向に間隔をあけて前記第1吸収層に積層された複数の第2吸収層と、を有し、前記溝部は、隣り合う前記第2吸収層のそれぞれの対向面と前記第1吸収層の表面とで形成されている。
【0049】
付記3の吸収体では、複数の第2吸収層がシート幅方向に間隔をあけて第1吸収層に積層されて、隣り合う第2吸収層のそれぞれの対向面と第1吸収層の表面とで溝部が形成されている。このように上記吸収体では、第1吸収層に複数の第2吸収層を積層することで溝部が形成されるため、例えば、一層の吸収層に溝部が加工された吸収体と比べて、製造が容易になる。
【0050】
(付記4)
付記4の吸収体は、付記3の吸収体において、前記第1吸収層及び前記第2吸収層は、それぞれ吸収性ポリマーを含有する繊維層であり、前記第2吸収層の単位面積当たりの吸収性ポリマーの含有量が前記第1吸収層の単位面積当たりの吸収性ポリマーの含有量よりも多い。
【0051】
付記4の吸収体では、第2吸収層の単位面積当たりの吸収性ポリマーの含有量が第1吸収層の単位面積当たりの吸収性ポリマーの含有量よりも多いため、例えば、第1吸収層及び第2吸収層の単位面積当たりの吸収性ポリマーの含有量が同じ吸収体と比べて、液体吸収時における第2吸収層の厚み方向の膨張量が大きくなり、溝部の溝深さが深くなる。このように上記吸収体では、液体を吸収することで溝部の溝深さが深くなるため、溝部を通してより多くの液体をシート長手方向に拡散させることが可能となり、液体の吸収性が向上する。
【0052】
(付記5)
付記5の吸収体は、付記4の吸収体において、前記第2吸収層の前記第1吸収層と反対側の部分を形成する繊維には、前記第2吸収層の前記第1吸収層側の部分を形成する繊維よりも、繊維の親水性を持続させる耐久親水性が付与されている。
【0053】
付記5の吸収体では、第2吸収層の第1吸収層と反対側の部分を形成する繊維に耐久親水性が付与され、第2吸収層の第1吸収層側の部分を形成する繊維に一般的な親水性(耐久親水性と比べて、繊維の親水性を持続させる効果がない親水性)が付与されている。
ここで、上記吸収体は、液体吸収初期では、第1吸収層と、第2吸収層の一般的な親水性が付与された部分とで主に液体が吸収される。そして、液体吸収中期以降において、第2吸収層の一般的な親水性が付与された部分の親水性の低下にともない吸収性が低下しても、第2吸収層の耐久親水性が付与された部分によって液体を吸収することが可能なため、液体の逆戻り抑制効果を期待できる。
【0054】
(付記6)
付記6の吸収体は、付記3~付記5のいずれか一つの吸収体において、前記第2吸収層は、前記第1吸収層のシート幅方向の中央線を挟んでシート幅方向両側に一対配置されている。
【0055】
付記6の吸収体では、第2吸収層を第1吸収層のシート幅方向の中央線を挟んでシート幅方向両側に一対配置しているため、例えば、第2吸収層を3つ以上形成する構成と比べて、第2吸収層を構成する部材の部品点数を減らすことができる。
【0056】
(付記7)
付記7の使い捨ておむつは、付記1~付記6のいずれか1つの吸収体を用いた使い捨ておむつであって、前記吸収体と、前記吸収体を包む液透過性を有するラップシートと、を含んで構成される吸収性本体と、前記吸収性本体の肌側に配置された液透過性を有する肌側シート材と、前記吸収性本体の肌側と反対側に配置された液不透過性且つ透湿性を有する非肌側シート材と、を備え、前記吸収体の溝部が形成された一方のシート面が非肌側シート材側に位置し、前記吸収体の他方のシート面が非肌側シート材側に位置する。
【0057】
付記7の使い捨ておむつでは、液体のシート長手方向の拡散を早めて液体の吸収性を向上させられる吸収体を用いるため、着用者の快適性が向上する。
【符号の説明】
【0058】
20 おむつ(使い捨ておむつ)
40 吸収性本体
42 トップシート(肌側シート材)
44 防漏シート(非肌側シート材)
52 吸収体
52A 一方のシート面
52B 他方のシート面
54 ラップシート
56 溝部
58 第1吸収層
58A 部分
58B 部分
58S 表面
60 第2吸収層
60A 部分
60B 部分
62S 対向面
CL 中央線
L おむつの長手方向
W おむつの幅方向
T おむつの厚み方向
SL 吸収体のシート長手方向
SW 吸収体のシート幅方向
ST 吸収体のシート厚み方向
図1
図2
図3
図4
図5