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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】衝撃吸収部材、及び緩衝体
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/12 20060101AFI20220502BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20220502BHJP
   G21F 5/08 20060101ALI20220502BHJP
   G21C 19/32 20060101ALI20220502BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
F16F7/12
F16F7/00 B
G21F5/08
G21C19/32 100
G21F9/36 501J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018100002
(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公開番号】P2019203572
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宣也
(72)【発明者】
【氏名】寺田 愉考
(72)【発明者】
【氏名】野間 一希
(72)【発明者】
【氏名】丸山 勇治
(72)【発明者】
【氏名】三井 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】北田 明夫
(72)【発明者】
【氏名】前口 貴治
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/179187(WO,A1)
【文献】特開2008-233098(JP,A)
【文献】特開2017-114564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/12
F16F 7/00
G21F 5/08
G21C 19/32
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定面に配置される衝撃吸収部材であって、
繊維と樹脂とを含む複合材料で形成され、前記固定面に交差する管軸を有する複合材管と、
前記複合材管の前記管軸の延びる方向における端部を支持する支持部、及び前記固定面に形成された孔部に挿入可能な突出部を有する支持冶具と、
を備え、
前記支持部は、前記管軸に対する少なくとも径方向から前記複合材管に当接する当接面を有し、
前記突出部の外径は前記複合材管の外径よりも小さく、
前記固定面が、互いに対向する一対の固定面であって、
前記支持冶具が、前記一対の固定面のうち少なくとも一方の固定面に配置され、
前記複合材管が、前記一対の固定面の間に配置される衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記支持部は、
前記管軸に交差する面に沿って広がるとともに、前記管軸の延びる方向から前記複合材管に当接する底部と、
前記底部から前記管軸に沿って延びるとともに、前記複合材管の外周面に当接する筒形状の筒状部と、を有し、
前記底部の前記複合材管を向く面、及び前記筒状部の内周面が前記当接面をなしている請求項1に記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
固定面に配置される衝撃吸収部材であって、
繊維と樹脂とを含む複合材料で形成され、前記固定面に交差する管軸を有する複合材管と、
前記複合材管の前記管軸の延びる方向における端部を支持する支持部、及び前記固定面に形成された孔部に挿入可能な突出部を有する支持冶具と、
を備え、
前記支持部は、前記管軸に対する少なくとも径方向から前記複合材管に当接する当接面を有し、
前記突出部の外径は前記複合材管の外径よりも小さく、
前記当接面は、前記管軸に対する径方向内側から外側に向かうに従って、前記固定面から次第に離間するように湾曲する湾曲部を有する衝撃吸収部材。
【請求項4】
固定面に配置される衝撃吸収部材であって、
繊維と樹脂とを含む複合材料で形成され、前記固定面に交差する管軸を有する複合材管と、
前記複合材管の前記管軸の延びる方向における端部を支持する支持部、及び前記固定面に形成された孔部に挿入可能な突出部を有する支持冶具と、
を備え、
前記支持部は、前記管軸に対する少なくとも径方向から前記複合材管に当接する当接面を有し、
前記突出部の外径は前記複合材管の外径よりも小さく、
前記当接面は、前記管軸に沿って延びるとともに、前記複合材管の内周面に当接し、
前記当接面は、前記管軸に対する径方向外側から内側に向かうに従って、前記固定面から次第に離間するように湾曲する湾曲部を有する衝撃吸収部材。
【請求項5】
固定面に配置される衝撃吸収部材であって、
繊維と樹脂とを含む複合材料で形成され、前記固定面に交差する管軸を有する複合材管と、
前記複合材管の前記管軸の延びる方向における端部を支持する支持部、及び前記固定面に形成された孔部に挿入可能な突出部を有する支持冶具と、
を備え、
前記支持部は、前記管軸に対する少なくとも径方向から前記複合材管に当接する当接面を有し、
前記突出部の外径は前記複合材管の外径よりも小さく、
前記支持部は、前記当接面から前記複合材管に向かって突出し、前記管軸に対する径方向に延びるとともに、周方向に間隔をあけて配列された複数のリブを有する衝撃吸収部材。
【請求項6】
固定面に配置される衝撃吸収部材であって、
繊維と樹脂とを含む複合材料で形成され、前記固定面に交差する管軸を有する複合材管と、
前記複合材管の前記管軸の延びる方向における端部を支持する支持部、及び前記固定面に形成された孔部に挿入可能な突出部を有する支持冶具と、
を備え、
前記支持部は、前記管軸に対する少なくとも径方向から前記複合材管に当接する当接面を有し、
前記突出部の外径は前記複合材管の外径よりも小さく、
前記管軸の延びる方向における前記複合材管の端部を含む部分には、前記管軸に沿って延びるとともに、周方向に間隔をあけて配列された複数の切れ込み部が形成されている衝撃吸収部材。
【請求項7】
定面が形成されたケーシングと、
前記固定面に配置された衝撃吸収部材と、
を備え
前記衝撃吸収部材が、
繊維と樹脂とを含む複合材料で形成され、前記固定面に交差する管軸を有する複合材管と、
前記複合材管の前記管軸の延びる方向における端部を支持する支持部、及び前記固定面に形成された孔部に挿入可能な突出部を有する支持冶具と、を備え、
前記支持部は、前記管軸に対する少なくとも径方向から前記複合材管に当接する当接面を有し、
前記突出部の外径は前記複合材管の外径よりも小さい
緩衝体。
【請求項8】
前記固定面が形成されたケーシングと、
前記固定面に配置された請求項1から6のいずれか一項に記載の衝撃吸収部材と、
を備える緩衝体。
【請求項9】
被収容物を収容する輸送容器と、
前記輸送容器に装着された請求項7又は8に記載の緩衝体と、
を備えるキャスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収部材、及び緩衝体に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所で生じた使用済みの核燃料は、冷却のために発電所内にある貯蔵プールで一定の期間にわたって保管される。その後、再処理工場に送られて処理される。
【0003】
しかし、貯蔵プールに空きがない場合には、貯蔵施設で使用済み核燃料を一時的に保管することがある。このような施設への使用済み核燃料の運搬や保管に際しては、キャスクと呼ばれる容器が用いられる。キャスクは、コンクリート、鋼鉄等で形成された円柱形状の輸送容器と、輸送容器を衝撃から保護する緩衝体と、を有している。輸送容器の内部には、熱伝導性の高いヘリウム等の不活性ガスとともに使用済み核燃料が封入される。
【0004】
上記の緩衝体の具体例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された緩衝体は、ケーシングと、ケーシングの内部空間に充填された衝撃吸収部材と、を備えている。衝撃吸収部材は、繊維強化樹脂で形成された複数の中空筒状体を有している。中空筒状体は、ケーシングの内面側に配列されている。特許文献1では、ケーシングの外面側から衝撃が加わった場合、中空筒状体に剥離破壊が生じることで衝撃を吸収できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-114564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に係る構成において、剥離破壊を発揮させるには、ケーシングの内面に中空筒状体を固定させる必要がある。ケーシングの内面に中空筒状体固定させるには、固定面であるケーシングの内面に、中空筒状体の外径に相当する孔径を有する孔を形成し、この孔に中空筒状体を挿入することが考えられる。
しかしながら、孔に中空筒状体を挿入するには、固定面を加工して、中空筒状体の外径に相当する孔径を有する孔を設ける必要がある。このため、固定面の加工作業が負担となっている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、固定面の加工作業を軽減できる衝撃吸収部材、緩衝体、及びキャスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の態様の衝撃吸収部材は、固定面に配置される衝撃吸収部材であって、繊維と樹脂とを含む複合材料で形成され、前記固定面に交差する管軸を有する複合材管と、前記複合材管の前記管軸の延びる方向における端部を支持する支持部、及び前記固定面に形成された孔部に挿入可能な突出部を有する支持冶具と、を備え、前記支持部は、前記管軸に対する少なくとも径方向から前記複合材管に当接する当接面を有し、前記突出部の外径は前記複合材管の外径よりも小さい。
【0009】
この構成によれば、複合材管は、固定面に管軸方向から支持冶具によって支持されている。支持冶具は、複合材管の外径よりも小さい外径を有する突出部を孔部に挿入することで、固定面上で支持されている。これにより、孔部の内径を複合材管の外径よりも小さくすることができる。その結果、固定面の加工作業が軽減される。
【0010】
第二の態様の衝撃吸収部材は、前記固定面が、互いに対向する一対の固定面であって、前記支持冶具が、前記一対の固定面のうち少なくとも一方の固定面に配置され、前記複合材管が、前記一対の固定面の間に配置している第一の態様の衝撃吸収部材である。
【0011】
この態様によれば、一対の固定面によって複合材管を固定することができるため、複合材管を安定して固定することができる。
【0012】
第三の態様の衝撃吸収部材は、前記支持部は、前記管軸に交差する面に沿って広がるとともに、前記管軸の延びる方向から前記複合材管に当接する底部と、前記底部から前記管軸に沿って延びるとともに、前記複合材管の外周面に当接する筒形状の筒状部と、を有し、前記底部の前記複合材管を向く面、及び前記筒状部の内周面が前記当接面をなしている第一又は第二の態様の衝撃吸収部材である。
【0013】
この態様によれば、底部の複合材管を向く面、及び筒状部の内周面が当接面をなしている。このため、複合材管と支持冶具との接触面が広くなることで、複合材管に生じる応力を低減させ、複合材管の折れを低減できる。
【0014】
第四の態様の衝撃吸収部材は、前記当接面は、管軸に対する径方向内側から外側に向かうに従って、固定面から次第に離間するように湾曲する湾曲部を有する第一又は第二の態様の衝撃吸収部材である。
【0015】
この態様によれば、当接面が湾曲する湾曲部を有することから、支持部は管軸に交差する斜めの方向から複合材管を支持する。その結果、例えば管軸に交差する方向から衝撃が加わった場合に、複合材管にズレや脱離が生じる可能性をさらに低減することができる。加えて、支持部が管軸に交差する斜めの方向から複合材管を支持していることから、複合材管に衝撃が加わった場合における当該複合材管の脆性破壊をさらに促すことができる。より具体的には、複合材管には、Splaying Modeと呼ばれる破壊現象が生じる。Splaying Modeでは、中空筒状体である複合材管3の端部で軸方向に生じた複数の亀裂を破壊起点として、複合材管が内周側に縮径するように破壊が進展する。これにより、複合材管は、衝撃をさらに効果的に吸収することができる。
【0016】
第五の態様の衝撃吸収部材は、前記当接面は、前記管軸に沿って延びるとともに、前記複合材管の内周面に当接している第一又は第二の態様の衝撃吸収部材である。
【0017】
この態様によれば、当接面が複合材管の内周面に当接する。このため、複合材管と支持冶具との接触面が広くなることで、複合材管に生じる応力を低減させ、複合材管の折れを低減できる。
【0018】
第六の態様の衝撃吸収部材は、前記当接面は、前記管軸に対する径方向外側から内側に向かうに従って、前記固定面から次第に離間するように湾曲する湾曲部を有する第五の態様の衝撃吸収部材である。
【0019】
この態様によれば、当接面が湾曲する湾曲部を有することから、支持部は管軸に交差する斜めの方向から複合材管を支持する。その結果、例えば管軸に交差する方向から衝撃が加わった場合に、複合材管にズレや脱離が生じる可能性をさらに低減することができる。加えて、支持部が管軸に交差する斜めの方向から複合材管を支持していることから、複合材管に衝撃が加わった場合における当該複合材管の脆性破壊をさらに促すことができる。
【0020】
第七の態様の衝撃吸収部材は、前記支持部は、前記当接面から前記複合材管に向かって突出し、前記管軸に対する径方向に延びるとともに、周方向に間隔をあけて配列された複数のリブを有している第一から第六の態様のいずれかの一態様の衝撃吸収部材である。
【0021】
この態様によれば、当接面にリブが形成されていることから、複合材管に衝撃が加わった場合、リブと複合材管との間で大きな応力集中が生じる。応力集中が生じることによって、当該部分を破壊起点とする脆性破壊が生じやすくなる。さらに、リブは周方向に間隔をあけて複数配列されていることから、複合材管にはSplaying Modeでの脆性破壊が生じやすくなる。これにより、複合材管は、衝撃をさらに効果的に吸収することができる。
【0022】
第八の態様の衝撃吸収部材は、前記管軸の延びる方向における前記複合材管の端部を含む部分には、前記管軸に沿って延びるとともに、周方向に間隔をあけて配列された複数の切れ込み部が形成されている第一から第七の態様のいずれか一態様の衝撃吸収部材である。
【0023】
この態様によれば、複合材管の端部を含む部分に、管軸の延びる方向に延びる複数の切れ込み部が形成されている。これにより、当該切れ込み部を破壊起点とするSplaying Modeでの脆性破壊が誘発されやすくなる。その結果、複合材管は、衝撃をさらに効果的に吸収することができる。
【0024】
第九の態様の緩衝体は、前記一対の固定面が形成されたケーシングと、前記固定面に配置された第一から第八のいずれか一態様の衝撃吸収部材と、を備える。
【0025】
この態様によれば、固定面の加工作業が軽減された緩衝体を得ることができる。
【0026】
第十の態様のキャスクは、被収容物を収容する輸送容器と、前記輸送容器に装着された第九の態様の緩衝体と、を備える。
【0027】
この態様によれば、固定面の加工作業が軽減されたキャスクを得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、固定面の加工作業を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第一実施形態に係るキャスクの構成を示す断面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る衝撃吸収部材の構成を示す断面図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る衝撃吸収部材の構成を示す断面図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る衝撃吸収部材の変形例を示す図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る衝撃吸収部材の他の変形例を示す図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る衝撃吸収部材のさらなる他の変形例を示す図である。
図7】本発明の第三実施形態に係る衝撃吸収部材の構成を示す断面図である。
図8】本発明の第四実施形態に係る衝撃吸収部材の構成を示す断面図である。
図9】本発明の第四実施形態に係る衝撃吸収部材の変形例を示す図である。
図10】本発明の第五実施形態に係る衝撃吸収部材の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について、図1図2を参照して説明する。本実施形態に係るキャスク100は、例えば原子力発電所で生じた使用済み核燃料を輸送する際に用いられる容器である。具体的には図1に示すように、キャスク100は、輸送容器2と、この輸送容器2に装着された緩衝体1と、を備えている。
【0031】
輸送容器2は、中心軸A1を中心とする円柱形状をなしており、その内部には被収容物としての使用済み核燃料を収容する空間が形成されている。使用済み核燃料は、例えば燃料棒、又はペレット、又は燃料集合体の状態で収容されている。詳しくは図示しないが、輸送容器2は内側から外側にかけて多層構造をなしている。これにより、使用済み核燃料から放射される放射線が遮蔽されるとともに、その熱を外部へ放散することが可能となっている。
【0032】
上記の輸送容器2の両端部(即ち、中心軸A1方向における両側の端部)には、緩衝体1が1つずつ取り付けられている。緩衝体1は、輸送容器2を衝撃等の外力から保護するために取り付けられている。具体的には、緩衝体1は、ケーシング10と、衝撃吸収部材20と、を有している。なお、一対の緩衝体1は、輸送容器2に装着される方向及び姿勢を除いて互いに同等の構成を有していることから、以下では代表的に中心軸A1方向における一方側の緩衝体1についてのみ説明する。
【0033】
ケーシング10は、略円盤形状をなしており、その内部は空洞とされている。より具体的には、ケーシング10は中心軸A1を中心とする円盤形状の第一端板11と、第一端板11と中心軸A1方向から対向する第二端板12と、第一端板11と第二端板12とを中心軸A1方向に接続する円筒形状の側板13と、を有している。第二端板12には、中心軸A1方向一方側に向かって凹む凹部14が形成されている。この凹部14には輸送容器2の端部が嵌めこまれる。具体的には凹部14は、中心軸A1を中心とする円盤形状の凹部底板15と、凹部底板15の外周縁から中心軸A1方向他方側に向かって延びる筒形状の凹部側板16と、を有している。凹部底板15の径寸法は、第一端板11、及び第二端板12の径寸法よりも小さく、望ましくは輸送容器2の外径と同一かわずかに大きい値に設定される。
【0034】
以上のような構成により、ケーシング10内には、第一端板11、側板13の一部、及び凹部底板15によって囲まれた円盤形状の第一空間V1と、第二端板12、凹部側板16、及び側板13の他の一部によって囲まれた円環形状の第二空間V2と、が形成されている。より具体的には、第一空間V1は、中心軸A1方向において凹部底板15よりも一方側に位置する領域であり、第二空間V2は、凹部底板15よりも他方側に位置する領域である。第一空間V1には、例えばスポンジやウレタン等の多孔質樹脂や、バルサ等の木材で形成された衝撃吸収体90が充填されている。一方で、第二空間V2には、衝撃吸収部材20が設けられている。衝撃吸収部材20は、第二空間V2内で中心軸A1方向、及び中心軸A1に対する周方向にそれぞれ間隔をあけて複数配列されている。
【0035】
側板内面13Aと凹部側板内面16Aとは、互いに対向する一対の固定面S1となっている。側板内面13Aと凹部側板内面16Aとは、衝撃吸収部材20を固定する固定面S1をなしている。
衝撃吸収部材20は、一対の固定面S1の間に配置されている。
【0036】
具体的には、衝撃吸収部材20は、側板13の内面(第二空間V2側を向く面:側板内面13A)と、凹部側板16の内面(第二空間V2側を向く面:凹部側板内面16A)とによって固定されている。即ち、これら側板内面13Aと凹部側板内面16Aは、衝撃吸収部材20を固定する固定面S1をなしている。
【0037】
続いて、図2を参照して衝撃吸収部材20の詳細な構成について説明する。同図に示すように、衝撃吸収部材20は、複合材管3と、支持冶具4と、を備えている。複合材管3は、繊維と樹脂とを含む複合材料で形成された円管形状の部材である。複合材管3は、繊維強化樹脂によって形成されている。複合材管3は、例えば炭素繊維強化樹脂によって形成されている。複合材管3は、固定面S1に交差する方向である管軸A2に沿って延びている。本実施形態では、管軸A2は上記の中心軸A1に対する径方向に一致している。
【0038】
支持冶具4は、複合材管3の端部を固定面S1に対して固定するために設けられている。支持冶具4は、複合材管3の端部を支持する支持部31と、固定面S1に形成された孔部Hに挿入される突出部32と、を有している。
【0039】
支持冶具4は、一対の固定面S1のうち少なくとも一方の固定面S1に配置されている。
即ち、衝撃吸収部材20は、一対の固定面S1の間に配置されている。
本実施形態では、支持冶具4は、一対の固定面S1のうち、一方の固定面S1である凹部側板16の内面に配置されている。したがって、支持冶具4は、複合材管3の両端部のうち、凹部側板内面16A側の端部を凹部側板内面16Aに対して固定されている。また、支持冶具4は、側板内面13Aと凹部側板内面16Aとの固定面S1のうち、凹部側板内面16Aの固定面S1に形成された孔部Hに挿入される。
【0040】
支持部31は、管軸A2に交差する面に沿って広がるとともに、管軸A2の延びる方向から複合材管3に当接する底部31Aと、底部31Aから管軸A2に沿って延びるとともに、複合材管3の外周面に当接する筒形状の筒状部31Bと、を有する。
本実施形態において、底部31Aは、管軸A2を中心とする円形状を有する。また、筒状部31Bは、管軸A2を中心として底部31Aの外周縁から管軸A2方向に延びる円筒形状を有する。
【0041】
支持部31は、管軸A2に対する少なくとも径方向から、複合材管3に当接する当接面S2を有している。
本実施形態では、管軸A2方向における底部31Aの両面のうち、複合材管3側を向く面(底部内面5A)は、複合材管3の端面3C(管軸A2方向を向く面)に当接している。
このため、筒状部31Bの内周面(筒状部内周面6A)は、管軸A2に対する径方向から、複合材管3の外周面に当接している。
これら底部内面5A、及び筒状部内周面6Aは、複合材管3にそれぞれ当接することで当接面S2を形成している。
【0042】
突出部32は、管軸A2方向における底部31Aの両面のうち、固定面S1側を向く面(底部外面5B)に設けられている。詳細には、突出部32は、底部外面5Bの中心を通る部分(即ち、管軸A2の位置)に設けられている。突出部32は、底部外面5Bから管軸A2に沿って固定面S1側に延びている。突出部32は、管軸A2を中心とする円柱形状をなしている。突出部32の径寸法は、複合材管3の外径よりも小さく、かつ孔部Hの内径と同一かわずかに小さい値に設定されている。突出部32が孔部Hに挿入された状態では、底部外面5Bは凹部側板内面16Aである固定面S1に当接している。
【0043】
他方、本実施形態では、複合材管3の両端部のうち、側板内面13A側の端部は、側板内面13Aに対して当接することにより、側板内面13Aに固定されている。
【0044】
このような支持冶具4が、管軸A2方向における凹部側板内面16A側に設けられるとともに、管軸A2方向における側板内面13A側に当接することで、複合材管3は固定面S1同士の間で固定されている。
【0045】
次に、本実施形態に係る衝撃吸収部材20、緩衝体1、及びキャスク100の作用について説明する。使用済み核燃料を収容したキャスク100を施設間で運搬する際には、上記の緩衝体1によって輸送容器2に対する衝撃をできるだけ緩和する必要がある。
【0046】
より具体的には、緩衝体1に衝撃が加わった場合、緩衝体1のケーシング10を通じて内部の衝撃吸収体90、又は衝撃吸収部材20に衝撃が伝播され、吸収される。衝撃吸収体90は、ケーシング10に対する中心軸A1方向からの衝撃を主に吸収する。衝撃吸収部材20は、ケーシング10に対する径方向からの衝撃を主に吸収する。より詳細には、衝撃吸収部材20の複合材管3が一対の固定面S1によって管軸A2方向両側から押しつぶされることで衝撃が吸収される。この時、複合材管3には、Splaying Modeと呼ばれる脆性破壊が生じる。
Splaying Modeと呼ばれる破壊現象が生じることで、複合材管3は、衝撃を吸収しやすくなる。
Splaying Modeとは、複合材管の層間が剥離し、複合材管の内または/および外側に花が開くように、複合材管が破壊するモードを指す。
Splaying Modeでは、複合材管の端部で軸方向に延びる複数の亀裂を破壊起点として、複合材管3が外周側に広がるように、または/および複合材管3が内周側に縮径するように破壊が進展する。
本実施形態のSplaying Modeでは、中空筒状体である複合材管3の端部で軸方向に生じた複数の亀裂を破壊起点として、複合材管3が内周側に縮径するように破壊が進展する。その結果、他の破壊モードに比べて、衝撃をより効果的に吸収することができる。
さらに、本実施形態の場合、衝撃吸収部材20は、互いに対向する一対の固定面の間に配置されている。このため、一対の固定面S1によって管軸A2方向両側から押しつぶされることで、管軸A2方向両側でSplaying Modeが生じやすく、衝撃をより効果的に吸収することができる。さらに、一対の固定面S1によって複合材管3を固定することができるため、複合材管3を安定して固定することができる。
【0047】
ここで、複合材管3に対して、管軸A2に交差する斜め方向から衝撃が加わった場合、複合材管3とケーシング10との接触面が狭くなってしまう場合がある。その結果、上記の脆性破壊が誘発されず、十分に衝撃を吸収できない可能性がある。そこで、ケーシング10の内面に孔を形成し、この孔に複合材管3を挿入することで複合材管3とケーシング10との接触面が狭くなってしまうことを回避する構成を採ることも考えられる。しかし、ケーシング10の内面に孔を形成する場合、複合材管3の外径によっては、孔の内径が大きくなるためにケーシング10に対する加工コストの上昇を招いてしまう。また、大径の孔を多数形成することによって、ケーシング10自体の強度も低下してしまう可能性がある。
【0048】
そこで、本実施形態では、複合材管3を支持冶具4によって固定面S1に対して固定する構成を採っている。支持冶具4は、孔部Hに突出部32を挿入することで、固定面S1上で支持されている。これにより、孔部Hの内径を複合材管3の外径よりも小さくすることができる。
その結果、孔部Hの内径を小さくできることで、固定面の加工作業を軽減できる。
固定面の加工作業を軽減されれば、例えば、孔部Hの内径を複合材管3の外径と同等にした場合に比べて加工コストが低減される。
【0049】
また、孔部Hの内径を小さくすることで、孔部Hを形成したことによるケーシング10の強度低下を最小限に抑えることができる。
【0050】
さらに、支持部31は、管軸A2に対する少なくとも径方向から複合材管3に当接する当接面S2を有している。したがって、複合材管3と支持冶具4との接触面が広くなることで、複合材管3に生じる応力を低減させ、複合材管3の折れを低減できる。
【0051】
加えて、上記の構成によれば、底部内面5A、及び筒状部内周面6Aが当接面S2をなしている。即ち、複合材管3は、複合材管3と支持冶具4との接触面がさらに広くなることで、複合材管3に生じる応力を低減させ、複合材管3の折れをさらに低減できる。
【0052】
以上、本発明の第一実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
例えば、上記第一実施形態では、ケーシング10内における第二空間V2のみに衝撃吸収部材20を配置した例について説明した。しかしながら、衝撃吸収部材20が配置される位置は上記に限定されず、例えば上記の第一空間V1に衝撃吸収部材20を配置することも可能である。この場合、第一端板11の内面(第一空間V1側を向く面)と、凹部底板15の内面(第一空間V1側を向く面)とが、上記の固定面S1とされる。
【0053】
また、本実施形態では、支持冶具4は、複合材管3の両端部のうち、凹部側板内面16A側の端部に設けられている。
変形例として、支持冶具4は、複合材管3の両端部のうち、側板内面13A側の端部に設けられてもよい。この場合、支持冶具4は、側板内面13Aと凹部側板内面16Aとの固定面S1のうち、側板内面13Aの固定面S1に形成された孔部Hに挿入される。したがって、複合材管3の両端部のうち、側板内面13A側の端部は、側板内面13Aに固定される。また、複合材管3の両端部のうち、凹部側板内面16A側の端部は、凹部側板内面16Aに対して当接することにより、凹部側板内面16Aに固定される。
他の変形例として、支持冶具4は、複合材管3の両端部にそれぞれ設けられてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、複合材管3の凹部側板内面16A側の端部が、支持冶具4により凹部側板内面16Aに固定され、複合材管3の側板内面13A側の端部が、側板内面13Aに対して当接することにより、側板内面13Aに固定されている。変形例として、複合材管3の側板内面13A側の端部が、側板内面13Aに対して当接することなく、複合材管3の凹部側板内面16A側の端部だけが、支持冶具4により凹部側板内面16Aに固定されていてもよい。
【0055】
[第二実施形態]
続いて、本発明の第二実施形態について、図3を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図3に示すように本実施形態では、支持冶具24の支持部231が半球形状をなしている。より具体的には、支持部231の内面(当接面S21)は、管軸A2を含む断面視において、管軸A2に対する径方向内側から外側に向かうに従って、固定面S1から次第に離間するように湾曲する湾曲部を有している。これにより、複合材管3の外周面は、当接面S21に対して、管軸A2方向、及び管軸A2に対する径方向から当接した状態となる。
【0056】
この構成によれば、当接面S21が湾曲する湾曲部を有することから、支持部231は管軸A2に交差する斜めの方向から複合材管3を支持する。その結果、例えば管軸A2に交差する方向から衝撃が加わった場合に、複合材管3にズレや脱離が生じる可能性をさらに低減することができる。加えて、支持部231が管軸A2に交差する斜めの方向から複合材管3を支持していることから、複合材管3に衝撃が加わった場合における当該複合材管3の脆性破壊をさらに促すことができる。より具体的には、複合材管3には、Splaying Modeと呼ばれる破壊現象が生じる。Splaying Modeでは、中空筒状体である複合材管3の端部で軸方向に生じた複数の亀裂を破壊起点として、複合材管3が内周側に縮径するように破壊が進展する。これにより、複合材管3は、衝撃をさらに効果的に吸収することができる。
【0057】
以上、本発明の第二実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
例えば、上記第二実施形態では、ケーシング10内における第二空間V2のみに衝撃吸収部材20を配置した例について説明した。しかしながら、衝撃吸収部材20が配置される位置は上記に限定されず、例えば上記の第一空間V1に衝撃吸収部材20を配置することも可能である。この場合、第一端板11の内面(第一空間V1側を向く面)と、凹部底板15の内面(第一空間V1側を向く面)とが、上記の固定面S1とされる。
【0058】
支持冶具24は、第一実施形態と同様に、複合材管3の両端部のうち、凹部側板内面16A側の端部に設けられてもよい。また、支持冶具24は、第一実施形態の変形例と同様に、複合材管3の両端部のうち、側板内面13A側の端部に設けられてもよい。さらに、支持冶具24は、第一実施形態の他の変形例と同様に、複合材管3の両端部にそれぞれ設けられてもよい。
【0059】
また、図4図5、及び図6に示す構成を採ることも可能である。
図4の例では、変形例として、当接面S21に複数のリブ6が設けられている。各リブ6は、当接面S21から複合材管3に向かって突出し、かつ管軸A2に対する径方向に延びている。リブ6は、管軸A2に対する周方向に間隔をあけて複数配列されている。この構成によれば、複合材管3に衝撃が加わった場合、リブ6と複合材管3との間で大きな応力集中が生じる。応力集中が生じることによって、当該部分を破壊起点とする脆性破壊が生じやすくなる。さらに、リブ6は周方向に間隔をあけて複数配列されていることから、複合材管3にはSplaying Modeでの脆性破壊が生じやすくなる。これにより、複合材管3は、衝撃をさらに効果的に吸収することができる。
【0060】
図5の例では、他の変形例として、管軸A2の延びる方向における複合材管3の端部を含む部分に、管軸A2に沿って延びる切れ込み部7が形成されている。切れ込み部7は、管軸A2に対する周方向に間隔をあけて複数形成されている。この構成によれば、切れ込み部7が形成されていることにより、当該切れ込み部7を破壊起点とするSplaying Modeでの脆性破壊が誘発されやすくなる。その結果、複合材管3は、衝撃をさらに効果的に吸収することができる。
【0061】
図6の例では、さらなる他の変形例として、支持部231は、上述の半球形状の支持部を複数接合した形状を有してもよい。この場合、支持部231は、複数の複合材管3を支持する。
具体的には、これら複数の複合材管3は、支持部231上で、管軸A2が通る位置、及び管軸A2に対する周方向に配列されている。複数の複合材管3は、互いに当接するように配列されている。即ち、管軸A2方向から見て、支持部231は、これら複数の複合材管3の輪郭に沿った内面形状を有している。このような構成によれば、1つの支持冶具24によって複数の複合材管3が支持されるとともに固定されることから、固定面S1に形成される孔部Hの個数を削減することができる。その結果、孔部Hを多数形成した場合に比べて、固定面の加工作業をより軽減できる。また、孔部Hを多数形成した場合に比べて、ケーシング10の強度低下を抑制することができる。
本変形例では、管軸A2方向から見て、支持部231は、複数の複合材管3の輪郭に沿った内面形状を有しているが、管軸A2方向から見た内面形状はどのような形状でもよい。例えば、管軸A2方向から見た内面形状は、複数の複合材管3を囲む外接円でもよいし、複数の複合材管3を囲む外接多角形でもよい。
【0062】
[第三実施形態]
続いて、本発明の第三実施形態について、図7を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図7に示すように、本実施形態では支持冶具34の支持部331が、複合材管3の外周側ではなく内周側にはめ込まれている。支持部331は、管軸A2を中心とする円柱形状をなしている。支持部331の外周面(当接面S22)は、複合材管3の内周面に径方向内側から当接している。さらに、複合材管3の端面3C(管軸A2方向を向く面)は固定面S1に当接している。
【0063】
この構成によれば、当接面S22が複合材管3の内周面に径方向から当接し、固定面S1が複合材管3の端面に当接している。このため、複合材管3と支持冶具34との接触面が広くなることで、複合材管3に生じる応力を低減させ、複合材管の折れを低減できる。
【0064】
以上、本発明の第三実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
例えば、上記第三実施形態では、ケーシング10内における第二空間V2のみに衝撃吸収部材20を配置した例について説明した。しかしながら、衝撃吸収部材20が配置される位置は上記に限定されず、例えば上記の第一空間V1に衝撃吸収部材20を配置することも可能である。この場合、第一端板11の内面(第一空間V1側を向く面)と、凹部底板15の内面(第一空間V1側を向く面)とが、上記の固定面S1とされる。
【0065】
支持冶具34は、第一実施形態と同様に、複合材管3の両端部のうち、凹部側板内面16A側の端部に設けられてもよい。また、支持冶具34は、第一実施形態の変形例と同様に、複合材管3の両端部のうち、側板内面13A側の端部に設けられてもよい。さらに、支持冶具34は、第一実施形態の他の変形例と同様に、複合材管3の両端部にそれぞれ設けられてもよい。
【0066】
また、第一実施形態の変形例と同様に、側板内面13Aに対して当接することなく、複合材管3の凹部側板内面16A側の端部だけが、支持冶具34により凹部側板内面16Aに固定されていてもよい。
【0067】
[第四実施形態]
続いて、本発明の第四実施形態について、図8を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図8に示すように、本実施形態では支持冶具44の支持部431が、管軸A2に沿って固定面S1側から複合材管3側に向かって尖頭状に突出している。支持部431の先端面(当接面S23)は、管軸A2に対する径方向外側から内側に向かうに従って、固定面S1から次第に離間するように湾曲する湾曲部を有する。これにより、複合材管3の内周面は、当接面S23に対して、管軸A2方向、及び管軸A2に対する径方向から当接した状態となる。
【0068】
この構成によれば、当接面S23が湾曲する湾曲部を有することから、支持部431は管軸A2に交差する斜めの方向から複合材管3を支持する。その結果、例えば管軸A2に交差する方向から衝撃が加わった場合に、複合材管3にズレや脱離が生じる可能性をさらに低減することができる。加えて、支持部431が管軸A2に交差する斜めの方向から複合材管3を支持していることから、複合材管3に衝撃が加わった場合における当該複合材管3の脆性破壊をさらに促すことができる。
【0069】
以上、本発明の第四実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
例えば、上記第四実施形態では、ケーシング10内における第二空間V2のみに衝撃吸収部材20を配置した例について説明した。しかしながら、衝撃吸収部材20が配置される位置は上記に限定されず、例えば上記の第一空間V1に衝撃吸収部材20を配置することも可能である。この場合、第一端板11の内面(第一空間V1側を向く面)と、凹部底板15の内面(第一空間V1側を向く面)とが、上記の固定面S1とされる。
【0070】
支持冶具44は、第一実施形態と同様に、複合材管3の両端部のうち、凹部側板内面16A側の端部に設けられてもよい。また、支持冶具44は、第一実施形態の変形例と同様に、複合材管3の両端部のうち、側板内面13A側の端部に設けられてもよい。さらに、支持冶具44は、第一実施形態の他の変形例と同様に、複合材管3の両端部にそれぞれ設けられてもよい。
【0071】
また、他の変形例として、図9に示す構成を採ることも可能である。図9の例では、当接面S23に複数のリブ26が設けられている。各リブ26は、当接面S23から複合材管3に向かって突出し、かつ管軸A2に対する径方向に延びている。このようなリブ26が、管軸A2に対する周方向に間隔をあけて複数配列されている。この構成によれば、複合材管3に衝撃が加わった場合、リブ26と複合材管3との間で大きな応力集中が生じる。応力集中が生じることによって、当該部分を破壊起点とする脆性破壊が生じやすくなる。さらに、リブ26は周方向に間隔をあけて複数配列されていることから、複合材管3にはSplaying Modeでの脆性破壊が生じやすくなる。これにより、複合材管3は、衝撃をさらに効果的に吸収することができる。
【0072】
さらに、上記第二実施形態で説明した切れ込み部7(図5参照)を複合材管3に形成することも可能である。この構成によれば、切れ込み部7が形成されていることにより、当該切れ込み部7を破壊起点とするSplaying Modeでの脆性破壊が誘発されやすくなる。その結果、複合材管3は、衝撃をさらに効果的に吸収することができる。
【0073】
[第五実施形態]
続いて、本発明の第五実施形態について、図10を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
本実施形態では、支持冶具54は、複合材管3の端部を支持する支持部531と、固定面S1に形成された孔部Hに挿入される突出部532と、を有している。
支持部531は、管軸A2方向から見て三角形断面の柱531Pを複数有する。複数の柱531Pは、管軸A2方向に延びている。
支持部531は、複数の複合材管3を支持する。
すなわち、支持冶具54では、1つの突出部532に対し、複数の柱531Pが形成されている。
【0074】
図10の例のように、支持部531は、管軸A2に交差する面に沿って広がるとともに、管軸A2の延びる方向から複合材管3に当接する底部531Aと、をさらに有してもよい。
本実施形態では、管軸A2方向における底部531Aの両面のうち、複合材管3側を向く面(底部内面55A)は、複合材管3の端面3C(管軸A2方向を向く面)に当接している。
各柱531Pの外周面56Aは、管軸A2に対する径方向から、複数の複合材管3のうちいずれかの複合材管3の外周面に当接している。
これら底部内面55A、及び柱531Pの外周面56Aは、複合材管3にそれぞれ当接することで当接面S33を形成している。
なお、図10は、管軸A2方向を向く支持冶具54の断面を、底部内面55A側から見た図である。
【0075】
図10の例のように、支持冶具54の支持部531は、複数の三角形断面の柱531Pとして、第一柱531D、第二柱531E、及び第三531Fの3本の柱を有してもよい。第一柱531D、第二柱531E、及び第三531Fの各柱は、底部531Aの両面のうち、複合材管3側を向く面(底部内面55A)から管軸A2方向に延びている。
【0076】
図10の例では、支持部531は、6本の複合材管3を支持する。
具体的には、6本の複合材管3は、支持部531上で、管軸A2が通る位置に1本の複合材管3、及び管軸A2に対する周方向に5本の複合材管3が配列されている。6本の複合材管3は、互いに当接するように配列されている。このとき、管軸A2方向から見て、管軸A2が通る位置に配置されている1本の複合材管3と、管軸A2に対する周方向に配置されている5本の複合材管3と、の間には、管軸A2に対する周方向に並ぶ三角形断面の隙間SPが複数形成されている。
複数の隙間SPは、管軸A2方向にそれぞれ延びている。
本実施形態では、複数の隙間SPとして、管軸A2に対する周方向に向かって順に、第一隙間SP1、第二隙間SP2、第三隙間SP3、第四隙間SP4、第五隙間SP5、第六隙間SP6が形成されている。
【0077】
図10の例のように、第一柱531D、第二柱531E、及び第三柱531Fの各柱は、6つの三角形断面の隙間SPに対し、管軸A2に対する周方向に向かって、一つ置きに設けられてもよい。
図10の例では、第一隙間SP1に第一柱531Dが、第三隙間SP3に第二柱531Eが、第五隙間SP5に第三柱531Fが、それぞれ設けられている。
図10の例によれば、第一柱531D、第二柱531E、及び第三531Fの各柱の外周面56Aは、管軸A2に対する少なくとも径方向から複合材管に当接する。
【0078】
本実施形態では、支持冶具54は、孔部Hに突出部532を挿入することで、固定面S1上で支持されている。これにより、孔部Hの内径を複合材管3の外径よりも小さくすることができる。
その結果、孔部Hの内径を小さくできることで、固定面の加工作業を軽減できる。
固定面の加工作業を軽減されれば、例えば、孔部Hの内径を複合材管3の外径と同等にした場合に比べて加工コストが低減される。
【0079】
また、孔部Hの内径を小さくすることで、孔部Hを形成したことによるケーシング10の強度低下を最小限に抑えることができる。
【0080】
また、支持部531は、管軸A2に対する少なくとも径方向から複合材管3に当接する当接面S33を有している。したがって、複合材管3と支持冶具54との接触面が広くなることで、複合材管3に生じる応力を低減させ、複合材管3の折れを低減できる。
【0081】
さらに、本実施形態によれば、複数の複合材管3を設置することを想定し、必要な支持冶具を低減できる。
本実施形態によれば、1つの支持冶具54によって、複数の複合材管3が支持されるとともに固定されることから、固定面S1に形成される孔部Hの個数を削減することができる。その結果、孔部Hを多数形成した場合に比べて、固定面の加工作業をより軽減できる。また、孔部Hを多数形成した場合に比べて、ケーシング10の強度低下を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、複数の複合材管3を設置した際に、支持冶具54(もしくは支持冶具54の側壁)を少なくすることができ、単位面積当たりの複合材管3の設置数を増加させることができる。
【0082】
以上、本発明の第五実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
例えば、上記第五実施形態では、ケーシング10内における第二空間V2のみに衝撃吸収部材20を配置した例について説明した。しかしながら、衝撃吸収部材20が配置される位置は上記に限定されず、例えば上記の第一空間V1に衝撃吸収部材20を配置することも可能である。この場合、第一端板11の内面(第一空間V1側を向く面)と、凹部底板15の内面(第一空間V1側を向く面)とが、上記の固定面S1とされる。
【0083】
支持冶具54は、第一実施形態と同様に、複合材管3の両端部のうち、凹部側板内面16A側の端部に設けられてもよい。また、支持冶具54は、第一実施形態の変形例と同様に、複合材管3の両端部のうち、側板内面13A側の端部に設けられてもよい。さらに、支持冶具54は、第一実施形態の他の変形例と同様に、複合材管3の両端部にそれぞれ設けられてもよい。
【0084】
さらに、上記第二実施形態で説明した切れ込み部7(図5参照)を複合材管3に形成することも可能である。この構成によれば、切れ込み部7が形成されていることにより、当該切れ込み部7を破壊起点とするSplaying Modeでの脆性破壊が誘発されやすくなる。その結果、複合材管3は、衝撃をさらに効果的に吸収することができる。
【0085】
図10の例では、管軸A2方向から見て、底部531Aの外周は、複数の複合材管3を囲む外接円となっているが、底部531Aの外周形状は、どのような形状であってもよく、底部531Aの外周のサイズは、どのようなサイズであってもよい。
例えば、管軸A2方向から見て、底部531Aの外周は、複数の複合材管3を囲む外接多角形でもよい。
例えば、管軸A2方向から見て、底部531Aの外周は、複数の複合材管3を囲む外接円より大きくてもよいし、小さくてもよい。複数の複合材管3を囲む外接円より小さければ、複数の支持冶具54をより多く並べることができる。
【0086】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0087】
1…緩衝体
2…輸送容器
3…複合材管
3C…端面
4…支持冶具
5A…底部内面
5B…底部外面
6…リブ
6A…筒状部内周面
7…切れ込み部
10…ケーシング
11…第一端板
12…第二端板
13…側板
13A…側板内面
14…凹部
15…凹部底板
16…凹部側板
16A…凹部側板内面
20…衝撃吸収部材
24…支持冶具
26…リブ
31…支持部
31A…底部
31B…筒状部
32…突出部
34…支持冶具
44…支持冶具
54…支持冶具
55A…底部内面
56A…外周面
90…衝撃吸収体
100…キャスク
231…支持部
331…支持部
431…支持部
531…支持部
531A…底部
531D…第一柱
531E…第二柱
531F…第三柱
531P…柱
532…突出部
A1…中心軸
A2…管軸
H…孔部
S1…固定面
S2…当接面
S21…当接面
S22…当接面
S23…当接面
S33…当接面
SP…隙間
SP1…第一隙間
SP2…第二隙間
SP3…第三隙間
SP4…第四隙間
SP5…第五隙間
SP6…第六隙間
V1…第一空間
V2…第二空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10