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特許70657122段アクチュエーションギア機構を有する手術器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】2段アクチュエーションギア機構を有する手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/295 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
A61B17/295
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018125690
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2019013752
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】17180062.6
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ウド・キルストゲン
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー・バントロック
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0143361(US,A1)
【文献】特開2009-022742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に外科手術を行うための器具(10)であって、
時間的に順番にずれて動かされる少なくとも2つのツール部(12、16)を含むツール(11)を備え、
前記少なくとも2つのツール部は、
前記少なくとも2つのツール部のうちの第1ツール部(12)に対する第1出力部(29)と、前記少なくとも2つのツール部のうちの第2ツール部(16)に対する第2出力部(30)とを備えるアクチュエーションギア機構(26)と、
一方が前記第1ツール部(12)に連結され、他方が前記第1出力部(29)に連結されている第1伝達手段(27)と、
一方が前記第2ツール部(16)に連結され、他方が前記第2出力部(30)に連結されている第2伝達手段(28)と、を用いて動かされ、
前記アクチュエーションギア機構(26)は、前記第1出力部(29)に連結されているカム機構(31)を備え、
前記アクチュエーションギア機構(26)は、前記第2出力部(30)に連結されているギアセグメント機構(32)を備え
前記ギアセグメント機構(32)は、セグメントギア(37)と、前記第2出力部(30)に連結されているギアラック(40)とを備え、
前記セグメントギア(37)は、歯のない周縁領域(38)と、前記ギアラック(40)と噛合することが可能な歯が設けられた周縁領域(39)とを有し、
前記セグメントギア(37)および前記ギアラック(40)は、前記セグメントギア(37)が回転することで、前記周縁領域(39)と前記ギアラック(40)との噛合および当該噛合の解除がされるように配置される
器具。
【請求項2】
前記アクチュエーションギア機構(26)は、入力側で、手動アクチュエーション部(24)に連結されている
請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記ツール(11)は、鉗子ツール(14)に関係付けられており、前記第1ツール部(12)は、前記鉗子ツール(14)の可動分枝体(12)である
請求項1または2に記載の器具。
【請求項4】
前記ツール(11)は、切断ツール(15)に関係付けられており、前記第2ツール部(16)は、メス(16)である
請求項1~3のいずれか1項に記載の器具。
【請求項5】
前記第1伝達手段(27)はプル手段であり、前記第2伝達手段(28)はプッシュ手段である
請求項1~4のいずれか1項に記載の器具。
【請求項6】
前記カム機構(31)は、少なくとも1つのカムディスク(33)と、当該カムディスク(33)に当接する少なくとも1つのカムフォロア(34)とに関係付けられており、当該カムフォロア(34)は、前記第1出力部(29)に連結されている
請求項1~5のいずれか1項に記載の器具。
【請求項7】
前記カムディスク(33)は、角度に依存せず半径(R)が一定の少なくとも1つの領域(α2)と、半径(R)が角度に依存する少なくとも1つの領域(α1)とを有する
請求項6に記載の器具。
【請求項8】
ばね手段(35)が、前記カム機構(31)と前記第1出力部(29)との間に配置される
請求項1~7のいずれか1項に記載の器具。
【請求項9】
前記カム機構(31)が関係付けられている少なくとも1つのカムディスク(33)および前記ギアセグメント機構(32)が備えるセグメントギア(37)は、トルクに耐えられるように互いに連結されている
請求項1~のいずれか1項に記載の器具。
【請求項10】
前記セグメントギア(37)および前記カムディスク(33)は、前記ツール(11)を作動させる際、前記カムディスク(33)の半径(R)が角度に依存する少なくとも1つの領域(α1)が前記カムディスク(33)に当接する少なくとも1つのカムフォロア(34)を通り過ぎた場合にのみ、前記セグメントギア(37)が前記第2出力部に連結されているギアラック(40)と係合するよう互いに関連して配置される
請求項に記載の器具。
【請求項11】
前記アクチュエーションギア機構(26)は、手動アクチュエーション部(24)の駆動運動を、前記カム機構(31)が関係付けられている少なくとも1つのカムディスク(33)および前記ギアセグメント機構(32)が備えるセグメントギア(37)の回転に変換する伝動部を備える
請求項1~10のいずれか1項に記載の器具。
【請求項12】
前記アクチュエーションギア機構(26)は、前記カム機構(31)が関係付けられている少なくとも1つのカムディスク(33)および前記ギアセグメント機構(32)が備えるセグメントギア(37)に駆動的に連結されたギア(41)と噛合しているギアセグメント(42)を備える
請求項1~11のいずれか1項に記載の器具。
【請求項13】
前記ギアセグメント(42)は、手動アクチュエーション部(24)として機能するピボットレバー(23)に連結されている
請求項12に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に外科手術を行うための手術器具に関する。特に、これは、時間的に順番にずれて作動する、つまり、所望の手術効果を得られるように動くツール部をツールが備える器具である。
【背景技術】
【0002】
原理的に、このような器具は、欧州特許第2845549号明細書から知られている。これは、細長いシャフトで保持されたツールであって、鉗子ツールと切断ツールとを含むツールを備える。鉗子ツールは、少なくとも一方が可動的に支持される2つの分枝体を備えるため、例えば、血管などの組織を分枝体間で把持して圧迫することができる。当該分枝体は、組織を凝固させて体内管を融合する電極を有する。それに対し、切断ツールは、メスによって表され、当該メスは、直線方向に移動可能であってその面側に刃先を有しており、体内管を分断するために、分枝体を閉じたまま、把持かつ圧迫された体内管を断ち切るように移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】欧州特許第2845549号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つのツール部を作動させるために、ハンドレバーを有する筺体が、シャフトの近位端に設けられる。筺体は、ハンドレバーの動きを、鉗子ツールを閉じるプル動作と、その後に起こる、切断ツールを遠位移動させるプッシュ動作とに変換するアクチュエーションギア機構を収容する。アクチュエーションギア機構は、鉗子ツールを閉じるリンク駆動部を備える。リンク駆動部は、ヒンジを用いてハンドレバーに連結された連結リンクを備える。ハンドレバーを枢動させれば、リンク駆動部の連結リンクも枢動し、その結果、プル手段を介して鉗子ツールを閉じるためにスライドブロックは近位方向へ移動する。切断ツールは、ハンドレバーに回転可能に保持されたギアとかみ合うギアラックに連結されたスライドを介して作動する。ギアの反対側において、ギアは、筺体に施された固定歯とかみ合う。リンク駆動部が動いている限り、メスを作動させるために設けられたスライドの動きはブロックされる。連結リンクが動き終えるとすぐに、スライドが遠位方向に移動できるようになる。スライドの動きは、ハンドレバーによって生じる直線運動に起因して、ハンドレバーの端で支持されたギアによってもたらされる。メスの作動、つまり、ハンドレバーの動きの第1部分に対するギアの直線運動を防止するには、位置および設計を他の全部品に注意深く適合させなければならないブロック装置が必要である。また、鉗子を閉じるためのハンドレバーの比較的長いパスと、切断ツールを作動させるための比較的短い動作パスとはその結果である。
【0005】
したがって、求められる目的は、2つの可動ツール部に対する動作パスを互いに容易に適合させることができる概念である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、請求項1に係る器具を用いて実現される。
【0007】
本発明に係る器具は、腹腔鏡器具として構成されてもよく、そのために、ツールを遠位端で支える比較的固くて細長いシャフトを有してもよい。原理的に、本発明に係る特徴を備える器具は、開腹外科手術用器具または内視鏡用器具としても構成されてよい。
【0008】
それとは関係なく、器具は、2つのツール部を動かすためのアクチュエーションギア機構を備え、この場合、アクチュエーションギア機構は、カム機構とギアセグメント機構とを備える。カム機構は、近位方向駆動運動を生成するように配置される一方、ギアセグメント機構は、遠位方向駆動運動を生成するように配置されることが好ましい。カムディスクの周縁面は、例えば、ロール、滑動体、レバーなどのカムフォロアと接触する。カムフォロアは、カムディスクに対して半径方向に移動可能であることが好ましく、その結果、その移動方向はカムディスクの回転軸と交わる。カムフォロアの半径移動方向は、第1ツール部を駆動させるプル手段の移動方向に対応することが好ましい。カムディスクの回転中にカムフォロアを移動させるために、カムディスクは、カムディスクの回転角度に応じて周縁面の半径が増加または減少する領域を有する。これを実現するために、カムディスクの回転軸は、シャフトの中心軸上にあることが好ましい。この結果、一定半径のカムディスク領域にカムフォロアが達するや否や、カムフォロアからカムディスクにトルクはかからない。
【0009】
反対方向を向き、かつ、アクチュエーションギア機構の両方の出力部でサンプリング可能な2つの駆動運動は、アクチュエーションギア機構を動かした際に、時間的に順番にずれて生じる、つまり、時系列で重なるか重ならない、いずれにしても、順に生じることが好ましい。そのために、カム機構に属するカムディスクを回転させ、また、好ましくは、ギアセグメント機構に属するセグメントギアを同時に回転させるように配置される手動アクチュエーション部を用いることが好ましい。手動アクチュエーション部は、例えば、筺体によって枢動的に支持されるハンドレバーであってもよい。
【0010】
鉗子ツールは、例えば、可動分枝体など、少なくとも1つの可動ツール部を備える。また、鉗子ツールの両方の分枝体が、例えば、互いに向かってまたは離れ合うように枢動可能であってもよい。手動アクチュエーション部の運動は、アクチュエーションギア機構からプル手段を介して鉗子ツールの1以上の可動ツール部へ伝達される。プル手段は、プラスチックまたは金属ワイヤ、プラスチックまたは金属リボン、プラスチックまたは金属コードなどでもよく、シャフトの近位端、つまり、アクチュエーションギア機構の第1出力部から、駆動的に連結された第1可動ツール部まで延在していることが好ましい。
【0011】
切断ツールは、第2ツール部に相当する、可動的に保持された少なくとも1つのメスを備える。当該メスは、遠位方向に移動して組織を分断するスライドメスであることが好ましい。このため、アクチュエーションギア機構の第2出力部は、伝達手段を介して、メス、つまり、第2ツール部に連結されている。伝達手段は、シャフトの近位端周辺におけるアクチュエーションギア機構の第2出力部からシャフトを通ってその遠位端まで延在し、そこで第2ツール部に接続される。伝達手段は、第2出力部の遠位方向駆動動作を伝達するプッシュ手段であることが好ましい。プッシュ手段は、ロッド、チューブ、または、押力を伝達する他の高曲げ剛性手段でもよい。あるいは、プッシュ手段は、例えば、縦方向には逸脱できず軸方向にだけ移動できるように狭路内において横方向に案内される、プラスチックまたは金属リボンなどの非剛体手段でもよい。
【0012】
セグメントギアおよびカムディスクは、トルクに耐えられるように互いに連結されていることが好ましい。この場合、セグメントギアは、第1ツール部を作動させるためにカムディスクがカムフォロアを動かして鉗子ツールが閉じられる位置まで動かし終えたかほぼ動かし終えたときにだけ、ギアラックと係合するようになる。この意義の範囲内において、ギアラックおよびセグメントギアは、手動アクチュエーション部の動作パスの特定位置において手動アクチュエーション部と第2出力部との間の駆動連結を接続して切断する、つまり、つなげて分離するポジティブロッキング結合部を形成する。
【0013】
カムディスクは、半径が角度に依存する少なくとも1つのアセンディング領域と、カムディスクの半径が一定のままで回転角度に依存しないか、作動方向がさらに移動した場合には半径がわずかに小さくもなる第2領域とを有する。半径が角度に依存する領域は、らせんアーチでもよい。カムディスクの半径が回転角度に関係なく一定である領域は、回転軸と同心の円弧でもよい。アセンディング領域と非アセンディング領域の間の移行をセグメントギアに角度型適合させ、それによって結合位置がそれぞれ規定されることにより、2つのツール部の動きは互いに望みどおり協調することができる。例えば、途中に間を置いて連続する2つのツール部の動き、中断なしに続いて起こる移行、または、重なる移行を規定してもよい。
【0014】
セグメントギアの歯がギアラックと係合するようになる結合位置は、カムディスクのアセンディング領域が非アセンディング領域に移行する回転位置に位置することが好ましい。また、さらなる設計自由度があり、これらは、手動アクチュエーション部の作動パスのパス領域の長さをツール部の所望の動きに適合させるために、互いに独立して利用することができる。このようなパラメータは、例えば、セグメントギアの直径、および、カムディスクにおける半径のピッチである。
【0015】
全体として、シンプルで、さらに、小さな作動力で機能する運動学が実現されている。2つのツール部の動きの移行は、滑動でもよいので、執刀医により苛立たせると分かった、パチパチやカチッといういかなる関連音などもなく実現される。また、手動アクチュエーション部を、固定された変更不能のピボット中心を示すピボットレバーとして設計することも可能である。ピボットレバーのピボット中心は、鉗子ツールを閉じる場合も、切断ルーツを作動させる場合も同じである。また、発明的アクチュエーションギア機構の場合、製作公差の要件は最小限のみであり、製品の信頼性と作動品質が向上する。
【0016】
アクチュエーションギア機構は、手動で作動させるために配置されたピボットレバーの小さなピボット角度をより大きな回転角度でのカムディスクとカーブギアの回転にするステップアップギアを介して、駆動されることが好ましい。このようなステップアップギアは、プル手段ギアでもよい。この場合、プル手段はハンドレバーの一端に連結され、もう一端は、ハンドレバーを作動させるとここから引き抜く巻き部材、例えば、ロープ滑車に巻き付けられる。しかしながら、特に、伝達ギアは、ピボットレバーに連結されたカーブギア、および、それとかみ合うギアまたはギアラックでもよい。当該ギアは、セグメントギアとカムディスクとを駆動させる。
【0017】
セグメントギアの代わりに、ハンドレバーに例えば剛結合された弓形ギアラックを用いてもよい。また、ギアラックは、一直線で、かつ、一端がハンドレバーと枢動的に連結されてもよい。手動アクチュエーション部が、枢動的ではなく、直線的に動けるよう筺体上または内で支持される場合は、直線ギアラックもまた手動アクチュエーション部に剛結合されてもよい。最もシンプルな場合は、カムディスク、セグメントギア、および、駆動に用いられるギアを、1つの部品を形成するように互いに連結させてもよい。例えば、これらは、プラスチック射出成形部品として、または、別の方法では、均一材料のシームレス部品として構成されてもよい。
【0018】
本発明の実施の形態のさらなる詳細は、請求項、明細書、または、図面から理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】器具の概略側面図である。
図2】アクチュエーションギア機構の部分拡大概略基本図である。
図3図2にかかるアクチュエーションギア機構の概略平面図である。
図4図2および図3にかかるアクチュエーションギア機構の動作を示す図である。
図5】前記アクチュエーションギア機構の実施の形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、図示したような、腹腔鏡適用を目的とした手術器具10を示している。ツール11は、生体物質に作用するために、特に、遮断して任意選択で分断できる方法で中空器官に作用するために配置される。図1下部の部分図から分かるように、ツール11は、2つの分枝体12、13を有する鉗子ツール14と、直線運動可能なように支持されたメス16で形成される切断ツール15とを備える。
【0021】
これら2つの分枝体12、13のうち少なくとも一方、例えば図1の分枝体12は、ヒンジピン17を軸として枢動可能に支持され、ツール11の第1可動ツール部(可動分枝体)となる。分枝体12を可動ツール部(第1ツール部)12とも呼ぶ。切断ツール15のメス16は、第2可動ツール部となる。メス16を可動ツール部(第2ツール部)16とも呼ぶ。実施の形態の本例では、メス16を、作動時に、矢印18で示された遠位方向に移動させて、組織を分断することができる。その際、メス16は、下側の分枝体13に設けられた凹部または溝の中で移動する。同様に、鉗子ツール14が閉じられた際にメス16を動かせるよう、対応する凹部または溝を上側の分枝体12に設けてもよい。その際、先端の刃先19は、分枝体12、13間で把持されている組織を突き抜ける。
【0022】
例えば、分枝体12、13間で把持されている組織を凝固させたり、または、体内管を融合させるために、さらには図示されていない、例えば、電極、凸部、歯、凹部などの、生体組織に作用する手段を分枝体12、13に設けてもよい。メス16は、尖った刃先19を有するメスでもよいし、電気的に切断するメスでも、電気を利用して切断するメスでもよい。これらに適切な電圧をかけて、機械的な可動手段により、および/または、切断過程を補助するか切断過程に作用することにより、組織を分断することができる。
【0023】
ツール11は、近位端が筺体21に連結された細長いシャフト20の遠位端に装着される。筺体21は、ハンドレバー(ピボットレバー)23も含むハンドル22を備える。当該ハンドレバーは、手動アクチュエーション部24に相当する。ハンドレバー23は、筺体21の適切な位置、例えば、ベアリングポイント25におけるハンドル22の下端で、可動に、好ましくは、枢動可能に支持される。
【0024】
図2に示したように、筺体21は、ツール11の可動ツール部12、16を協調作動させるアクチュエーションギア機構26を収容する。アクチュエーションギア機構26は、入力側で、手動アクチュエーション部24に連結されている。その際、アクチュエーションギア機構26は、ハンドレバー23の枢動運動を、遠位端で可動ツール部12に近位端でアクチュエーションギア機構の第1出力部29に連結されたプル手段(第1伝達手段)27、および、遠位端で可動ツール部16に近位端でアクチュエーションギア機構の第2出力部30に連結されたプッシュ手段(第2伝達手段)28の協調プッシュ/プル運動に変換する。第1アクチュエーション手段27は、例えば、金属やプラスチック材料のワイヤ、コード、リボンなどのプル手段である。これは、非剛体でもよいし、あるいは、剛体でもよい。いずれの場合も、第1出力部29によるプル運動の第1ツール部12への基本的に剛性な伝達に対する引張強度を示す。必要に応じて、プル手段27は、長手方向にわずかに伸縮してもよい。
【0025】
プッシュ手段28は、切断ツール15を作動させてメス16を遠位移動させるために配置される。プッシュ手段28の遠位端は、メス16に連結されているが、近位端はアクチュエーションギア機構26の第2出力部30に連結されている。プッシュ手段28は、せん断に強いことが好ましく、そうするために、円形プロファイル、中空またはそうでない矩形プロファイル、U字プロファイルなどのチューブロッドまたはプロファイルロッドとして構成される。また、プッシュ手段28は、例えば、適切な路内で案内されるプラスチックまたはスチールリボンなどの非剛性要素でもよい。あるいは、プッシュ手段28は、例えば、シャフト全体の長手方向、リブなどにおいて案内されて側面ブレイクアウトを防ぐU字プロファイルといった、最小剛性のプラスチックプロファイルまたは金属プロファイルでもよい。
【0026】
アクチュエーションギア機構26は、第1出力部29と、第2出力部30に関係付けられているギアセグメント機構32とを含むカム機構31を備える。
【0027】
カム機構31は、カムディスク33と、カムディスク33の外周に沿って移動する、例えば、スライド部品、ローラなどの構造におけるカムフォロア部材(カムフォロア)34とを備える。そうするために、カムフォロア部材34は、プル手段27の長手方向に直線運動でき、カムディスク33に対して半径方向に可動であり、第1出力部29とカムフォロア部材34との間の、例えば、らせんばね構造の有効なばね手段35によってカムディスク33の外周に押し付けられるように支持される。プル手段27が長手方向に弾性があり、この程度まで引張りばねとして作用するのであれば、ばね手段35の代わりに、カムフォロア部材34と第1出力部29を剛結合することも可能である。また、別の場合では、ばね手段を完全に省略してもよい。
【0028】
カムディスク33の外周には、カムディスク33が作動方向に回転するときに(図2において、反時計回り)カムディスク33の半径が増加する第1角度領域α1がある。角度領域α1は、カムディスク33の半径が角度に依存しない(カムディスク33の回転に依存しない)角度範囲α2に隣接する。図4は、カムディスク33の巻き取りとして理解可能なデカルト図において、角度領域α1における半径Rの増加と、角度範囲α2における半径Rの一定性とを示している。
【0029】
図3から明らかなように、カムディスク33は、筺体21内のシャフト36で回転可能に支持されている。この場合、シャフト36は、同じくカムフォロア部材34と接する第2合同カムディスク33’を有してもよいので、カムフォロア部材34は、2つの同調回転カムディスク33、33’により直線移動できる。図2において、プル手段27は、動きの方向を示すために、一点鎖線で示されているだけである。図3から明らかなとおり、プル手段27は、シャフト36を軸にして案内されるように、オフセット、凹部などを有してもよい。
【0030】
トルクに耐えられるように1以上のカムディスク33、33’に連結された、ギアセグメント機構32に属するセグメントギア37が存在する。このセグメントギアは、歯のない領域38と、歯が設けられた領域39とを有する。図4において、セグメントギア37は、カムディスク33の巻き取りの上方に、同じく巻き取りとして示される。当然のことながら、少なくとも好適な実施の形態の一例において、領域38、39は、歯のない領域38とカムディスク33の第1角度領域α1が機能的に重なり合うように配置される。説明のため、ギアセグメント機構32に関係付けられているギアラック40を示す図2を再び参照する。当該ギアラック40は、プッシュ手段28の方向に直線運動できるように筺体21で支持される。ギアラック40は、第2出力部30にもなるスライドで支持されてもよいし、それ自身がそのような出力部として機能してもよい。セグメントギア37の歯のない領域38は、セグメントギア37とギアラック40との間で駆動連結できない角度範囲β1となる。図4において歯のない領域38は、カムディスク33のアセンディング角度領域α1と一致して示されているが、これらの実際の角度オフセットは、図2に示すとおりである。これは、図2による実際の実施の形態では、シャフト36から見て、カムフォロア部材34とギアラック40のギアラック始点とは、互いに角度がずれており、ギアセグメント機構32とカム機構31とでは、ゼロポイントが異なるからである。図4では、これらのゼロポイントを一致させている。したがって、セグメントギア37の歯領域39が、角度範囲β2内で有効になる、つまり、ギアラック40と結合し、カムフォロア部材34は、カムディスク33の第2角度範囲α2を超えて移動することも分かり得る。
【0031】
ギアセグメント42と結合する別のギア41は、カムディスク33(および33’)とセグメントギア37とを回転駆動させるために配置される。ギアセグメント42は、例えば、特に図示していないばねの力に逆らって、ハンドル22に対して前後に枢動可能なハンドレバー23に連結されている。その際、ギアセグメント42はギア41を回転させ、このギア41と共に、カムディスク33およびセグメントギア37も回転させる。
【0032】
上述した器具10は、以下のように動作する。
【0033】
使用時の最初、器具10は、図1に示すような位置関係にある。鉗子ツール14は開いており、切断ツール15は無効、つまり、メス16は近位側、引っ込んだ位置、にある。ハンドレバー23は、ギアセグメント42の一端がギアラック40と係合していない図1および図2と同様の開始位置にあり、カムフォロア部材34は、カムディスク33が最小半径Rを示すカムディスク33の位置にある。図4において、これは、シャフト36に対する回転位置α0と、当該シャフトに一体化して連結されたカムディスク33、33’およびギア37、41に対する回転位置α0に対応する。
【0034】
ここで、ハンドレバー23がハンドル22に向かって枢動すれば、シャフト36が回転し、その結果、カムフォロア部材34は、カムディスク33の第1角度領域α1に沿って滑動して近位方向に移動する。この動きは、ばね手段35、または、別の連結部を介して第1出力部29に伝達されるので、プル手段27は近位方向に移動して、鉗子ツール14が閉じられる。完全に閉じられるのは、カムディスク33が第1角度領域α1内の回転を完了する前になされることが好ましいので、ばね手段35は、角度領域α1と角度範囲α2の移行区間43において張力を受けている(圧縮されている)。
【0035】
移行区間43において、カーブ形状は、シャフト36に対して同心の、領域α1のらせん形状から角度範囲α2の円弧形状へ徐々に移行してもよい。移行中または移行後、セグメントギア37とギアラック40とは互いに結合する。その際、領域39の第1歯44がギアラック40とかみ合うので、シャフト36がさらに回転すると、ラック40を遠位側にシフトさせる。このような遠位側へのシフトは、プッシュ手段28を介してメス16、つまり、切断ツール15に伝達されるので、2つの分枝体12、13間で保持されている体内管などの生体物質は分断される。
【0036】
例えば、鉗子ツール14を閉じた際に分枝体12および13間の体内管または他の物質を凝固させることができるように、適切な防止またはブロック手段を設けて、移行区間43に達した後の最初のシャフト36の回転をブロックしてもよいことが理解されよう。さらなる動きを一時的にブロックする適切なブロック手段、凝固電極および他の電極の起動手段、スイッチなどは、図2に示されていないが、必要に応じて設けられてもよい。
【0037】
図5は、上述したアクチュエーションギア機構26の実施の形態をわずかに一部変更した変形例を線図を参照して示している。違いは、第2角度範囲α2におけるカムディスク33および33’それぞれの構成である。図4に係る実施の形態での半径Rは、この領域において一定であるが、図5では、半径Rが、回転αの方向にわずかに小さくなっていってもよい。しかしながら、範囲α2のピッチは、角度領域α1のピッチより少ないことが好ましい。特に、角度範囲α2における半径の減少は最小限なので、ばね手段35はいかなる場合も張力を受けている。したがって、鉗子ツール14は、切断段階中に体内管をしっかりと保持するため、閉じられたままである。しかしながら、角度範囲α2の勾配は、作動力を減らすように、つまり、カムディスク33がこの角度範囲におけるシャフト36の回転を補助するように作用してもよい。
【0038】
本発明に係る器具10は、手動アクチュエーション部24を作動させて始まる、ツール11の2つの機能を行うアクチュエーションギア機構26を備える。そのために、アクチュエーションギア機構26は、カム機構31とギアセグメント機構32とを備える。カム機構31のカムディスク33の外周は、第1領域α1では、鉗子ツール14を閉じるストロークを生成するためにらせんカーブであるが、隣接する第2角度範囲α2では、円形である。第2角度範囲α2への角度領域α1の周縁面の接線移行は、動きの切替点として見ることができる。円形領域のカムディスク33が、ばね手段35を付勢するとすぐに、カム機構31の出力にさらなる動きは生じない。これは、カムフォロア部材34とカムディスク33のシャフト36がプル手段27と同じ線上にある場合に実現されるので、ハンドレバー23に作用するカムディスク33からの逆向き運動量は存在しなくなる。
【0039】
駆動ギア41、セグメントギア37、および、シャフト36と共に単一部品のプラスチック射出成形部品を形成する、2つの合同なカムディスク33、33’を設けることが好ましい。これにより、部品の数が少なくなる。右カムディスク33および左カムディスク33’は、力を左右対称に伝達するように構成される。2つのカムディスク33、33’間の取り付けスペースは、メスをシフトさせるギアラック40を有するスライドに用いることができる。部品を交互に配置することによって、全体的に必要な取り付けスペースは削減され、これにより、コンパクトで人間工学に基づく筺体21の具現化が可能になる。
【符号の説明】
【0040】
10 器具
11 ツール
12、13 分枝体(可動ツール部、第1ツール部)
14 鉗子ツール
15 切断ツール
16 メス(可動ツール部、第2ツール部)
17 ヒンジピン
18 矢印
19 刃先
20 シャフト
21 筺体
22 ハンドル
23 ハンドレバー(ピボットレバー)
24 手動アクチュエーション部
25 ベアリングポイント
26 アクチュエーションギア機構
27 プル手段(第1伝達手段)
28 プッシュ手段(第2伝達手段)
29 第1出力部
30 第2出力部
31 カム機構
32 ギアセグメント機構
33、33’ カムディスク
34 カムフォロア部材
35 ばね手段
α1 カムディスク33の第1角度領域
α2 第2角度範囲
R カムディスク33の半径
36 シャフト
37 セグメントギア
38、39 セグメントギアの領域
40 ギアラック
β1、β2 セグメントギア37の角度範囲
41 ギア
42 ギアセグメント
α0 シャフト36の回転位置
43 α1とα1の移行区間
44 領域39の第1歯
α 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5