(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
F01P 3/18 20060101AFI20220502BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20220502BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20220502BHJP
F01P 11/10 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
F01P3/18 A
B60K11/04 B
B60K11/04 E
E02F9/00 M
F01P11/10 A
F01P11/10 K
F01P11/10 G
(21)【出願番号】P 2018035512
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】今村 一哉
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-017050(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008022887(DE,A1)
【文献】特開2017-002582(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104179558(CN,A)
【文献】実開昭60-015917(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 3/18
B60K 11/04
E02F 9/00
F01P 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第一壁面及び第二壁面によって一方向に延びる
とともに、両端の通気孔を介して外部に連通する主流路が区画形成された作業機械本体と、
前記主流路の延びる方向である流路方向に沿って空気を流通させるファンと、
前記主流路の前記流路方向における第一位置で、前記流路方向に直交するように前記第一壁面から張り出して前記第二壁面との間に第一開口部を区画形成する第一冷却ユニットと、
前記主流路の前記流路方向における前記第一位置よりも下流側の第二位置で、前記流路方向に直交するように前記第二壁面から張り出して前記第一壁面との間に第二開口部を区画形成するとともに、前記流路方向から見て前記第一冷却ユニットと一部が重なる第二冷却ユニットと、
前記第一冷却ユニットの前記第二壁面側の端部と前記第二冷却ユニットの第一壁面側の端部とにわたって設けられた仕切り部材であって、前記第一冷却ユニットを流入口とし前記第二開口部を流出口とする第一区画流路、及び、前記第一開口部を流入口とし前記第二冷却ユニットを流出口とする第二区画流路を区画形成する仕切り部材と、
を備え、
前記第一区画流路は、前記流入口から前記流出口に向かうにしたがって流路断面積が減少し、
前記第二区画流路は、前記流入口から前記流出口に向かうにしたがって流路断面積が増加し、
前記作業機械本体が、前記通気孔とは独立して形成されて前記第二区画流路と外部とを連通させる連通口を有する作業機械。
【請求項2】
前記第一冷却ユニットは、該第一冷却ユニットの厚さ方向に一致する方向に空気を流通させる連通孔を有し、
前記第二冷却ユニットは、該第二冷却ユニットの厚さ方向に一致する方向に空気を流通させる連通孔を有する請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記主流路は、前記作業機械本体の左右方向に延びており、前記第一壁面及び前記第二壁面は、前記作業機械本体の前後方向に対向している請求項
1又は2に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷却装置を備えた作業機械が開示されている。冷却装置は、作業機械のカバー内に設けられている。冷却装置は、ファン及び該ファンによる送風を受ける冷却ユニットとしてのラジエータ、オイルクーラ、インタクーラを有している。これら冷却ユニットは、カバーに形成された開口から見て、端部がそれぞれ重複するように斜めに並列配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷却ユニットによる冷却性能を向上させるためには、送風を受ける面積であるクーリング面積を確保しながら、通風抵抗を抑えて空気の流通量を確保することが必要である。一方で、不用意に複数の冷却ユニットを配置すれば、設置スペースが増加する結果、作業機械自体の大型化を招いてしまう。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、コンパクト化を図りながら冷却性能を向上させることができる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様に係る作業機械は、互いに対向する第一壁面及び第二壁面によって一方向に延びるとともに、両端の通気孔を介して外部に連通する主流路が区画形成された作業機械本体と、前記主流路の延びる方向である流路方向に沿って空気を流通させるファンと、前記主流路の前記流路方向における第一位置で、前記流路方向に直交するように前記第一壁面から張り出して前記第二壁面との間に第一開口部を区画形成する第一冷却ユニットと、前記主流路の前記流路方向における前記第一位置よりも下流側の第二位置で、前記流路方向に直交するように前記第二壁面から張り出して前記第一壁面との間に第二開口部を区画形成するとともに、前記流路方向から見て前記第一冷却ユニットと一部が重なる第二冷却ユニットと、前記第一冷却ユニットの前記第二壁面側の端部と前記第二冷却ユニットの第一壁面側の端部とにわたって設けられた仕切り部材であって、前記第一冷却ユニットを流入口とし前記第二開口部を流出口とする第一区画流路、及び、前記第一開口部を流入口とし前記第二冷却ユニットを流出口とする第二区画流路を区画形成する仕切り部材と、を備え、 前記第一区画流路は、前記流入口から前記流出口に向かうにしたがって流路断面積が減少し、前記第二区画流路は、前記流入口から前記流出口に向かうにしたがって流路断面積が増加し、前記作業機械本体が、前記通気孔とは独立して形成されて前記第二区画流路と外部とを連通させる連通口を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の作業機械によれば、コンパクト化を図りながら冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る油圧ショベルにおける上部旋回体の内部構造を示す模式的な平面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る油圧ショベルにおける冷却装置の斜視図である。
【
図4】
図2の冷却装置を流路方向上流側から見た図である。
【
図5】第一冷却ユニット及び第二冷却ユニットの放熱部を流路方向上流側から見た拡大図である。
【
図6】本発明の第一実施形態の第一変形例に係る油圧ショベルの冷却装置を流路方向上流側から見た図である。
【
図7】本発明の第一実施形態の第二変形例に係る油圧ショベルの冷却装置を流路方向の上流側から見た図である。
【
図8】本発明の第二実施形態に係る油圧ショベルにおける上部旋回体の内部構造を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
以下、本発明の実施形態について
図1~
図5を参照して詳細に説明する。
<作業機械>
図1に示すように、作業機械としての油圧ショベル1は、下部走行体20、及び上部旋回体30を有する作業機械本体10を備えている。以下では、油圧ショベル1が水平面に設置された状態における重力が作用する方向を「上下方向」と称する。また、後述するキャブ31内の運転席の前方を単に「前方」と称し、後方を単に「後方」と称する。さらに、運転席から見た上部旋回体30の左右方向を単に「左右方向」と称し、左側、右側を単に「左側」、「右側」と称する。
【0010】
<下部走行体>
下部走行体20は、左右一対の履帯21を有しており、これら履帯21が走行用油圧モータ(図示省略)によって駆動されることで油圧ショベル1を走行させる。
【0011】
<上部旋回体>
上部旋回体30は、下部走行体20上に旋回可能に配置されている。上部旋回体30は、図示省略のフレーム上に設けられたキャブ31、作業機32、外装カバー40、ドアカバー41及びカウンタウェイト50を有する。フレームの下面には、アンダーカバー36が設けられている。
【0012】
キャブ31は、上部旋回体30の前部の左側(左右方向一方側)に配置されており、作業者の運転席が設けられている。
作業機32は上部旋回体30の前方に延びるように設けられており、ブーム33、アーム34及びバケット35を有する。作業機32は、ブーム33、アーム34及びバケット35がそれぞれ各油圧シリンダ(図示省略)により駆動されることで掘削等の各種作業を行う。
アンダーカバー36は、フレームの開口部を塞ぐように、該フレームの下面に設けられている。
【0013】
外装カバー40は、アンダーカバー36上に設けられている。外装カバー40の内側には、アンダーカバー36上の機械室が区画形成されている。外装カバー40は、上部旋回体30の外形をなしている。外装カバー40の左右方向両側は外部に開口している。ドアカバー41は、外装カバー40の左右方向両側の開口に開閉可能に設けられている。ドアカバー41には、機械室内と外部とを連通させる通気孔41aが形成されている。
【0014】
図2に示すように、カウンタウェイト50は、上部旋回体30の内部で該上部旋回体30の後部に左右方向にわたって設けられている。カウンタウェイト50における前方を向く前面は、上部旋回体30の左右方向にわたって延びている。
【0015】
上部旋回体30の外装カバー40の内側の機械室には、仕切り板60、オイルタンク70、機器収容部71、エンジン72、油圧ポンプ73、油圧バルブ74、ファン80及び冷却装置120が設けられている。
【0016】
仕切り板60は、カウンタウェイト50の前方側に間隔あけて設けられている。仕切り板60は、鉛直面に沿って延びる板状をなしており、上部旋回体30の左右方向に延びている。より詳細には、上部旋回体30の左側の端部から右側に向かって延びている。
【0017】
オイルタンク70は各種の油圧機器に供給されるオイルが貯留されている。オイルタンク70は、上部旋回体30内のカウンタウェイト50の前方側であって上部旋回体30の右側の端部に設けられている。オイルタンク70の左側には、仕切り板60が該オイルタンク70に連なるように伸びている。仕切り板60及びオイルタンク70の後面は、互いに連続するように上部旋回体30の幅方向にわたって延びている。
【0018】
<主流路>
ここで、
図2~
図4に示すように、上部旋回体30内には、該上部旋回体30の左右方向にわたって延びる主流路Fが形成されている。
図4に示すように、主流路Fは、仕切り板60及びオイルタンク70の後面60a,70aと、カウンタウェイト50の前面50aと、外装カバー40の天面40bと、アンダーカバー36の上面36aと、によって区画形成されている。
【0019】
図4に示すように、仕切り板60及びオイルタンク70の後面60a,70a及びカウンタウェイト50の前面50aは、互いに前後方向に対向し、かつ、鉛直面に沿って延びている。外装カバー40の天面40b及びアンダーカバー36の上面36aは、互いに上下方向に対向し、かつ、水平方向に延びている。よって、主流路Fの流路断面形状は、主流路Fの延びる方向である流路方向Dから見て四角形状をなしている。
仕切り板60及びオイルタンク70の後面60a,70aを、主流路Fを区画形成する壁部の第一壁面101とする。カウンタウェイト50の前面50aを上記壁部の第二壁面102とする。外装カバー40の天面40bを上記壁部の上壁面103とする。アンダーカバー36の上面36aを上記壁部の下壁面104とする。即ち、主流路Fは、第一壁面101、第二壁面102、上壁面103及び下壁面104を有する壁部によって区画形成されている。
【0020】
主流路Fの流路方向D両端には、それぞれドアカバー41が位置している。主流路Fは、ドアカバー41に形成された通気孔41aを介して上部旋回体30の外部に連通している。
【0021】
機器収容部71は、上部旋回体30内の幅方向左側の部分であって、仕切り板60とキャブ31との間に設けられている。機器収容部71には、各種の機器が収容されている。
エンジン72は主流路F内に設けられている。エンジン72は、回転軸を流路方向D(上部旋回体30の左右方向)に一致させた状態で設けられている。エンジン72の右側には、油圧ポンプ73が設けられている。油圧ポンプ73はエンジン72の回転に伴って駆動されて、オイルタンク70に貯留されたオイルから圧油を生成する。
油圧バルブ74は、仕切り板60の前方側であって機器収容部71とオイルタンク70との間に設けられている。油圧バルブ74は、油圧ポンプ73が生成した油圧を各油圧機器に分配する。
【0022】
<ファン>
ファン80は、エンジン72における上部旋回体30の左側に一体に設けられている。ファン80は、エンジン72の回転に伴って回転することで、主流路F内に送風する。本実施形態では、ファン80は、上部旋回体30の左側から右側に向かって主流路F内に送風を行う。よって、流路方向Dのうち、上部旋回体30の左側が上流側、右側が下流側となる。
【0023】
<冷却装置>
次に冷却装置120について説明する。
図2に示すように、冷却装置120は、主流路Fにおけるエンジン72及びファン80の流路方向D上流側に設けられている。冷却装置120は、第一冷却ユニット130、第二冷却ユニット140及び仕切り部材110を有している。
【0024】
<第一冷却ユニット及び第二冷却ユニットの構成>
図2~
図4に示すように、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140は、流路方向Dから見た形状が四角形状をなす直方体状をなしている。当該四角形状の四辺は上部旋回体30の前後方向及び上下方向に一致している。第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140は、四角形状をなす正面を流路方向D上流側に向けるとともに、正面同様に四角形状をなす背面を流路方向D下流側に向けた状態で主流路F内に配置されている。
【0025】
以下では、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140を正面側または背面側から見た際の左右の方向を、第一冷却ユニット130又は第二冷却ユニット140の幅方向と称する。また、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140の上下方向を第一冷却ユニット130又は第二冷却ユニット140の高さ方向と称する。さらに、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140の流路方向Dを第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140の厚さ方向と称する。第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140は、これらの幅方向、高さ方向及び厚さ方向に延びる直方体状をなしている。これら幅方向、高さ方向及び厚さ方向は、互いに直交している。第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140の厚さ方向の寸法は、高さ方向及び幅方向の寸法よりも小さい。
【0026】
図3に示すように、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140は、ラジエータ、オイルクーラ及びアフタクーラ等の冷却機器の少なくとも一つを構成する熱交換器としてのコア131,141と、コア131,141を収容する外枠フレーム135,145とを有する。
【0027】
ラジエータは、エンジン72を冷却することで加熱された冷却水を冷却する役割を有する。オイルクーラは、油圧回路を流れる作動油を冷却する役割を有する。アフタクーラは、エンジン72の吸入空気効率を高めてエンジン72性能を向上させるために、圧縮されてエンジン72に導入される前の過給空気を冷却する役割を有する。
【0028】
図5に示すように、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140内のコア131,141は、放熱チューブ132,142及びフィン133,143を有している。放熱チューブ132,142は、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140の高さ方向に延びるとともに、幅方向に間隔あけて複数が配置されている。放熱チューブ132,142は、同一の幅方向位置で厚さ方向に複数が配列されていてもよい。
【0029】
フィン133,143は、互いに幅方向に隣り合う放熱チューブ132,142同士の間に設けられている。フィン133,143は、上方に向かうにしたがって互いに隣り合う一対の放熱チューブ132,142に交互に接触するように延びるいわゆるコルゲート状をなしている。これらフィン133,143と放熱チューブ132,142によって、冷却機器には、第一冷却ユニット130の正面と背面とにわたって流路方向Dと一致する方向に延びる多数の連通孔134,144が形成されている。
【0030】
外枠フレーム135,145は、冷却機器の高さ方向両側の端面及び幅方向両側の端面を囲う枠状をなしている。外枠フレーム135,145の正面及び背面はほぼ全面にわたって開口しており、当該開口を介して冷却機器のコア131,141が正面側(流路方向D上流側)及び背面側(流路方向D下流側)に露出している。
【0031】
ここで、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140を正面から見た場合におけるこれら第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140全面積に対する全ての連通孔134,144の占める面積を開口率と定義する。本実施形態では、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140の開口率は、50~80%、好ましくは、60~75%の範囲に設定されている。開口率は、空気が流通する面積の割合を示す。開口率が大き過ぎる場合には、放熱チューブ132,142及びフィン133,143の占める面積が相対的に小さくなるため、熱交換効率が低下する。開口率が小さ過ぎる場合には、連通孔134,144が占める面積が相対的に小さくなるため、通気抵抗が大きくなる。
【0032】
<第一冷却ユニットの配置>
第一冷却ユニット130は、
図2に示すように、主流路Fにおける上流側の位置(第一位置P1)に設けられている。第一位置P1は、ファン80と流路方向Dの上流側のドアカバー41との間の位置である。当該ドアカバー41と第一位置P1との間には、通気孔41aから流入した空気を冷却装置120全体に導くためのスペースが形成されている。第一冷却ユニット130は、幅方向一方側(
図2~
図4の左側)の端部が、第一壁面101に対して上下方向にわたって接している。
図4に示すように、第一冷却ユニット130の上端は、上壁面103に幅方向にわたって接している。第一冷却ユニット130の下端は、下壁面104に幅方向にわたって接している。第一冷却ユニット130は、平面視で流路方向Dに直交する方向に延びている。即ち、第一冷却ユニット130の幅方向は流路方向Dに直交している。第一冷却ユニット130の正面及び背面は流路方向Dに直交している。
【0033】
第一冷却ユニット130の幅方向他方側(
図2~
図4の右側)の端部は、第二壁面102までは至っておらず、該第二壁面102と間隔をあけて配置されている。第一冷却ユニット130の幅方向他方側の端部と第二壁面102との間の空間は、第一開口部150とされている。即ち、第一冷却ユニット130は、主流路Fの第一位置P1で流路方向Dに対して直交するように第一壁面101から張り出すように配置されており、第二壁面102との間に第一開口部150を区画形成している。
【0034】
第一開口部150は流路方向Dから見て四角形状をなしている。本実施形態では、流路方向Dから見た際の第一冷却ユニット130の面積は、第一開口部150の面積よりも大きい。第一冷却ユニット130は、主流路Fの幅方向の中央よりも第二壁面102側に張り出している。即ち、第一位置P1における主流路Fの流路断面では、第一冷却ユニット130の占有面積は第一開口部150よりの占有面積よりも大きい。
【0035】
<第二冷却ユニットの配置>
第二冷却ユニット140は、
図2に示すように、主流路Fにおける第一位置P1よりも下流側の位置(第二位置P2)に設けられている。第二冷却ユニット140は、幅方向他方側の端部が、第二壁面102に対して上下方向にわたって接している。
図4に示すように、第二冷却ユニット140の上端は、上壁面103に幅方向にわたって接している。第二冷却ユニット140の下端は、下壁面104に幅方向にわたって接している。第二冷却ユニット140は、平面視で流路方向Dに直交する方向に延びている。即ち、第二冷却ユニット140の幅方向は流路方向Dに直交している。第二冷却ユニット140の正面及び背面は流路方向Dに直交している。
【0036】
第二冷却ユニット140の幅方向一方側の端部は、第一壁面101までは至っておらず、該第一壁面101と間隔をあけて配置されている。第二冷却ユニット140の幅方向一方側の端部と第一壁面101との間の空間は、第二開口部160とされている。即ち、第二冷却ユニット140は、主流路Fの第二位置P2で流路方向Dに直交するように第二壁面102から張り出すように配置されており、第一壁面101との間に第二開口部160を区画形成している。
第二開口部160は流路方向Dから見て四角形状をなしている。本実施形態では、流路方向Dから見た際の第二冷却ユニット140の面積は、第二開口部160の面積よりも大きい。第二冷却ユニット140は、主流路Fの幅方向の中央よりも第一壁面101側に張り出している。即ち、第二位置P2における主流路Fの流路断面では、第二冷却ユニット140の占有面積は第二開口部160よりの占有面積よりも大きい。
【0037】
流路方向Dから見た際に、第一冷却ユニット130と第二冷却ユニット140とは、一部が互いに重なっている。本実施形態では、第一冷却ユニット130における第二壁面102側の部分と、第二冷却ユニット140における第一壁面101側の部分とが、高さ方向全域にわたって重なっている。これらが重なっている領域は、流路方向Dから見て四角形状をなしている。
【0038】
ここで、第一冷却ユニット130の幅方向の寸法は、主流路Fの同方向の寸法の60~80%の値に設定されていることが好ましい。同様に、第二冷却ユニット140の幅方向の寸法は、主流路Fの同方向の寸法の60~80%に設定されていることが好ましい。本実施形態では、第一冷却ユニット130の幅方向の寸法と第二冷却ユニット140の幅方向の寸法は同一とされている。
【0039】
<仕切り部材>
仕切り部材110は、
図2及び
図3に示すように、第一冷却ユニット130と第二冷却ユニット140とにわたって設けられている。仕切り部材110は、第一冷却ユニット130における第二壁面102側の端部(第一開口部150側の端部)と第二冷却ユニット140における第一壁面101側の端部(第二開口部160側の端部)とに高さ方向にわたって両端が接続されている。仕切り部材110は、第一冷却ユニット130と第二冷却ユニット140との間の全域で上壁面103と下壁面104とにわたって板状に延びている。これにより仕切り部材110は、第一冷却ユニット130を流入口とし第二開口部160を流出口とする第一区画流路f1、及び、第一開口部150を流入口として第二冷却ユニット140を流出口とする第二区画流路f2を区画形成している。
【0040】
仕切り部材110は、
図2に示す平面視にて、流路方向D下流側に向かうにしたがって第一冷却ユニット130の第二壁面102側の端部から第二冷却ユニット140の第一壁面101側の端部に向かって連続的に延びる形状をなしている。
これによって、第一区画流路f1は、流路方向D上流側の第一冷却ユニット130の出口から下流側に向かって流路断面積(流路方向Dに直交する断面の面積)が徐々に小さくなった後に第二開口部160に接続されている。第二区画流路f2は、流路方向D上流側の第一開口部150から下流側に向かって流路断面積が徐々に大きくなった後に第二冷却ユニット140の入り口に接続されている。
仕切部材110は曲面状をなしていることが好ましい。これにより、空気を滑らかに導くことができるため、乱流の発生及びこれに基づく抵抗の増加を抑えることができる。
【0041】
<作用効果>
油圧ショベル1の稼働中にはエンジン72の駆動によってファン80が回転し、主流路F内には上流側から下流側に向かって空気が流通する。これによって第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140には、これらを流路方向Dに貫通する連通孔134,144を空気が通過する。この際、連通孔134,144を流通する空気と放熱チューブ132,142内を流通する媒体とが熱交換をすることで、該媒体が冷却される。これにより、媒体としての冷却水、オイル、過給空気等の冷却が行われる。
【0042】
ここで、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140の冷却性能を高めるためには、これら第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140のクーリング面積を確保することが必要となる。クーリング面積とは、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140が送風を受ける面積であって、これら第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140を流路方向Dから見た場合のコア131,141の面積に相当する。
【0043】
例えば仮に第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140を高さ方向に並設した場合、クーリング面積を確保することはできるものの上部旋回体30の上下方向の寸法を大きく取る必要がある。この場合、キャブ31の後方側の視界性を低下させるといった欠点がある。
また、例えば仮に第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140を幅方向に並設した場合、クーリング面積を確保することはできるものの、上部旋回体30の前後方向の寸法を大きく取る必要がある。この場合、上部旋回体30の旋回半径が大きくなってしまう。
一方で、例えば第一冷却ユニット130、第二冷却ユニット140を直列に配置したのでは、第二冷却ユニット140には第一冷却ユニット130で加熱された空気が導入されることになり、冷却効果を阻害する。
【0044】
これに対して本実施形態では、流路方向Dに離間して設けられた第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140が、流路方向Dから見て一部のみが重なるように、上部旋回体30の前後方向にずれて配置されている。即ち、第一冷却ユニット130の第二壁面102側の部分と第二冷却ユニット140の第一壁面101側の部分のみが流路方向Dに重なっている。そのため、冷却装置120自体をコンパクトな構成とすることができる。
【0045】
さらに、上流側の第一冷却ユニット130に流入した空気は、第一区画流路f1を介して冷却装置120の下流側に排出される。一方で、第二冷却ユニット140には、第一冷却ユニット130に遮られることなく第一開口部150から流入した空気は、第二区画流路f2を介して第二冷却ユニット140に導入される。これによって、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140のそれぞれに空気を適切に導入することができる。また、下流側に配置された第二冷却ユニット140に対しては、第一冷却ユニット130によって加熱されていない空気を導入することができる。これによって、両者での冷却効果を担保することができる。
【0046】
ここで、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140は、流路方向Dに正面及び背面が直交している。また、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140の放熱チューブ132,142及びフィン133,143間の連通孔134,144は、流路方向Dに一致して延びている。
仮に第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140の幅方向を流路方向Dに直交する方向から傾けて設置した場合、連通孔134,144も同様に流路方向Dに対して傾斜する。この場合には、空気が連通孔134,144を通過する際に屈曲して流れることになるため、通風抵抗が増加する。そのため、十分な通風量を確保することができず、やはり冷却効果が低下する。
【0047】
これに対して本実施形態では、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140が空気の流通方向である流路方向Dに正対している。即ち、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140それぞれの連通孔134,144が流路方向Dに一致するように、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140の姿勢が設定されている。そのため、連通孔134,144を通過する際に空気の流れが屈曲することを抑えることができる。その結果、通風抵抗の減少させることができ、冷却効果を担保することができる。
【0048】
本実施形態では、第一区画流路f1は、流入口から流出口に向かうにしたがって流路断面積が減少する。第一区画流路f1の流入口となる第一冷却ユニット130では、その開口率に相当する面積が、空気の流通面積となる。即ち、第一区画流路f1の流入口全体の面積に比べて空気の流通面積は小さなものとなる。よって、第一区画流路f1が下流側に向かって流路断面積が減少したとしても、第一区画流路f1の流出口となる第二開口部160での流路断面積が、第一区画流路f1での流入口における実際に空気が流通する流路断面積よりも大きく減少することはない。よって、大きな通風抵抗が生じることはなく、スペースを効率的に活用することができる。
【0049】
同様に、第二区画流路f2は、流入口から流出口に向かうにしたがって流路断面積が増加する。第二区画流路f2の流出口となる第二冷却ユニット140では、その開口率に相当する面積が、空気の流通面積となる。即ち、第二区画流路f2の流出口となる第二冷却ユニット140全体の面積に比べて、空気の流通面積は小さなものとなる。よって、第二区画流路f2が下流側に向かって流路断面積が増加したとしても、第二区画流路f2での流出口における実際に空気が流通する流路断面積が、第二区画流路f2の流入口となる第一開口部150での流路断面積よりも極端に大きくなることはない。よって、スペースを効率的に活用しながら、比較的狭く形成された第一開口部150を介して第二冷却ユニット140の冷却に必要なだけの空気を第二冷却ユニット140に導入することができる。
【0050】
例えば第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140の幅方向の寸法を主流路Fの同方向の寸法のそれぞれ5/8とすれば、第一開口部150、第二開口部160の幅方向の寸法は、それぞれ主流路Fの同方向の寸法の3/8となる。この場合、第一冷却ユニット130と第二冷却ユニット140の開口率を60%とすれば、第一区画流路f1の流入口と流出口との流路断面積、第二区画流路f2の流入口と流出口との流路断面積はそれぞれ等しくすることができる。これにより、省スペース化を図りながら、通風抵抗の抑制、適切な空気の導入を行うことができる。当該寸法は一例であり、適宜変更してもよい。また、流入口と流出口との流路断面積を一致させる必要はなく、これらの流路断面積の極端な乖離を抑制できればよい。
【0051】
<第一変形例>
なお、例えば第一実施形態の第一変形例として、
図6に示す構成であってもよい。第一変形例では、主流路Fを区画形成する上壁面103を第一壁面101とし、下壁面104を第二壁面102としている。これにより、第一冷却ユニット130は、第一壁面101から下方に向かって張り出しており、第二壁面102との間に第一開口部150を区画形成している。第二冷却ユニット140は、第一冷却ユニット130よりも下流側で、第二壁面102から上方に向かって張り出しており、第一壁面101との間に第二開口部160を区画形成している。第一冷却ユニット130、第二冷却ユニット140の幅方向の端部は、それぞれ上下方向にわたって仕切り板60の後面60a、カウンタウェイト50の前面50aに接触している。図示は省略するが、仕切部材は、第一冷却ユニット130の下端と第二冷却ユニット140の上端とにわたって設けられている。この場合、冷却装置120の上下方向の寸法は多少大きくなるものの、冷却装置120としての幅方向の寸法を小さくすることができる。よって、上部旋回体30の前後方向の寸法を抑えることができる。
【0052】
<第二変形例>
なお、例えば第一実施形態の第二変形例として、
図7に示す構成であってもよい。第二変形例では、主流路Fを区画形成する上壁面103及び仕切り板60の後面60aを第一壁面101とし、下壁面104及びカウンタウェイト50の前面50aを第二壁面102としている。これにより、第一冷却ユニット130は、第一壁面101から斜め下方に向かって張り出しており、第二壁面102及び下壁面104との間にL字状の第一開口部150を区画形成している。第二冷却ユニット140は、第一冷却ユニット130よりも下流側で、第二壁面102から斜め上方に向かって張り出しており、第一壁面101及び上壁面103との間にL字状の第二開口部160を区画形成している。図示は省略するが、仕切部材は、第一冷却ユニット130の下端及び第二壁面102側の端部と、第二冷却ユニット140の上端及び第一壁面101側の端部とにわたって設けられている。この場合、冷却装置120の上下方向、前後方向の寸法を抑えることができる。
【0053】
<第二実施形態>
次に第二実施形態について
図8を参照して説明する。
図8では第一実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
第二実施形態の油圧ショベル1Aは、外装カバー40(
図8において図示省略)に、第二区画流路f2と外装カバー40の外部とを上下に連通させる連通口40aが形成されている。連通口40aは、主流路Fの流路方向D両端の開口とは独立して形成されている。即ち、連通口40aは、外装カバー40における第二区画流路f2を区画形成する上壁面103を上方に貫通するように形成されている。連通口40aの形成箇所は、第二区画流路f2における流入口となる第一開口部150よりも流出口となる第二冷却ユニット140に近接した位置とされていることが好ましい。
【0054】
連通口40aは、第二区画流路f2の仕切り部材110側に位置している。即ち、第二区画流路f2の第一壁面101側の部分は、第一開口部150から第一壁面101側にずれた位置に位置している。当該部分に空気を導入するためには、空気が回り込む必要があり、円滑に流通しない場合もある。したがって、第二区画流路f2の仕切り部材110側の部分に連通口40aを形成することで、第二冷却ユニット140の比較的空気を導入し難い箇所にも円滑に空気を導入することができる。
【0055】
これにより、例えば第一開口部150の開口面積の一部が不用意に閉塞された場合であっても、連通口40aを介して第二冷却ユニット140に十分に空気を導入することができる。
【0056】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0057】
実施形態では、主流路Fを上部旋回体30の左右方向に延びる構成としたが、例えば前後方向に延びていてもよいし、他の方向に延びていてもよい。主流路Fの流路断面形状は、四角形に限られず、他の多角形状、曲線部を含む形状等、いかなる形状を採用してもよい。これに伴って第一壁面101、第二壁面102は、平坦状でなくともよく、曲面等の他の形状であってもよい。さらに、第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140は実施形態の形状に限定されず他の形状であってもよい。
主流路Fを区画形成する部材は実施形態の例には限定されず、他の部材によって形成してもよい。
【0058】
通気孔41aに加えて、外装カバー40やアンダーカバー36における第一位置P1よりも上流側の部分に、これらを上下に貫通することで主流路Fを外部に連通させる他の通気孔を設けてもよい。これによって、主流路Fに導入される空気量を増やすことができる。
【0059】
ファン80は、油圧モータ又は電動モータを駆動源として、エンジン72とは独立して回転する構成であってもよい。
第一冷却ユニット130の幅方向の寸法と第二冷却ユニット140の幅方向の寸法は同一でなくともよく、互いに異なる寸法であってもよい。
【0060】
第一冷却ユニット130及び第二冷却ユニット140のコア131,141は、ラジエータ、オイルクーラ及びアフタクーラ等の熱交換器を任意に組み合わせることで構成されていればよい。これらラジエータ、オイルクーラ及びアフタクーラは、冷却能力に応じた任意のサイズとされていればよい。
【0061】
例えば、第一冷却ユニット130のコア131をラジエータのみで構成し、第二冷却ユニット140のコア141を、幅方向に隣り合うように配置されたオイルクーラ及びアフタクーラから構成してもよい。
第一冷却ユニット130のコア131を幅方向に隣り合うように配置されたオイルクーラ及びアフタクーラから構成し、第二冷却ユニット140のコア141をラジエータのみから構成してもよい。
【0062】
第一冷却ユニット130のコア131をアフタクーラのみから構成し、第二冷却ユニット140のコア141を、幅方向に隣り合うように配置されたオイルクーラ及びラジエータによって構成してもよい。
第一冷却ユニット130のコア131を幅方向に隣り合うように配置されたオイルクーラ及びラジエータから構成し、第二冷却ユニット140のコア141をアフタクーラのみから構成してもよい。
実施形態では、上部旋回体30の左側を主流路Fの上流側とし、右側を下流側とした例について説明した。これに対して例えば、上部旋回体30の右側を主流路Fの上流側とし、左側を下流側としてもよい。これに伴って、冷却装置120を主流路Fにおける上流側となる上部旋回体30の右側に配置し、ファン80、エンジン72及び油圧ポンプ73を主流路Fの下流側となる上部旋回体30の左側に配置してもよい。即ち、冷却ユニット120と、ファン80、エンジン72及び油圧ポンプ73との位置関係は、実施形態の左右逆の構成であってもよい。
【0063】
実施形態では、油圧ショベル1,1Aに本発明を適用した例について説明したが、例えばホイールローダ等の他の作業機械に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…油圧ショベル、1A…油圧ショベル、10…作業機械本体、20…下部走行体、21…履帯、30…上部旋回体、31…キャブ、32…作業機、33…ブーム、34…アーム、35…バケット、36…アンダーカバー、36a…上面、40…外装カバー、40a…連通口、40b…天面、41…ドアカバー、41a…通気孔、50…カウンタウェイト、50a…前面、60…仕切り板、60a…後面、70…オイルタンク、70a…後面、71…機器収容部、72…エンジン、73…油圧ポンプ、74…油圧バルブ、80…ファン、101…第一壁面、102…第二壁面、103…上壁面、104…下壁面、110…仕切り部材、120…冷却装置、130…第一冷却ユニット、131…コア、132…放熱チューブ、133…フィン、134…連通孔、135…外枠フレーム、140…第二冷却ユニット、141…コア、142…放熱チューブ、143…フィン、144…連通孔、145…外枠フレーム、150…第一開口部、160…第二開口部、F…主流路、f1…第一区画流路、f2…第二区画流路、D…流路方向、P1…第一位置、P2…第二位置