(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】微粒子及び該微粒子を含む接続材料並びに接続構造体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
H01L21/52 E
(21)【出願番号】P 2017164355
(22)【出願日】2017-08-29
【審査請求日】2020-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 博之
(72)【発明者】
【氏名】山田 恭幸
(72)【発明者】
【氏名】上田 沙織
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-204208(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181860(WO,A1)
【文献】特開平08-227613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/60-607
C08G 77/00-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリウム雰囲気中、250℃で10分間の加熱条件で発生するガス成分が4000ppm以上であり、
前記ガス成分が
銅、チッ化ガリウム、ケイ素及び炭化ケイ素からなる群より選ばれる1種以上を腐食させる性質を有する腐食性化合物である、微粒子。
【請求項2】
前記腐食性化合物は、銀を腐食させる性質を有していない、請求項
1に記載の微粒子。
【請求項3】
前記腐食性化合物は、銅、チッ化ガリウム、ケイ素及び炭化ケイ素からなる群より選ばれる1種以上を気化させる性質を有する、請求項1
又は2に記載の微粒子。
【請求項4】
表面が金属で被覆されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の微粒子。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の微粒子と、金属粒子とを含有する接続材料。
【請求項6】
請求項
5に記載の接続材料の硬化物を含む接続部材によって第1の接続対象部材及び第2の接続対象部材が接続されている、接続構造体。
【請求項7】
前記第1の接続対象部材又は前記第2接続対象部材と、前記接続部材とのせん断強度が、250℃で10分間加熱処理した後に60%以上低下する、請求項
6に記載の接続構造体。
【請求項8】
請求項
6又は7に記載の接続構造体を加熱して前記第1の接続対象部材及び/又は前記第2接続対象部材を前記接続部材から剥離する工程を備える、接続構造体のリワーク方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子及び該微粒子を含む接続材料並びに接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータ等に用いられるパワー半導体装置(パワーデバイス)の一つである非絶縁型半導体装置(接続構造体)において、半導体素子を固定するために、接続部材が使用されることが知られている。このような接続部材は、例えば、硬化性の接着剤又は焼結性材料等から形成することができ、接着部材の材料の種類によっては、半導体装置の電極の一つともなり得る。このような接続部材は、半導体素子どうしの接合及び回路基板どうしの接合等にも用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1,2は、半導体素子を固定するための接続部材として、空孔率を調整した焼結材料を利用することを開示している。このような焼結材料を半導体素子の接続部材として適用することで、放熱性及び接合強度が確保され得る。また、特許文献3には、半導体への機械的ストレスを低減することを目的として、熱伝導性金属マトリクス中にシリコーン粒子を含有する複合材料を接合部材とすることも提案されている。
【0004】
半導体装置等を組み立てる場合又は半導体装置の故障時等に半導体素子等を交換する場合、リワーク作業と呼ばれる作業が行われる。リワーク作業では、例えば、回路基板全体を加熱し、前述の接続部材を溶融させて半導体素子等の組み立て直しを行ったり、交換を行ったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-77225号公報
【文献】特開2014-96545号公報
【文献】特開2013-243404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リワーク作業時に回路基板の加熱を長時間行うと、回路基板に実装されている電子部品の耐熱温度によっては、それらの部品が加熱によって劣化する問題があった。また、昨今のパワー半導体等ではSiCやGaNといった材料が使用され、使用温度帯がより高温化することにより加熱温度が高温になることから、回路等が発火するおそれも高く、安全性の面においても問題を有していた。このような観点から、近年では、リワーク作業も短時間の加熱で容易、かつ、安全に行うことができる接続部材が求められていた。
【0007】
本発明らは、上記に鑑みてなされたものであり、接続構造体のリワーク作業を容易、かつ、安全に行うことができる接続部材を形成することができる微粒子及び該微粒子を含む接続材料並びに接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、一定の加熱条件で発生する揮発性の腐食物質が特定量以上である性質を有する微粒子により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
ヘリウム雰囲気中、250℃で10分間の加熱条件で発生するガス成分が4000ppm以上であり、
前記ガス成分が金属を腐食させる性質を有する腐食性化合物である、微粒子。
項2
前記腐食性化合物は、ケイ素化合物及びハロゲン化物からなる群より選ばれる1種以上である、項1に記載の微粒子。
項3
前記腐食性化合物は、銅、チッ化ガリウム、ケイ素及び炭化ケイ素からなる群より選ばれる1種以上を腐食させる性質を有する、項1又は2に記載の微粒子。
項4
前記腐食性化合物は、銀を腐食させる性質を有していない、項1~3のいずれか1項に記載の微粒子。
項5
前記腐食性化合物は、銅、チッ化ガリウム、ケイ素及び炭化ケイ素からなる群より選ばれる1種以上を気化させる性質を有する、項1~4のいずれか1項に記載の微粒子。
項6
表面が金属で被覆されている、項1~5のいずれか1項に記載の微粒子。
項7
項1~6のいずれか1項に記載の微粒子と、金属粒子とを含有する接続材料。
項8
項7に記載の接続材料の硬化物を含む接続部材によって第1の接続対象部材及び第2の接続対象部材が接続されている、接続構造体。
項9
前記第1の接続対象部材又は前記第2接続対象部材と、前記接続部材とのせん断強度が、250℃で10分間加熱処理した後に60%以上低下する、項8に記載の接続構造体。
項10
項8又は9に記載の接続構造体を加熱して前記第1の接続対象部材及び/又は前記第2接続対象部材を前記接続部材から剥離する工程を備える、接続構造体のリワーク方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る微粒子は、パワー半導体装置等の接続構造体を組み立てるために使用される接続部材に適用することができる。本発明の微粒子を含有する接続部材を備える接続構造体では、作業者がリワーク作業を容易かつ、安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の微粒子を含有する接続部材を備える接続構造体の一例を示す概略の断面図である。
【
図2】実施例及び比較例の積層体を形成する方法を示す模式図である。
【
図3】ダイシェア強度を測定するための測定装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0013】
1.微粒子
本発明の微粒子は、パワー半導体装置等の接続構造体を組み立てるために使用される接続部材を形成するための材料として使用される。接続部材とは、接続構造体において、一対の接続対象部材を接続するための部材である。
【0014】
図1は、本発明の微粒子が適用され得る接続構造体の一例を模式的に表した概略の断面図である。
図1の形態の接続構造体は、第1の接続対象部材11と、第2の接続対象部材12と、第1の接続対象部材11及び第2の接続対象部材12とを接続している接続部材20とを備える。接続部材20は、本発明の微粒子10を含有する。
【0015】
本発明の微粒子は、ヘリウム雰囲気中、250℃で10分間の加熱条件で発生するガス成分が4000ppm以上であり、前記ガス成分は、金属を腐食させる性質を有する腐食性化合物である。ここでいうガス成分の発生量は、微粒子の全質量を基準とした数値である。また、前記加熱条件で発生するガス成分の量とは、前記10分間の加熱によって微粒子から発生した前記ガス成分(つまり、前記腐食性化合物)の総量を意味する。
【0016】
なお、以下では、ヘリウム雰囲気中、250℃で10分間の加熱条件で微粒子を加熱することを「ガス発生試験」と表記する。ガス発生試験は、熱脱着GC-MS測定により行うことができ、例えば、パーキンエルマー社の「TurboMatrix 650」を備え付けた「JMS Q1000(日本電子社製)」を使用して行うことができる。
【0017】
本発明の微粒子が接続構造体の接続部材に含まれる場合、該接続構造体を加熱処理することで、微粒子から前記ガス成分が発生する。この発生したガス成分は、前述のように腐食性化合物であることで、接続対象部材の腐食が起こって接続対象部材の接着面が削れるなどの現象が起こる。これにより、接続対象部材が接続部材から容易に剥離する。このように、接続構造体は加熱処理されることで容易に接続対象部材と接続部材とが剥離する状態になることから、作業者は、接続構造体のリワーク作業を容易に行うことができる。つまり、本発明の微粒子が含まれる接続部材を備える接続構造体は、リワーク性に優れるという特徴を有する。
【0018】
さらに、本発明の微粒子が含まれる接続部材を備える接続構造体は、高温で長時間加熱せずとも接続対象部材を接続部材から剥離できるので、加熱中において高温になることによる回路等の発火を防止しやすい。つまり、接続対象部材が接続部材から剥離されるので、発火が起こる前に早期に回路を遮断することができることから、作業者がリワーク作業をより安全に行うことができる。
【0019】
本発明でいうリワーク作業とは、例えば、接続構造体を組み立てる場合において、接続対象部材の貼り直し作業、接続構造体の故障等が発生した場合の接続対象部材等の交換作業等を示す。
【0020】
本発明の微粒子は、接続対象部材と接続部材との剥離が容易に起こりやすい点で、ガス発生試験で発生するガス成分が4500ppm以上であることが好ましく、5000ppm以上であることがより好ましく、6000ppm以上であることが特に好ましい。ガス発生試験で発生するガス成分の上限は、例えば15000ppmである。
【0021】
ガス発生試験で微粒子から発生するガス成分は、揮発性であって、金属を腐食させる性質を有する腐食性化合物である。揮発性とは、例えば、前記ガス発生試験条件下で容易に気体となる性質をいう。また、腐食性化合物は、大気圧下、室温(例えば、20℃)で気体である化合物であってもよい。例えば、腐食性化合物の沸点は50℃以上であることが好ましい。この場合、腐食性化合物が微粒子内に封入されやすく、また、250℃以上に加熱した場合は、速やかに腐食性化合物が微粒子外に放出しやすいので、本発明の効果が発揮されやすい。
【0022】
腐食性化合物は、例えば、分子量が1000以下であることが好ましく、この場合、前記ガス発生試験での揮発性に優れ、本発明の効果を発揮しやすくなる。
【0023】
ガス成分は、微粒子の加熱によって発生する。例えば、微粒子の加熱によって、微粒子中に含まれる成分(例えば、微粒子のマトリックス成分等)の酸化還元反応が起こり、これによって、微粒子からガス成分である腐食性化合物が発生する。
【0024】
本発明でいう「金属を腐食させる性質」(金属腐食性ともいう)とは、金属を気化させる作用を示すことができる化合物をいう。より具体的には、腐食性化合物は、金属と反応して金属をイオン化させ、このイオン化された金属を気化(外部へ輸送)させる作用を示すことができる化合物をいう。
【0025】
微粒子は、上述のようにガス成分として金属腐食性を有する腐食性化合物を含む。このような微粒子を備える接続構造体が加熱(例えば、250℃以上に加熱)されると、微粒子から発生したガス成分である腐食性化合物が接続対象部材を腐食させる。これにより、接続構造体を構成する接続対象部材の接着面が部分的に削れるなどして空隙が形成され、接続部材との剥離が起こりやすくなる。その結果として、接続構造体は、優れたリワーク性を有することができる。
【0026】
腐食性化合物は、金属腐食性を有している限りは、その種類は特に限定されない。例えば、腐食性化合物は、ケイ素化合物及びハロゲン化物からなる群より選ばれる1種以上とすることができる。この場合、腐食性化合物は、金属を腐食させやすく、リワーク性をさらに高めることができる。なお、念のための注記であるが、ここでいうハロゲン化物は、前記ケイ素化合物以外の化合物をいう。
【0027】
ケイ素化合物としては、前記揮発性及び前記金属腐食性を有するものであって、例えば、Siを含み、さらに水素、酸素、ハロゲン、炭素、窒素、硫黄等の一以上の原子が結合した化合物が挙げられる。ケイ素化合物の具体例としては、シランガス(SiH4)、(CH3)3SiH、(CH3)2SiH2、(CH3)SiH3、アルキルトリメチルシラン(例えば炭素数1,2,3又は4)、アルケニルトリメチルシラン(例えば炭素数1,2,3又は4)、エチニルトリメチルシラン(例えば炭素数1,2,3又は4)、窒化ケイ素、アミノシラン、シラザン、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、シロキサン化合物、シリルエステル、シラノール、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン、モノフルオロシラン、ジフルオロシラン、トリフルオロシラン、テトラフルオロシラン等を挙げることができる。前記シロキサン化合物としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等を挙げることができる。
【0028】
微粒子がケイ素を含む場合(例えば、後記するシリコーン粒子である場合)は、Si-H結合を有するケイ素化合物をガス成分として発生しやすい。微粒子がケイ素を含む場合、前述の酸化還元反応によってSi-H結合を有するケイ素化合物が生成してガス化する場合がある。あるいは、微粒子がケイ素を含む場合、分子中に保持された又は結合しているSi-H基がガス化することによって、Si-H結合を有するケイ素化合物が生成することもある。微粒子がシロキサン結合(Si-O)を有する場合は、Si-H結合を有するケイ素化合物がガス成分として発生しやすい。
【0029】
揮発性及び腐食性が高いという観点から、ケイ素化合物は、シロキサン化合物が好ましい。
【0030】
ハロゲン化物としては、前記揮発性及び前記金属腐食性を有するものであって、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を含み、さらに水素、酸素、炭素、窒素、硫黄等の一以上の原子が結合した化合物が挙げられる。ハロゲン化物の具体例としては、炭素数1~3のハロゲン置換炭化水素が挙げられ、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン等が例示される。
【0031】
腐食性化合物は、銅、チッ化ガリウム、ケイ素及び炭化ケイ素からなる群より選ばれる1種以上を腐食させる性質を有することが好ましい。言い換えれば、腐食性化合物は、銅、チッ化ガリウム、ケイ素及び炭化ケイ素からなる群より選ばれる1種以上を気化させる性質を有することが好ましい。この場合、銅、チッ化ガリウム、ケイ素及び炭化ケイ素からなる群より選ばれる1種以上を材料として含む接続対象部材等を備える接続構造体に対し、リワーク性をさらに向上させることができる。
【0032】
銅、チッ化ガリウム、ケイ素及び炭化ケイ素からなる群より選ばれる1種以上を腐食させやすい性質を有する腐食性化合物としては、例えば、シロキサン化合物、四塩化炭素が挙げられる。
【0033】
別の観点において、腐食性化合物は、銀を腐食させる性質を有していないことが好ましい。言い換えれば、腐食性化合物は、銀を気化させる性質を有していないことが好ましい。この場合は、接続構造体における接続部材として、後記する銀を含む焼結体を採用することができ、しかも、銀を腐食させる性質を有していないことから、リワーク作業時に接続部材の腐食を抑制することができる。その結果、リワーク後に形成される接続構造体の性能の低下が起こりにくくなる。なお、腐食性化合物は、例えば、銀を塩化物にさせる作用を有していても構わず、たとえ、リワーク作業時に接続部材の銀が塩化物に変化したとしても、優れたリワーク性は維持され得る。
【0034】
銀を腐食させる性質を有していない腐食性化合物としては、例えば、シロキサン化合物が挙げられる。
【0035】
腐食性化合物は、銅、チッ化ガリウム、ケイ素及び炭化ケイ素からなる群より選ばれる1種以上を腐食させる性質を有し、かつ、銀を腐食させる性質を有していないことが特に好ましい。このような腐食性化合物としては、例えば、シロキサン化合物が挙げられる。
【0036】
本発明の微粒子は、前記ガス発生試験でガス成分として腐食性化合物を発生する限りは、その種類は特に限定されない。例えば、本発明の微粒子としては、シリコーン粒子、樹脂粒子等を挙げることができる。
【0037】
シリコーン粒子は、ガス発生試験でガス成分として腐食性化合物を4000ppm以上発生する限りは、その種類は特に限定されない。シリコーン粒子は、例えば、SiO単位で構成される骨格を有する。この場合Si又はOには、有機基が結合していてもよい。
【0038】
シリコーン粒子は、例えば、重合反応性を有する官能基を有するシリコーンオリゴマー等のシリコーン原料を、重合反応することで得ることができる。この重合反応は、例えば、公知のシリコーン粒子を得るための重合反応と同様の反応条件を採用することができる。前記シリコーンオリゴマーにおいて、重合反応性を有する官能基は、例えば、ラジカル重合性を有する官能基である。ラジカル重合性を有する官能基は、具体的には、アクリロイル基(CH2=CH(CO))、メタクリロイル基(CH2=CCH3(CO))、その他、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。重合反応性を有する官能基を有するシリコーンオリゴマー等のシリコーン化合物は、例えば、公知の製造工程によって製造することができる。
【0039】
シリコーン粒子を重合反応によって製造する場合は、例えば、シリコーン原料の重合反応が行われる反応系内に腐食性化合物を添加することができる。これにより、得られるシリコーン粒子中に腐食性化合物が含まれ得る。前述のように、重合反応性を有する官能基を有するシリコーンオリゴマー等のシリコーン原料を用いてシリコーン粒子を得る場合は、該シリコーン原料からシリコーン粒子を得るための重合反応系に腐食性化合物を添加することができる。これにより、得られるシリコーン粒子中に腐食性化合物が含まれ得る。あるいは、前記シリコーン化合物を製造するための反応系内に腐食性化合物を添加することもできる。
【0040】
腐食性化合物の添加量は、得られる微粒子がガス発生試験でガス成分である腐食性化合物を4000ppm以上発生する限りは、特に限定されない。例えば、腐食性化合物の添加量は、シリコーン原料100質量部あたり、0.1~10質量部とすることができ、0.5~5質量部であることが好ましく、0.7~4質量部であることがより好ましく、1~3質量部であることが特に好ましい。
【0041】
シリコーン粒子は、例えば、公知のエマルジョン重合法によって調整することもできる。あるいは、シリコーン粒子は、シリコーンゴムを破砕する方法によって調整することもできる。シリコーン粒子は、SiOの単位で構成されるマトリックス以外に、エラストマー及び樹脂等が含まれていてもよい。
【0042】
樹脂粒子は、ガス発生試験でガス成分として腐食性化合物を4000ppm以上発生する限りは、その種類は特に限定されない。樹脂粒子を形成するための材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、及び、ポリエーテルスルホン、尿素樹脂等が挙げられる。
【0043】
樹脂粒子は、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させることにより得ることもできる。該エチレン性不飽和基を有する単量体としては、非架橋性の単量体及び/又は架橋性の単量体が挙げられる。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との一方又は双方を意味する。
【0044】
非架橋性の単量体としては、例えば、ビニル化合物として、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル類;塩化ビニル、フッ化ビニル、等のハロゲン含有単量体が挙げられる。
【0045】
非架橋性の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル化合物として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0046】
非架橋性の単量体としては、例えば、ビニル化合物として、α-オレフィン化合物として、ジイソブチレン、イソブチレン、リニアレン、エチレン、プロピレン等のオレフィン類;共役ジエン化合物として、イソプレン、ブタジエン等が挙げられる。
【0047】
架橋性の単量体としては、例えば、ビニル化合物として、ジビニルベンゼン、1,4-ジビニロキシブタン、ジビニルスルホン等のビニル系単量体等が挙げられる。
【0048】
架橋性の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル化合物として、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0049】
架橋性の単量体としては、例えば、アリル化合物として、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル等が挙げられる。
【0050】
架橋性の単量体としては、例えば、シリコーン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエチルシラン、t-ブチルジメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のシランアルコキシド類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキジメチルビニルシシラン、ジメトキシエチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジエトキシエチルビニルシラン、エチルメチルジビニルシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性二重結合含有シランアルコキシド;デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン;片末端変性シリコーンオイル、両末端シリコーンオイル、側鎖型シリコーンオイル等の変性(反応性)シリコーンオイル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体等が挙げられる。
【0051】
架橋性及び非架橋性単量体は、上記例示列挙した単量体に限定されず、その他の重合性単量体、例えば、公知の重合性単量体であってもよい。
【0052】
エチレン性不飽和基を有する重合性単量の重合方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、及び非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法(いわゆる、シード重合法)等が挙げられる。これらの重合方法の条件は特に制限されず、公知の条件とすることができる。腐食性化合物は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量に添加することができる。これにより、得られる樹脂粒子は、腐食性化合物を含むことができる。
【0053】
微粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状とすることができる。球状は、真球及び非真球のいずれでもよい。微粒子が非真球である場合は、楕円形状及び不規則形状等の形状にすることができる。
【0054】
微粒子の平均粒子径は特に限定されず、例えば、0.05μm以上、300μm以下とすることができる。微粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、また、好ましくは200μm以下、より好ましくは160μm以下、さらに好ましくは80μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
【0055】
微粒子の平均粒子径とは、形状が真球状である場合には直径を意味し、真球状以外の形状である場合には、最大径と最小径の平均値を意味する。そして、微粒子の平均粒子径は、基材粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、無作為に選択した50個の基材粒子の粒径をノギスで測定した平均値を意味する。なお、基材粒子が後記のように金属で被覆されている場合の平均粒子径は、その被覆層も含める。
【0056】
微粒子は、200℃以上の熱分解温度を有することが好ましく、この場合、後述のように接続構造体の接続部材が形成される際に微粒子の熱分解が抑制されやすい。微粒子の熱分解温度は、好ましくは220℃以上、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは300℃以上である。なお、微粒子が後述の金属で被覆されている場合は、微粒子と金属とのうち、先に熱分解する温度を、微粒子の熱分解温度とする。
【0057】
微粒子は、その表面が金属で被覆されていることも好ましい。このように表面が金属で被覆された微粒子が接続部材に含まれる場合、接続部材に応力等がかかっても、その応力を緩和させる効果、つまり応力緩和作用が発揮され得る。そのため、例えば、リワーク作業時に接続構造体に負荷がかかっても、接続構造体の反りや変形等を抑制することができる。
【0058】
微粒子を被覆できる金属としては、例えば、金、銀、錫、銅、ゲルマニウム、インジウム、パラジウム、テルル、タリウム、ビスマス、亜鉛、ヒ素、セレン、鉄、鉛、ルテニウム、アルミニウム、コバルト、チタン、アンチモン、カドミウム、ケイ素、ニッケル、クロム、白金、ロジウム等が例示される。金属は、これらの各々の金属のいずれか1種のみであってもよいし、あるいは、2種以上を含んでもよい。また、金属は、上記例示列挙した各々の金属のうちの2種以上の金属の合金であってもよい。
【0059】
微粒子が金属で被覆されている場合、金属の層は単層及び複数の層のいずれでもよい。
【0060】
微粒子が金属で被覆されている場合、金属の厚みは、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは500nm以下、特に好ましくは300nm以下である。
【0061】
微粒子の表面を金属で被覆する方法は特に限定されない。例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等、公知の方法によって、微粒子表面を金属で被覆することができる。
【0062】
微粒子を被覆する金属は、複数の突起を有していてもよい。このような突起も、例えば、公知の方法で形成することができる。突起の形状、大きさも特に限定されず。公知と同様とすることができる。
【0063】
本発明の微粒子は、接続構造体を組み立てるための接続部材に使用することができ、接続構造体のリワーク性及びリワーク作業時の安全性を向上させることができる。従って、本発明の微粒子は、接続構造体の接続部材用の材料として好適に使用することができる。
【0064】
2.接続材料
接続材料は、前記微粒子と、金属粒子とを含有する。接続材料は硬化することで、前記接続部材(
図1等参照)を形成し得る材料である。接続材料は、例えば、加熱して焼結することで硬化する材料(つまり、焼結材料)である。
【0065】
金属粒子の種類は特に限定されない。例えば、公知の接続材料と同様の金属粒子を使用することができる。
【0066】
金属粒子は、金属単体の粒子であってもよいし、あるいは、金属化合物の粒子であってもよい。金属化合物は、金属原子と、該金属原子以外の原子とを含む化合物である。
【0067】
金属化合物の具体例としては、金属酸化物、金属の炭酸塩、金属のカルボン酸塩及び金属の錯体等が挙げられる。金属化合物は、金属酸化物であることが好ましい。例えば、上記金属酸化物は、還元剤の存在下で接続時の加熱で金属粒子となった後に焼結する。上記金属酸化物は、金属粒子の前駆体である。金属のカルボン酸塩粒子としては、金属の酢酸塩粒子等が挙げられる。
【0068】
金属粒子及び金属化合物に含まれる金属は、金、銀、錫、銅、ゲルマニウム、インジウム、パラジウム、テルル、タリウム、ビスマス、亜鉛、ヒ素、セレン及びこれらの金属元素のうちの少なくとも1種の金属元素を含む合金からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。金属粒子に含まれる金属は、金、銀及び銅からなる群より選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。
【0069】
特に、金属粒子は、銀粒子及び酸化銀粒子の少なくとも一方であることが好ましい。これらの金属粒子は、融点が高い材料であることから、腐食性化合物によって気化されにくく、かつ、融点が高いことから、前記腐食性化合物による腐食が起こりにくい。そのため、金属粒子は、銀粒子及び酸化銀粒子の少なくとも一方であるある場合は、リワーク後に得られた接続構造体において、接続部材の劣化が起こりにくく、リワーク後も接続構造体の強度、性能等が損なわれにくい。酸化銀としては、Ag2O及びAgOが挙げられる。
【0070】
金属粒子の平均粒子径は、10nm以上、10μm以下であることが好ましい。また、接続対象部材の接続強度を高める観点から、金属粒子は、平均粒子径の異なる2種以上の金属粒子を含むことが好ましい。平均粒子径の異なる2種以上の金属粒子を有する場合、平均粒子径の小さい金属粒子の平均粒子径は10nm以上であることが好ましく、100nm以下であることが好ましい。平均粒子径の大きい金属粒子の平均粒子径は1μm以上であることが好ましく、10μm以下であることが好ましい。平均粒子径の小さい金属粒子の平均粒子径の大きい金属粒子に対する配合量の比は1/9以上、9以下であることが好ましい。なお、上記平均粒子径は、金属粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、観察された画像における任意に選択した50個の各粒子の最大径を算術平均することにより求められる。
【0071】
金属粒子は、400℃未満の加熱で焼結することが好ましい。金属粒子が焼結する温度(焼結温度)は、より好ましくは350℃以下、好ましくは300℃以上である。上記金属粒子が焼結する温度が上記上限以下又は上記上限未満であると、焼結を効率的に行うことができ、更に焼結に必要なエネルギーを低減し、かつ環境負荷を小さくすることができる。
【0072】
金属粒子が金属酸化物粒子である場合は、接続材料には還元剤が含まれることが好ましい。上記還元剤としては、アルコール類(アルコール性水酸基を有する化合物)、カルボン酸類(カルボキシ基を有する化合物)及びアミン類(アミノ基を有する化合物)等が挙げられる。上記還元剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
アルコール類としては、アルキルアルコールが挙げられる。上記アルコール類の具体例としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール及びイコシルアルコール等が挙げられる。また、上記アルコール類としては、1級アルコール型化合物に限られず、2級アルコール型化合物、3級アルコール型化合物、アルカンジオール及び環状構造を有するアルコール化合物も使用可能である。さらに、上記アルコール類として、エチレングリコール及びトリエチレングリコールなど多数のアルコール基を有する化合物を用いてもよい。また、上記アルコール類として、クエン酸、アスコルビン酸及びグルコースなどの化合物を用いてもよい。
【0074】
カルボン酸類としては、アルキルカルボン酸等が挙げられる。上記カルボン酸類の具体例としては、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸及びイコサン酸等が挙げられる。また、上記カルボン酸類は、1級カルボン酸型化合物に限られず、2級カルボン酸型化合物、3級カルボン酸型化合物、ジカルボン酸及び環状構造を有するカルボキシル化合物も使用可能である。
【0075】
アミン類としては、アルキルアミン等が挙げられる。上記アミン類の具体例としては、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン及びイコデシルアミン等が挙げられる。また、上記アミン類は分岐構造を有していてもよい。分岐構造を有するアミン類としては、2-エチルヘキシルアミン及び1,5-ジメチルヘキシルアミン等が挙げられる。上記アミン類は、1級アミン型化合物に限られず、2級アミン型化合物、3級アミン型化合物及び環状構造を有するアミン化合物も使用可能である。
【0076】
還元剤は、アルデヒド基、エステル基、スルホニル基又はケトン基などを有する有機物であってもよく、カルボン酸金属塩などの有機物であってもよい。カルボン酸金属塩は金属粒子の前駆体としても用いられる一方で、有機物を含有しているために、金属酸化物粒子の還元剤としても用いられる。
【0077】
金属粒子100質量部に対して、還元剤の含有量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは500質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。上記還元剤の含有量が上記下限以上であると、上記金属粒子をより一層緻密に焼結させることができる。
【0078】
金属粒子の焼結温度(接続温度)よりも低い融点を有する還元剤を用いると、接続時に凝集し、接続部にボイドが生じやすくなる傾向がある。カルボン酸金属塩の使用により、該カルボン酸金属塩は接続時の加熱により融解しないため、ボイドが生じるのを抑制できる。なお、カルボン酸金属塩以外にも有機物を含有する金属化合物を還元剤として用いてもよい。
【0079】
接続材料は、樹脂バインダーが含まれていてもよい。樹脂バインダーとしては、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂を含むことが好ましく、硬化性樹脂を含むことがより好ましい。上記硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。上記光硬化性樹脂は、光硬化性樹脂及び光重合開始剤を含むことが好ましい。上記熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含むことが好ましい。樹脂バインダーとしては、例えば、公知のビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。樹脂バインダーは、1種のみ又は2種以上が併用されてもよい。
【0080】
接続材料は、分散媒が含まれていてもよい。分散媒としては、例えば、公知の溶剤等が挙げられる。
【0081】
接続材料は、前記微粒子を含むことを除いては、公知の接続材料を使用して調整してもよい。公知の接続材料としては、京セラケミカル社製「CT2700」、Heraeus社製「ASP295」、「ASP016」、「ASP043」、ヘンケル社製「LOCTITE ABLESTIK SSP2020」、ナミックス社製「H9890-6A」、ハリマ化成社製「NH-4000」、「NH-225D」、「NH-3000D」、化研テック社製「CM-3212」、「CR-3520」、日本スペリア社製「アルコナノ銀ペーストANP-1」等が挙げられる。
【0082】
接続材料において、金属粒子の含有量は、前記微粒子の含有量よりも多いことが好ましく、例えば、金属粒子の含有量は、前記微粒子の含有量よりも10質量%以上多いことがより好ましく、20質量%以上多いことがさらに好ましい。
【0083】
接続材料において、分散媒を除く成分100質量%中、微粒子の含有量は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。上記金属原子含有粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下である場合、リワーク性が特に優れる。
【0084】
接続材料において、分散媒を除く成分100質量%中、金属粒子の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。上記金属粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下である場合、上記金属粒子をより一層緻密に焼結させることができる。
【0085】
接続材料が前記樹脂バインダーを含む場合、接続材料の分散媒を除く成分100質量%中、樹脂バインダーの含有量は好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。樹脂バインダーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記金属粒子をより一層緻密に焼結させることができる。
【0086】
接続材料を製造する方法は特に限定されず、例えば、微粒子及び金属粒子と、必要に応じてその他成分である分散媒及び樹脂バインダーを所定の配合量で混合することで調製することができる。また、市販の接続材料に微粒子を添加することで調製することもできる。混合方法も公知の方法を広く採用することができる。
【0087】
3.接続構造体
接続構造体は、前記接続材料の硬化物を含む接続部材によって第1の接続対象部材及び第2の接続対象部材が接続されている。接続構造体は、例えば、前述の
図1の形態を挙げることができる。
【0088】
接続部材に含まれる接続材料の硬化物は、例えば、接続材料を所定温度で焼結することで形成される。つまり、接続材料の硬化物とは、接続材料の焼結体を意味することができる。接続材料の焼結条件は特に限定されず、公知の焼結条件を広く適用できる。
【0089】
接続部材は、接続材料の硬化物を接着部材の全質量に対して50質量%以上含むことができ、80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、99質量%以上含むことが特に好ましい。また、接着部材は、接続材料のみで形成されていてもよい。
【0090】
接続部材において、微粒子の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。また、接続部材において、金属粒子の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0091】
接続部材は、ギャップを制御する機能を有する公知の粒子を含むこともできる。ギャップを制御する機能を有する粒子は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材とのスペーサーとしての役割を果たし得る。
【0092】
接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。接続対象部材は電子部品であることが好ましい。また、第1の接続対象部材及び第2の接続対象部材の内の少なくとも一方は、半導体ウェハ又は半導体チップであることが好ましい。つまり、接続構造体は、半導体装置であることが好ましい。
【0093】
接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例として、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に接続材料を挟み込んで第1の接続対象部材、接続材料及び第2の接続対象部材がこの順に積層された積層体を形成し、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。これにより、積層体に含まれる金属粒子が焼結し、焼結体中に微粒子が分散した接着部材が形成され、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材とが接続部材によって接続される。前記積層体は、一方の接続対象部材に、接続材料を塗布して塗膜を形成し、この塗膜面に他方の接続対象部材を重ね合わせることで、積層体を形成することができる。
【0094】
接続構造体において、前記第1の接続対象部材又は前記第2接続対象部材と、前記接続部材とのせん断強度は、250℃で10分間加熱処理した後に60%以上低下することが好ましい。つまり、接続構造体を250℃で10分間加熱処理した場合、加熱処理前後において、第1の接続対象部材又は第2接続対象部材と、接続部材とのせん断強度が、60%以上低下することが好ましい。この場合、加熱によって容易に一方または両方の接続対象部材を剥離することができるので、リワーク性がさらに向上する。ここでの加熱処理の条件は、前記ガス発生試験と同様の条件であり、また、加熱処理は、接続構造体を得た後に最初に実施される処理のことである。
【0095】
接続構造体を250℃で10分間加熱処理した場合、第1の接続対象部材又は第2接続対象部材と、接続部材とのせん断強度は、10MPa以下であることが好ましい。この場合、加熱によって容易に一方または両方の接続対象部材を剥離することができるので、リワーク性がさらに向上する。ここでの加熱処理の条件は、前記ガス発生試験と同様の条件であり、また、加熱処理は、接続構造体を得た後に最初(1回目)に実施される処理のことである。前記せん断強度は、5MPa以下であることがより好ましく、3MPa以下であることが特に好ましい。
【0096】
4.接続構造体のリワーク方法
接続構造体をリワークする方法は、例えば、接続構造体を加熱して前記第1の接続対象部材及び/又は前記第2接続対象部材を前記接続部材から剥離する工程を備えることができる。接続構造体を加熱することで、接続部材に含まれる微粒子から発生するガス成分によって、接続対象部材の腐食が起こり、これによって、接続対象部材を接続部材から剥離することができる。
【0097】
接続構造体をリワーク(解体)するにあたっての前記加熱の条件は特に限定されない。例えば、加熱温度を250~400℃、好ましくは300~400℃とすることができる。加熱時間は加熱温度によって適宜設定することができ、例えば、5~10分とすることができる。
【0098】
本発明の接続構造体のリワーク方法によれば、簡易な条件で接続対象部材を接続部材から剥離することができるので、リワーク性に優れる。また、高温に加熱するまでもなく、接続対象部材を接続部材から剥離して解体できることから、回路が高温になる前に回路を断線させることができ、リワーク作業時の発火を防止しやすい。従って、本発明の接続構造体の解体方法によれば、リワーク性に優れ、かつ、作業者が安全にリワーク作業を行うことができる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0100】
(製造例1;シリコーン粒子1の製造)
1.シリコーンオリゴマーの作製
温浴槽内に設置した100mlのセパラブルフラスコに、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン1質量部と、0.5質量%p-トルエンスルホン酸水溶液20質量部とを入れた。40℃で1時間撹拌した後、炭酸水素ナトリウム0.05質量部を添加した。その後、ジメトキシメチルフェニルシラン10質量部、ジメチルジメトキシシラン49質量部、トリメチルメトキシシラン0.6質量部、及びメチルトリメトキシシラン3.6質量部を添加し、1時間撹拌を行った。その後、10質量%水酸化カリウム水溶液1.9質量部を添加して、85℃まで昇温してアスピレーターで減圧しながら、10時間撹拌、反応を行った。反応終了後、常圧に戻し40℃まで冷却して、酢酸0.2質量部を添加し、12時間以上分液漏斗内で静置した。二層分離後の下層を取り出して、エバポレーターにて精製することでシリコーンオリゴマーを得た。
【0101】
2.シリコーン粒子の作製
得られたシリコーンオリゴマー30質量部に、tert-ブチル-2-エチルペルオキシヘキサノアート(重合開始剤、日油社製「パーブチルO」)0.5質量部及び1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン0.4質量部を溶解させた溶解液Aを用意した。また、イオン交換水150質量部に、ラウリル硫酸トリエタノールアミン塩40質量%水溶液(乳化剤)0.8質量部とポリビニルアルコール(日本合成化学社製「ゴーセノールGH-20」)の5質量%水溶液80質量部とを混合して、水溶液Bを用意した。なお、前記ポリビニルアルコールは、重合度が約2000、けん化度が86.5~89モル%であるものを使用した。温浴槽中に設置したセパラブルフラスコに、上記溶解液Aを入れた後、上記水溶液Bを添加し、次いで、Shirasu Porous Glass(SPG)膜(細孔平均径約1μm)を用いることで、乳化を行った。乳化後、85℃に昇温して、9時間重合を行った。重合後の粒子の全量を遠心分離により水洗浄し、凍結乾燥を行った。乾燥後、粒子の凝集体が目的の比(平均2次粒子径/平均1次粒子径)になるまでボールミルにて粉砕して、粒子径が3.0μmのシリコーン粒子1を得た。
【0102】
(製造例2;シリコーン粒子2の製造)
1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン0.4質量部を、0.3質量部に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で粒子径が3.0μmのシリコーン粒子2を得た。
【0103】
(製造例3;シリコーン粒子3の製造)
1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン0.4質量部を、0.2質量部に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で粒子径が3.0μmのシリコーン粒子3を得た。
【0104】
(製造例4;樹脂粒子1の製造)
種粒子として平均粒子径1.30μmのポリスチレン粒子48gと、イオン交換水100gと、メタノール342gと、ポリビニルピロリドンの5重量%水溶液6gとを混合し、超音波により分散させた後、セパラブルフラスコに添加した。セパラブルフラスコ内を均一に撹拌して、ポリスチレン粒子懸濁液を作製した。
【0105】
また、トリエチレングリコールジメタクリレート100gと、2-エチルヘキシルメタクリレート150gと、重合開始剤3gと、界面活性剤12.5gと、メタノール980gとをイオン交換水250gに添加し、乳化液を作製した。重合開始剤は2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V-65」)、界面活性剤はポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製「ハイテノール(登録商標)NF-08」)の20%水溶液を使用した。
【0106】
ポリスチレン懸濁液が添加されたセパラブルフラスコに、上記乳化液を添加し、8時間撹拌し、種粒子を膨潤させた。
【0107】
その後、膨潤した種粒子が収容されているセパラブルフラスコに、ポリビニルアルコールの10重量%水溶液60gと1,1,3,3―テトラメチルジシシロキサン0.01gと、イオン交換水250gを添加した。次いで、65℃で2時間撹拌を続けることで、平均粒子径2.95μmの樹脂粒子1を得た。
【0108】
(製造例5;樹脂粒子2の製造)
1,1,3,3―テトラメチルジシシロキサンを使用しなかったこと以外は製造例4と同様の方法により樹脂粒子(樹脂粒子2)を得た。
【0109】
(実施例1)
銀ペースト(日本スペリア社製「アルコナノ銀ペーストANP-1」)100質量部と、製造例で得られたシリコーン粒子1を1質量部とを、よく分散するようスパーテルにて混練して、接続材料を調製した。
【0110】
図2に示すように、基板100として円筒状の銅(10mm径で厚み5mm)を使用し、この基板100上に、前記接続材料をスクリーン塗布してペースト層200(5mm径で厚み50μm)を形成した(
図2(a))。このペースト層200上に銅製の円盤チップ101(5mm径で厚み2mm)を配置した(
図2(b))。次いで、130℃で90秒間、窒素又はヘリウム雰囲気下で乾燥し、次いで、5MPaで加圧しながら、300℃で3分間、加熱することで接続材料の焼結を行って硬化させた。これにより、2枚のCu基板(基板100及びチップ101)が接続部材20で接続された積層体1を得た。
【0111】
(実施例2)
シリコーン粒子1を、製造例2で得られたシリコーン粒子2に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0112】
(実施例3)
シリコーン粒子1を、製造例4で得られた樹脂粒子1に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0113】
(比較例1)
シリコーン粒子1を、製造例3で得られたシリコーン粒子3に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0114】
(比較例2)
シリコーン粒子1を、製造例5で得られた樹脂粒子2に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0115】
(微粒子のガス発生量)
微粒子の前記ガス発生試験におけるガス成分の発生量は、熱脱着GC-MS測定により行った。測定には、パーキンエルマー社の「TurboMatrix 650」を備え付けた「JMS Q1000(日本電子社製)」を使用し、ヘリウム雰囲気中、加熱温度を250℃、加熱時間を10分として測定を行った。その他の測定条件は下記の通りとした。
スプリット:入口25mL/min、出口25mL/min、注入量2.5%
GCカラム:EQUITY-1(無極性)、0.32mm×60m×0.25μm
He流量:1.5ml/min
MS測定範囲:35~400amu(scan500ms)
イオン化電圧 :70eV
MS温度:イオン源230℃,インターフェイス250℃とした。
【0116】
(加熱前の積層体のダイシェア強度)
加熱前の積層体のダイシェア強度は、JIS Z 3198-7:鉛フリーはんだ試験方法-第7部 チップ部品のはんだ継手せん断 試験方法」に記載の「はんだ継手せん断試験方法」に基づいて評価した。
【0117】
図3は、積層体のダイシェア強度を測定するための測定装置を模式的に示している。各実施例及び比較例で得た積層体1を加熱処理せずにシェア強度試験機105にセットし、チップ101に対し、基板100の接着面と平行方向にシェア速度6mm/minで荷重をかけた。変位と荷重との関係をグラフ化して応力-ひずみ曲線を得て、接合強度を計測した。応力-ひずみ曲線において破断点の応力値をダイシェア強度(せん断強度)とした。
【0118】
(加熱後の積層体のダイシェア強度)
実施例及び比較例で得た積層体1を、前記ガス発生試験と同じ条件、つまり、ヘリウム雰囲気中、250℃で10分間の加熱条件で加熱処理を行った。この加熱処理された実施例及び比較例で得た積層体1を、前記加熱前の積層体のダイシェア強度と同様の測定装置及び同様の測定条件で変位と荷重との関係をグラフ化して応力-ひずみ曲線を得て、接合強度を計測した。応力-ひずみ曲線において破断点の応力値をダイシェア強度(せん断強度)とした。
【0119】
【0120】
表1には、各実施例及び比較例で得た積層体を形成するための接続材料の配合組成及び接続材料に含まれる微粒子のガス発生量を示す。あわせて表1には、各実施例及び比較例で得た積層体の加熱前及び加熱後のダイシェア強度の値を示している。
【0121】
表1の結果から、製造例1,2で得たシリコーン粒子及び製造例4で得た樹脂粒子は、ガス発生試験において腐食性化合物が4000ppm以上発生していることがわかった。そして、これらの微粒子を含む積層体は、加熱処理によってダイシェア強度が大きく低下していることがわかった。製造例1,2で得たシリコーン粒子及び製造例4で得た樹脂粒子はいずれもガス発生試験によって、1,1,3,3―テトラメチルジシロキサン又はこれに由来する化合物を主成分とする腐食性化合物が発生していることが、GC-MSの結果から明らかとなった。なお、検出された1,1,3,3―テトラメチルジシロキサンには、微量の微粒子の分解物及び重合物も含まれ得る。
【0122】
一方、製造例3で得たシリコーン粒子3及び製造例5で得た樹脂粒子2は、ガス発生試験において腐食性化合物が4000ppm未満であり、これらの微粒子を含む積層体は、加熱処理してもダイシェア強度が加熱前とほとんど変化がなかった。製造例3で得たシリコーン粒子3は、ガス発生試験によって、1,1,3,3―テトラメチルジシロキサン又はこれに由来する化合物を主成分とする腐食性化合物が発生していることが、GC-MSの結果から明らかとなった。なお、検出された1,1,3,3―テトラメチルジシロキサンには、微量の微粒子の分解物及び重合物も含まれ得る。
【0123】
以上の結果は、ガス発生試験で発生するガス成分(腐食性化合物)が4000ppm以上である微粒子を接合部材に含む積層体は、積層体の加熱処理により、Cu基板が容易に剥離できることを示している。
【0124】
積層体は電極構造体と同様の基本構造を有していることを考えれば、実施例及び比較例の結果から、本発明の微粒子を含む接合部材を備えた接続構造体は、加熱処理により容易に接続対象部材を接続部材から剥離できることが示されたといえる。よって、本発明の微粒子を含む接合部材を備えた接続構造体は、リワーク性に優れ、かつ、作業者が安全にリワーク作業を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0125】
10:微粒子
11:第1の接続対象部材
12:第2の接続対象部材
20:接続部材