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特許7065767非フッ素化表面効果コーティングに用いる疎水性エクステンダー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】非フッ素化表面効果コーティングに用いる疎水性エクステンダー
(51)【国際特許分類】
   C09D 105/00 20060101AFI20220502BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20220502BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20220502BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20220502BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
C09D105/00
C09D133/00
D06M13/224
D06M15/263
C09D175/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018517146
(86)(22)【出願日】2016-09-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 US2016054597
(87)【国際公開番号】W WO2017059167
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-09-30
(31)【優先権主張番号】62/236,329
(32)【優先日】2015-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド オロンデ ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クリストファー スウォーレン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ カランジャ
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/160905(WO,A1)
【文献】特開2003-193367(JP,A)
【文献】特開平05-302065(JP,A)
【文献】特開平07-011467(JP,A)
【文献】特開2013-189558(JP,A)
【文献】特開2015-120895(JP,A)
【文献】国際公開第2006/022122(WO,A1)
【文献】特開2010-119686(JP,A)
【文献】特表2011-507865(JP,A)
【文献】特開2012-224956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D、D06M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の表面に部分的又は完全な、耐久性非フッ素化コーティングを備える、コーティングされた物品であって、
前記コーティングは、5~95重量%の疎水性化合物と、5~95重量%の少なくとも1種の表面効果剤とを含み、これら重量%はともにコーティングの全固形物重量に基づいており、前記疎水性化合物は、式(Ia’)から選択され、
【化1】
式中、Rは、独立して、-H、-R1、若しくは-C(O)R1であり、かつ少なくとも2つのRが、-R1、若しくは-C(O)R1であり、
式中、
各R1は、独立して、5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、
前記表面効果剤は、非フッ素化アクリルポリマー、非フッ素化ウレタン、及びこれらの混合物からなる群から選択される疎水性ポリマーを含む、
コーティングされた物品。
【請求項2】
表面効果は、ノーアイロン性(no iron)、アイロンの掛け易さ(easy to iron)、縮み抑制、防しわ性、パーマネントプレス、調湿性(moisture control)、柔軟性、強度、滑り防止、帯電防止、かぎ裂き防止(anti-snag)、毛玉防止(anti-pill)、耐しみ性(stain repellency)、しみ落ち性(stain release)、防汚性(soil repellency)、汚れ落ち性(soil release)、撥水性、撥油性、防臭、抗菌、日焼け防止、ブロッキング耐性、洗浄性(cleanability)、防塵性、平坦性(leveling)、耐腐食性、耐酸性、防曇性、氷結防止性、又はタンニング(tanning)である、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項3】
前記コーティングは、10~90重量%の疎水性化合物と、10~90重量%の表面効果剤とを含み、これら重量%はともにコーティングの全固形物重量に基づいている、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項4】
前記コーティングは、20~80重量%の疎水性化合物と、20~80重量%の表面効果剤とを含み、これら重量%がともにコーティングの全固形物重量に基づいている、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項5】
前記物品は、繊維、織物(textile)、布地(fabric)、混紡布地(fabric blend)、紙、不織布、皮革、プロパント粒子、無機酸化物粒子、薬等で処理していないコンクリート(unglazed concrete)、れんが、タイル、花崗岩、石灰岩、大理石、グラウト、モルタル、彫像、記念碑、ガラス、熱可塑性シート、熱成形品若しくは成形品、発泡体シート若しくは物品、金属、種子、塗られた布地若しくはキャンバス、又はこれらを組み合わせである、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項6】
部分的又は完全にコーティングされた物品を形成するために、前記物品の表面を、耐久性非フッ素化コーティングに接触させるステップを含む、表面効果を物品に付与する方法であって、
前記コーティングは、5~95重量%の疎水性化合物と、5~95重量%の少なくとも1種の表面効果剤とを含み、これら重量%はともにコーティングの全固形物重量に基づいており、前記疎水性化合物は、式(Ia’)から選択され、
【化2】
式中、Rは、独立して、-H、-R1、若しくは-C(O)R1であり、かつ少なくとも2つのRが、-R1、若しくは-C(O)R1であり、
式中、
各R1は、独立して、5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、
前記表面効果剤は、非フッ素化アクリルポリマー、非フッ素化ウレタン、及びこれらの混合物からなる群から選択される疎水性ポリマーを含む、方法。
【請求項7】
前記部分的又は完全にコーティングされた物品を加熱するステップを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングを、乾燥、冷却、又は放冷によって固体化するステップを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記接触させるステップは、噴霧、ローラーによる塗布(rolling)、浸漬及び絞り(dip-squeeze)、塗装(painting)、散布、滴下、粉体塗装、前記疎水性化合物の液体担体への前記物品の添加、転がし塗り(tumbling)、又はスクリーン印刷によって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記接触させるステップは、洗濯機の中で行われる、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
疎水性置換エステルアルコールは、様々な物品に対する表面効果を高めるためのコーティングに用いる表面効果剤用エクステンダーとして採用されている。
【背景技術】
【0002】
種々の組成物が、表面効果を基材に与えるための処理剤として有用であることが知られている。表面効果には、撥水分性、防汚性及び耐しみ性、並びに繊維、布地(fabrics)、織物(textiles)、カーペット、紙、皮革、及びかかる他の基材などの繊維状基材に特に有用である他の効果が含まれる。多くのかかる処理剤は、部分フッ素化ポリマー又はコポリマーである。
【0003】
繊維状基材処理剤としての実用性を有するフッ素化ポリマー組成物は、組成物が繊維状基材表面に塗布されたときに撥油性及び撥水性を提供する、3個以上の炭素原子を有するペンダントパーフルオロアルキル基を一般に含有する。パーフルオロアルキル基は、一般的に、様々な連結基によってフッ素を含有しない重合性基と結合する。次いで、得られたモノマーを、一般的に、更なる有益な特性を基材に付与する他のモノマーと共重合させる。改善された架橋、ラテックス安定性及び持続性を付与するために、種々の特殊モノマーが組み込まれてもよい。各原料は、その所望の特性に加え、いくつかの潜在的に望ましくない特性を付与し得るため、個別の組み合わせは、その所望の用途向けである。これらポリマーは、一般的に、繊維質基材に容易に塗布できるように水性エマルジョンとして市販されている。
【0004】
必要とされるフッ素化ポリマーの量を減らすと同時に、基材に与えられた撥油性及び撥水性、並びにその耐久性を向上させる、すなわち、処理剤の効率及び性能を高めるために種々の試みが行われてきた。1つの方法は、ブロックイソシアネート又はメラミン樹脂を組み込むことである。しかしながら、これらの原料は繊維状基材の風合い(感触)に悪影響を及ぼす傾向があるので、制限された量を使用できるにすぎない。別のアプローチでは、様々なエクステンダーポリマーを使用する。これらは、典型的には、基材に塗布する前にフッ素化ポリマーエマルジョンとブレンドされる、水性エマルジョン状態の炭化水素ポリマーである。
【0005】
米国特許第7,820,745号は、水性媒体中にフッ素化コポリマーを含み、かつ界面活性剤として作用する少量で用いられるソルビタンエステルを含む、撥水性及び撥油性の水性組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第7,820,745号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
フッ素効率の向上した疎水性能を提供する表面効果組成物への需要が存在している。本発明は、このような組成物を提供するものである。
【0008】
本発明は、物品の表面に部分的又は完全な、耐久性非フッ素化コーティングを含む、コーティングされた物品を含み、そのコーティングは、5~95重量%の疎水性化合物と、5~95重量%の少なくとも1種の表面効果剤を含み、これら重量%はともにコーティングの全固形物重量に基づいており、疎水性化合物は、少なくとも2つの-R、-C(O)R、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)R、又はこれらの混合によって置換されている、環状又は非環状アルコールから選択され、ここで、環状又は非環状アルコールは、ペンタエリスリトール、糖、還元糖、アミノ糖、クエン酸、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され、式中、各nは、独立して、0~20であり、各mは、独立して、0~20であり、m+nは、0よりも大きく、各Rは、独立して、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、各Rは、独立して、-H、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む6~30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
【0009】
本発明は、表面効果を物品に与える方法を更に含み、その方法は、部分的又は完全にコーティングされた物品を形成するために、物品の表面を耐久性非フッ素化コーティングに接触させることを含み、そのコーティングは、5~95重量%の疎水性化合物と、5~95重量%の少なくとも1種の表面効果剤とを含み、これら重量%はともにコーティングの全固形物重量に基づいており、その疎水性化合物は、少なくとも2つのR、-C(O)R、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)R、又はこれらの混合で置換されている、環状又は非環状アルコールから選択され、ここで、環状又は非環状アルコールは、ペンタエリスリトール、糖、還元糖、アミノ糖、クエン酸、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され、式中、各nは、独立して、0~20であり、各mは、独立して、0~20であり、m+nは、0よりも大きく、各Rは、独立して、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、各Rは、独立して、-H、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む6~30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、商標は大文字で示す。
【0011】
本発明は、撥水性、撥油性、又は防汚性を向上させ、かつ/又はその他の疎水性表面効果を向上させたコーティングされた物品を提供する。この処理された物品は、従来の市販非フッ素化処理剤と比較して、性能及び耐久性が向上している。本発明のコーティング材料は、生物起源材料から誘導され得るものである。形成されたコーティングは、コーティングは、水や洗浄剤によって容易に取り除かれない持続性の薄膜であるという意味で耐久性のあるものである。一態様では、コーティングがひとたび乾燥すると、水又は洗浄剤に対して溶解したり分散したりせず、別の態様では、コーティングは、多数回洗浄してもその性能を失われずに持ちこたえる。例えば、コーティングは、後程実施例で説明するように、家庭で30回洗浄しても、撥水性、撥油性、又は散水性能を維持するものである。
【0012】
本発明は、物品の表面に部分的又は完全な、非フッ素化コーティングを含む、コーティングされた物品に関し、そのコーティングは、5~95重量%の疎水性化合物と、5~95重量%の少なくとも1種の表面効果剤を含み、これら重量%はともにコーティングの全固形物重量に基づいており、疎水性化合物は、少なくとも1つの-R、-C(O)R、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)R、又はこれらの混合によって置換されている、環状又は非環状糖アルコールから選択され、ここで、環状又は非環状糖アルコールは、糖、還元糖、アミノ糖、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され、式中、各nは、独立して、0~20であり、各mは、独立して、0~20であり、m+nは、0よりも大きく、各Rは、独立して、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、各Rは、独立して、-H、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む6~30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。-(CHCHO)-は、オキシエチレン基(EO)を表し、-(CH(CH)CHO)-は、オキシプロピレン基(PO)を表す。これらの化合物は、EO基のみ、PO基のみ、又はこれらの混合を含有し得る。これらの化合物は、例えば、PEG-PPG-PEG(ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール)と表記されるトリブロックコポリマーとしても存在し得る。1つの実施形態では、n+mは1~20であり、別の実施形態では、n+mは1~15であり、第3の実施形態では、n+mは1~12である。
【0013】
別の態様では、本発明は、物品の表面に部分的又は完全な、耐久性非フッ素化コーティングを含む、コーティングされた物品に関し、そのコーティングは、5~95重量%の疎水性化合物と、5~95重量%の少なくとも1種の表面効果剤を含み、これら重量%はともにコーティングの全固形物重量に基づいており、疎水性化合物は、少なくとも2つの-R、-C(O)R、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)R、又はこれらの混合によって置換されている環状又は非環状アルコールから選択され、ここで、環状又は非環状アルコールは、ペンタエリスリトール、糖、還元糖、アミノ糖、クエン酸、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され、式中、各nは、独立して、0~20であり、各mは、独立して、0~20であり、m+nは、0よりも大きく、各Rは、独立して、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、各Rは、独立して、-H、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む6~30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
【0014】
疎水性化合物は、ポリオール又はポリカルボン酸化合物に起源を有し、少なくとも2つの疎水性置換を有する多エステルアルコールであり得る。好適なポリオールの例には、環状若しくは非環状糖アルコール、又はジペンタエリスリトールを含むペンタエリスリトールが挙げられるが、それらに限られない。好適なポリカルボン酸化合物には、クエン酸が挙げられる。環状又は非環状糖アルコールは、糖、還元糖、アミノ糖、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択される。これらの化合物の混合もまた使用し得る。疎水性化合物は、少なくとも2つの-R、-C(O)R、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)R、又はこれらの混合で置換されている。そのような置換は、モノマー、及びポリマー分子に疎水特性を与える。一実施形態では、疎水性化合物は、少なくとも3つの-R、-C(O)R、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)R、又はこれらの混合で置換されている。
【0015】
これらの置換化合物は、例えば脂肪酸のエステル化のような糖アルコールの少なくとも1つの脂肪酸又はアルコキシル化脂肪酸との反応、又は、ポリカルボン酸の長鎖アルコールによるエステル化によって作ることが可能である。このような糖アルコールの例としては、アルドース及びケトース、例えば、テトロース、ペントース、ヘキソース及びヘプトース由来の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。具体例としては、グルコース、1,4-無水-D-グルシトール、2,5-無水-D-マンニトール、2,5-無水-L-イジトール、ソルビタン、グリセルアルデヒド、エリトロース、アラビノース、リボース、アラビノース、アロース、アルトロース、マンノース、キシロース、リキソース、グロース、ガラクトース、タロース、フルクトース、リブロース、マンノヘプツロース、セドヘプツロース、トレオース、エリスリトール、トレイトール、グルコピラノース、マンノピラノース、タロピラノース、アロピラノース、アルトロピラノース、イドピラノース、グロピラノース、グルシトール、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ボレミトール、グルコン酸、グリセリン酸、キシロン酸、ガラクタル酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸ラクトン、グリセリン酸ラクトン、キシロン酸ラクトン、グルコサミン、ガラクトサミン、又はこれらの混合が挙げられる。
【0016】
好適な脂肪酸としては、限定はされないが、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミステリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、オレイン酸、エルカ酸、及びこれらの酸がアルコキシル化したもの、並びにこれらの混合が挙げられる。一実施形態では、Rは、11~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、別の1つの実施形態では、Rは、17~21個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。一実施形態では、Rは、12~30個の炭素を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、別の1つの実施形態では、Rは、18~30個の炭素を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、別の1つの実施形態では、Rは、18~22個の炭素を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基である。一実施形態では、環状又は非環状糖アルコールの脂肪酸置換体は、少なくとも-59℃の融点を有する。別の実施形態では、環状又は非環状糖アルコールの脂肪酸置換体は、少なくとも0℃の融点を有し、更に別の1つの実施形態では、環状又は非環状糖アルコールの置換体は、少なくとも40℃の融点を有する。
【0017】
一実施形態では、疎水性化合物は、式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)から選択され、
【0018】
【化1】
式中、各Rは、独立して、-H、-R、-C(O)R
-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、又は
-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)Rであり、各nは、独立して、0~20であり、各mは、独立して、0~20であり、m+nは、0よりも大きく、rは1~3であり、aは0又は1であり、pは、独立して、0~2であり、但し、rが3のとき、aは0であり、各Rは、独立して、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、各Rは、独立して、-H、又は任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む6~30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であるが、なお、式(Ia)が選択される場合には、少なくとも1つのRが-Hであり、かつ少なくとも2つのR基が-R、-C(O)R、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、又は-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)Rであり、各Rは、独立して、-H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6~30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基又はこれらの組み合わせ、
-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、又は
-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)Rであるが、なおここで式(Ib)が選択される場合には、少なくとも1つのR又はRは、-Hであり、かつ少なくとも2つのR又はRは、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はこれらの組み合わせ、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、又は-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)Rであり、かつ、各R19は、-H、-C(O)R、又は-CHC[CHOR]であるが、なお、ここで式(Ic)が選択される場合には、少なくとも1つのR19又はRが-Hであり、かつR19のうちの少なくとも2つ又はRが-C(O)R
-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、又は
-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)Rである。一態様では、R、R、R、及びR19は、飽和直鎖又は分枝鎖アルキル基である。
【0019】
疎水性反応性化合物が式(Ia)である場合、1,4-ソルビタンのエステル、2,5-ソルビタンのエステル及び3,6-ソルビタンのエステルを含む、任意の適切な置換還元糖アルコールを使用してもよい。一実施形態では、疎水性化合物は、式(Ia’)となる式(a)から選択されるが、
【0020】
【化2】
ここでRは、-H、-R、又は-C(O)Rに更に限定され、かつ少なくとも2つのR基は、-C(O)R又はRである。式(Ia’)の残りの部分を形成するのに用いられ、少なくともRの1つが-Hでありかつ少なくとも1つのRが-C(O)Rから選択される化合物は、アルキルソルビタンとして一般に知られている。これらのソルビタンは、-C(O)Rで、二置換又は三置換され得る。市販のソルビタン(例えば、SPAN)は、各RがHのソルビタン(非置換)から、各Rが-C(O)Rのソルビタン(完全に置換されている)までの範囲に及び、Rが、5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基である種々のソルビタンの混合まで、並びにこれらの種々の置換の混合を含有することが知られている。また、市販のソルビタンは、ソルビトール、イソソルビド、又は他の中間体若しくは副生成物を適当量含み得る。
【0021】
一実施形態では、少なくとも2つのR基は、-C(O)Rであり、かつRは、5~29個の炭素を有する直鎖の分岐したアルキル基である。別の実施形態では、Rは、7~21個の炭素を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、第3の実施形態では、Rは、11~21個の炭素を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基である。これらの残基を形成するために使用される好ましい化合物としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミステリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸及びこれらの混合由来の二置換及び三置換のソルビタンが挙げられる。特に好ましい化合物としては、二置換及び三置換ソルビタンステアレート又はソルビタンベヘニンが挙げられる。
【0022】
任意に、Rは、少なくとも1つの不飽和結合を含む、5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。少なくとも2つのR基が-C(O)Rから選択され、Rが少なくとも1つの不飽和結合を含有する式(Ia)で表される化合物の例としては、ソルビタントリオレエート(すなわち、式中、Rは、-C14CH=CHC17である)が挙げられるが、これに限定されない。その他の例としては、パルミトレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、及びエルカ酸から誘導される二置換及び三置換のソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
一実施形態では、式(Ia)の化合物が用いられ、式中少なくとも2つのR基は、互いに独立して、
-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、又は
-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)Rである。少なくとも2つのRが、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)又は-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)Rであり、各mが独立して0~20であり、各nが独立して0~20であり、n+mが0よりも大きい、式(Ia)の化合物は、ポリソルベートとして知られており、TWEENの商標名で市販されている。これらのポリソルベートは、アルキル基R又はRで、二置換又は三置換され得る。市販のポリソルベートは、各RがHである(非置換)ポリソルベートから、各Rが5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である(完全に置換されている)ポリソルベートに及ぶ様々なポリソルベートの混合、及びこれらの様々な置換体の混合を含有することが知られている。式(Ia)で表される化合物の例としては、ポリソルベートトリステアレート及びポリソルベートモノステアレート等のポリソルベートが挙げられる。式(Ia)で表される化合物(式中、m+nは、0よりも大きく、Rは、少なくとも1つの不飽和結合を含む)の例としては、ポリソルベートトリオレエート(式中、Rは、C14CH=CHC17である)が挙げられるが、これに限定されず、ポリソルベート80という名称で市販されている。試薬は、R、R、及びRが様々な値を有する化合物の混合を含んでもよく、また、Rが少なくとも1つの不飽和結合を含む化合物と、Rが完全に飽和している化合物との混合を含んでもよい。
【0024】
式(Ib)の化合物は、アルキルシトレートとして知られている。これらのシトレートは、アルキル基で二置換又は三置換されたシトレートとして存在し得るものである。市販のシトレートは、R及び各Rが-Hであるシトレートから、各Rが任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む6~30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であるシトレートに及ぶ様々なシトレート並びにクエン酸の混合、並びにこれらの様々な置換体の混合を含有することが知られている。R、R、R、及びRが様々な値を有するシトレートの混合物が使用されてよく、Rが少なくとも1つの不飽和結合を有する化合物と、Rが完全に飽和している化合物との混合を含んでもよい。アルキルシトレートは、市販もされており、その市販品では、m+nは0より大きく、Rは、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、又は
-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)Rであり、かつ、そうした市販品は、R及び各RがHであるものから、各R及び/又はRが任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む5~30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であるものに及ぶ様々な置換体として存在する。式(Ib)で表される化合物の例としては、トリアルキルシトレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
式(Ic)の化合物は、ペンタエリスリトールエステルとして知られている。これらのペンタエリスリオールエステルは、アルキル基による二置換体又は三置換体として存在し得る。式(Ic)のXを形成するために使用される好ましい化合物は、ジペンタエリスリオールエステルであり、R19は、-CHC[CHOR]である。市販のペンタエリスリオールエステルは、R19及び各Rが-Hであるペンタエリスリオールエステルから、各Rが-C(O)Rであり、Rが、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であるペンタエリスリオールエステルに及ぶ様々なペンタエリスリオールエステルの混合、及びこれらの様々な置換体の混合を含有することが知られている。また、ペンタエリスリオールエステルは、Rの鎖長が異なる混合を有する化合物、又はRが少なくとも1つの不飽和結合を含む化合物と、Rが完全に飽和した化合物との、混合を含有してもよい。
【0026】
式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)で表される化合物は、全て生物系由来であり得る。用語「生物系由来」とは、材料の少なくとも10%を、植物、他の草木、及び獣脂等の非原油源から作製できることを意味する。一実施形態では、疎水性化合物は、約10%~100%生物系由来である。一実施形態では、疎水性化合物は、約35%~100%生物系由来である。別の1つの実施形態では、疎水性化合物は、約50%~100%生物系由来である。一実施形態では、疎水性化合物は、約75%~100%生物系由来である。一実施形態では、疎水性化合物は、100%生物系由来である。疎水性化合物の平均OH値は、0よりわずかに大きい値から約230の範囲とすることができる。一実施形態では、平均OH値は約10~約175であり、別の1つの実施形態では、平均OH値は約25~約140である。
【0027】
物品表面のコーティングは、5~95重量%の疎水性化合物と5~95重量%の表面効果剤とを含み、これら重量%はともにコーティングの全固形物重量に基づいている。別の態様では、物品表面のコーティングは、ともにコーティングの全固形物重量に基づいて、10~90重量%の疎水性化合物と10~90重量%の表面効果剤とを含み、第3の態様では、20~80重量%の疎水性化合物と20~80重量%の表面効果剤とを含み、これら重量%はともにコーティングの全固形物重量に基づいている。「コーティングの固形物重量」という用語は、水性成分、溶媒成分、又はその他の液体成分が蒸発した後に残留する、コーティング成分の総量を意味するものとして用いる。言い換えると、それは、コーティングの、非水性成分、非溶媒成分、及び非揮発性成分の総量である。コーティングは、水性又は有機溶媒、ポリマー樹脂、顔料、機能性添加剤、及び界面活性剤を更に含み得る。
【0028】
表面効果剤は、ノーアイロン性(no iron)、アイロンの掛け易さ(easy to iron)、縮み抑制、防しわ性、パーマネントプレス、調湿性(moisture control)、柔軟性、強度、滑り防止、帯電防止、かぎ裂き防止(anti-snag)、毛玉防止(anti-pill)、耐しみ性(stain repellency)、しみ落ち性(stain release)、防汚性(soil repellency)、汚れ落ち性(soil release)、撥水性、撥油性、防臭、抗菌、日焼け防止、及び類似の効果のような表面効果を提供する。そのような材料は、疎水性非フッ素化カチオン性アクリルポリマー、疎水性非フッ素化アニオン性アクリルポリマー、疎水性非フッ素化非イオン性アクリルポリマー、疎水性非フッ素化ウレタン、非フッ素化オルガノシラン、シリコーン、パラフィンなどのワックス、及びそれらの混合物の形態をとり得る。一部のしみ落とし剤及び汚れ落とし剤は親水性であり、かつポリメチルアクリレート又は親水性ウレタンのような化合物を含む。これらの化合物はまた、表面効果剤としても用いられ得るが、疎水性化合物と、コーティングの総固形分重量に基づいて、1つの態様では、約5:95~95:5の割合で、第2の態様では、約10:90~90:10の割合で、第3の態様では、約20:80~80:20の割合で組み合わせられ得る。別の実施形態では、この化合物はまた、表面効果剤としても用いられ得るが、疎水性化合物と、コーティングの総固形分重量に基づいて、1つの態様では、約21:79~79:21の割合で、第2の態様では、約25:75~75:25の割合で、第3の態様では、約30:70~70:30の割合で組み合わせられ得る。
【0029】
物品に塗布する前に疎水性化合物を疎水性表面効果剤と組み合わせることによって、低い黄変性や良好な耐久性といった望ましい特性に加えて、優れた特性を物品に対して付与する。これら組み合わせブレンドは、他の処理化学薬品の塗布前、塗布後又は塗布中のいずれかに、水又は他の溶媒中の分散体の形態で物品に塗布される。
【0030】
疎水性非フッ素化アクリルポリマーとしては、モノビニル化合物のコポリマーが挙げられ、そのモノビニル化合物の例としては、アルキル(メタ)アクリレート、脂肪酸ビニルエステル、スチレン及びアルキルスチレン、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アルキルエステル、ビニルアルキルケトン、並びにアクリルアミドが挙げられる。共役ジエンは好ましくは1,3-ブタジエンである。上記に分類される代表的な化合物としては、メチル、プロピル、ブチル、2-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシエチル、イソアミル、2-エチルヘキシル、オクチル、デシル、ラウリル、セチル、及びオクダデシルのアクリレート及びメタクリレート、並びにビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルカプリレート、ビニルラウレート、ビニルステアレート、スチレン、アルファメチルスチレン、p-メチルスチレン、フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン、アリルヘプタノエート、アリルアセテート、アリルカプリレート、アリルカプロエート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、イソプレン、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アミン末端(メタ)アクリレート、及びポリオキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
疎水性非フッ素化ウレタンの例としては、イソシアネートをアルコール試薬として上に説明されている疎水性化合物と反応させることによって合成したウレタンが挙げられる。これらの化合物は、米国特許出願公開第2014/0295724号及び同第2016/0090508号に記載されている。疎水性非フッ素化非イオン性アクリルポリマーの例としては、上述の疎水性化合物のアクリル酸エステルを重合又は共重合することによって作られるポリマーが挙げられる。そのような化合物は、米国特許出願公開第2016/0090686号に記載されている。
【0032】
繊維状基材に塗布される本発明のコーティングは、任意選択的に、共重合後に(すなわち、ブレンドされたイソシアネートとして)添加された、耐久性を高めるためのブロックイソシアネートを更に含む。好適なブロックイソシアネートの例は、Huntsman Corp(Salt Lake City,UT)から入手可能なPHOBOL XANである。他の市販のブロックイソシアネートも、本明細書で使用するのに好適である。ブロックイソシアネートを添加する望ましさは、コポリマーの具体的な用途に依存する。本発明で想定される用途の大部分については、鎖間架橋又は繊維への結合を十分に達成する上で、ブロックイソシアネートの存在は必須ではない。ブレンドイソシアネートとして添加する場合、最大約20重量%の量を添加する。
【0033】
本発明のコーティング組成物は、任意選択的に、追加の表面効果を達成するための追加処理剤若しくは仕上げ剤、又はかかる処理剤若しくは仕上げ剤とともに一般に使用される添加剤などの追加成分を更に含む。このような追加成分は、ノーアイロン性(no iron)、アイロンの掛け易さ(easy to iron)、縮み抑制、防しわ性、パーマネントプレス、調湿性(moisture control)、柔軟性、強度、滑り防止、帯電防止、かぎ裂き防止(anti-snag)、毛玉防止(anti-pill)、耐しみ性(stain repellency)、しみ落ち性(stain release)、防汚性(soil repellency)、汚れ落ち性(soil release)、撥水性、撥油性、防臭、抗菌、日焼け防止、及び類似の効果等の表面効果を提供する化合物又は組成物を含む。1つ以上のこのような処理剤又は仕上げ剤をブレンド組成物と組み合わせ、繊維質基材に塗布してもよい。界面活性剤、pH調整剤、架橋剤、湿潤剤、及び当業者に周知の他の添加剤等の、一般的にこのような処理剤又は仕上げ剤とともに使用される他の添加剤が存在してもよい。更に、効果の組み合わせを得るために、任意選択的に、他のエクステンダー組成物が含まれる。
【0034】
例えば、合成布地を処理するとき、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能なAlkanol 6112等の湿潤剤を使用することができる。更なる例として、綿又は綿混紡布地を処理するとき、Emerald Carolina,LLC(Charlotte,NC)から入手可能なPermafresh EFC等の防しわ性樹脂を使用することができる。更なる例として、不織布を処理するとき、Omnova Solutions(Chester,SC)から入手可能なFREEPEL 1225WR等のワックスエクステンダーを用いることができる。また、Stepan(Northfield,IL)から入手可能なZelec KC等の静電気防止剤、又はヘキサノール等の湿潤剤も好適である。分散体は、一般的に、噴霧、浸漬、パディング、又は他の周知の方法によって繊維質基材に塗布される。例えば、圧搾ロールによって過剰の液体を除去した後、処理された繊維質基材を乾燥させ、次いで、例えば、少なくとも30秒間、典型的には約60~約240秒間かけて、約100℃~約190℃に加熱することによって硬化させる。このような硬化は、撥油性、撥水性、及び防汚性、並びにこれらの性質の耐久性を高める。これらの硬化条件は典型的であるが、一部の市販の装置には、その特有の設計特徴のため、この範囲外で作動し得るものがある。
【0035】
一実施形態では、本発明は、表面効果を物品に与える方法であって、その方法は、部分的又は完全にコーティングされた物品を形成するために、物品の表面をコーティングに接触させることを含み、そのコーティングは、5~95重量%の疎水性化合物と、5~95重量%の少なくとも1種の表面効果剤とを含み、これら重量%はともにコーティングの全固形物重量に基づいており、その疎水性化合物は、少なくとも1つのR、-C(O)R、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)R、又はそれらの混合で置換されている、環状又は非環状糖アルコールから選択され、ここで、前記環状又は非環状糖アルコールは、糖、還元糖、アミノ糖、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され、式中、各nは、独立して、0~20であり、各mは、独立して、0~20であり、m+nは、0よりも大きく、各Rは、独立して、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、各Rは、独立して、-H、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む6~30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
【0036】
別の態様では、表面効果を物品に与える方法であり、その方法は、部分的又は完全にコーティングされた物品を形成するために、物品の表面を耐久性非フッ素化コーティングに接触させることを含み、そのコーティングは、5~95重量%の疎水性化合物と、5~95重量%の少なくとも1種の表面効果剤とを含み、これら重量%はともにコーティングの全固形物重量に基づいており、その疎水性化合物は、少なくとも2つのR、-C(O)R、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)、-(CHCHO)(CH(CH)CHO)C(O)R、又はこれらの混合で置換されている、環状又は非環状アルコールから選択され、ここで、環状又は非環状アルコールは、ペンタエリスリトール、糖、還元糖、アミノ糖、クエン酸、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され、式中、各nは、独立して、0~20であり、各mは、独立して、0~20であり、m+nは、0よりも大きく、各Rは、独立して、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、各Rは、独立して、-H、任意で少なくとも1つの不飽和結合を含む6~30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
【0037】
物品には、繊維、織物(textile)、布地(fabric)、混紡布地(fabric blend)、紙、不織布、皮革、プロパント粒子、無機酸化物粒子、薬等で処理していないコンクリート(unglazed concrete)、れんが、タイル、花崗岩、石灰岩、大理石、グラウト、モルタル、彫像、記念碑、木材、複合材料、人造大理石、ガラス、熱可塑性シート、熱成形品若しくは成形品、発泡体シート若しくは物品、金属、種子、塗られた布地若しくはキャンバス、又はそれらを組み合わせたものが挙げられ得るが、それらに限られない。接触させるステップは、水性溶液、水性分散液、有機溶媒を用いた溶液又は分散液、共溶媒溶液又は分散液の形態の疎水性化合物を塗布することによって起こし得る。接触させるステップは、従来型方法の任意のものにより起こし得るが、例としては噴霧、ローラーによる塗布(rolling)、浸漬及び絞り(dip-squeeze)、塗装(painting)、滴下、粉体塗装、前記疎水性化合物の液体担体への前記物品の添加、転がし塗り(tumbling)、又はスクリーン印刷が挙げられるが、それらに限定されない。
【0038】
一態様では、方法は、部分的又は完全にコーティングされた物品を加熱するステップを更に含む。例えば、疎水剤は単独で又は液体担体中で塗布され得るが、処理された物品は、加熱して溶融させ、流し、乾燥させ、またその他の方法により、疎水剤を物品の表面に固定させ得る。物品表面の最終的なコーティングは、固体化し、持続的で、永久的なコーティングとなる。別の態様では、方法は、乾燥、冷却、又は放冷によって、コーティングを固体化するステップを更に含む。液体の担体を用いる場合には、その担体は、加熱すること又は風乾することによって乾燥させて、液体の担体を蒸発させ得るが、そうすることにより、永久的な固体のコーティングを得ることができる。
【0039】
一態様では、接触させるステップは、洗濯機の中で起こす。採用し得る具体的な方法については、米国特許出願公開第2016/0090560号に記載されている。例えば、例えば洗濯機の洗いのサイクル又はすすぎのサイクルによって、水を用いてコーティング組成物が分散するのを助けることができる。洗いのサイクル又はすすぎのサイクルで用いる水の温度としては、冷たい、室温、温かい、熱い等のいずれでもよい。添加剤を基材に接触させる方法としては、トリートメント組成物を洗濯機の洗濯槽に注ぎ込むこと若しくはトリートメント組成物を洗濯機の洗剤又はトリートメント剤収容容器に注ぎ込むことによって、洗濯用トリートメント組成物を導入すること、添加剤組成物を含有する溶解可能小袋を加えること、又は添加剤組成物を含有する再利用可能な制御放出用容器を加えることが挙げられるが、それらに限定されない。2種類の洗濯用トリートメント組成物を含む洗濯用添加剤組成物を用いて、上記の方法の任意のものを採用してもよい。あるいは、布地を手洗いする際のように、洗濯用添加剤組成物又は洗濯用トリートメント組成物を水性の液体に導入し、おけ、バケツ、又はシンクにその液体を張り、繊維質基材をその中に入れることで接触させてもよい。
【0040】
一実施形態では、洗濯用トリートメント組成物又は洗濯用添加剤組成物を、洗濯機の洗濯槽に注ぐか、洗剤又はトリートメント剤収容容器に注ぎ、洗濯機を、洗い又はすすぎのサイクルを実行するようにプログラムする。一実施形態では、洗濯槽に途中まで水を張り、洗濯用トリートメント組成物又は洗濯用添加剤組成物を水の中に注いだ上で、水を洗濯槽一杯まで張るようにする。次に洗剤を任意選択的に追加し、繊維質基材を洗濯槽に入れた上で、洗濯機に洗いとすすぎのサイクルを完全に実行させる。
【0041】
方法は、コーティングを熱で硬化させるステップを更に含み得る。任意の好適な加熱方法が用いられ得るが、例えば、乾燥機内での機械による乾燥、アイロンがけ、蒸気処理、ブロー乾燥、ヒートランプ下での乾燥、又は放熱源の近くでの乾燥が例として挙げられる。一実施形態では、硬化のステップは、約30℃~約100℃の温度で実行する。別の1つの実施形態では、硬化のステップは、約35℃~約80℃の温度で実行し、更に別の1つの実施形態では、硬化のステップは、約40℃~約60℃の温度で実行し、実施時間は少なくとも30分間、好ましくは少なくとも35分間、より好ましくは少なくとも40分間である。任意の乾燥方法が実施可能であり、例えば、空気による乾燥、回転による乾燥、又は基材が乾燥するまで加熱すること等が挙げられる。このような乾燥サイクルは、衣類乾燥機に一般に見られるもので、回転乾燥サイクル、加熱つき回転乾燥サイクル、又は回転なし加熱サイクルなどが挙げられる。一実施形態では、処理された基材を、加熱つき回転乾燥にかける。このような硬化は、撥油性、撥水性、及び防汚性、並びに撥性の耐久性を高める。これらの硬化条件は典型的であるが、一部の市販の装置は、その特有の設計特徴のため、この範囲外で作動してもよい。
【0042】
一実施形態では、物品は繊維質基材であり、例えば、繊維、織物(textiles)、紙、不織布、皮革、布地(fabrics)、混紡布地(fabric blends)、又はそれらを組み合わせたものが挙げられる。「布地」とは、例えば、綿、レーヨン、絹、羊毛、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ナイロン、並びに「NOMEX」及び「KEVLAR」等のアラミド等の繊維からなる、天然布地若しくは合成布地、又はこれらの混紡を意味する。「混紡布地」とは、2種類以上の繊維で作製された布地を意味する。典型的には、これら混紡は、少なくとも1つの天然繊維と少なくとも1つの合成繊維との組み合わせであるが、2つ以上の天然繊維又は2つ以上の合成繊維の混紡である場合もある。
【0043】
一態様では、物品は固体プロパント粒子又は無機酸化物粒子である。固体プロパントは、当業者には既知の、任意の好適な方法によってコーティングされ得る。好適な方法の1つは、疎水性化合物を、pHが5の水に一晩混ぜておくことを含む。次に固体プロパントを、疎水性化合物分散液に接触させて、ロールミルによって5分間混ぜる。次に表面処理されたプロパントから余分な液体を取り除き、100℃のオーブンで乾燥させて、固体の表面処理されたプロパントを得る。表面処理されるプロパント材料には、砂、熱可塑性粒子、アルミナ粒子、泡ガラス又はガラスビーズ粒子、及びクレイ粒子が挙げられるが、それらに限定されない。好ましくは、プロパント材料は砂である。本発明の表面処理済みプロパントは、少なくとも100マイクロメートルのメッシュサイズを有する(但し、149マイクロメートル以下である)。
【0044】
具体的には、本発明の処理された物品は、用いられるフッ素化化合物の量を減らしたり、あるいは不要にしたりしながら、表面特性、特に撥油性、撥水性、及び防汚性の耐久性を向上させるために有用である。撥性は、種々の他の表面効果と組み合わせると効果的である。
【0045】
試験法
全ての溶媒及び試薬は、特に指示がない限り、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から購入し、供給された状態のまま使用した。トリステアリン酸ソルビタン、トリラウリン酸ソルビタン、及びトリベヘン酸ソルビタンとトリステアリン酸ソルビタンとの50:50の配合物は、DuPont Nutrition & Health(Copenhagen,デンマーク)から入手可能である。デカオレイン酸デカグリセロールは、Lonza(Allendale,NJ)から入手可能である。ソルビタントリオレエートは、Oleon(Ghent,ベルギー)から入手可能である。
【0046】
ARMEEN DM-18Dは、Akzo-Nobel(Bridgewater,NJ)から入手した。PHOBOL XANは、Huntsman Corp(Salt Lake City,UT)から入手した。
【0047】
STEPOSOL SB-WはStepan(Northfield,Illinois)から入手した。VMA-70は、NOF Corporationから入手可能である。
【0048】
CHEMIDEX Sは、Lubrizol(Wickliffe、Ohio)から入手可能なステアラミノプロピルジメチルアミン界面活性剤である。
【0049】
ETHAL LA-4は、Ethox Chemicals(Greenville、South Carolina)から入手可能なエトキシル化乳化剤である。
【0050】
CAPSTONE 6,2-FMA及びZELAN R3は、The Chemours Company(Wilmington,DE)から入手可能である。
【0051】
本明細書の実施例の評価においては、以下の試験を用いた。
【0052】
試験法1:布地の処理
本研究で処理された布地は、Michael OY(フィンランド)から入手可能な100重量%ポリエステル製布地、又はHuntsman Corp(Salt Lake City,UT)から入手可能な、100重量%ナイロン製布地であった。布地は、従来のパッド浴(浸漬)処理を用いて、疎水性化合物及び表面効果ポリマー水性分散体によって処理された。調製した濃縮分散体を脱イオン水で希釈して、60g/Lの最終エマルションを浴中に有するパッド浴を得た。綿布地の処理には、湿潤剤INVADINE PBN及び触媒添加した架橋剤KNITTEX 7636(全てHuntsman(Salt Lake City,UT)から入手可能)も、それぞれ5g/L及び30g/Lで浴中に入れた。布地を浴中でパディングし、過剰の液体を圧搾ローラーによって除去した。含浸量は、綿基材に対して約95%であった。「含浸量」とは、布地の乾燥重量に基づく、布地に塗布されたエマルジョンポリマー及び添加剤の浴溶液の重量である。布地を約165℃で3分硬化させ、処理及び硬化の後、少なくとも2時間「静置」した。
【0053】
ポリエステル布地の処理には、それぞれ5g/L及び1g/Lの湿潤剤INVADINE(登録商標)PBN(Huntsman(Charlotte,NC,USA)から入手可能)及び60%の酢酸も浴中に入れた。布地を浴中でパディングし、過剰の液体を圧搾ローラーによって除去した。含浸量は、ポリエステル基材に対して約55%であった。「含浸量」とは、布地の乾燥重量に基づく、布地に塗布されたエマルジョンポリマー及び添加剤の浴溶液の重量である。布地を約160℃で2分硬化させ、処理及び硬化の後、約15~約18時間「静置」した。
【0054】
試験方法2:水落下評点
処理された織物基材の撥水性を、AATCC標準試験法No.193及び「TEFLON(登録商標)Global Specifications and Quality Control Tests」ブックレットに概説されている方法に従って測定した。水落下評点が高ければ高いほど、仕上げ処理された基材の有する、水系物質による汚れに対する抵抗性が良好となる。
【0055】
試験法3:散水撥水性
動的撥水性の指標である噴霧試験法を用いることによって、撥水性を更に試験した。処理された布地サンプルの撥水性を、AATCC標準試験法No.22及び「TEFLON(登録商標)Global Specifications and Quality Control Tests」ブックレットに概説されている方法に従って測定した。90の評価は、浸透のない若干の無作為な固着又は濡れを示し、値が低くなればなるほど、濡れ及び浸透が漸進的に増加することを表している。
【0056】
試験方法4:油評点
処理済み布地サンプルの撥油性を、AATCC標準試験法No.118の修正版及び「TEFLON(登録商標)Global Specifications and Quality Control Tests」ブックレットに記載の方法に従って試験した。油落下評点が高ければ高いほど、仕上げ処理された基材の有する、油系物質による汚れに対する抵抗性が良好となる。
【0057】
試験法5:Bundesmann吸水性(ABS)
処理済み布地サンプルの動的吸水性を、ISO 9865標準試験法に従って、後に試験した。
【0058】
試験法6:洗浄耐久性
織物試験のための国際規格に規定された家庭洗浄手順に従って、布地サンプルを洗濯した。布地サンプルを、フロントローディング式全自動洗濯機(Wascator FOM 71MP-Lab、タイプA)の水平ドラム内に、バラスト荷重とともに、総乾燥負荷が4ポンドとなるように入れた。市販の洗剤(AATCC 1993 standard Reference Detergent WOB)を加え、洗濯機プログラムの6Nを用いて、家庭での選択20回(20HW)又は同30回(30HW)をシミュレーションさせた。洗濯が完了した後、全投入量をKENMORE自動乾燥機に入れ、高温で45~50分間乾燥させた。
【実施例
【0059】
実施例1~18及び比較例A~C
ARMEEN DM18D(24.7g)、イオン交換水(2066g)、2-エチルヘキシルメタクリレート(1076g)、7-EOメタクリレート(154g)、N-メチロールアクリルアミド(48%、31g)、ドデシルメルカプタン(1.5g)、2%のNaCl溶液(58g)、氷酢酸(17g)、及びヘキシレングリコール(308g)を混合し、その後、大型商業用ブレンダー内で2分間ブレンドした。イオン交換水200gを更に加えた。得られた混合物を反応容器に移し、75℃で攪拌し、窒素を30分間注入してかき混ぜた。VAZO 56(2.5g)を、イオン交換水61gとともに加え、混合物を4時間にわたり攪拌して、33.55%固形分の非フッ素化アクリル分散生成物(NFAD)を得た。
【0060】
4ッ口丸底フラスコにオーバーヘッドスターラー、熱電対及び凝縮器を取り付けた中に、トリステアリン酸ソルビタン(111g)と、4-メチル-2-ペンタノン(MIBK、274g)とを加えた。溶液を80℃に加熱した。次に、温水(512g)、CHEMIDEX S(2.4g)、ETHAL LA-4(3.2g)、及び酢酸(1.6g)を65℃で加えて、水性分散液を調製した。混合物をイマーションブレンダーによってブレンドし(2分間)、41MPa(6000psi)で均質化し、得られた分散物を減圧下で蒸留して溶媒を除去し、冷却し、濾過した後に、固形分13.15%の不燃性分散物を得た。得られた分散物にZELAN R3とNFADとをブレンドし、布地に、固形成分60g/L又は40g/Lになるように、表1に記載の重量比で塗布した。上の試験方法に従って、サンプルを試験した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】