(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/12 20200101AFI20220502BHJP
B60W 30/16 20200101ALI20220502BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20220502BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
B60W30/12
B60W30/16
B60W40/06
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2017204966
(22)【出願日】2017-10-24
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明博
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-018207(JP,A)
【文献】特開2009-202708(JP,A)
【文献】特開2010-092416(JP,A)
【文献】特開2017-090649(JP,A)
【文献】特開2017-165311(JP,A)
【文献】特開2016-218649(JP,A)
【文献】特開2017-165309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行する走行車線を認識して走行制御を行う車両の走行制御装置であって、
自車両の進行方向の左右両側に道路の白線を認識しているとき、前記左右両側の前記白線による車線幅を基準車線幅として設定し、前記白線の左右両側の片側が欠損していると判断され、前記白線が欠損した側に立体物が認識されない場合には前記基準車線幅を保持し、前記白線が欠損した側に前記立体物が認識される場合、前記立体物と欠損していない側の前記白線とで形成される車線幅で前記基準車線幅を更新する車線幅設定部と、
前記基準車線幅と予め設定した閾値とを比較し、
前記基準車線幅が前記閾値以上の場合、自車両が追従走行する制御目標点を前記基準車線幅の中央位置に設定し、前記基準車線幅が前記閾値未満且つ自車両前方に先行車両が検出される場合、前記先行車両と自車両との車幅の大小関係に応じて前記制御目標点を設定し、前記基準車線幅が前記閾値未満且つ自車両前方に前記先行車両が検出されない場合、前記立体物から所定距離だけ離間した位置に前記制御目標点を設定する制御目標点設定部と
を備えることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記制御目標点設定部は、前記基準車線幅が前記閾値未満且つ自車両前方に前記先行車両が検出される場合、前記先行車両の車幅と自車両の車幅とを比較し、前記先行車両の車幅が自車両の車幅以上である場合には、前記制御目標点を前記先行車両の背面の中央位置に設定し、前記先行車両の車幅が自車両の車幅よりも小さい場合、前記立体物と自車両との距離が所定距離となるように前記制御目標点を前記先行車両の背面の中央位置からオフセットさせて設定することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が走行する車線を認識して走行制御を行う車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、道路の白線をカメラやレーダ等により検知し、検知した白線に沿って自車両を走行させる走行制御の技術が知られている。このような走行制御は、進行方向の左右両側の白線を走行車線として認識できることが前提であり、片側の白線しか検知できない場合には、制御を継続することが困難となる。
【0003】
このため、例えば、特許文献1には、走行域認識の基準とすべき基準白線が検知できない場合には、道路側方に道路に沿って配置された特徴物と自車との相対位置により自車の走行域を認識する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、白線を十分に検知できない状態で認識した走行域で走行制御を実行しようとしても、認識した走行域が狭い場合、それまでの走行環境から大きく変化し、ドライバに違和感や不快感を与える虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自車両の走行車線を認識して走行制御を行う際に、ドライバに違和感や不快感を与えることのない車両の走行制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による車両の走行制御装置は、自車両が走行する走行車線を認識して走行制御を行う車両の走行制御装置であって、自車両の進行方向の左右両側に道路の白線を認識しているとき、前記左右両側の前記白線による車線幅を基準車線幅として設定し、前記白線の左右両側の片側が欠損していると判断され、前記白線が欠損した側に立体物が認識されない場合には前記基準車線幅を保持し、前記白線が欠損した側に前記立体物が認識される場合、前記立体物と欠損していない側の前記白線とで形成される車線幅で前記基準車線幅を更新する車線幅設定部と、前記基準車線幅と予め設定した閾値とを比較し、前記基準車線幅が前記閾値以上の場合、自車両が追従走行する制御目標点を前記基準車線幅の中央位置に設定し、前記基準車線幅が前記閾値未満且つ自車両前方に先行車両が検出される場合、前記先行車両と自車両との車幅の大小関係に応じて前記制御目標点を設定し、前記基準車線幅が前記閾値未満且つ自車両前方に前記先行車両が検出されない場合、前記立体物から所定距離だけ離間した位置に前記制御目標点を設定する制御目標点設定部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自車両の走行車線を認識して走行制御を行う際に、ドライバに違和感や不快感を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】片側白線に対して過去の車線幅を保持する走行を示す説明図
【
図3】片側白線と立体物で形成される車線幅における走行を示す説明図
【
図4】片側白線と立体物で形成される車線幅における先行車両への追従走行を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号10は、自動車等の車両の走行制御システムであり、ドライバの運転支援や車両の自律的な自動運転を含む走行制御実行する。この走行制御システム10は、走行制御装置100を中心として、外部環境認識装置20、地図情報処理装置30、エンジン制御装置40、変速機制御装置50、ブレーキ制御装置60、操舵制御装置70等が車内ネットワークを形成する通信バス150を介して互いに接続されて構成されている。
【0011】
外部環境認識装置20は、車載のカメラ、ミリ波レーダ、レーザレーダ等の各種デバイスにより、自車両周囲の外部環境を認識する。本実施の形態においては、外部環境認識装置20として、車載のカメラ1及び画像認識装置2による外部環境の認識を主として説明する。
【0012】
カメラ1は、本実施の形態においては、同一対象物を異なる視点から撮像する2台のカメラ1a,1bで構成されるステレオカメラであり、CCDやCMOS等の撮像素子を有するシャッタ同期のカメラである。これらのカメラ1a,1bは、例えば、車室内上部のフロントウィンドウ内側のルームミラー近傍に所定の基線長で配置されている。
【0013】
カメラ1で撮像した左右一対の画像は、画像認識装置2で処理される。画像認識装置2は、ステレオマッチング処理により、左右画像の対応位置の画素ずれ量(視差)を求め、画素ずれ量を輝度データ等に変換して距離画像を生成する。距離画像上の点は、三角測量の原理から、自車両の車幅方向すなわち左右方向をX軸、車高方向をY軸、車長方向すなわち距離方向をZ軸とする実空間上の点に座標変換され、自車両が走行する道路の白線(車線)、障害物、自車両の前方を走行する先行車両等が3次元的に認識される。
【0014】
車線としての白線は、画像から白線の候補となる点群を抽出し、その候補点を結ぶ直線や曲線を算出することにより、認識することができる。例えば、画像上に設定された白線検出領域内において、水平方向(車幅方向)に設定した複数の探索ライン上で輝度が所定以上変化するエッジの検出を行って探索ライン毎に1組の白線開始点及び白線終了点を検出し、白線開始点と白線終了点との間の中間の領域を白線候補点として抽出する。
【0015】
そして、単位時間当たりの車両移動量に基づく白線候補点の空間座標位置の時系列データを処理して左右の白線を近似するモデルを算出し、このモデルにより、白線を認識する。白線の近似モデルとしては、ハフ変換によって求めた直線成分を連結した近似モデルや、2次式等の曲線で近似したモデルを用いることができる。
【0016】
地図情報処理装置30は、地図データベースを備え、GPS衛星等からの信号に基づいて自車両位置を測位し、地図データとの照合を行う。地図データベースには、車両走行の経路案内や車両の現在位置を表示するための地図データと、自動運転を含む運転支援制御を行うための高精細の地図データとが含まれている。
【0017】
地図情報処理装置30は、自車両位置の測位結果と地図データとの照合に基づく走行経路案内や交通情報を、図示しない表示装置を介してドライバに提示し、また、自車両及び先行車両が走行する道路の曲率、車線幅、路肩幅等の道路形状データや、道路方位角、道路白線種別、レーン数等の走行制御用の地図情報を出力する。
【0018】
エンジン制御装置40は、エンジン運転状態を検出する各種センサ類からの信号及び通信バス150を介して送信される各種制御情報に基づいて、エンジン(図示せず)の運転状態を制御する。エンジン制御装置40は、例えば、吸入空気量、スロットル開度、エンジン水温、吸気温度、空燃比、クランク角、アクセル開度、その他の車両情報に基づき、燃料噴射制御、点火時期制御、電子制御スロットル弁の開度制御等を主要とするエンジン制御を実行する。
【0019】
変速機制御装置50は、変速位置や車速等を検出するセンサ類からの信号や通信バス150を介して送信される各種制御情報に基いて、自動変速機(図示せず)に供給する油圧を制御し、予め設定された変速特性に従って自動変速機を制御する。
【0020】
ブレーキ制御装置60は、例えば、ブレーキスイッチ、4輪の車輪速、ハンドル角、ヨーレート、その他の車両情報に基づき、4輪のブレーキ装置(図示せず)をドライバのブレーキ操作とは独立して制御する。また、ブレーキ制御装置60は、各輪のブレーキ力に基づいて各輪のブレーキ液圧を算出して、アンチロック・ブレーキ・システムや横すべり防止制御等を行う。
【0021】
操舵制御装置70は、例えば、車速、ドライバの操舵トルク、ハンドル角、ヨーレート、その他の車両情報に基づき、車両の操舵系に設けた電動パワーステアリングモータ(図示せず)によるアシストトルクを制御する。また、操舵制御装置70は、走行制御装置100からの指示により、走行車線や先行車両に追従するための操舵量で電動パワーステアリングモータを駆動制御する。
【0022】
次に、走行制御システム10の中心となる走行制御装置100について説明する。走行制御装置100は、外部環境認識装置20による外部環境の認識結果を主として地図情報処理装置30からの情報を適宜併用することにより、走行車線内の所定位置に沿って走行する走行制御を、エンジン制御装置40、変速機制御装置50、ブレーキ制御装置60、及び操舵制御装置70を介して実行する。この走行制御は、走行制御装置100の主要部となる制御部101を中心として実行される。
【0023】
詳細には、制御部101は、道路の白線を自車両の走行車線として検出し、この走行車線に沿った目標コースを設定する。この目標コースへの走行制御は、車線に追従する走行制御(車線追従走行制御)であり、目標コース上を設定車速で走行するよう制御する。
【0024】
車線追従の目標コースは、左右の白線(自車両の走行車線)の横方向(幅方向)の中心位置の軌跡Pとして設定され、例えば、左右の白線を2次曲線で近似した場合、以下の(1)式で示すことができる。(1)式において、係数K1は目標コースの曲率成分、係数K2は目標コースのヨー角成分(自車両に対する目標コースの傾き成分)、係数K3は自車両に対する目標コースの横位置成分を示している。
P=K1・Z2+K2・Z+K3 …(1)
【0025】
この目標コースへの走行制御では、自車両の車幅方向の中心位置が目標コース上の制御目標点に一致するように、操舵制御装置70を介して自車両の操舵角を制御する。この制御目標点への操舵制御は、自車両の車線内での横位置と制御目標点との偏差に基づくフィードバック制御を主として実行される。
【0026】
例えば、以下の(2)式に示すように、自車両の横位置と制御目標点との偏差に基づくフィードバック分の操舵角αfに、自車両のヨー角を目標コースのヨー角成分に一致させるためのヨー角偏差に基づくフィードバック分の操舵角αyと、目標コースの曲率に基づくフィードフォーワード分の操舵角αffとを加えて目標操舵角αrefを算出する。そして、この目標操舵角αrefを実現する目標操舵トルクで電動パワーステアリングモータが駆動制御される。
αref=αf+αy+αff …(2)
【0027】
また、制御部101は、道路の白線が無い或いは白線を認識できない状況で、自車両前方を走行する先行車両を検出した場合には、先行車両に追従して走行する走行制御を行う。この先行車両への追従走行制御では、制御部101は、自車両の走行軌跡が先行車両の走行軌跡と一致するように操舵制御装置70を介した操舵制御を行うと共に、エンジン制御装置40、変速機制御装置50、ブレーキ制御装置60を介した走行駆動制御を実行する。
【0028】
先行車両の走行軌跡は、車線に基づく目標コースと同様に求めることができる。例えば、カメラ1の撮像画像の1フレーム当たりの自車両の移動量に基づいて先行車両の位置のフレーム毎の候補点を求め、この候補点の点群を近似する曲線を先行車両の走行軌跡として算出する。先行車両の位置は、カメラ1の撮像画像から先行車両の背面領域の横方向(車幅方向)の中心位置を求め、この中心位置を先行車両の位置を示す候補点とする。
【0029】
そして、これらの候補点の点群に対して、例えば最小二乗法を適用することにより、前述の(1)式と同様の曲線を求め、この曲線を先行車両の走行軌跡とする。この場合、(1)式における係数K1は先行車両の走行軌跡の曲率成分、係数K2は先行車両の走行軌跡のヨー角成分(自車両に対する先行車両の走行軌跡の傾き成分)、係数K3は自車両に対する先行車両の走行軌跡の横位置成分を示すことになる。
【0030】
先行車両の走行軌跡に追従する制御では、先行車両の背面領域の車幅方向の設定位置を制御目標点として設定し、自車両の車線内での横位置が制御目標点に一致するよう操舵角を修正することにより、自車両の進行方向を決定する制御となる。この先行車両に追従する走行制御は、基本的には車線への追従走行における操舵制御と同様であり、自車両の車線内での横位置と制御目標点との偏差に基づくフィードバック制御を主として実行される。このときの制御目標点として設定する位置は、例えば、先行車両の背面領域の車幅方向の中心位置とする。
【0031】
以上の走行制御では、車線としての白線は、必ずしも自車両の左右両側に存在するとは限らず、一方の白線が欠損して片側のみ白線が存在するような状況や、壁等の立体物で車線幅が狭くなるような状況もある。このような状況に対応するため、走行制御装置100は、主機能部である制御部101に対して、車線幅設定部102、制御目標点設定部103を備えることにより、ドライバの運転負荷を軽減すると共にドライバに違和感を与えることのない走行制御を可能とする。
【0032】
車線幅設定部102は、走行車線としての白線の認識状態と自車両前方の走行環境の認識状態とに基づいて車線幅を設定する。具体的には、車線幅設定部102は、カメラ1の撮像画像から左右の白線が認識できる場合に左右の白線の間隔(車線幅)を記憶・保持しておき、片側の白線が欠損した場合等の実際の走行環境の変化に対応して、記憶・保持している車線幅を適宜更新し、再設定する。
【0033】
例えば、
図2に示すように、自車両Cが左右の白線L_L,L_Rによって形成される走行車線の中央位置を制御目標点として走行中、図中に破線で示すように進行方向左側の白線L_Lが欠損している状況になった場合、そのままでは、車線中央位置が不明となって走行制御を継続できなくなる。
【0034】
このような状況になった場合、車線幅設定部102は、左右の白線L_L,L_Rによる車線幅Wを、基準車線幅Wmとして記憶しておき、白線L_Lが欠損した左側に仮想的な白線Lvを設定する。そして、右側の白線L_Rと仮想的な白線Lvとによる車線幅を、基準車線幅Wmとして保持し続けることにより、両側に白線があるときと同等の制御を可能とする。
【0035】
また、
図3に示すように、自車両Cが左右の白線L_L,L_Rによって形成される走行車線の中央位置を制御目標点として走行中、図中に破線で示すように進行方向左側の白線L_Lが欠損し、更に、側壁やパイロン等の立体物B1によって形成される車線幅W1が左右の白線L_L,L_Rによる車線幅Wよりも狭くなった場合、左右の白線L_L,L_Rによる車線幅Wを保持したまま走行制御を行うと、実際の車線幅に対して自車両が偏って偏走することになり、ドライバに違和感や不快感を与える虞がある。
【0036】
これに対して、車線幅設定部102は、左右の白線L_L,L_Rによる車線幅Wに基づく基準車線幅Wmを、片方の白線L_Rと側壁等の立体物B1によって形成される車線幅W1で更新して再設定する。そして、再設定された車線幅での走行制御を実行させることにより、実際の車線幅に対する自車両の偏走を回避し、ドライバに違和感や不快感を与えることを防止する。
【0037】
制御目標点設定部103は、車線幅設定部102で設定した車線幅(基準車線幅)Wmを、予め設定した閾値Wthと比較し、自車両が追従走行する制御目標点を、車線幅に基づく所定位置と自車両前方に認識される先行車両との何れか一方に設定する。閾値Wthは、ドライバに違和感を与えることなく通行可能な車線幅であり、例えば、通常の道路の車線幅が3m以上である場合、Wth=2.5mに設定される。
【0038】
具体的には、制御目標点設定部103は、車線幅設定部102で設定して記憶・保持している車線幅(基準車線幅)Wmと閾値Wthとを比較し、現在保持している車線幅Wmがドライバに違和感を与えることなく通行可能な路幅であるか否かを調べる。そして、Wm≧Wthの場合には、制御目標点を車線幅Wmの中央位置に設定し、Wm<Wthの場合、制御目標点を自車両前方の先行車両に設定する。
【0039】
例えば、
図4に示すように、自車両Cが左右の白線L_L,L_Rによって形成される走行車線の車線幅Wを基準車線幅Wmとして記憶し、基準車線幅Wmの中央位置を制御目標点として走行中、進行方向左側に存在する側壁やパイロン等の立体物B2によって狭い車線幅となり、立体物B2と右側の白線L_Rで形成される車線幅W2で基準車線幅Wmを更新した場合、更新後の基準車線幅Wmが閾値Wthよりも狭いか否かを調べる。
【0040】
そして、Wm≧Wthの場合には、通常の走行に支障のない車線幅であるため、制御目標点を車線幅Wmの中央位置に設定する。一方、Wm<Wthの場合には、通過に際してドライバに違和感を与える虞があるため、自車両前方に先行車両が有るか否かを調べ、先行車両が有る場合には、制御目標点を先行車両Cfに設定して先行車両Cfに追従して狭路を通過することにより、ドライバに違和感や不快感を与えることを防止する。
【0041】
この場合、先行車両の車幅Cfと自車両Cの車幅とを比較し、先行車両Cfの車幅が自車両Cの車幅以上である場合には、制御目標点を先行車両Cfの背面の中央位置に設定し、先行車両Cfの車幅が自車両Cの車幅よりも小さい場合、立体物B2と自車両Cの側面との距離がドライバに違和感や不快感を与えることのない距離となるように制御目標点を先行車両Cfの背面の中央位置からオフセットさせる。
【0042】
一方、自車両前方に先行車両がいない場合には、対向車両の有無を確認し、対向車両が検出された場合にはブレーキを作動させて待機し、対向車両が検出されない場合、立体物と自車両側面との距離がドライバに違和感や不快感を与えることのない距離となるように制御目標点を設定する。
【0043】
次に、走行制御装置100における走行制御のプログラム処理について、
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
この走行制御処理では、最初のステップS1において、道路の白線を認識する処理を行い、ステップS2で先行車両や道路の側壁等の立体物を認識する処理を行う。次に、ステップS3へ進み、白線の認識結果に基づいて、現在走行中の道路に白線が有るか否かを判断する。
【0045】
ステップS3において、走行中の道路に白線がない場合には、ステップS3からステップS4へ進み、自車両前方に先行車両が有るか否かを調べる。先行車両が無い場合には、本システムの作動外となるため、ステップS4から一旦本処理を抜け、先行車両が有る場合、ステップS4からステップS5に進んで、先行車両への追従走行を実行する。
【0046】
一方、ステップS3において、道路に白線が有る場合には、ステップS3からステップS6へ進み、白線が左右両側にあるか否かを調べる。白線が左右両側にある場合には、ステップS6からステップS7へ進み、左右両側の白線による車線幅を基準車線幅Wmとして記憶・保持し、記憶した車線幅(基準車線幅)Wmの中央位置を制御目標点として走行制御を行う。ステップS6において白線が片側の場合には、ステップS6からステップS8へ進む。
【0047】
ステップS8では、白線の無い側に壁等の立体物が有るか否かを調べる。白線の無い側に立体物がない場合、ステップS8からステップS9に進み、記憶した過去の車線幅(基準車線幅)Wmを保持して中央位置を制御目標点とし、両側に白線がある場合と同様の走行制御を行う。
【0048】
一方、白線の無い側に立体物が有る場合には、ステップS8からステップS10へ進み、白線と立体物で形成される車線幅によって基準車線幅Wmを更新し、白線と立体物で形成される車線幅(更新後の基準車線幅)Wmが閾値Wth以上か否かを調べる。
【0049】
そして、Wm≧Wthの場合、ステップS10からステップS11へ進んで制御目標点を基準車線幅Wmの中央位置に設定し、白線と立体物で形成される車線幅での走行制御を行う。Wm<Wthの場合には、ステップS10からステップS12へ進んで、自車両前方に先行車両が有るか否かを調べる。
【0050】
ステップS12において自車両前方に先行車両がない場合、ステップS12からステップS13へ進んで対向車両の有無を確認し、対向車両が検出された場合にはブレーキを作動させて待機し、対向車両が検出されない場合、立体物と自車両側面との距離がドライバに違和感や不快感を与えることのない距離となるように制御目標点を設定することで立体物から離れて走行する。
【0051】
一方、ステップS12において自車両前方に先行車両が有る場合には、ステップS12からステップS5へ進み、自車両前方の先行車両に制御目標点を設定して先行車両に追従する走行制御を行う。この場合、前述したように、先行車両の車幅と自車両の車幅を比較し、制御目標点を、先行車両の背面の中央位置又は先行車両の背面の中央位置からオフセットさせた位置に設定する。
【0052】
このように本実施の形態においては、自車両の走行車線を認識して走行制御を行う際に、片側の白線が欠損していたり、壁等の立体物で車線幅が狭まっている場合には、新たに車線幅を設定し、設定した車線幅と閾値とを比較する。そして、車線幅に基づく所定位置と先行車両との何れか一方に追従走行の制御目標点を設定するので、ドライバに違和感や不快感を与えることがなく、円滑な走行制御を実行することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 カメラ
2 画像認識装置
10 走行制御システム
20 外部環境認識装置
100 走行制御装置
101 制御部
102 車線幅設定部
103 制御目標点設定部