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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】自走式搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/12 20190101AFI20220502BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20220502BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20220502BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20220502BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20220502BHJP
【FI】
B60L53/12
B60L5/00 B
B60M7/00 X
H01F38/14
H02J50/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018011187
(22)【出願日】2018-01-26
(65)【公開番号】P2019129657
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】松木 英敏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】田倉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】稲田 賢
(72)【発明者】
【氏名】于 ミュウ
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-015891(JP,A)
【文献】特開2012-239334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/12
B60L 5/00
B60M 7/00
H01F 38/14
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク搬送路(11)と、前記ワーク搬送路(11)に案内されて自走可能な搬送車(20)と、前記搬送車(20)を自走させる電動モータ(23)と、前記電動モータ(23)に給電する給電手段(30)とを備えた自走式搬送装置において、
給電手段(30)が、前記ワーク搬送路(11)に沿って設けられた給電側コイル(31)と、前記搬送車(20)に設けられた受電側コイル(32)と、前記搬送車(20)に設けられ前記給電側コイル(31)で発生した磁束(B)を前記受電側コイル(32)に伝達するための負荷整合を行う整合コイル(33)とを備え
前記給電側コイル(31)が平行部(31b,31c)を有する長円状コイルであって、
非磁性体から成る走行板(17)が前記ワーク搬送路(11)に沿って設けられ、
前記平行部(31b,31c)が前記ワーク搬送路(11)の搬送方向に延びるように前記給電側コイル(31)が前記走行板(17)に配索された
ことを特徴とする自走式搬送装置。
【請求項2】
整合コイル(33)が渦巻き状に形成されてワーク搬送路(11)を自走する搬送車(20)の走行板(17)に対向する対向部位に取付けられ、
受電側コイル(32)が前記整合コイル(33)を包囲可能な渦巻き状に形成されて前記対向部位に前記整合コイル(33)を包囲するように取付けられた
請求項1記載の自走式搬送装置。
【請求項3】
ワーク搬送路(11)に搬送車(20)が自走可能に走行板(17)が敷設され、
整合コイル(33)が渦巻き状に形成されて前記走行板(17)に対向する前記搬送車(20)の下面に取付けられ、
受電側コイル(32)が前記整合コイル(33)を包囲可能な渦巻き状に形成されて前記搬送車(20)の下面に前記整合コイル(33)を包囲するように取付けられた
請求項1記載の自走式搬送装置。
【請求項4】
整合コイル(33)及び受電側コイル(32)と搬送車(20)の間に軟磁性材料から成る遮蔽板(36)が介装された請求項2又は3記載の自走式搬送装置。
【請求項5】
給電側コイル(31)の平行部(31b,31c)の幅寸法をL、
前記整合コイル(33)を包囲する受電側コイル(32)の外径をODとするとき 、
L≧ODである請求項2ないし4いずれか1項に記載の自走式搬送装置。
【請求項6】
搬送車(20)に設けられ給電手段により供給される電力により駆動して電動モータ(23)を制御する制御装置(39)と、前記制御装置(39)に制御信号を無線にて発する操作装置(41)とを更に備えた請求項1ないし5いずれか1項に記載の自走式搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを搭載可能な搬送車を走行させることにより、その搬送車に搭載されたワークをワーク搬送路に沿って搬送させる自走式搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生産ライン上で製品あるいは部品等の物品(本明細書ではこれらを「ワーク」と呼ぶ)を搬送するためのワーク搬送システムとして、レール上を自走するワーク搬送パレットを利用した自走式搬送装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この自走式搬送装置における自走式ワーク搬送パレットは、ワーク搬送パレット用レールの当該軌道上を回転する両側の車輪と、この車輪を回転させる電動モータと、その電動モータを駆動する蓄電可能なバッテリを具備するものとしている。
【0004】
そして、そのバッテリへの給電手段として、ワーク搬送パレット用レールにレール側非接触給電手段を設けるとともに、このレール側非接触給電手段と対向する本体部側非接触給電手段を自走式ワーク搬送パレットに内蔵させ、当該自走式ワーク搬送パレットの停止時あるいは通過時に非接触でバッテリへの給電を行わせるとしている。
【0005】
このような自走式搬送装置では、自走式ワーク搬送パレットにバッテリを設け、自走式ワーク搬送パレット自体を蓄電可能としたことから常時給電の必要がなく、しかも、非接触給電するためブラシ摩耗の問題が解消し、発塵が抑えられる。また、接触状態に依存することもないから安定した状態で給電することが可能となるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-306144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の自走式搬送装置では、自走式ワーク搬送パレット自体を蓄電可能とするために、自走式ワーク搬送パレットにバッテリを設けているけれども、バッテリ自体が比較的大きくかつ重量のあるものであるので、自走する搬送パレット自体の重量の増加を生じさせる不具合がある。そしてこの重量の増加は、搬送時における自走式ワーク搬送パレットの加速度及び減速度の低下を生じさせて、速やかなワークの搬送が困難になるという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0008】
この不具合を解消させるために、自走式ワーク搬送パレットのような搬送車にバッテリを搭載せずに、給電手段により給電される電力により直接電動モータを駆動させて、自走式ワーク搬送パレットのような搬送車をその電力により直接走行させることが考えられる。
【0009】
しかし、上記従来の自走式搬送装置における非接触給電手段は給電トランスであって、その非接触給電手段を搬送経路中に所定の間隔を開けて存在する各作業ステーション毎に分散させるとしており、そこに自走式ワーク搬送パレットのような搬送車が停止した時、又は、そこを通過したときにのみに給電が可能となるのであって、その搬送車の走行中に常時給電されるものではない。このため、給電手段により給電される電力により直接電動モータを駆動させることができずに、自走式ワーク搬送パレットのような搬送車におけるバッテリの搭載を不要にすることができない現実がある。
【0010】
本発明の目的は、搬送車への常時給電を可能として、搬送車の重量を軽減し得る自走式搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ワーク搬送路と、ワーク搬送路に案内されて自走可能な搬送車と、搬送車を自走させる電動モータと、電動モータに給電する給電手段とを備えた自走式搬送装置の改良である。
【0012】
その特徴ある構成は、給電手段が、ワーク搬送路に沿って設けられた給電側コイルと、搬送車に設けられた受電側コイルと、搬送車に設けられ給電側コイルで発生した磁束を受電側コイルに伝達するための負荷整合を行う整合コイルとを備えたところにある。
【0013】
この場合、給電側コイルが平行部を有する長円状コイルであって、非磁性体から成る走行板がワーク搬送路に沿って設けられ、平行部がワーク搬送路の搬送方向に延びるように給電側コイルが走行板に配索されることが好ましい。
【0014】
そして、整合コイルが渦巻き状に形成されてワーク搬送路を自走する搬送車の走行板に対向する対向部位に取付けられ、受電側コイルが整合コイルを包囲可能な渦巻き状に形成されて対向部位に整合コイルを包囲するように取付けられることが好ましい。
【0015】
一方、ワーク搬送路に搬送車が自走可能に走行板が敷設された場合、整合コイルが渦巻き状に形成されて走行板に対向する搬送車の下面に取付けられ、受電側コイルが整合コイルを包囲可能な渦巻き状に形成されて搬送車の下面に整合コイルを包囲するように取付けることもできる。
【0016】
また、整合コイル及び受電側コイルと搬送車の間に軟磁性材料から成る遮蔽板を介装させることが好ましく、給電側コイルの平行部の幅寸法をL、整合コイルを包囲する受電側コイルの外径をODとするとき 、L≧ODであることが更に好ましい。
【0017】
そして、搬送車に設けられ給電手段により供給される電力により駆動して電動モータを制御する制御装置と、制御装置に制御信号を無線にて発する操作装置とを更に備えることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の自走式搬送装置では、給電手段が、給電側コイルと、搬送車に設けられた受電側コイルとを備えるいわゆる非接触給電手段である。このため、従来から用いられている接触式給電手段に比較して、接触する給電用のブラシが摩耗することに起因する塵埃の発生を抑制することができる。
【0019】
一方、給電側コイルと受電側コイルから成る非接触給電手段にあっては、給電側コイルと受電側コイルとの間の距離(Gap)が離れた場合や、それらの位置がずれた場合など、十分な給電が困難となるけれども、本発明の自走式搬送装置では、給電手段が、給電側コイルで発生した磁束を受電側コイルに伝達するための負荷整合を行う整合コイルを備えるので、給電側コイルと受電側コイルの距離及び位置ずれによって発生する結合係数の低下と負荷整合のずれにより伝送効率が悪化する特性を、効率最大化にできる利点を持つ。
【0020】
このため、給電側コイルをワーク搬送路に沿って設けることにより、走行中に常時給電させることが可能となり、給電手段により給電される電力により直接電動モータを駆動させることが可能となる。すると、搬送車におけるバッテリの搭載が不要になり、搬送車の重量を軽減させることが可能となるのである。
【0021】
また、本発明の自走式搬送装置では、給電側コイルで発生した磁束を整合コイルにて集めて効率よく受電側コイルに受け渡すこととしたため、給電側コイルが受電側コイルに比べて大きい場合でも適切な電力伝送を行うことができる。従って、例えば、給電側コイルがワーク搬送路の搬送方向に延びる長円状コイルであれば、受電側コイルを有する搬送車をそのワーク搬送路に沿って複数台同時に走行させることも可能となる。
【0022】
そして、複数台の搬送車をワーク搬送路に沿って走行させる場合、電動モータに供給される電力により駆動して電動モータを制御する制御装置を搬送車に設け、その制御装置に制御信号を無線にて発する操作装置を備えることにより、その複数台の搬送車を別々に操作することも可能となり、搬送形態の多様性を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明実施形態の自走式搬送装置の構成を示す図4のA-A線断面図である。
図2図1のB-B線断面図である。
図3図1のC-C線断面図である。
図4】その自走式搬送装置の構成を示す上面図である。
図5】その給電手段により生じる磁束の状態を示す模式図である。
図6】本発明の別の自走式搬送装置の構成を示す図1に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
本発明の自走式搬送装置を図1に示す。本発明の自走式搬送装置10は、ワーク搬送路11と、そのワーク搬送路11に案内されて自走可能な搬送車20とを備える。
【0026】
図4に示す様に、この実施の形態におけるワーク搬送路11は、組立、加工、洗浄等の工程を別々に行う作業ステーション1~4をトラック状に連結して、その連結経路に沿って搬送車20を順番に走行させるものを例示する。
【0027】
図1に示すように、この実施の形態におけるワーク搬送路11は、搬送車20を走行させるために、搬送方向に長い平板路12と、その平板路12の幅方向両側にその平板路12を挟むように立設されて、平板路12を走行する搬送車20の幅方向の移動を禁止する一対の側壁13,14とを有するものとする。ここで、図1では、平板路12と一対の側壁13,14はそれぞれ非磁性材料から成り、それらが一体的に形成されるものを示す。そして、図におけるワーク搬送路11は、平板路12の下面から下方に延びる様に設けられた支柱16を介して設置場所10aに設置される場合を示す。
【0028】
図1及び図3に示すように、このワーク搬送路11に走行経路が案内される搬送車20は、一対の側壁13,14の間に水平状態で進入可能な車台板21と、その車台板21を平板路12に沿って走行させる複数のタイヤ22と、その内の少なくとも1本のタイヤ22を回転させて搬送車20を自走させる電動モータ23を備える。図3に示すように、この実施の形態では、3本のタイヤ22が、それらの回転軸を平行にして車台板21に枢支され、その内の1本のタイヤ22にプーリ24が同軸に設けられる。
【0029】
また、電動モータ23は、直流(DC)により、その回転軸23aを回転させるものであって、その回転軸23aがタイヤ22の回転軸に平行になるように車台板21に設けられ、その回転軸23aにはプーリ23bが更に設けられる。そして、タイヤ22におけるプーリ24と電動モータ23におけるプーリ23bの間にはベルト25が架設され、電動モータ23が駆動してその回転軸23aがプーリ23bとともに回転すると、ベルト25を介してタイヤ22が回転して搬送車20を走行させるように構成される。
【0030】
また、この車台板21には、その幅方向の両側に側壁13,14に平行になるような支持片26がそれぞれ取付けられ、それらの支持片26の前後には側壁13,14に接触可能なローラ27がそれぞれ枢支される。このように、ローラ27が、支持片26を介して車台板21の4角に枢支され、これにより、搬送車20がワーク搬送路11に沿って速やかに走行可能に構成される。
【0031】
なお、図1に示す様に、車台板21には複数の支持柱29がその上面に立設され、その支持柱29の上端にはワークを搭載する搭載部28が車台板21と平行に設けられるものとする。そして、本発明の自走式搬送装置10は、複数のタイヤ22の内の少なくとも1本のタイヤ22を回転させて搬送車20を自走させる電動モータ23に給電する給電手段30を備える。
【0032】
この給電手段30は、ワーク搬送路11に沿って設けられた給電側コイル31と、搬送車20に設けられた受電側コイル32と、その搬送車20に設けられて給電側コイル31で発生した磁束を受電側コイル32に伝達するための負荷整合を行う整合コイル33とを備えており、給電側コイル31に電流を流して発生した磁束を媒介として受電側コイル32に電力を伝送するものである。
【0033】
即ち、本実施の形態における給電手段30は、図5に示すように、給電側コイル31に高周波電源装置34より電力を供給し、その給電側コイル31に磁束Bを生じさせ、その磁束Bにより受電側コイル32に生じる電磁誘導を利用して非接触にて電力を供給するものである。そして、給電側コイル31や受電側コイル32及び整合コイル33は、それぞれ単線やリッツ線などによる巻き線により作成されていてもよいし、フレキシブル基板(FPC)やプリント基板(FR-4基板)等の平面基板上に作製することとしてもよい。
【0034】
図4及び図5に示す様に、この実施の形態における給電側コイル31は単線やリッツ線などによる巻き線により、平行部31b,31cと、その平行部31b,31cの両側を円弧状に連結する連結部31d,31eとを有する長円状に作成される。そして、この平行部31b,31cの長さは、搬送経路の全長に略等しくなるように形成される。
【0035】
図1に示すように、ワーク搬送路11における平板路12には、搬送車20が自走可能な走行板17がその全長に亘って敷設される。走行板17は非磁性体から成り、幅方向における両側が厚肉に形成され、中央部分に平板路12との間に隙間が形成される。そして、長円状を成す給電側コイル31は、平板路12との間に隙間が形成された走行板17の下面に、ワーク搬送路11に沿って、その全長に亘って平行部31b,31cが所定の幅寸法Lを保った状態で配索される(図4)。
【0036】
一方、受電側コイル32は単線やリッツ線を渦巻き状に巻回することにより形成され、搬送車20の下面に取付けられる。また、整合コイル33にあっても、単線やリッツ線を渦巻き状に巻回することにより形成されて、走行板17に対向する搬送車20の下面に取付けられる。
【0037】
搬送車20における車台板21の下面には軟磁性材料から成る遮蔽板36が添着される。軟磁性材料としては、例えば、アモルファス合金、パーマロイ、珪素鋼、センダスト合金及び軟磁性フェライト等の軟磁性体であって、一種類もしくは、複数の異なる透磁率を持った磁性材料を組み合わせた複合材を使用することもできる。
【0038】
整合コイル33及び受電側コイル32は、この遮蔽板36の下面に添着される。このようにして、整合コイル33及び受電側コイル32と搬送車20との間に軟磁性材料から成る遮蔽板36が介装される。このように、遮蔽板36を介装させることにより、その遮蔽板36は、それより下方で生じる磁束が車台板21の上面に搭載される各回路に影響を与えることを回避するものである。
【0039】
また、本実施の形態による受電側コイル32は、整合コイル33を包囲可能な渦巻き状に形成されて、搬送車20の下面に整合コイル33を包囲するように取付けられる。そして、搬送車20が走行板17の上面を走行した場合に生じる給電側コイル31と受電側コイル32及び整合コイル33との間の隙間は、給電側コイル31において発生した磁束を媒介として受電側コイル32に電力を伝送可能とする範囲となるように、タイヤ22の大きさや遮蔽板36の厚さが選定されるものとする。
【0040】
ここで、図5に示すように、受電側コイル32は、給電側コイル31に所定の周波数の交流を流した場合に発生する磁束Bにより交流を生じさせるものであり、この電力により電動モータ23(図3)を駆動させるために、この受電側コイル32には整流回路37が接続される。そして、図3に示すように、この整流回路37は車台板21に設けられる。
【0041】
図5に戻って、整合コイル33は、所定周波数で共振することにより負荷整合を行い、給電側コイル31で発生した磁束Bを集めて受電側コイル32に効率よく受け渡すためのものである。このため、この整合コイル33は、所定周波数を共振周波数とするように、コンデンサ38が直列的に又は並列的に付加されて調整される。
【0042】
この所定周波数とは、高周波電源装置34から磁束Bを発生させるために給電側コイル31に流す電流の周波数である。そして、整合コイル33の共振周波数は、付加されたコンデンサ38の容量や、整合コイル33自体の自己共振やこの整合コイル33が設けられる遮蔽板36(図1)との重なりによって生じた容量成分を利用することによって調整される。
【0043】
例えば、図5に示すように、整合コイル33がコンデンサ38と直列共振回路を構成した場合は低負荷で高効率となり、図示しないが、整合コイル33がコンデンサ38と並列共振回路を構成した場合は高負荷で高効率となる。従って、整合コイル33を配置した構成では、広い負荷範囲で高効率を得ることが可能となるのである。
【0044】
ここで、給電側コイル31の平行部31b,31cの幅寸法をL、整合コイル33を包囲する受電側コイル32の外径をODとするとき、L≧ODであるように構成される。このような関係式を満たす場合に、給電側コイル31で発生した磁束Bを効率よく集めて、受電側コイル32に受け渡すことが可能となる。
【0045】
図3に示すように、車台板21には、給電手段30により供給される電力により駆動して電動モータ23を制御する制御装置39が設けられる。図における制御装置39は、整流回路37により変換されたDC電力により駆動して、電動モータ23を駆動させるモータ制御回路39aと、そのモータ制御回路39aに連結された無線通信ユニット39bとを備える。
【0046】
また、図4に示すように、ワーク搬送路11の外部には、搬送車20に設けられた制御装置39に制御信号を無線にて発する操作装置41が設置され、この操作装置41が発して制御装置39における無線通信ユニット39bが受信した制御信号により、モータ制御回路39aから電動モータ23に電力が供給されて、その制御信号に基づいて搬送車20を走行させるように構成される。
【0047】
次に、このような自走式搬送装置における動作を説明する。
【0048】
この自走式搬送装置10では、搬送する図示しないワークは搬送車20における搭載部28に搭載され、その状態で搬送車20を走行させる。搬送車20を走行させるには、先ず給電手段30を稼動させて、搬送車20に設けられた制御装置39を稼動させる。そのために、高周波電源装置34により、給電側コイル31に所定周波数の電流を流し、図5に示すように、その給電側コイル31に磁束Bを発生させる。すると、搬送車20に設けられた受電側コイル32では、その磁束Bの電磁誘導により電力が生じ、その電力により制御装置39(図3)が稼動されることになる。
【0049】
このように、本発明の自走式搬送装置では、給電手段30が、給電側コイル31と、搬送車20に設けられた受電側コイル32とを備えるいわゆる非接触給電手段30であるので、従来から用いられている電極に接触する接触ブラシを有する接触式給電手段に比較して、接触する給電用のブラシが摩耗することに起因する塵埃の発生等の不具合を生じさせることはない。
【0050】
一方、給電側コイル31と受電側コイル32のみから成るような非接触給電手段にあっては、給電側コイル31と受電側コイル32との間の距離(Gap)が離れた場合や、それらの位置がずれた場合など、十分な給電が困難となるけれども、本発明の自走式搬送装置では、給電手段30が、給電側コイル31と受電側コイル32のみならず、給電側コイル31で発生した磁束を受電側コイル32に伝達するための負荷整合を行う整合コイル33を備える。
【0051】
この整合コイル33には、給電側コイル31に流れる電流の駆動周波数に同調するように共振コンデンサ38が付加されて、LCブースト回路を構成するものであって、給電側コイル31に磁束Bが発生すると、搬送車20に設けられた整合コイル33は、所定周波数で共振することになり、その共振により整合コイル33は、給電側コイル31で発生した磁束Bを集めて受電側コイル32に効率よく受け渡す。これにより、給電側コイル31と受電側コイル32の距離及び位置ずれによって発生する結合係数の低下と負荷整合のずれにより伝送効率が悪化することは防止され、伝達効率は最大化することになる。
【0052】
このように、給電側コイル31で発生した磁束Bを整合コイル33にて集めて効率よく受電側コイル32に受け渡すこととしたため、給電側コイル31が受電側コイル32に比べて大きい場合でも適切な電力伝送を行うことができる。よって、ワーク搬送路11に沿って、搬送車20が走行すべき経路の全長に亘って給電側コイル31を設けることにより、そのワーク搬送路11のいずれの箇所に搬送車20が停止又は走行していても、搬送車20への給電が可能になる。
【0053】
このように、搬送車20の走行中における常時給電が可能となる本発明に依れば、この給電手段30により給電される電力により直接電動モータ23を駆動させることが可能となるので、電動モータ23を駆動させるバッテリ等の蓄電手段を搬送車20に搭載することが不要になる。このため、本発明における搬送車20は、バッテリの搭載を必要とする従来の搬送車に比較して、バッテリを搭載しないことにより、搬送車20の重量を軽減させることが可能となる。そして、搬送車20の重量が軽減されると、搬送時における搬送車の加速度及び減速度を向上させることが可能となり、速やかにワークを搬送し得る自走式搬送装置10となる。
【0054】
図3に示すように、車台板21には、給電手段30により供給される電力により制御装置39が駆動すると、ワーク搬送路11の外部に設置された操作装置41により、搬送車20に設けられた制御装置39に制御信号を無線にて発することが可能となる。そして、操作装置41が制御信号を発すると、制御装置39における無線通信ユニット39bがそれを受信して、その制御信号により、モータ制御回路39aから電動モータ23に電力が供給されて回転軸23aを回転させるように駆動し、その制御信号に基づいて搬送車20を走行させることになる。
【0055】
従って、搬送車20の走行及び停止は制御装置39からの指令によるものとなるので、図4に示すように、給電側コイル31がワーク搬送路11の搬送方向に延びて、その全長に亘って設けられた長円状コイルであれば、受電側コイル32を有する搬送車20をそのワーク搬送路11に沿って複数台同時に走行させることも可能となる。
【0056】
そして、複数台の搬送車20をワーク搬送路11に沿って走行させる場合、各搬送車20の制御装置39に制御信号を無線にて別々に発する操作装置41を備えることにより、その複数台の搬送車20を別々に操作することも可能となり、搬送形態の多様性を図ることができることになるのである。
【0057】
なお、上述した実施の形態では、平板路12の幅方向両側に一対の側壁13,14が立設されたワーク搬送路11を説明した。けれども、搬送車20を案内しうる限り、ワーク搬送路はこれに限らず、従来から用いられているレールのようなものであっても良い。
【0058】
また、上述した実施の形態では、電動モータ23がタイヤ22を回転させて搬送車20を走行させる場合を説明した。けれども、電動モータ23が搬送車20を自走させ得る限り、電動モータ23が回転させるものはタイヤ22に限られない。例えば、ワーク搬送路がレールのようなものである場合、そのレールに転動可能な車輪を電動モータが回転させて搬送車20を走行させるようにしても良く、ワーク搬送路がラックギヤのようなものを備える場合、そのラックギヤに転動可能なピニオンギヤを電動モータが回転させるようにして搬送車20を走行させるようにしても良い。
【0059】
また、上述した実施の形態では、操作装置41が発した制御信号に基づいて搬送車20を走行させ、ワーク搬送路11に沿って複数台の搬送車20を別々に走行制御可能となる場合を説明した。けれども、ワーク搬送路11に設けられた複数台の搬送車20を同一に制御する様な場合には、搬送車20に必ずしも制御装置39を設けることを必要としない。例えば、給電手段30により電力が供給されたときに搬送車20を走行させ、その電力の供給を停止することにより搬送車20を停止させるようにしても良い。
【0060】
また、上述した実施の形態では、単線やリッツ線などを渦巻き状に巻回した給電側コイル31や受電側コイル32及び整合コイル33を説明したが、給電可能である限り、渦巻き状に限らず、給電側コイル31や受電側コイル32及び整合コイル33は螺旋状に巻回されたものであっても良く、渦巻きと螺旋が組み合わされたもの、例えば、α巻き等から成るものであっても良い。
【0061】
更に、上述した実施の形態では、給電側コイル31が設けられる走行板17がワーク搬送路11に敷設され、搬送車20の下面に受電側コイル32と整合コイル33が取付けられる場合を説明した。けれども、給電側コイル31が設けられる走行板17は、ワーク搬送路11に敷設される場合に限られない。
【0062】
例えば、図6に示す様に、ワーク搬送路11に隣接して、走行板17をワーク搬送路11の全長に亘って立設させても良い。このような場合であっても、平行部31b,31cがワーク搬送路11の搬送方向に延びるように給電側コイル31を走行板17に配索し、その給電側コイル31に対向する搬送車20の対向部位に受電側コイル32及び整合コイル33を取付けても良い。
【0063】
図6では、ワーク搬送路11の側壁14に走行板17を立設させ、その走行板17に所定の間隔を開けて対向するようにワーク搬送車20に補助板20aを設け、その補助板20aに受電側コイル32及び整合コイル33を取付けた場合を示す。このように、整合コイル33を渦巻き状に形成してワーク搬送路11を自走する搬送車20の走行板17に対向する対向部位に取付け、受電側コイル32をその整合コイル33を包囲可能な渦巻き状に形成して、その対向部位に整合コイル33を包囲するように取付けたとしても、搬送車20への常時給電が可能となり、搬送車20にバッテリ等の蓄電手段の搭載を不要にして、その搬送車20の軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0064】
10 自走式搬送装置
11 ワーク搬送路
17 走行板
20 搬送車
23 電動モータ
30 給電手段
31 給電側コイル
31b,31c 平行部
32 受電側コイル
33 整合コイル
36 遮蔽板
39 制御装置
41 操作装置
B 磁束
L 給電側コイルの平行部の幅寸法
OD 受電側コイルの外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6