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  • 特許-断熱構造、および断熱構造の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】断熱構造、および断熱構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20220502BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20220502BHJP
   E04F 19/00 20060101ALI20220502BHJP
   E04B 1/64 20060101ALN20220502BHJP
【FI】
E04B1/76 500F
E04B1/80 100P
E04F19/00 C
E04B1/64 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017184666
(22)【出願日】2017-09-26
(65)【公開番号】P2019060112
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】豊田 兼昭
(72)【発明者】
【氏名】弘末 雅也
【審査官】齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-234558(JP,A)
【文献】特開2003-293489(JP,A)
【文献】特開平10-331294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76
E04B 1/80
E04F 19/00
E04B 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の躯体と、
両面に面材が積層されたJISA9511準拠の発泡プラスチック系断熱材、および下地材が一体に形成され、かつ前記断熱材が前記躯体の壁面を向いて配置される内装材と、を備える断熱構造であって、
前記断熱材は、厚さ25mmにおける透湿係数が200ng/(m・s・Pa)以下であり、
前記面材は、ガラス繊維混抄紙、ガラス繊維不織布、ポリエステル不織布のうち、何れか一の素材からなり
前記内装材には、配線固定部材が収容される開口部が形成され、
前記開口部を、前記断熱材側から覆う気密材を備えることを特徴とする断熱構造。
【請求項2】
前記気密材は、薄膜材料により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱構造。
【請求項3】
前記配線固定部材を前記内装材に固定する固定部材を更に備え、
前記気密材は、前記内装材における前記断熱材側の外面において、前記固定部材よりも、正面視で前記開口部に対して外側に固着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の断熱構造の施工方法であって、
前記内装材のうち、前記開口部を、前記断熱材側から前記気密材により覆うとともに、この内装材を、前記断熱材が前記躯体の壁面に向くように配置することを特徴とする断熱構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱構造、および内装材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に示すような、建築物の躯体の壁面に施工される断熱材が知られている。
このような断熱材を施工する際には、断熱材のうち、例えば電源器具等が収容される配線固定部材が配置される部分に、この断熱材を貫く開口部を形成し、開口部の内側に配線固定部材を配置する。そして、室内と、断熱材と躯体との間の空間と、が連通するのを遮断するために、配線固定部材の内部に気密材を配置し、カバーにより配線固定部材を被覆して気密材を配線固定部材に固定することが行われる。このように、室内と、断熱材と躯体との間の空間と、の連通を遮断することで、室内の暖められた空気が前記空間に進入することを防ぎ、躯体の壁面での結露の発生を抑えることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6047139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、気密材が配線固定部材の内側に配置されることにより、気密材が配線固定部材内の他の部材に接触したり、カバーの取付けビスにより気密材が穿孔されたりして、気密材が欠損するおそれがあった。これにより、室内と、断熱材と躯体との間の空間と、の連通を遮断することができなくなるおそれがあった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、室内と、断熱材と躯体との間の空間と、の連通を確実に遮断することができる断熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る断熱構造は、建築物の躯体と、断熱材、および下地材が一体に形成され、かつ前記断熱材が前記躯体の壁面を向いて配置される内装材と、を備える断熱構造であって、前記内装材には、配線固定部材が収容される開口部が形成され、前記開口部を、前記断熱材側から覆う気密材を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る内装材の施工方法は、断熱材、および下地材が一体に形成された内装材のうち、配線固定部材が収容される開口部を、前記断熱材側から気密材により覆うとともに、この内装材を、前記断熱材が建築物の躯体の壁面に向くように配置することを特徴とする。
【0008】
これらの発明によれば、内装材に形成され、配線固定部材が収容される開口部が、断熱材側から気密材により覆われている。このため、配線固定部材の内部に気密材が位置することがなく、配線固定部材内の取付けビスや他の部材と、気密材と、が接触するのを回避することが可能になる。このため、気密材の欠損を防止することができ、室内と、断熱材と躯体との間の空間と、の連通を確実に遮断することができる。
【0009】
また、内装材における断熱材および下地材が、壁面への施工前から予め一体に形成されている。このため、仮に配線固定部材の内部に気密材を配置した場合には、気密材の端部を断熱材と下地材とにより挟みこむことができず、配線固定部材とカバーとにより挟み込んで固定することとなる。これにより、配線固定部材の外側であって、内装材における室内側の内面に、気密材の端部が突出し、見映えが悪くなることがあった。
一方本発明では、気密材が断熱材側から開口部を覆うので、気密材の端部が内装材の内面に突出することがなく、見映えの悪化を防ぐことができる。
【0010】
また、前記気密材は、薄膜材料により形成されてもよい。
【0011】
この場合、気密材が薄膜材料により形成されているので、気密材がかさばるのを抑え、気密材の取扱性および施工性を確保することができる。
【0012】
また、前記配線固定部材を前記内装材に固定する固定部材を更に備え、前記気密材は、前記内装材における前記断熱材側の外面において、前記固定部材よりも、正面視で前記開口部に対して外側に固着されてもよい。
【0013】
この場合、気密材が、開口部に対して固定部材よりも外側に固着されているので、気密材が固定部材と接触し、欠損するのを確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、室内と、断熱材と躯体との間の空間と、の間の連通を確実に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る断熱構造を示す横断面図である。
図2図1に示す配線固定部材の変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係る断熱構造1について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅、および厚みの比率等は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る断熱構造1は、建築物の躯体10と、断熱材21、および下地材22が一体に形成され、かつ断熱材21が躯体10の側壁をなす壁面10Aを向いて配置される内装材20と、を備えている。躯体10は例えば鉄筋コンクリート等により形成されている。
【0018】
例えばリフォームの際には、既設の内装材20が、躯体10の壁面10Aに接着剤40により固着されている。この接着剤40の一部が、躯体10の壁面10Aに残置されることがある。これにより、躯体10の壁面10Aには、この壁面10Aと内装材20とが対向する方向に向けて張出す、又は窪む凹凸が形成されていることがある。
以下の説明において、躯体10の壁面10Aと内装材20とが対向する方向を対向方向Xといい、上下方向Zから見た横断面視において、対向方向Xと直交する方向を直交方向Yという。対向方向Xおよび直交方向Yはともに、水平方向に延びている。
【0019】
内装材20は、断熱材21および下地材22が壁面10Aへの施工前から予め一体に形成されている。内装材20は躯体10の壁面10Aに配置される。内装材20は、断熱材21が躯体10の壁面10Aを向き、下地材22が室内を向いた状態で配置される。下地材22および断熱材21それぞれの表裏面の大きさは、互いに同等となっている。内装材20は、図示しない接着剤や木枠、金属製スタッド等により躯体10の壁面10Aに固着されている。
【0020】
断熱材21としては、例えば、JISA9511準拠の発泡プラスチック系断熱材、すなわち、フェノール樹脂発泡体、硬質ウレタンフォーム、イソシアヌレートフォーム、押出法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレンフォーム等が使用され、これらの発泡プラスチック系断熱材に真空断熱材を埋設してもよい。
通常、断熱材21の両面には、クラフト紙、ガラス繊維混抄紙、水酸化アルミニウム紙、寒冷紗、ライナー紙、エンボス加工紙、複合紙などの紙や、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、ポリエステル不織布、ポリプロピレン不織布などの不織布、アルミニウム箔、ポリエチレン加工紙などの非透湿シートが面材として積層される。
【0021】
断熱材21の面材は、後述する気密材30との接着性の観点から、ガラス繊維混抄紙、ガラス繊維不織布、ポリエステル不織布が好ましい。
また、内装材20のうち、少なくとも断熱材21は気密性を備えており、厚さ25mmにおける透湿係数が200ng/(m・s・Pa)以下とされ、100ng/(m・s・Pa)以下が好ましく、60ng/(m・s・Pa)以下がより好ましく、50ng/(m・s・Pa)以下が最も好ましい。
断熱材21の厚さとしては、十分な断熱性を得るため15mm以上とされ、室内空間を広くするため40mm以下とされており、20mm以上30mm以下が好ましい。
【0022】
下地材22としては、例えば、石膏ボード、耐水石膏ボード、合板、亜鉛メッキ鋼板、珪酸カルシウム板、木毛セメント板や構造用パネル、パーティクルボード、シージングボード、MDF、ハードボード、積層繊維板、構造用合板等の木質系ボード、およびロックウール吸音板等が使用される。内装材20は、現場でカッターや丸鋸等で容易に加工できるものとされていることが好ましい。
【0023】
内装材20には、配線固定部材50が収容される開口部20Aが形成されている。開口部20Aは、2辺が上下方向Zに延びるとともに、残りの2辺が直交方向Yに延びる矩形状をなしている。開口部20Aは上下方向Zの大きさが直交方向Yの大きさよりも大きくなっている。
配線固定部材50は箱状をなしている。配線固定部材50は、対向方向Xから見た正面視で開口部20Aよりも小さく形成された矩形状を呈する。配線固定部材50は対向方向Xの室内側に向けて開口している。配線固定部材50の前記開口は、カバー60により被覆されている。
【0024】
配線固定部材50における対応方向の躯体10側には、挿通口(図示せず)が形成されている。挿通口には、躯体10と内装材20との間を通した配線70が挿通される。配線固定部材50内には、例えば電源器具、通信器具等の配線器具(図示せず)が収容される。
【0025】
断熱構造1は、配線固定部材50を内装材20に固定する固定部材80を更に備えている。固定部材80は、配線固定部材50を直交方向Yに挟む位置に対をなすとともに、上下方向に間隔あけて複数配置されている。図示の例では、固定部材80として長ビスを用いている。
固定部材80は、カバー60とともに配線固定部材50を内装材20に固定している。固定部材80は、内装材20のうち、断熱材21および下地材22を一体に貫いている。
【0026】
そして本実施形態に係る断熱構造1は、開口部20Aを、断熱材21側から覆う気密材30を備えている。気密材30は薄膜材料により形成されている。
気密材30は、内装材20における断熱材21側の外面において、固定部材80よりも、対向方向Xから見た正面視で、開口部20Aに対して直交方向Yおよび上下方向Zの外側に固着されている。気密材30は、例えば接着剤等により断熱材21側の外面に固着されている。気密材30には、配線70を挿通するための挿通部(図示せず)が形成されている。
【0027】
次に、本実施形態に係る内装材20の施工方法について説明する。
本実施形態に係る内装材20の施工方法では、まず、内装材20の開口部20Aを、対向方向Xの断熱材21側から気密材30により覆う。そして、気密材30を内装材20における断熱材21側の外面に固着する。この際、固定部材80が配置される位置を確認し、気密材30を、固定部材80よりも、対向方向Xから見た正面視で、開口部20Aに対して直交方向Yおよび上下方向Zの外側に固着する。
【0028】
次に、配線器具が内部に配置された状態で配線固定部材50を開口部20Aに、対向方向Xの下地材22側から収容する。なお、配線固定部材50を内装材20の開口部20Aに収容した後に、内装材20の開口部20Aを気密材30により覆ってもよい。また、配線器具は、開口部20Aに配線固定部材50を収容した後に、配線固定部材50の内部に配置してもよい。
【0029】
そして、建築物の躯体10の壁面10Aに内装材20を配置する。内装材20を配置する際には、断熱材21を躯体10の壁面10Aに向けた状態で、内装材20を壁面10Aに配置する。内装材20は図示しない接着剤により躯体10の壁面10Aに固着される。この際、躯体10の壁面10Aの凹凸により、躯体10の壁面10Aと断熱材21との間には空間が形成される。
【0030】
次に、配線固定部材50の変形例について説明する。
図2に示すように、変形例に係る配線固定部材50Bは複数のプレートにより構成されている。配線固定部材50Bは、内装材20における断熱材21側の外面に配置される第1プレート51と、内装材20における室内側の内面に配置される第2プレート52と、を備えている。第1プレート51および第2プレート52は、開口部20A内に挿通される連結部材53により、互いに連結されている。
【0031】
第1プレート51は、固定部材80よりも、対向方向Xから見た正面視で、開口部20Aに対して直交方向Yおよび上下方向Zの内側に配置されている。第2プレート52は、内装材20の下地材22と、カバー60と、により対向方向Xに挟まれるとともに、固定部材80により内装材20に固定されている。第1プレート51および第2プレート52は、内装材20を対向方向Xに挟んでいる。
このように、複数のプレートにより構成された配線固定部材50Bを採用することで、配線固定部材50Bをコンパクトにして、開口面積が小さな開口部20Aにも配線固定部材50Bを取付けることができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る断熱構造1によれば、内装材20に形成され、配線固定部材50が収容される開口部20Aが、断熱材21側から気密材30により覆われている。
このため、配線固定部材50の内部に気密材30が位置することがなく、配線固定部材50内の取付けビスや他の部材と、気密材30と、が接触するのを回避することが可能になる。このため、気密材30の欠損を防止することができ、室内と、断熱材21と躯体10との間の空間と、の連通を確実に遮断することができる。
【0033】
また、内装材20における断熱材21および下地材22が、壁面10Aへの施工前から予め一体に形成されている。このため、仮に配線固定部材50の内部に気密材30を配置した場合には、気密材30の端部を断熱材21と下地材22とにより挟み込んで固定することができず、配線固定部材50とカバー60とにより挟み込んで固定することとなる。これにより、配線固定部材50の外側であって、内装材20における室内側の内面に、気密材30の端部が突出し、見映えが悪くなることがあった。
一方本発明では、気密材30が断熱材21側から開口部20Aを覆うので、気密材30の端部が内装材20の内面に突出することがなく、見映えの悪化を防ぐことができる。
【0034】
また、気密材30が薄膜材料により形成されているので、気密材30がかさばるのを抑え、気密材30の取扱性および施工性を確保することができる。
また、気密材30が、開口部20Aに対して固定部材80よりも外側に固着されているので、気密材30が固定部材80と接触し、欠損するのを確実に防ぐことができる。
【0035】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態においては、配線固定部材50として、内部に配線器具が配置される構成を示したが、このような態様に限られない。配線固定部材50に代えて、ガス管や水道管のような配管器具を収容する配管ボックスを採用してもよい。内部に収用される器具の種類に関わらず、断熱構造1において、同様の作用効果を奏功することができるからである。
【0037】
また、上記実施形態においては、気密材30が、内装材20における断熱材21側の外面において、固定部材80よりも開口部20Aに対して外側に固着されている構成を示したが、このような態様に限られない。気密材30は、固定部材80よりも開口部20Aに対して内側に固着されてもよい。
【0038】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 断熱構造
10 躯体
10A 壁面
20 内装材
20A 開口部
21 断熱材
22 下地材
30 気密材
50、50B 配線固定部材
80 固定部材
図1
図2