(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】樹脂積層体およびそれを用いた樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20220502BHJP
B32B 27/08 20060101ALI20220502BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220502BHJP
C08G 64/06 20060101ALI20220502BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220502BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20220502BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
B32B27/36 102
B32B27/08
B32B27/30 A
C08G64/06
G06F3/041 460
G06F3/041 495
B60R13/02 Z
B60R13/04 Z
(21)【出願番号】P 2018024180
(22)【出願日】2018-02-14
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100162617
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 健
(72)【発明者】
【氏名】楠本 信彦
(72)【発明者】
【氏名】金子 智
(72)【発明者】
【氏名】杉山 源希
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177553(JP,A)
【文献】特開平07-278286(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061817(WO,A1)
【文献】特開2010-182263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08G 63/00-64/42
C08J 7/04-7/06
G06F 3/041
B60R 13/01-13/04、13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(a)を含む樹脂層(A)と、該樹脂層(A)の少なくとも一方の面上に積層された前記樹脂(a)とは異なる樹脂(b)を含む樹脂層(B)とを具備し、
前記樹脂層(B)は、鉛筆硬度がF以上であり、
前記樹脂(a)は、下記式(1)で表される構成単位(a-1)および下記式(2)で表される構成単位(a-2)を含むポリカーボネート樹脂であ
り、
前記樹脂(a)のガラス転移温度(TgA)が100~135℃であり、前記樹脂(b)のガラス転移温度(TgB)が90~125℃であり、
前記TgAおよび前記TgBが以下の式(1)の関係を満たす、
0≦TgA-TgB≦30 (1)
樹脂積層体:
【化1】
【化2】
(式(2)中、R
1は水素原子またはメチル基であり;R
2は炭素数4~15のアルキル基であり;R
3およびR
4はメチル基であり;mおよびnは、それぞれ独立して0~4の整数である)。
【請求項2】
樹脂(a)を含む樹脂層(A)と、該樹脂層(A)の少なくとも一方の面上に積層された前記樹脂(a)とは異なる樹脂(b)を含む樹脂層(B)とを具備し、
前記樹脂層(B)は、鉛筆硬度がF以上であり、
前記樹脂(a)は、下記式(1)で表される構成単位(a-1)および下記式(2)で表される構成単位(a-2)を含むポリカーボネート樹脂であり、
前記構成単位(a-1)の含有量は、前記樹脂(a)の全構成単位に対して65~92質量%であり、前記構成単位(a-2)の含有量は、前記樹脂(a)の全構成単位に対して8~35質量%である、
樹脂積層体
:
【化3】
【化4】
(式(2)中、R
1
は水素原子またはメチル基であり;R
2
は炭素数4~15のアルキル基であり;R
3
およびR
4
はメチル基であり;mおよびnは、それぞれ独立して0~4の整数である)。
【請求項3】
前記構成単位(a-2)が下記式(3)で表される、請求項1または2に記載の樹脂積層体。
【化5】
【請求項4】
前記樹脂(b)が、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂である請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項5】
前記樹脂(b)が、ポリメチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸メチル-ビニルシクロヘキサン共重合樹脂、およびメタクリル酸メチル-スチレン-無水マレイン酸共重合樹脂からなる群より選択される請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項6】
前記樹脂積層体の厚みが0.1~3.0mmであり、前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)の厚み比が1:1~50:1である、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項7】
さらにハードコート層を備えた、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項8】
前記ハードコート層の厚みが1~30μmである、請求項7に記載の樹脂積層体。
【請求項9】
ディスプレイカバーパネルまたはタッチパネル前面板の製造において使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項10】
携帯電話、スマートフォン、タブレットPCまたはパソコンの外装用部材の製造において使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項11】
自動車の外装用または内装用部材の製造において使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂積層体を用いて成形された樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂積層体およびそれを成形して得られる樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
計器カバーなどの自動車内装品や家電、OA機器、パーソナルコンピュータ、小型携帯機器などの表示面の構成部品には、ガラス板、透明樹脂板などが使用され、これを保持する枠部品などに樹脂製の成形体が用いられている。
他方、携帯電話端末などに用いられるタッチパネル型表示面の構成部品には、射出成形樹脂からなる枠部品に、透明シート、特に、ガラス板を両面粘着テープなどで接着したものが用いられている。タッチパネル型表示面としては、応答速度の点からは厚みが薄いものほど好ましく、強度の点からはある程度以上の厚さが必要であるため、高弾性率の材料が選択される。また、耐擦り傷性や指紋ふき取り性なども要求される。
【0003】
上記のような用途に使用される樹脂成形体は、樹脂シートを成形することにより製造することができるが、用途に応じた特性を付与すべく、種々の工夫がなされている。例えば、樹脂シートをハードコート層、加飾シート等で修飾したり、異なる組成を有する樹脂層を積層して樹脂シートを構成したり、使用する樹脂の組成を工夫したりということがなされている。
【0004】
例えば、ポリカーボネート樹脂は、透明性に優れるばかりか、ガラスと比較して加工性、耐衝撃性に優れ、他のプラスチック材料に比べて有毒ガスの心配もない。そのため、ポリカーボネート樹脂は、上述したような樹脂シートの材料として広く使用されている。
【0005】
しかしながら、ポリカーボネート樹脂は、一般的に表面硬度が低いため、ポリカーボネート樹脂からなる成形品の表面に傷が入り易いという問題点を抱えていた。そこで従来、ポリカーボネート樹脂層の表面により硬度の高い樹脂を含む保護層を形成し、製品表面に傷が入らないようにする提案がなされている。
【0006】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂層の一方の面に、厚さ50~120μmのアクリル樹脂層を共押出しによって積層して、総厚さを0.5~1.2mmとした積層体が開示されている。
【0007】
特許文献2には、ポリカーボネート樹脂層の表面にメタクリル樹脂およびアクリルゴム粒子からなる層が積層されてなる多層フィルムが開示されている。また、その多層フィルムの一方の面に加飾が施され、その加飾面に熱可塑性樹脂シートが積層された加飾用シートも開示されている。
【0008】
特許文献3には、ポリカーボネート系樹脂組成物を主成分とする基材層の片面に、アクリル系樹脂を主成分とする被覆層を備えた積層シートが開示されている。
【0009】
上記のように、種々の成形用樹脂シートまたはフィルムが提案されているが、用途により適した特性を有する樹脂成形体を製造することができる樹脂シートまたはフィルムを追及することは、尽きることのない課題である。また、これらの樹脂シートまたはフィルムは、成形時に外観上の不具合が生じにくいことも要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2006-103169号公報
【文献】特開2009-234184号公報
【文献】特許第4971218号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、成形時に白化、クラック等の外観異常が生じにくい樹脂積層体を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意研究した結果、ポリカーボネート樹脂を含む基材層上に他の樹脂層を積層した樹脂積層体において、基材として特定のポリカーボネート樹脂を使用することによって、成形時に白化、クラック等の外観異常が生じにくくなることを見出した。すなわち、本発明は、例えば以下のとおりである。
[1] 樹脂(a)を含む樹脂層(A)と、該樹脂層(A)の少なくとも一方の面上に積層された前記樹脂(a)とは異なる樹脂(b)を含む樹脂層(B)とを具備し、
前記樹脂層(B)は、鉛筆硬度がF以上であり、
前記樹脂(a)は、下記式(1)で表される構成単位(a-1)および下記式(2)で表される構成単位(a-2)を含むポリカーボネート樹脂である、
樹脂積層体:
【化1】
【化2】
(式(2)中、R
1は水素原子またはメチル基であり;R
2は炭素数4~15のアルキル基であり;R
3およびR
4はメチル基であり;mおよびnは、それぞれ独立して0~4の整数である)。
[2] 前記樹脂(a)のガラス転移温度(TgA)が100~135℃であり、前記樹脂(b)のガラス転移温度(TgB)が90~125℃であり、前記TgAおよび前記TgBが以下の式(1)の関係を満たす、[1]に記載の樹脂積層体。
0≦TgA-TgB≦30 (1)
[3] 前記構成単位(a-2)が下記式(3)で表される、[1]または[2]に記載の樹脂積層体。
【化3】
[4] 前記樹脂(b)が、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂である[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[5] 前記樹脂(b)が、ポリメチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸メチル-ビニルシクロヘキサン共重合樹脂、およびメタクリル酸メチル-スチレン-無水マレイン酸共重合樹脂からなる群より選択される[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[6] 前記樹脂積層体の厚みが0.1~3.0mmであり、前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)の厚み比が1:1~50:1である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[7] さらにハードコート層を備えた、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[8] 前記ハードコート層の厚みが1~30μmである、[7]に記載の樹脂積層体。
[9] ディスプレイカバーパネルまたはタッチパネル前面板の製造において使用される、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[10] 携帯電話、スマートフォン、タブレットPCまたはパソコンの外装用部材の製造において使用される、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[11] 自動車の外装用または内装用部材の製造において使用される、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[12] [1]~[11]のいずれかに記載の樹脂積層体を用いて成形された樹脂成形品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成形時に白化、クラック等の外観異常が生じにくい樹脂積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の樹脂積層体は、樹脂(a)を含む樹脂層(A)(以下、「基材層」とも称する)と、該樹脂層(A)の少なくとも一方の面上に積層された前記樹脂(a)とは異なる樹脂(b)を含む樹脂層(B)(以下、「保護層」とも称する)とを具備する。そして、樹脂層(B)の鉛筆硬度はF以上であり、樹脂(a)は、下記式(1)で表される構成単位(a-1)および下記式(2)で表される構成単位(a-2)を含むポリカーボネート樹脂である。
【化4】
【化5】
(式(2)中、R
1は水素原子またはメチル基であり;R
2は炭素数4~15のアルキル基であり;R
3およびR
4はメチル基であり;mおよびnは、それぞれ独立して0~4の整数である)。
【0015】
従来、複数種類の樹脂層からなる多層構造の樹脂シートを熱成形する場合、各層に含まれる樹脂のガラス転移点(Tg)や溶融粘度が異なるため、クラック等の不具合が生じないように熱成形することが難しいという問題があった。多層構造の樹脂シートを所望の形状に熱成形する際には、通常、層中に最も多く含まれる樹脂の成形温度に合わせて成形する。例えば、ポリカーボネート樹脂を基材層として使用した樹脂シートの場合、耐衝撃性が良好なポリカーボネート樹脂が最も多く含まれることが通常であるため、ポリカーボネート樹脂に合わせた成形温度にて熱成形を実施する。その結果、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂に過剰な熱が加わり、各層の界面に剥離が生じて成形体の表面が白化したり、クラックが生じたりすることがあった。また、上記のような樹脂シートは、熱形成前における乾燥が不十分であると、発泡することもあった。
【0016】
それに対して本発明は、ポリカーボネート樹脂を含む基材層上に保護層が配置された積層体において、基材層中のポリカーボネート樹脂として特定の構造を有する樹脂を使用している。本発明者らは、そのような樹脂積層体は、ポリカーボネート樹脂に適した成形温度で熱成形した場合にも、白化、クラック、発泡等の外観上の問題が生じにくいことを見出した。すなわち、本発明の樹脂積層体は、従来のものよりも熱成形に適していると言える。
【0017】
そのため、本発明の樹脂積層体は、曲げ形状を有する成形品の製造に好適に使用することができる。例えば、平面部と連続した曲げ部を有する構成部品を首尾よく製造することができるため、新規なデザインや機能を有する製品を提供することもできる。
【0018】
従来の樹脂シートでは、上記のような形状を有する成形品を製造しようとした場合、熱プレス成形、真空成形、圧空成形、TOM成形などの熱成形時にクラック等の外観異常が生じるなどの不具合が多く発生していた。そこで、熱成形時の外観異常の発生を抑制するために、基材層上に積層される保護層の硬さを低下させるなどの工夫をする必要があった。しかしながら、保護層の硬さを低下させた場合、熱成形性は向上するものの、軟らかいため傷が付きやすい、耐薬品性が低下するという新たな問題が生じていた。
【0019】
それに対して本発明によれば、上述したように外観異常の発生が抑制されるため、保護層の硬さを低下させることなく、熱形成可能な樹脂積層体を提供することができる。本発明の樹脂積層体は、硬度の高い保護層を基材層上に設けることができるため、傷が付きにくく、耐薬品性も高い。このような特性を利用して、本発明の樹脂積層体は、パソコン、スマートフォン、携帯電話、タブレットPCなどの表示面の構成部品(例えば、ディスプレイカバーパネル、タッチパネル前面板等)またはこれらの外装用部材(特に、筐体)、自動車外装用および内装用部材(特に、筐体)などに使用することが可能である。
【0020】
さらに本発明の樹脂積層体は、直角形状に成形した場合にも、白化やクラック、さらには発泡を抑制することができる。そして、直角形状部の半径Rを少なくとも3.0mm以内、さらに好ましい態様においては1.0mm以内とすることができるため、高い精度で成形することができる。
【0021】
また、本発明の樹脂積層体は上記のような特徴を備えているため、例えば樹脂積層体の基材層側に印刷層を形成し、さらに印刷層上に溶融樹脂を射出成形して裏打ち層を形成することにより、意匠性に優れたインモールド成形体を製造することもできる。
【0022】
以下、本発明による樹脂積層体の各構成部材について説明する。
1.樹脂層(A)(基材層)
樹脂層(A)は、主としてポリカーボネート樹脂(a)を含む樹脂層である。ポリカーボネート樹脂(a)は、下記式(1)で表される構成単位(a-1)および下記式(2)で表される構成単位(a-2)を含む。樹脂層(A)は、ポリカーボネート樹脂(a)を1種類または2種類以上含んでいてよい。
【化6】
【化7】
(式(2)中、R
1は水素原子またはメチル基であり;R
2は炭素数4~15のアルキル基であり;R
3およびR
4はメチル基であり;mおよびnは、それぞれ独立して0~4の整数である)。
【0023】
式(2)において、R1は水素原子であることが好ましい。R2は、炭素数6~11のアルキル基であることが好ましく、炭素数8~10のアルキル基であることがより好ましい。炭素数が4以上のアルキル基とすることによって、適度な流動性を有し、成形しやすい樹脂を得ることができる。また、炭素数が15以下のアルキル基とすることによって、好適な硬さの樹脂層を得ることができる。R2のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状または分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。mおよびnのいずれか一方が0であり、他方が1であることが好ましく、両方が0であることがより好ましい。
【0024】
構成単位(a-2)は、下記式(3)で表される構成単位であることが特に好ましい。
【化8】
【0025】
ポリカーボネート樹脂(a)は、式(2)で表される構成単位(a-2)を1種類または2種類以上含んでいてよい。2種類以上含む場合には、そのうちの1種類が上記式(3)で表される構成単位であることが好ましい。
【0026】
式(1)で表される構成単位(a-1)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(a)の全構成単位に対して好ましくは65~92質量%、より好ましくは80~92質量%、特に好ましくは89~91質量%である。また、式(2)で表される構成単位(a-2)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(a)の全構成単位に対して好ましくは8~35質量%、より好ましくは8~20質量%、特に好ましくは9~11質量%である。ポリカーボネート樹脂(a)における構成単位(a-1)および構成単位(a-2)の合計含有量は、ポリカーボネート樹脂(a)の全構成単位に対して、好ましくは70~90質量%、より好ましくは85~95質量%、特に好ましくは99~100質量%である。ポリカーボネート樹脂(a)は、構成単位(a-1)および構成単位(a-2)以外の構成単位を含んでいてもよいが、その量は、ポリカーボネート樹脂(a)の全構成単位に対して、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~15質量%、特に好ましくは0~1質量%である。ポリカーボネート樹脂(a)は、構成単位(a-1)および構成単位(a-2)からなる樹脂であることが特に好ましい。
【0027】
ポリカーボネート樹脂(a)が他に含んでいてもよい構成単位としては、限定されるものではないが、例えば、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[=ビスフェノールZ]、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン等に由来する構成単位が挙げられる。
【0028】
樹脂層(A)は、ポリカーボネート樹脂(a)を基材層の全質量に対して50~100質量%の量で含んでいることが好ましく、80~100質量%がより好ましく、100質量%が特に好ましい。樹脂層(A)は、ポリカーボネート樹脂(a)からなることが特に好ましい。樹脂層(A)中のポリカーボネート樹脂(a)の含有量を増やすことで、耐衝撃性が向上する。
【0029】
本発明において、ポリカーボネート樹脂(a)の重量平均分子量は、樹脂積層体の耐衝撃性および成形条件に影響し得る。つまり、重量平均分子量が小さすぎる場合は、樹脂積層体の耐衝撃性が低下するおそれがある。重量平均分子量が高すぎる場合は、ポリカーボネート樹脂(a)を含む基材層を形成する時に過剰な熱源を必要とする場合がある。また、選択する成形法によっては高い温度が必要になるので、ポリカーボネート樹脂(a)が高温にさらされることになり、その熱安定性に悪影響を及ぼすことがある。ポリカーボネート樹脂(a)の重量平均分子量は、30,000~90,000が好ましく、40,000~80,000がより好ましい。さらに好ましくは50,000~70,000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0030】
ポリカーボネート樹脂(a)は、公知の方法によって製造することができ、製造方法は特に限定されるものではない。例えば、界面重合法、ピリジン法、エステル交換法をはじめとする各種合成方法を上げることが出来る。
【0031】
樹脂層(A)は、ポリカーボネート樹脂(a)に加え、他の樹脂を含んでいてもよい。そのような樹脂としては、PTE-G、PCTG、PLC等が挙げられる。樹脂層(A)における樹脂は、ポリカーボネート樹脂(a)のみであることが好ましいが、その他の樹脂を含む場合には、樹脂層(A)に対して0~30質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましく、0~3質量%であることが特に好ましい。
【0032】
樹脂層(A)は、さらに添加剤等を含んでいてもよい。添加剤としては、樹脂シートにおいて通常使用されるものを使用することができ、そのような添加剤としては、例えば、抗酸化剤、抗着色剤、抗帯電剤、離型剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、樹脂改質剤、相溶化剤、有機フィラーや無機フィラーのような強化材などが挙げられる。添加剤と樹脂を混合する方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法などを用いることができる。添加剤の量は、樹脂層(A)の全質量に対して0~30質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましく、1~5質量%であることが特に好ましい。
【0033】
樹脂層(A)の厚みは、0.04~2.9mmであることが好ましく、0.07~2.8mmであることがより好ましく、0.09~2.4mmであることが特に好ましい。
【0034】
2.樹脂層(B)(保護層)
樹脂層(B)は、基材層上に積層され、鉛筆硬度がF以上である樹脂(b)(以下、「高硬度樹脂」とも称する)を主として含む樹脂層である。樹脂(b)は、高硬度樹脂であればよく、その種類は限定されるものではない。樹脂層(B)に含まれる樹脂(b)は、1種類であっても2種類以上であってもよい。樹脂(b)は、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂であることが好ましい。樹脂(b)がアクリル樹脂である場合、具体的には、メチルメタクリル酸より重合されるメチルメタクリル樹脂(PMMA:ポリメチル(メタ)アクリレートともいう)、メタクリル酸メチル-ビニルシクロヘキサン共重合樹脂、メタクリル酸メチル-スチレン-無水マレイン酸共重合樹脂が挙げられる。樹脂(b)がポリカーボネート樹脂である場合、具体的には、ビスフェノールCを主成分とした高硬度ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
なお、樹脂(b)としてのポリカーボネート樹脂は、樹脂(a)としてのポリカーボネート樹脂とは異なる構造を有する。
【0035】
樹脂層(B)の鉛筆硬度は、好ましくはH以上であり、より好ましくは2H以上である。
【0036】
樹脂層(B)は、樹脂(b)を樹脂層(B)の全質量に対して40~100質量%の量で含んでいることが好ましく、70~100質量%がより好ましく、90~100質量%が特に好ましい。樹脂層(B)は、樹脂(b)からなることが特に好ましい。樹脂層(B)中の樹脂(b)の含有量を増やすことで、硬度が向上する。
【0037】
樹脂層(B)は、樹脂(b)に加え、他の樹脂を含んでいてもよい。そのような樹脂としては、メタクリル酸メチル-スチレン共重合樹脂(MS樹脂)、メタクリル酸メチル-スチレン-無水マレイン酸共重合樹脂等が挙げられる。樹脂層(B)に含まれる樹脂は、樹脂(b)のみであることが好ましいが、その他の樹脂を含む場合には、樹脂層(B)に対して0~70質量%であることが好ましく、0~50質量%であることがより好ましく、0~30質量%であることが特に好ましい。
【0038】
樹脂層(B)は、さらに添加剤等を含んでいてもよい。添加剤としては、上記「1.樹脂層(A)」において記載したのと同様の添加剤を使用することができ、その量についても同様である。
【0039】
樹脂層(B)の厚さは、樹脂積層体の表面硬度や耐衝撃性に影響する。つまり、樹脂層(B)が薄すぎると表面硬度が低くなり、厚すぎると耐衝撃性が低下する。樹脂層(B)の厚みは、好ましくは10~150μmであり、より好ましくは30~100μmであり、特に好ましくは40~60μmである。
【0040】
3.ガラス転移温度
樹脂(a)と樹脂(b)は、所定の範囲のガラス転移温度を有することが好ましい。すなわち、樹脂(a)のガラス転移温度(TgA)は、100~135℃であることが好ましく、110~130℃であることがより好ましく、115~130℃であることが特に好ましい。
【0041】
ガラス転移温度(TgA)を100℃以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂の製造における造粒、乾燥工程において、ポリカーボネート樹脂粉末が凝集して生産性が低下することがない。従って、上記範囲内であれば、ガラス転移点が高い方がポリカーボネート樹脂製造上のプロセスマージンが広く、残存溶媒含有率の低い高品質のポリカーボネート樹脂を効率的、安定的に製造できる。
一方、TgAを135℃以下とすることにより、樹脂の色相が低下することを防ぐことができる。
【0042】
また、樹脂(b)のガラス転移温度(TgB)は、90~125℃であることが好ましく、90~120℃であることがより好ましく、90~110℃であることが特に好ましい。さらに、105~125℃であることも好ましい。そして、TgAおよびTgBが以下の式(1)の関係を満たすことが好ましい。
0≦TgA-TgB≦30 (1)
【0043】
上記式(1)において、0≦TgA-TgB≦20であることがより好ましく、0≦TgA-TgB≦10であることが特に好ましい。TgBがTgAよりも極端に低いと、熱成形時に高硬度樹脂がゴム状態または溶融状態となり、動きやすくなる。このような場合、保護層の上にハードコート層が設けられた構造においては、高度に架橋された構造を有し、熱がかかっても硬いままであるハードコート層が、動きやすくなった樹脂(b)の動きに追従できずクラックが生じ易くなるが、上記のような範囲とすることにより、このような問題を防ぐことができる。また、成形時に樹脂(b)が過剰に加熱されることを防ぐことができるため、発泡等の外観異常を抑制することができる。一方、TgBがTgAよりも極端に高いと、熱成形時にフィルムのドローダウン量が大きくなるという問題が生じ得る。
【0044】
当業者であれば、上記で説明したような樹脂(a)および樹脂(b)の中から、上記関係を満たすようなガラス転移点を有する樹脂(a)および樹脂(b)を適宜選択して使用することができる。なお、本明細書において、ガラス転移温度とは、示差走査熱量測定装置を用いて、試料10mg、昇温速度10℃/分で測定し、中点法で算出した温度である。
【0045】
4.樹脂層(A)と樹脂層(B)の積層
上述したとおり、樹脂層(A)の少なくとも一方の面上に樹脂層(B)を積層するが、その積層方法は特に限定されない。例えば、個別に形成した樹脂層(A)と樹脂層(B)とを重ね合わせて、両者を加熱圧着する方法;個別に形成した樹脂層(A)と樹脂層(B)とを重ね合わせて、両者を接着剤によって接着する方法;樹脂層(A)と樹脂層(B)とを共押出成形する方法;予め形成しておいた樹脂層(B)に、樹脂層(A)をインモールド成形して一体化する方法、などの各種方法がある。これらのうち、製造コストや生産性の観点から、共押出成形する方法が好ましい。
【0046】
また、押出機での加熱溶融温度は、それぞれの樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも80~150℃高い温度が好ましい。一般的には、ポリカーボネート樹脂(a)を押し出すメイン押出機の温度条件は、通常230~290℃、好ましくは240~280℃であり、樹脂(b)を押し出すサブ押出機の温度条件は通常220~270℃、好ましくは230~260℃である。
【0047】
共押出成形する場合、その方法は特に限定されない。例えば、フィードブロック方式では、フィードブロックで樹脂層(A)の片面上に樹脂層(B)を配置し、Tダイでシート状に押し出した後、成形ロールを通過させながら冷却して所望の積層体を形成する。また、マルチマニホールド方式では、マルチマニホールドダイ内で樹脂層(A)の片面上に樹脂層(B)を配置し、シート状に押し出した後、成形ロールを通過させながら冷却して所望の積層体を形成する。
【0048】
いずれにしても、ダイの温度は、通常230~290℃、特に250~280℃に設定することが好ましく、成形ロールの温度は、通常100~190℃、特に110~190℃に設定することが好ましい。
【0049】
樹脂積層体において、樹脂層(A)と樹脂層(B)の厚み比は、1:1~50:1であることが好ましく、2:1~35:1であることがより好ましく、3:1~20:1であることが特に好ましい。このような厚み比とすることにより、各層の特性を活かしつつ、層間の界面不良を抑制することが可能である。
【0050】
5.ハードコート層
本発明の樹脂積層体は、さらにハードコート層を備えていてもよい。ハードコート層を設ける位置は特に限定されないが、樹脂層(B)上に設けることがより好ましい。ハードコート層は、樹脂層(A)上と樹脂層(B)上の両方に設けてもよく、樹脂層(A)とハードコート層との間および/または樹脂層(B)とハードコート層との間にさらなる層が存在していてもよい。
【0051】
ハードコート層の材料としては、アクリル系、シリコン系、メラミン系、ウレタン系、エポキシ系等、公知の架橋皮膜を形成する化合物を使用することができる。また、硬化方法としても、紫外線硬化、熱硬化、電子線硬化等、公知の方法を用いることができる。ハードコート層が樹脂積層体の表層に位置する場合には、その鉛筆硬度がH以上であることが好ましい。硬度と熱賦形性とのバランスを考慮すると、アクリル系、ウレタンアクリレート系が好ましいものとして例示される。
ハードコート層は、当該分野で既知の方法で形成することができ、例えば、ロールコート法などの塗布法、ディップ法、転写法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
ハードコート層を形成するアクリル系の化合物としては、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基(アクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基の意)を有する架橋重合性化合物を使用できる。この場合、各(メタ)アクリロイルオキシ基を結合する残基は炭化水素またはその誘導体であることが好ましく、その分子内にはエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合等を含むことが好ましい。また、熱賦形性を付与する成分として、分子量が千~数千の長鎖成分を適宜添加することができる。
【0053】
ハードコート層は、擦傷後のヘーズが10%以下であることが好ましい。このヘーズは、以下のように測定したものである。すなわち、直径が約0.012mmである#0000スチールウール(日本スチールウール株式会社製)を、33mm×33mmの正方形パッドに装着する。台上に保持したハードコート層の試料表面上にこのパッドを置いて、荷重1000g下で15往復させて擦傷する。この試料をエタノールで洗浄した後、ヘーズを測定する。
【0054】
ハードコート層に、耐擦傷性補助剤として、例えばナノサイズの金属粒子を添加する事ができる。ナノサイズの金属粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0055】
ハードコート層の有する好ましい特性として、熱成形において伸びること、および耐薬品性に優れていることが挙げられる。特に耐薬品性の中でも、ニュートロジーナ耐性に優れていることが好ましい。
【0056】
ハードコート層の厚さは、好ましくは1~30μm、より好ましくは3~20μm、特に好ましくは5~10μmである。上記のような厚みとすることにより、積層体を熱賦形する際にハードコート層のクラックを防ぐことができる。
【0057】
ハードコート層は、さらに修飾されてもよい。例えば、反射防止処理、防汚処理、帯電防止処理、耐候性処理および防眩処理のいずれか一つ以上を施すことができる。これらの処理方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、反射低減塗料を塗布する方法、誘電体薄膜を蒸着する方法、帯電防止塗料を塗布する方法などが挙げられる。
【0058】
本発明の一実施形態によると、上述した樹脂積層体を用いて成形された樹脂成形品が提供される。成形方法は特に限定されないが、本発明の樹脂積層体の特性から、熱成形が適している。熱成形は、当該分野で通常使用される方法で行うことができ、例えば、熱プレス成形、真空成形、圧空成形、TOM成形、IML(インモールドラミネーション)等が挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
(製造例1:ポリカーボネート樹脂の製造)
9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液48.4kgに、新日鉄住金化学(株)製ビスフェノールA(BPA)7.47kg(32.76mol)、本州化学工業(株)製1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン(DED)0.83kg(2.55mol)、およびハイドロサルファイト30gを加えて溶解した。これにジクロロメタン35kgを加え、撹拌しながら、溶液温度を15℃~25℃の範囲に保ちつつ、ホスゲン4.38kgを30分かけて吹き込んだ。
【0060】
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液3kg、ジクロロメタン19kg、およびDIC(株)製p-t-ブチルフェノール(PTBP)207.7g(1.38mol)をジクロロメタン0.5kgに溶解させた溶液を加え、激しく撹拌して乳化させた。その後、重合触媒として20mLのトリエチルアミンを加え、約40分間重合させた。
【0061】
重合液を水相と有機相とに分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液のpHが中性になるまで純水で水洗を繰り返した。この精製されたポリカーボネート樹脂溶液から有機溶媒を蒸発留去することにより、構成単位(a-1)が90wt%、構成単位(a-2)が10wt%で構成されるポリカーボネート樹脂粉末を得た。
【0062】
(実施例1)
樹脂(a)および樹脂(b)を各々別々の押出機で加熱溶融し、Tダイのスリット状の吐出口から2種類の樹脂を同時に溶融押し出しし、樹脂層(A)(基材層)および樹脂層(B)(保護層)からなる2層の積層体を製造した。
樹脂(a)を押し出すメイン押出機は、バレル直径75mm、スクリューのL/D=32、シリンダー温度270℃に設定した。樹脂(b)を押し出すサブ押出機は、バレル直径40mm、スクリューのL/D=32、シリンダー温度250℃に設定した。
【0063】
樹脂(a)としては、製造例1で製造したポリカーボネート樹脂を用いた。樹脂(b)としては、アクリル系樹脂(アルケマ株式会社製、商品名Altuglas V020、組成:ポリメチルメタクリレート)を用いた。
【0064】
2層の積層体を得るために、フィードブロックを使用した。ダイヘッド内温度は250℃とし、ダイ内で積層した樹脂を、鏡面仕上げされた横型配置の3本のキャストロールに導くようにした。この際、1番ロール温度110℃、2番ロール温度100℃、3番ロール温度110℃に設定した。
メイン押出機およびサブ押出機の回転数を、吐出量比がメイン/サブ=240/60となるように設定し、2層の合計厚みが0.3mmとなるように共押し出しして、樹脂積層体(樹脂層(A)の厚み:240μm、樹脂層(B)の厚み:60μm)を得た。
【0065】
(実施例2)
実施例1で製造した樹脂積層体の樹脂層(B)上に、ロールコート法を用いてハードコート層(厚み:5μm)を形成した。ハードコート層の材料としては、中国塗料株式会社製のウレタンアクリレート系樹脂(製品名363C-224HG、ハードコート伸び率;100%)を用いた。形成されたハードコート層は、耐擦り傷性試験(日本スチールウール株式会社製#0000スチールウールを33mm×33mmの正方形パッドに装着し、ハードコート層の表面を荷重1000g下で15往復させる)において、擦傷後のヘーズが10%以下である実用的なハードコート層であった。
【0066】
(実施例3)
樹脂(b)の種類を変えた以外は、実施例1と同様に樹脂積層体を製造した。樹脂(b)として、メチルメタクリレートおよびビニルシクロヘキサンに由来する構成単位を有するアクリル系樹脂(三菱ガス化学株式会社製、商品名Optimas 7500)を用いた。
【0067】
(実施例4)
実施例3で製造した樹脂積層体の樹脂層(B)上に、実施例2と同様にハードコート層を形成した。
【0068】
(実施例5)
樹脂(b)の種類を変えた以外は、実施例1と同様に樹脂積層体を製造した。樹脂(b)として、メチルメタクリレート、無水マレイン酸およびスチレンに由来する構成単位を有するアクリル系樹脂(ダイセル・エボニック株式会社製、商品名PLEXIGLAS hw55)を用いた。
【0069】
(実施例6)
実施例5で製造した樹脂積層体の樹脂層(B)上に、実施例2と同様にハードコート層を形成した。
【0070】
(実施例7)
樹脂(b)の種類を変えた以外は、実施例1と同様に樹脂積層体を製造した。樹脂(b)として、高硬度ポリカーボネート系樹脂(三菱エンジニアリング株式会社製、商品名ユーピロン KS3410UR)を用いた。
【0071】
(実施例8)
実施例7で製造した樹脂積層体の樹脂層(B)上に、実施例2と同様にハードコート層を形成した。
(実施例9)
樹脂層(A)の厚みを120μmとした以外は、実施例7と同様に樹脂積層体を製造した。
【0072】
(比較例1)
樹脂(a)の種類を変えた以外は、実施例1と同様に樹脂積層体を製造した。樹脂(a)として、ビスフェノールAを原料として製造した芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリング株式会社製、商品名E-2000)を用いた。
【0073】
(比較例2)
比較例1で製造した樹脂積層体の樹脂層(B)上に、実施例2と同様にハードコート層を形成した。
【0074】
<評価>
実施例および比較例で製造した樹脂積層体について、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
(1)鉛筆硬度
JIS K5400に準拠し、759g荷重で、鉛筆硬度を測定した。測定は、樹脂積層体の樹脂層(B)側の面について行い、ハードコート層が設けられている場合にはハードコート層表面の鉛筆硬度を測定した。
【0075】
(2)成形加工性
実施例および比較例で製造した樹脂積層体を、210mm×297mm×(厚さ)0.3mmに裁断した。得られたサンプルシートを165℃に予熱し、5MPaの高圧空気により、縦30mm、横30mm、高さ8mmの直角形状金型を用いて圧空成形を行なった。得られた成形体の外観(クラック、白化、発泡、ムラ)を観察し、クラック、白化、発泡およびムラのいずれも観察されない場合に「異常無し」と評価した。さらに、直角形状部の半径Rが3.0mm以内であり、外観異常無しの成形体を「良好」と総合評価し、半径Rおよび外観異常の少なくとも一方が上記条件を満たさない場合には「不良」と総合評価した。なお、直角形状部の半径Rの測定は、接触式輪郭形状測定機CONTOURECORD2700/503((株)東京精密製)を使用し、半径Rを実測することにより行った。
【表1-1】
【表1-2】
【0076】
表1より、本発明の樹脂積層体は、硬度が高く、成形後にクラック、白化、発泡、ムラ等の外観異常が生じていないことが分かる。また、成形体の直角形状半径も小さな値が得られている。従って、本発明の樹脂積層体は熱成形に適しており、硬度の高い成形体を高い精度で製造することができる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。