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特許7065670排ガス浄化用のハニカム構造体の製造方法及び該ハニカム構造体を用いた排ガス浄化フィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】排ガス浄化用のハニカム構造体の製造方法及び該ハニカム構造体を用いた排ガス浄化フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20220502BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20220502BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20220502BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220502BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20220502BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220502BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
B01J35/04 301E
B01J35/04 301N
B01D39/20 D ZAB
B01D46/00 302
B01D53/94 300
B01D53/94 100
F01N3/022 C
F01N3/28 301P
F01N3/035 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018061933
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019171282
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】永井 亮
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-215910(JP,A)
【文献】国際公開第2008/078799(WO,A1)
【文献】特開2009-226376(JP,A)
【文献】特開2016-182536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 39/20
B01D 46/00
B01D 53/94
F01N 3/022
F01N 3/28
F01N 3/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが排ガスの流れ方向に伸長するハニカム構造部を筒状体の内部に有し、各セルは前記伸長方向の一方の端部又は他方の端部の何れか一方が閉塞され且つ各セルを隔てる隔壁は前記排ガスの通過可能な多孔質隔壁として構成され、前記多孔質隔壁は、前記筒状体における前記排ガスの出口側領域の気孔率よりも入口側領域の気孔率が漸次大きくなるように形成された排ガス浄化用のハニカム構造体の製造方法であって、
気孔率の異なる複数種類の多孔質素材の混合比率を一定周期毎に変更させながら混合して多孔質材料を生成しつつ順次次工程に移動させる工程と、
前記多孔質材料を、前記ハニカム構造部を形成するための口金を通過させて押し出す工程と、
押し出された前記多孔質材料を前記気孔率が増加から減少に変化する位置及び減少から増加に変化する位置で切断する工程とを備えたことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
複数のセルが排ガスの流れ方向に伸長するハニカム構造部を筒状体の内部に有し、各セルは前記伸長方向の一方の端部又は他方の端部の何れか一方が閉塞され且つ各セルを隔てる隔壁は前記排ガスの通過可能な多孔質隔壁として構成され、前記多孔質隔壁は、前記筒状体における前記排ガスの出口側領域の気孔率よりも入口側領域の気孔率が漸次大きくなるように形成された排ガス浄化用のハニカム構造体の製造方法であって、
前記ハニカム構造部を形成するための口金の入側に供給する増孔剤の供給量を一定周期毎に変更させながら多孔質素材と混合して多孔質材料を生成しつつ順次次工程に移動させる工程と、
前記多孔質材料を、前記口金を通過させて押し出す工程と、
押し出された前記多孔質材料を前記気孔率が増加から減少に変化する位置及び減少から増加に変化する位置で切断する工程とを備えたことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
請求項又はに記載のハニカム構造体の製造方法で製造されたハニカム構造体が触媒でコーティングされてなることを特徴とするハニカム構造体を用いた排ガス浄化フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体、ハニカム構造体の製造方法、及び排ガス浄化フィルタ、特に、GPF(Gasoline Particulate Filter)に好適な排ガス浄化用のハニカム構造体、該ハニカム構造体の製造方法、及び該ハニカム構造体を用いた排ガス浄化フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス浄化装置の1つであるGPFは、近年の排ガス規制に適応するために、ガソリンで走行する車両の排ガス中のPM(Particulate Matter:粒子状物質)をPN(Particulate Number:PMの粒子数)規制値まで低減するフィルタであり、同時に、規制対象となる特定成分を排ガスから除去することも望まれている。このようなGPFでは、複数のセルが排ガスの流れ方向に伸長するハニカム構造部を筒状体の内部に形成し、各セルの一方の端部又は他方の端部の何れか一方を閉塞(目封止ともいう)すると共に、セルを隔てる隔壁が排ガスの通過可能な多孔質隔壁で構成されたハニカム構造体が用いられる。そして、このハニカム構造体に触媒をコーティングしてGPF用の排ガス浄化フィルタが構成され、従ってセルを隔てる多孔質隔壁の気孔にもコーティングが施されている。
【0003】
このGPF排ガス浄化装置では、入口側が開口しているセルから排ガスが流入し、しかしながらそのセルの出口側は閉塞されているために、排ガスは隔壁の気孔を通って出口側が開口している他のセルに流入し、そのセルから流出する。この隔壁通過時に排ガスからPMが除去され、合わせて隔壁の気孔にコーティングされている触媒に排ガスが触れることで規制対象となる特定の成分が除去される。このような排ガス浄化装置としては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この排ガス浄化装置では、例えば、ハニカム構造体の排ガス出口側端部の方が入口側端部よりも隔壁を通過する排ガスが集中しやすい場合には、ハニカム構造部における入口側端面の近傍部の気孔率を出口側端面の近傍部の気孔率よりも高くして、入口側端面の近傍部の隔壁を通過する排ガス流量を増加させ、ハニカム構造体全体の排ガス流量を均一化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-289926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される排ガス浄化装置では、ハニカム構造体の排ガス出口側端部の方が入口側端部よりも隔壁を通過する排ガスが集中しやすい場合に、ハニカム構造部における入口側端面の近傍部の気孔率を出口側端面の近傍部の気孔率よりも高くして、ハニカム構造体全体の排ガス流量を均一化することは開示されるものの、ハニカム構造部における気孔率の分布状態をどのようにするとどのような効果が得られるのか、或いはそうしたハニカム構造部を有するハニカム構造体をどのようにして取得するのかについては記載されていない。特に、GPF排ガス浄化装置では、略半分のセルの排ガス出口側が閉塞されるため、排ガス浄化に伴ってその閉塞されたセル内出口側から灰分が次第に堆積するが、この次第に堆積される灰分に対する排ガス浄化性能の長寿命化が望まれると共に、触媒に用いられる高価な貴金属の効率的な使用によるコストの低廉化が望まれる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、排ガス浄化性能の長寿命化とコストの低廉化が可能な排ガス浄化用のハニカム構造体、該ハニカム構造体の製造方法、及び該ハニカム構造体を用いた排ガス浄化フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための排ガス浄化用のハニカム構造体は、
複数のセルが排ガスの流れ方向に伸長するハニカム構造部を筒状体の内部に有し、各セルは前記伸長方向の一方の端部又は他方の端部の何れか一方が閉塞され且つ各セルを隔てる隔壁は前記排ガスの通過可能な多孔質隔壁として構成された排ガス浄化用のハニカム構造体において、前記多孔質隔壁は、前記筒状体における前記排ガスの出口側領域の気孔率よりも入口側領域の気孔率が漸次大きくなるように形成される
【0008】
この構成によれば、排ガス出口側が閉塞されたセル内には排ガス浄化に伴って排ガス中の灰分が排ガス出口側から次第に堆積する場合がある。そして、灰分が堆積した出口側領域では多孔質隔壁の気孔が閉塞する。しかし、本発明に係るセルの隔壁は、気孔率が排ガス出口側領域から排ガス入口側領域に向かって大きくなっているので、長期間の排ガス浄化後も、未だ多数の気孔が開口した状態が保たれているか、出口側領域よりも大きな開口断面積の気孔が開口した状態が保たれている。また、触媒のコーティング量も気孔率の大きい領域の方が大きい。従って、この開口している排ガス入口側領域の多孔質隔壁の気孔を通じて良好な排ガス浄化が継続され、その結果、排ガス浄化性能の長寿命化が可能となる。また、上記気孔率は漸次変化させているので、排ガス浄化中において、階段状の急激な浄化機能の低下が発生することを抑制することができる。これにより、高価な貴金属のコーティング量を効率的に低減してコストの低廉化を図りながら、安定した排ガス浄化性能を確保することが可能となる。
【0009】
上記ハニカム構造体の製造方法は、気孔率の異なる複数種類の多孔質素材の混合比率を一定周期毎に変更させながら混合して多孔質材料を生成しつつ順次次工程に移動させる工程と、前記多孔質材料を、前記ハニカム構造部を形成するための口金を通過させて押し出す工程と、押し出された前記多孔質材料を前記気孔率が増加から減少に変化する位置又は減少から増加に変化する位置で切断する工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、上記混合比率の周期的な変化により、口金から押し出された多孔質材料は、気孔率が大きい状態から小さい状態、さらに小さい状態から大きい状態に一定周期毎に次第に変化する。従って、気孔率が増加から減少に変化する位置及び減少から増加に変化する位置で押し出された多孔質材料を切断することだけで、排ガスの流れ方向(入口側から出口側)に向けて気孔率が漸次減少する多孔質隔壁を有するハニカム構造部を有するハニカム構造体を連続的に量産することが可能となる。
【0011】
また、前記ハニカム構造部を形成するための口金の入側に供給する増孔剤の供給量を一定周期毎に変更させながら多孔質素材と混合して多孔質材料を生成しつつ順次次工程に移動させる工程と、前記多孔質材料を、前記口金を通過させて押し出す工程と、押し出された前記多孔質材料を前記気孔率が増加から減少に変化する位置又は減少から増加に変化する位置で切断する工程とを備えたことを特徴とする。
【0012】
上記ハニカム構造体を用いた排ガス浄化フィルタは、上記製造方法で製造されたハニカム構造体が触媒でコーティングされてなることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載のハニカム構造体を用いた排ガス浄化フィルタは、請求項2又は3に記載のハニカム構造体の製造方法で製造されたハニカム構造体が触媒でコーティングされてなることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、排ガス出口側が閉塞されたセル内には排ガス浄化に伴って排ガス中の灰分が排ガス出口側から次第に堆積する場合がある。そして、灰分が堆積した出口側領域では多孔質隔壁の気孔が閉塞する。しかし、本発明に係るセルの隔壁は、気孔率が排ガス出口側領域から排ガス入口側領域に向かって大きくなっているので、長期間の排ガス浄化後も、未だ多数の気孔が開口した状態が保たれているか、出口側領域よりも大きな開口断面積の気孔が開口した状態が保たれている。また、触媒のコーティング量も気孔率の大きい領域の方が大きい。従って、この開口している排ガス入口側領域の多孔質隔壁の気孔を通じて良好な排ガス浄化が継続され、その結果、排ガス浄化性能の長寿命化が可能となる。また、上記気孔率は漸次変化させているので、排ガス浄化中において、階段状の急激な浄化機能の低下が発生することを抑制することができる。これにより、高価な貴金属のコーティング量を効率的に低減してコストの低廉化を図りながら、安定した排ガス浄化性能を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、排ガスの出口側領域の気孔率よりも入口側領域の気孔率が漸次大きくなるようにハニカム構造部の多孔質隔壁を形成したことにより、階段状の急激な浄化機能の低下を抑制すると共に長期間の排ガス浄化後も大きな気孔率で開口している排ガス入口側領域の気孔及び触媒を通じた良好な排ガス浄化が継続されることで排ガス浄化性能の長寿命化が可能となり、これにより高価な貴金属のコーティング量を効率的に低減してコストを低廉化することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の排ガス浄化フィルタ用のハニカム構造体の一実施の形態を示す斜視図である。
図2図1のハニカム構造体からなる排ガス浄化フィルタの作用の説明図である。
図3図1のハニカム構造体の製造方法の一例を示す概略説明図である。
図4図1のハニカム構造体の製造方法の他の例を示す概略説明図である。
図5図1のハニカム構造体の隔壁の気孔率が大きい部分の説明図であり、図5(A)は触媒コーティング前の隔壁・気孔の断面図、図5(B)は触媒コーティング後の隔壁・気孔の断面図である。
図6図1のハニカム構造体の隔壁の気孔率が小さい部分の説明図であり、図6(A)は触媒コーティング前の隔壁・気孔の断面図、図6(B)は触媒コーティング後の隔壁・気孔の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の排ガス浄化用のカム構造体、該ハニカム構造体の製造方法、及び該ハニカム構造体を用いた排ガス浄化フィルタの一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態のハニカム構造体12を用いた排ガス浄化フィルタ10の斜視図である。この実施の形態のハニカム構造体12は、主として、前述のGPF用の排ガス浄化フィルタ10として使用されることを目的とする。このハニカム構造体12は、円筒形状の筒状体20の内部に、図の右側から左側に向けて排ガスを流して浄化するためのハニカム構造部14を有して構成される。このハニカム構造部14は、円筒形状の筒状体20の内側を隔壁16で区画することによって形成された複数のセル(室)18からなり、各セル18は、筒状体20の軸線方向の図示右側の入口側端面14bから図示左側の出口側端面14aまで伸長している。この実施の形態では、方形断面形状のセル18を形成しているが、このセル18の断面形状は、これ以外のものであってもよい。
【0018】
この実施の形態では、後述するように、例えば多孔質のセラミックス材料を用いて筒状体20と隔壁16を同時に成形している。そのため、隔壁16は多数の気孔(連続気孔)を有する多孔質隔壁である。なお、この実施の形態では、後述する製造方法によって、多孔質材料を用いて筒状体20と隔壁16を押出成形で同時に形成しているが、両者を個別に形成するようにしてもよい。また、筒状体20の更に外周にセラミックス素材などを塗布してもよい。また、図中のドットは、ハニカム構造部14に形成される気孔を模式的に表しているが、出口側端面14aでは、煩雑さを回避するためにドットの表示を省略している。また、筒状体20の形状は、円筒形状に限定されない。
【0019】
図2は、図1のハニカム構造体12からなるGPF排ガス浄化フィルタ10の作用の説明図である。ハニカム構造部14を排ガス浄化フィルタ10の1つであるGPFとする場合、複数のセル18のうち、予め設定されたセル18を一方の端面側、例えば入口側端面14b側で閉塞(目封止)し、その残りを他方の端面側、例えば出口側端面14a側で閉塞したハニカム構造体12を用いる。この例では、図示左側の出口側端面14a側で1列又は1行毎に互い違いのセル18を千鳥状に閉塞し、図示右側の入口側端面14b側では、出口側端面14a側で開口しているセル18を閉塞する。つまり入口側端面14b側では、出口側端面14a側で開口している互い違いのセル18がやはり千鳥状に閉塞される。GPF排ガス浄化フィルタ10は、例えば焼成されたハニカム構造体12に触媒をコーティングして作成され、その際、後述するように隔壁16と共に隔壁16の気孔22にも触媒24(図5図6参照)のコーティングが施される。触媒のコーティング方法には、例えば周知のウォッシュコート法などが用いられる。
【0020】
このように隣り合うセル18の一方が出口側端面14a側で閉塞され、他方が入口側端面14b側で閉塞されたハニカム構造体12からなる排ガス浄化フィルタ10に対し、例えば入口側端面14bから排ガスを送給すると、開口しているセル18に流入した排ガスは閉塞された出口側端面14bで行き場を失い、隔壁16の気孔22を通って隣のセル18に流入し、そのセル18の出口側端部14bの開口部から流出する。従って、排ガス中のPMは、この気孔通過時に除去される。また、気孔22にコーティングされている触媒24と接触することによって、排ガス中の規制対象となる特定の成分が除去される。排ガスを隔壁16の気孔に通す技術は、ウォールフローとも呼ばれる。
【0021】
この実施の形態では、ハニカム構造部14の隔壁16を構成する多孔質隔壁は、図示左側の出口側端面14a領域の気孔率よりも図示右側の入口側端面14b領域の気孔率が漸次大きくなるように形成される。この実施の形態では、筒状体20と隔壁16が同時に押出成形されるので、図1に示すように、筒状体20も隔壁16も、図示左側の出口側端面14a側から図示右側の入口側端面14b側に向けて気孔率が漸次増加する多孔質材料で形成される。入口側端面14bを基準とすれば、図示右側の入口側端面14b側から図示左側の出口側端面14a側に向けて気孔率は漸次減少される。
【0022】
このような構成の多孔質材料は、例えば図3に示すハニカム構造体12の製造方法で得られる。このハニカム構造体12の製造方法では、セラミックスなど、気孔率の異なる2種類の多孔質素材、具体的には気孔率の高い(大きい)高気孔率素材と気孔率の低い(小さい)低気孔率素材の夫々を個別の貯留部30a、30bに貯留し、2つの貯留部30a、30bから高気孔率素材と低気孔率素材を混合部32に投入して混合し、これによりハニカム構造部14を構成する多孔質材料を取得する。その際、気孔率の異なる2種類の多孔質素材の混合比率を次第に増加又は減少し且つその増加及び減少を一定周期毎に変更しながら混合することで、混合部32内で混合される多孔質材料は、気孔率の高い(大きい)部分と気孔率の低い(小さい)部分が一定周期毎に交互に存在する。この多孔質材料を、混合部32内で順次出側に移動しながら、ハニカム構造部14を形成するための口金26に通過して押し出すと、押し出された多孔質材料には、気孔率の高い(大きい)部分と気孔率の低い(小さい)部分が一定周期毎に次第に変化するハニカム構造部14のブランクが形成される。従って、気孔率の最も高い(大きい)部分、即ち気孔率が増加から減少に変化する位置と気孔率の最も低い(小さい)部分、即ち気孔率が減少から増加に変化する位置を切断位置に設定し、それらの切断位置で押し出された多孔質材料を切断すれば、出口側端面14aから入口側端面14bに向けて気孔率が漸次増加するハニカム構造部14を備えたハニカム構造体12が得られる。
【0023】
また、前述のように出口側端面14a側から入口側端面14b側に向けて気孔率が次第に増加する多孔質材料は、例えば図4に示すハニカム構造体12の製造方法でも得られる。このハニカム構造体12の製造方法では、セラミックスなど、気孔率が一定の、又は気孔率が0の多孔質素材を上流側から供給し、ハニカム構造部14を形成するための口金26の直上流にポリマー粒子などの増孔剤を供給して、ハニカム構造部14を構成する多孔質材料を取得する。その際、増孔剤の供給量を次第に増加又は減少し且つその増加及び減少を一定周期毎に変更しながら供給することで、口金26に供給される多孔質材料には、気孔率の高い(大きい)部分と気孔率の低い(小さい)部分が交互にできる。この多孔質材料を、口金26側に移動しながら、ハニカム構造部14を形成するための口金26に通過して押し出すと、押し出された多孔質材料には、気孔率の高い(大きい)部分と気孔率の低い(小さい)部分が一定周期毎に次第に変化するハニカム構造部14のブランクが形成される。従って、気孔率の最も高い(大きい)部分、即ち気孔率が増加から減少に変化する位置と気孔率の最も低い(小さい)部分、即ち気孔率が減少から増加に変化する位置を切断位置に設定し、それらの切断位置で押し出された多孔質材料を切断すれば、出口側端面14aから入口側端面14bに向けて気孔率が漸次増加するハニカム構造部14を備えたハニカム構造体12が得られる。
【0024】
図5は、図1のハニカム構造体12の隔壁16の気孔率が大きい部分の説明図であり、図5(A)は触媒コーティング前の隔壁16・気孔22の断面図、図5(B)は触媒コーティング後の隔壁16・気孔22の断面図、図6は、図1のハニカム構造体12の隔壁16の気孔率が小さい部分の説明図であり、図6(A)は触媒コーティング前の隔壁16・気孔22の断面図、図6(B)は触媒コーティング後の隔壁16・気孔22の断面図である。気孔率は、広義には、例えば隔壁に形成される気孔(空間)の開口断面積比率である。図5(A)は気孔率が大きい隔壁16であって、空間として形成される気孔22の断面積が大きいので、図5(B)に示すように、この気孔22の内壁にコーティングされる触媒24の表面積も大きく、従って触媒24に接触する排ガス量も大きい。一方、図6(A)は気孔率が小さい隔壁16であって、空間として形成される気孔22の断面積が小さいので、図6(B)に示すように、この気孔22の内壁にコーティングされる触媒24の表面積が小さく、従って触媒24に接触する排ガス量も小さい。
【0025】
周知のように、排ガス出口側が閉塞されるセル18では、排ガス浄化に伴って排ガス中の灰分が排ガス出口側から次第に堆積する場合がある。灰分が完全に堆積してしまったセル18の出口側領域では気孔22が閉塞され、排ガスが隔壁16の気孔22を通過しないので、気孔22によるPM除去や触媒24による特定成分の除去は行われない。これに対し、ハニカム構造体12の隔壁16の気孔率が排ガス出口側領域よりも排ガス入口側領域で漸次大きくなる実施の形態の排ガス浄化フィルタ10では、灰分がセル18の排ガス出口側に堆積しても、排ガス入口側領域の開口断面積の大きい気孔22にコーティングされた表面積の大きな触媒24に多くの排ガスが接触するため、長期間の使用後も有効に排ガスを浄化することが可能となることから、排ガス浄化性能の長寿命化が可能となる。その際、排ガス浄化機能が階段的に急激に低下することがない。また、灰分が堆積しやすいセル18の排ガス出口側領域には、気孔率の小さい隔壁16が配置され、その気孔22は開口断面積が小さいのでコーティングされる触媒24の量も少ない。一般に、触媒24には高価な貴金属が使用されるので、コーティングに使用される触媒24の量を低減することができれば、コストを低廉化することも可能となる。
【0026】
このように、この実施の形態のハニカム構造体12及び排ガス浄化フィルタ10では、複数のセル18が排ガスの流れ方向に伸長するハニカム構造部12を筒状体20の内部に有し、各セル18は伸長方向の一方の端部又は他方の端部の何れか一方が閉塞され且つ各セル18を隔てる隔壁16は排ガスの通過可能な多孔質隔壁として構成され、その多孔質隔壁は、排ガスの出口側領域の気孔率よりも入口側領域の気孔率が漸次大きくなるように形成される。これにより、排ガス出口側が閉塞されたセル18内には排ガス浄化に伴って排ガス中の灰分が排ガス出口側から次第に堆積し、灰分が堆積した部分では多孔質隔壁16の気孔22が閉塞するが、気孔率が排ガス出口側領域に対して漸次大きい排ガス入口側領域の多孔質隔壁16では、長期間の排ガス浄化後も、未だ多数の気孔22が開口したまま、或いはより大きな開口断面積の気孔22が開口したままの状態であるので、この開口している排ガス入口側の多孔質隔壁16の気孔22を通じて排ガス浄化が継続され、また排ガス浄化機能が階段状に急激に低下することもなく、その結果、排ガス浄化性能の長寿命化が可能となる。また、排ガス浄化フィルタ10としてハニカム構造部14に触媒24がコーティングされる際、排ガス浄化中、先に排ガス中の灰分によって閉塞されてしまう排ガス出口側の多孔質隔壁16の気孔率が排ガス入口側の気孔率に対して漸次小さく設定されているので、より早く排ガス浄化に寄与しなくなる気孔22周壁への触媒24、即ち高価な貴金属のコーティング量を効率的に低減することができ、これにより触媒24に用いられる高価な貴金属が効率よく使用されることからコストの低廉化が可能となる。
【0027】
また、気孔率の異なる2種類の多孔質素材の混合比率を次第に増加又は減少し且つその増加及び減少を一定周期毎に変更しながら混合して多孔質材料を生成し、その多孔質材料を、ハニカム構造部14を形成する口金26に通過して押し出し、押し出された多孔質材料を所定の切断位置で切断してハニカム構造体12を製造する。このとき、口金26から押し出された多孔質材料は、気孔率が大きい状態から小さい状態、又は小さい状態から大きい状態に一定周期毎に次第に変化するので、気孔率の最大部分と気孔率の最小部分との双方の位置を切断位置として、それらの切断位置で押し出された多孔質材料を切断すれば、出口側端面14aから入口側端面14bに向けて気孔率が漸次増加するハニカム構造部14のハニカム構造体12を容易に取得することができる。
【0028】
また、ハニカム構造部14を形成する口金26の入側に供給する増孔剤の供給量を次第に且つ連続的に増加又は減少し且つその増加及び減少を一定周期毎に変更しながら多孔質素材に混合して多孔質材料を生成し、その多孔質材料を口金26に通過して押し出し、押し出された多孔質材料を所定の切断位置で切断してハニカム構造体12を製造する。このとき、口金26から押し出された多孔質材料は、気孔率が大きい状態から小さい状態、又は小さい状態から大きい状態に一定周期毎に次第に変化するので、気孔率の最大部分と気孔率の最小部分との双方の位置を所定の切断位置として、それらの切断位置で押し出された多孔質材料を切断すれば、出口側端面14aから入口側端面14bに向けて気孔率が漸次増加するハニカム構造部14のハニカム構造体12を容易に取得することができる。
【0029】
なお、気孔率の異なる多孔質素材を混合して本発明のハニカム構造体の多孔質隔壁に適合する多孔質材料を生成する場合、3種類以上の気孔率の異なる多孔質素材を混合して取得してもよい。
【0030】
本発明が上記していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当とされる特許請求の範囲に記載された発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0031】
10 排ガス浄化フィルタ
12 ハニカム構造体
14 ハニカム構造部
16 隔壁
18 セル
20 筒状体
22 気孔
24 触媒
26 口金
図1
図2
図3
図4
図5
図6