(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】情報処理システム、サーバ、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20220502BHJP
【FI】
G16H50/30
(21)【出願番号】P 2022030528
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2022029066の分割
【原出願日】2022-02-28
【審査請求日】2022-03-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516377348
【氏名又は名称】株式会社Arblet
(72)【発明者】
【氏名】清水 滉允
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特許第6815055(JP,B1)
【文献】国際公開第2022/038818(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066465(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介してユーザが装着する測定装置から測定データを受信し、前記測定データから生体データ及びフレイル指標情報の生成を行う情報処理システムであって、
所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、前記ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するフレイル指標情報生成部と、を備える、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記フレイル指標情報生成部は、前記判定期間内の生体データとして心拍数情報または血圧情報の少なくともいずれかを含む循環器関連情報を用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記フレイル指標情報生成部は、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかを関連付けられた運動強度を示す運動強度情報に基づいてクラスタリングを行い、クラスタリングされた運動強度情報ごとの対応関係情報に基づき前記フレイル指標情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記運動強度は、前記測定装置の慣性センサから得られるデータに基づく指標である、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の情報処理システム。
【請求項5】
ネットワークを介してユーザが装着する測定装置から測定データを受信し、前記測定データから生体データ及びフレイル指標情報の生成を行うサーバであって、
所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、前記ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するフレイル指標情報生成部と、を備える、
ことを特徴とするサーバ。
【請求項6】
ネットワークを介してユーザが装着する測定装置から測定データを受信し、前記測定データから生体データ及びフレイル指標情報の生成を
コンピュータにより行う情報処理方法であって、
フレイル指標情報生成部により、所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、前記ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するステップと、を含む、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
ネットワークを介してユーザが装着する測定装置から測定データを受信し、前記測定データから生体データ及びフレイル指標情報の生成を行う情報処理方法を情報処理システムに実行させるプログラムであって、
前記情報処理方法は、
フレイル指標情報生成部により、所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、前記ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するステップと、を含む、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置から取得した測定データに基づきフレイル指標情報を生成する情報処理システム、サーバ、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
認知症をはじめとした老衰に伴う疾病の予防には筋力増加が役立つと言われており、日頃から積極的に運動を行うなどのフレイル予防が重要である。
【0003】
そして、フレイルの判定も重要であり、例えば、特許文献1においては、被験者へ質問を行い、回答の合計点を算出する判定方法が開示されており、特許文献2においては、受信者への問診結果と立位姿勢におけるバランス測定テストの結果に基づきフレイル健診の結果を出力するフレイル健診システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-177282号公報
【文献】特許第6943395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、ウェアラブルデバイス技術も発達しているところ、日常的な動作に基づくフレイルの判定方法が望まれている。
【0006】
そこで、本開示では、ユーザが装着する測定装置から取得した測定データに基づきフレイル指標情報を生成する情報処理システム、サーバ、情報処理方法及びプログラムについて説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様における情報処理システムは、ネットワークを介してユーザが装着する測定装置から測定データを受信し、前記測定データから生体データ及びフレイル指標情報の生成を行う情報処理システムであって、所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、前記ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するフレイル指標情報生成部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様におけるサーバは、ネットワークを介してユーザが装着する測定装置から測定データを受信し、前記測定データから生体データ及びフレイル指標情報の生成を行うサーバであって、所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、前記ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するフレイル指標情報生成部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様における情報処理方法は、ネットワークを介してユーザが装着する測定装置から測定データを受信し、前記測定データから生体データ及びフレイル指標情報の生成を行う情報処理方法であって、フレイル指標情報生成部により、所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、前記ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するステップと、を含む。
【0010】
本開示の一態様におけるプログラムは、ネットワークを介してユーザが装着する測定装置から測定データを受信し、前記測定データから生体データ及びフレイル指標情報の生成を行う情報処理方法を情報処理システムに実行させるプログラムであって、前記情報処理方法は、フレイル指標情報生成部により、所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、前記ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、本実施形態に係る情報処理システムは、フレイル指標情報生成部133を介して、測定データまたは生体データに基づき、特にユーザのフレイル状態に関するフレイル指標情報を生成する。これにより、例えば被測定者に関するフレイル状態の把握が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る情報処理システムを示すブロック構成図である。
【
図2】
図1の管理サーバ100のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】
図2の記憶部120および制御部130の機能を例示したブロック図である。
【
図4】
図3の測定データに関連付けされるタグ情報の例を示す模式図である。
【
図5】
図1の測定装置300で測定される心電波形及び脈波形の例について説明するための図である。
【
図6】
図1の情報処理システム1の処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態によるシステムは、以下のような構成を備える。
【0014】
[項目1]
ネットワークを介してユーザが装着する測定装置から測定データを受信し、前記測定データから生体データ及びフレイル指標情報の生成を行う情報処理システムであって、
所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、前記ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するフレイル指標情報生成部と、を備える、
ことを特徴とする情報処理システム。
[項目2]
前記フレイル指標情報生成部は、前記判定期間内の生体データとして心拍数情報または血圧情報の少なくともいずれかを含む循環器関連情報を用いる、
ことを特徴とする項目1に記載の情報処理システム。
[項目3]
前記フレイル指標情報生成部は、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかを関連付けられた運動強度を示す運動強度情報に基づいてクラスタリングを行い、クラスタリングされた運動強度情報ごとの対応関係情報に基づき前記フレイル指標情報を生成する、
ことを特徴とする項目1または2に記載の情報処理システム。
[項目4]
前記運動強度は、前記測定装置の慣性センサから得られるデータに基づく指標である、
ことを特徴とする項目1ないし3のいずれかに記載の情報処理システム。
[項目5]
ネットワークを介してユーザが装着する測定装置から測定データを受信し、前記測定データから生体データ及びフレイル指標情報の生成を行うサーバであって、
所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、前記ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するフレイル指標情報生成部と、を備える、
ことを特徴とするサーバ。
[項目6]
ネットワークを介してユーザが装着する測定装置から測定データを受信し、前記測定データから生体データ及びフレイル指標情報の生成を行う情報処理方法であって、
フレイル指標情報生成部により、所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、前記ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するステップと、を含む、
ことを特徴とする情報処理方法。
[項目7]
ネットワークを介してユーザが装着する測定装置から測定データを受信し、前記測定データから生体データ及びフレイル指標情報の生成を行う情報処理方法を情報処理システムに実行させるプログラムであって、
前記情報処理方法は、
フレイル指標情報生成部により、所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、前記所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、前記応答性指標情報または前記回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、前記ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するステップと、を含む、
ことを特徴とするプログラム。
【0015】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0016】
(実施形態1)
<構成>
図1は、本開示の実施形態1に係る情報処理システム1を示すブロック構成図である。この情報処理システム1は、例えば、ネットワークNWを介して測定装置300からユーザの測定データを管理サーバ100にて受信し、当該測定データに対して所定の演算を行うことで生体データを生成し、当該生体データに基づきフレイル指標情報を生成するシステムである。
【0017】
情報処理システム1は、管理サーバ100と、ユーザ端末装置200と、測定装置300と、ネットワークNWと、を有している。管理サーバ100と、ユーザ端末装置200とは、ネットワークNWを介して接続される。ネットワークNWは、インターネット、イントラネット、ブロックチェーンネットワーク、無線LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等により構成される。
【0018】
管理サーバ100は、例えば、ネットワークを介して測定装置300からユーザの測定データを、ユーザ端末装置200を経由して受信して測定データから生体データへ演算を行う装置であり、例えば各種Webサービスを提供するサーバ装置により構成されている。
【0019】
ユーザ端末装置200は、ユーザが所持する、例えばパーソナルコンピュータやタブレット端末、スマートフォン、スマートウォッチ、携帯電話、PHS、PDA等の情報処理装置であり、例えば、管理サーバ100で演算を行った生体データを波形グラフ等により表示させたり、生体データに基づき生成された(詳細は後述)を表示させたりなどをするために利用される。ユーザ端末装置200には、予めユーザの識別番号、生年月日、性別、身長、体重等のユーザ情報が登録されており、生年月日から算出した年齢等も含めたユーザ情報を測定データに関連付けてネットワークNWを介して管理サーバ100へ送信する。
【0020】
また、ユーザ端末装置200は、ユーザが測定装置300によりデータを取得する状態を、タッチパネル等を用いて入力するようにしてもよい。ユーザ端末装置200は、「データを取得する状態」を、例えば、走っている場合には「ランニング中」、食事中である場合には「食事中」など、タグ情報として入力することができる。この場合、ユーザ端末装置200は、測定装置300から所定の周期的なタイミングで受信した測定データを、タグ情報と関連付けてネットワークNWを介して管理サーバ100へ送信する。
【0021】
測定装置300は、ユーザの測定データを測定する装置であり、この測定装置300は、既知の手法により、例えばユーザの心電、脈波、皮膚温度(体温)、加速度、角速度のデータを所定の周期的なタイミングで測定するための装置である。当該所定の周期は、予め設定されているものであってもよいし、ユーザが任意に設定可能であってもよい。より具体的には、例えば秒単位の時間的周期が設定されていてもよいし、周波数により同様に設定されていてもよい。なお、ユーザ端末装置200のユーザと測定装置300のユーザ(被測定者)が同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
測定装置300の具体的な構成の例としては、2つの電極を皮膚に接触させ、検出電位の差の時間変化より心電を心電波形のデータとして取得する装置で構成しても良く、心電波形は、ガルバニック皮膚反応により取得されたデータでも良い。また、緑、赤、赤外の発光を行うLEDから各光を皮膚に照射し、フォトダイオードで受光した光の強度の時間変化により、ユーザの心臓の心拍により生ずる血管の容積変化により脈波を脈波形のデータとして取得する装置で構成しても良く、この方式で検出を行うことができる脈波形は光電式容積脈波形である。また、ユーザの皮膚に接触させる温度センサによりユーザの皮膚温度をデータとして取得する装置で構成しても良い。また、直交するXYZ軸それぞれの変異状態を検出する3軸加速度センサにより構成しても良く、ユーザの動作を加速度データとして取得し、例えば測定装置300がユーザの手首や腕等に装着されている場合、測定装置300は、手首や腕等の振りと、全身の動きが合成された加速度として加速度データの取得をする。さらに、直行するXYZ軸それぞれにおける回転角速度を検出するジャイロセンサ(角速度センサ)により構成しても良く、ユーザの動作を角速度データとして取得し、例えば測定装置300がユーザの手首や腕等に装着されている場合、測定装置300は、手首や腕等の回転と、全身の動きが合成された角速度として角速度データの取得をする。
【0023】
ユーザ端末装置200と測定装置300との間は、Bluetooth(登録商標)、近距離無線通信(Near Field radio Communication=NFC)、Afero(登録商標)、Zigbee(登録商標)、Z-Wave(登録商標)、又は無線LAN等を用いて接続されている。なお、このような無線接続の代わりに有線で接続を行ってもよい。また、ユーザ端末装置200と測定装置300とは一体の機器であってもよく、例えば測定装置300にSIMを搭載するなどして通信機能を持たせて管理サーバ100と直接通信可能に構成してもよい。
【0024】
ユーザ端末装置200は、1または複数台あり、測定装置300を利用するユーザ数分ネットワークNWに接続されている。測定装置300は、1または複数台あり、1人のユーザが利用する台数分のユーザ端末装置200に接続されている。1人のユーザが複数の測定装置300を利用している場合は、1つのユーザ端末装置200に複数の測定装置300が接続されている。
【0025】
<管理サーバ100>
図2は、管理サーバ100のハードウェア構成を示す図である。
図3は、記憶部120および制御部130の機能を例示したブロック図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。
【0026】
管理サーバ100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130と、入出力部140とを備える。これらの機能部は、管理サーバ100用の所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0027】
通信部110は、ユーザ端末装置200と通信を行うための通信インタフェースであり、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の通信規約により通信が行われる。
【0028】
記憶部120は、各種制御処理や制御部130内の各機能を実行するためのプログラム、入力データ等を記憶するものであり、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等から構成される。また、
図3に示されるように、記憶部120は、測定装置300による測定データをユーザ情報と関連付けて記憶する測定データDB121と、測定データから演算されて生成される生体データをユーザ情報と関連付けて記憶する生体データDB122と、計測データまたは生体データに基づき生成されたフレイル指標情報をユーザ情報と関連付けて記憶するフレイル指標情報DB123と、ユーザ識別情報を含むユーザ情報を記憶するユーザ情報DB124と、を記憶する。また、ユーザ識別情報は、データ管理部131により生成されたアカウント情報であってもよいし、ユーザ端末装置200にダウンロードされたアプリケーションのアプリケーション識別情報やユーザ端末装置のユーザ端末識別情報であってもよい。さらに、記憶部120は、ユーザ端末装置200と通信を行ったデータを一時的に記憶する。なお、DBのデータ構造は、これに限られるものではなく、上述のDBの一部をユーザ端末装置200または測定装置300に記憶するようにしてもよい。
【0029】
制御部130は、管理サーバ100の全体の動作を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)等から構成される。また、
図3に示されるように、制御部130は、データ管理部131、生体データ生成部132、フレイル指標情報生成部133、データ出力部134といった機能部を含む。
【0030】
データ管理部131は、測定装置300を利用するユーザごとに、ユーザ識別情報を設定する。例えば、ユーザ識別情報がアカウント情報である場合には、アカウント情報の生成は、測定装置300を利用するユーザがユーザ端末装置200でアカウント情報を登録すると行われる。そのため、データ管理部131は、ユーザのユーザ端末装置200に対してアカウントごとに記憶部120内の各種DBへのアクセスの可否の制御を行う。データ管理部131は、測定データや生体データ、フレイル指標情報等の各種データを対応するDBにユーザ識別情報を含むユーザ情報に関連付けて記憶する。また、このとき、データ管理部131は、測定データに所定のタグ情報の関連付けを行って記憶させてもよい。
【0031】
図4は、
図3の測定データに関連付けされるタグ情報の例を示す模式図である。
図4に示すデータD1は、測定装置300の測定データである。タグT1は、データD1に関連付けされたタグ情報であり、例えば、測定装置300がデータD1を測定した時刻情報、またはデータD1が測定装置300からユーザ端末装置200へ送信された時刻情報が時系列データとして記憶される。もしくは、測定した時刻情報と送信された時刻情報との両方について関連付けを行っても良い。例えば、
図4に示すタグT1の1行目では、「20180620120746144」が格納されているが、2018年06月20日12時07分46秒144ミリ秒を示している。このような時刻情報は通信ログより取得可能である。これにより、測定データがどの時間帯のものか把握することが可能である。
【0032】
なお、このようなタグ情報による測定データの関連付けは、時刻情報に限られず、ユーザの身体状態や行動内容を示す身体情報や行動情報を自由記載でユーザに記入させてタグ情報として記憶してもよいし、所定の選択肢からユーザに選択させ(例えば、「現在の体調は如何ですか?」という質問に対して、「1:良い、2:普通、3:悪い」のいずれかを選択させる、等)、その選択した回答を記憶するようにしてもよい。さらには、例えば他の計測データや生体データ(例えば歩行速度情報や歩幅情報、装着部位の動作情報、姿勢情報、重心の位置情報、心拍情報など)に基づき、所定行動(例えば、坐位、立位、臥位、歩行、走行、睡眠、起床、就寝、食事、運転、安静時など)を既知の方法により推定するようにして生体データ等にタグ情報(行動種別情報)として関連付けてもよい。この時、例えば、教師用計測データに基づき学習された学習モデルにより推定してもよいし、さらに、上述のユーザによる記録の結果により追加学習を行うことで、学習モデルをパーソナライズしてもよい。これにより、制御部150にて血圧情報などの生体データを生成する際に、当該タグ情報と生体データとを対応付けすることで、より精度の高い生体データを生成可能となると共に、それに基づき生成されるフレイル指標情報もよりパーソナライズされたデータとなり得る。
【0033】
生体データ生成部132は、測定データDB121に記憶された測定データに対して所定の演算を行い、生体データを生成する。生体データの生成においては、測定データを演算することで直接生成されるものに限らず、別途生成された一以上の生成済み生体データに基づき新たな生体データを生成するようにしてもよい。生体データは、例えばユーザの血圧情報、心拍情報、血中酸素量情報、最大酸素摂取量情報、心電情報、呼吸数、体温情報、血糖値情報、歩数情報、歩幅情報、重心の位置情報、姿勢情報、行動種別情報、ストレス情報、運動量情報、運動負荷情報、移動距離情報、歩行速度情報、活動量情報、手または脚等の動作情報などのデータであり、既知の手法により測定データなどから算出されるものであるが、これらに限定されるものでもない。演算により生成された生体データは、生体データDB122に記憶される。
【0034】
また、既知の学習器などにより、例えば測定データと、当該測定データに基づき生成された生体データ(例えば心拍情報や血圧情報など)と正の生体データ(例えば、既知の医療機器等に基づく心拍情報や血圧情報など)との対応関係(例えば、誤差の程度や範囲を示す情報などが含まれていてもよい)により対応付けた教師データを基に学習モデルを予め作成し、生体データ生成部132は、当該学習モデルを用いた判定を上述の所定の演算(解析)として生体データを生成してもよい。
【0035】
ここで、測定データから生体データである最大血圧と最小血圧を算出する方法を例示する。
図5は、
図1の測定装置300で測定される心電波形及び脈波の例について説明するための図であり、測定装置300が測定し、記憶部120に記憶されたユーザの心電波形及び光電式容積脈波形と、アプリが光電式容積脈波形を時間で1階微分した速度脈波形及び、光電式容積脈波形を時間で2階微分した加速度脈波形を示している。
図5は上から順に、心電波形、光電式容積脈波形、速度脈波形及び加速度脈波形となる。縦軸は、各波形の強度を示しており、心電波形及び光電式容積脈波形は電位を示すmVで表される。横軸は時間経過を示し、左から右へ時間経過を示している。
【0036】
心電波形は、人の心臓の拍動を引き起こす電気的信号の周期的変化を示す波形である。心電波形は、その形状の変曲点にそれぞれP波,Q波,R波,S波,T波の名称が割り当てられ、心拍の1サイクルを示している。P波は心房収縮を表し、Q波R波S波は心室収縮の状態を表し、T波は心室拡張の開始を表す。
【0037】
光電式容積脈波形は、人の心臓の拍動に伴う末梢血管系内の血圧・体積の変化を示す波形である。光電式容積脈波形は、その形状の変曲点にそれぞれA波、P波、V波、D波の名称が割り当てられ、心拍の1サイクルを示している。A波を動脈脈波が生じた時点の基準点として、P波が左心室駆出によって生じるPercussion波(衝撃波)、V波が大動脈弁の閉鎖時に生じるValley波(重複隆起による波)、D波が反射振動波であるDicrotic波(重複波)を示している。
【0038】
速度脈波形は、光電式容積脈波形を時間で1階微分をしたものである。加速度脈波形は、速度脈波形を時間で1階微分したもの、すなわち光電式容積脈波形を2階微分したものである。加速度脈波形は、
図5で示すように、その波形の各ピークにa波(収縮初期陽性波)、b波(収縮初期陰性波)、c波(収縮中期再上昇波)、d波(収縮後期再下降波)、e波(拡張初期陽性波)、f波(拡張初期陰性波)の名称が割り当てられている。
【0039】
b波の強度とa波の強度の比、及びf波の強度とe波の強度の比はそれぞれ血管の伸縮性すなわち弾性を示すパラメータである。主な血管の成分は、血管内皮(Endothelium)、弾性線維(Elastin)、タンパク質(Collagen)、平滑筋(Smooth Muscle)である。これらの成分は、それぞれ異なった性質があり、最大血圧、最小血圧時の血管の弾性はそれぞれCollagen、Elastinが強い影響力を担っている。そのため、血圧値によって異なる弾性をb波の強度とa波の強度の比である(b/a),f波の強度とe波の強度の比である(f/e)のパラメータで示すことができ、年齢・性別・環境変数の影響によってもこれらの値は変動する。そのため、(b/a),(f/e)の値は、加速度脈波形の特性情報として算出することができる。
【0040】
図5で示すようにR波の生じた時間TrとP波の生じた時間Tpの差分の時間が心室収縮期脈波伝搬時間PTT_SYSとなる。T波の生じた時間TtとD波の生じた時間Tdの差分の時間が心室拡張期脈波伝搬時間PTT_DIAとなる。すなわち、心電波形のR波の時間Tr及びT波の時間Ttと、光電式容積脈波形のT波の時間TpとD波の時間Tdから、(1)式及び(2)式で示すように、心室収縮期脈波伝搬時間PTT_SYS及び心室拡張期脈波伝搬時間PTT_DIAを算出することができる。
【0041】
PTT_SYS=Tp-Tr ・・・(1)
【0042】
PTT_DIA=Td-Tt ・・・(2)
【0043】
心電波形を測定する第1電極及び第2電極と、光電式容積脈波形の測定する光学センサモジュールを、手首を介して対向させ、配置距離を離すことにより、心電波形の検出部位と光電式容積脈波形の測定部位を離すことになる。そのため、それぞれの特徴波形が生じるタイムラグを生じさせることにより、心室収縮期脈波伝搬時間PTT_SYS及び心室拡張期脈波伝搬時間PTT_DIAの絶対的な算出時間を長くとることができる。そのため、心室収縮期脈波伝搬時間PTT_SYS及び心室拡張期脈波伝搬時間PTT_DIAの変化情報を得る場合に、変化情報の精度を高めることができる。
【0044】
ここで、血圧の算出式について説明する。
【0045】
以下に示す(3)式の脈波伝搬速度の式(Moens―Korteweg の式)より、脈波伝播速度と動脈壁の縦弾性係数との関係が示されている。
【0046】
L/T_PTT=√(E・h/(2・r・ρ)) ・・・(3)
【0047】
(3)式の各パラメータは、L:測定間距離、T_PTT:脈波伝搬時間、r:血管内径、E:血管の縦弾性係数、h:血管の厚さ、ρ:血液密度である。
【0048】
縦弾性係数と血圧値は相関関係にあることが知られており、
【0049】
E=E0・exp(α・P) ・・・(4)
【0050】
で示すことができる。ここで、P:血圧値、α:定数、E0:初期値である。
【0051】
(3)式と(4)式より
【0052】
P=(-2・ln(T_PTT)+ln(2・r・ρ・L2/(E0・h)))/α ・・・(5)
【0053】
を導き出すことができる。lnは自然対数を示している。このとき、”r・ρ”は測定部位の血液量に比例するため、光電式容積脈波形で示される高値(Vp、Vd)で示すことができる。又、”E0・h”は血管の弾性に比例する値であるため、弾性を示すパラメータである(b/a)と(f/e)を用いて置き換えることができる。
【0054】
よって、最高血圧BP_SYS(Blood Pressure_Systolic)及び最低血圧BP_DIA(Blood Pressure_Diastolic)は、以下で示す(6)式及び(7)式で示すことができる。
【0055】
BP_SYS=A1・ln(PTT_SYS)+A2・ln(Vp)+A3・ln(b/a)+A4 ・・・(6)
【0056】
BP_DIA=A5・ln(PTT_DIA)+A6・ln(Vd)+A7・ln(f/e)+A8 ・・・(7)
【0057】
A1からA8は条件により定まる定数である。(6)式で算出することができる最高血圧BP_SYSは、心室収縮期脈波伝搬時間PTT_SYSの自然対数に定数A1を掛けたものと、P波の強度Vpの自然対数に定数A2を掛けたものと、(b/a)の自然対数に定数A3を掛けたものと、定数A4の和で求めることができる。(7)式で算出することができる最低血圧BP_SYSは、心室収縮期脈波伝搬時間PTT_DIAの自然対数に定数A5を掛けたものと、D波の強度Vdの自然対数に定数A6を掛けたものと、(f/e)の自然対数に定数A7を掛けたものと、定数A8の和で求めることができる。装置の特性や、測定対象者等により各定数を求めることにより、最高血圧BP_SYSと最低血圧BP_DIAを求めることが可能である。しかし、最高血圧BP_SYSと最低血圧BP_DIAの変化状態を確認する場合には、すべての定数を確定する必要はなく、暫定の数値で代用しながら、最高血圧BP_SYSに関する情報と最低血圧BP_DIAに関する情報としての値を得ることが可能である。P波の強度Vpの自然対数及びD波の強度Vdの自然対数は、血液密度の影響を考慮した項である。また、(b/a)の自然対数及び(f/e)の自然対数は、動脈壁の縦弾性係数の影響を考慮した項である。そのため、測定条件によっては、いずれかの項を選択し他の項を定数化することで最高血圧BP_SYSに関する情報と最低血圧BP_DIAに関する情報の演算を行ってもよい。
【0058】
また、生体データ生成部132は、例えば被測定者が装着している測定装置300の温度センサ(サーミスタ等)により測定される被測定者の皮膚温度情報から温度情報を生体データとして得ることができる。
【0059】
また、測定データから生体データである歩行速度情報を算出する方法を例示する。例えばユーザが手首に装着している測定装置300により測定される加速度データの波形データから既知の算出方法等を単体で用いる、または、組み合わせて用いる(例えば平均化したり、重みづけしたりなど)ことにより歩行速度情報を得ることができ、例えば加速度データを所定時間ごとに積分することで歩行速度情報が算出される。これに加えて、ユーザ端末装置200または測定装置300にGPS機能を備え、GPSによる位置情報及び当該位置情報に関連する時間情報から算出される歩行速度情報を参照して、より正確な歩行速度情報を得るようにしてもよい。しかしながら、特に屋内や地下である場合や移動距離が比較的短い場合(例えば、数メートル以内など)にはGPS精度が一般的に低下するため、例えばユーザがユーザ端末装置200を操作してGPSによる情報を組み合わせて用いるか(または、加速度センサによる算出に代えて用いるか)どうかを選択可能にしてもよいし、ユーザ端末装置200においてGPSの受信感度情報や、GPSや加速度センサにより算出された距離情報などに基づいて、当該GPSによる情報を用いるかを選択するようにしてもよい。このように歩行速度情報を算出することで、フレイル予防等において把握が必要なヒトの筋肉量を測る既知の指標の1つである「歩行速度」について、容易に(特に日常的に)計測することが可能である。また、スマートフォンや携帯電話等でも加速度センサを有しているが、体のどこの動きか特定することが困難なデバイスであるため、ウェアラブルデバイスのようにユーザが手首等に装着している測定装置300を用いることで、行動情報のトラッキングを容易に行うことが可能である。
【0060】
また、測定データから生体データである歩幅情報を算出する方法を例示する。例えばユーザが手首に装着している測定装置300により測定される加速度データの波形データから既知の算出方法等を単体で用いる、または、組み合わせて用いる(例えば平均化したり、重みづけしたりなど)ことにより歩幅情報を得ることができ、例えば、歩く時には振り子のように手を振るため、上述の加速度センサの情報(例えば、進行方向の加速度成分が一番小さいタイミングまたは逆方向に切り替わるタイミングや、進行方向に対して垂直な方向の加速度成分が一番小さいタイミングまたは上下が切り替わるタイミングなど)を基に1歩の間隔が判別できるため、さらに時間情報を用いれば歩幅情報を得ることができる。他には、例えば、地面を蹴り出した際には、蹴り出た方向の加速度成分が合成されるので、当該方向の加速度成分の発生タイミングで1歩の間隔を判別することでも可能である。このように歩幅情報を算出することで、認知症の進行度合いを推定するために役立つとされる歩幅が短くなり始めたタイミングや歩幅のばらつき具合を正確に把握することが可能である。さらに、歩行時の左右の揺れ量(例えば揺れ幅や揺れ速度など)を上述の加速度データから算出することで、バランス感覚の衰えを算出するようにしてもよい。
【0061】
さらに、上述のGPSや加速度センサにより算出された距離情報や上述の歩幅情報及び歩数情報(例えば、加速度センサからの情報に基づき、既知の方法で取得可能)などに基づき算出される運動量情報も生体データとして算出されてもよい。
【0062】
また、生体データ生成部132は、例えば被測定者が装着している測定装置300により測定される加速度データおよび角速度データから、測定装置300を装着している部位(例えば、手首や足首など)がどれくらいの速度でどのような角度で動いているのかという動作情報を生体データとして得ることができる。
【0063】
また、生体データ生成部132は、例えば被測定者が装着している測定装置300により測定される加速度データを周波数解析し、例えば周波数の高低が活動頻度の高低に対応付けられ、所定頻度以上の活動が1日の何割を占めているか、などの所定条件により算出することで活動量情報を生体データとして得ることができる。
【0064】
また、生体データ生成部132は、例えば被測定者が装着している測定装置300により測定される加速度データから既知の算出方法等により歩行を含む運動をしている際の加速度データを特定できるので、例えば周波数解析などを用いて所定の条件により算出することで運動量情報を生体データとして得ることができる。また、角速度情報などの付加情報をさらに用いると、より正確な運動量情報を得ることが可能である。
【0065】
また、生体データ生成部132は、例えば被測定者が装着している測定装置300により測定される加速度データから導出した上記活動量情報や上記運動量情報に対して、例えば運動負荷と共に大きくなる心拍情報により重みづけをすることで運動負荷量情報を生体データとして得ることができる。また、例えば加速度データのベクトル情報を加味すれば、歩行環境(坂や階段など)や姿勢(立位、座位など)などの状態情報も特定できるので、当該状態情報をさらに用いてもよい。また、角速度情報などの付加情報をさらに用いると、より正確な運動負荷量情報を得ることが可能である。
【0066】
また、生体データ生成部132は、例えば心拍数情報を用いて、VO2max=15×(220-年齢)÷心拍数(特に安静時心拍数)という公知の数式などにより最大酸素摂取量情報を生体データとして得ることができる。
【0067】
また、既知の学習器などにより、例えば測定データと、当該測定データに基づき生成された生体データ(例えば心拍情報や血圧情報など)と正の生体情報(例えば、既知の医療機器に基づく心拍情報や血圧情報など)との対応関係(例えば、誤差の程度や範囲を示す情報などが含まれていてもよい)により対応付けた教師データを基に機械学習モデルを予め作成し、生体データ生成部132は、当該機械学習モデルを用いた判定を上述の所定の演算(解析)として生体データを生成してもよい。
【0068】
フレイル指標情報生成部133は、所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データ(特に、心拍数情報および/または血圧情報といった循環器関連情報)の変化情報に基づき、所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報を生成し、および/または、応答状態または動作状態から安静状態までの生体データ(特に、心拍数情報および/または血圧情報といった循環器関連情報)の変化情報に基づき、所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報を生成する。そして、フレイル指標情報生成部133は、応答性指標情報または回復性指標情報の少なくとも何れかを関連付けられた運動強度を示す運動強度情報に基づいてクラスタリングを行う。そして、フレイル指標情報生成部133は、クラスタリングされた運動強度情報ごとに、応答性指標情報または回復性指標情報の少なくとも何れかと基準フレイル指標情報(例えば、少なくとも二以上の分類であり得て、分類として、例えば健常者群、フレイル群を少なくとも含むものであり得る)との対応関係を予め記憶(機械学習によるものも含む)した対応関係情報を参照し、被測定者の応答性指標情報または回復性指標情報の少なくとも何れかに基づき、ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を決定する。フレイル指標情報は、例えば、基準フレイル指標情報のいずれの分類である確率が高いか、といった確率値を示すものであってもよいし、確率値などから最終的に決定された一つの分類を示す情報であってもよい。
【0069】
なお、フレイル指標情報生成部133は、決定されたフレイル指標情報に応じてユーザのフレイル状態の評価を行い評価情報(例えば、フレイル症状評価情報(健常またはフレイルなど)またはフレイル症状を判断することを支援する参考情報としてポジティブとネガティブのいずれであるかというフレイル症状参考評価情報などであって、上述の基準フレイル指標情報に対応していてもよい)を生成してもよく、例えば、決定されたフレイル指標情報をそのまま用いて各運動強度に対応する運動ごとにユーザのフレイル状態を評価してもよいし、これに代えて、または、加えて、所定期間内において運動ごとに決定されたフレイル指標情報をそのまま用いて(特に確率値である場合)、もしくは、スコアリングし(例えば、健常者群を示す場合は0、フレイル群を示す場合は1など)、例えば所定期間内における平均値または合計値などの集計値と対応する基準値(例えば平均値であれば0.5のような半値、合計値であれば全て1の時の合計値の半分の値、または、比較より前に収集した基準データの中央値、最頻値など)を比較して、比較結果に応じて所定期間におけるユーザのフレイル状態を評価して評価情報を生成してもよい。この時、所定期間内における全てのフレイル指標情報のスコアリングデータの集計値を基準値との比較に用いてもよいし、第1四分位数より少ない値または第3四分位数よりも大きい値の少なくともいずれかを除いたり、外れ値を除いたりしたスコアリングデータの集計値を用いてもよい。
【0070】
運動強度は、例えば測定装置300の慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)から得られる加速度データや角速度データの変化情報(特に推移情報)に基づきクラスタリング(分類)されるものであってもよいし、加速度データや角速度データを用いて生成される歩行速度情報、歩幅情報、運動量情報、装着部位の動作情報、活動量情報、運動負荷情報の少なくともいずれかに基づきクラスタリング(分類)されたものであってもよい。もしくは、クラスタリング後に、運動の程度に応じた数値や分類・ランクなどで表現される指標が設定されてもよく、例えば、上述の行動情報により推定された行動情報と運動強度の指標とが対応付けられて設定されていてもよいし、既知の指標(例えばMETSなど)に換算してもよい。
【0071】
より具体的な運動強度のクラスタリング手法の例としては、例えば、測定データ(特に慣性センサから得られるデータ)または生体データの信号の所定時間ごとの振幅、周波数成分、定常性の少なくともいずれかの信号特徴情報を用いてクラスタリングする方法であってもよい。もしくは、例えば、一定時間窓枠幅(例えば、上述の判定期間であってもよい)における測定データ(特に慣性センサから得られるデータ)または生体データの信号情報間の相関値やパワースペクトル密度間の相関値が所定値以上のもの同士をクラスタリングする方法であってもよい。あるいは、測定データ(特に慣性センサから得られるデータ)または生体データの信号波形全体または所定時間窓枠ごとを特徴として機械学習を行った学習モデルを用いて算出する方法であってもよい。
【0072】
判定期間とは、例えば、基準時間の前後の少なくともいずれかに設定される期間であり、例えば基準時間前後数分や数十秒、数秒などで任意に事前に設定されてもよく、もしくは、前後に設定される期間は異なって設定されてもよく、あるいは、基準時間以降数分、数十秒、数秒などと設定されてもよい。
【0073】
応答状態とは、所定以上の運動強度が発生している状態、または、生体データ(特に、心拍数情報および/または血圧情報といった循環器関連情報)が所定値以上である、若しくは、変動情報が示す変動が所定値以上である状態である。
【0074】
行動状態とは、行動種別情報が何らかの動作を示している状態である。
【0075】
安静状態とは、所定値以下の運動強度が発生している状態、または、生体データ(特に、心拍数情報および/または血圧情報といった循環器関連情報)が所定値未満である、若しくは、変動情報が示す変動が所定値未満である状態である。
【0076】
対応関係情報として、例えば、事前の実験などの結果に応じて、クラスタリングされた運動強度情報ごとに、応答性指標情報または回復性指標情報の少なくとも何れかとフレイル指標情報との対応関係が記憶されてもよい。より具体的な例としては、被験者をJ-CHS基準やRockwood frailty indexなどの既知の基準フレイル指標に基づき分類し、被験者が装着した測定装置300の測定データまたは当該測定データから演算される生体データに基づく運動強度情報及び応答性指標情報または回復性指標情報の少なくとも何れかと被験者の基準フレイル指標との対応関係(特に、クラスタリングされた運動強度情報ごとの対応関係)を記憶部120に記憶してもよく、特に機械学習により学習モデルとして学習させてもよい。
【0077】
対応関係情報を学習モデルとして記憶する場合には、例えば、SVM・決定木・勾配ブースティング・ロジスティック回帰などの既知の学習手法を用いて二項分類可能なモデルを作成してもよい。このモデルを用いる場合には、決定されるフレイル指標情報(フレイル評価情報)は、フレイル症状情報(健常またはフレイル)またはフレイル症状を判断することを支援する参考情報としてポジティブとネガティブのいずれであるかなどの推定された2つの情報であり得る。また、対応関係情報を学習モデルとして記憶する場合には、Self-Attentionを利用したTransformerモデルを作成してもよい。この学習モデルは、RNN系のアーキテクチャを改良し、Attention構造のうちinput(query)とmemory(key,value)すべてが同じTensorをつかうことで、非連続サンプル情報への学習の効率化や全体的な学習性能を向上させたものである。Self-Attentionを用いてシーケンス構造や照応関係を獲得することが可能となり、非連続サンプル情報への学習が効率的に行えるようになっている。このTransformer構造は、入力情報の要約情報をEncoder部で抽出し、Decoder部で要約情報をシーケンス情報に置き換える機能を有している。言語理解におけるBERTや画像理解におけるBEiTをはじめとするEncoder部のみを利用したモデルアーキテクチャを構築することで、シーケンス情報の理解を行うように学習していく。この手法によって作成された学習モデル(Encoderモデル)を用いる場合、計測データ(特に慣性センサから得られるデータ)のシーケンス情報を処理させ、先頭肢トークンより導かれたベクトル情報をシーケンス情報の要約情報として扱えるようにすることで、ここで導かれたベクトル情報からフレイル症状の進行具合を表すフレイル指標情報(フレイル評価情報)を決定する。
【0078】
データ出力部134は、計測データや生体データ、フレイル指標情報などをユーザ端末装置200(ここでいうユーザは被測定者であってもよいし、その他の異なる者(例えば、近親者、医師、介護者、研究者などであってもよい。))へ出力する。ユーザ端末装置200においては、出力データを例えば専用のアプリケーションを介して画面に表示するなどしてユーザが容易に確認可能としても良い。
【0079】
入出力部140は、キーボード・マウス類等の情報入力機器、及びディスプレイ等の出力機器である。
【0080】
<処理の流れ>
図6を参照しながら、情報処理システム1が実行するデータ支援方法の処理の流れについて説明する。
図6は、
図1の情報処理システム1の処理の例を示すフローチャートである。
【0081】
ステップS101の処理として、データ管理部131では、測定装置300を利用するユーザごとにアカウント情報が生成され、ユーザ端末装置200等から所定のユーザ情報を取得する。登録されたユーザ情報は、データ管理部131により、ユーザ情報DB124に記憶される。ステップS101の処理は、ユーザが測定装置300を利用するための前処理として行われてもよいし、ユーザが測定装置300を初めて利用する際に行われてもよい。
【0082】
ステップS102の処理として、ユーザが測定装置300を利用すると、測定データが測定装置300からユーザ端末装置200を介して管理サーバ100へ送信され、通信部110を介して受信される。データ管理部131により、記憶部120の測定データDB121内においてユーザ情報に関連付けられて測定データが記憶される。
【0083】
ステップS103の処理として、生体データ生成部132により測定データが読み取られ、所定の演算等により生体データの生成が行われる。生成された生体データは、データ管理部131により、生体データDB122に記憶される。
【0084】
ステップS104の処理として、フレイル指標情報生成部133により測定データまたは生体データが読み取られ、対応関係情報を参照することによりフレイル指標情報の生成が行われる。生成されたフレイル指標情報は、データ管理部131により、フレイル指標情報DB123に記憶される。
【0085】
ステップS105の処理として、データ出力部134により測定データ、生体データ、フレイル指標情報のうち少なくともいずれか1つが読み取られ、ユーザ端末装置200へ出力される。
【0086】
<効果>
以上のように、本実施形態に係る情報処理システムは、フレイル指標情報生成部133を介して、測定データまたは生体データに基づき、特にユーザのフレイル状態に関するフレイル指標情報を生成する。これにより、例えば被測定者に関するフレイル状態の把握が可能となる。
【0087】
以上、開示に係る実施形態について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換および変更を行なって実施することが出来る。これらの実施形態および変形例ならびに省略、置換および変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1 情報処理システム
100 管理サーバ
200 ユーザ端末装置
300 測定装置
NW ネットワーク
【要約】 (修正有)
【課題】フレイル指標情報生成部を介して、測定データに基づき、特にフレイル状態を示すフレイル指標情報を提供する情報処理システム、サーバ、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】管理サーバ、ユーザ端末及び測定装置を有する情報処理システムにおける管理サーバは、所定以上の運動強度が発生した時間を基準時間情報とする判定期間内の生体データの変化情報に基づき、所定以上の運動強度の発生に対して生体データがどのように応答しているかを示す応答性指標情報、応答状態又は動作状態から安静状態までの生体データの変化情報に基づき、所定以上の運動強度の発生による応答からどのように回復しているかを示す回復性指標情報の少なくとも何れかを生成し、応答性指標情報又は回復性指標情報の少なくとも何れかと事前に記憶した対応関係情報に基づき、ユーザのフレイル状態を示すためのフレイル指標情報を生成するフレイル指標情報生成部と、を備える。
【選択図】
図1