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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20220502BHJP
   E06B 3/54 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/54 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018132776
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020012232
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】大西 久夫
(72)【発明者】
【氏名】草開 常徳
(72)【発明者】
【氏名】石原 典継
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-105554(JP,A)
【文献】特開2016-044395(JP,A)
【文献】特開2019-065556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルと、下枠または下框からなるパネル支持部材と、下がり防止部材とを備え、パネル支持部材は、パネル取付溝を有し、下がり防止部材は、金属製であり、パネル取付溝内に設けてあって、下面がパネル取付溝の底面に対して非係合状態で載置してあり、上面がパネルの下端に当接又は近接しており、下がり防止部材の側面又はパネル支持部材のうちの下がり防止部材の側面に対向する部分の一方又は両方に下がり防止部材の室外方向及び室内方向の両方への倒れを規制する倒れ防止部を有することを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火性能を有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
嵌め殺し窓の下枠や障子の下框のパネル取付溝内には、パネルの下がりを防止する下がり防止部材が設けられている。従来の下がり防止部材は、単なる角パイプ状のものであったため、火災時に下枠や下框が変形したり、発泡した加熱発泡材に押されたりすることにより、下がり防止部材が倒れることがあり、それに伴ってパネルが落下して貫通口が開いてしまうおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、下がり防止部材が倒れるのを規制し、貫通口が開くことを防止できる建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による建具は、パネルと、下枠または下框からなるパネル支持部材と、下がり防止部材とを備え、パネル支持部材は、パネル取付溝を有し、下がり防止部材は、金属製であり、パネル取付溝内に設けてあって、下面がパネル取付溝の底面に対して非係合状態で載置してあり、上面がパネルの下端に当接又は近接しており、下がり防止部材の側面又はパネル支持部材のうちの下がり防止部材の側面に対向する部分の一方又は両方に下がり防止部材の室外方向及び室内方向の両方への倒れを規制する倒れ防止部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明による建具は、下枠または下框からなるパネル支持部材のパネル取付溝内に金属製の下がり防止部材が設けてあり、下がり防止部材は下面がパネル取付溝の底面に対して非係合状態で載置してあり、上面がパネルの下端に当接又は近接しており、下がり防止部材の側面又はパネル支持部材のうちの下がり防止部材の側面に対向する部分の一方又は両方に下がり防止部材の室外方向及び室内方向の両方への倒れを規制する倒れ防止部を有することで、火災時にパネル支持部材が変形したり、発泡した加熱発泡材に押されたりしても、下がり防止部材の倒れを規制でき、下がり防止部材でパネルを下がらないように支持して貫通口が開くことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の建具の第1実施形態を示す縦断面図である。
図2】同建具の横断面図である。
図3】同建具の室外側正面図である。
図4】同建具における下がり防止部材、セッティングブロック及びつぶれ防止部品の配置を示す室外側正面図である。
図5】火災時における下枠部の縦断面図である。
図6】本発明の建具の第2実施形態を示す縦断面図である。
図7】同建具における下がり防止部材及びつぶれ防止部品の配置を示す室外側正面図である。
図8】本発明の建具の比較例を示す縦断面図である。
図9】同建具における下がり防止部材、セッティングブロック及びつぶれ防止部品の配置を示す室外側正面図である。
図10】つぶれ防止部品の他の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1~4は、本発明の建具の第1実施形態であって、防火対応の嵌め殺し窓に適用した例を示している。本建具は、躯体開口部に取付けられる枠6と、枠6内に納めたガラスパネル2を備える。
枠6は、図1~3に示すように、アルミニウム合金の押出形材よりなる上枠7と下枠1と左右の縦枠8,8とを枠組みして構成してある。枠6は、内周側が開口したパネル取付溝4を有し、ガラスパネル2は周縁部を枠6のパネル取付溝4に呑み込ませ、シール材9で固定してある。
【0008】
下枠1は、図1に示すように、内周側が開口したパネル取付溝4を有し、パネル取付溝4の室外側及び室内側の開口縁部には、シール材9の受け部10aとバックアップ材11の受け部10bが形成してある。パネル取付溝4の室外側の壁12の室内側面と、パネル取付溝4の室内側の壁13の室外側面には、火災の熱で発泡・膨張する加熱発泡材14,15が下枠1の長手方向に沿って設けてある。上枠7と縦枠8のパネル取付溝4内にも、加熱発泡材36が長手方向に沿って設けてある。
【0009】
下枠1のパネル取付溝4内には、図1,4に示すように、左右2箇所にセッティングブロック16,16が設けてあり、左右のセッティングブロック16,16の内側に隣接して下がり防止部材3,3がそれぞれ設けてある。セッティングブロック16は、EPDM(エチレンプロピレンゴム)で形成した直方体のブロック状のもので、ガラスパネル2の下端を受けてガラスパネル2の重量を下枠1に伝えている。
下がり防止部材3は、火災時にセッティングブロック16が溶融・軟化したとしても、ガラスパネル2が下がらないように設けられるものであり、アルミニウム合金の押出形材で形成してあり、図1に示すように、矩形断面の中空状の本体部17と、本体部17の室内側の壁の上部より室内側に向けてのびるL形断面の倒れ防止部5を有している。本体部17は、上面がガラスパネル2の下端に近接しており、倒れ防止部5はバックアップ材11の受け部10bの室内側に沿わせて設けてある。セッティングブロック16と下がり防止部材3は、パネル取付溝4の底壁19に両面テープで接着してある。
【0010】
下枠1は、図1に示すように、パネル取付溝4の下方位置に室外側が開放した凹部18を有している。パネル取付溝4の底壁19には、左右両端より100mm程度内側に入った位置に水抜き孔20が設けてある。
凹部18内には、つぶれ防止部品21が保持してあり、つぶれ防止部品21は下枠1の長手方向全長に設けられており、セッティングブロック16及び下がり防止部材3の下方に位置している。つぶれ防止部品21は、アルミニウム合金の押出形材で形成したものであり、垂直な外壁22及び内壁23と、それらを繋ぐ横壁24とを有している。外壁22は、凹部18の室外側で凹部18の上壁(パネル取付溝の底壁)19と下壁25にわたって設けてある。内壁23は、凹部18の起立壁26の室外側に当接している。横壁24には、パネル取付溝4の底壁19の水抜き孔20から左右方向にずれた位置、例えば左右両端より50mm程度内側に入った位置に水抜き孔27が設けてあり、外壁22には長手方向の両端部の下部に排水用の切欠き28が設けてある。したがって、パネル取付溝4内に浸入した雨水は、図1中に矢印29で示すように、パネル取付溝4の底壁19の水抜き孔20とつぶれ防止部品21の横壁24の水抜き孔27と外壁22の切欠き28を通じて屋外に排水される。つぶれ防止部品21は、外壁22の上端部が凹部18の上壁(パネル取付溝の底壁)19の室外側端部に形成された垂下片30に係止し、且つ図3に示すように左右の縦枠8,8に両側から挟み込まれることで、凹部18内で動かないように保持されている。
【0011】
図5は、火災時における下枠1部の状態を示している。火災が発生すると、同図に示すように、パネル取付溝4の室外側の壁12の室内側に取付けた加熱発泡材14が火災の熱で発泡して室内側に向けて膨張し、下がり防止部材3を押す。下がり防止部材3は、膨張した加熱発泡材14に押されることで倒れようとするが、倒れ防止部5が下枠1の上壁31の内側に係止することで、下がり防止部材3の倒れを規制できる。よって、火災時にも下がり防止部材3によりガラスパネル2の下がりを防いだ状態が維持され、ガラスパネル2が下がってガラスパネル2の上端と上枠7との間に貫通口が開くことを防止できる。なお、図5では、下がり防止部材3の状態を見やすくするために、パネル取付溝4内の室内側の加熱発泡材15を省略している。
また本建具は、下枠1のパネル取付溝4の下方位置に室外側が開放した凹部18を有し、凹部18の起立壁26がガラスパネル2の真下より室内側に位置しているため、火災時に下枠1が熱せられることで強度が低下すると、そのままではガラスパネル2の重量によって凹部18がつぶれて下枠1が室外側におじぎするような形で変形し、それに伴ってガラスパネル2が下がり、上枠7側に貫通口が開くおそれがあるが、凹部18内につぶれ防止部品21が設けてあり、つぶれ防止部品21がガラスパネル2の重量を負担することで、そのような下枠1の変形を防止でき、ガラスパネル2が下がって貫通口ができることを防止できる。
【0012】
以上に述べたように本建具は、パネル支持部材(下枠1)のパネル取付溝4内に下がり防止部材3が設けてあり、下がり防止部材3は上面がガラスパネル2の下端に当接又は近接しており、パネル支持部材1又は下がり防止部材3の一方又は両方に下がり防止部材3の倒れを規制する倒れ防止部5を有することで、火災時にパネル支持部材1が変形したり、発泡した加熱発泡材14に押されたりしても、下がり防止部材3の倒れを規制でき、貫通口が開くことを防止できる。
パネル支持部材1または下がり防止部材3は相手方に当接または係合している(実施形態のものは、下がり防止部材3の倒れ防止部5が下枠1に係合している)ことで、下がり防止部材3の倒れを確実に防止できる。
【0013】
本建具は、下枠1にパネル取付溝4と、パネル取付溝4の下方位置に室外側が開放した凹部18を有し、パネル取付溝4内にパネル受け部品(セッティングブロック16及び下がり防止部材3)が設けてあり、凹部18内につぶれ防止部品21が保持してあり、つぶれ防止部品21がパネル受け部品16,3の下に位置していることで、つぶれ防止部品21がガラスパネル2の重量を受けるため、火災時に凹部18がつぶれて下枠1が室外側におじぎするような形で変形するのを防ぐことができるので、ガラスパネル2の下がりを防止して防火性能を確保できる。
また本建具は、パネル取付溝4の底壁19に凹部18に通ずる水抜き孔20が設けてあるので、パネル取付溝4内に浸入した雨水を屋外に排水できる。
つぶれ防止部品21は、凹部18の室外側で凹部18の上壁(パネル取付溝の底壁)19と下壁25にわたって設けた外壁22を有しているので、凹部18がつぶれるように変形するのを確実に防止できる。
さらに本建具は、パネル受け部品(下がり防止部材3)が金属製であるため、火災時にパネル取付溝4内でガラスパネル2が下がることを防止できる。
【0014】
図6,7は、本発明の建具の第2実施形態を示している。本実施形態の建具は、下枠のパネル取付溝4内に下がり防止部材3が左側と中央と右側の3箇所に設けてあり、左右の下がり防止部材3は、本体部の上面にEPDMのシート32を貼ることで、セッティングブロックとして用いている。
本実施形態の建具は、第1実施形態と同様に、下がり防止部材3の倒れを防止でき、ガラスパネル2が下がって貫通口ができるのを防止できる。セッティングブロックを別に設ける必要がないため、構造が簡略化される。
【0015】
図8,9は、本発明の建具の比較例を示している。下がり防止部材3は、倒れ防止部5を有しない角パイプ状のものとしてある。つぶれ防止部品21は、ピース状で下がり防止部材3の真下にのみ設けてあり、ネジ33で下枠1に固定してある。
本比較例の建具も、火災時に下枠1の変形を防止し、ガラスパネル2が下がって貫通口が開くのを防止できる。つぶれ防止部品21に水抜き孔や切欠きを形成する必要がない。
【0016】
図10は、つぶれ防止部品21の他の実施形態を示している。図10(a)のつぶれ防止部品21は、外壁22と内壁23と上壁34と下壁35とを有する中空状としてある。図10(b)のつぶれ防止部品21は、外壁22と内壁23と上壁34とを有する下側が開放したコ字形断面となっている。図10(c)のつぶれ防止部品21は、外壁22と内壁23と下壁35とを有する上側が開放したコ字形断面となっている。
これらのつぶれ防止部品21は、図1等に示すH形断面のものと同様に、下枠1の変形を防止する効果がある。H形断面のつぶれ防止部品21は、下枠1との接触面積が小さいため、凹部18に小口からスライドして挿入する際に挿入しやすい。
【0017】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。パネル支持部材の断面形状、材質は、任意である。倒れ防止部は、パネル支持部材から下がり防止部材に当接または係合するように設けることもできる。また、パネル支持部材と下がり防止部材の両方に倒れ防止部を設けることもできる。下がり防止部材の取付位置や個数は特に限定されるものではない。つぶれ防止部品は、省略することもできる。パネル支持部材は、下框であってもよい。パネルの材質、構造は問わない。本発明は、嵌め殺し窓に限らず、パネル取付溝内にパネルを取付けるあらゆる建具に適用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 下枠(パネル支持部材)
2 ガラスパネル(パネル)
3 下がり防止部材
4 パネル取付溝
5 倒れ防止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10