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特許7065714プラント制御システムおよび携帯型操作端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】プラント制御システムおよび携帯型操作端末
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018127067
(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公開番号】P2020008953
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】須永 将司
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 卓也
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 祐太
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-352758(JP,A)
【文献】特開平11-065641(JP,A)
【文献】国際公開第2014/060024(WO,A1)
【文献】特開2007-156645(JP,A)
【文献】特開2016-042247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントを構成する複数の現場機器を統括制御するプラント制御装置と、
前記現場機器を操作するための操作指令を出力する携帯型操作端末と、
前記プラント制御装置と前記携帯型操作端末との間で通信する通信手段と、
前記現場機器に設置され、前記現場機器を特定するための固有情報を有する固有情報保持手段と、を備え、
前記携帯型操作端末は、
前記固有情報保持手段から、前記固有情報を読み取るための固有情報読み取り手段と、
前記携帯型操作端末の位置を特定する位置特定手段と、
前記固有情報読み取り手段によって読み取った現場機器の固有情報、および、前記位置特定手段によって特定された前記携帯型操作端末の位置情報を前記プラント制御装置に送信する送信手段と、を有し、
前記プラント制御装置は、
前記固有情報に基づいて、操作対象の現場機器を特定するとともに、前記位置情報に基づいて、当該携帯型操作端末が当該現場機器を操作可能な所定のエリア内に在るか否かを判定し、
前記携帯型操作端末が前記エリア内に在る場合は、当該現場機器の操作を許可する操作許可信号を前記携帯型操作端末に送信し、前記携帯型操作端末が前記エリア外に在る場合は、当該現場機器の操作を許可しない操作不可信号を前記携帯型操作端末に送信する、プラント制御システム。
【請求項2】
前記プラント制御装置は、前記複数の現場機器に関する計測データを予め記憶しておく記憶手段を有し、
前記プラント制御装置は、前記携帯型操作端末からの前記操作対象の現場機器に関する計測データの要求に応じて、当該現場機器に関する計測データを前記記憶手段から読み出して、これを前記携帯型操作端末に送信する、請求項1に記載のプラント制御システム。
【請求項3】
前記プラント制御装置は、前記固有情報および前記位置情報を送信した携帯型操作端末が前記エリア内に在るが、当該携帯型操作端末以外の他の携帯型操作端末に既に前記操作許可信号を送信している場合は、前記操作不可信号を当該携帯型操作端末に送信する、請求項1又は2に記載のプラント制御システム。
【請求項4】
前記携帯型操作端末は、前記プラント制御装置を介して前記現場機器を操作するための操作指令を送信するように構成され、
前記プラント制御装置は、
前記携帯型操作端末からの操作指令を受信した後、所定時間経過しても次の操作指令を受信しなかった場合は、前記操作不可信号を前記携帯型操作端末に送信する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプラント制御システム。
【請求項5】
プラントを構成している複数の現場機器を統括制御するプラント制御装置に接続され、前記現場機器を操作するための携帯型操作端末であって、
前記現場機器に設置され、前記現場機器を特定するための固有情報を有する固有情報保持手段から、当該固有情報を読み取るための固有情報読み取り手段と、
前記携帯型操作端末の位置を特定する位置特定手段と、
前記固有情報読み取り手段によって読み取った現場機器の固有情報、および、前記位置特定手段によって特定された前記携帯型操作端末の位置情報を、前記プラント制御装置に送信する送信手段と、
前記プラント制御装置によって、前記固有情報に基づいて、操作対象の現場機器が特定されるとともに、前記位置情報に基づいて、当該携帯型操作端末が当該現場機器を操作可能な所定のエリア内に在ると判定され、前記プラント制御装置から、当該現場機器の操作を許可する操作許可信号を受信した場合に、操作許可された現場機器に対して、その操作を行うための操作入力を受け付ける操作入力手段と、
を備える、携帯型操作端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントを構成する複数の現場機器を統括制御するプラント制御システム、および、現場機器を個別に操作するための携帯型操作端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラントを構成する複数の現場機器の動作は、現場機器を統括制御するプラント制御装置(中央制御装置)から集中的に行う方法と、現場機器の近傍に設置された現場操作盤により直接操作する方法がある。通常のプラント運用では、中央制御室から一括運転を行う場合が多く、現場操作盤からの操作は不要であるが、メンテナンスやトラブルが発生した場合に現場操作盤を一時的に操作する必要がある。また、現場機器による操作が優先的な機器(石炭灰トラック積等)においても、現場操作盤が故障した際には操業に影響が出てしまう。
【0003】
これに対し、近年では、現場機器毎に設置された現場操作盤を、現場作業者によって携帯可能な構成にすることが提案されている。特許文献1には、現場機器を操作するためのポータブル型現場操作器が開示されている。この現場操作器は、現場機器の近傍に設置されたタグを読み取り、操作対象の現場機器を特定し、操作対象の現場機器にプラント制御装置を介して操作指令を送信する。
【0004】
また、特許文献2には、プラント機器を制御するプラント制御手段と、複数の携帯操作端末とを備えるプラント制御システムが開示されている。プラント制御手段は、プラント機器に対応付けて、その機器の制御権を持つ本来の携帯操作端末名等を登録したデータテーブルを有し、携帯操作端末の操作指令信号のみに応答して対応するプラント機器を制御する。
【0005】
また、特許文献3には、電動機の修復作業を支援するシステムが開示されている。このシステムでは、ポータブル端末によって、プラントに設置された複数の電動機の各々に取り付けられたタグを読み取り、修復対象の電動機であることを確認し電動機に操作指令を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-352758号公報
【文献】特許第4221169号
【文献】特開2011-109166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来技術では、現場操作器により、現場機器の近傍に設置されたタグが読み取られ、一旦、操作対象の現場機器を特定されてしまうと、その後、作業者が現場機器の作業エリアから離れても現場機器の操作権限が与えられたままになってしまう。このため、操作対象の更新を忘れたまま別の作業エリアで現場操作器を誤って操作してしまう可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、複数の現場機器を統括制御するプラント制御システムにおいて、携帯型操作端末を使用する際の誤操作を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のある態様に係るプラント制御システムは、プラントを構成する複数の現場機器を統括制御するプラント制御装置と、前記現場機器を操作するための操作指令を出力する携帯型操作端末と、前記プラント制御装置と前記携帯型操作端末との間で通信する通信手段と、前記現場機器に設置され、前記現場機器を特定するための固有情報を有する固有情報保持手段と、を備え、前記携帯型操作端末は、前記固有情報保持手段から、前記固有情報を読み取るための固有情報読み取り手段と、前記携帯型操作端末の位置を特定する位置特定手段と、前記固有情報読み取り手段によって読み取った現場機器の固有情報、および、前記位置特定手段によって特定された前記携帯型操作端末の位置情報を、前記プラント制御装置に送信する送信手段と、を有し、前記プラント制御装置は、前記固有情報に基づいて、操作対象の現場機器を特定するとともに、前記位置情報に基づいて、当該携帯型操作端末が当該現場機器を操作可能な所定のエリア内に在るか否かを判定し、前記携帯型操作端末が前記エリア内に在る場合は、当該現場機器の操作を許可する操作許可信号を前記携帯型操作端末に送信し、前記携帯型操作端末が前記エリア外に在る場合は、当該現場機器の操作を許可しない操作不可信号を前記携帯型操作端末に送信する。
【0010】
上記構成によれば、携帯型操作端末(以下、単に「操作端末」ともいう)において、固有情報読み取り手段によって読み取った現場機器の固有情報をプラント制御装置に送信することにより、プラント制御装置において、操作対象の現場機器が特定され、固有情報を送信した操作端末に操作権限を与えることができる。これにより、従来、プラント制御システムにおいて、現場に設置されている複数台の操作盤を共通化された1台の操作端末に置き換えることができる。例えば中央優先モードの場合、各現場機器に現場操作盤を設ける必要がなくなり、コスト削減につながる。また、現場優先モードの場合、ある操作端末が故障しても他の操作端末で一時的に即時、代替使用が可能で、操業リスクを抑えることができる。また、プラント制御装置は、操作端末の位置情報に基づいて操作端末の位置を特定し、操作端末が現場機器を操作可能な所定のエリア内に在ると判定した場合にのみ、当該現場機器の操作を許可する操作許可信号を操作端末に送信する。つまり、操作対象の現場機器を操作可能なエリア内に在る操作端末にのみ操作権限が与えられるので、例えば作業者が操作対象の更新を忘れたまま別の作業エリアで操作端末を誤って操作してしまうことはない。
【0011】
前記プラント制御装置は、前記複数の現場機器に関する計測データを予め記憶しておく記憶手段を有し、前記プラント制御装置は、前記携帯型操作端末からの前記操作対象の現場機器に関する計測データの要求に応じて、当該現場機器に関する計測データを前記記憶手段から読み出して、これを前記携帯型操作端末に送信するようにしてもよい。
【0012】
上記構成によれば、操作端末を用いて、プラント制御装置の記憶手段から、操作対象の現場機器に関する計測データを呼び出すことが容易となり、現場で中央制御室と同じデータを確認しながら操作可能となる。
【0013】
前記プラント制御装置は、前記固有情報および前記位置情報を送信した携帯型操作端末が前記エリア内に在るが、当該携帯型操作端末以外の他の携帯型操作端末に既に前記操作許可信号を送信している場合は、前記操作不可信号を当該携帯型操作端末に送信するようにしてもよい。
【0014】
上記構成によれば、複数の操作端末を作業エリア内に持ち込んだとしても、1つの操作端末しか操作対象の現場機器に対する操作権限が与えられないので、複数の操作端末から1つの現場機器を同時に操作することができない。誤操作が生じにくい。
【0015】
前記携帯型操作端末は、前記プラント制御装置を介して前記現場機器を操作するための操作指令を送信するように構成され、前記プラント制御装置は、前記携帯型操作端末からの操作指令を受信した後、所定時間経過しても次の操作指令を受信しなかった場合は、前記操作不可信号を前記携帯型操作端末に送信するようにしてもよい。
【0016】
上記構成によれば、作業者が終了操作を忘れて操作端末を放置した場合でも一定時間経過すると操作端末の操作権限が消滅するので、誤操作が生じにくい。
【0017】
本発明のその他の態様に係る携帯型操作端末は、プラントを構成している複数の現場機器を統括制御するプラント制御装置に接続され、前記現場機器を操作するための携帯型操作端末であって、前記現場機器に設置され、前記現場機器を特定するための固有情報を有する固有情報保持手段から、当該固有情報を読み取るための固有情報読み取り手段と、前記携帯型操作端末の位置を特定する位置特定手段と、前記固有情報読み取り手段によって読み取った現場機器の固有情報、および、前記位置特定手段によって特定された前記携帯型操作端末の位置情報を、前記プラント制御装置に送信する送信手段と、前記プラント制御装置によって、前記固有情報に基づいて、操作対象の現場機器が特定されるとともに、前記位置情報に基づいて、当該携帯型操作端末が当該現場機器を操作可能な所定のエリア内に在ると判定され、前記プラント制御装置から、当該現場機器の操作を許可する操作許可信号を受信した場合に、操作許可された現場機器に対して、その操作を行うための操作入力を受け付ける操作入力手段と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プラント制御システムにおいて、携帯型操作端末を使用する際の誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るプラント制御システム全体の構成を示すブロック図である。
図2】プラント制御装置に記憶される現場機器の情報の一例を示す図である。
図3】操作端末の表示画面の一例を示す図である。
図4】操作端末の使用イメージを示す図である。
図5】操作端末とプラント制御装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0021】
本実施形態のプラント制御システムは、中央制御室から複数の現場機器を一括運転する中央優先モードと、現場作業者が現場機器を操作可能な現場優先モードでプラントを運用する。通常のプラント運用では中央優先モードで操業されるが、メンテナンスやトラブルが発生した場合に現場優先モードで操業される。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラント制御システムの構成を概略的に示す図である。図1に示すように、プラント制御システム1は、プラントを構成する複数の現場機器2を統括制御するプラント制御装置10と、現場機器2を操作するための操作指令を出力する携帯型操作端末(以下、単に「操作端末」ともいう)20と、を備える。
【0023】
各現場機器2の近傍には、現場機器2を特定するための固有番号を含む固有タグ3(固有情報保持手段)が設置されている。本実施形態では、固有タグ3はRFタグである。RFタグは、主としてアンテナコイル、送受信部、電源回路、復調回路、変調回路、メモリ制御部およびメモリから構成される(いずれも図示せず)。RFタグのメモリには、他の現場機器2と重複しないように予め定義された固有番号を含む固有情報が記憶されている。本実施形態では、現場機器2は、発電所等のプラントに設置された複数の電動機(A~C)である。各電動機(A~C)は、動力線4および配開装置7に接続されている。配開装置7は、伝送路8を介して、プラント制御装置10に接続されている。
【0024】
プラント制御装置10は、例えば中央制御室に設置される。プラント制御装置10は、演算装置11と、記憶装置12と、有線伝送装置13と、無線伝送装置14と、を備える。演算装置11は、プラント制御装置10の内部動作の制御や、種々の演算を行う制御手段である。本実施形態では、演算装置11は、中央優先モードではプラントを構成する複数の現場機器2を統括制御し、現場優先モードでは、操作端末20から受信した情報に基づいて操作端末20に現場機器2の操作権限を与え、操作端末20からの操作指令に従って現場機器2の動作を制御するように構成されている。
【0025】
記憶装置12は、各現場機器2に関する種々の情報を記憶している。図2は、記憶装置12に記憶される現場機器2の情報の一例を示す図である。図2に示すように、記憶装置12には、現場機器2の機器情報、計測データおよび状態に関する種々の情報が固有番号(No.1~No.3)ごとに記憶される。ここで現場機器2の機器情報とは、機器の名称(モータ)、機器の個体識別情報(A~C)、機器の試験成績情報、位置情報等を含む。ここで計測データとは、例えば現場機器であるモータ(A~C)の負荷電流値の時系列データである。ここで状態に関する情報とは、現場機器2の操作権限が操作端末20に与えられているか否かを示す情報である。例えば操作端末20に現場機器2(A)の操作権限が与えられている場合は、「現場作業中」と表示される。尚、記憶装置12に記憶された情報は、例えば中央制御室に設置された表示装置(図示せず)に表示される。
【0026】
有線伝送装置13は、現場機器2と伝送路8等を介して接続され、信号の送受信を行う。無線伝送装置14は、操作端末20と無線5を介して接続され、信号の送受信を行う。
【0027】
操作端末20は、タグ読取装置21と、演算装置22と、表示装置23と、操作入力装置24と、無線伝送装置25と、を備える。タグ読取装置21(固有情報読取手段)は、現場機器2の近傍に設置されている固有タグ3の固有情報を読み取るための装置である。タグ読取装置21は、固有タグ3から固有情報を読み取ると、読み取った固有情報を演算装置22に送信する。本実施形態では、タグ読取装置21は、RFIDリーダである。RFタグ(固有タグ3)がRFIDリーダの電波送受信可能範囲に入ると、RFIDリーダはRFタグを検出しRFタグから固有情報が読み込まれる。
【0028】
演算装置22は、操作端末20の内部動作の制御や、種々の演算を行う。本実施形態では、演算装置22は、タグ読取装置21によって読み取った現場機器2の固有タグや操作端末20の位置を特定するための位置情報を無線伝送装置25に出力する。また、演算装置22は、プラント制御装置10から現場機器2の操作権限を与えられた後は、演算装置22は、操作入力装置24より受け付けた操作入力に基づいて現場機器2を操作するための操作指令を無線伝送装置25に出力する。無線伝送装置25は、アンテナ等の基地局16(図4参照)を介して、プラント制御装置10と無線5により接続されて、信号のやりとりを行うものである。
【0029】
表示装置23は、液晶ディスプレイ装置等の表示デバイスであり、作業員に対して文字、図形および記号等の種々の情報の表示を行うものである。操作入力装置24は、作業員が種々の信号の入力を行うものである。表示装置23および操作入力装置24は、例えばタッチスクリーンディスプレイによって構成されている。本実施形態では、プラント制御装置10から、現場優先モードにおいて、現場機器2の操作権限を与えられた後は、作業者は、画面上に表示された種々の情報を指やペン等によって現場機器2を操作するための入力を行う。図3は、操作端末20の表示装置23に表示された画面の一例を示す図である。図3に示すように、表示装置23の表示画面には、上から順に、操作対象となる現場機器2の名称(モータA)、操作対象である現場機器2の計測データ(モータAの負荷電流)、及び、現場機器2を停止、起動、又は終了するための操作キーが画面表示される。
【0030】
次に、プラント制御システム1の動作について図面を用いて説明する。図4は、現場優先モードにおいて作業者が操作端末20を用いて現場機器2の操作を行う場合の模式図である。図4に示すように、現場優先モードでは、プラント制御装置10(無線伝送装置14)と、操作端末20(無線伝送装置25)は、アンテナ等の基地局16を介して、無線通信により信号の送受信を行う。
【0031】
以下、具体的に説明する。図5は、プラント制御装置10と操作端末20の処理の手順を示すフローチャートである。図5に示すように、まず、操作端末20(タグ読取装置21)は、現場機器2に設置された固有タグ3から固有情報を読み出す(ステップS101)。そして、操作端末20(無線伝送装置25)は、読み出した現場機器2の固有情報(固有番号)を、プラント制御装置10(無線伝送装置14)へ送信する(ステップS102)。このとき、操作端末20からの送信データには、現場機器2に関する計測データの要求の有無が含まれている。
【0032】
一方、プラント制御装置10(演算装置11)は、操作端末20から現場機器2の固有情報(固有番号:No.1)を受信した場合に(ステップS201)、固有情報(固有番号:No.1)に基づいて、操作対象の現場機器2を特定する(ステップS202)。ここでは、記憶装置12に記憶された情報(図2参照)に基づいて、モータAが操作対象の現場機器2として特定される。そして、プラント制御装置10は、記憶装置12に記憶された情報から、特定した操作対象の現場機器2に関する機器情報を読み出して、これを操作端末20に送信する(ステップS203)。ここで機器情報とは、現場機器2の名称(モータ)、個体識別情報(A)、機器の試験成績情報等を含む。このとき、操作端末20からの送信データに現場機器2に関する計測データの要求が含まれている場合(ステップS204でYES)は、プラント制御装置10は、記憶装置12から操作対象の現場機器2に関する計測データを読み出して、これを操作端末20に送信する(ステップS205)。ここでは、モータAの負荷電流値が計測データとして送信される。
【0033】
操作端末20は、プラント制御装置10から操作対象の現場機器2の機器情報を受信する(ステップS104)。また、操作端末20は、操作対象の現場機器2に関する計測データを受信した場合は、それらを表示装置23の画面に表示する(ステップS105)。図3に示すように、プラント制御装置10の記憶装置12から、操作対象の現場機器2に関する計測データ(モータAの負荷電流値)を受信して、操作端末20の表示装置23に表示することが容易となり、現場で中央制御室と同じデータを確認しながら操作することができる。
【0034】
次に、操作端末20は、操作端末20の操作端末情報、および、操作端末20の位置を特定して、操作端末20の位置情報をプラント制御装置10に送信する(ステップS106,S107)。図4に示すように、無線通信により操作端末20の位置情報が、操作端末20(無線伝送装置25)からプラント制御装置10(無線伝送装置25)に送信される。
【0035】
プラント制御装置10は、操作端末20の操作端末情報、および、操作端末20の位置情報を受信し(ステップS206,S207)、操作端末20が特定された現場機器2を操作可能であるかどうかを判定する(ステップS208)。本実施形態では、プラント制御装置10は、操作端末20と特定された現場機器2の間の距離に基づいて判定する。まず、操作端末20が各無線基地局16からの電波状況(例えば電波の強度等)等から操作端末20の位置を特定し、操作端末20の操作端末情報を、各無線基地局16を介してプラント制御装置10に送信する。尚、操作端末20による位置の特定は音波を用いて行われてもよいし、その他の公知の技術を用いて行われてもよい。そして、プラント制御装置10は、各現場機器2の位置を予めプラント制御装置10(記憶装置12)に記憶しておくことにより、各現場機器2の位置と操作端末20の位置から両者の間の距離を測定することができる。そして、プラント制御装置10は、操作端末20が現場機器2を操作可能な所定の操作エリア内に在るか否かを判定する。尚、操作エリアの範囲は任意に設定可能な所定の範囲である。
【0036】
プラント制御装置10は、操作端末20が操作エリア内に在る場合は(ステップS209)、作業者が特定された現場機器2の近傍に居ると判定し、特定された現場機器2の操作を許可する操作許可信号を操作端末20に送信する。そして、記憶装置12において現場機器2(モータA)が操作端末20によって操作中であるという情報(現場作業中)を保持する(図2参照)。
【0037】
操作端末20は、プラント制御装置10から、操作許可信号を受信した場合に(ステップS109でYES)、操作許可された現場機器2に対して、その操作を行うための操作入力を受け付ける(ステップS111)。操作端末20(表示装置23)は、図3に示すように、作業員から入力操作(起動又は停止)を受け付け、操作指令をプラント制御装置10へ出力する。現場からの操作を終了する時は、操作端末20にて入力操作(終了)を受け付け(例えば、表示装置23のタッチスクリーンにおいて表示された「終了」キーの選択操作を実施する)、操作指令をプラント制御装置10に送信する。
【0038】
プラント制御装置10は、操作指令を受信し(ステップS212)、演算装置11にて操作端末20からの操作が終了したことを判定し、その結果を記憶装置12に保持するとともに、現場機器2に操作指令(終了)を送信する。作業員が操作端末20での「終了」操作を忘れた場合は、演算装置11にて、操作端末20からの最終の操作指令の送信があった後、所定の一定時間が経過したことを判定し、操作端末20に対する操作許可を解除する。つまり、プラント制御装置10は、操作端末20からの操作指令を受信した後、所定時間経過しても次の操作指令を受信しなかった場合は、操作不可信号を操作端末20に送信する。このように、作業者が終了操作を忘れて操作端末20を放置した場合でも一定時間経過すると操作端末20の操作権限が消滅するので、誤操作が生じにくい。
【0039】
一方、プラント制御装置10は、ステップS208において、操作端末20がエリア外に在ると判定した場合は(ステップS210)、作業者が特定された現場機器2の近傍に居ないと判定し、特定された現場機器2の操作を許可しない操作不可信号を操作端末20に送信する(ステップS211)。そして、それ以後は、操作端末20から送信される操作指令をブロックする。操作端末20は、プラント制御装置10から、操作不可信号を受信した場合は(ステップS109でNO)、再び、ステップS106,S107に戻り、操作端末20の操作端末情報および位置情報をプラント制御装置10に送信する。
【0040】
本実施形態によれば、操作端末20(タグ読取装置21)によって読み取った現場機器2の固有情報をプラント制御装置10に送信することにより、プラント制御装置10において、操作対象の現場機器2が特定され、固有情報を送信した操作端末20に操作権限を与えることができる。これにより、従来、プラント制御システムにおいて、現場に設置されている複数台の操作盤を共通化された1台の操作端末に置き換えることができる。例えば中央優先モードの場合、各機器に現場操作盤を設ける必要がなくなり、コスト削減につながる。また、現場優先モードの場合、ある操作端末が故障しても他の操作端末で一時的に即時、代替使用が可能で、操業リスクを抑えることができる。また、プラント制御装置10は、操作端末20の位置を特定するための位置情報に基づいて操作端末20の位置を特定し、当該操作端末20が現場機器2を操作可能な所定のエリア内に在る場合は、当該現場機器の操作を許可する操作許可信号を操作端末に送信する。つまり、操作対象の現場機器2を操作可能なエリア内に在る操作端末20にのみ操作権限が与えられるので、作業者が操作対象の更新を忘れたまま別の作業エリアで操作端末20を誤って操作してしまうことはない。
【0041】
尚、複数の操作端末20が作業エリア内に持ちこまれた場合、複数の操作端末20から1つの現場機器2に対して同時使用され誤操作が生じる場合がある。そこで、本実施の形態においては、プラント制御装置10は、固有情報および位置情報を送信した操作端末20がエリア内に在るが、当該操作端末20以外の他の操作端末20に既に操作許可信号を送信している場合は、ステップS211において、操作不可信号を当該操作端末20に送信する。これにより、複数の操作端末20を作業エリア内に持ち込んだとしても、1つの操作端末20しか操作対象の現場機器2に対する操作権限が与えられないので、複数の操作端末20から1つの現場機器2に対する同時使用が防止される。誤操作が生じにくい。
【0042】
尚、本実施形態では、固有情報は、RFタグであったが、これに限られない。例えば固有情報はプラント内の他の現場機器と重複しないように予め定義された固有番号をバーコード又は2次元コードにより表示したものであってもよい。
【0043】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、複数の現場機器を統括制御するプラント制御システムに有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 プラント制御システム
2 現場機器
3 固有タグ
4 動力線
5 無線
7 配開装置
8 伝送路
10 プラント制御装置
11 演算装置
12 記憶装置
13 有線伝送装置
14 無線伝送装置
16 無線基地局
20 携帯型操作端末
21 タグ読み取り装置
22 演算装置
23 表示装置
24 操作入力装置
25 無線伝送装置
図1
図2
図3
図4
図5