(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】分岐継手
(51)【国際特許分類】
F16L 41/02 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
F16L41/02
(21)【出願番号】P 2018061324
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】竹村 茂雄
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-084740(JP,A)
【文献】特開平04-203690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル保護管の本管と分岐管とを接続する分岐継手であって、
前記本管の外面に取り付けられるサドル部と、
前記サドル部の外面から突出し、前記サドル部を前記本管に取り付けた状態で前記本管の管軸に対して鋭角となる分岐角度を有する枝管部と、
前記サドル部における前記枝管部との連結部分に形成された開口の周縁に沿うように前記サドル部の内面から突出した環状突起と、を備え、
前記環状突起のうち、前記管軸方向に沿って前記枝管部が突出する側である第1側に位置する第1部分の外周面は、前記枝管部の分岐角度より大きい角度で傾斜している、または、前記サドル部の内面に対して垂直に延びて
おり、
前記サドル部の内面のうち、前記管軸方向に沿って前記環状突起が位置する領域に、パーティングラインが形成されている分岐継手。
【請求項2】
ケーブル保護管の本管と分岐管とを接続する分岐継手であって、
円弧状をなし前記本管の外面に取り付けられるサドル部と、
前記サドル部の外面から突出し、前記サドル部の曲率中心を通る管軸に対して鋭角となる分岐角度を有する枝管部と、
前記サドル部における前記枝管部との連結部分に形成された開口の周縁に沿うように前記サドル部の内面から突出した環状突起と、を備え、
前記環状突起のうち、前記管軸方向に沿って前記枝管部が突出する側である第1側に位置する第1部分の外周面は、前記枝管部の分岐角度より大きい角度で傾斜している、または、前記サドル部の内面に対して垂直に延びて
おり、
前記サドル部の内面のうち、前記管軸方向に沿って前記環状突起が位置する領域に、パーティングラインが形成されている分岐継手。
【請求項3】
前記第1部分は、前記サドル部の内面を平面視したときに前記第1側に向けて凸となる円弧状に形成されている請求項1または2に記載の分岐継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載の分岐継手が知られている。分岐継手は、ケーブル保護管の本管と分岐管とを接続する。分岐継手は、本管の外面に取り付けられるサドル部と、サドル部の外面から突出し、サドル部を本管に取り付けた状態で本管の管軸に対して鋭角となる分岐角度を有する枝管部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の分岐継手では、サドル部を本管の外面に固定する前の状態で、分岐継手が本管に対してがたつき易いという問題がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、分岐継手を本管に対して強固に固定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る一態様の分岐継手は、ケーブル保護管の本管と分岐管とを接続する分岐継手であって、前記本管の外面に取り付けられるサドル部と、前記サドル部の外面から突出し、前記サドル部を前記本管に取り付けた状態で前記本管の管軸に対して鋭角となる分岐角度を有する枝管部と、前記サドル部における前記枝管部との連結部分に形成された開口の周縁に沿うように前記サドル部の内面から突出した環状突起と、を備え、前記環状突起のうち、前記管軸方向に沿って前記枝管部が突出する側である第1側に位置する第1部分の外周面は、前記枝管部の分岐角度より大きい角度で傾斜している、または、前記サドル部の内面に対して垂直に延びている。
本発明に係る一態様の分岐継手は、ケーブル保護管の本管と分岐管とを接続する分岐継手であって、円弧状をなし前記本管の外面に取り付けられるサドル部と、前記サドル部の外面から突出し、前記サドル部の曲率中心を通る管軸に対して鋭角となる分岐角度を有する枝管部と、前記サドル部における前記枝管部との連結部分に形成された開口の周縁に沿うように前記サドル部の内面から突出した環状突起と、を備え、前記環状突起のうち、前記管軸方向に沿って前記枝管部が突出する側である第1側に位置する第1部分の外周面は、前記枝管部の分岐角度より大きい角度で傾斜している、または、前記サドル部の内面に対して垂直に延びている。
【0007】
環状突起の第1部分の外周面が、分岐角度より大きい角度で傾斜している、または、サドル部の内面に対して垂直に延びている。したがって、例えば、第1部分の外周面が、分岐角度より小さい角度で傾斜している場合に比べて、第1部分を、本管に形成される分岐孔の周縁に強固に係止させることができる。これにより、分岐継手を本管に対して強固に固定することができる。
【0008】
前記第1部分は、前記サドル部の内面を平面視したときに前記第1側に向けて凸となる円弧状に形成されていてもよい。
【0009】
第1部分が、サドル部の内面を平面視したときに第1側に向けて凸となる円弧状に形成されている。したがって、第1部分を開口の周縁に沿って長く確保することができる。これにより、第1部分を本管に強固に係止させることができるという前述の作用効果を、広い範囲にわたって発揮させることができる。
【0010】
前記サドル部の内面にパーティングラインが形成されていてもよい。
【0011】
サドル部の内面にパーティングラインが形成されている。すなわち、分岐継手の成型に際し、サドル部の内面側に位置する金型を複数に分割して分岐継手を形成することができる。これにより、この分岐継手のように、第1部分の外周面が、枝管部の分岐角度より大きい角度で傾斜していたり、サドル部の内面に対して垂直に延びていたりする等していても、容易に精度良く形成することができる。
【0012】
前記パーティングラインは、前記サドル部の内面のうち、前記管軸方向に沿って前記環状突起が位置する領域に形成されていてもよい。
【0013】
パーティングラインが形成されていると、サドル部の内面がパーティングラインの分、隆起する。そのため、内面にパーティングラインが形成された状態でサドル部を本管に取り付けただけでは、パーティングラインの分、がたつきが生じるおそれがある。
ところで、分岐継手を用いて本管を分岐するときには、本管を穿孔して分岐孔を形成する。本管のうち、管軸方向に沿って分岐孔が形成された穿孔領域は、本管の残量応力によって縮径し易い。
そこでこの分岐継手では、パーティングラインが、サドル部の内面のうち、管軸方向に沿って環状突起が位置する領域に形成されている。したがって、環状突起を分岐孔内に嵌合させることで、本管のうち、穿孔の影響により縮径する穿孔領域にパーティングラインを配置させることができる。その結果、パーティングラインが形成されることを起因として生じ得るがたつきの影響を抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分岐継手を本管に対して強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る分岐継手が本管に取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す分岐継手および本管の縦断面図である。
【
図5】
図4に示す分岐継手を内面側から見た平面図である。
【
図6】本発明の変形例に係る分岐継手を内面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1から
図5を参照し、本発明の一実施形態に係る分岐継手を説明する。
図1および
図2に示すように、分岐継手10は、ケーブル保護管の本管12に対して分岐管14を接続するために用いられる。ケーブル保護管は、地中に埋設される通信線や電力線などの図示しないケーブルを内部に収容し、ケーブルを保護するための管である。ケーブル保護管は、本管12、分岐管14、およびこれらを接続する分岐継手10を備えている。本管12は、例えば、道路に沿って地中に埋設される。分岐管14は、例えば、本管12から分岐して建物内まで延びる。本管12および分岐管14は、例えば、硬質塩化ビニル樹脂などの合成樹脂によって形成される。
【0017】
分岐継手10は、本管12の外面に密着して取り付けられるサドル部20と、サドル部20の外面から鋭角に突出する枝管部22と、を備えている。分岐継手10は、例えば、硬質塩化ビニル樹脂などの合成樹脂によって形成される。
サドル部20は、本管12の外面と略同一形状の内面を有する半円筒状(円弧状)に形成される。サドル部20がなす円弧の曲率中心は、本管12の管軸O上に位置する。サドル部20の管軸O方向の長さは、例えば500mmである。
【0018】
枝管部22は、直管状に形成され、サドル部20(分岐継手10)を本管12に取り付けた状態で、本管12の管軸O(サドル部20の曲率中心を通る管軸O)に対して鋭角に延びる。本管12に対する枝管部22の分岐角度(ケーブルの取り出し角度)は、ケーブルの引込作業が円滑に行える角度に設定され、例えば25~50°(本実施形態では45°)に設定される。
なお以下では、管軸O方向に沿って枝管部22が突出する側(
図1および
図2における紙面左側)を第1側S1といい、その反対側を第2側S2という。
【0019】
サドル部20のうちの枝管部22との連結部分には、開口24が形成されている。開口24は、枝管部22の内部と連通しており、開口24の周縁は、枝管部22の内面と滑らかに連結される。
図5に示すように、開口24は、サドル部20を内面から見た平面視において、管軸O方向に延びる略楕円形状(長穴状)に形成されている。
【0020】
サドル部20の内面には、開口24の周縁に沿って環状に形成され、開口24の全周にわたって延びる環状突起26が形成される。環状突起26は、前記平面視において管軸O方向に長い略楕円形状(長穴状)に形成されている。環状突起26は、第1側S1に位置する第1部分31と、第2側S2に位置する第2部分32と、第1部分31と第2部分32とを連結する第3部分33と、を備えている。
【0021】
第1部分31は、前記平面視において第1側S1に向けて凸となる円弧状(曲線状)に形成されている。第1部分31のうち、前記平面視において管軸Oに直交する方向(以下、直交方向Dという。)の中央部(円弧状の中央部)には、管軸O方向に延びる溝部34が形成されている。溝部34は、第1部分31を直交方向Dに一対に区画する。なお、溝部34は設けなくともよく、その場合、第1部分31は連続した円弧状に形成される。
【0022】
第2部分32は、前記平面視において第2側S2に向けて凸となる円弧状(曲線状)に形成されている。第2部分32における肉厚(内周面と外周面との間の距離)は、第1部分31における肉厚よりも小さい。
第3部分33は、直交方向Dに間隔をあけて一対配置されている。第3部分33は、管軸O方向に直線状に延び、第1部分31および第2部分32の周端縁同士を連結している。
【0023】
図2および
図3に示すように、環状突起26は、本管12に形成された分岐孔18内に嵌合される。分岐孔18は、その平面視において環状突起26よりもわずかに大きく形成され、環状突起26は、分岐孔18の周縁に係止する。
環状突起26の突出高さは、本管12の肉厚とほぼ同じ、或いは本管12の肉厚よりも少し(例えば、1mm程度)大きくなるように設定される。環状突起26の突出高さは、サドル部20を本管12に取り付けた状態で、本管12の内面とほぼ同じ高さになるように、或いは本管12の内面から少し突出するように設定される。
【0024】
図3に示すように、第1部分31の外周面31aは、サドル部20の内面に対して垂直に延びている。本実施形態では、管軸Oおよび枝管部22の中心軸線を含む縦断面視において、前記外周面31aは、サドル部20の内面に対して、第1フィレット31bを介して垂直に延びている。前記縦断面視において、第1フィレット31bは、第2側S2に向けて凹となる凹曲線状に形成されている。
【0025】
なお前記縦断面視において、第1部分31の外周面31aは、枝管部22の分岐角度より大きい角度で傾斜していてもよい。前記外周面31aが分岐角度より大きい角度で傾斜していることは、前記縦断面視において、前記外周面31aが、サドル部20の内面に対して、垂直よりも第2側S2に位置する範囲で、かつ、分岐角度より大きい角度で傾斜していることを意味する。言い換えると、前記縦断面視において前記外周面31aがなす傾斜角度は、前記分岐角度よりも大きく90°未満となっている。
【0026】
前記縦断面視において、第1部分31の外周面31aは、第1部分31の突端面31c(環状突起26において突出方向を向く面)に第2フィレット31dを介して連結されている。前記縦断面視において、突端面31cは、管軸O方向に沿って延びている。前記縦断面視において、第2フィレット31dは、第1側S1に向けて凸となる凸曲線状に形成されている。
【0027】
図4および
図5に示すように、サドル部20の内面にはパーティングライン35が形成されている。パーティングライン35は、サドル部20の内面のうち、管軸O方向に沿って環状突起26が位置する領域(突起領域R1)に形成されている。
図5に示すように、パーティングライン35は、サドル部20を内面から見た平面視において、環状突起26の第1部分31と第3部分33との境界を直交方向Dに横断するように形成されている。
【0028】
このような分岐継手10を本管12に取り付ける際には、本管12に分岐孔18を形成した後、分岐孔18内に環状突起26を嵌合し、本管12の外面とサドル部20の内面とを密着させて接着接合する。本管12のうち、管軸O方向に沿って分岐孔18が形成された領域(穿孔領域R0)は、押出成形時の残留応力によって縮径し、分岐孔18を形成していない部分と比較して外径が小さくなる。このため、穿孔領域R0において、本管12外面とサドル部20内面との間に隙間(浮き)が生じてしまい易いものの、この位置にパーティングライン35が配置されるため、前記隙間を、パーティングライン35の突出によって一定量または完全に相殺することができる。
【0029】
このような分岐継手10を製作する方法は、特に限定されないが、射出成形などを利用することができる。射出成形を利用する場合、例えば、サドル部20の内面側と外面側とで異なる金型を用いることができる。この場合、サドル部20の内面側の金型は、管軸O方向に沿って第1側S1に位置する第1型と、第2側S2に位置する第2型と、に、パーティングライン35の位置を基準として分割することができる。このとき、例えば、第1型をサドル部20の内面から垂直に離間させながら、第2型をサドル部20の内面から、分岐角度をつけながら離間させる等、第1型と第2型との離型方向を異ならせることができる。これにより、第1部分31の外周面31aが、枝管部22の分岐角度より大きい角度で傾斜している、または、サドル部20の内面に対して垂直に延びているような本実施形態に係る分岐継手10であっても、精度良く形成することができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る分岐継手10によれば、環状突起26の第1部分31の外周面31aが、分岐角度より大きい角度で傾斜している、または、サドル部20の内面に対して垂直に延びている。したがって、例えば、第1部分31の外周面31aが、分岐角度より小さい角度で傾斜している場合に比べて、第1部分31を、分岐孔18の周縁に強固に係止させることができる。これにより、分岐継手10を本管12に対して強固に固定することができる。
【0031】
第1部分31が、サドル部20の内面を平面視したときに第1側S1に向けて凸となる円弧状に形成されている。したがって、第1部分31を開口24の周縁に沿って長く確保することができる。これにより、第1部分31を本管12に強固に係止させることができるという前述の作用効果を、広い範囲にわたって発揮させることができる。
【0032】
サドル部20の内面にパーティングライン35が形成されている。すなわち、分岐継手10の成型に際し、サドル部20の内面側に位置する金型を複数に分割して分岐継手10を形成することができる。これにより、この分岐継手10のように、第1部分31の外周面31aが、枝管部22の分岐角度より大きい角度で傾斜していたり、サドル部20の内面に対して垂直に延びていたりする等していても、容易に精度良く形成することができる。
【0033】
パーティングライン35が形成されていると、サドル部20の内面がパーティングライン35の分、隆起する。そのため、内面にパーティングライン35が形成された状態でサドル部20を本管12に取り付けただけでは、パーティングライン35の分、がたつきが生じるおそれがある。
ところで、分岐継手10を用いて本管12を分岐するときには、本管12を穿孔して分岐孔18を形成する。本管12の穿孔領域R0は、本管12の残量応力によって縮径し易い。
そこでこの分岐継手10では、パーティングライン35が、サドル部20の突起領域R1に形成されている。したがって、環状突起26を分岐孔18内に嵌合させることで、本管12のうち、穿孔の影響により縮径する穿孔領域R0にパーティングライン35を配置させることができる。その結果、パーティングライン35が形成されることを起因として生じ得るがたつきの影響を抑えることができる。
【0034】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0035】
パーティングライン35は前記実施形態に示す形態に限られない。
例えば、パーティングライン35が、
図6に示す変形例に係る分岐継手10Aのような形態であってもよい。この分岐継手10Aでは、パーティングライン35が、第3部分33における第1部分31との連結部分(第3部分33における第1側S1の端部)から第1側S1に向けて直線状に延び、サドル部20の端部に至るまで形成されている。パーティングライン35は、直交方向Dに間隔をあけて一対配置されている。パーティングライン35は、管軸O(サドル部20の軸線、本管12の軸線)と平行に延びている。
さらに例えば、パーティングライン35がなくてもよい。
第1部分31が、前記平面視において円弧状に形成されていなくてもよい。
【0036】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10、10A 分岐継手
12 本管
14 分岐管
20 サドル部
22 枝管部
24 開口
26 環状突起
31 第1部分
31a 外周面
35 パーティングライン
D 直交方向
O 管軸
R1 領域
S1 第1側