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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20220502BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
F25B1/00 331C
F25B1/00 321B
F28F1/02 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018085217
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019190760
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 道治
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】台坂 恒
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-033968(JP,A)
【文献】特開2014-031930(JP,A)
【文献】特開2003-074991(JP,A)
【文献】特開2015-124992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F28F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器、および四方弁を、冷媒を流すための配管で接続して冷凍サイクルを構成し、
前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入口との間の第1流路と、前記蒸発器の出口と前記四方弁の入口との間の第2流路と、前記第1流路における前記膨張弁と前記蒸発器の入口との間の流路から分岐し、前記第2流路に接続される第3流路と、を有し、
前記膨張弁は、前記第1流路に配置され、
前記第2流路を流れる冷媒を、前記第1流路のうち前記凝縮器の出口と前記膨張弁の入口との間を流れる冷媒により加熱する加熱部と、
前記第1流路のうち前記凝縮器の出口と前記膨張弁の入口との間を流れる冷媒と、前記第3流路を流れる冷媒との間で熱交換を行う第1熱交換部と、
前記第3流路における前記第1熱交換部よりも前記第2流路側において、前記第3流路を流れる冷媒と、前記圧縮機との間で熱交換を行う第2熱交換部と、を備え
前記第1熱交換部および前記第3流路は、前記第2流路を流れる冷媒を加熱する前記加熱部として機能し、
前記第2熱交換部は、前記第2流路を流れる冷媒を加熱する前記加熱部として機能し、
前記蒸発器の出口における冷媒を気液二相状態とし、前記加熱部により前記四方弁の入口を気相状態として、冷凍サイクルを形成する、空気調和装置。
【請求項2】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器、および四方弁を、冷媒を流すための配管で接続して冷凍サイクルを構成し、
前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入口との間の第1流路と、前記蒸発器の出口と前記四方弁の入口との間の第2流路と、を有し、
前記膨張弁は、前記第1流路に配置され、
前記第2流路を流れる冷媒を、前記第1流路のうち前記凝縮器の出口と前記膨張弁の入口との間を流れる冷媒により加熱する加熱部と、
前記第2流路を流れる冷媒と、前記第1流路のうち前記凝縮器の出口と前記膨張弁の入口との間を流れる冷媒との間で熱交換を行う第3熱交換部と、
前記第2流路における前記第3熱交換部よりも前記四方弁側において、前記第2流路を流れる冷媒と、前記圧縮機との間で熱交換を行う第4熱交換部と、を備え、
前記第3熱交換部は、前記第2流路を流れる冷媒を加熱する前記加熱部として機能し、
前記第4熱交換部は、前記第2流路を流れる冷媒を加熱する前記加熱部として機能し、
前記蒸発器の出口における冷媒を気液二相状態とし、前記加熱部により前記四方弁の入口を気相状態として、冷凍サイクルを形成する、空気調和装置。
【請求項3】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器、および四方弁を、冷媒を流すための配管で接続して冷凍サイクルを構成し、
前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入口との間の第1流路と、前記蒸発器の出口と前記四方弁の入口との間の第2流路と、を有し、
前記膨張弁は、前記第1流路に配置され、
前記第2流路を流れる冷媒を、前記第1流路のうち前記凝縮器の出口と前記膨張弁の入口との間を流れる冷媒により加熱する加熱部と、
前記第2流路を流れる冷媒と、前記第1流路のうち前記凝縮器の出口と前記膨張弁の入口との間を流れる冷媒との間で熱交換を行う第3熱交換部と、
前記第2流路における前記蒸発器の出口と前記第3熱交換部の入口との間の流路から分岐し、前記第2流路における前記第3熱交換部の出口と前記四方弁の入口との間の流路に合流するバイパス流路と、を備え
前記第3熱交換部は、前記第2流路を流れる冷媒を加熱する前記加熱部として機能し、
前記蒸発器の出口における冷媒を気液二相状態とし、前記加熱部により前記四方弁の入口を気相状態として、冷凍サイクルを形成す、空気調和装置。
【請求項4】
前記蒸発器の冷媒流路の分岐数が複数である、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記蒸発器における冷媒流路が、略扁平型の断面に複数の孔を備えた形状である、請求項に記載の空気調和装置。
【請求項6】
前記凝縮器は室内機に設けた室内熱交換器であり、前記蒸発器は室外機に設けた室外熱交換器である、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置は、建屋内を加熱する暖房運転の際に建屋外から熱を吸収し、建屋内を冷却する冷房運転の際に建屋外へ熱を放出する装置である。このため、空気調和装置には、空気と冷媒を熱交換させる熱交換器、空気の流れを生み出す送風装置、冷媒を高温高圧に圧縮する圧縮装置、および冷媒を減圧する膨張装置が備わっている。
【0003】
空気調和装置の動作安定性を高める方法として、蒸発器の出口の冷媒を気化させて圧縮機へ流入させる方法がある。しかしこの場合、蒸発器の出口近傍にて伝熱面が気相域となるため、冷却能力が低くなるという課題があった。
【0004】
上記の課題に対し、特許文献1では、蒸発器出口の冷媒を凝縮器出口の冷媒で加熱することで、圧縮機へ流入する冷媒を気化しつつ、蒸発器出口の冷媒乾き度を低減して冷却能力を高めている。また、特許文献2では、凝縮器を流出した冷媒を2つの経路AとBに分岐し、経路Aを減圧させたのちに、経路Bと熱交換させることで蒸発させ、蒸発器から気液二相状態で流出した経路Bの冷媒と合流させることで、蒸発器での冷却能力を高めつつ圧縮機の吸込冷媒を気化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-60989号公報
【文献】特開2002-156161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、空気調和装置は冷房と暖房の2つのモードで運転する。このため、冷凍サイクルの2つの熱交換器の役割を、一方を凝縮器、もう一方を蒸発器に切り替えるための四方弁が備わっている。四方弁では、圧縮機から流入する高温高圧の冷媒と、蒸発器から流入する低温低圧の冷媒が隣り合って流通するために熱交換が生しる。これにより、高温の冷媒が低温の冷媒によって冷却されることによってサイクル性能に損失が生じる。
【0007】
四方弁のある冷凍サイクルに対して、従来技術を適用することを考えると、冷房と暖房の両方で容易に効果が得られるため、四方弁出口から圧縮機吸込口の間に冷媒を加熱する領域を設けることとなる。しかし、この場合、四方弁を流通する低温冷媒は気液二相流となるため、蒸発を伴う熱伝達となり、熱伝達率が高くなる。すなわち、四方弁に気液二相流を流通させることで熱損失が大きくなる。よって、冷凍サイクルのCOPを高めるには、蒸発器の出口を気液二相としつつも、四方弁に流入する低圧冷媒を気相単相状態とする必要がある。
【0008】
そこで本発明は、蒸発器から流出した気液二相の冷媒を、四方弁へ到達する前に気相単相へ加熱することで、四方弁の熱損失を低減し、COPを向上することができる空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明の一態様による空気調和装置は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器、および四方弁を、冷媒を流すための配管で接続して冷凍サイクルを構成し、前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入口との間の第1流路と、前記蒸発器の出口と前記四方弁の入口との間の第2流路と、を有し、前記膨張弁は、前記第1流路に配置され、前記第2流路を流れる冷媒を、前記第1流路のうち前記凝縮器の出口と前記膨張弁の入口との間を流れる冷媒により加熱する加熱部を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蒸発器から流出した気液二相の冷媒を、四方弁へ到達する前に気相単相へ加熱することで四方弁の熱損失を低減し、COPを向上することができる空気調和装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る空気調和装置の冷凍サイクルの構成図である。
図2】従来技術の空気調和装置の冷凍サイクルの構成図である。
図3】蒸発器内部の冷媒乾き度と熱伝達率の関係の模式図である。
図4】従来技術の冷凍サイクルにおける四方弁内部の流れの模式図である。
図5】第2の実施形態に係る空気調和装置の冷凍サイクルの構成図である。
図6】第2の実施形態に係る室外機の断面の模式図である。
図7】第3の実施形態に係る空気調和装置の冷凍サイクルの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る空気調和装置200について図1から図4を用いて説明する。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る空気調和装置200の冷凍サイクルの構成図を示す。
図1に示した空気調和装置200は、家庭用ルームエアコンである。空気調和装置200は、建屋内を温調するための室内機110と、建屋外の空気と受放熱をおこなう室外機100と、室内機110と室外機100をつなぐ液相側接続配管113および気相側接続配管114とを備える。室内機110の内部には、室内熱交換器111と貫流ファン112が設けられている。室外機100の内部には、圧縮機101と、四方弁102と、室外熱交換器103と、プロペラファン105と、主膨張弁104と、副膨張弁3と、第1熱交換部4とが設けられている。
【0014】
本システムは、圧縮機101、四方弁102、気相側接続配管114、室内熱交換器111、液相側接続配管113、第1熱交換部4、主膨張弁104を経た後、室外熱交換器103を経由する主流路1と、主膨張弁104と室外熱交換器103の間から分岐して、副膨張弁3、第1熱交換部4を経由して四方弁102と室外熱交換器103の間に合流する副流路2で構成される。流路全体は開放部のない閉ループとなっており、流路の内部にR32冷媒が封入されている。なお、冷媒はR410aなど他のものでも構わない。
【0015】
四方弁102の弁体26は、運転設定に応じて図1の左右方向に移動可能である。具体的には、図1では、吐出配管20と室内機側配管22が、吸込配管21と室外機側配管23が連通した状態であるが、弁体26の位置を切り替えることで、吐出配管20と室外機側配管23が、吸込配管21と室内機側配管22が連通した状態に切り替えることができる。
【0016】
主膨張弁104と副膨張弁3はそれぞれ電磁膨張弁であり、図示外の制御装置によって流路の開度を全閉から全開まで調整できる。なお、副膨張弁3は最低限の機能として、流路の開閉ができればよいため、電磁式のバルブなどでも代用可能である。
【0017】
室内熱交換器111と室外熱交換器103は、空気と冷媒が熱交換する形式のものである。具体的には、空気伝熱面となるフィンに対して、冷媒が流通する伝熱管が貫通する構造となるフィンチューブ型熱交換器となっている。
【0018】
第1熱交換部4は、室内熱交換器111と主膨張弁104の間の流路と、副膨張弁3から流路合流点5の間の流路を部分的に接触させた構造である。よって、第1熱交換部4は、過冷却熱交換器として機能する。
【0019】
室内熱交換器111の出口と室外熱交換器103の入口との間の流路は第1流路Aである。主流路1は、第1流路Aの一部を構成する。室外熱交換器103の出口と四方弁102の入口との間の流路は第2流路Bである。第1流路Aにおける主膨張弁104と室外熱交換器103の入口との間の流路から分岐し、第2流路Bに接続される流路は第3流路Cであり、副流路2は第3流路Cに相当する。
【0020】
第1の実施形態に係る空気調和装置200について、冷凍サイクルの動作を説明する。
図1に示した空気調和装置200では、暖房運転時の接続関係を示している。圧縮機101で高温高圧の気相状態に圧縮された冷媒は、四方弁102を経由した後、室内熱交換器111へ流入する。室内熱交換器111では貫流ファン112によって生み出された空気流へ冷媒が熱を放出し、建屋内の空気が加温される。この時、冷媒は冷却されることで気液二相状態を経て液単相状態に変化する。室内熱交換器111で放熱し終えた冷媒は室外機100へと戻り、第1熱交換部4で冷却された後、主膨張弁104を通過することで外気温度以下の気液二相状態に減圧する。
【0021】
減圧後の冷媒は主流路1と副流路2に分岐する。主流路1の冷媒は、室外熱交換器103へ流入し、プロペラファン105によって生み出された空気流から熱を受け取ることで蒸発する。副流路2の冷媒は、第1熱交換部4で加熱された後、流路合流点5で主流路1の冷媒と合流する。なお、主流路1と副流路2の冷媒流量比は副膨張弁3の開度によって調整する。主流路1と副流路2の冷媒流量比は、例えば、主流路1:95%、副流路2:5%である。合流した冷媒は四方弁102を経由した後、圧縮機101の吸込側へと戻る。この閉ループにより建屋内空気の加温が継続的に行われる。
【0022】
冷房運転の場合には、図1において弁体26を右側にシフトし、副膨張弁3を全閉とする。これにより、冷媒は暖房運転と逆回りで流動し、室外熱交換器103で熱を放出、室内熱交換器111で熱を受け取るため、建屋内の空気が冷却される。なお、冷房運転の場合には副膨張弁3を全閉とするため、副流路2の冷媒は流動しない。
【0023】
第1の実施形態に係る空気調和装置200の効果を説明するために、従来技術との相違点について説明する。
図2に従来技術の空気調和装置210の冷凍サイクルの構成図を示す。従来の冷凍サイクルは図1の空気調和装置200に対して第1熱交換部4、副膨張弁3、副流路2を有していない。また、副流路2がないため流路合流点5も存在しない。よって、暖房運転の場合、主膨張弁104を流出した冷媒は室外熱交換器103で外気から熱を得た後、四方弁102、圧縮機101の順に流動する。
【0024】
図3は、室外熱交換器103を蒸発器として使用した時の冷媒の乾き度と熱伝達率の関係の模式図である。
蒸発過程では、気液二相の冷媒は入口から出口にかけて乾き度が増加し、下流へ行くほど気相域が占める割合が増える。この時、冷媒の熱伝達率は、乾き度の閾値x以上で急激に低下する。これは、閾値xを境に冷媒の流動様式が、伝熱管壁面に液相、伝熱管中心に気相の分布となる環状流から、気相の流れの中に液相が分布する流れへと変化することで、伝熱管壁面での冷媒の蒸発が起こりにくくなるためである。なお、閾値xは伝熱管内面の溝形状などに依存するため、定まった値は無いが、一般的には乾き度0.9~1.0である。
【0025】
冷媒の熱伝達率が低下すると、一定の交換熱量を得るために必要な空気と冷媒の温度差が拡大するが、流入空気温度は一定であるため、蒸発温度が低下、すなわち蒸発圧力が低下する。したがって、室外熱交換器103の出口の乾き度が増加するほど、熱伝達率が低い伝熱面の占める割合が増えることで、蒸発圧力が低下する。蒸発圧力が低下すると、吐出圧力との圧力差が増えることで理論圧縮動力が増加し、圧縮機入力電力の増加によってCOPが低下する。
【0026】
上記の理由から、従来技術ではCOPを最大化するために室外熱交換器103の出口乾き度を1未満として使用するが、この場合には四方弁102の熱損失に課題が生じる。
【0027】
図4は、従来技術における四方弁102の内部の流動状態を模式的に示した図である。
図4では、吐出配管20から室内機側配管22へ圧縮機101から吐出された高温の冷媒が流通し、室外機側配管23から吸込配管21へ室外熱交換器103を流通した気液二相の冷媒が流通する状態を示したものである。
【0028】
室外熱交換器103を流出した冷媒は気液二相であるため、気相冷媒25の内部に液相冷媒24が分布した状態となっている。ここで、四方弁102の内部において低温冷媒は弁体26内で流れが180度曲げられるが、密度の大きい液相冷媒24は慣性力が高いため、弁体26の壁面に付着して液膜を形成する。弁体26の壁面に液膜が形成された場合、弁体26を介して高温の冷媒と熱交換する際に、液膜が蒸発するために熱伝達率が高くなる。これにより、低温側の冷媒が気液二相の場合は気相単相の場合に比べて熱交換量が多くなる。
【0029】
四方弁102において高温冷媒と低温冷媒の熱交換量が増加した場合、暖房運転の際に室内熱交換器111の入口の冷媒温度が低下する。これにより室内熱交換器111の入口の冷媒の比エンタルピが低下するため、室内熱交換器111の出入口の比エンタルピ差が減少し、暖房能力の低下によってCOPが低下する。
【0030】
以上の理由により、従来技術では、室外熱交換器103の出口を気液二相状態にして蒸発圧力を維持する一方で、四方弁102での熱交換量が高いために暖房能力に損失が生じて、COPが目減りする。
【0031】
これに対して、第1の実施形態に係る空気調和装置200では、副流路2に分岐した冷媒を第1熱交換部4によって気相域に加熱した後、室外熱交換器103を流出した主流路1の冷媒と合流させる。これにより、副膨張弁3を用いて副流路2の流量を調整することで、第1熱交換部4を流出した副流路2の冷媒の乾き度1以上とし、当該乾き度1以上の冷媒により、室外熱交換器103を流出する気液二相の冷媒を加熱することが可能となる。このように、本実施形態において、第1熱交換部4および副流路2(第3流路C)は、第2流路Bを流れる冷媒を加熱する加熱部40として機能する。
【0032】
したがって、第1熱交換部4の副流路2側の出口の冷媒乾き度を1以上とすることで、室外熱交換器103の出口の冷媒乾き度を1未満としつつ、四方弁102に流入する冷媒を気相単相にできる。よって、四方弁102における低温冷媒の熱伝達率を低減して熱損失を抑制し、COPを向上することができる。
【0033】
以上の構成により、第1の実施形態に係る空気調和装置200は、従来の空気調和装置に比べてCOPを向上できる。なお、本実施形態は、暖房運転の場合に効果を得ることを目的とした構成となっているが、冷房運転で効果を得ることを目的とした構成とすることも可能である。
【0034】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る空気調和装置220について図5図6を用いて説明する。
【0035】
図5は、第2の実施形態に係る空気調和装置220の冷凍サイクルの構成図を示す。
第2の実施形態に係る空気調和装置220は、第1の実施形態に係る空気調和装置200に対して、第1熱交換部4と流路合流点5の間の副流路2(第2流路B)が圧縮機101と接する第2熱交換部6を経由している点と、室外熱交換器103の前後に液相側分配器30と気相側分配器31を設けている点が異なる。
【0036】
第2熱交換部6は、圧縮機101の表面に副流路2が接する形状であり、温度が高い圧縮機101の表面によって副流路2の冷媒を加熱するものである。ただし、目的の作用が得られれば、圧縮機101の周囲に熱交換器を配置するなど、様々な構成があり得る。本実施形態では、第1熱交換部4、副流路2(第3流路C)、および第2熱交換部6は、第2流路Bを流れる冷媒を加熱する加熱部41として機能する。
【0037】
暖房運転の場合には、主流路1の冷媒は液相側分配器30にて複数の流路へ分岐して室外熱交換器103で蒸発した後、気相側分配器31で合流する。一方、冷房運転の場合には、四方弁102を流出した冷媒は、気相側分配器31で複数の流路へ分岐して、室外熱交換器103で凝縮した後、液相側分配器30で合流する。
【0038】
図6は、室外機100の断面の模式図を示す。
【0039】
室外熱交換器103は、空気側の伝熱面となるフィン32と、扁平形状の断面に複数の孔を備えた扁平型伝熱管33を備える。室外熱交換器103の上下は、室外機100の筐体壁面34で閉じられ、室外機100の内部に設けたファンモータ35を駆動することでプロペラファン105を回転させて、図面の右から左へ向かう気流を発生させる。冷媒は、扁平型伝熱管33の内部を図面の手前と奥行方向に流動する。これによって空気と冷媒が熱交換する。なお、各扁平型伝熱管33は図5に示した液相側分配器30と気相側分配器31と接続しているが、詳細な経路については省略した。
【0040】
図6に示した扁平型伝熱管33を用いた熱交換器は、流路の断面積が小さいために、使用に際しては冷媒流路を分岐させて複数の冷媒パスで熱交換させる必要がある。ここで、冷媒流路を複数の冷媒パスに分岐させた場合、各流路の圧力損失の違いや、流路出入口のヘッド差、流入風速の分布などによって、冷媒パスごとに冷媒の流量や交換熱量に差異が生じることがある。これが原因で、冷媒流路を多冷媒パス化した蒸発器では、条件によっては、流路出口側において冷媒の乾き度が1未満の冷媒パスと、1以上の冷媒パスが生じる。乾き度が1以上の冷媒パスでは冷媒の熱伝達率が低くなるが、合流後は全ての冷媒パスを総合した乾き度となる。このため、合流後の蒸発器出口は気液二相状態となるが、部分的に乾き面が発生して熱伝達率が低下するということが起こりうる。すなわち、蒸発器出口の乾き度分布が不均一な場合には、同じ出口乾き度でも蒸発圧力が低下することがある。
【0041】
次に、第1の実施形態の空気調和装置200に対して、第2の実施形態の室外熱交換器103を適用した場合を考える。第1の実施形態では、室外熱交換器103の出口側と四方弁102の間は副流路2の冷媒で加熱されるため、四方弁102の入口を気相単相としつつ、室外熱交換器103の出口の乾き度を低減できる。そのため、室外熱交換器103の出口において、各冷媒パスの乾き度に多少の差異が生じた場合でも、副流路2による加熱量を最大限まで高めることで、蒸発圧力の低下を抑制することができる。
【0042】
ただし、冷媒分配の不均一度が高い場合、第1の実施形態の副流路2の構成では、加熱量が不十分となり、室外熱交換器103の出口にて冷媒の熱伝達率が低下する冷媒パスが生じることがあり得る。
【0043】
これに対して、第2の実施形態の空気調和装置220では、第1熱交換部4で加熱された副流路2の冷媒は、第2熱交換部6を経由することで、圧縮機101から熱を受け取ってさらに高い温度まで加熱される。そのため、流路合流点5における第2流路Bの冷媒に対する加熱量を高めることができ、結果、室外熱交換器103の出口における各冷媒パスの乾き度のばらつきに対する許容度を高めることができる。
【0044】
以上の構成により、第2の実施形態に係る空気調和装置220は、冷媒分配が不均一となる場合でもCOPが向上するシステムを提供することができる。
【0045】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態に係る空気調和装置230について図7を用いて説明する。
【0046】
図7は、第3の実施形態に係る空気調和装置230の冷凍サイクルの構成図を示す。
第3の実施形態に係る空気調和装置230は、第2の実施形態に係る空気調和装置220から、副膨張弁3と副流路2を除き、第1熱交換部4の代わりに第3熱交換部10を設置した冷凍サイクルである。気相側分配器31の出口は、第1逆止弁11、第3熱交換部10、第4熱交換部16を経由した後、四方弁102に接続される。当該気相側分配器31の出口から、第1逆止弁11、第3熱交換部10、第4熱交換部16を経由し、四方弁102の入口に至る流路が第2流路Bに相当する。また、室外熱交換器103と第1逆止弁11の間と、第4熱交換部16と四方弁102の間は、第2逆止弁12を介してバイパス流路13で接続される。第3熱交換部10は、内部熱交換器であり、加熱部として機能する。また、第4熱交換部16の構成および機能は、第2熱交換部6と同じであり、加熱部として機能する。
【0047】
暖房運転の場合には、冷媒は気相側分配器31を流出した後、第1逆止弁11を経由して、第3熱交換部10へ流入し、室内熱交換器111と主膨張弁104の間の冷媒によって加熱される。さらに第3熱交換部10を流出した冷媒は、第4熱交換部16にて圧縮機101から熱を得て加熱される。これにより、第2の実施形態と同様に、室外熱交換器103の出口側における各冷媒パスの乾き度のばらつきが大きい場合でも、室外熱交換器103の出口側の各冷媒パスの冷媒を気液二相状態としつつ、四方弁102に流入する冷媒を気相単相にすることができる。なお、暖房運転の場合には第2逆止弁12の作用により、バイパス流路13の冷媒は流動しない。
【0048】
冷房運転の場合には、冷媒は四方弁102を流出したのち、バイパス流路13を経て気相側分配器31へと流入する。この時、第4熱交換部16および第3熱交換部10へ向かう流れは、第1逆止弁11の作用によって遮られる。これにより、圧縮機101から吐出した高温の冷媒による圧縮機101自身の加熱や、第3熱交換部10にて室内機110に流入する冷媒を加熱することによる冷却能力の低下を防ぐことができる。
【0049】
上記の構成により、暖房運転では室外熱交換器103の出口を気液二相流としつつ、四方弁102の熱損失を低減でき、冷房運転では損失の増加を抑制することができる。なお、上記構成は一例であり、第4熱交換部16が無い場合でも効果が得られる。また、本実施形態では暖房運転時と冷房運転時の冷媒経路を切り替える方法として2つの逆止弁を用いたが、バイパス流路13の出入口に三方弁を設置するなど、流路を直接切り替えるものでも同等の効果を得ることができる。
【0050】
なお、本実施形態は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本実施形態の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1:主流路、 2:副流路、 4:第1熱交換部、 6:第2熱交換部、 10:第3熱交換器、 13:バイパス流路、 16:第4熱交換部、 30:液相側分配器、 31:気相側分配器、 33:扁平型伝熱管、 40、41:加熱部、 100:室外機、 101:圧縮機、 102:四方弁、 103:室外熱交換器、 104:主膨張弁、 110:室内機、 111:室内熱交換器、 200、220、230:空気調和装置、 A:第1流路、 B:第2流路、 C:第3流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7