(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】電力管理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20220502BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J13/00 311R
(21)【出願番号】P 2018040227
(22)【出願日】2018-03-06
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2017206572
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年 電気学会 電力・エネルギー部門大会 開催年月日:平成29年9月5日~平成29年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】梅岡 尚
(72)【発明者】
【氏名】松崎 純一
(72)【発明者】
【氏名】上西 章太
(72)【発明者】
【氏名】林 泰弘
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/149617(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/042474(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/026508(WO,A1)
【文献】特開2010-200539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されるエネルギーの蓄積が可能なエネルギー源を有する複数の需要家施設のそれぞれが、複数の需要家施設グループのうちのいずれか1つに属するように定められたうえで、
前記複数の需要家施設グループのそれぞれに対して、エネルギー源にエネルギーを蓄積させる蓄積時間帯を異ならせて割り当てた設定を示す蓄積時間帯情報に基づいて、前記エネルギー源が、対応の需要家施設グループに割り当てられた蓄積時間帯においてエネルギーを蓄積するように制御するエネルギー制御部
と、
前記複数の需要家施設グループ全体の前記エネルギー源による総合蓄積容量比率に対応させて需要家施設グループごとに定めた電力蓄積の優先度に基づく電力制御比を示す電力制御比情報を記憶する電力制御比情報記憶部とを備え、
前記エネルギー制御部は、
所定の単位制御期間を区分した蓄積時間帯ごとの総合蓄積容量比の予測結果と、前記電力制御比情報とに基づいて、許容逆潮流電力に対する超過逆潮流電力についての前記複数の需要家施設グループへの分担量を蓄積時間帯ごとに示す蓄積時間帯情報を生成し、
生成された前記蓄積時間帯情報において前記蓄積時間帯ごとに示される前記分担量に応じた電力が需要家施設グループごとに蓄積されるように、前記エネルギー源を制御する
電力管理システム。
【請求項2】
所定の状況に応じて、少なくとも1つの需要家施設グループに割り当てる蓄積時間帯を変更する時間帯変更部をさらに備える
請求項
1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
蓄積したエネルギーの放出が可能なエネルギー源を有する複数の需要家施設のそれぞれが、複数の需要家施設グループのうちのいずれか1つに属するように定められたうえで、
前記複数の需要家施設グループのそれぞれに対して、エネルギー源からエネルギーを放出させる放出時間帯を異ならせて割り当てた設定を示す放出時間帯情報に基づいて、前記エネルギー源が、対応の需要家施設グループに割り当てられた放出時間帯においてエネルギーを放出するように制御するエネルギー制御部
と、
前記複数の需要家施設グループ全体の前記エネルギー源による総合蓄積容量比率に対応させて需要家施設グループごとに定めた電力放出の優先度に基づく電力制御比を示す電力制御比情報を記憶する電力制御比情報記憶部とを備え、
前記エネルギー制御部は、
所定の単位制御期間を区分した放出時間帯ごとの総合蓄積容量比の予測結果と、前記電力制御比情報とに基づいて、許容順潮流電力に対する超過順潮流電力についての前記複数の需要家施設グループの分担量を前記放出時間帯ごとに示す放出時間帯情報を生成し、
生成された前記放出時間帯情報において前記放出時間帯ごとに示される前記分担量に応じた電力が需要家施設グループごとに放出されるように、前記エネルギー源を制御する
電力管理システム。
【請求項4】
所定の状況に応じて、少なくとも1つの需要家施設グループに割り当てる放出時間帯を変更する時間帯変更部をさらに備える
請求項
3に記載の電力管理システム。
【請求項5】
前記エネルギー制御部による制御の対象となる複数の前記需要家施設グループを含む電力管理システムをさらに複数含む上位電力管理システムが構成され、
前記上位電力管理システムにおいて、複数の前記電力管理システム間での潮流が抑制されるように、複数の前記電力管理システム間での電力の授受が行われるように制御を行う上位エネルギー制御部をさらに備える
請求項1から
4のいずれか一項に記載の電力管理システム。
【請求項6】
コンピュータを、
供給されるエネルギーの蓄積が可能なエネルギー源を有する複数の需要家施設のそれぞれが、複数の需要家施設グループのうちのいずれか1つに属するように定められたうえで、
前記複数の需要家施設グループのそれぞれに対して、エネルギー源にエネルギーを蓄積させる蓄積時間帯を異ならせて割り当てた設定を示す蓄積時間帯情報に基づいて、前記エネルギー源が、対応の需要家施設グループに割り当てられた蓄積時間帯においてエネルギーを蓄積するように制御するエネルギー制御部
であって、
所定の単位制御期間を区分した蓄積時間帯ごとの総合蓄積容量比の予測結果と、前記複数の需要家施設グループ全体の前記エネルギー源による総合蓄積容量比率に対応させて需要家施設グループごとに定めた電力蓄積の優先度に基づく電力制御比を示す電力制御比情報を記憶する電力制御比情報記憶部から取得した前記電力制御比情報とに基づいて、許容逆潮流電力に対する超過逆潮流電力についての前記複数の需要家施設グループへの分担量を蓄積時間帯ごとに示す蓄積時間帯情報を生成し、
生成された前記蓄積時間帯情報において前記蓄積時間帯ごとに示される前記分担量に応じた電力が需要家施設グループごとに蓄積されるように、前記エネルギー源を制御するエネルギー制御部
として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
コンピュータを、
蓄積したエネルギーの放出が可能なエネルギー源を有する複数の需要家施設のそれぞれが、複数の需要家施設グループのうちのいずれか1つに属するように定められたうえで、
前記複数の需要家施設グループのそれぞれに対して、エネルギー源からエネルギーを放出させる放出時間帯を異ならせて割り当てた設定を示す放出時間帯情報に基づいて、前記エネルギー源が、対応の需要家施設グループに割り当てられた放出時間帯においてエネルギーを放出するように制御するエネルギー制御部
であって、
所定の単位制御期間を区分した放出時間帯ごとの総合蓄積容量比の予測結果と、前記複数の需要家施設グループ全体の前記エネルギー源による総合蓄積容量比率に対応させて需要家施設グループごとに定めた電力放出の優先度に基づく電力制御比を示す電力制御比情報を記憶する電力制御比情報記憶部から取得した前記電力制御比情報とに基づいて、許容順潮流電力に対する超過順潮流電力についての前記複数の需要家施設グループの分担量を前記放出時間帯ごとに示す放出時間帯情報を生成し、
生成された前記放出時間帯情報において前記放出時間帯ごとに示される前記分担量に応じた電力が需要家施設グループごとに放出されるように、前記エネルギー源を制御するエネルギー制御部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電力設備のコストの抑制などを考慮した場合、需要家としては、電力系統における潮流ができるだけ時間により偏ることなく平準化されることが好ましい。そこで、需要家が備える発電装置により発電される電力について、例えば需要家の負荷で消費できない余剰電力が生じた場合に、余剰電力を蓄電池に充電させることで、逆潮流が抑制されるようにした電力供給システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように発生された余剰電力を蓄電池に充電したとしても、必ずしも潮流が有効に平準化されない場合がある。
一例として発電装置が太陽電池である場合を例に挙げると、1日において太陽電池の発電電力は、或る時刻から徐々に増加していき、昼間の或る時刻において最大となり、この後、徐々に低下していく。
このため、例えば日照が強いような日においては太陽電池の発電電力が最大となるよりも前の時間において相当の余剰電力が発生して蓄電池への充電が行われて、蓄積容量(SOC)が一杯の状態となってしまう場合がある。このような場合、太陽電池の発電電力が最大となった状態では、蓄電池への充電を行うことができないため、余剰電力の全てが逆潮流されてしまう。即ち、太陽電池の発電電力が最大となる前の時間においては逆潮流量が抑制されるが、太陽電池の発電電力が最大となって余剰電力も最大となるときに、余剰電力の全てが逆潮流してしまうという状態が生じ、潮流が時間により大きく偏る。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、潮流の平準化が図られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、供給されるエネルギーの蓄積が可能なエネルギー源を有する複数の需要家施設のそれぞれが、複数の需要家施設グループのうちのいずれか1つに属するように定められたうえで、前記複数の需要家施設グループのそれぞれに対して、エネルギー源にエネルギーを蓄積させる蓄積時間帯を異ならせて割り当てた設定を示す蓄積時間帯情報に基づいて、前記エネルギー源が、対応の需要家施設グループに割り当てられた蓄積時間帯においてエネルギーを蓄積するように制御するエネルギー制御部を備える電力管理システムである。
【0007】
本発明の一態様は、蓄積したエネルギーの放出が可能なエネルギー源を有する複数の需要家施設のそれぞれが、複数の需要家施設グループのうちのいずれか1つに属するように定められたうえで、前記複数の需要家施設グループのそれぞれに対して、エネルギー源からエネルギーを放出させる放出時間帯を異ならせて割り当てた設定を示す放出時間帯情報に基づいて、前記エネルギー源が、対応の需要家施設グループに割り当てられた放出時間帯においてエネルギーを放出するように制御するエネルギー制御部を備える電力管理システムである。
【0008】
本発明の一態様は、コンピュータを、供給されるエネルギーの蓄積が可能なエネルギー源を有する複数の需要家施設のそれぞれが、複数の需要家施設グループのうちのいずれか1つに属するように定められたうえで、前記複数の需要家施設グループのそれぞれに対して、エネルギー源にエネルギーを蓄積させる蓄積時間帯を異ならせて割り当てた設定を示す蓄積時間帯情報に基づいて、前記エネルギー源が、対応の需要家施設グループに割り当てられた蓄積時間帯においてエネルギーを蓄積するように制御するエネルギー制御部として機能させるためのプログラムである。
【0009】
本発明の一態様は、コンピュータを、蓄積したエネルギーの放出が可能なエネルギー源を有する複数の需要家施設のそれぞれが、複数の需要家施設グループのうちのいずれか1つに属するように定められたうえで、前記複数の需要家施設グループのそれぞれに対して、エネルギー源からエネルギーを放出させる放出時間帯を異ならせて割り当てた設定を示す放出時間帯情報に基づいて、前記エネルギー源が、対応の需要家施設グループに割り当てられた放出時間帯においてエネルギーを放出するように制御するエネルギー制御部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、潮流の平準化が図られるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態における電力管理システムの構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態における需要家施設の構成例を示す図である。
【
図3】第1実施形態における蓄積時間帯の設定例と、蓄積時間帯に応じた充電制御の例を示す図である。
【
図4】第1実施形態における電力管理装置の構成例を示す図である。
【
図5】第1実施形態における蓄積時間帯情報の一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態における電力管理装置が逆潮流平準化制御に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態における放出時間帯の設定例と、放出時間帯に応じた放電制御の例を示す図である。
【
図8】第2実施形態における放出時間帯情報の一例を示す図である。
【
図9】第2実施形態における電力管理装置が順潮流平準化制御に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図10】第4実施形態における上位電力管理システムの構成例を示す図である。
【
図11】第4実施形態における上位電力管理装置の構成例を示す図である。
【
図12】第5実施形態における要家施設グループごとの電力制御比の設定例を示す図である。
【
図13】第5実施形態における蓄積電力制御比情報の一例を示す図である。
【
図14】第5実施形態における逆潮流平準化制御の概要について説明する図である。
【
図15】第5実施形態における蓄積時間帯情報の一例を示す図である。
【
図16】第5実施形態における電力管理装置が蓄積時間帯情報の生成に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図17】第5実施形態における電力管理装置が実行する逆潮流平準化制御の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図18】第6実施形態における電力管理装置が蓄積時間帯情報の生成に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図19】第6実施形態における電力管理装置が実行する逆潮流平準化制御の処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る電力管理システム10の構成例を示す図である。同図の電力管理システム10は、第1需要家施設グループGP1、第2需要家施設グループGP2、第3需要家施設グループGP3、第4需要家施設グループGP4、及び電力管理装置300を備える。
【0013】
第1需要家施設グループGP1、第2需要家施設グループGP2、第3需要家施設グループGP3、及び第4需要家施設グループGP4は、それぞれ、1以上の需要家施設が属するグループである。
以降の説明にあたり、第1需要家施設グループGP1、第2需要家施設グループGP2、第3需要家施設グループGP3、及び第4需要家施設グループGP4について特に区別しない場合には、需要家施設グループGPと記載する。
【0014】
本実施形態における電力管理システム10は、例えば電力線を経由して相互に電力の授受(融通)が可能なようにされた複数の需要家施設を含む。このように電力管理システム10において含まれる複数の需要家施設のそれぞれが、需要家施設グループGPのうちのいずれか1つに属するようにされる。
需要家施設グループGPは、一般送配電事業者側の商用電源ラインDL(電力系統)と接続されている。
【0015】
需要家施設のグループ分類は、例えば需要家施設の位置する地域に基づいて行われてよい。あるいは、需要家施設のグループ分類は、需要家施設が備えるエネルギー蓄積装置の蓄積可能容量に基づいて行われてよい。あるいは、需要家施設のグループ分類は、需要家施設が備える発電装置の発電電力に基づいて行われてよい。
なお、電力管理システム10における需要家施設グループGPの数については2以上であれば特に限定されない。
【0016】
電力管理装置300は、電力管理システム10の電力系統における潮流が平準化されるように制御を行う。本実施形態において、平準化とは、電力管理システム10における需要家施設グループGP側から電力系統に逆潮流される発電電力が、例えば1日による単位電力管理期間においてできるだけ均一に抑制されるようにすることをいう。
【0017】
図2は、需要家施設グループGPに属する1つの需要家施設100の構成例を示している。同図の需要家施設100は、電力測定部102、発電装置103、エネルギー蓄積装置104(エネルギー源の一例)、負荷105、及び施設内電力管理装置200を備える。
【0018】
電力測定部102は、需要電力と発電電力とを測定する。本実施形態において、需要電力とは配電網から順潮流させる電力をいう。発電電力とは配電網に逆潮流させる電力をいう。即ち、電力測定部102は、受給電力(潮流量)を測定する。受給電力は、需要電力と発電電力との差分である。
需要家施設100において、一般送配電事業者側の商用電源ラインDLから電力測定部102を経由して発電装置103、エネルギー蓄積装置104、負荷105等の結合点側に供給される電力が需要電力である。
一方、発電装置103やエネルギー蓄積装置104から出力され、発電装置103、エネルギー蓄積装置104、負荷105等の結合点側から電力測定部102を経由して商用電源ラインDLに供給される電力が発電電力である。
需要電力に対応する順潮流を正方向とした場合、順潮流に対応する需要電力に対して逆潮量に対応する発電電力が小さければ、受給電力は正の値として測定され、需要電力に対して発電電力が大きければ受給電力は負の値として測定される。
電力測定部102による測定結果は、施設内電力管理装置200が入力することができる。
【0019】
発電装置103は、発電を行う装置である。本実施形態における発電装置103は、太陽光を受けて発電を行う設備である。発電装置103は、太陽電池とPCS(Power Conditioning System)とを備える。発電装置103は、太陽光を受けて発電し、発電により得られた電力をPCSにより交流に変換して出力する。
発電装置103にて発電された電力は、負荷105の電源として供給することができる。また、発電装置103にて発電された電力(エネルギーの一例)は、エネルギー蓄積装置104に蓄積することができる。
また、発電装置103にて発電された電力は、電力測定部102を経由して商用電源ラインDLに出力することで逆潮流させることができる。
【0020】
エネルギー蓄積装置104は、供給されたエネルギーを蓄積する。また、エネルギー蓄積装置104は、蓄積されたエネルギーを放出する。本実施形態においては、エネルギー蓄積装置104が蓄電池によるものである場合を例に挙げる。
蓄電池としてのエネルギー蓄積装置104は、充電のために供給される電力を蓄積し、また、蓄積した電力を放出(放電)する。エネルギー蓄積装置104は、例えば蓄電池とインバータとを備える。蓄電池は電力(エネルギーの一例)の蓄積(充電)と蓄積された電力の出力(放電)を行う。インバータは、蓄電池に充電するための電力を交流から直流に変換し、蓄電池から放電により出力される電力を直流から交流に変換する。つまり、インバータは、エネルギー蓄積装置104が入出力する電力の双方向変換を行う。
【0021】
蓄電池としてのエネルギー蓄積装置104は、商用電源の電力を入力して充電することができる。また、エネルギー蓄積装置104は、発電装置103により発電された電力を入力して充電することができる。
また、エネルギー蓄積装置104は、蓄積された電力を放電(放出)することができる。エネルギー蓄積装置104から放出された電力は、負荷105の電源として供給することができる。また、エネルギー蓄積装置104から放出された電力は電力測定部102を経由して商用電源ラインDLに出力することで逆潮流させることができる。
また、需要家施設100は、他の需要家施設100と商用電源ラインDLの電源系統を経由して接続されている。このため、需要家施設100から逆潮量された電力は、電力系統を経由して、同じ需要家施設グループGPにおける他の需要家施設に供給することができる。あるいは、需要家施設100から逆潮量された電力は、電力系統を介して、電力管理システム10における他の需要家施設グループGPに供給することができる。
【0022】
負荷105は、需要家施設100において自己の動作のために電力を消費する所定の機器や設備などを一括して示したものである。
負荷105は、商用電源を入力して動作することができる。また、負荷105は、発電装置103により発電された電力を入力して動作することができる。また、負荷105は、エネルギー蓄積装置104から出力された電力を入力して動作することができる。
【0023】
施設内電力管理装置200は、需要家施設100における電気設備(発電装置103、エネルギー蓄積装置104、及び負荷105など)を制御する。
【0024】
上記構成による電力管理システム10においては、商用電源ラインDLの電力系統に逆潮流される電力を対象として平準化を図るための制御(逆潮流平準化制御)が行われる。
逆潮流平準化制御にあたり、電力管理システム10においては、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4について、逆潮流平準化制御に対応する優先順位を定める。この場合の優先順位は、例えば、需要家施設グループGP全体としてみた場合のエネルギー蓄積装置104としての蓄電池の総合的な蓄積可能容量の順位に従うようにされる。なお、ここでの蓄積可能容量は、例えばSOC(State Of Charge)が100%の状態で蓄電池に蓄積された電力量とされてよいが、例えばSOCが100%の状態における電力量からマージンとしての一定量を差し引いた値であってもよい。
【0025】
電力管理システム10においては、定められた優先順位に従って、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4ごとに蓄積時間帯を割り当てるように定める。蓄積時間帯は、例えば1日(24時間)における単位電力制御期間において、発電装置103により発電された電力に応じた余剰電力をエネルギー蓄積装置104に充電(蓄積)すべき時間帯である。具体的に、余剰電力は、発電装置103により発電された電力のうちで負荷105により消費されずに余剰した電力である。
電力管理システム10における電力管理装置300は、逆潮流平準化制御のもとで、各需要家施設グループGPにおけるエネルギー蓄積装置104について、定められた蓄積時間帯ごとに充電が行われるように制御(充電制御)を実行する。
【0026】
図3を参照して、蓄積時間帯の設定例と、蓄積時間帯に応じた充電制御の態様例について説明する。
ここで、優先順位については、高いほうから低いほうにかけて、第1需要家施設グループGP1、第2需要家施設グループGP2、第3需要家施設グループGP3、第4需要家施設グループGP4の順で定められた場合を例に挙げる。
同図においては、0:00~24:00の24時間による単位制御期間における、電力管理システム10全体としての実発電電力が破線L1によって示されている。実発電電力は、電力管理システム10において備えられる発電装置103自体が発電して得られる電力の総合である。
【0027】
同図にて示されるように、実発電電力は、例えば、1日の或る時刻から0以上となって増加を開始し、昼間の或る時刻においてピークとなり、ピークとなった後、或る時刻において0となるまで徐々に低下していくように変化する。そのうえで、余剰電力は、実発電電力がピークとなる時刻に近いほど増加する傾向にある。
【0028】
ここで、同図には、4つの蓄積時間帯Ta1~Ta4が示されている。以降の説明にあたり、蓄積時間帯Ta1~Ta4について特に区別しない場合には蓄積時間帯Taと記載する。
4つの蓄積時間帯Taは、それぞれ開始時刻から終了時刻までの期間が異なるように設定される。また、1つの蓄積時間帯Taは、少なくとも1つの他の蓄積時間帯Taと重複する一部の期間があるように設定されている。
なお、4つの蓄積時間帯Taのそれぞれの長さは、それぞれ同じであってもよいし、少なくとも1つが異なるようにされてもよい。
【0029】
これらの蓄積時間帯のうちで、余剰電力が多くなるのは蓄積時間帯Ta2、Ta3であり、余剰電力が少なくなるのは蓄積時間帯Ta1、Ta4である。そのうえで、この場合には、蓄積時間帯Ta2、Ta3、Ta1、Ta4の順で余剰電力が多くなるものとされる。
そこで、この場合の電力管理システム10においては、定められた優先順位に従って、第1需要家施設グループGP1には蓄積時間帯Ta2を割り当て、第2需要家施設グループGP2には蓄積時間帯Ta3を割り当て、第3需要家施設グループGP3には蓄積時間帯Ta1を割り当て、第4需要家施設グループGP4には蓄積時間帯Ta4を割り当てる。
【0030】
そのうえで、電力管理装置300は、充電制御として、蓄積時間帯Ta1においては第3需要家施設グループGP3に含まれるエネルギー蓄積装置104に充電を実行させる。
また、電力管理装置300は、充電制御として、蓄積時間帯Ta2においては第1需要家施設グループGP1に含まれるエネルギー蓄積装置104に充電を実行させる。
また、電力管理装置300は、充電制御として、蓄積時間帯Ta3においては第2需要家施設グループGP2に含まれるエネルギー蓄積装置104に充電を実行させる。
また、電力管理装置300は、充電制御として、蓄積時間帯Ta4においては第4需要家施設グループGP4に含まれるエネルギー蓄積装置104に充電を実行させる。
【0031】
上記のように充電制御が行われる結果、同図において線L11として示すように、蓄積時間帯Ta1において、第3需要家施設グループGP3に含まれるエネルギー蓄積装置104全体としてのSOCが0%から100%に上昇するように遷移する。
また、線L12として示すように、蓄積時間帯Ta2において、第1需要家施設グループGP1に含まれるエネルギー蓄積装置104全体としてのSOCが0%から100%に上昇するように遷移する。
また、線L13として示すように、蓄積時間帯Ta3において、第2需要家施設グループGP2に含まれるエネルギー蓄積装置104全体としてのSOCが0%から100%に上昇するように遷移する。
また、線L14として示すように、蓄積時間帯Ta4において、第3需要家施設グループGP3に含まれるエネルギー蓄積装置104全体としてのSOCが0%から100%に上昇するように遷移する。
【0032】
上記のように、各需要家施設グループGPにおけるエネルギー蓄積装置104が、それぞれ異なる蓄積時間帯Taにおいて充電を行うようにされる。この結果、電力管理システム10において、実発電電力のうちでエネルギー蓄積装置104に蓄積されずに残る電力は、同図の実線L2として示すように、実発電電力に対して削減される。
【0033】
例えば、単純に電力管理システム10における余剰電力の発生に応じて、電力管理システム10に含まれる需要家施設のエネルギー蓄積装置104の充電を一斉に開始させることも可能である。
この場合には、余剰電力がピークとなるより以前の時間帯から電力管理システム10における各エネルギー蓄積装置104にて充電が行われるので、例えば余剰電力が発生し始めた初期の時間帯にて逆潮流を抑制できる。
しかしながら、この場合には、余剰電力がピークとなるより以前のタイミングで相当数のエネルギー蓄積装置104が満充電の状態となる可能性がある。このような状態となった場合、余剰電力がほぼピークとなる時間帯においてエネルギー蓄積装置104により十分な充電をさせることができず、余剰電力の多くが逆潮流することになる。即ち、この場合には、余剰電力の少ない期間において逆潮流が抑制されるのに対して、余剰電力の多い期間において逆潮流する電力を十分に抑制できないため、時間により逆潮流が大きく偏ってしまい、逆潮流が平準化されない結果を生じる。
【0034】
これに対して、本実施形態の場合であれば、発電装置103の発電に伴って余剰電力が生じ得る期間において、時間的に分散させるようにしてエネルギー蓄積装置104による充電を行わせることができる。これにより、余剰電力が生じ得る期間において潮流する電力について、時間による偏りを抑制しながら低減することが可能となり、潮流の平準化を図ることが可能になる。
このように潮流に関して平準化が図られることで、例えば電力管理システムにおいて需要家施設100間を連結する電力系統に求められる耐電力性を抑えることが可能になる。これにより、電力管理システムにおける電力設備のコストを抑制することが可能になる。
【0035】
そのうえで、本実施形態においては、実発電電力が少ないことに伴って余剰電力の逆潮流も少ない傾向の時間帯では、蓄積可能容量の少ない需要家施設グループGPのエネルギー蓄積装置104により充電を行わせるようにしている。一方、実発電電力が多いことに伴って余剰電力の逆潮流も多くなる傾向の時間帯では、蓄積可能容量(蓄積可能なエネルギー量の一例)の多い需要家施設グループGPのエネルギー蓄積装置104により充電を行わせるようにしている。これにより、潮流の平準化をさらに推し進めることが可能になる。
【0036】
さらに、本実施形態においては、1つの蓄積時間帯が少なくとも1つの他の蓄積時間帯と一部重複するようにされている。これにより、例えば需要家施設グループGPごとに異なる蓄積時間帯を割り当てつつ、逆潮流する電力が多くなる時間帯において複数の需要家施設グループGPにより同時に充電を行うことで、逆潮流する電力を十分に抑制できることになる。この結果、潮流の平準化にあたり潮流量を有効に抑制することが可能になる。
【0037】
図4は、上記の逆潮流平準化制御に対応する電力管理装置300の構成例を示している。同図の電力管理装置300は、通信部301、制御部302、及び記憶部303を備える。
【0038】
通信部301は、需要家施設グループGPにおける需要家施設100の施設内電力管理装置200と通信を実行する。通信部301による通信は、有線であってもよいし無線であってもよい。
【0039】
制御部302は、電力管理装置300における各種の制御を実行する。制御部302としての機能は、電力管理装置300が備えるCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することによって実現される。
本実施形態の制御部302は、エネルギー制御部321を備える。エネルギー制御部321は、蓄積時間帯情報に基づいて、エネルギー蓄積装置104が、対応のグループに割り当てられた蓄積時間帯においてエネルギーを蓄積するように制御する。蓄積時間帯情報は、複数の需要家施設グループGPのそれぞれに対して、エネルギー蓄積装置104にエネルギーを蓄積させる蓄積時間帯を異ならせて割り当てた設定を示す情報である。
即ち、本実施形態のエネルギー制御部321は、逆潮流平準化制御のもとで
図3により説明した充電制御を実行する。
【0040】
なお、時間帯変更部322は、後述の第3実施形態に対応する機能部である。本実施形態において時間帯変更部322は、省略されてよい。
【0041】
記憶部303は、制御部302が利用する各種の情報を記憶する。同図の記憶部303は、グループ管理情報記憶部330及び蓄積時間帯情報記憶部331を備える。
【0042】
グループ管理情報記憶部330は、グループ管理情報を記憶する。グループ管理情報は、需要家施設グループGPごとに属する需要家施設100を示す情報である。グループ管理情報は、例えば需要家施設グループGPを示すグループ識別子ごとに、当該グループ識別子が示す需要家施設グループGPに属する需要家施設100の需要家施設識別子を対応付けた構造であればよい。
【0043】
蓄積時間帯情報記憶部331は蓄積時間帯情報を記憶する。蓄積時間帯情報は、電力管理システム10における需要家施設グループGPごとに割り当てられた蓄積時間帯を示す情報である。
図5は、蓄積時間帯情報の一例を示している。同図の蓄積時間帯情報は、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4のそれぞれに付与されたグループ識別子ごとに、蓄積時間帯を示す情報を対応付けた情報である。
蓄積時間帯情報におけるg0001、g0002、g0003、g0004のグループ識別子は、それぞれ、第1需要家施設グループGP1、第2需要家施設グループGP2、第3需要家施設グループGP3、第4需要家施設グループGP4を示す。また、グループ識別子ごとに対応付けられる蓄積時間帯は、例えば1日(24時間)に対応する単位制御期間における開始時刻と終了時刻とにより表される。
【0044】
なお、
図4において示される放出時間帯情報記憶部332は、後述の第2実施形態に対応する部位であることから、ここでの説明は省略する。本実施形態において放出時間帯情報記憶部332は省略されてよい。
また、蓄積電力制御比情報記憶部333は、後述の第5実施形態に対応し、放出電力制御比情報記憶部334は、後述の第6実施形態に対応することから、ここでの説明は省略する。本実施形態において、蓄積電力制御比情報記憶部333、及び放出電力制御比情報記憶部334は省略されてよい。
【0045】
図6のフローチャートを参照して、本実施形態の電力管理装置300が逆潮流平準化制御に関連して実行する処理手順例について説明する。同図の処理は、1単位制御期間において実行されるループ処理となる。
【0046】
ステップS101:電力管理装置300において、エネルギー制御部321は、蓄積時間帯情報記憶部331が記憶する蓄積時間帯情報に含まれる蓄積時間帯のうちで、開始時刻に至った蓄積時間帯が有るか否かについて判定する。
【0047】
ステップS102:開始時刻に至った蓄積時間帯が有ると判定された場合、エネルギー制御部321は、開始時刻に至った蓄積時間帯が対応付けられたグループ識別子が示す需要家施設グループGPに属するエネルギー蓄積装置104による充電を開始させる。
この際、エネルギー制御部321は、開始時刻に至った蓄積時間帯が対応付けられたグループ識別子が示す需要家施設グループGPに属する需要家施設100内の施設内電力管理装置200のそれぞれに対して充電開始要求を送信する。
施設内電力管理装置200は、充電開始要求の受信に応じて、自己が備えられる需要家施設100におけるエネルギー蓄積装置104が充電を開始するように制御する。
【0048】
ステップS103:ステップS102の処理の後、あるいはステップS101にて開始時刻に至った蓄積時間帯が無いと判定された場合、エネルギー制御部321は、蓄積時間帯情報に含まれる蓄積時間帯のうちで、終了時刻に至った蓄積時間帯が有るか否かについて判定する。
終了時刻に至った蓄積時間帯が無いと判定された場合には、ステップS101に処理が戻される。
【0049】
ステップS104:一方、終了時刻に至った蓄積時間帯が有ると判定された場合、エネルギー制御部321は、終了時刻に至った蓄積時間帯が対応付けられたグループ識別子が示す需要家施設グループGPに属するエネルギー蓄積装置104による充電を終了させる。
この際、エネルギー制御部321は、終了時刻に至った蓄積時間帯が対応付けられたグループ識別子が示す需要家施設グループGPに属する需要家施設100内の施設内電力管理装置200のそれぞれに対して、エネルギー蓄積装置104の充電終了要求を送信する。
施設内電力管理装置200は、充電終了要求の受信に応じて、自己が備えられる需要家施設100におけるエネルギー蓄積装置104が充電を終了するように制御する。
【0050】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態について説明する。先の第1実施形態においては、潮流の平準化として、逆潮流を対象として平準化を図るようにされていた。しかしながら、逆潮流と逆となる方向の順潮流(即ち、電力管理システム10に対して流入する商用電源(購入電力)の電力)を対象として平準化を図ることによっても、逆潮流を対象とする平準化の場合と同様に電力設備のコストの抑制を図ることができる。
そこで、本実施形態の電力管理システムとしては、順潮流を対象として平準化する順潮流平準化制御が行われるように構成される。
本実施形態の電力管理装置300は、記憶部303において、グループ管理情報記憶部330と、放出時間帯情報記憶部332とを備える。
【0051】
順潮流平準化制御にあたり、電力管理システム10においては、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4について、順潮流平準化に対応する優先順位を定める。この場合の優先順位としても、例えば、需要家施設グループGP全体としてみた場合のエネルギー蓄積装置104としての蓄電池の総合的な蓄積可能容量の順位に従うようにされてよい。
【0052】
電力管理システム10においては、定められた優先順位に従って、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4ごとに放出時間帯を割り当てるように定める。放出時間帯は、例えば1単位電力制御期間において、エネルギー蓄積装置104に蓄積された電力を放出すべき時間帯である。
電力管理システム10における電力管理装置300は、順潮流平準化制御のもとで、各需要家施設グループGPにおけるエネルギー蓄積装置104について、定められた放出時間帯ごとに放電が行われるように制御(放電制御)を実行する。
【0053】
図7を参照して、放出時間帯の設定例と、放出時間帯に応じた放電制御の態様例について説明する。
ここで、優先順位については、高いほうから低いほうにかけて、第1需要家施設グループGP1、第2需要家施設グループGP2、第3需要家施設グループGP3、第4需要家施設グループGP4の順で定められた場合を例に挙げる。
同図においては、1単位制御期間における、電力管理システム10全体における実需要電力が破線L21によって示されている。実需要電力は、電力管理システム10において備えられる負荷105自体により消費される電力の総合である。実需要電力のうちで発電装置103による発電電力やエネルギー蓄積装置104から放電される電力では賄えない電力が、商用電源ラインDLから順潮流する電力(需要電力)となる。
【0054】
同図においては、実需要電力について、例えば、1日の或る時刻から増加を開始した後、或る時刻においてピークとなり、その後は低下していくように変化する状態が示されている。
【0055】
ここで、同図には、4つの放出時間帯Tb1~Tb4が示されている。以降の説明にあたり、放出時間帯Tb1~Tb4について特に区別しない場合には放出時間帯Tbと記載する。
4つの放出時間帯Tbは、それぞれ開始時刻から終了時刻までの期間が異なるように設定される。また、1つの放出時間帯Tbは、少なくとも1つの他の放出時間帯Tbと重複する一部の期間があるように設定されている。
なお、4つの放出時間帯Tbのそれぞれの長さは、それぞれ同じであってもよいし、少なくとも1つが異なるようにされてもよい。
【0056】
これらの放出時間帯のうちで、需要電力が多くなるのは放出時間帯Tb2、Tb3であり、余剰電力が少なくなるのは放出時間帯Tb1、Tb4である。そのうえで、この場合には、放出時間帯Tb2、Tb3、Tb1、Tb4の順で需要電力が多くなるものとされる。
そこで、この場合の電力管理システム10においては、定められた優先順位に従って、第1需要家施設グループGP1には放出時間帯Tb2を割り当て、第2需要家施設グループGP2には放出時間帯Tb3を割り当て、第3需要家施設グループGP3には放出時間帯Tb1を割り当て、第4需要家施設グループGP4には放出時間帯Tb4を割り当てる。
【0057】
そのうえで、電力管理装置300は、放電制御として、放出時間帯Tb1においては第3需要家施設グループGP3に含まれるエネルギー蓄積装置104に放電(電力の放出)を実行させる。
また、電力管理装置300は、放電制御として、放出時間帯Tb2においては第1需要家施設グループGP1に含まれるエネルギー蓄積装置104に放電を実行させる。
また、電力管理装置300は、放電制御として、放出時間帯Tb3においては第2需要家施設グループGP2に含まれるエネルギー蓄積装置104に放電を実行させる。
また、電力管理装置300は、放電制御として、放出時間帯Tb4においては第4需要家施設グループGP4に含まれるエネルギー蓄積装置104に放電を実行させる。
【0058】
上記のように放電制御が行われる結果、同図において線L31として示すように、放出時間帯Tb1において、第3需要家施設グループGP3に含まれるエネルギー蓄積装置104全体としてのSOCが100%から0%に下降するように遷移している。
また、線L32として示すように、放出時間帯Tb2において、第1需要家施設グループGP1に含まれるエネルギー蓄積装置104全体としてのSOCが100%から0%に下降するように遷移している。
また、線L33として示すように、放出時間帯Tb3において、第2需要家施設グループGP2に含まれるエネルギー蓄積装置104全体としてのSOCが100%から0%に下降するように遷移している。
また、線L34として示すように、放出時間帯Tb4において、第3需要家施設グループGP3に含まれるエネルギー蓄積装置104全体としてのSOCが100%から0%に下降するように遷移している。
【0059】
上記のように、各需要家施設グループGPにおけるエネルギー蓄積装置104が、それぞれ異なる放出時間帯Tbにおいて放電を行うようにされる。この結果、電力管理システム10において、実需要電力のうちでエネルギー蓄積装置104から放電された電力以外で賄われるべき電力としては、同図の実線L22として示すように、実需要電力に対して削減される。
【0060】
例えば、単純に電力管理システム10における需要電力の発生に応じて、電力管理システム10に含まれる需要家施設のエネルギー蓄積装置104の放電を一斉に開始させた場合には、以下のような不具合が生じる可能性がある。
即ち、この場合には、需要電力がピークとなるより以前の時間帯から電力管理システム10における各エネルギー蓄積装置104にて放電が行われるので、例えば余剰電力が発生し始めた初期の時間帯にて順潮流を抑制できる。
しかしながら、この場合には、需要電力がピークとなるより以前のタイミングで相当数のエネルギー蓄積装置104が空の状態となる可能性がある。このような状態となった場合、余剰電力がほぼピークとなる時間帯においてエネルギー蓄積装置104により十分に放電をさせることができず、多くの順潮流が生じることになる。即ち、この場合には、需要電力の少ない期間において順潮流が抑制されるのに対して、需要電力の多い期間において順潮流する電力を十分に抑制できないため、順潮流が平準化されない結果を生じる。
【0061】
これに対して、本実施形態においては、実需要電力が生じている期間において、時間的に分散させるようにしてエネルギー蓄積装置104による放電を行わせることができる。これにより、実需要電力が生じている期間において順潮流する電力について、時間における偏りを抑制しながら低減することが可能となり、順潮流を対象とする潮流の平準化を図ることが可能になる。
【0062】
そのうえで、本実施形態においては、実需要電力が少ないことに伴って順潮流も少ない傾向の時間帯では、蓄積容量(放出可能なエネルギー量の一例)の少ない需要家施設グループGPのエネルギー蓄積装置104により放電を行わせるようにしている。一方、実需要電力が多いことに伴って順潮流も多くなる傾向の時間帯では、蓄積容量の多い需要家施設グループGPのエネルギー蓄積装置104により放電を行わせるようにしている。これにより、順潮流を対象とする潮流の平準化をさらに推し進めることが可能になる。
【0063】
さらに、本実施形態においては、1つの放出時間帯の一部が少なくとも1つの他の放出時間帯と重複するようにされている。これにより、例えば需要家施設グループGPごとに異なる放出時間帯を割り当てつつ、順潮流する電力が多くなる時間帯において複数の需要家施設グループGPにより同時に放電を行うことで、順潮流する電力を十分に抑制できることになる。この結果、潮流の平準化にあたり潮流量を有効に抑制することが可能になる。
【0064】
このような順潮流平準化制御に対応する電力管理装置300は、記憶部303において放出時間帯情報記憶部332(
図4)を備える。放出時間帯情報記憶部332が記憶する放出時間帯情報は、電力管理システム10における需要家施設グループGPごとに割り当てられた放出時間帯を示す情報である。
なお、本実施形態のもとでは蓄積時間帯情報記憶部331については省略されてよい。
【0065】
図8は、放出時間帯情報の一例を示している。同図の放出時間帯情報は、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4のそれぞれに付与されたグループ識別子ごとに、放出時間帯を示す情報を対応付けた情報である。
放出時間帯情報におけるg0001、g0002、g0003、g0004のグループ識別子は、それぞれ、第1需要家施設グループGP1、第2需要家施設グループGP2、第3需要家施設グループGP3、第4需要家施設グループGP4を示す。また、グループにしごとに対応付けられる放出時間帯は、例えば1日(24時間)に対応する単位制御期間における開始時刻と終了時刻とにより表される。
【0066】
図9のフローチャートを参照して、本実施形態の電力管理装置300が順潮流平準化制御に関連して実行する処理手順例について説明する。同図の処理は、1単位制御期間において実行されるループ処理となる。
【0067】
ステップS201:電力管理装置300において、エネルギー制御部321は、放出時間帯情報記憶部332が記憶する放出時間帯情報に含まれる放出時間帯のうちで、開始時刻に至った放出時間帯が有るか否かについて判定する。
【0068】
ステップS202:開始時刻に至った放出時間帯が有ると判定された場合、エネルギー制御部321は、開始時刻に至った放出時間帯が対応付けられたグループ識別子が示す需要家施設グループGPに属するエネルギー蓄積装置104による放電を開始させる。
この際、エネルギー制御部321は、開始時刻に至った放出時間帯が対応付けられたグループ識別子が示す需要家施設グループGPに属する需要家施設100内の施設内電力管理装置200のそれぞれに対して放電開始要求を送信する。
施設内電力管理装置200は、放電開始要求の受信に応じて、自己が備えられる需要家施設100におけるエネルギー蓄積装置104が放電を開始するように制御する。
【0069】
ステップS203:ステップS202の処理の後、あるいはステップS201にて開始時刻に至った放出時間帯が無いと判定された場合、エネルギー制御部321は、放出時間帯情報に含まれる放出時間帯のうちで、終了時刻に至った放出時間帯が有るか否かについて判定する。
終了時刻に至った放出時間帯が無いと判定された場合には、ステップS201に処理が戻される。
【0070】
ステップS204:一方、終了時刻に至った放出時間帯が有ると判定された場合、エネルギー制御部321は、終了時刻に至った放出時間帯が対応付けられたグループ識別子が示す需要家施設グループGPに属するエネルギー蓄積装置104による放電を終了させる。
この際、エネルギー制御部321は、終了時刻に至った放出時間帯が対応付けられたグループ識別子が示す需要家施設グループGPに属する需要家施設100内の施設内電力管理装置200のそれぞれに対して、エネルギー蓄積装置104の放電終了要求を送信する。
施設内電力管理装置200は、放電終了要求の受信に応じて、自己が備えられる需要家施設100におけるエネルギー蓄積装置104が放電を終了するように制御する。
【0071】
なお、第1実施形態による逆潮流平準化制御と、第2実施形態による順潮流平準化制御とが、同じ1単位制御期間において時分割的に、あるいは同時並行で行われるようにしてよい。同時並行で行う場合、或る一群の需要家施設グループGPについては逆潮流平準化制御を行い、他の一群の需要家施設グループGPについては順潮流平準化制御を行うようにしてよい。
【0072】
<第3実施形態>
続いて、第3実施形態について説明する。先の第1実施形態及び第2実施形態において、需要家施設グループGPごとに割り当てる蓄積時間帯または放出時間帯は予め固定的に設定されたものであった。
本実施形態において、需要家施設グループGPごとに割り当てる蓄積時間帯または放出時間帯は、所定の状況に応じて変更される。
以降の説明にあたり、蓄積時間帯または放出時間帯について特に区別しない場合には、エネルギー調整時間帯と記載する。
【0073】
本実施形態の電力管理装置300は、エネルギー調整時間帯を変更することに応じて、制御部302において時間帯変更部322をさらに備える(
図4)。時間帯変更部322は、所定の状況に応じて、少なくとも1つのグループに割り当てるエネルギー調整時間帯を変更する。
本実施形態におけるエネルギー調整時間帯の変更は、例えばエネルギー調整時間帯の長さについては変更しないようにしたうえで、開始時刻及び終了時刻を変更することを含む。また、エネルギー調整時間帯の長さを変更することを含む。
【0074】
時間帯変更部322は、例えば、天候の状況に応じてエネルギー調整時間帯を変更することができる。天候に応じて1単位制御期間における潮流の変動パターンが異なる。そこで、天候に応じた潮流の変動パターンに応じて、1単位制御期間における潮流の偏りが適切に抑制されるように、エネルギー調整時間帯を変更してよい。
また、時間帯変更部322は、デマンドレスポンスの発動に応じて潮流平準化制御に優先させて電力管理システム10における電力を外部に出力する必要のある場合には、需要家施設グループGPごとの放出時間帯を同じ時間帯に集中させるように変更してもよい。
【0075】
時間帯変更部322は、エネルギー調整時間帯の変更にあたって、蓄積時間帯情報記憶部331に記憶される蓄積時間帯情報や、放出時間帯情報記憶部332に記憶される放出時間帯情報をデフォルトとしたうえで、デフォルトに対して変更を与えるようにしてもよい。
あるいは、時間帯変更部322は、所定の状況に応じて、エネルギー調整時間帯を都度設定するようにしてよい。この場合、蓄積時間帯情報記憶部331、放出時間帯情報記憶部332は省略されてもよい。
【0076】
<第4実施形態>
続いて、第4実施形態について説明する。本実施形態においては、複数の電力管理システム10を統合して管理する上位電力管理システムが構成される。
図10は、本実施形態の上位電力管理システム20の構成例を示している。同図の上位電力管理システム20は、複数(N個)の電力管理システム10-1~10-Nを含む。以降の説明において、電力管理システム10-1~10-Nについて特に区別しない場合には、電力管理システム10と記載する。
同図における電力管理システム10のそれぞれは、
図1と同様の構成であってよい。なお、同図において、電力管理システム10における複数の需要家施設グループGPについては、需要家施設グループ群500として示されている。
【0077】
上位電力管理システム20においては、上位電力管理装置600が備えられる。上位電力管理装置600は、電力管理システム10のそれぞれに備えられる電力管理装置300と通信可能に接続される。
【0078】
図11は、上位電力管理装置600の構成例を示している。同図の上位電力管理装置600は、通信部601、及び制御部602を備える。
【0079】
通信部601は、電力管理システム10のそれぞれに備えられる電力管理装置300と通信を行う。
【0080】
制御部602は、上位電力管理装置600における各種制御を実行する。制御部602としての機能は、上位電力管理装置600において備えられるCPUがプログラムを実行することにより実現される。
制御部602は、上位エネルギー制御部621を備える。上位エネルギー制御部621は、上位電力管理システム20において、複数の電力管理システム10間での潮流が抑制されるように、複数の電力管理システム10間での電力の授受が行われるように制御を行う。
【0081】
前述のように、電力管理システム10のそれぞれは、平準化制御(逆潮流平準化制御あるいは順潮流平準化制御)によって自己に対応する潮流についての平準化を行っている。しかしながら、平準化制御の結果として表れる電力管理システム10ごとの潮流量にはばらつき(偏差)が生じる。このため、複数の電力管理システム10全体としてみた場合には、総合的な潮流量が逆潮流あるいは順潮流に偏るような状態となる場合がある。
例えば、複数の電力管理システム10を包含するような電力管理システムが形成されている場合、このような複数の電力管理システム10間での潮流量の偏差についても解消されることが好ましい場合がある。
【0082】
そこで、本実施形態の上位電力管理装置600は、上位電力管理システム20に含まれる電力管理システム10間での潮流量の偏差を以下のように抑制する。
【0083】
上位電力管理装置600における上位エネルギー制御部621は、まず、電力管理システム10ごとの潮流量を取得する。このために、上位電力管理装置600は、例えば電力管理システム10のそれぞれにおける電力管理装置300に対して、潮流量要求を送信する。
潮流量要求を受信した電力管理装置300は、自己を含む電力管理システム10における各需要家施設グループGPにおける需要家施設100ごとの施設内電力管理装置200に対して、それぞれに対して潮流量通知要求を送信する。
潮流量通知要求を受信した施設内電力管理装置200は、自己を含む需要家施設100における電力測定部102により測定される受給電力を取得し、取得された受給電力を、電力管理装置300に送信する。
電力管理装置300は、施設内電力管理装置200のそれぞれから受信した受給電力を合算し、合算された受給電力を、電力管理システム10の潮流量として上位電力管理装置600に送信する。
上位電力管理装置600は、電力管理装置300のそれぞれから送信された潮流量を受信する。これにより、上位エネルギー制御部621は、電力管理装置300ごとの潮流量を取得することができる。
【0084】
上位エネルギー制御部621は、取得された電力管理装置300のそれぞれの潮流量に基づいて、電力管理システム10のそれぞれにおいて得られるべき目標潮流量を決定する。上位エネルギー制御部621は、決定された目標潮流量となるように電力管理システム10ごとに定めた潮流量の調整量(調整潮流量)を、電力管理装置300のそれぞれに送信する。
調整潮流量を受信した電力管理装置300は、受信された調整潮流量が示す調整量により潮流量が調整されるように、需要家施設グループGPごとにおける需要家施設100のエネルギー蓄積装置104の充電または放電を制御する。この際、電力管理装置300は、エネルギー蓄積装置104の充電または放電を、開始あるいは停止させてもよいし、エネルギー蓄積装置104の充電電力または放電電力を変化させてもよい。
このようにして、電力管理システム10のそれぞれにおいて潮流量が調整される結果、電力管理システム10間での潮流量の偏差が抑制される。
【0085】
なお、本実施形態の変形例として、
図10の上位電力管理システム20を複数備える、さらに上位の階層の電力管理システムを構成し、最上位の階層の電力管理システムにより、上位電力管理システム20間での潮流量の偏差が抑制されるように構成してもよい。
また、さらに多くの階層数による電力管理システムを構成し、各階層下での電力管理システムにおいて潮流量の偏差が抑制されるように構成されてもよい。
【0086】
<第5実施形態>
続いて、第5実施形態について説明する。本実施形態の電力管理システム10は、以下の構成により逆潮流平準化制御を行う。
本実施形態の電力管理装置300は、記憶部303において、グループ管理情報記憶部330と、蓄積時間帯情報記憶部331と、蓄積電力制御比情報記憶部333とを備える。なお、本実施形態における蓄積時間帯情報記憶部331が記憶する蓄積時間帯情報は、後述するように、
図5とは異なる。
【0087】
本実施形態においては、需要家施設グループGPごとに定めた電力蓄積(充電)の優先度に基づく比である電力制御比(蓄積電力制御比)が、総合SOC(総合蓄積容量比の一例)に対応させるようにして、予め需要家施設グループGPごとに設定される。
蓄積電力制御比は、電力管理システム10における逆潮流電力平準化制御にあたり、需要家施設グループGPのそれぞれが分担する充電電力の割合を示す。
また、総合SOCは、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4を含む電力管理システム10において備えられるエネルギー蓄積装置104の全てを総合した場合の、蓄積可能容量に対する蓄積容量である。このような総合SOCは、例えば第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4において備えられる全てのエネルギー蓄積装置104ごとの蓄積容量を総合した総合蓄積容量を、同じ全てのエネルギー蓄積装置104ごとの蓄積可能容量を総合した総合蓄積可能容量で除算して得られる。
【0088】
図12(A)~
図12(D)は、それぞれ、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4ごとの蓄積電力制御比の設定例を示している。
図12(A)~
図12(D)の各図においては、0%~100%の範囲の総合SOCについて、例えば0%以上~25%未満、25%以上~50%未満、50%以上~75%未満、75%以上~100%の4つのSOC範囲に区分した例が示されている。以降の説明にあたり、0%以上~25%未満、25%以上~50%未満、50%以上~75%未満、75%以上~100%の各SOC範囲を、それぞれ、第1SOC範囲、第2SOC範囲、第3SOC範囲、及び第4SOC範囲と記載する。
【0089】
第1SOC範囲(総合SOCが0%以上~25%未満)においては、第1需要家施設グループGP1について最も高い所定の優先度が設定され、次いで、第2需要家施設グループGP2、第3需要家施設グループGP3の順で低くなるようにして、それぞれ所定の優先度が設定される。この場合、第4需要家施設グループGP4については最も低い優先度として「0」が設定される。
このような優先度の設定に応じて、第1SOC範囲における蓄積電力制御比としては、第1需要家施設グループGP1が「a」で最も高く(
図12(A))、第2需要家施設グループGP2が「b」で2番目に高く(
図12(B)、第3需要家施設グループGP3が「c」で3番目に高く(
図12(C))、第4需要家施設グループGP4は「d」(この場合、d=0である)で最も低く設定される(
図12(D))。
【0090】
また、第2SOC範囲(総合SOCが25%以上~50%未満)においては、第2需要家施設グループGP2について最も高い所定の優先度が設定され(
図12(B))、第1需要家施設グループGP1と第3需要家施設グループGP3とについて同じ2番目としての所定の優先度が設定され(
図12(A)、
図12(C))、第4需要家施設グループGP4について最も低い所定の優先度が設定される。
このような優先度の設定に応じて、第2SOC範囲における蓄積電力制御比としては、第2需要家施設グループGP2が「a」で最も高く、第1需要家施設グループGP1と第3需要家施設グループGP3が同じ「b」で2番目に高く、第4需要家施設グループGP4は「c」で最も低く設定される(
図12(D))。
【0091】
また、第3SOC範囲(総合SOCが50%以上~75%未満)においては、第3需要家施設グループGP3について最も高い所定の優先度が設定され、第2需要家施設グループGP2と第4需要家施設グループGP4とについて同じ2番目としての所定の優先度が設定され、第1需要家施設グループGP1について最も低い所定の優先度が設定される。
このような優先度の設定に応じて、第3SOC範囲における蓄積電力制御比としては、第3需要家施設グループGP3が「a」で最も高く(
図12(C))、第2需要家施設グループGP2と第4需要家施設グループGP4が同じ「b」で2番目に高く(
図12(B)、
図12(D))、第1需要家施設グループGP1は「c」で最も低く設定される(
図12(A))。
【0092】
また、第4SOC範囲(総合SOCが75%以上~100%未満)においては、第4需要家施設グループGP4について最も高い所定の優先度が設定され、次いで、第3需要家施設グループGP3、第2需要家施設グループGP2の順で低くなるようにして、それぞれ所定の優先度が設定される。この場合、第1需要家施設グループGP1については最も低い優先度として「0」が設定される。
このような優先度の設定に応じて、(総合SOCが50%以上~75%未満)における蓄積電力制御比としては、第4需要家施設グループGP4が「a」で最も高く(
図12(D))、第3需要家施設グループGP3が「b」で2番目に高く(
図12(C))、第2需要家施設グループGP2が「b」で3番目に高く(
図12(B))、第1需要家施設グループGP1は「d」(d=0)で最も低く設定される(
図12(A))。
【0093】
本実施形態において、電力管理装置300は、需要家施設グループGPへの需要家施設100のグループ分類を以下のようにして行ってよい。
まず、電力管理装置300は、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4ごとに、
図12のように第1SOC範囲~第4SOC範囲に応じた充電についての優先度と、当該優先度に基づく蓄積電力制御比とを予め規定する。
【0094】
そのうえで、電力管理装置300は、需要家施設100ごとに過去の一定期間におけるSOCを取得する。
電力管理装置300は、取得したSOCに基づいて、例えば需要家施設100ごとにSOC傾向を判定する。SOC傾向は、過去の一定期間に対応するSOCの高さについての傾向である。
このようなSOC傾向は、例えば過去の一定期間におけるSOCの平均値を算出することにより判定されてよい。あるいは、SOC傾向は、過去の一定期間におけるSOCの分布に基づいて判定されてよい。電力管理装置300は、例えばSOC傾向の範囲について、所定の境界値に基づいて、低いほうから高いほうにかけて、第1SOC傾向範囲~第4SOC傾向範囲の4段階に分類する。
【0095】
そのうえで、電力管理装置300は、判定された需要家施設100ごとのSOC傾向範囲に基づき、需要家施設100のそれぞれが、第1SOC傾向範囲~第4SOC傾向範囲のいずれに該当するのかを判定する。
電力管理装置300は、第1SOC傾範囲向に該当すると判定された需要家施設100を、第1需要家施設グループGP1に属するものとして分類する。また、電力管理装置300は、第2SOC傾向範囲に該当すると判定された需要家施設100を、第2需要家施設グループGP2に属するものとして分類する。また、電力管理装置300は、第3SOC傾向範囲に該当すると判定された需要家施設100を、第3需要家施設グループGP3に属するものとして分類する。また、電力管理装置300は、第4SOC傾向範囲に該当すると判定された需要家施設100を、第4需要家施設グループGP4に属するものとして分類する。
電力管理装置300は、上記のような分類の結果が示されるグループ管理情報を、グループ管理情報記憶部330に記憶させる。
【0096】
なお、本実施形態における需要家施設グループGPへの需要家施設の分類の手法は、上記の例に限定されない。例えば、需要電力(消費電力)の大きさに応じて、需要家施設100を、4つのグループに分類し、需要電力の多いグループから少ないグループにかけて、順に、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4にそれぞれ割り当てるようにして分類を行ってもよい。
また、SOCと需要電力とを併用して、需要家施設グループGPごとへの需要家施設100の分類を行うようにしてもよい。
また、分類の結果、需要家施設グループGPごとの需要家施設100の数について偏りが生じた場合、電力管理装置300は、需要家施設グループGPごとの需要家施設100の数が適切となるように調整を行ってよい。
【0097】
電力管理装置300は、
図12に示した需要家施設グループGPごとの蓄積電力制御比の設定内容を、蓄積電力制御比情報として蓄積電力制御比情報記憶部333に記憶させる。
図13は、蓄積電力制御比情報の一例を示している。同図の蓄積電力制御比情報は、グループ識別子ごとに電力制御比設定情報を対応付けた構造である。1つのグループ識別子に対応する電力制御比設定情報は、第1SOC範囲~第4SOC範囲ごとに蓄積電力制御比を対応付けた構造である。
【0098】
次に、
図14を参照して、本実施形態の電力管理装置300が実行する逆潮流平準化制御の概要について説明する。
同図では、横軸において、1の単位制御期間における6時台(6:00~7:00)から16時台(16:00~17:00)までを1時間ごとに区分した11の時間帯が示されている。また、同図では、縦軸において総合逆潮流電力が示されている。総合逆潮流電力は、電力管理システム10から商用電源ラインDLに供給される電力(発電電力)の総合である。
総合逆潮流電力は、例えば商用電源ラインDLから電力管理システム10への順潮流電力がないものとした条件では、電力管理システム10全体が備える発電装置103により発電された電力(総合発電電力)のうちで、電力管理システム10全体が備える負荷105により消費されずに余剰した電力が相当する。
【0099】
また、同図の蓄積時間帯ごとの総合逆潮流電力は、予測結果を示している。つまり、電力管理装置300は、例えば、単位制御期間(例えば0時~24時までの24時間)における総合逆潮流電力を予測する。このため、電力管理装置300は、過去の電力管理実績を利用して、例えば翌日の単位制御期間における総合逆潮流電力を予測する。
また、本実施形態の電力管理装置300は、総合逆潮流電力の予測にあたり、例えば0時から48時間先までの総合逆潮流電力についての予測結果と、12時から48時間先までの総合逆潮流電力についての予測結果との2つの予測結果を利用して、単位制御期間における総合逆潮流電力を予測してよい。このように2つの予測結果を用いることで、例えば天候の変動などにも対応して予測結果の向上を図ることができる。
【0100】
電力管理システム10においては、許容される総合逆潮流電力の上限(許容逆潮流電力)が定められている。同図においては、破線L41により許容逆潮流電力が示されている。許容逆潮流電力を越える総合逆潮流電力が超過逆潮流電力となる。
同図の例では、8時台~14時台の期間における7つの時間帯のそれぞれにおいて許容逆潮流電力が発生するとの予測結果が示されている。つまり、電力管理装置300は、総合逆潮流電力を予測することにより、超過逆潮流電力を予測する。
【0101】
電力管理装置300は、上記のように超過逆潮流電力の発生が予測された各時間帯を制御対象として、逆潮流平準化制御を行う。本実施形態では、逆潮流平準化制御の対象となる8時台~14時台の期間における7つの時間帯を蓄積時間帯として扱う。
逆潮流平準化制御にあたり、電力管理装置300は、蓄積時間帯ごとの総合SOCを予測する。電力管理装置300は、予測された蓄積時間帯ごとの総合SOCについて、第1SOC範囲~第4SOC範囲のうちのいずれのSOC範囲に該当するのかを判定する。電力管理装置300は、蓄積電力制御比情報を参照して、蓄積時間帯ごとに、判定されたSOC範囲に対応付けられている需要家施設グループGPごとの蓄積電力制御比を取得する。電力管理装置300は、取得した蓄積電力制御比を利用して、蓄積時間帯ごとにおいて、超過逆潮流電力を解消するために、需要家施設グループGPのそれぞれが分担する充電電力(分担量)を算出する。
一例として、或る蓄積時間帯における総合SOCが第2SOC範囲に該当すると判定された場合、電力管理装置300は、蓄積電力制御比情報において、需要家施設グループGPごとに、第2SOC範囲に対応付けられた蓄積電力制御比を取得する。この場合、
図13によれば、この場合の電力管理装置300は、第1需要家施設グループGP1に対応して蓄積電力制御比b、第2需要家施設グループGP2に対応して蓄積電力制御比a、第3需要家施設グループGP3に対応して蓄積電力制御比b、第4需要家施設グループGP4に対応して蓄積電力制御比cを、それぞれ取得する。
電力管理装置300は、上記のように取得した蓄積電力制御比を利用して、需要家施設グループGPのそれぞれが分担する充電電力を算出する。具体的に、例えば上記の例の場合、電力管理装置300は、第1需要家施設グループGP1の充電電力Pch1について、超過逆潮流電力をPexとして、以下の式1により算出することができる。
Pch1=Pex×b/(b+a+b+c)・・・式1
【0102】
電力管理装置300は、上記のように蓄積時間帯ごとに需要家施設グループGPごとの充電電力を算出すると、充電電力の算出結果が反映された蓄積時間帯情報を生成し、生成された蓄積時間帯情報を蓄積時間帯情報記憶部331に記憶させる。
図15は、本実施形態の蓄積時間帯情報の一例を示している。同図の蓄積時間帯情報は、蓄積時間帯ごとに充電電力情報を対応付けた情報である。充電電力情報は、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4ごとに算出された充電電力を示す情報である。具体的に、同図の充電電力情報においては、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4のグループ識別子ごとに、充電電力が対応付けられている。
【0103】
電力管理装置300は、電力制御として、蓄積時間帯情報により示される蓄積時間帯ごとに、需要家施設グループGPのそれぞれが、同じ蓄積時間帯情報により示される充電電力をエネルギー蓄積装置104に充電(蓄積)する動作が得られるように制御を実行する。
このような制御が行われることで、超過逆潮流電力は、需要家施設グループGPのそれぞれに分散されるようにして充電されることになる。この結果、
図14に示されるように、実際の総合逆潮流電力としては、許容逆潮流電力を超えないように制御される。つまり、逆潮流電力の平準化が図られる。
また、本実施形態においては、需要家施設グループGPごとに定められた優先度に基づいて、総合SOCに応じた需要家施設グループGPごとの充電電力が設定される。これにより、例えば、エネルギー蓄積装置104の電力蓄積状態等に応じて、需要家施設グループGPごとに適切な充電電力を割り当てながら、逆潮流平準化制御を効率的に行うことが可能となる。
【0104】
図16のフローチャートを参照して、本実施形態の電力管理装置300が蓄積時間帯情報の生成に関連して実行する処理手順例について説明する。
ステップS301:電力管理装置300において、エネルギー制御部321は、予測対象の単位制御期間において発生する超過逆潮流電力を予測する。超過逆潮流電力の予測に伴い、単位制御期間において超過逆潮流電力が発生する1時間単位の時間帯がそれぞれ蓄積時間帯として特定される。
ステップS302:また、エネルギー制御部321は、超過逆潮流電力が発生する時間帯(即ち、蓄積時間帯)ごとの総合SOCを予測する。
ステップS303:エネルギー制御部321は、蓄積時間帯の順番を示す変数nに初期値として「1」を代入する。
【0105】
ステップS304:エネルギー制御部321は、n番目の蓄積時間帯の総合SOCに対応する需要家施設グループGPごとの蓄積電力制御比を取得する。このため、エネルギー制御部321は、ステップS302にて予測されたn番目の蓄積時間帯の総合SOCが該当するSOC範囲を判定し、判定されたSOC範囲に対応付けられた需要家施設グループGPごとの蓄積電力制御比を、蓄積電力制御比情報記憶部333から取得する。
【0106】
ステップS305:エネルギー制御部321は、ステップS304により取得された蓄積電力制御比と、ステップS301により予測されたn番目の蓄積時間帯の超過逆潮流電力とを利用して、需要家施設グループGPごとの充電電力(分担量)を算出する。
【0107】
ステップS306:ステップS305の処理の後、エネルギー制御部321は、変数nをインクリメントする。
ステップS307:エネルギー制御部321は、現在の変数nが、ステップS301の処理にて特定された蓄積時間帯数よりも大きいか否かについて判定する。変数nが蓄積時間帯数以下である場合、まだ、需要家施設グループGPごとの充電電力が算出されていない蓄積時間帯が残っている。そこで、この場合のエネルギー制御部321は、ステップS304に処理を戻す。
【0108】
ステップS308:一方、ステップS307にて、変数nが蓄積時間帯数よりも大きいと判定された場合には、全ての蓄積時間帯に対応して需要家施設グループGPごとの充電電力を算出したことになる。
そこで、この場合のエネルギー制御部321は、蓄積時間帯ごとに需要家施設グループGPごとの充電電力の算出結果を示す蓄積時間帯情報を生成する。
ステップS309:エネルギー制御部321は、ステップS308にて生成された蓄積時間帯情報を蓄積時間帯情報記憶部331に記憶させる。
なお、エネルギー制御部321は、例えば電力管理システム10における単位制御期間の運転計画の一部として、同図の処理に示される蓄積時間帯情報の生成を行ってよい。
【0109】
次に、
図17のフローチャートを参照して、本実施形態の電力管理装置300が蓄積時間帯情報に基づいて実行する逆潮流平準化制御の処理手順例について説明する。
ステップS401:電力管理装置300において、エネルギー制御部321は、例えば現時刻と蓄積時間帯情報が示す蓄積時間帯の開始時刻とを比較して、1つの蓄積時間帯の開始タイミングに至るのを待機する。
ステップS402:蓄積時間帯の開始タイミングに至ったことが判定されると、エネルギー制御部321は、蓄積時間帯情報から、開始タイミングに至った蓄積時間帯に対応付けられた需要家施設グループGPごとの充電電力を取得する。
【0110】
ステップS403:エネルギー制御部321は、需要家施設グループGPごとに、取得された充電電力を充電する動作が得られるように制御する。
この際、エネルギー制御部321は、1つの需要家施設グループGPの充電電力に基づいて、当該需要家施設グループGPに備えられるエネルギー蓄積装置104のそれぞれが充電すべき装置単位の充電電力を決定する。装置単位の充電電力としては、例えば需要家施設グループGPが分担する充電電力を、需要家施設グループGPにおいて充電可能な状態にあるエネルギー蓄積装置104に均等に割り当てるようにしてよい。あるいは、需要家施設グループGPにおけるエネルギー蓄積装置104のSOCに応じて、エネルギー蓄積装置104ごとに異なるようにして装置単位の充電電力を決定してもよい。
エネルギー制御部321は、決定された装置単位の充電電力による充電を行わせるための充電開始要求を、当該需要家施設グループGPにおける施設内電力管理装置200のそれぞれに送信する。施設内電力管理装置200は、充電開始要求の受信に応じて、自己が備えられる需要家施設100におけるエネルギー蓄積装置104が充電を開始するように制御する。
【0111】
上記のようにステップS403にて充電を開始させた後、エネルギー制御部321は、ステップS401にて次の蓄積時間帯の開始タイミングに至るのを待機する。このように、蓄積時間帯ごとに同図の処理が繰り返されることで、蓄積時間帯ごとに超過逆潮流電力がエネルギー蓄積装置104に適宜振り分けられるようにして充電が行われる。この結果、逆潮流電力が許容逆潮流電力を越えないように平準化される。
【0112】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について説明する。本実施形態の電力管理システム10は、以下の構成により順潮流平準化制御を行う。
本実施形態の電力管理装置300は、記憶部303において、グループ管理情報記憶部330と、放出時間帯情報記憶部332と、放出電力制御比情報記憶部334とを備える。なお、本実施形態における放出時間帯情報記憶部332が記憶する放出時間帯情報は、後述するように、
図8とは異なる。
【0113】
本実施形態においては、需要家施設グループGPごとに定めた電力放出(放電)の優先度に基づく電力制御比(放出電力制御比)が、総合SOCに対応させるようにして、予め需要家施設グループGPごとに設定される。
放出電力制御比は、電力管理システム10における順潮流電力平準化制御にあたり、需要家施設グループGPのそれぞれが分担する放電電力の割合を示す。
放出電力制御比については、例えば
図12(A)~
図12(D)に準ずるようにして、SOC範囲ごとに対応させて、需要家施設グループGPに行わせる放電の優先度を設定し、設定された優先度に応じた放出電力制御比を設定すればよい。
電力管理装置300は、需要家施設グループGPごとの放出電力制御比の設定内容を、放出電力制御比情報として放出電力制御比情報記憶部334に記憶させる。
【0114】
放出電力制御比情報記憶部334が記憶する放出電力制御比情報の構造は、
図13の例に準じてよい。即ち、放出電力制御比情報は、グループ識別子ごとに電力制御比設定情報を対応付けた構造とされてよい。1つのグループ識別子に対応する電力制御比設定情報は、第1SOC範囲~第4SOC範囲ごとに放出電力制御比を対応付けた構造である。
【0115】
また、本実施形態における需要家施設グループGPへの需要家施設100のグループ分類は、先の第5実施形態に準じてよい。
つまり、電力管理装置300は、需要家施設100ごとに判定したSOC傾向や需要電力等の少なくともいずれか1つに基づき、需要家施設100のそれぞれを、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4のうちのいずれか1つに属するように分類する。電力管理装置300は、グループ分類の結果が示されるグループ管理情報を、グループ管理情報記憶部330に記憶させる。
本実施形態おいて、例えば
図12(A)~
図12(D)に示されるように、放電についての優先度比が需要家施設グループGPごとに設定される場合、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4には、以下のように需要家施設100が分類される。つまり、例えば、SOC傾向に基づく分類の場合、第1需要家施設グループGP1には、最も高いSOC傾向範囲に該当する需要家施設100が分類される。次いで、第2需要家施設グループGP2には、2番目に高いSOC傾向範囲に該当する需要家施設100が分類される。次いで、第3需要家施設グループGP3には、3番目に高いSOC傾向範囲に該当する需要家施設100が分類される。次いで、第4需要家施設グループGP4には、最も低いSOC傾向範囲に該当する需要家施設100が分類される。
【0116】
次に、再度、
図14を参照して、本実施形態の電力管理装置300が実行する順潮流平準化制御の概要について説明する。
本実施形態との対応では、
図14における縦軸は総合順潮流電力に代えて総合順潮流電力を示す。本実施形態の電力管理装置300は、例えば、過去の電力管理実績を利用して、単位制御期間における総合順潮流電力を予測する。
なお、本実施形態においても、電力管理装置300は、例えば0時から48時間先までの総合順潮流電力についての予測結果と、12時から48時間先までの総合順潮流電力についての予測結果との2つの予測結果を利用して、単位制御期間における総合順潮流電力を予測してよい。
【0117】
本実施形態の電力管理システム10においては、許容される総合順潮流電力の上限(許容順潮流電力)が定められる。本実施形態の場合、同図の破線L41により示される総合順潮流電力の値が許容順潮流電力である。許容順潮流電力を越える総合順潮流電力が超過順潮流電力となる。本実施形態の電力管理装置300は、総合順潮流電力を予測することにより、超過順潮流電力を予測する。
【0118】
電力管理装置300は、超過順潮流電力の発生が予測された各時間帯を制御対象として、順潮流平準化制御を行う。本実施形態との対応では、同図において順潮流平準化制御の対象となる8時台~14時台までの7つの時間帯が放出時間帯として扱われる。
順潮流平準化制御にあたり、電力管理装置300は、放出時間帯ごとに予測した放出時間帯ごとの総合SOCについて、第1SOC範囲~第4SOC範囲のうちのいずれのSOC範囲に該当するのかを判定する。電力管理装置300は、放出電力制御比情報を参照して、放出時間帯ごとに、判定されたSOC範囲に対応付けられている需要家施設グループGPごとの電力制御比を取得する。電力管理装置300は、取得した放出電力制御比を利用して、放出時間帯ごとにおいて、超過順潮流電力を解消するために、需要家施設グループGPのそれぞれが分担する放電電力(分担量)を算出する。
【0119】
電力管理装置300は、上記のように放出時間帯ごとに需要家施設グループGPごとの放電電力を算出すると、放電電力の算出結果が反映された放出時間帯情報を生成し、生成された放出時間帯情報を放出時間帯情報記憶部332に記憶させる。
本実施形態の放出時間帯情報は、
図15の構造に準じてよい。同図に基づく放出時間帯情報としては、蓄積時間帯に代えて放出時間帯が示され、充電電力情報に代えて放電電力情報が示される。放電電力情報は、第1需要家施設グループGP1~第4需要家施設グループGP4ごとに算出された放電電力を示す情報である。
【0120】
電力管理装置300は、電力制御として、放出時間帯情報により示される放出時間帯ごとに、需要家施設グループGPのそれぞれが、同じ放出時間帯情報により示される放電電力をエネルギー蓄積装置104に放電(放出)する動作が得られるように制御を実行する。
このような制御が行われることで、電力管理システム10において超過順潮流電力に対応する需要電力が、需要家施設グループGPのそれぞれから放電される電力によって賄われることになる。この結果、実際の順潮流電力としては、許容順潮流電力を超えないように制御される。つまり、順潮流電力の平準化が図られる。
また、本実施形態においては、需要家施設グループGPごとに定められた優先度に基づいて、総合SOCに応じた需要家施設グループGPごとの放電電力が設定される。これにより、例えば、エネルギー蓄積装置104の電力蓄積状態等に応じて、需要家施設グループGPごとに適切な放電電力を割り当てながら、順潮流平準化制御を効率的に行うことが可能となる。
【0121】
図18のフローチャートを参照して、本実施形態の電力管理装置300が放出時間帯情報の生成に関連して実行する処理手順例について説明する。
ステップS501:電力管理装置300において、エネルギー制御部321は、予測対象の単位制御期間において発生する超過順潮流電力を予測する。超過順潮流電力の予測に伴い、単位制御期間において超過順潮流電力が発生する1時間単位の時間帯がそれぞれ放出時間帯として特定される。
ステップS502:また、エネルギー制御部321は、超過順潮流電力が発生する時間帯(即ち、放出時間帯)ごとの総合SOCを予測する。
ステップS503:エネルギー制御部321は、放出時間帯の順番を示す変数nに初期値として「1」を代入する。
【0122】
ステップS504:エネルギー制御部321は、n番目の放出時間帯の総合SOCに対応する需要家施設グループGPごとの電力制御比を取得する。このため、エネルギー制御部321は、ステップS502にて予測されたn番目の放出時間帯の総合SOCが該当するSOC範囲を判定し、判定されたSOC範囲に対応付けられた需要家施設グループGPごとの電力制御比を、放出電力制御比情報記憶部334から取得する。
【0123】
ステップS505:エネルギー制御部321は、ステップS504により取得された電力制御比と、ステップS501により予測されたn番目の放出時間帯の超過順潮流電力とを利用して、需要家施設グループGPごとの放電電力(分担量)を算出する。
【0124】
ステップS506:ステップS505の処理の後、エネルギー制御部321は、変数nをインクリメントする。
ステップS507:エネルギー制御部321は、現在の変数nが、ステップS501の処理にて特定された放出時間帯数よりも大きいか否かについて判定する。変数nが放出時間帯数以下である場合、まだ、需要家施設グループGPごとの放電電力が算出されていない放出時間帯が残っている。そこで、この場合のエネルギー制御部321は、ステップS504に処理を戻す。
【0125】
ステップS508:一方、ステップS507にて、変数nが放出時間帯数よりも大きいと判定された場合には、全ての放出時間帯に対応して需要家施設グループGPごとの放電電力を算出したことになる。
そこで、この場合のエネルギー制御部321は、放出時間帯ごとに需要家施設グループGPごとの放電電力の算出結果を示す放出時間帯情報を生成する。
ステップS509:エネルギー制御部321は、ステップS508にて生成された放出時間帯情報を放出時間帯情報記憶部332に記憶させる。
なお、エネルギー制御部321は、例えば電力管理システム10における単位制御期間の運転計画の一部として、同図の処理に示される放出時間帯情報の生成を行ってよい。
【0126】
次に、
図19のフローチャートを参照して、本実施形態の電力管理装置300が放出時間帯情報に基づいて実行する順潮流平準化制御の処理手順例について説明する。
ステップS601:電力管理装置300において、エネルギー制御部321は、例えば現時刻と放出時間帯情報が示す放出時間帯の開始時刻とを比較して、1つの放出時間帯の開始タイミングに至るのを待機する。
ステップS602:放出時間帯の開始タイミングに至ったことが判定されると、エネルギー制御部321は、放出時間帯情報から、開始タイミングに至った放出時間帯に対応付けられた需要家施設グループGPごとの放電電力を取得する。
【0127】
ステップS603:エネルギー制御部321は、需要家施設グループGPごとに、取得された放電電力を放電する動作が得られるように制御する。
この際、エネルギー制御部321は、1つの需要家施設グループGPの放電電力に基づいて、当該需要家施設グループGPに備えられるエネルギー蓄積装置104のそれぞれが放電すべき装置単位の放電電力を決定する。装置単位の放電電力としては、例えば需要家施設グループGPが分担する放電電力を、需要家施設グループGPにおいて放電可能な状態にあるエネルギー蓄積装置104に均等に割り当てるようにしてよい。あるいは、需要家施設グループGPにおけるエネルギー蓄積装置104のSOCに応じて、エネルギー蓄積装置104ごとに異なるようにして装置単位の放電電力を決定してもよい。
エネルギー制御部321は、決定された装置単位の放電電力による放電を行わせるための放電開始要求を、当該需要家施設グループGPにおける施設内電力管理装置200のそれぞれに送信する。施設内電力管理装置200は、放電開始要求の受信に応じて、自己が備えられる需要家施設100におけるエネルギー蓄積装置104が放電を開始するように制御する。
【0128】
上記のようにステップS603にて放電を開始させた後、エネルギー制御部321は、ステップS601にて次の放出時間帯の開始タイミングに至るのを待機する。このように、放出時間帯ごとに同図の処理が繰り返されることで、放出時間帯ごとに超過順潮流電力がエネルギー蓄積装置104に適宜振り分けられるようにして放電が行われる。この結果、順潮流電力が許容順潮流電力を越えないように平準化される。
【0129】
なお、第5実施形態または第6実施形態の構成に対して、第3実施形態の構成を適用してよい。つまり、例えば、天候の状況やデマンドレスポンスの発動等に応じて、1単位制御期間におけるエネルギー調整時間帯(第5実施形態の蓄積時間帯または第6実施形態の放出時間帯)を変更してよい。第5実施形態または第6実施形態におけるエネルギー調整時間帯の変更の態様としては、例えば1単位制御期間における蓄積時間帯をシフトさせることが考えられる。
【0130】
なお、第5実施形態または第6実施形態のもとで、例えば運転制御中における所定の状況変化に応じて、エネルギー制御部321が、蓄積時間帯における充電電力、または放出時間帯における放電電力を変更するようにしてもよい。
【0131】
なお、第5実施形態または第6実施形態に対しても、第4実施形態の構成が適用されてよい。つまり、第5実施形態または第6実施形態のもとで、
図10のように上位電力管理システムを構築し、上位電力管理システム20における総合逆潮流電力または総合順潮流電力が許容範囲に収まるように平準化制御を行ってよい。
【0132】
なお、上記各実施形態の需要家施設グループGPは、少なくとも1つの需要家施設100を備えればよい。従って、上記各実施形態における潮流の平準化制御は、需要家施設グループGPのそれぞれに1つの需要家施設100が含まれる場合に対応して、実質的には、需要家施設100単位にも対応して実現が可能である。
【0133】
なお、上記各実施形態において、エネルギー源としてのエネルギー蓄積装置104は、蓄電池である場合を例に挙げた。しかしながら、本実施形態のエネルギー源は蓄電池に限定されない。
上記各実施形態のエネルギー源は、例えば貯湯槽内の水の温度をヒートポンプ等により熱する給湯機などであってもよい。この場合には、熱としてエネルギーが蓄積され、熱せられた水(湯)を放出することによりエネルギーの放出が行われる。
また、上記各実施形態のエネルギー源は、燃料電池であってもよい。燃料電池の場合には、電気エネルギーを利用して水素を生成し、生成された水素を蓄積しておくことで、エネルギーの蓄積が行われ、発電により蓄積された水素が使用されることでエネルギーの放出が行われる。
また、上記各実施形態の発電装置103は、例えば風力発電、地熱発電等の、太陽光以外の自然エネルギーを利用して発電を行う装置であってもよい。
【0134】
なお、上述の電力管理装置300、上位電力管理装置600、及び施設内電力管理装置200等の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の電力管理装置300、上位電力管理装置600、及び施設内電力管理装置200等としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0135】
10 電力管理システム、20 上位電力管理システム、100 需要家施設、102 電力測定部、103 発電装置、104 エネルギー蓄積装置、105 負荷、200 施設内電力管理装置、300 電力管理装置、301 通信部、302 制御部、303 記憶部、321 エネルギー制御部、322 時間帯変更部、330 グループ管理情報記憶部、331 蓄積時間帯情報記憶部、332 放出時間帯情報記憶部、333 蓄積電力制御比情報記憶部、334 放出電力制御比情報記憶部、500 需要家施設グループ群、600 上位電力管理装置、601 通信部、602 制御部、621 上位エネルギー制御部