(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】伸縮材、伸縮材の製造方法、伸縮性部材、伸縮性部材の製造方法、及び衣料製品
(51)【国際特許分類】
B32B 25/14 20060101AFI20220502BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20220502BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
B32B25/14
A61F13/56 210
A61F13/49 319
(21)【出願番号】P 2017094928
(22)【出願日】2017-05-11
【審査請求日】2020-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】森下 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】永田 浩康
(72)【発明者】
【氏名】新井 修晴
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-077784(JP,A)
【文献】国際公開第2015/153979(WO,A1)
【文献】特開2009-241601(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076346(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 25/14
A61F 13/56
A61F 13/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーを含むコア層と、前記コア層の主面に設けられたスキン層とを備えた伸縮材であって、
前記コア層及び前記スキン層を貫通する複数の貫通孔を有し、
前記貫通孔の外縁に
おいてバリが平坦化されて形成された突出部の高さが160μm以下である、
伸縮材。
【請求項2】
前記突出部の高さが100μm以下である、
請求項1に記載の伸縮材。
【請求項3】
前記伸縮材に対する前記複数の貫通孔が占める面積の割合は、0.5%以上且つ30%以下である、
請求項1又は2に記載の伸縮材。
【請求項4】
前記貫通孔は、円形状とされており、
前記貫通孔の直径は、0.2mm以上且つ3mm以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の伸縮材。
【請求項5】
通気性が10(cm
3/cm
2・s)以上である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の伸縮材。
【請求項6】
2回目150%伸長時の引張応力が2N/25mm以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の伸縮材。
【請求項7】
2回目250%伸長時の戻り応力が0.2N/25mm以上である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の伸縮材。
【請求項8】
少なくとも一方向に伸長したときの伸び率が150%以上である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の伸縮材。
【請求項9】
少なくとも一方向に伸長したときの引張強さが1N/25mm以上である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の伸縮材。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の伸縮材の前記スキン層が塑性変形した構造を有する伸縮部と、
前記伸縮材の層構造が維持された形状保持部と、を備える、
伸縮性部材。
【請求項11】
前記伸縮部における前記貫通孔以外の部分とおむつの透湿性ポリエチレンシートとの白黒コントラスト差が55以上である、
請求項10に記載の伸縮性部材。
【請求項12】
エラストマーを含むコア層と、前記コア層の主面に設けられるスキン層とを備えた伸縮材の製造方法であって、
前記コア層及び前記スキン層を貫通する複数の貫通孔を、前記貫通孔の外縁の突出部の高さが160μm以下となるように形成する工程を備え
、
前記工程において、前記複数の貫通孔が形成された前記伸縮材を80℃以上の温度で平坦化する、
伸縮材の製造方法。
【請求項13】
前記工程において、複数の熱針を前記コア層及び前記スキン層に貫通させて前記複数の貫通孔を形成する、
請求項12に記載の伸縮材の製造方法。
【請求項14】
前記工程において、ダイカットによって前記複数の貫通孔を形成する、
請求項12に記載の伸縮材の製造方法。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に記載の伸縮材の少なくとも一部を延伸させて、前記スキン層の少なくとも一部を塑性変形させる工程を備える、
伸縮性部材の製造方法。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載の伸縮材、又は請求項10若しくは11に記載の伸縮性部材を備える、
衣料製品
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、伸縮材、伸縮材の製造方法、伸縮性部材、及び伸縮性部材の製造方法に関する。また、本発明の一側面は、伸縮材又は伸縮性部材を備える衣料製品に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料製品等に用いられる伸縮材及び伸縮性部材については従来から様々なものが知られている。例えば、特許文献1には、弾性及び空気透過性を有し、弾性おむつ閉止ベルト、及びおむつの弾性側部の製造に適した複合材が記載されている。複合材は、複数の穿孔を有すると共に、一方向に優先的に伸長可能な穿孔フィルムとされた弾性支持材を備える。
【0003】
弾性支持体の両面には、繊維材料から成る編成布が貼り付けられる。編成布は、所定のパターンで塗布された接着剤によって弾性支持材に接着される。上記所定のパターンは、弾性支持体の伸長方向に対して直交する方向に配列される複数の条線によって形成される。
【0004】
ロールに巻き付けられた弾性支持体は、ロールから引き出された後に、前述のパターンで接着剤が塗布される。一方、ロールに巻き付けられた編成布は、ロールから引き出された後に弾性支持体の搬送方向に交差する方向に搬送される。このように搬送された編成布は、弾性支持体の片面又は両面に貼り付けられる。弾性支持体に編成布が貼り付けられて積層複合体が形成され、この積層複合体に対して打ち抜き加工がなされることにより、伸長可能なおむつ用の弾性側部を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した弾性支持体には複数の穿孔が形成されており、当該穿孔は、例えば、高温とされた針付きローラによって形成される。このように針が弾性支持体に突き刺さることによって穿孔が形成される。ところで特に、針を弾性支持体から引き抜くときに、穿孔の外縁に、当該外縁から突出するバリが形成されることがある。
【0007】
前述した弾性支持体は、例えばおむつとして用いられるものであり、人の身体に近い所で使われることが想定される。よって、前述したバリが形成されると、ざらざらした感触を与えかねないため、肌触りが良好でなくなるという問題等が発生しうる。また、不織布等の柔らかい素材と組み合わせたり当該素材と隣接して使われたりすることがあり、その場合に、弾性支持体が不織布に引っ掛かる等して機能を阻害する問題が発生しうる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る伸縮材は、エラストマーを含むコア層と、コア層の主面に設けられたスキン層とを備えた伸縮材であって、コア層及びスキン層を貫通する複数の貫通孔を有し、貫通孔の外縁に形成される突出部の高さが160μm以下である。
【0009】
前述した一側面に係る伸縮材は、複数の貫通孔を有するため通気性を高めることができる。また、貫通孔の外縁に形成される突出部の高さが160μm以下とされているので、その後の加工で突出部を貫通孔に入り込みにくくすることができる。突出部の高さが160μm以下であることにより、例えば肌触りを良好にすることができる。
【0010】
突出部の高さが100μm以下であってもよい。これにより、例えば肌触りを一層良好にすることができる。
【0011】
伸縮材に対する複数の貫通孔が占める面積の割合は、0.5%以上且つ30%以下であってもよい。これにより、例えば伸縮材の通気性を高めると共に、伸縮材の強度を維持することができる。
【0012】
貫通孔は、円形状とされており、貫通孔の直径は、0.2mm以上且つ3mm以下であってもよい。貫通孔が円形状であることにより、角がないため貫通孔からの破断を生じにくくすることができる。また、貫通孔の直径が0.2mm以上且つ3mm以下であることにより、複数の貫通孔の美観を高めると共に、高い通気性を維持することができる。
【0013】
通気性が10(cm3/cm2・s)以上であってもよい。これにより、例えば高い通気性を維持することができる。
【0014】
2回目150%伸長時の引張応力が2N/25mm以下であってもよい。これにより、例えば衣料製品を身に着けるときに伸ばすことを容易にすることができる。
【0015】
2回目250%伸長時の戻り応力が0.2N以上であってもよい。これにより、例えば身に着けた後に身体にフィットすることに適した機械特性を得ることができる。
【0016】
少なくとも一方向に伸長したときの伸び率が150%以上であってもよい。これにより、例えば複数の貫通孔を形成した状態において高い伸び率を維持することができる。
【0017】
少なくとも一方向に伸長したときの引張強さが1N/25mm以上であってもよい。これにより、例えば複数の貫通孔を形成した状態において高い引張強さを維持することができる。
【0018】
本発明の一側面に係る伸縮性部材は、前述した伸縮材のスキン層が塑性変形した構造を有する伸縮部と、伸縮材の層構造が維持された形状保持部と、を備える。この伸縮性部材は、前述した伸縮材を備えるので、前述の伸縮材と同様の作用効果が得られる。また、この伸縮性部材を衣料製品に適用した場合、着用時には伸縮部が伸長し、形状保持部はその形状が維持される。従って、形状保持部において他の部材と接合することができるので、他の部材との良好な接合性が得られる。
【0019】
伸縮部における貫通孔以外の部分とおむつの透湿性ポリエチレンシートとの白黒コントラスト差が55以上であってもよい。これにより、例えば伸縮性部材が適切に配置されていることの確認が容易となる。
【0020】
本発明の一側面に係る伸縮材の製造方法は、エラストマーを含むコア層と、コア層の主面に設けられるスキン層とを備えた伸縮材の製造方法であって、コア層及びスキン層を貫通する複数の貫通孔を、貫通孔の外縁の突出部の高さが160μm以下となるように形成する工程を備える。
【0021】
前述の製造方法では、前述した伸縮材と同様の作用効果を奏する伸縮材を製造することができる。
【0022】
前述の工程において、複数の熱針をコア層及びスキン層に貫通させて複数の貫通孔を形成してもよい。また、前述の工程において、ダイカットによって複数の貫通孔を形成してもよい。この場合、貫通孔の外縁に形成される突出部の高さを一層確実に抑えることができ、肌触りが更に良好となる。
【0023】
前述の工程において、複数の貫通孔が形成された伸縮材を80℃以上の温度で平坦化してもよい。これにより、伸縮材が高温で平坦化されるので、突出部の高さを一層確実に抑えることができる。
【0024】
本発明の一側面に係る伸縮性部材の製造方法は、前述した伸縮材の少なくとも一部を延伸させて、スキン層の少なくとも一部を塑性変形させる工程を備える。この製造方法では、前述した伸縮材及び伸縮性部材と同様の作用効果を奏する伸縮性部材を製造することができる。
【0025】
本発明の一側面に係る衣料製品は、前述した伸縮材、又は前述した伸縮性部材を備える。この衣料製品では、前述した伸縮材及び伸縮性部材と同様の作用効果が得られる。
【0026】
本発明の別の側面に係る伸縮性部材は、エラストマーを含むコア層と、コア層の主面に設けられたスキン層とを備え、当該スキン層が塑性変形された伸縮性部材であって、コア層は白色マスターバッチを含まない構成であり、且つ/又は、スキン層はホモポリオレフィンで構成され、透湿性ポリエチレンシートとの白黒コントラスト差が55以上であってもよい。これにより、例えば伸縮性部材が適切に配置されていることの確認が容易となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一側面によれば、通気性を高めることができると共に、肌触りを良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施形態に係る衣料製品の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の衣料製品に含まれうる伸縮材の一態様を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿った拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の平面図を拡大した伸縮材の平面図である。
【
図6】
図6(a)は、
図5の貫通孔の突出部を示す断面図である。
図6(b)は、平坦化処理を施した後の突出部を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図5の貫通孔を形成する手段の一態様を示す側面図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、伸縮材の延伸処理の一態様を説明するための図である。
【
図9】
図9は、伸縮性部材の一態様を示す平面図である。
【
図11】
図11(a)は、千鳥状の貫通孔を有する伸縮材における伸長率と引張応力の関係の一例を示す図である。
図11(b)は、格子状の貫通孔を有する伸縮材における伸長率と引張応力の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、図面を参照しながら本発明に係る伸縮材、伸縮材の製造方法、伸縮性部材、伸縮性部材の製造方法、及び衣料製品の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解を容易にするため一部を簡略化又は誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0030】
(伸縮材)
本実施形態に係る伸縮材は、エラストマーを含むコア層と、コア層より低い引張降伏応力を有するスキン層と、を備える。伸縮材は、延伸処理でスキン層の少なくとも一部が塑性変形することにより、伸縮部を備えた伸縮性部材が形成される。伸縮性部材の形成では、スキン層の一部を塑性変形させて、伸縮材の層構造が維持された部分(形状保持部)を設けてもよい。形状保持部を有する伸縮性部材は、当該形状保持部において他の部材との良好な接合性が確保される。
【0031】
伸縮材は、コア層の両主面のそれぞれにスキン層が積層された層構造(スキン層/コア層/スキン層)を有してもよい。この伸縮材では、両主面側の引張応力がより均一となるので、不均一な収縮よる反り等が防止される。この伸縮材では、ロール状に巻かれたときにスキン層同士が接触するため、伸縮材間(例えば、スキン層とコア層との間)におけるブロッキングが防止され、巻き出し時の作業性及び伸縮材の保存安定性が良好になる。なお、伸縮材の層構造は、上記に限定されず、例えば、コア層の一方面側のみにスキン層が積層された層構造(コア層/スキン層)を有していてもよい。
【0032】
コア層とスキン層とは、直接接着されていてもよいし、中間層を挟んで間接的に接着されていてもよい。中間層は、例えば、色材を含む修飾層、又はコア層とスキン層を互いに接合する接着剤層であってもよい。コア層とスキン層との接着態様は特に限定されず、例えば、コア層及びスキン層を構成する樹脂同士が融着していてもよく、コア層及びスキン層の間に介在する接着剤層によって接着されていてもよい。
【0033】
コア層の厚さ、及びスキン層の厚さは、特に限定されないが、コア層の厚さはスキン層の厚さ以上であってもよい。この場合、伸長時における伸縮部の狭幅化(ネッキング)がより確実に抑制される。伸長時のネッキングを小さくすることができるため、締め付け力の局所的な作用が防止され、着用時の優れた快適性を実現できる。また、スキン層が後述するミクロ相分離構造を有する場合、コア層がスキン層より厚いことにより、ネッキングがより確実に抑制され、着用時の快適性が更に向上する。また、スキン層がミクロ相分離構造を有する伸縮材では、伸長時の伸びが一層均一になる傾向がある。
【0034】
本実施形態において、コア層の厚さに対するスキン層の厚さの比は、0.1以上且つ1以下であってもよいし、0.2以上且つ0.5以下であってもよい。この場合、伸長時のネッキングが更に確実に抑制される。なお、伸縮材に複数のスキン層が積層されているとき、「スキン層の厚さ」は、各スキン層の厚さの合計を示す。また、伸縮材に複数のコア層が積層されているとき、「コア層の厚さ」は、各コア層の厚さの合計を示す。
【0035】
本実施形態において、伸縮材は、少なくとも一方向における300%伸長時の引張応力が、当該一方向におけるスキン層の引張降伏応力の110%以下であってもよい。300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下である場合、実用上有用な200%程度の伸長を行っても形状保持部が元の形状を維持できるため、他の部材との接合性が一層良好となり、より多くの繰り返し使用が可能となる。
【0036】
なお、本実施形態において、伸縮材の300%伸長時の引張応力は、JIS K 7127に準拠し、試験片幅が25mm、チャックの間隔が50mm、試験速度が300mm/min、にて測定される。なお、伸縮材が複数のスキン層を有するとき、各スキン層の引張降伏応力のうち最大のものを「スキン層の引張降伏応力」とする。スキン層の引張降伏応力は、伸縮材からスキン層を剥離して測定してもよく、スキン層と同等の試験片を用いて測定してもよい。なお、簡易な方法として、伸縮材の引張応力試験において、全てのスキン層が塑性変形する降伏点をスキン層の引張降伏応力とみなすこともできる。
【0037】
本実施形態において、伸縮材は、少なくとも一方向に200%伸長させたとき、伸長方向に直交する幅方向への縮み率(伸長前の幅に対する、伸長により縮んだ幅の比率)が30%以下であってもよく、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下であってもよい。
【0038】
伸縮性部材が伸縮部及び形状保持部を有するとき、形状保持部の幅は一定に維持され、伸縮部は伸長に応じて狭幅化される。伸縮材では、例えば、200%伸長時の伸長方向に直交する幅方向への縮み率が30%以下であることにより、伸長時の伸縮部の狭幅化の程度が十分に小さく、装着性及び着用性を十分に確保することができる。この伸縮材では、縮み率が上記の範囲となる方向に延伸して伸縮部を形成してもよい。
【0039】
なお、本実施形態において、200%伸長時の伸長方向に直交する幅方向への縮み率は、以下の方法で測定される値を示す。まず、伸長方向及び幅方向に沿って長辺及び短辺を有する長方形状の試験片(幅50mm、長さ50mm以上)を準備する。試験片の伸長方向の両端を延伸部分の長さが50mmとなるように挟持し、伸長方向に200%延伸させる。試験片の初期幅をL2,200%延伸時の試験片の幅の最小値をL1としたとき、縮み率(%)は、(L2-L1/L2)×100で算出される。
【0040】
次に、本実施形態に係る伸縮材を構成する各層について説明する。
【0041】
(コア層)
本実施形態に係る伸縮材は、エラストマーを含むコア層を備える。コア層は、伸縮性部材の弾性機能を担う層であり、所望のゴム弾性を有するようにコア層の組成が選択されてもよい。コア層に含まれるエラストマーは、ゴム弾性を有する材料であり、コア層は、例えば、スキン層より10%低い引張応力を有する。本実施形態において、10%引張応力は、10%Modulusともいい、10%伸長させるのに必要な単位面積当たりの力であり、JIS K 6251に準拠して測定される。
【0042】
コア層の10%引張応力は、例えば、0.5MPa以下であってもよく、0.3MPa以下であってもよく、0.1MPa以下であってもよい。これにより、応力が小さくても追随して伸びやすいため、取扱性に優れた伸縮性部材が得られる。また、コア層は、少なくとも一方向において上記の範囲の300%引張応力を有していてもよい。なお、コア層は、伸縮材の延伸方向において、上記の範囲の300%引張応力を有していてもよい。
【0043】
コア層の厚さT1は、例えば、10μm以上であってもよく、15μm以上であることが好ましい。コア層の厚さT1は、十分な効果を得つつ材料費を低減する観点からは、例えば、100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、35μm以下であってもよい。
【0044】
コア層は、エラストマーを含む樹脂材料(以下、「樹脂材料(A)」ともいう)で構成されていてもよい。エラストマーの種類は、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレンブタジエンゴム、水添又は部分水添されたSIS、水添又は部分水添されたSBS、ポリウレタン、エチレンコポリマー(例えば、エチレンビニルアセテート、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー)、プロピレンオキシド(PO)等が挙げられる。
【0045】
樹脂材料(A)は、上記以外の他の成分を含んでいてもよい。例えば、樹脂材料(A)は、剛化剤(例えば、ポリビニルスチレン、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、クマロン-インデン樹脂)、粘度降下剤、可塑剤、粘着付与剤(例えば、脂肪族炭化水素粘着付与剤、芳香族炭化水素粘着付与剤、テルペン樹脂粘着付与剤、水素化テルペン樹脂粘着付与剤)、染料、顔料、酸化防止剤、静電防止剤、接着剤、粘着防止剤、スリップ剤、熱安定剤、光安定剤、発泡剤、ガラスバブル、スターチ、金属塩、マイクロファイバー等を含んでいてもよい。
【0046】
(スキン層)
本実施形態に係るスキン層は、例えば、少なくとも一方向においてコア層より10%高い引張応力を有する。スキン層は、コア層を保護する機能を有し、伸縮性部材の製造時には延伸処理によって塑性変形される。このとき、コア層は弾性変形し、スキン層は塑性変形することで、延伸部分が伸縮性部材の伸縮部として利用可能となる。また、スキン層は、伸縮性部材において、形状保持部の形状を維持する機能を有していてもよい。
【0047】
スキン層の10%引張応力は、例えば、1MPa以上であってもよく、2MPa以上であってもよい。これにより、小さい引張応力で変形しにくくなり、伸縮材の取扱性が良好となる。また、スキン層の10%引張応力は、例えば、15MPa以下であってもよく、10MPa以下であってもよい。これにより、スキン層を塑性変形させる応力を小さくすることができ、加工性が向上する。
【0048】
また、スキン層は、少なくとも一方向において上記の範囲の10%引張応力を有してもよい。スキン層は、伸縮材の延伸方向において上記の範囲の10%引張応力を有してもよい。なお、本実施形態において、スキン層の10%引張応力は、JIS K 6251に準拠して測定される。
【0049】
スキン層の引張降伏応力は、例えば、2N/25mm以上であってもよく、好ましくは2.5N/25mm以上、より好ましくは3N/25mm以上であってもよい。また、スキン層の引張降伏応力は、例えば、10N/25mm以下であってもよく、好ましくは7N/25mm以下であってもよい。
【0050】
なお、スキン層は、少なくとも一方向において上記範囲の引張降伏応力を有していてもよい。また、スキン層は、伸縮材の延伸方向において、上記範囲の引張降伏応力を有していてもよい。なお、スキン層の引張降伏応力は、JIS K 7127に準拠し、試験片幅25mm、チャック間隔50mm、試験速度300mm/minにて測定される。
【0051】
スキン層の引張降伏ひずみは、例えば20%以下であってもよく、好ましくは15%以下であってもよい。なお、スキン層は、少なくとも一方向において上記範囲の引張降伏ひずみを有していてもよい。また、スキン層は、伸縮材の延伸方向において、上記範囲の引張降伏ひずみを有していてもよい。本実施形態において、スキン層の引張降伏ひずみは、JIS K 7127に準拠して測定される。
【0052】
スキン層の厚さT2は、前述の好適な引張特性が容易に得られること、製造が容易となること等の観点から、例えば2μm以上であってもよく、5μm以上であることが好ましい。また、スキン層の厚さT2は、伸長状態を長時間維持したときの伸縮部のひずみを一層低減できる観点から、例えば30μm以下であってもよく、20μm以下であることが好ましい。
【0053】
一態様において、スキン層を構成する樹脂材料(以下、「樹脂材料(B)」ともいう)は、ミクロ相分離構造を形成するものであってもよい。このスキン層では、塑性変形しやすい相構造がスキン層全体に緻密に分布しているため、延伸処理によって均一に塑性変形させることができる。これにより、形成される伸縮部は、伸長時の伸びの均一性に優れたものとなる。また、スキン層がミクロ相分離構造を有することで、伸長時のネッキングがより顕著に抑制され、着用時の快適性に一層優れた伸縮性部材が実現される。
【0054】
さらに、上記のスキン層を用いると、100%延伸等の比較的低い延伸度合においても伸びが均一になることから、100%、150%、200%、250%、300%等の任意の延伸度合で伸縮材の延伸処理を行うことができる。なお、延伸処理時の延伸度合が異なると、形成される伸縮部の弾性、引張応力等の機械的特性が変化する。すなわち、この態様では、延伸処理時の延伸度合を変化させることで、同一の伸縮材から異なる特性を有する伸縮部を形成することができる。このため、例えば、衣料製品の部位によって求められる特性が異なる場合でも、求められる特性に応じて延伸度合を調整することにより、同一の伸縮材を各部位に適用できる。
【0055】
樹脂材料(B)が形成するミクロ相分離構造は、例えば、ラメラ構造、ジャイロイド構造、シリンダ構造、又はBCC構造等であってもよい。ミクロ相分離構造は、例えばブロックコポリマーにより形成されたものであってもよく、ポリマーブレンドにより形成されたものであってもよい。
【0056】
樹脂材料(B)は、ブロックコポリマーを含むものであってもよい。ブロックコポリマーとしては、ミクロ相分離構造を形成するブロックコポリマーが好ましい。ブロックコポリマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、若しくはブチレン等のオレフィン系、エチレンテレフタレート等のエステル系、又はスチレン等のスチレン系等を要素として含むものが挙げられる。
【0057】
樹脂材料(B)は、2種以上のポリマーを含むポリマーブレンドによりミクロ相分離構造を形成していてもよい。樹脂材料(B)に含まれるポリマーとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタレート、又はポリスチレン等が挙げられる。
【0058】
他の一態様において、樹脂材料(B)は、ミクロ相分離構造を形成せず、均一な層構造を成すものであってもよい。これにより、伸縮性部材の伸縮部において、長時間の着用によるひずみをより顕著に抑制できる。また、スキン層が均一な層構造を有することで、前述の伸長試験によるひずみを、25%以下の好適な範囲に抑えやすくなる。すなわち、本態様によれば、樹脂材料(B)がミクロ相分離構造を形成する場合と比較して、長時間の着用による伸縮部のひずみが一層抑制され、優れたフィット性をより長期間維持できる。
【0059】
樹脂材料(B)は、ホモポリマーを含むものであってもよい。ホモポリマーを含む樹脂材料(B)によれば、前述の均一な層構造を有するスキン層を容易に得ることができる。
【0060】
ホモポリマーとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリブチレン等が挙げられる。
【0061】
樹脂材料(B)は、上記以外の他の成分を含んでいてもよい。例えば、鉱物油増量剤、静電防止剤、顔料、染料、粘着防止剤、スターチ、金属塩、又は安定剤等を含んでいてもよい。
【0062】
本実施形態に係る伸縮材の製造方法は、特に限定されず、例えば、樹脂材料を用いた一般的な多層フィルム成形技術を適用できる。
【0063】
本実施形態に係る伸縮材は、例えば、コア層を構成する樹脂材料(A)及びスキン層を構成する樹脂材料(B)の同時押出成形により、コア層とスキン層とが一体的に成形されたものであってもよい。同時押出成形の条件は、樹脂材料(A)及び樹脂材料(B)の組成等に応じて適宜調整されてもよい。また、本実施形態に係る伸縮材は、樹脂材料(A)を含むA層と樹脂材料(B)を含むB層とをそれぞれ成形し、A層及びB層を積層することによって製造されてもよい。
【0064】
(伸縮性部材)
本実施形態に係る伸縮性部材は、伸縮材のスキン層が塑性変形した構造を有する伸縮部(活性化部ともいう)を備える。また、本実施形態に係る伸縮性部材は、伸縮材の層構造が維持された形状保持部(未活性化部ともいう)を備えていてもよい。
【0065】
本実施形態に係る伸縮性部材は、伸縮部がゴム弾性体として機能するため、衣料製品等に適用される弾性ウェブとして好適に用いることができる。また、本実施形態に係る伸縮性部材は、形状保持部において他の部材と接合させることで、他の部材との良好な接合性が得られる。
【0066】
また、伸縮性部材は、伸長時の伸びが不均一であると、装着性及び着用時の快適性が損なわれる可能性がある。本実施形態では、スキン層がミクロ相分離構造を有する態様において、伸縮部の伸びの均一性が優れたものになり得る。
【0067】
また、伸縮性部材は、特に肌に密着する衣料製品への適用に際して、伸長時の伸縮部の幅が小さくなると、締め付け力が局所的に作用しやすくなって着用時の快適性が損なわれる可能性がある。本実施形態では、スキン層がミクロ相分離構造を有する態様において、伸長時の伸縮部の狭幅化の程度が十分に小さく、装着性及び着用時の快適性が十分に確保され得る。
【0068】
また、伸縮性部材では、衣料製品への適用に際して繰り返し使用による変形が問題となり得る。本実施形態に係る伸縮性部材は、前述の伸縮材から形成されるため、繰り返し使用によっても形状保持部が元の形状を維持できるため、他の部材との良好な接合性が維持され得る。
【0069】
伸縮部は、伸縮材のスキン層が塑性変形した構造を有する。すなわち、伸縮部は、コア層と、塑性変形したスキン層とを含むものであってもよい。伸縮部において、塑性変形したスキン層は、連続した一層として存在していてもよいし、延伸により分断された層であってもよい。
【0070】
形状保持部は、伸縮材の層構造を有する。すなわち、形状保持部は、コア層とスキン層とを含むものであってもよい。形状保持部は、伸縮材の未延伸部分ということもできる。
【0071】
伸縮性部材は、使用用途に応じて伸縮材に延伸処理を施して製造される。伸縮性部材の用途は特に限定されず、例えば衣料用途に用いてもよい。より具体的には、伸縮性部材は、例えば、使い捨ておむつ、大人用失禁当て、シャワーキャップ、手術ガウン、帽子及びブース、使い捨てパジャマ、競技用肩掛け、クリーンルーム用衣類、帽子用ヘッドハンド、バイザー(visor)、足首バンド、手首バンド、ゴムパンツ、又はウエットスーツ等に用いられる。
【0072】
伸縮性部材の製造方法は、伸縮材の少なくとも一部を延伸させて、スキン層の少なくとも一部を塑性変形させる工程(伸縮材の少なくとも一部を活性化させる工程ともいう)を備えてもよい。伸縮材を、スキン層が塑性変形するまで延伸させることによって、伸縮部が形成される。塑性変形は、一般的にはスキン層の引張降伏ひずみを超えて延伸することで達成される。
【0073】
伸縮性部材の製造方法では、スキン層の一部のみを塑性変形させることにより、伸縮部と形状保持部とを形成してもよい。
【0074】
伸縮材の延伸方法は特に限定されない。例えば、伸縮材の両端を所定幅で挟持して延伸することで、所定幅の2つの形状保持部(挟持された未延伸部分)と、形状保持部の間に形成された伸縮部と、を備える伸縮性部材が形成される。
【0075】
伸縮材の延伸時の温度条件は特に限定されず、常温であってもよい。伸縮材の延伸倍率は、スキン層の引張降伏ひずみ以上であればよく、実用上想定される延伸倍率以上であってもよい。また、延伸倍率によって伸縮部の機械的特性が変化し得ることから、所望の特性に応じた延伸倍率としてもよい。
【0076】
衣料製品は、前述した伸縮材又は伸縮性部材を備える。衣料製品は、例えば、おむつ(オープン型、パンツ型)、大人用失禁当て、シャワーキャップ、手術ガウン、帽子及びブース、使い捨てパジャマ、競技用肩掛け、クリーンルーム用衣類、帽子用ヘッドハンド、バイザー(visor)、足首バンド、手首バンド、ゴムパンツ、又はウエットスーツ等であってもよい。
【0077】
次に、図面を参照しつつ本実施形態の一態様について説明する。なお、本発明は以下の態様に限定されない。
【0078】
図1は、一態様に係る衣料製品である、オープン型(テープ式)のおむつ1を示す斜視図である。
図1に示されるように、おむつ1は、腰が当てられるウエスト部2、股間が当てられる股ぐり3、股ぐり3の左右両側に位置する両側部4とを含む。本実施形態に係る伸縮材及び伸縮性部材は、ウエスト部2、股ぐり3及び両側部4のいずれにも適用可能である。また、本実施形態に係る伸縮材及び伸縮性部材は、おむつのレッグ開口部、おむつのレッグギャザー、又は、おむつのアウター等にも適用可能である。
【0079】
図2は、一態様に係る伸縮材10を示す平面図であり、
図3は、
図2のIII-III線断面図である。
図2及び
図3に示されるように、平面視において、伸縮材10は長方形状である。伸縮材10は、平面状に延びるフィルム状とされている。例えば、伸縮材10の両主面に不織布がラミネートされておむつ1に用いられる。
【0080】
伸縮材10は、コア層12と、コア層12の両主面のそれぞれに設けられたスキン層11a,11bとを有する。コア層12及びスキン層11a,11bは、共にシート状とされており、スキン層11a,11bはコア層12の各主面を保護している。なお、スキン層11a,11bのうちいずれかのみがコア層12の一主面に設けられていてもよい。スキン層11a,11b及びコア層12を構成する樹脂材料は、その組成が、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0081】
伸縮材10において、コア層12の厚さをT1、スキン層11aの厚さをT21、スキン層11bの厚さをT22、とすると、コア層12の厚さT1は、スキン層11a,11bの厚さの合計T21+T22以上であってもよい。前述したスキン層の厚さT2は、スキン層11aの厚さT21と、スキン層11bの厚さT22の和に相当する。厚さT1に対する厚さT21+T22(厚さT2)の比は、例えば、0.1以上且つ1以下である。
【0082】
伸縮材10において、コア層12は、分岐状ポリマーを含有する樹脂材料によって構成されていてもよい。スキン層11a,11bは、ホモポリマーを含む樹脂材料によって構成されていてもよい。この場合、伸縮材10から形成される伸縮部は、伸長状態を長時間維持した場合でもひずみが少なく、おむつ1等の衣料製品に適用した場合には優れたフィット性を長時間維持できる。
【0083】
図4は、伸縮材10を拡大した平面図である。
図4に示されるように、伸縮材10は、その長手方向D2に延びる長辺を有すると共に幅方向D1に延びる短辺を有する長方形状とされる。幅方向D1は、伸縮材10が搬送される搬送方向(MD:Machine Direction)に相当し、長手方向D2は、伸縮材10の搬送方向の直交方向(CD:Cross Direction)に相当する。
【0084】
図5は、
図4を拡大した伸縮材10の平面図である。
図4及び
図5に示されるように、伸縮材10は、スキン層11a,11b及びコア層12を貫通する複数の貫通孔15を有する。一例として、複数の貫通孔15は、千鳥状に配置されている。ここで「貫通孔が千鳥状に配置されている」とは、一の貫通孔と、当該一の貫通孔から最も近い他の貫通孔とを結ぶ仮想の直線Lが幅方向D1及び長手方向D2に対して傾斜するように、貫通孔が配列されていることを示している。
【0085】
一例として、複数の貫通孔15は、伸縮材10において略均等に分散して配置されている。「複数の貫通孔が略均等に分散して配置されている」とは、例えば、複数の貫通孔が所定の点若しくは線に対して互いに対称となるように配置されている状態、又は複数の貫通孔が同心円状に分散して配置されている状態が含まれる。略均等に分散して配置されていることで例えば強度が均一となる効果がある。また、貫通孔は、伸縮材において全体的に満遍なく配置されていてもよいし、伸縮材の特定の部位に局所的に配置されていてもよい。貫通孔が局所的に配置されていると、例えば衣料製品に応じて、適切な位置での通気性や強度を制御する効果がある。このように貫通孔の配置態様は適宜変更可能である。
【0086】
一態様において、例えば、直線Lと長手方向D2との成す角度、及び直線Lと幅方向D1との成す角度は、45°である。但し、この角度は適宜変更可能である。伸縮材10に対する複数の貫通孔15が占める面積の割合は、例えば、0.5%以上且つ30%以下であり、好ましくは1%以上且つ20%以下であり、より好ましくは5%以上且つ20%以下である。
【0087】
貫通孔15の形状は、例えば、円形状とされているが、半円状、半長円状、扇形状、四角形状、三角形状又は他の多角形状とされていてもよく、適宜変更可能である。本明細書において「貫通孔は、円形状とされており」には、貫通孔が円形であること、貫通孔が楕円形であること、及び貫通孔が長円形であることを含んでおり、貫通孔の形状が角の部分を有しない形状であることを示している。このように貫通孔15が円形状である場合、貫通孔15において破断しやすい角の部分が存在しないため、貫通孔15の強度を高くすることが可能となる。
【0088】
貫通孔15が円形状である場合、貫通孔15の直径Aは、例えば、0.2mm以上且つ3mm以下であり、好ましくは0.3mm以上且つ2mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上且つ1mm以下である。ここで「貫通孔の直径」は、貫通孔の形状が円形である場合には直径であるが、貫通孔の形状が楕円形又は長円形である場合には長軸長及び短軸長の少なくともいずれかを示す。
【0089】
貫通孔15の直径Aが大きいほど、貫通孔15を形成しやすいので伸縮材10の製造性が高いという利点がある。また、直径Aが0.3mm以上且つ2mm以下である場合、貫通孔15の配列の意匠性及び美観を高めることができ、直径Aが0.5mm以上且つ1mm以下である場合、上記の効果がより顕著になる。
【0090】
複数の貫通孔15を備えた伸縮材10の通気性は、例えば、10(cm3/cm2・s)以上であり、好ましくは20(cm3/cm2・s)以上であり、より好ましくは50(cm3/cm2・s)以上であり、更に好ましくは65(cm3/cm2・s)以上であり、顕著に好ましくは80(cm3/cm2・s)以上である。
【0091】
図6(a)及び
図6(b)は、貫通孔15の縦断面図を示している。
図7は、複数の貫通孔15を備えた伸縮材10の製造装置の一例を示す図である。
図7の製造装置Mは、熱針22を備えた第1ロール21aと、第1ロール21aに押圧される第2ロール21bとを備える。一態様に係る伸縮材10の製造方法では、伸縮材10が第1ロール21a及び第2ロール21bの間で挟まれながら搬送されると共に、熱針22が伸縮材10を貫通していくことにより複数の貫通孔15が形成される。また、後述するバリ15aが比較的少ないダイカットによって複数の貫通孔15が形成されてもよい。また、他の貫通孔形成手段として、レーザー、超音波又は局所吸引等によって、複数の貫通孔15が形成されてもよい。
【0092】
図6(a)は、熱針22を伸縮材10に貫通させた直後の貫通孔15を示す。
図6(a)に示されるように、熱針22を伸縮材10に抜き差しするとき、特に熱針22を伸縮材10から抜くときに、伸縮材10の貫通孔15の外縁に沿う部分が熱針22に引っ張られるので、貫通孔15の外縁には伸縮材10の面外方向に突出するバリ15aが形成される。バリ15aは、平面視において、貫通孔15の外周に位置する環状とされる。
【0093】
熱針22を伸縮材10に貫通させて貫通孔15を形成した後に、伸縮材10を平坦化してもよい。この場合、貫通孔15が形成された伸縮材10を80℃以上の温度で平坦化する。一例として、伸縮材10を2つのロール23a,23bの間に挟み込んで伸縮材10を加熱しながら搬送することにより、伸縮材10の平坦化を行う。また、プレートでプレスすることによって伸縮材10の平坦化を行ってもよいし、削りとることによって平坦化を行ってもよいが、製造プロセスの観点からロール23a,23bを用いることが好ましい。
【0094】
図6(b)は、バリ15aが形成された伸縮材10に対して平坦化処理が施された後の貫通孔15を示す。この平坦化処理において、伸縮材10は、熱をかけられて溶融しながら平坦状とされるので、貫通孔15の外縁の突出部15bの高さは、バリ15aの高さよりも低くなる。突出部15bは、バリ15aと同様、環状とされた平面形状を有する。
【0095】
貫通孔15の外縁に形成される突出部15bの高さをHとすると、高さHは、例えば、160μm以下であり、又は100μm以下であり、好ましくは50μm以下である。ここで、「突出部の高さ」とは、伸縮材の主面(例えばスキン層11a,11bの表面)に対する突出部の頂部の高さを示している。
【0096】
伸縮材10は、例えば、長手方向D2に延伸処理されることによって伸縮性部材となる。少なくとも一方向(例えば長手方向D2)に伸長したときの伸縮材10の伸び率は、例えば、150%以上であり、好ましくは200%以上であり、より好ましくは400%以上であり、更に好ましくは500%以上である。少なくとも一方向に伸長したときの伸縮材10の引張強さは、例えば、1N/25mm以上であり、好ましくは3N/25mm以上であり、より好ましくは5N/25mmであり、更に好ましくは7N/25mmである。
【0097】
スキン層11a及びスキン層11bの一方向における引張降伏応力は、例えば、互いに略同一である。伸縮材10が一方向に延伸されることにより、スキン層11a及びスキン層11bが塑性変形し伸縮部が形成される。伸縮材10の長手方向D2における300%伸長時の引張応力は、例えば、スキン層11aの引張降伏応力、及びスキン層11bの引張降伏応力の110%以下である。これにより、実用上有用な200%程度の伸長を行っても、形状保持部が元の形状を維持することができるので、他の部材との良好な接合性が維持される。
【0098】
図8(a)及び
図8(b)は、伸縮材10の延伸処理の一態様を説明するための図である。本実施形態では、伸縮材10の長手方向D2の中央部の領域16aと両端部の領域16b,16cを挟持部材で挟持し、領域16aを固定して領域16b,16cを長手方向D2に沿って引っ張ることにより、領域16a及び領域16bの間、並びに領域16a及び領域16cの間、を延伸させる。貫通孔15は、領域16a,16b,16cに形成されていてもよいし、領域16a,16b,16cに形成されていなくてもよい。
【0099】
図8(b)は、延伸時の伸縮材を示している。
図8(b)に示されるように、挟持部材で挟持された領域16a,16b,16cに形状保持部17a,17b,17cのそれぞれが形成される。形状保持部17a,17b,17cは、伸縮材10の形状が維持されている部位である。
【0100】
一方、領域16aと領域16bとの間、及び領域16aと領域16cとの間は、それぞれ延伸部18a,18bとされる。延伸部18a,18bは、伸縮材10の延伸された部位に相当する。延伸部18a,18bにおいて、伸縮材10のスキン層11a,11bは塑性変形されている。
【0101】
ここで、長手方向D2に200%伸長させたときにおける幅方向D1への縮み率を測定した。「縮み率」は、伸長前の幅L2に対する縮んだ幅(L2-L1)の比、すなわち伸長前の幅L2から伸長時の幅の最小値L1を引いた値の比(L2-L1)/L2を示す。また、「200%伸長時」とは、伸長させる部分の初期の長さL3に対して、伸長時の長さL4が200%であることを示す。
【0102】
図9は、一態様に係る伸縮性部材20を示す平面図である。伸縮性部材20は、伸縮材10の層構造が維持された形状保持部27a,27b,27cと、形状保持部27a,27b,27cの間に形成された伸縮部28a,28bとを備える。伸縮性部材20は、長手方向D2に伸長したとき、伸縮部28a,28bが伸長し、形状保持部27a,27b,27cはその形状が維持される。このため、伸縮性部材20では、形状保持部27a,27b,27cで他の部材と接合させることにより、他の部材との良好な接着性が得られる。
【0103】
ところで、前述した挟持部材で挟持されていた領域16a,16b,16cに貫通孔15が形成されていた場合、伸縮性部材20では、形状保持部27a,27b,27c及び伸縮部28a,28aに貫通孔15が形成される。一方、領域16a,16b,16cに貫通孔15が形成されていなかった場合、伸縮性部材20では、伸縮部28a,28aには貫通孔15が形成されるが、形状保持部27a,27b,27cには貫通孔15が形成されない。
【0104】
製造性の観点からは、貫通孔15を全ての部位に一括で形成できるため、形状保持部27a,27b,27c及び伸縮部28a,28aに貫通孔15が形成されていた方が好ましい。しかしながら、他の部材への接着性の観点からは、貫通孔15が少ない方が接着性をより高められるため、形状保持部27a,27b,27cには貫通孔15が形成されていない方が好ましい。
【0105】
図10は、伸縮材に形成された他の態様の貫通孔35を示す平面図である。
図10に示されるように、複数の貫通孔35は、格子状に配置されている。ここで「貫通孔が格子状に配置されている」とは、一の貫通孔と、一の貫通孔から最も近い他の貫通孔とを結ぶ仮想の直線が長手方向D2又は幅方向D1に一致する貫通孔の配列を示している。
【0106】
図10では、互いに隣接する4つの貫通孔35が正方形状を成す例を示している。互いに隣接する4つの貫通孔35が正方形状を成す場合、長手方向D2及び幅方向D1の強度を均一にすることが可能となるため好ましい。しかしながら、互いに隣接する4つの貫通孔が成す形状は、長方形等、他の形状であってもよい。このように、貫通孔の配置態様は適宜変更可能である。
【0107】
図11(a)は、千鳥状に配列された貫通孔15を有する伸縮材及び伸縮性部材の伸長率と引張応力との関係の一例を示す。
図11(b)は、格子状に配列された貫通孔35を有する伸縮材及び伸縮性部材の伸張率と引張応力との関係の一例を示す。
【0108】
図11(a)及び
図11(b)において、線51aは、常温時における伸縮材の伸長率と引張応力との関係を示す。線51bは、100℃平坦化処理時における伸縮材の伸長率と引張応力との関係を示す。線51cは、120℃平坦化処理時における伸縮材の伸長率と引張応力との関係を示す。
【0109】
図11(a)及び
図11(b)において、線52aは、伸縮材を300%伸長させて形成された伸縮性部材を常温で伸長させたときにおける伸長率と引張応力との関係を示す。線52bは、伸縮材を300%伸長させて形成された伸縮性部材を100℃で伸長させたときにおける伸長率と引張応力との関係を示す。線52cは、伸縮材を300%伸長させて形成された伸縮性部材を120℃で伸長させたときにおける伸長率と引張応力との関係を示す。
【0110】
図11(a)及び
図11(b)において、点53a,53b,53cは、各伸縮材におけるスキン層の引張降伏点を示しており、点53a,53b,53cの引張応力がスキン層の引張降伏応力に相当する。点54a,54b,54cは、各伸縮材の300%伸長時の引張応力を示す点である。点54a,54b,54cにおける引張応力は、点53a,53b,53cにおける引張応力の110%以下であってもよい。また、スキン層の塑性変形前までにおいて、千鳥配置の貫通孔を備えた伸縮材は強い力をかけないと伸びにくいが、格子配置の貫通孔を備えた伸縮材は弱い力でも比較的伸びやすい傾向がある。
【0111】
次に、実施形態に係る伸縮材、伸縮材の製造方法、伸縮性部材、伸縮性部材の製造方法、及び衣料製品の作用効果について説明する。
【0112】
前述した実施形態では、伸縮材10の一部を延伸してスキン層11a,11bの一部を塑性変形させることにより、任意に伸縮部28a,28bが形成された伸縮性部材20を得ることができる。また、伸縮材10は複数の貫通孔15を有するため通気性を高めることができる。
【0113】
更に、貫通孔15の外縁に形成される突出部15bの高さが160μm以下とされているので、その後の加工で突出部15bを貫通孔15に入りにくくすることができる。突出部15bの高さが160μm以下であることによって貫通孔15付近の空気の流通を阻害させにくくすることができるので、高い通気性を維持することができる。
【0114】
また、突出部15bの高さが160μm以下であることにより、伸縮材10がおむつ1等の衣料製品に用いられた場合に肌触りを良好にすることができる。突出部15bの高さが100μm以下であってもよい。これにより、通気性を高く維持できると共に肌触りをより良好にすることができる。
【0115】
伸縮材10に対する複数の貫通孔15が占める面積の割合は、1%以上且つ20%以下であってもよい。これにより、伸縮材10の通気性、及び伸縮材10の強度を更に確実に高く維持することができる。
【0116】
伸縮材10において、通気性が10(cm3/cm2・s)以上であってもよい。これにより、高い通気性を維持することができる。伸縮材10の通気性が25(cm3/cm2・s)以上であってもよい。これにより、一層高い通気性を維持することができる。伸縮材10の通気性が50(cm3/cm2・s)以上であってもよい。これにより、更に高い通気性を維持することができる。
【0117】
伸縮材10は、少なくとも一方向(例えば長手方向D2)に伸長したときの伸び率が150%以上であってもよい。これにより、複数の貫通孔15を形成した状態において高い伸び率を維持することができる。伸縮材10は、少なくとも一方向に伸長したときの引張強さが1N/25mm以上であってもよい。これにより、複数の貫通孔15を形成した状態において高い引張強さを維持することができる。
【0118】
複数の貫通孔15は、千鳥状に配列されていてもよい。これにより、引っ張りに対する伸縮材10の強度を更に高めることができる。また、複数の貫通孔35は、格子状に配列されていてもよい。
【0119】
貫通孔15は、円形状とされており、貫通孔15の直径Aは、0.2mm以上且つ3mm以下であってもよい。貫通孔15が円形状であることにより、貫通孔15からの破断を生じにくくすることができる。また、貫通孔15の直径Aが0.2mm以上且つ3mm以下であることにより、複数の貫通孔15をきれいに形成することができるので貫通孔15の美観を高めることができると共に、確実に高い通気性を維持することができる。
【0120】
貫通孔15は、円形状とされており、貫通孔15の直径Aは、0.5mm以上且つ1mm以下であってもよい。これにより、前述した貫通孔の美観の効果及び高い通気性を維持できる効果がより顕著となる。
【0121】
伸縮材10の製造方法は、エラストマーを含むコア層12と、コア層12の主面に設けられるスキン層11a,11bとを備えた伸縮材10の製造方法であって、コア層12及びスキン層11a,11bを貫通する複数の貫通孔15を、貫通孔15の外縁の突出部15bの高さが160μm以下となるように形成する工程を備える。この製造方法では、前述と同様の作用効果を奏する伸縮材を製造することができる。
【0122】
前述の工程において、複数の熱針22をコア層12及びスキン層11a,11bに貫通させて複数の貫通孔15を形成してもよい。また、前述の工程において、ダイカットによって複数の貫通孔15を形成してもよい。この場合、貫通孔15の外縁に形成される突出部15bの高さをより確実に抑えることができる。
【0123】
前述の工程において、複数の貫通孔15が形成された伸縮材10を80℃以上の温度で平坦化してもよい。これにより、伸縮材10が高温で平坦化されるので、突出部15bの高さを一層確実に抑えることができる。
【0124】
伸縮性部材20は、伸縮材10のスキン層11a,11bが塑性変形した構造を有する伸縮部28a,28bと、伸縮材10の層構造が維持された形状保持部27a,27b,27cと、を備える。伸縮性部材20は、伸縮材10を備えるので、伸縮材10と同様の作用効果が得られる。また、伸縮性部材20をおむつ1等の衣料製品に適用した場合、着用時には伸縮部28a,28bが伸長し、形状保持部27a,27b,27cはその形状が維持される。従って、形状保持部27a,27b,27cにおいて他の部材と接合することができるので、他の部材との良好な接合性が得られる。
【0125】
伸縮性部材20の製造方法は、伸縮性部材20の少なくとも一部を延伸させて、スキン層11a,11bの少なくとも一部を塑性変形させる工程を備える。この製造方法では、前述と同様の作用効果を奏する伸縮性部材を製造することができる。
【0126】
おむつ1は、伸縮材10又は伸縮性部材20を備える。よって、おむつ1では、前述した伸縮材10及び伸縮性部材20と同様の作用効果が得られる。
【0127】
また、伸縮材10又は伸縮性部材20がおむつ1の股ぐり3等で使用される場合、伸縮材10又は伸縮性部材20は透湿性樹脂シートの上に載せられる。この場合、伸縮材10又は伸縮性部材20と見分けがつかないと正しく載せられているかどうかが分からない可能性がある。透湿性樹脂シートは、一般に不織布に近いマットな質感を備えている。このため、伸縮材10又は伸縮性部材20のコア層12に白色マスターバッチを入れず、スキン層11a,11bはハイグロスな質感の樹脂を用いるとさらによい。伸縮材10又は伸縮性部材20のコア層12に白色マスターバッチを入れず、スキン層11a,11bはハイグロスな樹脂を用いることで、光学カメラのコントラスト(白黒二値で黒0、白255)の差を大きくできる。例えば市販のおむつの透湿性ポリエチレンフィルムとスキン層が塑性変形された伸縮性部材(貫通孔ではない個所)とのコントラストの差が40以上、好ましくは55以上、更に好ましくは70以上であるとよい。
【0128】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。
【0129】
(実施例)
次に、伸縮材及び伸縮性部材の実施例を説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。実施例に係る実験では、後述する実施例1~6の伸縮材と比較例1~3の伸縮材に対して引張試験を行い。通気性、貫通孔の大きさ、摩擦係数、引張応力、及び伸び率を測定した。通気性試験はJIS L 1096に準拠し、摩擦試験(動摩擦係数測定)はJIS K 7125に準拠し、引張試験はJIS K 7127に準拠(試験片幅を25mm、チャックの間隔を50mm、試験速度を300mm/min)して測定を行った。
【0130】
実施例及び比較例の材料としては共通に以下を用いた。コア層を構成する樹脂材料として、「Quantac 3620」(日本ゼオン株式会社製、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、直鎖状ポリマーと分岐状ポリマーの混合物)40質量部と、「Quintac 3390」(日本ゼオン株式会社製、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、直鎖状ポリマー)56質量部と、20%TiO2含有のスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーベース白色マスターバッチ4質量部と、を混合した混合材料を用いた。なお、白色マスターバッチは、白色をつけるために添加している。また、スキン層を構成する樹脂材料として、「Novatec PP BC2E」(日本ポリプロ株式会社製、スチレンプロピレンブロックコポリマー)を用いた。スキン層:コア層:スキン層の厚さの比は、15:75:15の構成とした(コア層の厚さに対するスキン層の厚さは0.43)。三層の合計厚さは約37μmであった。
【0131】
実施例1の伸縮材に対しては、ヒートニードル(220℃、30mpm)を用いて千鳥状の貫通孔を形成し、その後120℃でローラでの平坦化処理を行った。
実施例2の伸縮材に対しては、格子状の貫通孔を形成し(ニードルスペック:ピッチ1.5mm×1.5mm、OD1.06の針)、その後120℃で平坦化処理(5mpmのカレンダー加工)を行った。
実施例3の伸縮材に対しては、千鳥状の貫通孔を形成し(ニードルスペック:ピッチ2.5mm×2.5mm、OD0.62の針)、その後100℃で平坦化処理を行った。
実施例4の伸縮材に対しては、格子状の貫通孔を形成し、その後100℃で平坦化処理を行った。
実施例5の伸縮材に対しては、千鳥状の貫通孔を形成し、その後80℃で平坦化処理を行った。
実施例6の伸縮材に対しては、格子状の貫通孔を形成し、その後80℃で平坦化処理を行った。
比較例1は、貫通孔を有しない伸縮材とした。
比較例2の伸縮材に対しては、千鳥状の貫通孔を形成し、その後平坦化処理を行わなかった。
比較例2の伸縮材に対しては、格子状の貫通孔を形成し、その後平坦化処理を行わなかった。
【0132】
以上の実施例1~6及び比較例1~3に引張試験を行った結果は以下の表1の通りである。なお、表1において、「市販のおむつ」としては、ユニチャーム株式会社製 ムーニー エアフィット Mサイズで使用されている伸縮性部材を用いている。また、「MD」は、伸縮材が搬送される搬送方向(MD:Machine Direction)を示しており、「CD」は、伸縮材の搬送方向の直交方向(CD:Cross Direction)を示している。
【0133】
【0134】
以上の表1より、実施例1~6及び比較例2,3は、複数の貫通孔を有するので、50(cm3/cm2・s)以上という高い通気性が得られている。また、貫通孔の外縁に形成された突出部の高さ(「貫通孔の突出部を含めた伸縮材の厚さ-貫通孔の突出部を含めない伸縮材の厚さ」の値)は、比較例2,3では190μmを超えていたのに対し、実施例1~6では190μm以下に抑えられている。このため、市販のおむつに対する動摩擦係数を低く(5.5以下)に抑えることができている。
【0135】
従って、千鳥状の貫通孔に対して80℃以上の平坦化処理を施した場合、及び、格子状の貫通孔に対して80℃以上の平坦化処理を施した場合には、突出部の高さが190μm以下、更には160μm以下に抑えられることが分かった。
【0136】
更に、実施例1~6では、1回目300%伸長時の引張応力(N/25mm)、2回目150%伸長時の引張応力(N/25mm)、2回目300%伸長時の引張応力(N/25mm)、2回目250%伸長時の戻り応力(N/25mm)、MD破断時応力(N/25mm)、MD破断時伸び率(%)、CD破断時引張応力(N/25mm)、CD破断時伸び率(%)において、伸縮材として実用上に適する数値を示した。例えば、2回目150%伸長時の引張応力が2N/25mm以下であることにより、衣料製品を身に着けるときに容易に伸ばすことができ、且つ、2回目250%伸長時の戻り応力が0.2N/25mm以上であることにより、身に着けた後に身体にフィットすることに適した機械特性が得られている(詳細は
図11参照)。
【0137】
また、本実施例ではコア層に白色マスターバッチを加え、スキン層にブロックコポリマーを用いているが、コア層に白色マスターバッチを加えない場合には、スキン層を塑性変形させたとき、貫通孔以外の部分について、市販のおむつのポリエチレン製透湿性シートとのコントラスト差(ソフトウェアImageJで評価)が約45(伸縮性部材:183-ポリエチレンシート:138)であった。更にスキン層をよりハイグロスなホモポリオレフィン(ホモポリプロピレン)とした場合には、ポリエチレン製のシートとのコントラスト差が約74(伸縮性部材:208-ポリエチレンシート:134)であった。
【符号の説明】
【0138】
1…おむつ(衣料製品)、10…伸縮材、11a,11b…スキン層、12…コア層、15…貫通孔、15b…突出部、20…伸縮性部材、22…熱針、23a,23b…ロール、27a,27b,27c…形状保持部、28a,28b…伸縮部、A…直径、H…高さ。