(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】ポリオレフィンシートまたはフィルムおよびその成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/92 20190101AFI20220502BHJP
B29C 48/305 20190101ALI20220502BHJP
C08F 4/658 20060101ALI20220502BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220502BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20220502BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20220502BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20220502BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/305
C08F4/658
C08J5/18 CES
C08L23/10
B29K23:00
B29L7:00
(21)【出願番号】P 2018101215
(22)【出願日】2018-05-28
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】597021842
【氏名又は名称】サンアロマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100108899
【氏名又は名称】松本 謙
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀治
(72)【発明者】
【氏名】栗山 稔
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-035730(JP,A)
【文献】米国特許第05674342(US,A)
【文献】特開2000-204185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0145376(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/92
B29C 48/305
C08J 5/18
C08L 23/10
C08F 4/658
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ
プロピレン組成物を、式(I)で定義されるEHI値が
3.8以上11.0以下となる条件で押出成形してシートまたはフィルムとする工程を含
み、
【数1】
Q:吐出量(kg/h)
W:ダイ幅(mm)
h:ダイ先端部でのリップ開度(mm)
MFR:組成物を温度230℃、荷重2.16kgで測定した値(g/10分)
T:押出時の組成物の温度(K)
PI:組成物の多分散指数
前記ポリプロピレン組成物の多分散指数が4~10、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)が1~15g/10分である、
シートまたはフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記ポリ
プロピレン組成物が、0~2重量%のエチレンを含有するプロピレン(共)重合体、および当該重合体100重量部に対して0.015~1重量部の結晶核剤を含むポリプロピレン組成物で
ある、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記結晶核剤が、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体系核剤、カルボン酸金属塩系核剤、およびキシリトール系核剤からなる群より選択される、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ポリプロピレン組成物を調製する工程をさらに含み、
当該工程が、対応するモノマーを、
(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびスクシネート系化合物からなる内部電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、
(B)有機アルミニウム化合物、および
(C)ケイ素化合物から選択される外部電子供与体化合物
を含む触媒を用いて重合することを含む、
請求項
1~3
のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の方法でシートまたはフィルムを調製する工程、および
当該シートまたはフィルムを加熱する二次加工工程を含む、
成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィンシートまたはフィルムおよびその成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンに代表されるポリオレフィンは、優れた物理的特性を有しかつ衛生面にも優れているため包装用シートまたはフィルムとして使用されている。当該シートまたはフィルムには優れた機械的特性や外観が求められる。例えば特許文献1には、透明で高い剛性と十分な衝撃強度を有するプロピレン樹脂組成物が開示されている。また、非特許文献1には、透明性の高いシートを得るために、ダイ先端部でのリップ開度を広げ、ダイ出口の表面樹脂温度を高くし、表層用樹脂の粘度を下げる製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】PPシート・フィルム成形における透明性制御、金井ら、「高分子の結晶化制御 研究開発の最前線とその応用」、シーエムシー出版、2012年7月、第22章、242~259頁
【文献】Minoru Rokudai、他2名、「Influence of shearing history on the rheological properties and processability of branched polymers. II. Optical properties of low‐density polyethylene blown film」、Journal of Applied Polymer Science Vol.23 (米国)、1979年、Page:3289-3330
【文献】D.R. Arda.、他1名、「The effect of die exit curvature, die surface roughness and a fluoropolymer additive on sharkskin extrusion instabilities in polyethylene processing」、Journal of Non-Newtonian Fluid Mechanics Vol.126 Issue 1 (オランダ)、2005年、Page:47-61
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは予備検討を行った結果、特許文献1に開示されたポリプロピレン樹脂組成物から製造したシートを加熱して二次加工すると外部ヘーズが増加し透明性が悪化する傾向があることを見出した。かかる事情を鑑み、本発明は、加熱を伴う二次加工後に優れた透明性を有する成形品を与えるポリオレフィンシートまたはフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは押出成形における独自パラメータを見出し、当該パラメータを一定値以下にする条件にて押出成形するとシートまたはフィルムのダイスウェルが小さくなり、これによって前記課題が解決できることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]ポリオレフィン組成物を、後述する式(I)で定義されるEHI値が11.0以下となる条件で押出成形してシートまたはフィルムとする工程を含む、シートまたはフィルムの製造方法。
[2]前記ポリオレフィン組成物が、0~2重量%のエチレンを含有するプロピレン(共)重合体、および当該重合体100重量部に対して0.015~1重量部の結晶核剤を含むポリプロピレン組成物であって、
以下の特性:
多分散指数が4~10、
MFR(温度230℃、荷重2.16kg)が1~15g/10分、
を満たすポリプロピレン組成物である、[1]に記載の製造方法。
[3]前記結晶核剤が、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体系核剤、カルボン酸金属塩系核剤、およびキシリトール系核剤からなる群より選択される、[2]に記載の製造方法。
[4]前記ポリプロピレン組成物を調製する工程をさらに含み、
当該工程が、対応するモノマーを、
(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびスクシネート系化合物からなる内部電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、
(B)有機アルミニウム化合物、および
(C)ケイ素化合物から選択される外部電子供与体化合物
を含む触媒を用いて重合することを含む、[2]または[3]に記載の製造方法。
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載の方法でシートまたはフィルムを調製する工程、および
当該シートまたはフィルムを加熱する二次加工工程を含む、
成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、加熱を伴う二次加工後に優れた透明性を有する成形品を与えるポリオレフィンシートまたはフィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】EHI値と二次加工成形品の外部ヘーズの関係を表す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、シートとは厚さが200μm以上の部材であり、フィルムとは厚さが200μm未満の部材をいう。本発明において「X~Y」は、両端の値すなわちXとYとを含む。シートまたはフィルムを合わせて「シート等」ともいう。
【0010】
1.製造方法
(1)EHI値
本発明の製造方法は、ポリオレフィン組成物をEHI値が11.0以下となる条件で押出成形してシートまたはフィルムとする工程を含む。EHI値は押出機のダイ先端部における剪断応力を基に発明者らによって導かれた新たなパラメータであり、押出されたシート等のダイスウェルに関与する。ダイスウェルは、押出機の種類、押出条件、成形に用いるポリオレフィン組成物の種類等により変化する。全ての成形時にダイスウェルの値を測定するには膨大な労力を必要とし、特に大型の成形機を用いて高速で成形する際に正確な値を求めることは困難である。発明者らは、ダイスウェルを測定する代わりにEHI値を導入することで、この問題を解決した。
【0011】
EHI値は、式(I)で定義される。
【0012】
【0013】
Qは押出機の吐出量(kg/h)である。Wはダイ幅(mm)である。hはダイ先端部でのリップ開度(mm)である。MFR(g/10分)は、組成物をJIS K7210-1に基づき温度230℃、荷重2.16kgで測定して得た値である。Tは押出時の組成物の温度(K)である。PIは組成物の多分散指数である。
【0014】
シート等の透明性について、非特許文献2では溶融弾性が大きくダイスウェル値が大きいほど透明性が低下することが示され、非特許文献3ではダイスウェルが大きいことにより表面が荒れるメカニズムが示されている。
【0015】
ダイスウェルが大きく表面が荒れた状態で押し出されたシート等に対して、冷却ロールの表面を転写して表面の凹凸を平滑化すると、肉眼およびヘーズ測定では透明性の低下を検知しにくい程度にはなる。しかし、発明者らは当該シート等を加熱して容器やカップへ成形すると熱成形後の製品の透明性が低下することを見出した。発明者らはこの原因が、樹脂が再溶融して伸張変形するために表面の凹凸が顕著となることにあると推察した。ダイスウェルの大きさは材料の分子量、分子量分布、およびダイ出口での剪断速度、樹脂温度にも依存する。ダイスウェルが大きくなるのは次の(a)~(d)の場合である。(a)分子量が高い。(b)分子量分布が広い。(c)剪断速度が高い。(d)樹脂温度が低い。
【0016】
分子量が高くなるとMFRは低くなるという関係にあるので、分子量の指標としてMFRを用いることができる。分子量分布の指標としては多分散指数を用いることができる。
剪断速度は、ニュートン流体では以下の式で表される。
【0017】
【0018】
V:溶融物体積
W:ダイ幅(mm)
h:ダイ先端部でのリップ開度(mm)
Q:吐出量(kg/h)
すなわち、剪断速度は近似的に吐出量とダイ幅、ダイ先端部でのリップ開度を用いて表記できる。発明者らは、シート等を加熱して二次加工して得た成形品の透明性を検討した結果、シート等を成形する条件により、シート等では問題とならなかった透明性が二次加工成形品において大きく低下する場合があること、そしてこの透明性の低下が外部ヘーズの上昇に関連していることを見出した。そこで、発明者らは組成物のMFR、多分散指数、剪断速度(∝Q/(Wh2))、押出時の組成物の温度(T)を用い、二次加工成形品の外部ヘーズとその相関を鋭意検討し、その結果、前述の式(I)で定義される値(EHI値)が、二次加工成形品の透明性と高い相関があることを見出した。
【0019】
したがって本発明においてはEHI値が11.0以下となるように押出成形を行い、シート等を製造する。EHI値は10.5以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましい。EHI値の下限は限定されないが、当該値が過度に低いとシート等の厚さの均一性が低下するので0.1以上であることが好ましい。
【0020】
EHI値が前記範囲を達成できるように吐出量Q等の値が調整される。吐出量Qが小さいと前記範囲のEHI値を達成しやすくなるが、生産性等を考慮すると10~500kg/hであることが好ましい。押出される組成物の温度Tが高いと前記範囲のEHI値を達成しやすくなるが、材料の劣化を考慮すると470~530(K)であることが好ましい。押出時の組成物の温度Tは接触式温度計を使用してダイから吐出された組成物の温度を測定することによって求められる。ダイ先端部でのリップ開度hが大きいと前記範囲のEHI値を達成しやすくなるが、幅方向の厚さの均一性を考慮すると0.1~4.0(mm)であることが好ましい。ダイ幅Wが大きいと前記範囲のEHI値を達成しやすくなるが、幅方向の厚さの均一性を考慮すると100~3000(mm)であることが好ましい。
【0021】
(2)押出機
本発明ではダイを備えた押出機を用いる。ダイとしてはTダイが好ましい。押出機の仕様は、前記範囲のEHI値を達成できれば限定されないが、単軸であることが好ましい。スクリュー径も限定されず、例えば20~200mmφとすることができる。
【0022】
(3)ポリオレフィン組成物
本発明においては任意のポリオレフィン組成物を使用できる。ポリオレフィン組成物とは、オレフィンを主成分として重合することで得られるポリオレフィンを含む組成物である。ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・共役ジエン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体等が挙げられる。ポリプロピレンは、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンのいずれであってもよい。ポリエチレンは、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのいずれであってもよい。ポリオレフィンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
ポリオレフィン組成物は結晶核剤を含むことが好ましい。結晶核剤とは、樹脂中の結晶成分のサイズを小さく制御して透明性を高めるために用いられる添加剤である。結晶核剤の詳細は後述する。
【0024】
上記ポリオレフィンの中でも、本発明の効果がとりわけ発揮される点では、ポリプロピレンが好ましい。したがってポリオレフィン組成物としては、プロピレンを主成分として重合することで得られるポリプロピレンを含むポリプロピレン組成物が好ましい。本発明においては透明性を高めるという観点から、0~2重量%のエチレンを含有するプロピレン(共)重合体、および当該重合体100重量部に対して0.015~1重量部の結晶核剤を含むポリプロピレン組成物であって、以下の特性を満たすポリプロピレン組成物を用いることがより好ましい。
多分散指数:4~10
MFR(温度230℃、荷重2.16kg):1~15(g/10分)
【0025】
また、当該ポリプロピレン組成物は、
(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびスクシネート系化合物からなる内部電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、
(B)有機アルミニウム化合物、および
(C)ケイ素化合物から選択される外部電子供与体化合物、
を含む触媒を用いて、対応するモノマー(原料モノマー)を重合して得られることがさらに好ましい。
【0026】
結晶核剤とは、樹脂中の結晶成分のサイズを小さく制御して透明性を高めるために用いられる添加剤である。結晶核剤は特に限定されず、当該分野で通常使用されるものを使用してよいが、有機系核剤であることが好ましく、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体系核剤、カルボン酸金属塩系核剤、およびキシリトール系核剤からなる群から選択されることがより好ましい。
【0027】
ノニトール系核剤として、例えば、1,2,3―トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトールが挙げられる。
【0028】
ソルビトール系核剤として、例えば、ビス-1,3:2,4-(4’-エチルベンジリデン)1-アリルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’-メチル-4’-フルオロ-ベンジリデン)1-プロピルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1’-メチル-2’-プロペニルソルビトール、ビス-1,3,2,4-ジベンジリデン2’,3’-ジブロモプロピルソルビトール、ビス-1,3,2,4-ジベンジリデン2’-ブロモ-3’-ヒドロキシプロピルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’-ブロモ-4’-エチルベンジリデン)-1-アリルソルビトール、モノ2,4-(3’-ブロモ-4’-エチルベンジリデン)-1-アリルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(4’-エチルベンジリデン)1-アリルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1-メチルソルビトール、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス-o-(4-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-o-(ベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-o-(3,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトールが挙げられる。
【0029】
リン酸エステル系核剤として、例えば、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)アルミニウム塩系化合物、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リチウム塩系化合物が挙げられる。
【0030】
トリアミノベンゼン誘導体系核剤として、例えば、1,3,5-トリス(2,2-ジメチルプロパンアミド)ベンゼンが挙げられる。
【0031】
カルボン酸金属塩系核剤として、例えば、アジピン酸ナトリウム、アジピン酸カリウム、アジピン酸アルミニウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸カリウム、セバシン酸アルミニウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸アルミニウム、ジ-パラ-t-ブチル安息香酸アルミニウム、ジ-パラ-t-ブチル安息香酸チタン、ジ-パラ-t-ブチル安息香酸クロム、ヒドロキシ-ジ-t-ブチル安息香酸アルミニウム、1,2-シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩が挙げられる。
【0032】
キシリトール系核剤として、例えば、ビス-1,3:2,4-(5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-2-ナフトアルデヒドベンジリデン)1-アリルキシリトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1-プロピルキシリトールが挙げられる。
【0033】
特に、加熱することを含む二次加工後の透明性を維持するために、ノニトール系核剤またはソルビトール系核剤を使用することが好ましい。ここで二次加工とは、一次成形品であるシート等に加工を施すことをいい、コンプレッション成形や真空成形等を施して別の形状を持った成形品に加工したり、シート等同士を融着させて接合したりすることであり、得られた成形品を二次加工品ともいう。
【0034】
結晶核剤の量は、ポリオレフィン組成物の合計100重量部に対して、0.015~1重量部が好ましい。結晶核剤の量がこの上限を超えるとコストが嵩み、この下限未満であると得られるシート等の透明性が低下することがある。この観点から、結晶核剤の配合比は、ポリオレフィン組成物の合計100重量部に対して、より好ましくは0.015~0.8、さらに好ましくは0.015~0.7重量部である。
【0035】
また本発明においては、高濃度の結晶核剤をポリプロピレン等のオレフィン系ポリマーと溶融混練した、いわゆるマスターバッチをシート等成形時に混合しポリオレフィン組成物としてもよい。
【0036】
さらにポリオレフィン組成物には、酸化防止剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展および他の有機および無機顔料などのオレフィン重合体に通常用いられる慣用の添加剤を添加してもよい。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。また、前述のとおり、本発明においてはオレフィン系ポリマーと結晶核剤からなるマスターバッチを使用して、結晶核剤を配合することができる。マスターバッチのマトリックスポリマーがポリオレフィン組成物の重合体成分とは異なる場合、ポリオレフィン組成物は当該マトリックスポリマーを含んでいてもよい。
【0037】
ポリオレフィン組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、主成分であるポリオレフィン以外の樹脂またはエラストマーを含有してもよい。ポリオレフィン組成物が含有してもよい樹脂またはエラストマーは1種のみでもよいし、2種以上でもよい。含有量は公知の量としてよい。本発明のポリオレフィン組成物の耐衝撃性を改良する目的でエラストマーを配合する場合、本発明のポリオレフィン組成物との親和性を考慮して、エチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合体を用いることが好ましい。また、当該共重合体添加後のポリオレフィン組成物の透明性を考慮して、当該共重合体の密度は0.860~0.915g/cm3であることがさらに好ましい。当該密度を達成するようにα-オレフィンの量は調整される。α-オレフィンは炭素数が3以上であれば限定されないが、産業上の入手容易性やコスト等、経済性の観点から炭素数は4または8であることがより好ましい。当該共重合体の190℃、荷重2.16kgにおけるMFRは0.1~5g/10分であることが好ましい。当該共重合体の含有量は限定されないが、当該共重合体添加後のポリオレフィン組成物の剛性と耐衝撃性のバランスや経済性を考慮して、添加前のポリオレフィン組成物に対して1~10重量部が好ましい。
【0038】
(4)ポリプロピレン組成物の特性
1)MFR
本発明において好ましく使用されるポリプロピレン組成物の温度230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは1~15(g/10分)であることがより好ましい。MFRの値が、この上限値を超えると加工時の耐ドローダウン性が低下し、下限値未満であると加工時のトルクが上昇し、いずれの場合もシート等の成形が困難になることがある。この観点から、MFRは2~12(g/10分)であることがさらに好ましい。
【0039】
2)エチレン含有量
本発明において好ましく使用されるポリプロピレン組成物がポリマー中にエチレン成分を含む場合、そのエチレン含有量は、ポリプロピレン組成物の重量を基準として2.0重量%以下であることがより好ましく、1.0重量%以下であることがさらに好ましく、0.7重量%以下であることが特に好ましい。2.0重量%を超えると剛性が低下することがある。
【0040】
3)多分散指数(PI)
本発明において好ましく使用されるポリプロピレン組成物は多分散指数(PI)が4~10といった広分子量分布を有することがより好ましい。PIは4.5~10がさらに好ましく、4.5~8が特に好ましく、5~7が最も好ましい。PIが4未満の場合にはシート等の成形品の剛性が低下し、二次加工時にドローダウンしやすく成形性が低下する。PIが10を超えるとポリプロピレン組成物の製造自体が困難となり、かつシート等の外観が悪化する。
【0041】
(5)ポリプロピレン組成物の製造方法
本発明において好ましく使用されるポリプロピレン組成物は任意の方法で製造してよいが、原料モノマーを、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびスクシネート系化合物からなる内部電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、ならびに(C)ケイ素化合物から選択される外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて重合する工程を含む方法で得ることがより好ましい。
【0042】
内部電子供与体化合物としてスクシネート系化合物を含有する触媒(以下「Suc触媒」ともいう)を用いて重合されたポリマーは、広分子量分布(高PI)でありかつ高分子量成分と低分子量成分が均一に分散している。分子量分布は物理量であり測定によって決定できる。しかしながらこの測定値では、高分子量成分と低分子量成分の分散度合いを表すことはできない。例えば、パウダーやペレット性状で与えられる高分子量成分と低分子量成分とを押出機等を用いて溶融混練する、あるいはSuc触媒以外の触媒を用いて分子量の異なる成分の多段重合を行うことにより、一見、Suc触媒を用いて重合して得たポリマーと同等の分子量分布(測定値)を有するポリマーを得ることも可能である。しかしこのようにして得たポリマーと、Suc触媒を用いて重合して得たポリマーでは高分子量成分と低分子量成分の分散度合いが異なり、後者は均一な分散度合いが達成されている。その差は、例えば剛性、耐衝撃性、加工性、外観等の性能において顕著である。
【0043】
重合は液相中、気相中または液-気相中で実施できる。重合温度は常温~150℃が好ましく、40℃~100℃がより好ましい。重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは3.3~6.0MPaの範囲であり、気相中で行われる場合には0.5~3.0MPaの範囲である。連鎖移動剤(たとえば、水素又はZnEt2)などの当該分野で公知の慣用の分子量調節剤を用いてもよい。
【0044】
また、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いてもよい。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法は、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体または液体混合物を下降管中に導入する。上記の重合方法として、例えば、特表2002-520426号公報に記載された方法を適用することができる。
【0045】
重合には、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および内部電子供与体化合物を含有する固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、ならびに(C)外部電子供与体化合物を含むチーグラー・ナッタ触媒を使用できる。成分(A)中の内部電子供与体化合物としては、スクシネート系化合物、フタレート系化合物、ジエーテル系化合物が挙げられ、本発明ではスクシネート系化合物を用いることが好ましい。成分(C)中の外部電子供与体化合物としてケイ素化合物を用いることが好ましい。
【0046】
本発明で好ましく使用されるスクシネート系化合物は、以下の式で表される。
【0047】
【0048】
式中、基R1およびR2は、互いに同一かまたは異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C1~C20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であり;基R3~R6は、互いに同一かまたは異なり、水素、あるいは場合によってはヘテロ原子を含む、C1~C20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であり、同じ炭素原子または異なる炭素原子に結合している基R3~R6は一緒に結合して環を形成してもよい。
【0049】
R1およびR2は、好ましくは、C1~C8のアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基である。R1およびR2が第1級アルキル、特に分岐第1級アルキルから選択される化合物が特に好ましい。好適なR1およびR2基の例は、C1~C8のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2-エチルヘキシルである。エチル、イソブチル、またはネオペンチルが特に好ましい。
【0050】
前述のとおり、プロピレン(共)重合体には、結晶核剤や他の添加剤を混合することができる。この混合方法は限定されないが、押出機等の混練機を用いる方法が好ましい。混練条件は特に限定されないが、シリンダ温度を180~250℃とすることが好ましい。このようにして得られるポリプロピレン組成物はペレット形状であってよい。
【0051】
(6)成形品の製造方法
特定のEHI値を満たす条件で製造されたシート等を、加熱を伴う二次加工に供することで成形品が得られる。例えばシート等を加熱真空成形して容器を得ることができる。加熱温度は限定されないが140~170℃であることが好ましい。従来の方法で製造したシート等は、加熱を伴う二次加工前は外部ヘーズが低く良好な透明性を有していても当該加工後に外部ヘーズが高くなるという問題があった。しかし本発明で製造されたシート等は加熱を伴う二次加工も外部ヘーズが上昇せず、良好な透明性を有する。この理由は限定されないが、以下のように考えられる。ダイスウェルが大きくなる条件で押出成形されたシート等は冷却ロール等で平滑処理がなされるので一見表面が平滑で外部ヘーズが低い。しかし、二次加工時に加熱されると平滑処理前の荒れた表面が再現され、外部ヘーズが低下する。本発明ではEHI値を一定値以下に制御して製造するのでダイスウェルが小さく得られるシート等の表面は元々平滑である。このため当該シート等は二次加工時に加熱されても表面に変化が生じにくく外部ヘーズを低く保つことができ良好な透明性を有する。
【0052】
2.本発明のシート等
本発明で得られるシート等は種々の用途に使用できる。例えば、打抜加工によりシート等を所望の形状にでき、あるいは真空成形等によりシート等を容器へ二次加工できる。特に本発明のシート等は透明性および耐寒衝撃性に優れるので、氷や氷菓用の容器、冷却飲料等の食品容器や包装材料として有用である。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
(1)ポリプロピレン組成物1の製造
特開2011-500907号の実施例に記載の方法に従い、固体触媒成分(1)を調製した。具体的には以下の通りである:
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl4を0℃において導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl2・1.8C2H5OHおよび9.1ミリモルのジエチル-2,3-(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。微細球状MgCl2・1.8C2H5OHは米国特許第4,399,054号明細書の実施例2に記載の方法にしたがって、しかしながら10000rpmに代えて3000rpmで運転することによって製造した。
【0054】
フラスコ内の温度を100℃に上昇し、120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、以下の操作を2回繰り返した。
250mLの新しいTiCl4を加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。
【0055】
上記固体触媒(1)と、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が18であり、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、室温において5分間接触した。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行った。
【0056】
得られた予重合物を、重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を得た。重合中、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。重合温度は70℃、水素濃度は0.25モル%であった。得られたポリプロピレン重合体に、酸化防止剤として、BASF社製B225を0.2重量%、中和剤として淡南化学株式会社製カルシウムステアレートを0.05重量%、ノニトール系核剤(ミリケン社製Millad NX8000J)を0.5重量%配合し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌混合した。次いで、混合物をスクリュー直径50mmの単軸押出機(ナカタニ機械株式会社製NVC)を用いてシリンダ温度230℃で押出し、ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状の結晶核剤を含むポリプロピレン組成物を得た。組成物のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は10g/10分、多分散指数(PI)は6.1であった。
【0057】
(2)シートの製造
375mm幅Tダイと40mmφ単軸押出機(押出機A)を備えたキャストフィルム成形機を用い、ポリプロピレン組成物1を押出し、80℃のロール(ニップ圧力0.1MPa)で処理を行い0.32mm厚のシートを製造した。ダイ先端部でのリップ開度はテーバーゲージを用いて、Tダイ幅方向に等間隔に5点測定し、設定値±0.05mmの範囲内で調整した。本例では設定値を1.4mmとした。接触式温度計を用いて、ダイから吐出された溶融状態の樹脂の温度を測定し、組成物温度とした。本例におけるEHI値は8.0であった。他の条件を表1に示す。
【0058】
(3)容器の製造
得られたシートを250mm角に切り取り、株式会社脇坂エンジニアリング製小型真空圧空成形機(形式FVS-500型)を用いてトレイ状の容器を二次加工成形した。二次加工成形品としての容器の形状は長さ130mm、幅100mm、深さ25.4mmであった。容器側面についての物性評価結果を表1に示す。
【0059】
[実施例2]
(1)ポリプロピレン組成物2の製造
実施例1と同様にして得られた固体触媒(1)と、TEALとジイソプロピルジメトキシシラン(DIPMS)とを、固体触媒(1)に対するTEALの重量比が11であり、TEAL/DIPMSの重量比が3となるような量で、12℃において24分間接触した。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行ったものを予重合触媒とした。
【0060】
予重合触媒を重合反応器に導入し、モノマーとしてプロピレンを供給するとともに、重合反応器内のエチレン濃度が0.118mol%、水素濃度が925molppmとなるように少量のエチレンおよび分子量調整剤としての水素を供給した。重合温度を70℃とし、重合圧力を調整することによってプロピレン-エチレン共重合体を合成した。得られた重合体得られたポリプロピレン重合体に、酸化防止剤として、BASF社製B225を0.2重量%、中和剤として淡南化学株式会社製カルシウムステアレートを0.05重量%、ノニトール系核剤(ミリケン社製Millad NX8000J)を0.5重量%配合し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合した。ナカタニ機械株式会社製NVCφ50mm単軸押出機を用いてシリンダ温度230℃で当該混合物を溶融混練し、押出したストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状の結晶核剤を含むポリプロピレン組成物を得た。組成物のエチレン含有量は0.5重量%、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)は5.0g/10分、多分散指数(PI)は5.9であった。
【0061】
(2)シートおよび容器の製造
ポリプロピレン組成物2を用い、実施例1と同様にしてシートおよび容器を製造し評価した。
【0062】
[実施例3]
300mm幅Tダイと25mmφ単軸押出機(押出機B)を備えるシート成形機を用いて押出機シリンダ温度230℃、ダイ温度250℃としてポリプロピレン組成物2を押出し、エアナイフを用いるとともに85℃のロールで処理を行い0.11mm厚のシートを製造した。実施例1と同様にして、当該シートから容器を製造して評価した。
【0063】
[実施例4]
押出機シリンダ温度およびダイ温度を210および230℃に変更した以外は、実施例3と同様にしてシートおよび容器を製造して評価した。
【0064】
[実施例5]
ダイ先端部でのリップ開度を1.2mmに変更した以外は、実施例3と同様にしてシートおよび容器を製造して評価した。
[実施例6]
(1)ポリプロピレン組成物3の製造
欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により固体触媒成分(2)を調製した。当該固体触媒は、MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。
【0065】
上記で得られた固体触媒(2)と、TEALおよびシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が8であり、TEAL/CHMMSの重量比が32となるような量で、-5℃において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行ったものを予重合触媒とした。
【0066】
得られた予重合触媒を重合反応器に導入し、モノマーとしてプロピレンを供給するとともに、重合反応器内の水素濃度が410molppmとなるように分子量調整剤としての水素を供給した。重合温度を75℃とし、重合圧力を調整することによってプロピレン重合体を合成した。得られたホモポリプロピレンを実施例1と同様に酸化防止剤、中和剤、結晶核剤を配合し溶融混練して組成物を得た。組成物のエチレン含有量は0重量%、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)は3.0g/10分、多分散指数(PI)は4.0であった。
【0067】
(2)シートおよび容器の製造
ポリプロピレン組成物3を用い、実施例3同様にしてシートおよび容器を製造し評価した。
【0068】
[比較例1]
ダイ先端部でのリップ開度を0.8mm、ロール温度を60℃にした以外は実施例2と同様にしてシートおよび容器を製造して評価した。
【0069】
[比較例2]
ダイ先端部でのリップ開度を1.1mmにした以外は比較例1と同様にしてシートおよび容器を製造して評価した。
【0070】
[比較例3]
ポリプロピレン組成物3を用いた以外は比較例2と同様にしてシートおよび容器を製造して評価した。
【0071】
[比較例4]
ポリプロピレン組成物3を用いた以外は比較例1と同様にしてシートおよび容器を製造して評価した。
【0072】
[比較例5]
ダイ先端部でのリップ開度を0.8mmに変更した以外は、実施例1と同様にしてシートおよび容器を製造して評価した。
【0073】
【0074】
【0075】
評価は以下のように行った。
[MFR]
JIS K7210-1に準じ、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
【0076】
[透明性]
JIS K7136に従い、ヘーズ測定装置(株式会社村上色彩技術研究所製HM-150型)により、シートまたは容器の側面(中央部分)のヘーズ測定を行い、透明性を評価した。シートまたは容器をそのまま測定して得た値を全ヘーズとし、これに対してシートまたは容器の両面に流動パラフィン(関東化学株式会社製、Cat.No.32033-00)を塗布して一対のガラス板で挟持した積層体を測定して得た値を内部ヘーズ、全ヘーズから内部ヘーズを差し引くことで算出した値を外部ヘーズとした。
【0077】
[スティフネス]
シートまたは容器を試験片として、JIS P8125に従い、室温23℃の下でテーバー社製スティフネステスター(TB-150)を用いてテーバーこわさ(スティフネス)を測定し、平均値を求めた。なお、シートについては引き取り方向(MD)またはその垂直方向(TD)を長手方向とする7cm×3.8cmの形状で切り出した試験片をN=4で測定した。容器については側面中央部で容器高さ方向を長手方向とする7cm×3.8cmの形状で切り出した試験片を円筒方向等間隔に4本採取し、N=4として測定した。
【0078】
[多分散性指数(PI)]
190℃の温度において、PaarPhysica社製UDS200を用い、0.1rad/秒から100rad/秒に増加する振動数で運転することによって測定した。多分散性指数の値は、等式を用いてクロスオーバー弾性率から誘導した。
PI=105/Gc
式中、Gcは、G’=G”(ここで、G’は貯蔵弾性率であり、G”は損失弾性率である)における値(Paとして表す)として定義されるクロスオーバー弾性率である。
【0079】
[エチレン含有量]
1,2,4-トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、Bruker社製AVANCEIII HD400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、測定温度120℃、フリップ角45度、パルス間隔7秒、試料回転数20Hz、積算回数5000回の条件で13C-NMRのスペクトルを得た。
上記で得られたスペクトルを用いて、Kakugo,Y.Naito,K.Mizunuma and T.Miyatake,Macromolecules,15,1150-1152(1982)の文献に記載された方法により、ポリプロピレン組成物のエチレン含有量(重量%)を求めた。
【0080】
表1および
図1(黒丸は実施例、白丸は比較例を示す)に示すとおり、本発明の製造方法によりEHI値が11.0以下となる条件で押出成形されたポリオレフィン組成物のシートは、加熱賦形(二次加工)後の外部ヘーズが低く透明性が良好である。