(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】ヘルメット、ヘルメット用ライナー、ヘルメット用コンフォートパッド及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
A42B 3/12 20060101AFI20220502BHJP
A42B 3/04 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
A42B3/12
A42B3/04
(21)【出願番号】P 2017559856
(86)(22)【出願日】2017-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2017055591
(87)【国際公開番号】W WO2017157765
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-02-20
(32)【優先日】2016-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2016-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512287849
【氏名又は名称】エムアイピーエス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラナー、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】セイファース、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ポメリング、エイミー ルイーズ
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1410025(KR,B1)
【文献】国際公開第2015/177747(WO,A1)
【文献】特表2013-529263(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0250340(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/12
A42B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットの第1部品と第2部品とを連結し、
摺動プレートと、
前記摺動プレートの片面にあり、前記第1部品に連結されるように構成されるアンカーポイントと、
前記アンカーポイントが位置する前記摺動プレートの片面を少なくとも部分的に覆うように構成される変形可能材料とを備えるコネクタであって、
前記変形可能材料の外周領域が前記第2部品に連結されるように構成され、前記変形可能材料の内側領域が前記摺動プレート及び前記アンカーポイントの少なくとも1つに連結され、
前記摺動プレートの前記アンカーポイントと
は反対側において、前記摺動プレートに対向して位置する材料層を更に備え、
前記摺動プレートと前記材料層との対向する面の間に低摩擦インターフェースが設けられ
ており、前記ヘルメットへの衝撃の間に想定される荷重下において、前記ヘルメットの前記第2部品に対する前記摺動プレートの摺動を可能にするようになっている、コネクタ。
【請求項2】
前記変形可能材料の前記外周領域が前記
ヘルメットの前記第2部品に直接連結されるように構成される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記変形可能材料の前記外周領域が
、前記材料層に連結され、前記材料層が前記
ヘルメットの前記第2部品に連結されるように構成される、請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記材料層が第2プレートである、請求項1~3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記材料層が可撓性材料層である、請求項1~3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記可撓性材料層が生地、布、織物又は不織材料の少なくとも1つである、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記低摩擦インターフェースが、
前記摺動プレートと前記材料層との対向する面の少なくとも一方を形成する構成要素の構築に少なくとも1つの低摩擦材料を使用すること、
前記摺動プレートと前記材料層との対向する面の少なくとも一方に低摩擦コーティングを施すこと、
前記摺動プレートと前記材料層との対向する面の少なくとも一方に潤滑剤を塗布すること、及び、
前記摺動プレートと前記材料層との対向する面の間に、少なくとも1つの低摩擦面を有する追加の固定されていない材料層を設けることの、少なくとも1つを行うことによって実現される、請求項1~6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記変形可能材料が、略弾性的に変形できるシート状の材料である、請求項1~7のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記変形可能材料が、弾性生地、
弾性布又は
弾性織物及びエラストマー材料シートの少なくとも1つである、請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記変形可能材料の前記内側領域が、前記変形可能材料よりも硬い補強材料の部分によって補強される、請求項1~9のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記アンカーポイントが前記補強材料に連結される、請求項10に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記アンカーポイントが、前記摺動プレートの表面から延出する突起を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項13】
前記アンカーポイントが、前記
ヘルメットの前記第1部品に着脱可能に連結されるように構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項14】
前記アンカーポイントが、面ファスナー連結、スナップフィット連結及び磁気コネクタの少なくとも1つによって前記
ヘルメットの前記第1部品に連結されるように構成される、請求項13に記載のコネクタ。
【請求項15】
前記アンカーポイントが、前記アンカーポイントの前記第1部品に対する並進運動を防止するように前記第1部品に連結される、請求項1~14のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項16】
前記変形可能材料が、前記第2部品に対する、前記第2部品に連結された前記変形可能材料の部分の並進運動を防止するように前記第2部品に連結される、請求項1~15のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のコネクタを少なくとも1つ備えるヘルメット用ライナー
であって、前記ヘルメット用ライナーは、前記ヘルメットの前記第1部品及び前記第2部品のうちの一方であり、前記ヘルメットの残りの部分は、前記ヘルメットの前記第1部品及び前記第2部品のうちの他方である、ヘルメット用ライナー。
【請求項18】
前記少なくとも1つのコネクタの前記アンカーポイントが
前記ヘルメット
の前記残りの部分に連結されるように構成され、前記変形可能材料の前記外周領域が前記ヘルメット用ライナーの本体に連結される、請求項17に記載のヘルメット用ライナー。
【請求項19】
コンフォートパッドを備える、請求項17又は18に記載のヘルメット用ライナー。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか一項に記載のライナーを備えるヘルメット。
【請求項21】
前記ライナーが前記ヘルメットから取り外し可能である、請求項20に記載のヘルメット。
【請求項22】
前記少なくとも1つのコネクタの前記アンカーポイントが、
前記ヘルメットの前記第1部品に連結され、前記ヘルメットの前記第1部品は、前記ヘルメットのアウターシェル、前記ヘルメット内のエネルギー吸収材料層、及び前記ヘルメットの前記エネルギー吸収材料層よりも内方に設けられる材料層の少なくとも1つ
を備え、
前記アウターシェル及び前記材料層は、前記エネルギー吸収材料層よりも硬い、請求項20又は21に記載のヘルメット。
【請求項23】
アウターシェルと、1つ以上のエネルギー吸収材料層と、インナーシェルと、前記ライナーとを順番に備え、
前記アウターシェル及び前記インナーシェルは、前記エネルギー吸収材料層よりも硬い材料からそれぞれ形成される、請求項20~22のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項24】
前記インナーシェルと前記ライナーとの間に低摩擦インターフェースが設けられた、請求項23に記載のヘルメット。
【請求項25】
前記低摩擦インターフェースが、前記インナーシェル及び前記ライナーの構築に少なくとも1つの低摩擦材料を使用すること、前記インナーシェルと前記ライナーとの対向する面の少なくとも一方に低摩擦コーティングを施すこと、及び前記インナーシェルと前記ライナーとの対向する面の少なくとも一方に潤滑剤を塗布することの、少なくとも1つを行うことによって実現される、請求項24に記載のヘルメット。
【請求項26】
複数の独立したコンフォートパッド部分を備えるヘルメットであって、各部分が請求項1~16のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコネクタによって
前記ヘルメットの残りの部分に取り付けられ
、独立したコンフォートパッド部分のそれぞれは、前記ヘルメットの前記第1部品及び前記第2部品のうちの一方であり、前記ヘルメットの残りの部分は、前記ヘルメットの前記第1部品及び前記第2部品のうちの他方である、ヘルメット。
【請求項27】
アウターシェルと、1つ以上のエネルギー吸収材料層と、インナーシェルと、前記複数のコンフォートパッド部分とを順番に備え、
前記アウターシェル及び前記インナーシェルは、前記エネルギー吸収材料層よりも硬い材料からそれぞれ形成される、請求項26に記載のヘルメット。
【請求項28】
前記インナーシェルと前記複数のコンフォートパッド部分との間に低摩擦インターフェースが設けられる、請求項27に記載のヘルメット。
【請求項29】
前記低摩擦インターフェースが、前記インナーシェル及び前記複数のコンフォートパッド部分の構築に少なくとも1つの低摩擦材料を使用すること、前記インナーシェルと前記複数のコンフォートパッド部分との対向する面の少なくとも一方に低摩擦コーティングを施すこと、及び前記インナーシェルと前記複数のコンフォートパッド部分との対向する面の少なくとも一方に潤滑剤を塗布することの、少なくとも1つを行うことによって実現される、請求項28に記載のヘルメット。
【請求項30】
ヘルメット内で使用される一連の複数のコンフォートパッド部分であって、各コンフォートパッド部分が、請求項1~16のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコネクタを備え
、前記コンフォートパッド部分のそれぞれは、前記ヘルメットの前記第1部品及び前記第2部品のうちの一方であり、前記ヘルメットの残りの部分は、前記ヘルメットの前記第1部品及び前記第2部品のうちの他方である、一連の複数のコンフォートパッド部分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメット、ヘルメット用ライナー、ヘルメット用コンフォートパッド、及び、ライナーをヘルメットの他の部分に連結する等、装置の2つの部品を連結するのに使用できるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルメットは様々な活動で使用されることで知られる。これらの活動には、例えば兵士用の防護ヘルメットや、建設業者、鉱山労働者、又は工業機械の操作者が使用する安全帽又はヘルメットといった、戦闘目的や工業目的が含まれる。ヘルメットはスポーツ活動にも普及している。防護ヘルメットは、例えばアイスホッケー、サイクリング、モーターサイクリング、モーターカーレース、スキー、スノーボード、スケート、スケートボード、馬術、アメリカンフットボール、野球、ラグビー、クリケット、ラクロス、登山、ゴルフ、エアソフト及びペイントボールで使用されることがある。
【0003】
ヘルメットの大きさは固定でもよいし、様々な頭の大きさや形状に合わせられるように調節可能であってもよい。ある種のヘルメット、例えばアイスホッケーのヘルメットでは、一般的に、ヘルメットの外寸及び内寸を変更できるように、ヘルメットの可動部品による調節機能を設けることができる。これは、互いに対して移動可能な2つ以上の部品をヘルメットに設けることで実現できる。或いは、例えばサイクリングヘルメットの場合、一般的に、使用者の頭にヘルメットを固定する取付手段がヘルメットに設けられ、この取付手段は、ヘルメットの本体又はシェルの大きさを維持したまま、使用者の頭に合うように寸法を変更することができる。このような、使用者の頭にヘルメットを据え付ける取付手段は、ヘルメットを適当な位置に更に固定するように追加のストラップ(顎ストラップ等)と共に使用されてもよい。これらの調節機構を組み合わせることも可能である。
【0004】
ヘルメットは、多くの場合、通常はプラスチック製又は複合材製の硬いアウターシェルと、ライナーと呼ばれる、エネルギーを吸収する層とで構成される。昨今では、防護ヘルメットは、特に規定の荷重がかかった際に脳の重心に生じうる最大加速度に関する一定の法規定を満たすように設計される必要がある。典型的には、ヘルメットを装着したダミーの頭蓋骨に対して、頭に向けた径方向の打撃を与える試験を行う。そのため、現代のヘルメットは、頭蓋骨に対して径方向の打撃が与えられた場合について良好な衝撃吸収能力を有する。また、回転エネルギーを吸収する若しくは消散させる、及び/又は、回転エネルギーではなく並進運動エネルギーへと転換することによって、斜めの打撃(すなわち接線方向要素と径方向要素との組み合わせ)から伝達するエネルギーをも軽減するようなヘルメットの開発が進められている(例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献1及び2)。
【0005】
(防護が無い状態での)このような斜めの衝撃は、脳の並進加速度及び角加速度の両方を引き起こす。角加速度によって頭蓋骨内の脳が回転し、脳を頭蓋骨に連結している身体要素及び脳自体の損傷を招く。
【0006】
回転による損傷の例には、脳震とうといった軽度外傷性脳損傷(MTBI)及び、血管破裂によって出血することによる硬膜下血腫(SDH)や、脳組織における高せん断変形によって神経線維が伸び切ってしまうことと要約できるびまん性軸索損傷(DAI)といった重度外傷性脳損傷(STBI)が含まれる。
【0007】
継続時間、振幅及び増加速度といった回転力の性質に応じて、脳震とう、SDH、DAI又はこれらの損傷の組み合わせのいずれかが起きうる。一般的には、SDHは短時間に大きな振幅があった場合に生じ、DAIは、より長くより広範囲に加速度荷重があった場合に生じるといえる。
【0008】
特許文献1及び2に開示されているもののような、斜めの衝撃によって脳に伝達する回転エネルギーを軽減しうるヘルメットでは、ヘルメットの第1部品と第2部品とが、斜めの衝撃を受けて互いに対して摺動するように構成される。しかし、通常使用時、つまり衝撃を受けていない時にヘルメットの一体性を維持できるように、第1部品と第2部品とが連結されることが未だ望まれている。従って、ヘルメットの第1部品と第2部品とを連結しながら、衝撃下において第1部品を第2部品に対して移動させることができるコネクタを提供することが望まれる。また、製造の費用及び/又は手間を実質的に増やすことなくヘルメット内に設けることができるコネクタを提供することも望まれる。本発明は、この問題に少なくとも部分的に対処することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2001/045526号
【文献】国際公開第2011/139224号
【発明の概要】
【0010】
本発明の一態様によれば、
装置の第1部品と第2部品とを連結し、
摺動プレートと、
プレートの片面に設置され、第1部品に連結されるように構成されるアンカーポイントと、
アンカーポイントが設置されたプレートの片面を少なくとも部分的に覆うように構成される変形可能材料とを備えるコネクタであって、
変形可能材料の外周領域が第2部品に連結されるように構成され、変形可能材料の内側領域がプレート及びアンカーポイントの少なくとも1つに連結され、
プレートのアンカーポイントと反対の面に位置する材料層を更に備え、
プレートと材料層との対向する面の間に低摩擦インターフェースが設けられるコネクタが提供される。
【0011】
変形可能材料の外周領域は、構成に応じて、第2部品に対して直接又は間接的に連結されてもよい。
【0012】
アンカーポイントは、アンカーポイントの第2部品に対する並進運動を防止するように第1部品に連結されてもよい。同様に、変形材料は、第2部品に対する、第2部品に連結された変形可能材料の部分の並進運動を防止するように第2部品に連結されてもよい。しかし、装置の第1部品及び第2部品は変形可能材料を用いて連結されるため、第1部品の、第2部品に対する摺動といった並進運動は提供することができる。
【0013】
本発明の一態様によれば、上記のコネクタを少なくとも1つ備えるヘルメット用ライナーが提供される。ライナーは、ライナーの、ヘルメットの残りの部分に対する並進運動を可能とするように、少なくとも1つのコネクタを用いてヘルメットの残りの部分に連結されてもよい。こうして、ライナーの、ヘルメットの残りの部分に対する摺動動作を提供することができる。
【0014】
本発明によれば、上記のライナーを内装するヘルメットが提供される。ライナーは取り外し可能であってもよい。例えば、少なくとも1つのコネクタは、少なくとも1つのライナー及びヘルメットの残りの部分に着脱可能に連結できるように構成されてもよい。
【0015】
本発明の一態様によれば、ヘルメットは、比較的硬い材料から形成されるアウターシェルと、1つ以上のエネルギー吸収材料層と、比較的硬い材料から形成されるインナーシェルと、上記のライナーとを順番に備えてもよい。
【0016】
本発明の一態様によれば、複数の独立したコンフォートパッド部分を備え、各部分が上記の少なくとも1つのコネクタによって取り付けられるヘルメットが提供される。本発明は、非限定の例示を用いて、添付の図面を参照しながら以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】斜めの衝撃に対する防護を提供するヘルメットの断面を示す。
【
図2】
図1のヘルメットの機能原理を示す図である。
【
図5】
図4のヘルメットの取付手段を連結する他の方法を示す。
【
図6】本発明の実施例に係るヘルメットの断面を示す。
【
図7】本発明の実施例に係るヘルメットの断面を示す。
【
図8】本発明の実施例に係るコネクタの断面を示す。
【
図9】本発明の実施例に係るコネクタの断面を示す。
【
図10】本発明の実施例に係るコネクタの断面を示す。
【
図11】本発明の実施例に係るコネクタの断面を示す。
【
図12】本発明の変形例に係るコネクタの一部の断面を示す。
【
図13】本発明の変形例に係るコネクタの一部の断面を示す。
【
図14】本発明の変形例に係るコネクタの一部の断面を示す。
【
図15】本発明の変形例に係るコネクタの一部の断面を示す。
【
図16】本発明の変形例に係るコネクタの一部の断面を示す。
【
図17】本発明の変形例に係るコネクタの一部の断面を示す。
【
図18】本発明の変形例に係るコネクタの一部の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図に示すヘルメット内の様々な層の厚さの比率は、分かりやすいように図内では誇張されており、当然ながら、要求及び要件に応じて適応させることができる。
【実施例1】
【0019】
図1は、特許文献1に記載されているような、斜めの衝撃に対する防護を提供するようになっている第1のヘルメット1を示す。この種類のヘルメットは上記のどの種類のヘルメットであってもよい。
【0020】
防護ヘルメット1は、アウターシェル2と、アウターシェル2の内側に配置されて着用者の頭と接するようになっているインナーシェル3とで構成される。
【0021】
アウターシェル2とインナーシェル3との間には摺動層4又は摺動促進部が配置され、これにより、アウターシェル2とインナーシェル3とを変位させることが可能になる。特に、摺動層4又は摺動促進部は、後述のように、衝撃下において2つの部品の間に摺動が生じるように構成される。例えば、部品は、ヘルメット1の着用者が損傷を免れることができるように、ヘルメット1に対する衝撃に伴う力の下で摺動可能となるように構成されてもよい。或る配置では、部品は、摩擦係数が0.001~0.3及び/又は0.15未満となるように摺動層又は摺動促進部を構成することが望ましい。
【0022】
図1での図示によれば、ヘルメット1の縁部には、アウターシェル2とインナーシェル3とを相互連結する1つ以上の連結部材5が配置されてもよい。或る配置では、コネクタは、エネルギーを吸収することによって、アウターシェル2とインナーシェル3とが互いに変位するのを妨げることがある。しかしこれは重要ではない。更に、この特徴が生じた場合でも、吸収されるエネルギーの量は、通常は、衝撃下においてインナーシェル3によって吸収されるエネルギーよりも極めて少ない。他の配置では、連結部材5は一切存在しなくてもよい。
【0023】
更に、これらの連結部材5の設置場所は変更されてもよい(例えば、縁部から離間して位置付けられて、摺動層4を介してアウターシェル2とインナーシェル3とを連結してもよい)。
【0024】
アウターシェル2は、様々な種類の衝撃に耐えられるように比較的薄く丈夫であることが好ましい。アウターシェル2は、例えばポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はABS樹脂(ABS)といった高分子材料から作られてもよい。有利には、高分子材料は、ガラス繊維、アラミド、トワロン、炭素繊維又はケブラーといった材料を用いて繊維強化されてもよい。
【0025】
インナーシェル3は極めて薄く、エネルギーを吸収する層として作用する。このため、インナーシェル3は頭に対する衝撃を弱めたり吸収したりすることが可能である。有利には、発泡スチロール(EPS)、発泡ポリプロピレン(EPP)、発泡ポリウレタン(EPU)、そしてビニルニトリル発泡体のような発泡材料、又は、例えばハニカム状の構造を形成する他の材料、又は、ポロン(登録商標)及びD3O(登録商標)のブランド名で流通しているもののようなひずみ速度感受性を有する発泡体から作られる。この構成は、例えば、後述の異なる素材でできた幾つかの層を用いることで異なる方法に変更できる。
【0026】
インナーシェル3は衝撃のエネルギーを吸収するように設計される。ヘルメット1の他の要素(例えば硬いアウターシェル2、又はインナーシェル3内に設けられる所謂「コンフォートパッド」)がそのエネルギーを吸収するのには限度があるが、これらの要素にとってエネルギーを吸収することは最優先の目的ではなく、エネルギー吸収への貢献はインナーシェル3のエネルギー吸収と比較して極僅かである。実際、コンフォートパッドといった或る他の要素を「圧縮性の」、つまり他の状況においては「エネルギー吸収性の」とも考えられる材料から作ることができるが、ヘルメットの分野では、圧縮性材料は、衝撃下において十分な量のエネルギーを吸収してヘルメットの着用者への危害を軽減する目的という意味で、必ずしも「エネルギー吸収性」があるとは言えないとよく認識されている。
【0027】
例えばオイル、テフロン(登録商標)、ミクロスフェア、空気、ゴム、ポリカーボネート(PC)及びフェルトといった繊維素材等の、幾つかの異なる材料及び実施例を摺動層4又は摺動促進部として使用できる。このような層は約0.1~5mmの厚さを有してもよいが、選択される材料や所望の性能に応じて他の厚さも用いることができる。摺動層の数及びその位置付けも変更することができ、この例は(
図3Bを参照して)後述する。
【0028】
連結部材5としては、例えば、アウターシェル及びインナーシェルに適切な方法で固定される変形可能なプラスチック片又は金属片を使用することで実現できる。
【0029】
図2は防護ヘルメット1の機能原理を示し、ヘルメット1及び着用者の頭蓋骨10は半円筒形状と仮定され、頭蓋骨10は縦軸線11上に置かれる。ヘルメット1が斜めの衝撃Kを受けると、ねじり力及びトルクが頭蓋骨10に伝達される。衝撃力Kは、防護ヘルメット1に対する接線方向力K
T及び径方向力K
Rの両方を引き起こす。ここでは特に、ヘルメット回転接線方向力K
T及びその影響のみに関する。
【0030】
図から分かるように、力Kによってインナーシェル3に対するアウターシェル2の変位12が生じ、連結部材5が変形する。このような配置によって、頭蓋骨10に伝達されるねじり力の約25%を軽減することができる。これは、インナーシェル3とアウターシェル2との間の摺動動作が、径方向加速度へと変換されるエネルギーの量を軽減するためである。
【0031】
図示はされていないが、摺動動作を防護ヘルメット1の周方向に生じさせることもできる。これは、アウターシェル2とインナーシェル3との間の周方向角回転の結果といえよう(すなわち、衝撃下において、アウターシェル2はインナーシェル3に対して周方向角度で回転できる)。
【0032】
防護ヘルメット1の他の配置も可能である。幾つかの可能な変形例を
図3に示す。
図3aでは、インナーシェル3は比較的薄い外層3’’と比較的厚い内層3’とから構成される。外層3’’は、アウターシェル2に対して摺動し易いようにインナーレイヤー3’よりも丈夫であることが好ましい。
図3bでは、インナーシェル3は
図3aと同じように構成される。しかしこの場合、2つの摺動層4とそれらの間の中間シェル6とが存在する。2つの摺動層4は、所望に応じて異なる形に具現化され、異なる材料から作ることができる。或る可能性として、例えば、内側の摺動層よりも外側の摺動層の方が摩擦が少ないことが挙げられる。
図3cでは、アウターシェル2は前述とは異なる具現化をする。この場合、より硬い外層2’’が、より柔らかい内層2’を覆う。内層2’は、例えばインナーシェル3と同じ材料でもよい。
【0033】
図4は、特許文献2に記載されているような、こちらも斜めの衝撃に対する防護を提供するようになっている第2のヘルメット1を示す。この種類のヘルメットは上記のどの種類のヘルメットであってもよい。
【0034】
図4では、ヘルメット1は、
図1のヘルメットのインナーシェル3と同様のエネルギー吸収層3を備える。エネルギー吸収層3の外面は、エネルギー吸収層3と同じ材料から提供されてもよいし(すなわち追加のアウターシェルは無くてもよい)、
図1に示すヘルメットのアウターシェル2に相当する硬質シェル2(
図5参照)であってもよい。その場合、硬質シェル2はエネルギー吸収層3とは異なる材料から作られてもよい。
図4のヘルメット1は、エネルギー吸収層3及びアウターシェル2の両方を貫通してヘルメット1に空気の流れを通す、任意の複数の通気孔7を有する。
【0035】
取付手段13が、ヘルメット1を着用者の頭に取り付けるために設けられる。上述したように、これは、エネルギー吸収層3及び硬質シェル2が大きさを調節できない場合に取付手段13の大きさを調節することで異なる大きさの頭を収容できるようにするのに望ましい場合がある。取付手段13は、PC、ABS、PVC又はPTFEといった弾性又は半弾性の高分子材料か、綿布といった天然繊維材料から作ることができる。例えば、織物製のキャップ又はネットで取付手段13を形成することができる。
【0036】
取付手段13はヘッドバンド部に加えて更に前後左右から延在するストラップ部を備えるように示されるが、取付手段13の具体的な構成はヘルメットの構成に応じて変更することができる。或る場合では、取付手段は、空気流れがヘルメットを通るように、例えば通気孔7の位置に対応する穴又は隙間を有することがある、連続する(形状の)シートのようなものであってもよい。
【0037】
図4は、特定の着用者のために取付手段13のヘッドバンドの直径を調節する任意の調節手段6も示す。他の配置では、ヘッドバンドは弾性のヘッドバンドであってもよく、その場合、調節手段6は省略できる。
【0038】
摺動促進部4はエネルギー吸収層3の径方向内方に設けられる。摺動促進部4は、エネルギー吸収層、又はヘルメットを着用者の頭に取り付けるように設けられた取付手段13に対して摺動するようになっている。
【0039】
摺動促進部4は、上記と同じ方法で、取付手段13に対して回転することでエネルギー吸収層3の摺動を助けるように設けられる。摺動促進部4は摩擦係数が低い材料であってもよいし、そのような材料によってコーティングされてもよい。
【0040】
このため、
図4のヘルメットでは、摺動促進部は取付手段13に対向しながらエネルギー吸収層3の最内部に設けられてもよいし、又は最内部と一体化してもよい。
【0041】
しかし、エネルギー吸収層3と取付手段13との間に摺動性を提供するという同じ目的のために、摺動促進部4は取付手段13の外面に設けられてもよいし、又は外面と一体化してもよいということも同様に考えられる。すなわち、特定の配置では、取付手段13自体を摺動促進部5として作用するようになってもよく、また、取付手段13自体が低摩擦材料を備えてもよい。
【0042】
言い換えれば、摺動促進部4はエネルギー吸収層3の径方向内方に設けられる。摺動促進部は、取付手段13の径方向外方にも設けることができる。
【0043】
取付手段13が(上記の)キャップ又はネットとして形成される場合、摺動促進部4は低摩擦材料の布片として設けられてもよい。
【0044】
低摩擦材料は、PTFE、ABS、PVC、PC、ナイロン、PFA、EEP、PE及びUHMWPEといった蝋状のポリマーであってもよいし、又は、潤滑剤を注入できる粉末材料であってもよい。低摩擦材料は繊維材料であってもよい。上述したように、この低摩擦材料は、摺動促進部及びエネルギー吸収層のいずれか又はどちらにも用いることができる。
【0045】
取付手段13は、
図4の4つの固定部材5a,5b,5c及び5dといった固定部材5によってエネルギー吸収層3及び/又はアウターシェル2に固定することができる。これらは、弾性的、半弾性的又は塑性的に変形することでエネルギーを吸収するようになっていてもよい。しかしこれは重要ではない。更に、この特徴が生じた場合でも、吸収されるエネルギーの量は、通常は、衝撃下においてエネルギー吸収層3によって吸収されるエネルギーよりも極めて少ない。
【0046】
図4に示す実施例によれば、4つの固定部材5a,5b,5c及び5dは、第1部分8と第2部分9とを有する懸架部材5a,5b,5c及び5dであって、懸架部材5a,5b,5c及び5dの第1部分8は取付手段13に固定されるようになっており、懸架部材5a,5b,5c及び5dの第2部分9はエネルギー吸収層3に固定されるようになっている。
【0047】
図5は、着用者の頭に置いたときの、
図4のヘルメットと同様のヘルメットの実施例を示す。
図5のヘルメット1は、エネルギー吸収層3とは異なる材料から作られた硬いアウターシェル2を備える。
図4と比較して、
図5では、取付手段13は、エネルギー及び力を弾性的、半弾性的又は塑性的に吸収するようになっている2つの固定部材5a及び5bによってエネルギー吸収層3に固定される。
【0048】
ヘルメットに対する回転力を生み出す、前方からの斜めの衝撃Iを
図5に示す。斜めの衝撃Iによって、エネルギー吸収層3は取付手段13に対して摺動する。取付手段13は、固定部材5a及び5bによってエネルギー吸収層3に固定される。分かりやすくするためにこのような固定部材は2つしか図示されていないが、実際にはこのような固定部材が多く存在してもよい。固定部材5は、弾性的又は半弾性的に変形することで回転力を吸収することができる。他の配置では、1つ以上の固定部材5が切断されるとしても、塑性的に変形してもよい。塑性変形の場合、衝撃の後、少なくとも固定部材5を交換する必要があるだろう。固定部材5に塑性と弾性とを組み合わせた変形が生じた場合、すなわち幾つかの固定部材5が断裂した場合、エネルギーが塑性的に吸収されると共に、他の固定部材が変形して力を弾性的に吸収する。
【0049】
一般的に、
図4及び5のヘルメットでは、エネルギー吸収層3は、衝撃下において
図1のヘルメットのインナーシェルと同様に圧縮することで衝撃吸収材として作用する。アウターシェル2を用いれば、衝撃エネルギーをエネルギー吸収層3に亘って分散させる助けになるだろう。また、摺動促進部4も取付手段とエネルギー吸収層との間の摺動を促すだろう。これによって、脳に回転エネルギーとして伝達されうるエネルギーを制御的に消散させることができる。エネルギーは、摩擦熱、エネルギー吸収層の変形、又は固定部材の変形若しくは変位によって消散させることができる。伝達されるエネルギーが軽減されることで、脳に影響を及ぼす回転加速度が軽減されるため、頭蓋骨内の脳の回転が軽減される。こうして、硬膜下血腫、SDH、血管破裂、脳震とうやDAIといったMTBI及びSTBIを含む回転による損傷の虞が軽減される。
【0050】
装置の2つの部品を連結する本発明のコネクタを以下に説明する。当然ながら、これらのコネクタは様々な状況で使用され、ヘルメット内での使用に限定されない。ヘルメットにおいて、本発明のコネクタは、特に、既知の連結部材及び/又は上記の配置の固定部材の代わりに使用されてもよい。
【0051】
本発明の一実施例において、コネクタは
図6に示す種類のヘルメット1と共に使用されてもよい。
図6に示すヘルメットは、
図4及び5に関する上記のヘルメットと同様の構造を有する。特に、ヘルメットは比較的硬いアウターシェル2とエネルギー吸収層3とを有する。ヘルメットライナー15の形態を有するヘッド取付手段が設けられる。ライナー15は上記のコンフォートパッドを含んでもよい。一般的には、ライナー15及び/又はコンフォートパッドは、エネルギー吸収層3によるエネルギーの吸収と比較して、多くの割合の衝撃エネルギーを吸収することができない。
【0052】
ライナー15は取り外し可能であってもよい。これによってライナーの洗浄、及び/又は、特定の着用者に合うように変更されたライナーの提供が可能になる。
【0053】
ライナー15とエネルギー吸収層3との間には、比較的硬い材料、すなわちエネルギー吸収層3よりも硬い材料から形成されたインナーシェル14が設けられる。インナーシェル14はエネルギー吸収層3にぴったりと沿ってもよく、アウターシェル2の形成に関連して上記の任意の材料から作られてもよい。
【0054】
図6の配置では、インナーシェル14とライナー15との間に低摩擦インターフェースが設けられる。これは、ライナー15の外面を形成するのに使用される材料又はインナーシェル14を形成するのに使用される材料の少なくとも1つを適当に選択することで実装できる。代わりに、又は追加で、インナーシェル14とライナー15との対向する面の少なくとも一方に低摩擦コーティングを施してもよい。代わりに、又は追加で、インナーシェル14とライナー15との対向する面の少なくとも一方に潤滑剤を差してもよい。
【0055】
図示のように、ライナー15は、以下に更に詳述する本発明の1つ以上のコネクタ20を用いてヘルメット1の残りの部分に連結されてもよい。コネクタ20の設置場所及び使用するコネクタ20の数は、ヘルメットの残りの部分の構造に応じて選択されてもよい。こうして、本発明は
図6に示す構造に限定されない。
【0056】
図6に示すような配置では、少なくとも1つのコネクタ20がインナーシェル14に連結されてもよい。代わりに、又は追加で、1つ以上のコネクタ20が、エネルギー吸収層3及び/又はアウターシェル2といった、ヘルメット1の残りの部分における他の部分における部品に連結されてもよい。コネクタ20はヘルメット1の他の部分における2つ以上の部品にも連結されてもよい。
【0057】
図7は、本発明のコネクタ20を用いるヘルメット1の更なる代替配置を示す。図示のように、この配置のヘルメット1はコンフォートパッド16の複数の独立した部分を含む。コンフォートパッド16の各部分は、本発明に係る1つ以上のコネクタ20によってヘルメットの残りの部分に連結されてもよい。
【0058】
コンフォートパッド16の部分は、コンフォートパッド15の部分とヘルメット1の残りの部分との間に設けられる摺動インターフェースを有してもよい。このような配置では、コンフォートパッド16の部分は、
図6に示す配置のライナー15と同様の機能を提供することができる。上述した、ライナーとヘルメットとの間に提供される摺動インターフェースという選択肢は、コンフォートパッド部分とヘルメットとの間の摺動インターフェースにも適用できる。
【0059】
また、当然ながら、
図7の配置、すなわち、コンフォートパッド16の部分とヘルメットの残りの部分との間に摺動インターフェースが設けられた、独立して取り付けられる複数のコンフォートパッド16の部分の提供は、ヘルメットの他の2つの部品間に設けられる摺動インターフェースを有する、
図1~5に示すようなものを含む任意の形態のヘルメットと組み合わせてもよい。
【0060】
本発明に係るコネクタ20を説明する。便宜上、
図6に示すようなライナー15とヘルメット1の残りの部分とを連結するコネクタとしてコネクタ20を説明する。しかし、当然ながら、本発明のコネクタ20は装置の任意の2つの部品を連結するのに使用してもよい。更に、以下、コネクタ20は、ヘルメットライナー15といった、装置の第1部品に連結される第1構成要素と、ヘルメット1の残りの部分といった、装置の第2部品に連結される第2構成要素とを有すると説明されるが、当然ながら、適当な変更によってこれを逆にしてもよい。
【0061】
図8は、ヘルメットといった装置の第1部品と第2部品とを連結するのに用いることができる、本発明に係るコネクタ20の実施例の断面を示す。特に、コネクタ20はライナー15をヘルメットの残りの部分に連結するように構成されてもよい。
図8に示す配置では、コネクタ20は摺動プレート21とプレート21の片面に設けられるアンカーポイント22とを含む。
【0062】
図8に示す配置におけるアンカーポイント22は、第1部品に連結できる突起の形態を有する。例えば、突起22は、スナップフィット連結又は磁気コネクタを用いてヘルメットの残りの部分に連結されてもよい。着脱可能な他の形態の連結も使用してもよい。代わりに、突起22は、例えば接着剤によって装置の第1部品に着脱不可能に連結されてもよい。
【0063】
アンカーポイント22は、アンカーポイント22の第1部品に対する並進運動を防止するように第1部品に連結できるように構成されてもよい。しかし、アンカーポイント22、そしてプレート21が、第1部品に対して1つ以上の回転軸線周りに回転できるように構成されてもよい。
【0064】
摺動プレート21は、装置の想定される使用において形状を実質的に維持するのに十分な硬度を有する材料から形成されてもよい。これは、ヘルメットにおいて、ヘルメットを通常に取り扱うこと及びヘルメットを通常の条件下で装着することを含んでもよい。また、ヘルメットの着用者が損傷を免れることができる程度の衝撃となるように設計されたヘルメットに対する衝撃を含む条件も含んでもよい。
【0065】
図8に示す配置では、摺動プレート21はライナー15といった第2部品の表面に隣接して設けられることで、摺動プレート21がライナー15の表面上を摺動するようにしてもよい。
【0066】
変形可能材料が、アンカーポイント22が設けられたプレート21の片面を少なくとも部分的に覆うように設けられてもよい。変形可能材料23の外周領域が、第2部品、すなわちライナー15に連結される。
図8に示す配置では、変形可能材料23の内側領域がアンカーポイント22に連結される。
【0067】
このような構成において、変形可能材料23は、プレート21及びそのアンカーポイント22と、装置の第2部品、すなわちライナー15との連結を提供する。また、プレート21の、装置の第2部品に対する自然な静止位置も画定できる。しかし、プレート21は、例えば変形可能材料23の片面が伸びるといった変形可能材料23の変形によって、装置の第2部品、すなわちライナー15に対して摺動することができる。その際、ヘルメットの残りの部分といった、アンカーポイント22に連結できる装置の第1部品が装置の第2部品、すなわちライナー15に対して摺動してもよい。
【0068】
本発明のコネクタ20は、アンカーポイント22、そして装置の第1部品が装置の第2部品に対して所望の範囲を移動できるように構成されてもよい。例えば、ヘルメット内で用いるためのコネクタ20は、アンカーポイント22が、装置の第2部品に対して、プレート21の主要面に対して平行な平面内を任意の方向に約5mm以上移動可能となるように構成されてもよい。
【0069】
アンカーポイント22は平面視の場合にプレート21の略中央に配置されてもよい。しかし、本発明は特定の構成に限定されない。平面視の場合に例えば略長方形、略正方形、略円形又は略楕円形といった便宜的な任意の形状を有するプレート21を用いてもよい。角を有する形状の場合、プレートがコネクタの他の部品又は他の構成要素に引っかかる虞を最小限に抑えるために角を丸めてもよい。
【0070】
変形可能材料23はシート状の材料であってもよい。或る配置では、材料は、プレート21の、第2部品に対する要求された範囲の移動に応じて略弾性的に変形してもよい。例えば、変形可能材料は、弾性生地、弾性布、弾性織物及びエラストマー材料シートの少なくとも1つから形成されてもよい。
【0071】
変形可能材料23は、第2部品に対する、第2部品に連結された変形可能材料の部分の並進運動を防止するように、ライナー15といった第2部品に連結されてもよい。例えば、上述したような、変形可能材料がヘルメットライナー15に連結される場合において、変形可能材料23がライナー15に縫い付けられてもよい。代わりに、又は追加で、変形可能材料23は、必要に応じて、例えば接着剤によって第2部品に連結されてもよい。代わりに、又は追加で、変形可能材料は、以下の更なる実施例に記載されるように、間接的に、すなわち1つ以上の追加の構成要素を用いて第2部品に連結されてもよい。
【0072】
摺動プレート21が、ライナー15といった第2部品に対して確実に摺動できるように、低摩擦インターフェースが、プレート21と第2部品、すなわちライナー15との対向する面の間に設けられてもよい。
【0073】
ここでは、低摩擦インターフェースは、使用中に想定される荷重下においても摺動接触が可能となるように構成されてもよい。ヘルメットにおいて、例えば、発生した衝撃がヘルメットの着用者が損傷を免れることができる程度に摺動が維持されるのが望ましい。これは、例えば、摩擦係数が0.001~0.3及び/又は0.15未満となるインターフェースを2つの表面の間に設けることで提供される。
【0074】
本発明では、低摩擦インターフェースは、対向する面の少なくとも一方を形成する構成要素の構築に少なくとも1つの低摩擦材料を使用すること、対向する面の少なくとも一方に低摩擦コーティングを施すこと、対向する面の少なくとも一方に潤滑剤を塗布すること、及び、対向する面の間に、少なくとも1つの低摩擦面を有する追加の固定されていない材料層を設けることの、少なくとも1つを行うことによって実現されてもよい。
【0075】
本発明のコネクタで用いられるプレートは様々な異なる材料から作られてもよい。例えば、プレートはポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン又は他のプラスチックから作られてもよい。プレートは約0.2mm~約1.5mmの範囲の厚さ、例えば約0.7mmの厚さを任意で有してもよい。
【0076】
図9は、本発明に係るコネクタ20の代替配置の断面を示す。
図9に示す配置の構成の多くが
図8に示す配置の構成に対応しているため、簡潔化のために相違点についてのみ述べる。
図9に示す配置では、第1プレート21とライナー15といった第2部品との間に第2プレート25が設けられる。第2プレートは、第1プレート21と同様に、コネクタ20の想定される使用において形状を実質的に維持することができるように構成されてもよい。
【0077】
使用中、摺動プレート21は第2プレート25に対して摺動してもよい。第2プレート25も、ライナー15といった第2部品に対して摺動してもよい。こうして、上記の低摩擦インターフェースは、第1プレート21と第2プレート25との対向する面の間、及び第2プレート25とライナー15といった第2部品との対向する面の間の、少なくとも1つに設けられてもよい。
【0078】
図10は、本発明のコネクタ20の更なる変形例の断面を示す。この配置は、変形可能材料23の外周領域が第2部品に直接連結されるのではなく第2プレート25に連結される点が
図9に示す配置と異なる。この場合、第2プレート25はライナー15といった第2部品に連結されてもよい。このような配置では、コネクタ20は、コネクタ20によって連結される、装置の第1及び第2部品とは別体として簡単に形成することができる。コネクタは、要求があった場合、続いて、装置の第1及び第2部品に連結されてもよい。
【0079】
図11は、本発明に係るコネクタ20の更なる変形例の断面を示す。
図10に示す配置と同様のこの配置では、コネクタは、第2プレート25の代わりに可撓性材料の層30を含んでもよい。可撓性材料は、生地、布、織物又は不織材料の少なくとも1つであってもよい。
【0080】
図10に示す配置に対応する方法において、変形可能材料23は、装置の第1及び第2部品から別体として形成され、続いて、コネクタ20によって連結される装置の第1部品と第2部品とを連結できるコネクタ20を形成するために、可撓性材料の層30に連結されてもよい。
【0081】
このような配置において、コネクタ20は、可撓性材料の層30を装置の第2部品に連結させることによって、ヘルメットのライナー15といった、装置の第2部品に連結されてもよい。代わりに、又は追加で、変形可能材料23及び可撓性材料の層30は、
図11に示すように、互いに連結する箇所を、例えば縫合及び/又は接着剤によって第2部品と連結されてもよい。
【0082】
図12は、上記の配置のいずれかの変形例となりうるコネクタ20の一部の断面を示す。特に、図示するように、変形可能材料23はアンカーポイント22の代わりに摺動プレート21に連結されてもよい。更なる変形例では、変形可能材料23はプレート21及びアンカーポイント22の両方に連結されてもよい。
【0083】
図13及び14は、それぞれが、上記の配置のいずれかに適用できる構成の更なる変形例を有する、本発明に係るコネクタ20の一部の断面を示す。特に、アンカーポイント22は、図示のように、プレート21の片面から延出する突起として形成される必要はない。アンカーポイント22は、図示のように、アンカーポイント22が位置するプレート21の表面と面一であってもよい。
【0084】
図13に示す配置の場合では、アンカーポイント22は、ヘルメットのインナーシェル14といった第1部品におけるインサート35と連動するように構成されたインサート34をプレート21内に含んでもよい。特に、インサート34及び35の少なくとも1つは、インサート34及び35同士の間、そして、アンカーポイント22とヘルメットのインナーシェル14といった第1部品との間に磁気連結を設けるように磁気的であってもよい。
【0085】
図14に示す配置では、プレート21のアンカーポイント22をヘルメットのインナーシェル14といった第1部品に連結させるように接着剤36が設けられてもよい。
【0086】
図15は、上記の配置のいずれかに適用できる構成の更なる変形例を有するコネクタ20の一部の断面を示す。アンカーポイント22は、
図13又は14に示す配置と同様に、アンカーポイント22が位置するプレート21の表面と面一であってもよい。また、連結される、アンカーポイント22とヘルメットのインナーシェル14といった装置の第1部品との間に面ファスナーのような連結が設けられてもよい。
【0087】
或る配置では、アンカーポイント22は面ファスナー材料の一部を備えてもよく、面ファスナー材料37の他の部分は、ヘルメットのインナーシェル14といった、コネクタ20が連結される第2部品に固定されてもよい。
【0088】
面ファスナー材料22及び37の部分は、
図15に示すように、接着剤38によって、変形可能材料23及び、ヘルメットのインナーシェル14といった、コネクタ20が連結される第1部品に連結されてもよい。代わりに、変形可能材料23及び、ヘルメットのインナーシェル14といった第1部品の少なくとも1つが、それ自体が面ファスナー締結の半分として機能する材料から形成されてもよい。
【0089】
図16及び17は、それぞれが、上記の配置のいずれかに適用できる構成の更なる変形例を有する、本発明に係るコネクタ20の一部の断面を示す。
図16はアンカーポイント22が突起として形成される例を示し、
図17はアンカーポイント22が摺動プレート21の表面と面一である配置の例を示し、特に、アンカーポイント22を装置の第1部品に固定するのに接着剤36が使用される例を示す。図示のように、
図16及び17に示す変形例では、変形可能材料23は、変形可能材料23がアンカーポイント22に連結される箇所において補強材料40の部分によって補強されてもよい。補強材料40は変形可能材料23より硬くてもよい。アンカーポイント22は補強材料40に連結されてもよい。
【0090】
同様に、
図18に断面を示すように、変形可能材料23がアンカーポイント22ではなくプレート21に連結される配置では、補強材料40の部分は、変形可能材料23がプレート21に連結される箇所に設けられてもよい。