(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】救急医療サービスのための超音波頭部フレーム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20220502BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20220502BHJP
A61B 90/10 20160101ALI20220502BHJP
【FI】
A61B17/00 700
A61B8/14
A61B90/10
(21)【出願番号】P 2015537389
(86)(22)【出願日】2013-10-10
(86)【国際出願番号】 IB2013059268
(87)【国際公開番号】W WO2014060914
(87)【国際公開日】2014-04-24
【審査請求日】2016-10-07
【審判番号】
【審判請求日】2019-12-25
(32)【優先日】2012-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】リンカー,マールテン ヨハン フリド
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,ユリアーナ パウリーネ
(72)【発明者】
【氏名】ザイプ,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】パワーズ,ジェフリー アール
(72)【発明者】
【氏名】シー,ウィリアム タオ
(72)【発明者】
【氏名】ウレロプ,ヘレ
(72)【発明者】
【氏名】スハーケン,ダフィー マリア ウィリブロルデュス
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー,テレンス ジェイムズ
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】栗山 卓也
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0222723(US,A1)
【文献】特開2006-305047(JP,A)
【文献】特開平10-258064(JP,A)
【文献】国際公開第2011/027264(WO,A1)
【文献】特表2009-522016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B8/00
A61B90/14
A61N7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療患者の頭部用に構成された頭部フレームであって、当該頭部フレームは:
撮像、治療、又は撮像及び治療の両方のために構成されたプローブのプローブ用サポートであって、該プローブ用サポートは前記プローブのためのホルダーを含み、前記プローブ用サポートは、前記ホルダーを患者の頭部に取り付けずに当該頭部フレームに載せた前記頭部の重量
が、前記プローブを前記患者の頭部に接
する所定の位置に維持するように構成される、プローブ用サポートと;
患者の頸部に少なくとも部分的に接触し、前記患者の頸部にサポートを提供するように構成されている頸部サポートと;を備えており、
前記プローブ用サポートは、前記頭部の第1の側に第1のプローブを保持するための第1の直立構造の第1の上端にある第1の開口部と、前記頭部の反対側に第2のプローブを保持するための第2の直立構造の第2の上端にある第2の開口部とを含み、
前記プローブ用サポートは、前記第1の直立構造と前記第2の直立構造との間で前記患者の後頭部を包み込むような構成を有し、前記頸部サポートは、前記プローブ用サポートに取り付け可能であり、前記プローブ用サポートから分離可能である、
頭部フレーム。
【請求項2】
前記第1及び第2の開口部は、球形状の内面を含む、
請求項1に記載の頭部フレーム。
【請求項3】
前記頸部サポートは、前記頭部を仰臥位で受容するように構成されたベースを有しており、前記サポートは前記頸部の下側サポートを伴う、
請求項1に記載の頭部フレーム。
【請求項4】
搬送ストレッチャに取り付けられるように構成される、
請求項1に記載の頭部フレーム。
【請求項5】
前記プローブ用サポート、前記頸部サポート、又はこれらの組合せによって少なくとも部分的にコンフォーマルなサポートが提供され、前記コンフォーマルなサポートは、前記頭部の後面の形状に従うように配置されるように構成される、
請求項1に記載の頭部フレーム。
【請求項6】
前記頭部の両側面に関して、前記頭部フレームが鏡像対称性を有するように構成される、
請求項1に記載の頭部フレーム。
【請求項7】
請求項1に記載の頭部フレームと、プローブを頭部の側頭骨ウィンドウに位置決めするための電動式アセンブリとを有する撮像装置であって、該装置は、自動的に且つユーザの医療介入の必要なしに、前記プローブによって提供される閉ループ撮像ガイダンスの実行中に前記位置決めを行うように構成される、
撮像装置。
【請求項8】
前記頭部フレームによって前記プローブを前記頭部に適用する力を測定するように構成された装置をさらに有しており、そしてこの測定に応答して、前記装置は、少なくとも1つのユーザ通知及び前記力の調整を行う、
請求項1に前記の頭部フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像、治療又はこれら撮像及び治療両方に使用されるプローブを支持するための頭部フレームに関し、より具体的には、頸部サポートを含むととともに、頭部を包み込む頭部フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
血栓溶解療法(STL; Sonothrombolysis)は、超音波及びマイクロバブルを用いて、急性虚血性脳卒中における閉塞を引き起こしている血栓を溶解するような、新たに提案された非侵襲性脳卒中治療モダリティである。これらの治療では、(脳の血管系の閉塞を撮像し/見つけて、その閉塞を治療することの両方に使用される)超音波が、典型的には患者の側頭骨/ウィンドウ上に位置決めされるような適切なプローブを介して照射される。側頭骨は、最小量の信号の減衰及び収差(aberration)で脳への音響アクセスを提供する。(最大2時間続く)これらの治療中に、最適な治療を行うために、閉塞箇所に固定され且つ方向付けられた超音波プローブの位置決め及び向合せを維持することが重要である。プローブは、典型的には、頭部セットを介して患者の側頭骨に接する所定の位置に保持される。
【0003】
STLは、血栓を標的にした超音波や、(体循環中の)マイクロバブルを使用するとともに、t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子、「血栓溶解」物質)等の血栓溶解剤を時々使用して、脳内の閉塞部に正常な血流を復帰させるように、典型的な血栓を形成するフィブリン構造を破壊する。現在、臨床試験が、(i)超音波及びt-PA、又は(ii)超音波、t-PA、及びマイクロバブルの組合せのいずれかを使用して、音響血栓溶解法(sonothrombolysis)において行われている。
【0004】
このような治療は、典型的には、頭部に取り付けられた、単一素子トランスデューサ/プローブ(複数可)を使用して、側頭骨を介して超音波を送達し、この超音波を連続又はパルスモードで作動させるが、このような治療は、典型的には、頭部フレームに取り付けられた超音波プローブのマニュアルでの位置決めを使用する以外に、超音波ビームを標的に向ける能力を有していない。この超音波ビームを血栓に向けてより正確に方向付ける能力は、少なくとも1つのビームが血栓に位置合わせされるとともにこの血栓に標的が向けられることを期待して、多数の単一素子プローブを患者の頭蓋骨に配置することによって克服される。
【0005】
同一出願人に譲渡されたBrowningらの特許文献1は、血栓溶解のための従来型の安全ヘルメットを特徴としている。このヘルメットは、超音波プローブのペアを両側頭部の側頭骨領域に接触させて保持するように構成されている。ヘルメット内部のライナーは、頭部の周囲を包み込む。ライナーの内側に位置決めされたプローブを用いて、このライナーは、経頭蓋の頭部セットとして機能する。プローブは、電子ステアリングに使用できるマトリックスアレイを有する。プローブは、治療ビームを操作する撮像ガイダンスを含むような、撮像(イメージング)又は治療のために利用可能である。また、撮像ガイダンスを通して、プローブが適切に位置決めされると、頭部セットのヘルメットライナーは、調整ノブによって所定の位置に調節可能に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2010/0160779号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書で以下に提案される構成は、上述した懸案事項の1つ以上に取り組むとともに更なる改善を行うことを目的としている。
現在の頭部フレーム(又は頭部バンド)は、診療所、脳卒中センター、及び/又は救急部署で使用されるように設計されている。殆どのデザインは、頭部バンドの手法に従って行われ、典型的には患者が使用中に着座位置の状態で、プローブ/頭部の位置合わせが、患者の頭部にバンドを固定することにより主に実施されている。
【0008】
これは快適であるが、患者及び患者の頭が、緊急車両自体の運動の動きによって常に動いている場合に、このような頭部フレームは、緊急車両内で正確なプローブの位置合わせ(アライメント)を維持するとともに、血栓に標的を向けることの厳しさに耐えるとは考え難い。
【0009】
特に、最新の頭部フレーム又は頭部バンドは、プローブをその患者の頭部に保持するための取付点及び基準点のみのために頭部を使用している。すなわち、プローブは、頭部用部品に取り付けられ、その後、患者の頭部に取り付けられている。
これは、緊急治療室(ER)/病院用の設定では有利であるが、救急医療サービス(EMS)用の設定で最良の解決策とは言えない。
【0010】
脳卒中の診断後(すなわち、ポイント・オブ・ケア(現場で診断/検査を行う)の設定において)、可能な限り早期にSTLを開始し、患者が治療センターに搬送されている間にも、「時が脳なり(time is brain)」の考えに従って治療を継続することが重要である。
また、一定強度の1つ以上のビームを血栓に向けた状態で複数の治療ビームを提供するような「ブラインド(blind)療法」アプローチは、健全な脳組織を不必要に治療するような意図しない副作用を有している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下で提案される実施形態によるSTL頭部フレームは、現在のEMSのワークフローと互換性を有した状態で、強固なプローブ配置のために、EMSスタッフによる迅速な適用のために、患者を治療センターに搬送する間にSTL療法を提供するために、プローブを患者の頭部に接して保持するような要件を特に満たすように設計されている。
【0012】
新しいアプローチは、超音波撮像ガイダンスの下で超音波治療ビームの位置合わせ及び向き合せも含む。超音波画像を使用して、脳内の血栓/閉塞部の位置を特定することができ、こうして超音波治療ビームをこの同じ位置に向けるように使用することができる。いくつかの例では、超音波撮像用プローブは、デュアルモード配置で、STL治療のためにも使用することができる。他の例では、別個の超音波撮像用プローブ及び治療用プローブを、この画像ガイド治療(image-guided therapy)に用いることができる。このシナリオでは、その血栓/閉塞部(すなわち、閉塞を含む領域)に治療用超音波エネルギーを必要とする脳の領域のみに治療が施される。これによって、全体的な超音波照射量が低減され、さらに超音波撮像によって治療の進行状況をモニタすることが可能になり、例えば、血管の再疎通が検出されると、治療を停止することができる。もっとも、このアプローチを実際に機能させるためには、より重要なEMS設定で、撮像用プローブ及び治療用プローブ(複数可)の両方を、(閉塞部の撮像及び閉塞部の治療のために使用されたる別個のプローブを使用する場合に)治療の継続期間に亘って患者の頭部にしっかりと且つ着実に保持する必要があり、又はシングル、デュアル目的の撮像用/治療用プローブは、(デュアル用途プローブを使用する場合に)患者の頭部にしっかりと且つ着実に保持する必要がある。
【0013】
このような結合及び位置合わせは、強固で、安定した、耐振動性の、患者/プローブの相対運動に抵抗するようなものである必要があり、快適であり、そして容易に患者に適用できなければならない。患者の搬送中であっても、プローブがSTLの治療の全継続期間に亘って結合状態を維持するのを可能にする必要がある。脳卒中治療の転帰は、患者がより早期に脳卒中の治療を受ければ受ける程、一般的にはより良い状態になる(「時は脳なり(time is brain」)。従って、ポイント・オブ・ケア(現場で診断/検査を行う)の場所や搬送中での治療は、非常に望ましいことである。現在、脳卒中患者は、病院及び/又は脳卒中治療部署に到着する後まで脳卒中の治療を受けておらず、貴重な時間(及び脳)を無駄にしている。
【0014】
本明細書で提案される実施形態の態様によれば、医療患者の頭部用の頭部フレームは、剛性構造の頸部サポートを有しており、この頸部サポートは、患者の頸部に接触し、患者の頸部に剛性サポートを提供するように構成されている。また、この実施形態は、撮像、治療、又は撮像及び治療の両方のために構成されたプローブ用サポートを有する。フレームは、頭部を包み込むような構成となっている。
【0015】
代替的に又は追加的に、頭部フレームは、フレームによってプローブを頭部に適用する力を測定するように構成された装置を含む。また、この測定に応じて、この装置は、ユーザへの通知及び/又は力の調整を行う。
相補的な、関連するバージョンでは、直前に述べた撮像装置及び/又は力測定装置について、コンピュータ可読媒体、又は代替的な一時的な、伝搬信号は、本明細書で提案する構成態様の一部である。
【0016】
仰臥位の患者の頭蓋部用のプローブ保持及び位置決め技術の詳細について、以下の図面を用いて、以下でさらに説明する。なお、図面は一定の縮尺で描かれておらず、参照符号は、いくつかの図面を通して同じ又は同様の構造に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明による例示的なEMS頭部フレームの正面図の概略図である。
【
図1B】本発明による例示的なEMS頭部フレームの正面図の概略図である。
【
図2A】本発明による例示的なEMS頭部フレームの側面図の概略図である。
【
図2B】本発明による例示的なEMS頭部フレームの上面図の概略図である。
【
図3】本発明による例示的なEMS頭部フレームの斜視図と、例示的なEMS頭部フレームの固定部材の態様の上面図とを含む図である。
【
図4】本発明によるプローブ自動化位置決めシステムの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1Aには、例示的且つ非限定的な例として、一体型頭部フレーム100が示されている。このフレーム100は、超音波撮像に使用されるような撮像用プローブ(図示しないが、治療用プローブ、又は撮像用/治療用プローブの組合せ)を保持するための円形開口部102を有する。プローブの遠位先端部は、医療患者108の頭部106のこめかみ、又は側頭骨領域104に接して配置される。頭蓋骨における音響ウィンドウが、最小限の音響減衰で、側頭骨領域104内に位置される。頭部フレーム100は、仰臥位109、すなわち上を向いて横になった状態のEMS患者108に使用するように特に設計されている。頭部フレーム100の基本的な構成要素は、一体型であっても又は通常分離できない形態でもよいが、頭部フレームの部品が、クリーニング又は交換のために取り外し可能に作製されている。
【0019】
頭部フレーム100は、頸部112の後面111の形状に従うような頸部サポート110を含んでおり、頭部106を包み込むような構成113となっている。
【0020】
具体的には、頭部フレーム100は、その上向き端部に上述した円形開口部102有するプローブホルダー116の形態の、超音波プローブ用のサポート114をさらに含む。プローブホルダーの他の直立構造体(図示せず)は、別の円形開口部を含み、頭部106の反対側で上方に突出し、且つ別のプローブ(図示せず)を支持するように使用可能である。どちらかの場合に、すなわち、1つ又は2つの直立構造体において、この構成113は、頭部106を包み込む。この構成は、頭部の後面と、1つ又は2つの側面とを含む。頭部106の後面120に接してこの後面の形状に従うように配置されるコンフォーマル(conformal)なサポート又はベース118が、コンフォーマルな頸部サポート110と一体化される。後頭部サポート118は、直立した、コンフォーマルな外側リム122を含む。両方のサポート118が、頭部106の後面120の上側部分を取り囲むように上方に延びる。特に、ベース118及び/又は頸部サポート110が、頭部106及び/又は頸部112に対応する後面の形状に従うように成形される。特に、ホルダー116は、頭部106に取り付けるように構成されていない。その代わりに、頭部106の重量124が、プローブサポート114を介して、プローブを頭部106に接する所定の位置に維持するように機能する。同様に、形状に従うようなコンフォーマリティ(conformality)が、プローブを頭部106に接する所定の位置に維持するように機能する。患者108が、下向き矢印115によって示されるように、自分の頭部106を下にして頭部フレーム100内に横たえると、プローブを、側頭骨領域104と位置合わせするように、(さらに以下で議論するように)手動又は電動式移動によって(さらに)調整することができる。頭部フレーム100によって、プローブホルダーを上/下及び左/右に移動させることにより、プローブのXY調整が可能になる。垂直方向の移動は、垂直スロット126によって提供され、上側ガイド128と下側ガイド130との間のたるみで示されるように調節可能である。左/右の移動用の水平方向スロットが、プローブホルダー116がその内部に嵌合するような水平スロットの形態でトラック(図示せず)によって提供される。両方のスロットによって、堅い、摩擦嵌合が提供される。代替的に又は水平スロットに加えて、垂直スロットを、リム122に設けてもよい。プローブの回転及び角度決めは、円形開口部102内に取り付けられ且つ固定可能にされるプローブを球状構造体内に固定することにより実現される。円形開口部102は、球形の部分のように成形された内面を有する。球状構造体は、嵌合するようなペアを成すクラムシェル形状部品であってもよい。嵌合された部品の外側によって一致する球面が形成され、嵌合された部品の内面が、保持されるプローブの特定のタイプの周囲表面に一致する。2つの部品は一緒に、角度決めのために開口部102内に緩く保持されるプローブ・アダプタを構成する。ユーザがアクセス可能なレバーによって作動する伸長可能な、外側の、摩擦面等のクランプ機構によって、アダプタを所定の位置に固定する。他の代替機構を用いてもよい。例えば、円形開口部102は、断続的であり、したがって伸長可能であり、且つユーザが調整可能なクランプによって圧縮することができる。「Z」方向の位置決めは、円形開口部102を取り囲むとともにこの開口部と同心になる摩擦スロットによって得ることができる。頭部フレームのための多数のプローブ位置決めスキームは、”Ultrasound Headset”という標題の、同一出願人に譲渡された国際特許出願に提示されており(フィリップス発明の開示番号2012ID00129及び2012ID02587)、これらの文献の全体の開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。以下で議論される代替実施形態のように、(3つの直交軸に沿った)X-Y-Z位置決めだけでなく回転/角度決めは、電動式の実施形態と一緒に実施可能である。側頭骨領域104の音響ウィンドウにプローブの遠位先端部を位置合わせすることは、頭部フレーム100の剛性構造と、頭部106の重量と、形状に沿って形成されるコンフォーマリティ(conformality)とによって維持される。この構成では、頭部フレーム100は、酸素流のためのフェイスマスク等の患者の顔及び/又は頭に他のアイテムを配置することを妨げない。これは、患者安定化のためのEMSのワークフローや、搬送用ストレッチャによる搬送のために準備、及び救急車やヘリコプター等のEMS車両での搬送とに整合する。頭部フレーム100は、例えばストラップの使用を避けるために、下部搬送用ストレッチャに堅く取り付けるための取り付け機構を含んでもよい。取付けのための寸法は、ストレッチャの寸法と互換性を有するであろう。
【0021】
摩擦式アセンブリベースの頭部フレーム150が、
図1Bに示されている。このフレーム150は、頸部の形状に従うようなコンフォーマルな頸部サポート152として実現された第1の別個の構造体を有しており、このサポート152は、水平方向アセンブリスロット156を有するような部分的に形状に従うようなコンフォーマルな頭部サポート154を有する。着脱可能に取り付けられるプローブホルダー158が、スロット156内に摩擦によってしっかりと嵌合するような伸長部160を含む。この伸長部160は、以下で議論するように逆向きに選択的に回転可能であるが、頸部サポート152に対して伸長部の固定位置合わせ162を提供するために、係止によって、所定の位置に固定される。患者108は、最初に、(丸数字1)164によって表されるように、頭部支持部を含む頸部サポート152に自分の頭部106を下にして配置する。その後、(丸数字2)166によって表されるように、プローブホルダー158を、頭部ホルダー154に向けて摺動し、伸長部160をスロット156内に挿入して、それによって頸部サポート152に接触させる。右側の図において、伸長部160が部分的に挿入されるのが示されている。頭部サポート154を完全に係合するとともに、円形開口部102を側頭骨領域104上に移動させるために、伸長部160は、(丸数字3)167によって表されるように、スロット156内に完全に摺動される。この実施形態では、プローブホルダー158は、伸長部160及びスロット156によって頸部サポート152と取外し可能な摩擦係合で摺動する。頭部フレーム100のデザインは、頭部106が(すでに所定の場所に配置されているが)内部に下向きに配置可能であるような挿入部を含む第2の構造体168、すなわち頭部フレーム自体を形成するデザインである。位置合わせ部(アライメント)162、形状に従うようなコンフォーマリティ、及び頭部106の重量124によって、プローブホルダー158を介してプローブを所定の位置に保つ。「X」方向の位置決めは、伸長部160の挿入の程度を調整することによって達成され、「Y」方向の位置決めは、上下ガイド128,130を含むような、
図1に示されるような同じ垂直スロット構成を介して達成される。「Z」方向の位置決め及び回転/角度決めは、
図1Aに関して上述した同じ方法で実現することも可能である。
図1Aの一体型頭部フレーム100と同様に、プローブホルダー158は、患者108の他方のこめかみに接触するような別のプローブ用に、他方の側面に別の直立構造体を含む。上述したようには、伸長部160は、逆向き172に180°だけ回転可能170である。伸長部160は、ボタンを回転体の端部に付勢するための丸みを帯びた外観を有するような面内スプリング負荷ボタンにより、その後所定の位置に係止される。ボタンは、係止を解除するためのユーザ制御によって引き出し可能である。これによって、取り付けられたプローブが、プローブを交換することなく頭部106上で反転させることが可能になる。一方のプローブが、撮像に特化した他方のプローブと一緒に治療に特化させてもよいので、多数の患者を治療する上での柔軟性が、低減された展開時間によって増大される。また、
図1Aに関連して上述した設計のために、ここでも、欠陥のあるプローブを、速やかに取外し又は交換することができる。
【0022】
スロットベースの摩擦係合は、オプションである。
図2A及び
図2Bに例として示される摺動式アセンブリの頭部フレーム200は、その後、コンフォーマリティ、頭部106の重量124によって、プローブホルダー212を介して頭部106の側頭骨104に接する所定の位置に頭部プローブ(複数可)204,208を保持するための剛性構造体に寄り掛かる。頭部フレーム200は、
図2Bに最も良く確認することができるように、U字形状の頸部サポート220を有しており、そしてプローブホルダー212は、一致するU字形状の切込み228又は切欠きを有する。頸部サポート220は、プローブホルダー212に取り付けられ又は取外し可能に取り付けられるように構成する必要がない。その代わりに、頸部サポートに載置される頭部106を用いて、プローブホルダーを、頸部サポートの内外に、或いはこの頸部サポートに隣接して又は接触して摺動226させることができる。頸部サポート220は、破線232によって表されるように、頸部112の後面111の形状に従うように成形された上面を有する。同様に、プローブホルダー212は、頭部106を仰臥位で受けるためのベース236を有しており、その上面は、破線240によって表されるように、頭部106の後面120の形状に従うように成形される。頸部サポート220のコンフォーマルな成形の一部は、頭部106の後面120でも行うことができる。そのため、ベース236は、頭部106の後面120の形状に従うように成形されており、及び頸部サポート220は、少なくとも部分的に、頸部112の後面111の形状に従うように成形される。頸部サポート220は、U字形状の切込み228内に全ての挿入する必要がないように、調整可能である。プローブホルダー212は、プローブ(複数可)204,208を保持するための開口部244,248を有する。左側の開口部244が、
図2Aの分解図によって示されており、
図1Aの実施形態に関して上述したように、球状の断面252を有している。同じ球状の断面が、右側開口部(図示せず)に適用される。特に、頭部106の両側面に対する頭部フレームの鏡像対称性は、本特許出願の範囲に含まれる全ての実施形態に適用される。
【0023】
図3は、折畳み式頭部フレーム300の実現可能な実施形態である。超音波プローブサポートには、それぞれのプローブ312を頭部106との係合部から取り出すように離れる方向に角度が付けられ(angled away)、この係合部を再び確立するために元の方向に角度が付けられる(angled back)316ように構成された固定部材304,308が設けられる。元の方向に角度が付けられた固定部材304は、そのプローブ312を頭部106に接する所定の位置に堅く持するように機能する。頭部フレーム300は、離れる方向に及び元の方向に角度付けを行うためのヒンジ(図示せず)をさらに含んでもよい。ヒンジは、頭部106を不必要に固定するようなストラップが形成される搬送ストレッチャ320に取り付け可能である。他の取付け用ハードウェアとして、ストレッチャ320の側面とベース324の下にネジ、ネジ穴を含む角型ブラケット、及びネジ付きレセプタクルを含んでもよい。プローブ312は、プレート336の円形開口部332内に挿入可能なアダプタ328によって取り囲まれ且つ保持されており、そのプレート336は、金属又は硬質プラスチックで作製してもよい。開口部332は、前述した実施形態と同様に、アダプタ328の外面に一致する球状の断面を有する。プレート336は、固定部材304内にスロット344を規定するような2つの対向面によって挟まれている340。プレート336は、部材304,308と摺動係合するように配置されており、折畳み式頭部フレーム300は、プローブ312を位置決めするために、部材に関してプレートを摺動させるように構成されている。プレート336の横方向寸法は、プレート336をスロット344内でどの様に摺動させても、開口部332が、固定部材304のオリフィス346によってユーザが完全に利用可能となるように十分に大きな寸法にされている。オリフィス346を介して、側頭骨領域104の音響ウィンドウとプローブ312との接触が達成可能である。固定部材304の外側のユーザ回動ノブ(図示せず)は、所望の又は標的が付けられたXY位置決めが達成されると、プレート336を所定の位置に固定するために使用してもよい。「Z」方向の位置決めは、上述した第1の実施形態で説明した同心摩擦スロットによって達成することができる。あるいはまた、位置決めは、以下でより詳細に説明するように、電動で行うことができる。固定部材304は、矢印352によって表されるように、元の方向に角度付けされ、内側に突出する部材の観点から、頭部を安定化させるために頭部106に接触するように構成された頭蓋骨スタビライザー348で随意に補完することができる。頭蓋骨スタビライザー348は、患者108に接触する遠位先端部にパッド356を有している。ここで再び、鏡像対称性は、頭部106の両側面において頭部フレーム300の構成に関して実現することができる。
【0024】
折畳み式頭部フレーム300は、プローブ取付け構造、すなわち固定部材304,308が、折り畳むことができ、又は患者を搬送ストレッチャ320上に再位置決めすることなく患者の頭部106から離れる方向に角度付けを行うことができるので、プローブの容易な位置決め及び調整を提供する。これは、例えば、プローブを患者の頭部に接して保持するための頭部バンドを使用する現在の設計に容易に実装可能ではない。固定部材308が、元の方向に角度付けされる316ときに、プローブを再位置決め又は再び標的に向けることなく、離れる方向に折り畳まれる機構が、治療中に超音波ゲルの適用を要求し、音響結合が時間の経過と伴に減少する。同様のことは、ゲル結合が確実に提供されないことがある追加のプローブの角度決めが要求される場合のように、音響結合パッドが、ゲルの所定の位置に適用されるときに、これらの過程で適用される。全体的な形状ファクタや、患者へのアクセス性、搬送中にプローブを堅く保持する能力は、折畳み式頭部フレーム300の全ての利点である。
【0025】
自動プローブ位置決めシステム400は、
図4に示される例に確認されるように、超音波プローブ404、プローブを3つの直交軸に沿って位置決めするためのX-Y-Z電動式アセンブリ408、超音波スキャン・プロセッサ412、経頭蓋超音波収差補正プロセッサ416、ユーザインターフェース420、及びマイクロコントローラ424を含む。
【0026】
プローブ404はそれぞれ、ひずみゲージ428と、ひずみゲージの測定値を送信するための無線通信回路432とを含む。マイクロコントローラ424は、測定値を受信するための無線通信回路436を有する。あるいはまた、有線の実施形態は、ケーブルを介してマイクロコントローラ424と通信できる。ひずみゲージ428は、表面下の浅いハウジング内であって、プローブの周りの円周方向に離間して配置されたプローブ404の軸線方向の長手方向に設けられており、且つプローブの遠位先端部の近く、すなわちアダプタと患者108との間に配置される。同様のひずみゲージ構成の例が、Blumenkranzらの米国特許出願公開第2007/0151390号の
図2~
図7に提供されており、この文献の全体の開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。ゲージ428の同様の構成を、プローブホルダー又はプローブ・アダプタにも組み込む或いは代わりに組み込むことができる。ゲージ428の軸方向のひずみの測定値は、側頭骨への音響結合を損失することなく、測定値に応じて、治療中に小量の快適調整を行う際に、マイクロコントローラ424によって使用可能である。電動式アセンブリ408を介してプローブ404の遠位先端部に力を適用するような調整が、患者108に対して適用される。代替的に又は追加的に、測定された力は、モニタ上のディスプレイ等によって、ユーザインターフェース420の出力機能により臨床医に報告可能である。プローブ404が患者の頭部106ともはや接触しなくなるような検出は、ユーザ通知及び必要に応じて自動化された補正調整とともに、代わりに力フィードバックによって得ることができる。
【0027】
電動式アセンブリ408は、プローブ404(複数可)を介して得た閉ループ撮像ガイダンスの下で、自動的に及びユーザの医療介入の必要なしに、頭部106の側頭骨ウィンドウにプローブ404を位置決めするためのX-Y-Z並進を行うことができる。例えば、経頭蓋超音波収差補正プロセッサ416は、同一出願人に譲渡されたShiらの米国特許出願公開第2012/0165670号(以下「Shi出願」)に記載されているように、装置の設定を決定するために起動されるものであり、この文献の全体の開示は参照することにより本明細書に組み込まれる。最適な音響ウィンドウを達成するために調整される装置設定のタイプは、プローブ(複数可)404内の超音波トランスデューサ(複数可)の送信及び/又は受信用アパーチャ(開口部)である。別のタイプは、マトリクスアレイ・トランスデューサ等のトランスデューサのXY配置である。並進は、プローブ(複数可)404を介して得られる閉ループ画像ガイダンスの下でリアルタイムで行うことができる。「Z」方向の位置決めは、上述したように例えば快適性調整の電動式アセンブリ408によって、及び本明細書で上述した同心スロット並進によって、随意にリアルタイムで行われる。プローブ回転/角度付けは、同様に、最適な音響ウィンドウを見つけることを支援するために電動化される。自動化プローブの位置決めの他のタイプは、一方のプローブ404が、治療に特化又は専門化されている一方、他方のプローブが、撮像に特化又は専門化されており、そして治療ビームが、画像ガイダンス・フィードバックの下で配置される場合のように、プローブ間の位置合わせのタイプ(形式)を含む。治療中に定期的に更新されるようなこの種の自動化された位置合わせは、”Transducer Placement and Registration for Image-Guided Sonothrombolysis”という標題の同一出願人に譲渡された国際特許出願公開で議論されているが(フィリップス整理番号2012PF01946)、この文献の全体の開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。自動化された位置決めは、自動化されたドップラー式血流量分析、自動化された脳卒中診断、自動化された血栓位置特定、自動化された治療ビーム強度監視、及び他の時間及び脳の節約(救済)測定法で利用可能でもある。
【0028】
上述した本明細書で提案される実施形態は、脳卒中の治療、特にポイント・オブ・ケア(現場で診断/治療を行う)の設定又はEMSの設定で使用可能である。STLは、これらの治療法の一つであるが、適用用途は、超音波検査を用いた経頭蓋のカラードップラー(TCD)を含む脳の治療用途における超音波診断の使用にも及ぶ。その安定した設計によって、頭部フレームは、集中治療室(ICU)の連続監視に用いることができる。これは、コンピュータ断層撮影(CT)を受けるように移動できない、或いは電離CTに連続的に曝露することを望まないような重症患者の脳の解剖学と血流状態(疾患)に適用されるような、5~30分毎に更新されるICU監視が含まれる。追加の適用用途は、軽度の外傷性脳損傷(mTBI)や爆風による外傷性脳損傷(bTBI)の治療のための用途を含むような治療目的のために、超音波/マイクロバブル併用の療法を伴うものである。
【0029】
超音波撮像とプローブ配置の文脈で上記に示したが、本明細書で提案される実施形態は、1つ又は2つのプローブが、患者の頭部に接触して固定されるように維持されるような、医療用画像化の任意の種類、例えば、光音響、赤外線、光学的撮像に及ぶ。
【0030】
頭部フレームは、医療患者の頭部用に構成され、プローブ用のサポート及び頸部サポートを含む。フレームは、この頭部を包み込み、及び仰臥位で使用することができる。サポートは、頸部サポートと接触又は係合するような、頭部の下で摺動可能なプローブホルダーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、頭部及び/又は頸部の形状に従ったコンフォーマルな成形、フレームの剛性構造、頸部サポートに対する必要に応じて分離可能なホルダーの位置合わせ、及び頭部の重量の全てが、ストラップ等によって頭部にフレームを取り付けることなく、超音波プローブの遠位先端を頭部の側頭蓋領域に接する所定の位置に保持するのに役立ち、救急医療サービスの設定で患者/車両移動に対して堅牢な配置を提供する。頭部固定化壁は、いくつかの変形形態では折り畳まれ、プローブの位置合わせを維持することができる。ホルダーにおいて、球形状の断面を有する任意の円形開口部によって、プローブ(複数可)を所定の位置に回転することが可能になり、X-Y-Zの位置も、全て手動又はモータにより提供することができる。
【0031】
本発明について、図面及び前述の説明において詳細に図示し且つ説明してきたが、このような図示及び説明は、例的又は例であると考えるべきであり、限定するものではないことを考慮すべきである。本発明は、開示される実施形態に限定されるものではない。
【0032】
例えば、本明細書で提案される実施形態の対象範囲には、以下で説明するように、プローブを適用してのひずみ監視及び調整、並びに電動式プローブ位置決めを行うように実行可能な命令を有するコンピュータプログラムを具体化する集積回路等の、コンピュータ可読媒体も含まれる。機能は、ソフトウェア、ハードウェア及びファームウェアの任意の組み合わせによって実現可能である。また、用語「医療患者」は、人間に関するものであり、麻酔され、脳の診断又は治療を受ける動物に関するものである。また、薄層の緩衝材を、頭部フレームが患者に接触する箇所に提供することができる。
【0033】
開示された実施形態に対する他の変形形態は、図面、発明の詳細な説明、及び添付の特許請求の範囲の検討を行うことにより請求項に記載された発明を実施する際に当業者によって行うことができる。請求項において、用語「備える、有する、含む(comprising)」は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「1つの(a, an)」は、複数を排除するものではない。請求項における如何なる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0034】
コンピュータプログラムは、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ハードディスクドライブ、半導体ハードディスク等の固体媒体、フラッシュメモリ、USBサムドライブメモリ、読み出し専用メモリ(ROM)、光ディスク等の光記憶媒体、及び光磁気ディスク等の適切なコンピュータ可読媒体上で、一時的に、一定期間又はより長い期間格納できる。光ディスクの例としては、例えば、CD-ROM、CD-RW、CD-R、DVD-ROM、DVD-RW、DVD-Rディスク等のコンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)を含む。このようなコンピュータ可読媒体は、一時的な伝搬信号ではないという意味において非一時的であり、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ、RAM及び他の揮発性メモリ等の他の形態のコンピュータ可読媒体も含む。
【0035】
単一のプロセッサ又は他のユニットによって、特許請求の範囲に記載されたいくつかのアイテムの機能を充足してもよい。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。