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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】ガスエンジン駆動式空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 27/00 20060101AFI20220502BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20220502BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20220502BHJP
   F24F 11/87 20180101ALI20220502BHJP
   F02B 65/00 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
F25B27/00 B
F25B1/00 361A
F25B1/00 371B
F25B13/00 M
F25B13/00 104
F24F11/87
F02B65/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018046684
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2019158248
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 知秀
(72)【発明者】
【氏名】横山 順一
(72)【発明者】
【氏名】山野井 喜記
(72)【発明者】
【氏名】堀 靖史
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-127369(JP,A)
【文献】特開平06-094324(JP,A)
【文献】特開平07-133969(JP,A)
【文献】国際公開第2010/131378(WO,A1)
【文献】特開2015-145742(JP,A)
【文献】特開2009-079813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 ~ 11/89
F25B 1/00
F25B 13/00
F25B 27/00 ~ 27/02
F25B 29/00
F02B 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台又は複数台の室外機及び複数台の室内機に冷媒を循環させて室内空気の温度を調整するガスエンジン駆動式空気調和装置であって、
前記冷媒を吸入するとともに圧縮して吐出する圧縮機と、
前記圧縮機を駆動するガスエンジンと、
前記冷媒と室外空気との間に熱伝達を生じさせる室外熱交換器と、
前記ガスエンジンの廃熱を、前記圧縮機の吸入口側を流れる冷媒に伝達させる廃熱回収熱交換器と、
前記冷媒と前記室内空気との間に熱伝達を生じさせる複数の室内熱交換器と、
前記冷媒の流れをそれぞれ制御する複数の弁と、
前記圧縮機の吸入口側における前記冷媒に関する物理量を表す低圧側物理量の現在値が所定の低圧側物理量の目標値に一致し、且つ前記圧縮機の吐出口側における前記冷媒に関する物理量を表す高圧側物理量の現在値が所定の高圧側物理量の目標値にそれぞれ一致するように前記複数の弁の開度及び前記ガスエンジンの回転数を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記複数の室内機のうち冷房装置として運転する室内機の数が暖房装置として運転する室内機の数よりも多い冷房メイン運転を実行する場合に、前記低圧側物理量としての低圧相当温度の目標値を、すべての前記室内機を冷房装置として運転する場合の前記低圧相当温度の目標値よりも高く設定し、
前記複数の室内機のうち暖房装置として運転する室内機の数が冷房装置として運転する室内機の数よりも多い暖房メイン運転を実行する場合に、前記低圧相当温度の目標値を、前記冷房メイン運転を実行する場合の前記低圧相当温度の目標値よりも高く設定し、
前記低圧相当温度の現在値及び前記低圧相当温度の目標値に基づいて、前記廃熱回収熱交換器による前記冷媒への単位時間当たりの熱の伝達量を制御する、ガスエンジン駆動式空気調和装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスエンジン駆動式空気調和装置において、
前記制御装置は、前記冷房メイン運転又は前記暖房メイン運転を実行する際、前記低圧相当温度の現在値と前記低圧相当温度の目標値との差に基づいて、前記廃熱回収熱交換器による前記冷媒への単位時間当たりの熱の伝達量を制御する、ガスエンジン駆動式空気調和装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガスエンジン駆動式空気調和装置において、
前記ガスエンジンは冷却液を用いて冷却され、
前記廃熱回収熱交換器は、前記ガスエンジンの冷却液が流通する第1流路と前記冷媒が流通する第2流路を備え、前記第1流路を流通する前記冷却液の熱を、前記第2流路を流通する冷媒に伝達し、
前記制御装置は、前記低圧相当温度の現在値及び前記低圧相当温度の目標値に基づいて、前記第2流路への前記冷媒の流量を制御する、ガスエンジン駆動式空気調和装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスエンジン駆動式空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に記載されているように、1台の室外機及び複数台の室内機に冷媒を循環させて室内空気の温度を調整するガスエンジン駆動式空気調和装置は知られている。各室内機は、室内空気と冷媒との間で熱伝達を生じさせるための室内熱交換器を備える。室外機は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、室外空気と冷媒との間で熱伝達を生じさせるための室外熱交換器、冷媒の流れを制御するための各種弁を備える。
【0003】
ここで、一般に、空気調和装置(室内機)を冷房装置として運転する場合、圧縮機の吸入口側における冷媒の圧力又は飽和温度が比較的低いことが好ましい。一方、空気調和装置(室内機)を暖房装置として運転する場合、圧縮機の吐出口側における冷媒の圧力又は飽和温度が比較的高いことが好ましい。そこで、冷房運転時には、圧縮機の吸入口側における冷媒の圧力又は飽和温度の目標値が比較的低く設定される。そして、圧縮機の吸入口側における冷媒の圧力又は飽和温度の現在値が目標値に近づくように、圧縮機の回転数、各種弁の開度などが制御される。一方、暖房運転時には、圧縮機の吐出口側における冷媒の圧力又は飽和温度の目標値が比較的高く設定される。そして、圧縮機の吐出口側における冷媒の圧力又は飽和温度の現在値が目標値に近づくように、圧縮機の回転数、各種弁の開度などが制御される。
【0004】
特許文献1のガスエンジン駆動式空気調和装置は、前記複数の室内機のうちのいくつかの室内機を冷房装置として運転するとともに、他のいくつかの室内機を暖房装置として運転可能に構成されている。この場合、冷房室内及び暖房室内の快適性を保つため、圧縮機の吸入口側における冷媒の圧力又は飽和温度の目標値が比較的低く設定されるとともに、圧縮機の吐出口側における冷媒の圧力又は飽和温度の目標値が比較的高く設定される。すなわち、この場合、圧縮機の吸入口側の圧力と吐出口側の圧力との差を比較的大きく保つ必要がある。よって、圧縮機の負荷が比較的高い。
【0005】
また、特許文献1のガスエンジン駆動式空気調和装置は、圧縮機の吸入口側を流れる冷媒に、ガスエンジンの廃熱を伝達するためのサブ熱交換器を備える。これにより、冷媒の圧力又は飽和温度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007‐127369号公報
【発明の概要】
【0007】
ここで、上記のような冷房運転及び暖房運転を同時に実施している状態にて、圧縮機の吐出口側における冷媒の圧力又は飽和温度の現在値が目標値より低い場合、暖房室内の快適性が損なわれる虞がある。この場合、サブ熱交換器を用いて、吸入口側における冷媒の圧力又は飽和温度を高めることにより、圧縮機の負荷をそれほど高めることなく、吐出口側における冷媒の圧力又は飽和温度の現在値を目標値に近づけることができる。これにより、暖房室内の快適性を向上させることができる。また、圧縮機の吐出口側における冷媒の圧力又は飽和温度の現在値が目標値と同等である場合に、サブ熱交換器を用いて吸入口側における冷媒の圧力又は飽和温度を高めれば、吸入口側における冷媒の圧力と吐出口側における冷媒の圧力との差が小さくなり、圧縮機の負荷を軽減することができる。しかし、これらの場合、圧縮機の吸入口側における冷媒の圧力又は飽和温度も上昇するため、冷房室内の快適性が損なわれる虞がある。
【0008】
本発明は、1台又は複数台の室外機と複数台の室内機とを備え、冷房室内及び暖房室内を快適に保ちつつ、冷媒を圧縮する圧縮機の負荷を軽減できるガスエンジン駆動式空気調和装置を提供することを目的とする。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、1台又は複数台の室外機(10)及び複数台の室内機(20A,20B,・・・)に冷媒を循環させて室内空気の温度を調整するガスエンジン駆動式空気調和装置(1)であって、前記冷媒を吸入するとともに圧縮して吐出する圧縮機(11)と、前記圧縮機を駆動するガスエンジン(12)と、前記冷媒と室外空気との間に熱伝達を生じさせる室外熱交換器(15)と、前記ガスエンジンの廃熱を、前記圧縮機の吸入口側を流れる冷媒に伝達させる廃熱回収熱交換器(1a)と、前記冷媒と前記室内空気との間に熱伝達を生じさせる複数の室内熱交換器(21)と、前記冷媒の流れをそれぞれ制御する複数の弁(16,22,23a,23b,1b)と、前記圧縮機の吸入口側における前記冷媒に関する物理量を表す低圧側物理量の現在値(TPLP)が所定の低圧側物理量の目標値(TTLP)に一致し、且つ前記圧縮機の吐出口側における前記冷媒に関する物理量を表す高圧側物理量の現在値(TPHP)が所定の高圧側物理量の目標値(TTHP)にそれぞれ一致するように前記複数の弁の開度及び前記ガスエンジンの回転数を制御する制御装置(CT)と、を備え、前記制御装置は、前記複数の室内機のうち冷房装置として運転する室内機の数が暖房装置として運転する室内機の数よりも多い冷房メイン運転を実行する場合に、前記低圧側物理量としての低圧相当温度の目標値を、すべての前記室内機を冷房装置として運転する場合の前記低圧相当温度の目標値よりも高く設定し、前記複数の室内機のうち暖房装置として運転する室内機の数が冷房装置として運転する室内機の数よりも多い暖房メイン運転を実行する場合に、前記低圧相当温度の目標値を、前記冷房メイン運転を実行する場合の前記低圧相当温度の目標値よりも高く設定し、前記低圧相当温度の現在値及び前記低圧相当温度の目標値に基づいて、前記廃熱回収熱交換器による前記冷媒への単位時間当たりの熱の伝達量を制御する、ガスエンジン駆動式空気調和装置としたことにある。
【0010】
この場合、前記制御装置は、前記冷房メイン運転又は前記暖房メイン運転を実行する際、前記低圧相当温度の現在値と前記低圧相当温度の目標値との差に基づいて、前記廃熱回収熱交換器による前記冷媒への単位時間当たりの熱の伝達量を制御するとよい。
【0012】
また、この場合、前記ガスエンジンは冷却液を用いて冷却され、前記廃熱回収熱交換器は、前記ガスエンジンの冷却液が流通する第1流路(W)と前記冷媒が流通する第2流路(R)を備え、前記第1流路を流通する前記冷却液の熱を、前記第2流路を流通する冷媒に伝達し、前記制御装置は、前記低圧相当温度の現在値及び前記低圧相当温度の目標値に基づいて、前記第2流路への前記冷媒の流量を制御するとよい。
【0013】
上記のように、本発明に係るガスエンジン駆動式空気調和装置は、冷房運転と暖房運転を同時に実施する際、低圧側物理量の目標値を補正できる。例えば、冷房室側の快適性が損なわれない程度に低圧側物理量(圧縮機の吸入口側における冷媒の圧力、飽和温度など)が補正される。これにより、廃熱回収熱交換器による冷却液から冷媒への熱伝達が許容される。つまり、圧縮機の吸入口側の冷媒の圧力を少し(冷房室内の快適性が損なわれない程度に)上昇させることが許容される。そして、高圧側物理量の現在値及び低圧側物理量の現在値が、高圧側物理量の目標値及び前記補正された低圧側物理量の目標値に一致するように、ガスエンジン及び各種弁が制御されるとともに、前記冷媒の物理量に関する各値に基づいて廃熱回収熱交換器による冷却液から冷媒への熱の伝達量が制御される。これにより、冷房室内及び暖房室内を快適に保ちつつ、ガスエンジンの回転数を少し減少させて圧縮機の負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るガスエンジン駆動式空気調和装置の概略構成を示す回路図であり、全冷房運転における冷媒の流れを示す回路図である。
図2】全暖房運転における冷媒の流れを示す回路図である。
図3】冷房メイン運転における冷媒の流れを示す回路図である。
図4】冷房メイン運転におけるサブ熱交換器弁の開閉処理を示すフローチャートである。
図5】高圧相当温度差と弁開度の補正値との関係を規定したデータベースである。
図6】低圧相当温度差と弁開度の補正値との関係を規定したデータベースである。
図7】暖房メイン運転における冷媒の流れを示す回路図である。
図8】暖房メイン運転におけるサブ熱交換器弁の開閉処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るガスエンジン駆動式空気調和装置1について説明する。ガスエンジン駆動式空気調和装置1は、図1に示すように、1台の室外機10と複数台の室内機(室内機20A,20B,・・・)とを備える。また、ガスエンジン駆動式空気調和装置1は、室外機10、室内機20A,20B,・・・を循環する冷媒の流路としての冷媒管30を備える。つまり、室外機10、室内機20A、室内機20B,・・・の各構成部品が、冷媒管30を構成する複数の管で接続されている。また、ガスエンジン駆動式空気調和装置1は、室外機10、室内機20A、室内機20B,・・・を制御する制御装置CTを備える。ガスエンジン駆動式空気調和装置1は、いくつかの室内機(例えば室内機20A)を暖房装置として運転と同時に、他のいくつかの室内機(例えば、室内機20B)を冷房装置として運転することができるように構成されている。室外機10、室内機20A,20B,・・・を構成する各装置は周知の空気調和装置を構成する各装置と同様である。以下、室外機10、室内機20A,20B,・・・の構成について簡単に説明しておく。
【0016】
室外機10は、圧縮機11、ガスエンジン12、オイルセパレーター13、四方切替弁14、室外熱交換器15、膨張弁16、レシーバー17、ブリッジバルブ18、過冷却コイル19、サブ熱交換器1a、サブ熱交換器弁1b、アキュムレーター1c及び逆止弁1dを備える。本実施形態では、圧縮機11として、スクロール式圧縮機を採用している。圧縮機11は吸入口及び吐出口を有する。圧縮機11は、吸入口から低圧ガス状の冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮して吐出口から吐出する。圧縮機11とガスエンジン12の回転駆動軸が図示しないクラッチ装置、駆動ベルトなどを介して接続されている。ガスエンジン12の回転駆動力が圧縮機11に伝達されて、圧縮機11が駆動される。ガスエンジン12の本体部には、冷却水の循環経路(パイプ又は孔)が設けられている。この冷却水の循環経路が、後述するサブ熱交換器1aへ延びており、冷却水がサブ熱交換器1aへ導かれる。オイルセパレーター13は、圧縮機11から吐出された冷媒に含まれる圧縮機用潤滑油を分離して貯留し、冷媒のみを吐出する。
【0017】
四方切替弁14は4個のポートP1~P4を有する。四方切替弁14は、ポートP1とポートP4とが連通し、且つポートP2とポートP3とが連通した第1の状態(図1参照)と、ポートP1とポートP2とが連通し、且つポートP3とポートP4とが連通した第2の状態(図2参照)とを切り替え可能である。
【0018】
室外熱交換器15は、フィンを備えた複数のパイプから構成される。室外熱交換器15は、ポート15a及びポート15bを備える。一方のポート15a(15b)に導入された冷媒が前記複数のパイプを通って他方のポート15b(15a)から吐出される。
【0019】
膨張弁16は、冷媒を減圧させる。レシーバー17は、液化した冷媒を一時的に貯留する。
【0020】
ブリッジバルブ18は、逆止弁181,182,183、184から構成されている。逆止弁181の出力ポートと逆止弁182の出力ポートとが連通している。逆止弁183の入力ポートと逆止弁184の入力ポートとが連通している。逆止弁181の入力ポートと逆止弁183の出力ポートとが連通している。また、逆止弁182の入力ポートと逆止弁184の出力ポートとが連通している。
【0021】
過冷却コイル19は、本体部191と過冷却調整弁192を備える。本体部191は、冷媒が流通する2つの流路191a,191bを備える。流路191aの一端と流路191bの一端との間に過冷却調整弁192が設けられている。流路191aを流通した冷媒の一部が過冷却調整弁192を通過して他方の流路191bを流通する。これにより、流路191aを流通する冷媒の過冷却度が高められる。
【0022】
サブ熱交換器1aは、ガスエンジン12の廃熱を回収し、圧縮機11の吸入口側を流れる冷媒に、前記回収した熱を伝達させる。本実施形態では、サブ熱交換器1aとして、プレート式熱交換器を採用している。すなわち、サブ熱交換器1aは、ガスエンジン12を冷却する冷却水の流路Wと、冷媒の流路Rとを備える。サブ熱交換器1aは、流路Wを流れる冷却水の熱を、流路Rを流れる冷媒に伝達させる。なお、サブ熱交換器1aは、本発明の廃熱回収熱交換器に相当する。
【0023】
サブ熱交換器弁1bは、サブ熱交換器1aの流路Rへの冷媒の流量を調整する。本実施形態では、サブ熱交換器弁1bとして、電子制御型弁を採用している。つまり。サブ熱交換器弁1bは、入力ポート及び出力ポートを備えたハウジング部と、前記ハウジング部内に配置された弁体と、前記弁体を駆動するステッピングモーターを備える。なお、弁体とステッピングモーターの主軸とが減速機を介して接続されている。
【0024】
ステッピングモーターが後述する制御装置CTによって制御されて、サブ熱交換器弁1bの弁開度(0%~100%)が任意の値に設定される。すなわち、ステッピングモーターに駆動パルスが供給され、その駆動パルスの数に応じて弁開度が変化する。例えば、1個の駆動パルスの対応する弁開度の変化量は1%である。つまり、サブ熱交換器弁1bが完全に閉じた状態(弁開度=「0%」)から正転方向への回動を表す100個の駆動パルスがステッピングモーターへ供給されると、サブ熱交換器弁1bが完全に開く(弁開度=「100%」)。サブ熱交換器弁1bが完全に開いた状態(弁開度=「100%」)から逆転方向への回動を表す100個の駆動パルスがステッピングモーターへ供給されると、サブ熱交換器弁1bが完全に閉じる(弁開度=「0%」)。
【0025】
以下の説明において、サブ熱交換器弁1bの所定の基準状態からステッピングモーターに供給された駆動パルス数の積算値を弁開値VP(図4参照)と呼ぶ。本実施形態では、弁開度が「0%」である状態の弁開値VPを「0」とする。また、ステッピングモーターを正転させる駆動パルスの数(補正値ΔVP(図5及び図6参照))を正値で表し、ステッピングモーターを逆転させる駆動パルスの数(補正値ΔVP)を負値で表す。言い換えれば、ステッピングモーターを正転させる駆動パルスの数を現在の弁開値VPに加算し、ステッピングモーターを逆転させる駆動パルスの数を現在の弁開値VPから減算(負値を加算)する。上記のように設定された弁開値VPは、弁開度に対応(比例)している。
【0026】
例えば、「現在の弁開値VPが「50」である」とは、サブ熱交換器弁1bの弁開度が「50%」であることを意味する。つまり、このとき、サブ熱交換器弁1bが半開状態である。この状態から、弁開値を「10」だけ増加させる(補正値ΔVP=「+10」)と、ステッピングモーターの主軸が正転方向へ回動し、サブ熱交換器弁1bの弁開度が現在より10%だけ大きくなる。また、弁開値を「10」だけ減少させる(補正値ΔVP=「-10」)と、ステッピングモーターの主軸が逆転方向へ回動し、サブ熱交換器弁1bの弁開度が現在より10%だけ小さくなる。サブ熱交換器弁1bの弁開度が大きいほど、サブ熱交換器1aの流路Rへの冷媒の流入量が多い。そのため、サブ熱交換器弁1bの弁開度が大きいほど、冷却水から冷媒への単位時間当たりの熱の伝達量が大きい。
【0027】
アキュムレーター1cは、液状の冷媒とガス状の冷媒とを分離する。逆止弁1dは、冷媒の所定の方向への流れを許容し、反対方向への流れを禁止する。
【0028】
つぎに、室内機20の構成について説明する。室内機20A,20B,・・・の構成は同一である。室内機20A,20B,・・・は、室内熱交換器21、膨張弁22及び分流装置23をそれぞれ備える。室内熱交換器21は、フィンを備えた複数のパイプから構成される。室内熱交換器21は、ポート21a及びポート21bを備える。一方のポート21a(21b)に導入された冷媒が前記複数のパイプを通って他方のポート21b(21a)から吐出される。膨張弁22は、冷媒を減圧させる。分流装置23は、2つの開閉弁23a,23bを備える。
【0029】
つぎに、ガスエンジン駆動式空気調和装置1の各構成部品の接続関係について説明する。圧縮機11の吐出口と四方切替弁14のポートP1とがオイルセパレーター13を介して接続されている(図1参照)。四方切替弁14のポートP4と室外熱交換器15のポート15aとが接続されている。四方切替弁14のポートP3と逆止弁1dの入力ポートとが接続されている。逆止弁1dの出力ポートとアキュムレーター1cの入力ポートとが接続されている。アキュムレーター1cの出力ポートと圧縮機11の吸入口とが接続されている。なお、四方切替弁14のポートP2は閉鎖されている。
【0030】
また、室外熱交換器15のポート15b(四方切替弁14とは反対側)と逆止弁181の入力ポート(逆止弁183の出力ポート)とが、膨張弁16を介して接続されている。逆止弁181の出力ポート(逆止弁182の出力ポート)とレシーバー17の入力ポートとが接続されている。レシーバー17の出力ポートと過冷却コイル19の流路191aとが接続されている。流路191aと流路191bとが過冷却調整弁192を介して接続されている。流路191bとアキュムレーター1cの入力ポートとが接続されている。流路191aと逆止弁183(逆止弁184)の入力ポートとが接続されるとともに、流路191aとサブ熱交換器1aの流路Rとがサブ熱交換器弁1bを介して接続されている。流路Rとアキュムレーター1cの入力ポートとが接続されている。また、逆止弁184の出力ポート(逆止弁183の入力ポート)と各室内熱交換器21のポート21aとが、膨張弁22を介して接続されている。
【0031】
また、各室内熱交換器21のポート21bが、開閉弁23aを介して、四方切替弁14とオイルセパレーター13との中間点(分岐点30a)に接続されている。また、各室内熱交換器21のポート21bが開閉弁23bを介して、逆止弁1dとアキュムレーター1cとの中間点(分岐点30b)に接続されている。
【0032】
ここで、冷媒管30のうち、液状の冷媒が流通する部分を液管31と呼ぶ。また、冷媒管30のうち、高圧ガス状の冷媒が流通する部分を高圧ガス管32と呼び、低圧ガス状の冷媒が流通する部分を低圧ガス管33と呼ぶ。
【0033】
液管31、高圧ガス管32及び低圧ガス管33の中間部のうちの室外機10側の部分と、室内機20A,20B,・・・側の部分とが、ボールバルブ41,42,43を介して接続されている。具体的には、ボールバルブ41は、ブリッジバルブ18と膨張弁22との間に設けられている。また、ボールバルブ42は、分岐点30aと開閉弁23aとの間に設けられている。また、ボールバルブ43は、分岐点30bと開閉弁23bとの間に設けられている。
【0034】
また、ガスエンジン駆動式空気調和装置1は、各部の温度、圧力などをそれぞれ検出する複数のセンサを備える。例えば、ガスエンジン駆動式空気調和装置1は、圧縮機11の吸入口における冷媒の圧力を検出する低圧センサ51及び圧縮機11の吐出口における冷媒の圧力を検出する高圧センサ52を備える。
【0035】
制御装置CTは、演算装置、メモリ、タイマーなどからなるマイクロコンピュータを備える。制御装置CTは、ユーザーが、各室内機の空調モード(冷房モード又は暖房モード)、目標の室温、風量などを設定する際に用いるスイッチ、表示装置などを備えた操作パネルを含む。これらの設定情報は、制御装置CTのマイクロコンピュータに入力される。制御装置CTは、上記の設定情報、各種センサから取得した圧力情報及び温度情報に基づいて、室外機10及び室内機20A,20B,・・・を制御する。
【0036】
つぎに、冷媒の流れについて説明する。なお、図1乃至図3及び図7における弁のうち、黒く塗りつぶした弁が閉じられている。
【0037】
まず、すべての室内機(室内機20A,20B,・・・)を冷房装置として運転する運転状態(全冷房運転)における冷媒の流れについて図1を用いて説明する。この場合、同図に矢印で示すように、圧縮機11から吐出された冷媒は、オイルセパレーター13、四方切替弁14を経由して室外熱交換器15に導入される。室外熱交換器15に導入された高圧ガス状の冷媒は室外熱交換器15内を流通する間に外気に熱を放出して凝縮する。
【0038】
外気に熱を放出して凝縮した冷媒が室外熱交換器15から排出される。そして、膨張弁16で膨張することにより低圧化され、ブリッジバルブ18、レシーバー17.過冷却コイル19及び液管31をこの順に経由して、各室内機の室内熱交換器21に導入される。室内熱交換器21に導入された冷媒は室内熱交換器21内を流通する間に室内空気の熱を奪って蒸発する。このとき冷媒が室内空気の熱を奪うことによって室内空気が冷やされる。
【0039】
室内空気の熱を奪って蒸発した冷媒は室内熱交換器21から排出され、低圧ガス管33を経由して、アキュムレーター1cに導入される。そして、低圧ガス状の冷媒が圧縮機11の吸入口に帰還する。なお、全冷房運転では、制御装置CTは、サブ熱交換器弁1bを完全に閉じる。
【0040】
上記の全冷房運転において、制御装置CTは、低圧センサ51を用いて、圧縮機11の吸入口側における冷媒の圧力を検出し、前記検出した圧力に相当する冷媒の飽和温度を表す低圧相当温度の現在値TPLPを計算する。そして、制御装置CTは、前記計算した低圧相当温度の現在値TPLPが所定の目標値TTLP(例えば5℃)に一致するように、ガスエンジン12の回転数及び各種弁の開度を制御する。なお、全冷房運転では、高圧相当温度の現在値TPHPを高く保持する必要はない。また、低圧相当温度は本発明の低圧側物理量に相当し、高圧相当温度は、本発明の高圧側物理量に相当する。
【0041】
つぎに、すべての室内機(室内機20A,20B,・・・)を暖房装置として運転する運転状態(全暖房運転)における冷媒の流れについて図2を用いて説明する。圧縮機11から吐出された高圧ガス状の冷媒は、オイルセパレーター13に導入される。オイルセパレーター13から吐出された冷媒が、高圧ガス管32に導入される。高圧ガス管32に導入された冷媒は、各室内機の室内熱交換器21に導入される。室内熱交換器21に導入された高圧ガス状の冷媒は室内熱交換器21内を流通する間に室内空気に熱を放出して凝縮する。このとき冷媒から放出された熱によって室内空気が暖められる。室内空気に熱を放出して凝縮した冷媒は室内熱交換器21から排出され、液管31、ブリッジバルブ18、レシーバー17、過冷却コイル19、室外熱交換器15、逆止弁1dをこの順に経由して、アキュムレーター1cに導入される。そして、低圧ガス状の冷媒が圧縮機11の吸入口に帰還する。
【0042】
上記の全暖房運転において、制御装置CTは、高圧センサ52を用いて、圧縮機11の吐出口側における冷媒の圧力を検出し、前記検出した圧力に相当する冷媒の飽和温度を表す高圧相当温度の現在値TPHPを計算する。そして、制御装置CTは、前記計算した高圧相当温度の現在値TPHPが所定の目標値TTHP(例えば50℃)に一致するように、ガスエンジン12の回転数及び各種弁の開度を制御する。なお、全暖房運転では、低圧相当温度の現在値TPLPを低く保持する必要はない。そこで、制御装置CTは、サブ熱交換器弁1bを開き、過冷却コイル19から排出された冷媒がサブ熱交換器1aへ導入されるように設定する。例えば、サブ熱交換器弁1bの弁開値VPを「100」に設定する。つまり、サブ熱交換器弁1bを全開する。これにより、サブ熱交換器1aにて、ガスエンジン12の廃熱が冷媒に伝達され、低圧相当温度の現在値TPLPが上昇する。つまり、高圧相当温度の目標値TTHPと低圧相当温度の現在値TPLPとの差が小さくなる。したがって、ガスエンジン12の回転数を少し減少させて、圧縮機11の負荷を軽減できる。
【0043】
つぎに、室内機20A,20B.・・・のうち、暖房装置として運転する室内機に比べて、冷房装置として運転する室内機の方が多い運転状態(冷房メイン運転)における冷媒の流れについて図3を用いて説明する。図3は、室内機20Aを暖房装置として運転するとともに、室内機20Bを冷房装置として運転する例を示している。その他の室内機のうち、いくつかの室内機を冷房装置として運転し、いくつかの室内機を暖房装置として運転している。この場合、四方切替弁14が第1の状態に設定される。また、室外熱交換器15は、凝縮器として機能する。また、暖房装置として運転する室内機20Aの開閉弁23aが開放され、且つ開閉弁23bが閉鎖される。暖房装置として運転する他の室内機の開閉弁23a,23bも、室内機20Aと同様に設定される。一方、冷房装置として運転する室内機20Bの開閉弁23aが閉鎖され、且つ開閉弁23bが開放される。冷房装置として運転する他の室内機の開閉弁23a,23bも、室内機20Bと同様に設定される。
【0044】
圧縮機11から吐出された高圧ガス状の冷媒は、オイルセパレーター13に導入される。オイルセパレーター13から吐出された冷媒が、高圧ガス管32及び四方切替弁14に導入される。高圧ガス管32に導入された冷媒は、暖房装置としての室内機(例えば室内機20A)の室内熱交換器21に導入される。室内熱交換器21に導入された高圧ガス状の冷媒は室内熱交換器21内を流通する間に室内空気に熱を放出して凝縮する。このとき冷媒から放出された熱によって室内空気が暖められる。室内空気に熱を放出して凝縮した冷媒は室内熱交換器21から排出され、冷房装置としての室内機(例えば室内機20B)の室内熱交換器21に導入される。
【0045】
一方、オイルセパレーター13から吐出されて四方切替弁14に導入された冷媒が室外熱交換器15に導入される。室外熱交換器15に導入された高圧ガス状の冷媒は室外熱交換器15内を流通する間に外気に熱を放出して凝縮する。
【0046】
外気に熱を放出して凝縮した冷媒が室外熱交換器15から排出される。そして、膨張弁16で膨張することにより低圧化され、ブリッジバルブ18、レシーバー17.過冷却コイル19及び液管31をこの順に経由して、冷房装置としての室内機(例えば室内機20B)の室内熱交換器21に導入される。なお、上述した暖房装置としての室内機(例えば室内機20A)から排出された冷媒も、冷房装置としての室内機(例えば室内機20B)の室内熱交換器21に導入される。室内熱交換器21に導入された冷媒は室内熱交換器21内を流通する間に室内空気の熱を奪って蒸発する。このとき冷媒が室内空気の熱を奪うことによって室内空気が冷やされる。
【0047】
室内空気の熱を奪って蒸発した冷媒は室内熱交換器21から排出され、低圧ガス管33を経由して、アキュムレーター1cに導入される。そして、低圧ガス状の冷媒が圧縮機11の吸入口に帰還する。
【0048】
上記の冷房メイン運転において、制御装置CTは、低圧センサ51を用いて、圧縮機11の吸入口側における冷媒の圧力を検出するとともに高圧センサ52を用いて、圧縮機11の吐出口側における冷媒の圧力を検出する。制御装置CTは、前記検出した圧力に基づいて低圧相当温度の現在値TPLP及び高圧相当温度の現在値TPHPを計算する。冷房メイン運転では、冷房室内の快適性を保持するとともに暖房室内の快適性を保持しつつ、圧縮機11の負荷をできるだけ軽減することが好ましい。
【0049】
そこで、制御装置CTは、詳しくは後述するように、低圧相当温度の目標値TTLPを少し高く補正するとともに、高圧相当温度の現在値TPHP及び低圧相当温度の現在値TPLPが所定の目標値TTHP及び前記補正された目標値TTLPにそれぞれ一致するように、ガスエンジン12の回転数及び各種弁の開度を制御する。前記弁の開度の制御の1つとして、制御装置CTは、図4に示すサブ熱交換器弁開閉処理を実行する。つまり、制御装置CTは、サブ熱交換器弁1bの弁開値VPの制御を、冷房メイン運転用のサブ熱交換器弁開閉プログラムに従って実行すると同時に、ガスエンジン12の回転数の制御及びサブ熱交換器弁1b以外の各種弁の制御を、図示しない各種プログラムに従って実行する。
【0050】
制御装置CTは、冷房メイン運転用のサブ熱交換器弁制御プログラムをメモリから読み出して、ステップS10にてサブ熱交換器弁開閉処理を開始する。つぎに、制御装置CTは、ステップS11にて、サブ熱交換器弁1bの弁開値VPを初期化する。例えば、弁開値VPを「0」に設定する。つぎに、制御装置CTは、ステップS12にて、低圧相当温度の目標値TTLPを補正する。具体的には、制御装置CTは、所定の低圧相当温度の目標値TTLP(例えば5℃)に補正値A(例えば3℃)を加算する。なお、高圧相当温度の目標値TTHPは、全暖房運転と同一であり、例えば50℃である。つぎに、制御装置CTは、ステップS13にて、高圧センサ52を用いて、圧縮機11の吐出口側における冷媒の圧力を検出し、その検出結果に基づいて、高圧相当温度の現在値TPHPを計算する。つぎに、制御装置CTは、ステップS14にて、低圧センサ51を用いて、圧縮機11の吸入口側における冷媒の圧力を検出し、その検出結果に基づいて、低圧相当温度の現在値TPLPを計算する。つぎに、制御装置CTは、ステップS15にて、高圧相当温度の現在値TPHPと目標値TTHPとの差を表す高圧相当温度差ΔTHP(=TPHP-TTHP)を計算する。つぎに、制御装置CTは、ステップS16にて、低圧相当温度の現在値TPLPと前記補正された目標値TTLPとの差を表す低圧相当温度差ΔTLP(=TPLP-TTLP)を計算する。つぎに、制御装置CTは、ステップS17にて、図5及び図6に示すデータベースに従って、弁開値VPの補正値ΔVPを設定する。具体的には、高圧相当温度差ΔTHPが「-1℃」以上であるときには、補正値ΔVPを「-10」に設定する。すなわち、制御装置CTは、サブ熱交換器弁1bを少し閉じるように設定する。また、高圧相当温度差ΔTHPが「-3℃」以上且つ「-1℃」より小さいときには、補正値ΔVPを「0」に設定する。すなわち、この場合、弁開値VPを補正しない。また、高圧相当温度差ΔTHPが「-3℃」より小さいときには、図6に示すデータベースに従って補正値ΔVPを設定する。すなわち、低圧相当温度差ΔTLPが「5℃」以上であるときには、補正値ΔVPを「-25」に設定する。すなわち、制御装置CTは、サブ熱交換器弁1bを比較的大幅に閉じるように設定する。また、低圧相当温度差ΔTLPが「1℃」以上且つ「5℃」より小さいときには、補正値ΔVPを「-10」に設定する。すなわち、この場合も、制御装置CTは、サブ熱交換器弁1bを少し閉じるように設定する。また、低圧相当温度差ΔTLPが「-1℃」以上且つ「1℃」より小さいときには、補正値ΔVPを「0」に設定する。また、低圧相当温度差ΔTLPが「-5℃」以上且つ「-1℃」より小さいときには、補正値ΔVPを「+10」に設定する。すなわち、制御装置CTは、サブ熱交換器弁1bを少し開くように設定する。また、低圧相当温度差ΔTLPが「-5℃」より小さいときには、補正値ΔVPを「+25」に設定する。すなわち、制御装置CTは、サブ熱交換器弁1bを比較的大幅に開くように設定する。
【0051】
つぎに、制御装置CTは、ステップS17にて、前記設定した補正値ΔVPに基づいてサブ熱交換器弁1bのステッピングモーターを駆動する。すなわち、制御装置CTは、補正値ΔVPと同数の駆動パルスをステッピングモーターへ供給する。
【0052】
なお、上記のように、制御装置CTは、サブ熱交換器弁1bの制御と同時にガスエンジン12の回転数の制御も実行している。高圧相当温度の現在値TPHPが目標値TTHPよりも少し低い場合(高圧相当温度差ΔTHPが「-1℃」以上且つ「0℃」以下)には、制御装置CTは、ガスエンジン12の回転数を少し増大させ、高圧相当温度の現在値TPHPを上昇させる。この制御により高圧相当温度の現在値TPHPが目標値TTHPを大きく超過してしまわないように、高圧相当温度の現在値TPHPが目標値TTHPよりも少し低い場合であっても、補正値ΔVPを負値に設定して、サブ熱交換器弁1bが少し閉じられるように設定している。
【0053】
つぎに、制御装置CTは、ステップS12に処理を進め、以降、ステップS12~S18からなる一連の処理を繰り返す。
【0054】
つぎに、室内機20A,20B・・・のうち、冷房装置として運転する室内機に比べて、暖房装置として運転する室内機の方が多い運転状態(暖房メイン運転)における冷媒の流れについて図5を用いて説明する。図7は、室内機20Aを暖房装置として運転するとともに、室内機20Bを冷房装置として運転する例を示している。その他の室内機のうち、いくつかの室内機を冷房装置として運転し、いくつかの室内機を暖房装置として運転している。この場合、四方切替弁14が第2の状態に設定される。また、室外熱交換器15は、蒸発器として機能する。また、暖房装置として運転する室内機20Aの開閉弁23aが開放され、且つ開閉弁23bが閉鎖される。暖房装置として運転する他の室内機の開閉弁23a,23bも、室内機20Aと同様に設定される。一方、冷房装置として運転する室内機20Bの開閉弁23aが閉鎖され、且つ開閉弁23bが開放される。冷房装置として運転する他の室内機の開閉弁23a,23bも、室内機20Bと同様に設定される。
【0055】
圧縮機11から吐出された高圧ガス状の冷媒は、オイルセパレーター13に導入される。四方切替弁14のポートP2は閉鎖されているので、オイルセパレーター13から吐出された冷媒は高圧ガス管32に導入される。高圧ガス管32に導入された冷媒は、暖房装置としての室内機(例えば室内機20A)の室内熱交換器21に導入される。室内熱交換器21に導入された高圧ガス状の冷媒は室内熱交換器21内を流通する間に室内空気に熱を放出して凝縮する。このとき冷媒から放出された熱によって室内空気が暖められる。室内空気に熱を放出して凝縮した冷媒は室内熱交換器21から排出され、冷房装置としての室内機(例えば室内機20B)の室内熱交換器21に導入されるとともに、液管31を経由して室外機10のブリッジバルブ18に導入される。
【0056】
室内熱交換器21に導入された冷媒は室内熱交換器21内を流通する間に室内空気の熱を奪って蒸発する。このとき冷媒が室内空気の熱を奪うことによって室内空気が冷やされる。
【0057】
室内空気の熱を奪って蒸発した冷媒は室内熱交換器21から排出され、低圧ガス管33を経由して、アキュムレーター1cに導入される。そして、低圧ガス状の冷媒が圧縮機11の吸入口に帰還する。
【0058】
一方、暖房装置としての室内機(例えば室内機20A)の室内熱交換器21からブリッジバルブ18に導入された冷媒は、レシーバー17、過冷却コイル19、室外熱交換器15、逆止弁1dをこの順に経由して、アキュムレーター1cに導入される。そして、低圧ガス状の冷媒が圧縮機11の吸入口に帰還する。
【0059】
上記の暖房メイン運転においても、冷房メイン運転と同様に、冷房室内の快適性を保持するとともに暖房室内の快適性を保持しつつ、圧縮機11の負荷をできるだけ軽減することが好ましい。
【0060】
そこで、制御装置CTは、冷房メイン運転と同様に、低圧相当温度の目標値TTLPを少し高く補正するとともに、高圧相当温度の現在値TPHP及び低圧相当温度の現在値TPLPが目標値TTHP及び前記補正された目標値TTLPにそれぞれ一致するように、ガスエンジン12の回転数及び各種弁の開度を制御する。なお、高圧相当温度の目標値TTHPは補正されない。前記各種弁の開度の制御の1つとして、制御装置CTは、図8に示すサブ熱交換器弁開閉処理を実行する。つまり、制御装置CTは、サブ熱交換器弁1bの弁開値VPの制御を、暖房メイン運転用のサブ熱交換器弁開閉プログラムに従って実行すると同時に、ガスエンジン12の回転数の制御及びサブ熱交換器弁1b以外の各種弁の制御を、図示しない各種プログラムに従って実行する。
【0061】
制御装置CTは、暖房メイン運転用のサブ熱交換器弁開閉プログラムをメモリから読み出して、ステップS20にてサブ熱交換器弁開閉処理を開始する。つぎに、制御装置CTは、ステップS21にて、サブ熱交換器弁1bの弁開値VPを初期化する。例えば、弁開値VPを「0」に設定する。つぎに、制御装置CTは、ステップS22にて、低圧相当温度の目標値TTLPを補正する。具体的には、制御装置CTは、所定の低圧相当温度の目標値TTLP(例えば5℃)に補正値A(例えば5℃)を加算する。なお、高圧相当温度の目標値TTHPは、全暖房運転と同一であり、例えば50℃である。また、暖房メイン運転における補正値Aは、冷房メイン運転における補正値Aよりも少し大きく設定される。つぎに、制御装置CTは、ステップS23にて、低圧センサ51を用いて、圧縮機11の吸入口側における冷媒の圧力を検出し、その検出結果に基づいて、低圧相当温度の現在値TPLPを計算する。つぎに、制御装置CTは、ステップS24にて、低圧相当温度の現在値TPLPと前記補正された目標値TTLPとの差を表す低圧相当温度差ΔTLP(=TPLP-TTLP)を計算する。つぎに、制御装置CTは、ステップS25にて、図6に示すデータベースに従って、サブ熱交換器弁1bの弁開値VPの補正値ΔVPを設定する。つぎに、制御装置CTは、ステップS26にて、前記設定した補正値ΔVPに基づいてサブ熱交換器弁1bのステッピングモーターを駆動する。すなわち、制御装置CTは、補正値ΔVPと同数のパルスをステッピングモーターへ供給する。
【0062】
つぎに、制御装置CTは、ステップS22に処理を進め、以降、ステップS22~S26からなる一連の処理を繰り返す。
【0063】
上記のように、冷房メイン運転及び暖房メイン運転において、低圧相当温度の目標値TTLPが補正される。低圧相当温度の目標値TTLPが補正されることにより、サブ熱交換器1aによる冷却水から冷媒への熱伝達が許容される。つまり、圧縮機11の吸入口側の冷媒の圧力を少し(冷房室内の快適性が損なわれない程度に)上昇させることが許容される。そして、高圧相当温度の現在値TPHP及び低圧相当温度の現在値TPLPが、高圧相当温度の目標値TTHP及び前記補正された低圧相当温度の目標値TTLPに一致するように、ガスエンジン12及びサブ熱交換器弁1bを含む各種弁が制御される。これにより、冷房室内及び暖房室内を快適に保ちつつ、ガスエンジン12の回転数を少し減少させて圧縮機11の負荷を少し軽減できる。
【0064】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0065】
例えば、上記実施形態では、高圧相当温度差ΔTHPに基づいて補正値ΔVPを決定している(図4におけるステップS17)が、これに代えて、高圧相当温度の現在値TPHP、高圧センサ52を用いて検出した圧力値、又は低圧センサ51を用いて検出した圧力値に基づいて補正値ΔVPを決定してもよい。また、図5及び図6に示したデータベースは一例であり、高圧相当温度差ΔTHP及び低圧相当温度差ΔTLPと補正値ΔVPとの関係を任意に変更可能である。また、例えば2つの低圧相当温度ΔHPに関してそれぞれ補正値ΔVPを規定しておき、前記2つの低圧相当温度差ΔHPの中間に相当する低圧相当温度差ΔHPに対する補正値ΔVPを補間演算してもよい。また、上記のガスエンジン駆動式空気調和装置1は、1台の室外機10を備えているが、ガスエンジン駆動式空気調和装置1が複数台の室外機10を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1・・・ガスエンジン駆動式空気調和装置、1a・・・サブ熱交換器、1b・・・サブ熱交換器弁、1c・・・アキュムレーター、1d・・・逆止弁、10・・・室外機、11・・・圧縮機、12・・・ガスエンジン、13・・・オイルセパレーター、14・・・四方切替弁、15・・・室外熱交換器、16・・・膨張弁、17・・・レシーバー、18・・・ブリッジバルブ、19・・・過冷却コイル、20A,20B・・・室内機、21・・・室内熱交換器、22・・・膨張弁、23・・・分流装置、23a,23b・・・開閉弁、30・・・冷媒管、51・・・低圧センサ、52・・・高圧センサ、A・・・補正値、CT・・・制御装置、R・・・流路、TPHP・・・高圧相当温度の現在値、TPLP・・・低圧相当音温度の現在値、TTHP・・・高圧相当温度の目標値、TLP・・・低圧相当温度の目標値、VP・・・弁開値、W・・・流路、ΔTHP・・・高圧相当温度差、ΔTLP・・・低圧相当温度差、ΔVP・・・補正値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8