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特許7065778炎症性障害を処置するための新規なアプローチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】炎症性障害を処置するための新規なアプローチ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220502BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/711
A61P43/00 111
A61K31/7125
A61K31/712
A61K31/7115
A61P29/00
A61P25/00
A61P35/00
A61P17/06
A61P25/28
A61P27/02
A61P1/04
A61P11/08
A61P25/04
A61P37/08
A61P17/04
A61P35/02
A61P19/02
A61P29/00 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018544810
(86)(22)【出願日】2017-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2017054374
(87)【国際公開番号】W WO2017144685
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2020-02-13
(31)【優先権主張番号】16000468.5
(32)【優先日】2016-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16002305.7
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519125450
【氏名又は名称】セカルナ・ファーマシューティカルズ・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤシンスキー, フランク
(72)【発明者】
【氏名】シルドゥアン,クゼニヤ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒェル,スヴェン
【審査官】原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/007486(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/129394(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
C12Q
A61K
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/WPIX/CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2~配列番号4、配列番号6~配列番号11、配列番号23~配列番号26、および配列番号53~配列番号62からなる群から選択される、15~21ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドであって、前記オリゴヌクレオチドの配列は、配列GTGTTCを含み、この配列は、配列番号1のRORC2核酸コード配列の146~151位に相補的である、オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
15~20ヌクレオチドからなる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドは、HDLM2細胞においてHPRT1の発現と比べて少なくとも85%の、RORC2の発現を阻害する、請求項1又は2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
1つ以上のホスホロチオエートが、独立して、未修飾ホスフェート、またはホスホロチオエート以外の修飾ホスフェートと交換される、請求項1から3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記修飾ホスフェートが、メチルホスホネートである、請求項4に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項7】
急性炎症性疾患、慢性炎症性疾患、神経変性疾患、悪性腫瘍、および良性腫瘍のリストから選択される疾患または障害を予防するおよび/または処置するための方法において使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたは請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記炎症性疾患は、乾癬、関節リウマチ(RA)、ベヒテレフ病、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ベーチェット病、ブドウ膜炎、シェーグレン症候群、炎症性腸疾患(IBD)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経因性疼痛、アトピー性皮膚炎、およびアレルギーからなる群から選択される、請求項7に記載のオリゴヌクレオチドまたは医薬組成物。
【請求項9】
前記腫瘍は、固形腫瘍、血行性腫瘍、白血病、腫瘍転移、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、化膿性肉芽腫、乾癬、星状細胞腫、聴神経腫、芽細胞腫、ユーイング腫瘍、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、髄芽腫、神経膠腫、血管芽細胞腫、ホジキンリンパ腫、髄芽腫、白血病、中皮腫、神経芽細胞腫、神経線維腫、非ホジキンリンパ腫、松果体腫、網膜芽細胞腫、肉腫、セミノーマ、トラコーマ、およびウィルムス腫瘍からなる群から選択される、または胆管がん、膀胱がん、脳腫瘍、乳癌、気管支原性がん、腎臓のがん、子宮頸癌、絨毛がん、脈絡膜がん、嚢胞腺がん、胎児性がん、上皮がん、食道癌、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌、胆嚢癌、胃癌、頭部癌、肝臓がん、肺がん、髄様がん、頚部癌、非小細胞気管支原性/肺がん、卵巣癌、膵臓がん、乳頭状がん、乳頭状腺がん、前立腺癌、小腸がん、前立腺がん、直腸癌、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、皮膚癌、小細胞気管支原性/肺がん、扁平上皮がん、脂腺がん、精巣がん、および子宮癌からなる群から選択される、請求項7に記載のオリゴヌクレオチドまたは医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RORγ(ガンマ)tmRNAを標的にすることをベースとする、炎症性障害および他の疾患を処置するための新規なアプローチに関するものである。本発明は、RORγtタンパク質をコードするRORC、転写変異体2mRNA(RORC2)の特異的に選択される領域に相補的な10~22修飾または未修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
Th17細胞は、いくつかの慢性炎症性疾患および自己免疫性疾患に関連したTヘルパー細胞のサブセットである。極性化および活性化と同時に、Th17細胞は、サイトカイン(cytokines)IL-17A、IL-17F、IL-21、IL-22、ならびにケモカイン(chemokines)CXCL8およびCCL20のような非常に炎症誘発性の分子を産生する。さらに、Th17細胞は、GM-CSFのようなエフェクター分子を産生し、B細胞を助け、胚中心形成およびクラススイッチ(class switching)を誘発する。
【0003】
エフェクター機構および増悪性のTh17応答は、乾癬、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD)の多様な表現型、喘息、およびアレルギーのような急性および慢性炎症性疾患の発病に関連する。
【0004】
関節リウマチでは、Th17の役割は、いくつかのマウスモデルおよび患者の材料において確認された。IL17産生細胞の頻度の高まりは、病気の滑膜において発見され、コラーゲン誘発性関節炎モデルにおけるIL17の関節内投与は、RA症状の悪化を引き起こした。さらに、IL17RA欠損マウスは、RAの非常に軽度の形態しか発症しない。現在に至るまで、抗IL17Aおよび抗IL17RAモノクローナル抗体が、ヒトにおいて進行性のRAを防止することが示され、治療薬として承認されている。
【0005】
乾癬、乾癬性関節炎、および尋常性乾癬では、皮膚自己抗原および皮膚微生物叢に対するTh17細胞の慢性的な活性化および炎症誘発性の応答は、病状の主な原因である。それぞれの患者の皮膚生検材料は、高レベルのIL17、IL23、IL6、およびIL12を示し、これは炎症誘発性の混合Th1/Th17表現型を示す。そのうえ、乾癬プラーク中のTh17細胞は、CCL20を産生し、より多くのTh17、肥満細胞、および好中球を動員して、応答を延長し、高める。さらに、Th17は、にきび、皮膚筋炎、および強皮症のような他のいくつかの皮膚表現型の一部である炎症プロセスにおいて役割を果たす。
【0006】
皮膚疾患に加えて、Th17細胞はまた、さらに皮膚粘膜の炎症性疾患、慢性、アレルギー性、およびステロイド抵抗性の喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ならびにクローン病、腸炎、および潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患などにおいても重要な役割を果たす。IL17Aは、重度の喘息患者およびCOPD患者の痰において高レベルで発見された。IL17は、たばこ煙成分およびいくつかの汚染物質の標的であるアリール炭化水素受容体(AhR)を介して強力に誘発される。
【0007】
IBDの病状は、徹底的に研究された分野であり、有力なデータは、使用されるモデルの多様性にもかかわらず、Th17細胞の重要性を示す。クローン病では、患者は、Th17頻度の増加と共に疾患の再発期を経験する。強力なTh17促進性自己免疫性応答は、IL23R多型に関係するかもしれず、腸微生物叢に対する行き過ぎた宿主防御は、いろいろなTh17媒介性機構をベースとする。それにもかかわらず、IL17の阻害は、クローン病において有益と示されず、これは、患者集団におけるIBD表現型の多様性を反映する。
【0008】
Th17促進性であることが示された最初の疾患のうちの1つは、多発性硬化症であり、病気の複雑さは増しているが、Th17細胞は、今もなお中心的な役割をしている。MS患者の脳生検材料の多様な細胞型は、IL17A過剰発現およびリンパ球の広範囲な浸潤を示した。さらに、MSの周辺の表現型もまた、これらの細胞がB細胞を助けることが示されたので、Th17依存性であるように思われ、自己抗体産生を誘発する可能性がある。
【0009】
MSでのように、Th17細胞の同様の関与が、別の自己免疫性の表現型、全身性エリテマトーデス(「SLE」)において示された。この複雑で多様な疾患は、Th17細胞数の増加と共に悪化する。SLEにおけるTh17の主な影響は、進行性の脈管炎および内皮機能不全において観察された。この影響は、SLEだけでなく、ベーチェット病、ブドウ膜炎、およびシェーグレン(Sjuegren)症候群にも特徴的である。IL17産生細胞は、自己免疫性脈管炎患者の血管壁に蓄積し、好中球およびマクロファージのような他の炎症誘発性細胞を動員することが発見された。IL17は、ヒト内皮細胞に対して血栓形成促進性のおよび凝血促進性の影響を有する。
【0010】
脈管炎でのTh17の蓄積に付きものであるが、冠動脈硬化症においてTh17の頻度および大動脈損傷の頻度の間に正の相関がある。ここで、Th17レベルの増加は、大動脈損傷のサイズおよび心筋梗塞の頻度の増加を引き起こす。
【0011】
関節リウマチに加えて、Th17は、別の慢性炎症性の関節および脊椎の疾患、ベヒテレフ(Bechterew)病において役割を果たす。ここで、進行中の腱の炎症の間に、Th17細胞および肥満細胞は、滑膜においてIL17を産生するのみならず、異所性骨形成および関節硬直を促進する。進行中の炎症は、抗TNFα療法によりかなり処置できるが、骨の再編成および強直は、Th17依存性かもしれない。
【0012】
まだ部分的にしか調査されていないTh17細胞についての1つの分野は、神経因性疼痛である。多様な神経因性で慢性の非特異的な腰痛が、Th17細胞および調節性T細胞の間のバランスの崩壊と相関しているというデータが蓄積している。
【0013】
総合的に考えると、Th17の発生および機能の阻害は、明らかに、前述の疾患の処置の有望な標的となると思われる。
【0014】
Th17細胞のマスター転写因子は、RORγtである。レチノイン酸受容体関連オーファン受容体(ROR)は、ステロイドホルモン核内受容体ファミリーのメンバーである。ROR転写因子サブファミリーは、3つのメンバーからなる:RORα(RORA)、RORβ(RORB)、およびRORγ(RORC)。それぞれのメンバーは、独立した遺伝子として発現され、ゲノム応答エレメントに単量体として結合する。選択的スプライシングおよび特異なプロモーター使用頻度を通して、それぞれのRORメンバーは、異なる組織発現パターンを有し、かつ異なる標的を調節する変異体を生成する。RORCは、特異なプロモーター使用頻度から生じ、かつ第1のエクソンが異なる2つのアイソフォームを有する。これらの2つの転写変異体は、次のように注釈を付けられる:RORγ(RORC1)のNM_005060およびRORγt(RORC2)のNM_001001523。RORγは、恒常的にまたは概日(24時間周期)リズムの下、様々な組織で発現されるが、RORγtの発現は、免疫系の細胞に限られる。RORγの最も高い発現は、骨格筋、腎臓、および肝臓で示されたが、RORγtの発現は、発生中のダブルポジティブ胸腺細胞、Tヘルパー系列17細胞(Th17)、リンパ系組織インデューサー細胞(LTi)、およびいくつかの上皮内リンパ球(ILC)の亜集団において最高になる。RORγtがFas発現およびIL2依存性を低下させ、胸腺選択の間に活性化誘発性の細胞死から胸腺細胞を救出するので、RORγtは、胸腺リンパ球新生において重要な役割を有する。さらに、RORγtは、LTiの機能および二次性リンパ系組織の発生にとって重要である。
【0015】
したがって、マスター分化因子、RORγtの阻害を通したTh17の発生および機能の阻害は、実行可能な選択肢であると思われる。
【0016】
Th17促進性の病状を阻害するための考え得る1つのアプローチは、既に存在しているTh17のエフェクター機能を阻害することおよびRORγtをブロックすることによってTh17系列へのナイーブT細胞の新たな分化に干渉することである。しかしながら、RORγtは、細胞内分子であり、治療用抗体が到達することはできない。さらに、現在利用可能なRORγおよびγt小分子アンタゴニストは、両方の分子間で同一であるリガンドまたはDNA結合ドメインを標的にする。前に述べたように、RORγは、至る所で発現され、多くの中心的な生理学的プロセスにおいて役割を有する。RORγについて最も研究されている役割は、肝臓および骨格筋における脂質および糖代謝の概日性の調節である。RORγがないと、肝臓代謝機能のアンバランス、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、および肥満が引き起こされる。そのうえ、いくつかの研究は、癌におけるRORγの重要な役割を証明した。マウスにおけるRORγ欠損は、頻繁な肝臓および脾臓転移と共に高い発生率の胸腺リンパ腫を引き起こす。したがって、RORγt特異的阻害剤の必要性が高いが、未だ対処されていない。
【0017】
Th17促進性の病状を阻害するための1つの代替アプローチは、核酸レベルでRORγtの発現をノックダウン(Knock down)することである。利用可能な小分子治療薬と比較して、核酸レベルでのターゲティングが、RORγtの転写のみを標的にするように調節されてもよく、したがってRORγに影響がないので、そのようなターゲティングは、いくつかの重要な利点を有する。現在開発中の小分子は、このレベルの特異性を有しておらず、これにより、これらの薬剤候補による有害な副作用が引き起こされる可能性がある。しかしながら、10~23モチーフをベースとするDNAザイムを使用する最初のアプローチは、GATA-3の阻害に利用され、既に成功しているが[WO第2005/033314号パンフレット](特許文献1)、HDLM2細胞において未処置コントロールと比べて少なくとも50%のRORC2の発現の阻害をもたらさなかった(実施例2を参照)。
【0018】
WO第2006/007486号パンフレット(特許文献2)は、免疫細胞の増殖に対するRORC2発現の影響力についての検査をベースとし、RORC2発現の阻害剤またはアンタゴニストの使用を主張する。アンチセンス構築物は、有望な阻害剤として列挙されるが、有効な例は示されていない。
【0019】
WO第2012/129394号パンフレット(特許文献3)は、IL-9受容体アゴニストを使用することによる癌の処置に関し、アゴニストは、受容体に対して直接またはRORC2発現を調節することによって間接的に作用することができる。アンチセンス構築物は、有望な阻害剤として列挙されるが、有効な例は示されていない。
【0020】
CN第102 732 562号明細書(特許文献4)は、明らかに、たとえばRORC1のsiRNAベースの阻害について記載しており、配列番号7~9に記載のsiRNA構築物を含む。RORC2に対するsiRNA構築物は、示されているようには思われない。
【0021】
WO第2011/113015号パンフレット(特許文献5)は、核内ホルモン受容体(「NHR」)に対するアンチセンス構築物の使用に関する。RORC1は、そのようなNHRの例として列挙されるが、RORC2は列挙されていない。
【0022】
Hakemi et al.;Avicenna Journal of Medical Biotechnology 5(2013)10-19(非特許文献1)は、RORC2のsiRNAベースの遺伝子サイレンシングに関し、全部で3つの抗RORC2 siRNA構築物を示す(表3を参照)。しかしながら、これらの構築物は、RORC1と共有されるRORC2の領域に相当するので、RORC2特異的であるようには思われない(開始位置は、この文献の図1において示される配列番号1のそれぞれ872、1197、および1303)。
【0023】
Burgler et al.,J.Immunol.184(2010)6161-6169(非特許文献2)は、FOXP3プロモーターとRORC2の相互作用について検査し、RORC2のノックダウンにおける2つのsiRNA構築物の使用を含む(補足の表4を参照)。しかしながら、これらの構築物は、RORC1と共有されるRORC2の領域に相当するので、RORC2特異的であるようには思われない(開始位置は、この文献の図1において示される配列番号1のそれぞれ875および2473)。
【0024】
Webering“Zur Rolle des α-Melanozyten-stimulierenden Hormons(α-MSH)und des retinoid-related orphan receptor γt(RORγt)bei der Immunpathogenese des Asthma bronchiale”,PhD thesis,Luebeck 2014;Kategorie“Y” (非特許文献3)は、気管支喘息の免疫性の発病におけるRORC2の役割に関し、RORγtの発現を阻害するためのDNAザイムおよび3つの異なるsiRNA構築物の使用を含む。DNAザイムの使用は、RORγt発現に対して影響力を有することを何ら示すことができなかったが(セクション3.2.3および図36を参照)、siRNA構築物は、明らかに、48時間後に65%以下のRORγtの発現の低下をもたらした(セクション3.2.4および図38を参照)。しかしながら、表5に示される配列が、この文献の図1に配列番号1として示されるRORC2配列と一致しないので、RORγtのどの領域が標的にされたかは不明瞭である。
【0025】
WO第2004/024879号パンフレット;特許文献6は、p21経路とRORの相互作用に関する。全部で、DNA配列は、15の異なるRORについて示され、明らかにRORC2(配列番号12)を含む。RORC2ではなく、それらのRORのうちの3つについて、siRNAベースのノックダウン実験が示される。
【0026】
Lin et al.,Mediators Inflamm.2015:290657 and Song et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.452(2014)1040-1045(非特許文献4)は、小分子およびアプタマー-siRNAキメラによるRORC2の阻害に関する。明らかに示される配列情報はない。
【0027】
したがって、細胞内でRORγtの発現を特異的に阻害することができる治療剤は、Th17促進性の疾患、特に、様々な器官の炎症性障害の処置に不可欠である。よって、RORC2の発現および/または活性を低下させるまたは阻害する治療剤について高い科学的なおよび医学的な必要性が今もなおある。特に、特異的に相互作用し、したがって、RORC2の発現を低下させるまたは阻害するオリゴヌクレオチドおよびいかなる(重度の)副作用ももたらすことなくRORC2を特異的に阻害するオリゴヌクレオチドについて長年の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【文献】WO第2005/033314号パンフレット
【文献】WO第2006/007486号パンフレット
【文献】WO第2012/129394号パンフレット
【文献】CN第102 732 562号明細書
【文献】WO第2011/113015号パンフレット
【文献】WO第2004/024879号パンフレット
【文献】米国特許第4,704,295号明細書
【文献】米国特許第4,556,552号明細書
【文献】米国特許第4,309,406号明細書
【文献】米国特許第4,309,404号明細書
【非特許文献】
【0029】
【文献】Hakemi et al.;Avicenna Journal of Medical Biotechnology 5(2013)10-19
【文献】Burgler et al.,J.Immunol.184(2010)6161-6169
【文献】Webering“Zur Rolle des α-Melanozyten-stimulierenden Hormons(α-MSH)und des retinoid-related orphan receptor γt(RORγt)bei der Immunpathogenese des Asthma bronchiale”,PhD thesis,Luebeck 2014;Kategorie“Y”
【文献】Lin et al.,Mediators Inflamm.2015:290657 and Song et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.452(2014)1040-1045
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
DNAザイムベースのアプローチにより得られた否定的な結果にもかかわらず、本発明者らは、驚いたことに、あるアンチセンス構築物を使用する、どちらかと言えば類似しているアプローチにより、HDLM2細胞において未処置コントロールと比べて少なくとも50%のRORC2の発現の阻害を実現することができ、いくつかの候補は少なくとも80%、より詳細には少なくとも90%の阻害を実現したことを確認した。この発見は予期しなかったことであり、先行技術によって教示も示唆もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0031】
したがって、第1の態様では、本発明は、10~20ヌクレオチド、特に15~18ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドに関し、前記オリゴヌクレオチドの配列は、配列番号1のRORC2核酸コード配列のアンチセンス鎖に相当し、オリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオチドは、任意選択で修飾され、前記オリゴヌクレオチドは、HDLM2細胞において未処置コントロールと比べて少なくとも50%の、RORC2の発現を阻害する。
【0032】
代替の第1の態様では、本発明は、10~22ヌクレオチド、特に14~21ヌクレオチド、特に15~21ヌクレオチド、およびより詳細には15~20ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドに関し、前記オリゴヌクレオチドの配列は、配列番号1のRORC2核酸コード配列のアンチセンス鎖に相当し、オリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオチドは、任意選択で修飾され、前記オリゴヌクレオチドは、HDLM2細胞において未処置コントロールと比べて少なくとも50%の、RORC2の発現を阻害する。
【0033】
第2の態様では、本発明は、本発明に記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物に関する。
【0034】
第3の態様では、本発明は、急性炎症性疾患、慢性炎症性疾患、神経変性疾患、悪性腫瘍、および良性腫瘍のリストから選択される疾患または障害を予防するおよび/または処置するための方法において使用するための、本発明に記載のオリゴヌクレオチドまたは医薬組成物に関する。
【0035】
第4の態様では、本発明は、急性炎症性疾患、慢性炎症性疾患、神経変性疾患、悪性腫瘍、および良性腫瘍のリストから選択される疾患または障害を予防するおよび/または処置するための方法であって、その必要がある患者に本発明のオリゴヌクレオチドまたは本発明の医薬組成物を投与するステップを含む方法に関する。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、急性炎症性疾患および慢性炎症性疾患、神経変性疾患、悪性腫瘍、ならびに良性腫瘍のリストから選択される疾患または障害を予防するならびに/または処置するための方法において使用するための本発明のオリゴヌクレオチドまたは本発明のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、RORC、転写変異体2 mRNA(NM_001001523.1)の全体を示す図である。大文字は、RORC2(RORγt)に特有で、かつRORC1と共有していない領域を示す。RORC1に対して少なくとも3つのミスマッチが必要とされると仮定して、RORC2のみに対して特異的な17アミノ酸長オリゴヌクレオチドについて使用に適した所を太字で示す。生物情報科学的スクリーニングを、RORC2のみに対してオリゴヌクレオチドの特異性を保つためにこのエリア内で実行した。
図2図2Aは、実施例2において記載されるように、HDLM2細胞におけるRORγtの阻害についての第1のオリゴヌクレオチドスクリーニングの結果を示す図である。 図2Bは、2つのRORC2特異的オリゴヌクレオチドについてのIC50の決定を示す図である。プロットは、ASO濃度(x軸)に依存した、残存しているRORC2 mRNA発現(y軸)の減少を示す。 図2Cは、漸増量の2例のRORC2特異的オリゴヌクレオチド(x軸)の存在下におけるRORC2タンパク質発現(y軸)を示す図である。 図2Dは、RORC2特異的およびコントロールASOの存在下における両方のRORCアイソフォーム、RORC1およびRORC2に対する影響を示す図である。 図2Eは、ヒトTh17細胞における2つの特異的なオリゴヌクレオチドのノックダウン効果ならびに主なTh17特徴的サイトカイン、IL17A/FおよびIL22の低下を示す図である。 図2Fは、蛍光活性化細胞選別(florescence associated cell sorting)(FACS)を介してのヒトTh17細胞におけるIL17A産生を示す図である。 図2Gは、2つのRORC2特異的オリゴヌクレオチドおよびneg1コントロールについてのTNBS誘発性大腸炎モデルにおけるルミノール試験結果を示す図である。 図2Hは、TNBSモデルにおけるマウス結腸のRORC2発現および炎症スコアの低下を示す図である。 図2Iは、それぞれの実験群のマウス結腸におけるミエロペルオキシダーゼ発現を示す図である(赤色のドット-ミエロペルオキシダーゼ;青色の染色-DAPI)。
図3】本発明において使用されてもよい多くの様々な修飾ヌクレオチドを示す図である。
図4】実施例3において記載されるように、HDLM2細胞におけるRORC2阻害についてのさらなるオリゴヌクレオチドスクリーニングの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
したがって、第1の態様では、本発明は、10~20ヌクレオチド、特に15~18ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドに関し、前記オリゴヌクレオチドの配列は、配列番号1のRORC2核酸コード配列のアンチセンス鎖に相当し、オリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオチドは、任意選択で修飾され、前記オリゴヌクレオチドは、HDLM2細胞において未処置コントロールと比べて少なくとも50%の、RORC2の発現を阻害する。
【0039】
代替の第1の態様では、本発明は、10~22ヌクレオチド、特に15~21ヌクレオチド、より詳細には15~20ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドに関し、前記オリゴヌクレオチドの配列は、配列番号1のRORC2核酸コード配列のアンチセンス鎖に相当し、オリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオチドは、任意選択で修飾され、前記オリゴヌクレオチドは、HDLM2細胞において未処置コントロールと比べて少なくとも50%の、RORC2の発現を阻害する。
【0040】
特定の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドの配列は、配列番号1のRORC2核酸コード配列の5’末端部分に含まれる配列に相補的であり、前記5’末端部分は、ヌクレオチド1~166、特にヌクレオチド1~163、より詳細にはヌクレオチド1~162からなる。ただし、それぞれの場合に、前記オリゴヌクレオチドの少なくとも3つのヌクレオチドが、配列番号1のRORC2核酸コード配列の1~148位に含まれるヌクレオチドに相補的であることを条件とする。
【0041】
より詳細な実施形態では、前記オリゴヌクレオチドの配列は、配列番号1のRORC2核酸コード配列の5’末端部分に含まれる配列に相補的であり、前記5’末端部分は、ヌクレオチド131~166、特にヌクレオチド131~163、より詳細にはヌクレオチド131~162からなる。ただし、それぞれの場合に、前記オリゴヌクレオチドの少なくとも3つのヌクレオチドが、配列番号1のRORC2核酸コード配列の131~148位に含まれるヌクレオチドに相補的であることを条件とする。
【0042】
特定の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドの配列は、配列GTGTTを含み、この配列は、配列番号1のRORC2核酸コード配列の147~151位に相補的である。より詳細な実施形態では、前記オリゴヌクレオチドの配列は、配列GTGTTCを含み、この配列は、配列番号1のRORC2核酸コード配列の146~151位に相補的である。より詳細な実施形態では、前記オリゴヌクレオチドの配列は、配列GTGTTCTを含み、この配列は、配列番号1のRORC2核酸コード配列の145~151位に相補的である。特定の他の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドの配列は、配列TGTGTTCTを含み、この配列は、配列番号1のRORC2核酸コード配列の145~152位に相補的である。特定の他の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドの配列は、配列TTGTGTTCTを含み、この配列は、配列番号1のRORC2核酸コード配列の145~153位に相補的である。
【0043】
本発明の特定の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは、HDLM2細胞において未処置コントロールと比べて少なくとも75%、特に少なくとも80%、より詳細には少なくとも85%、より詳細には少なくとも90%の、RORC2の発現を阻害する。
【0044】
ある実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは、HDLM2細胞において未処置コントロールと比べて約95%の、RORC2の発現を阻害する。
【0045】
本発明において、RORC2の発現の阻害は、下記の実施例2または実施例3において示される方法に従って決定される。
【0046】
本発明の特定の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドにおける1つ以上のヌクレオチドは、修飾されている。
【0047】
ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの基本単位を形成し、たとえば、核酸塩基(窒素塩基、たとえばプリンまたはピリミジン)、5炭素糖(たとえばリボース、2-デオキシリボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、またはそれらの糖の安定化修飾体)、および1つ以上のリン酸基から構成される。修飾リン酸基の例は、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートである。ヌクレオチドのそれぞれの化合物は、修飾可能であり、天然に存在するまたは天然に存在しない。後者の例は、ロックド核酸(LNA)、2’,4’拘束エチル核酸(constrained ethyl nucleic acid)(c-ET)、2’-0,4’-C-エチレン架橋核酸(ENA)、ポリアルキレンオキシド-(トリエチレングリコール(TEG)など)、2’-フルオロ-、2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-D-アラビノ核酸(FANA)、2’-0-メトキシ-、および2’-O-メチル-修飾ヌクレオチドである。図3は、本発明において使用されてもよい多くの様々な修飾ヌクレオチドの例を示す。
【0048】
「LNA」は、修飾RNAヌクレオチドであり、リボース成分は、2’酸素および4’炭素をつなぐ追加のブリッジにより修飾されている(2’-4’リボヌクレオシド)。ブリッジは、3’-endo(North)コンホメーションでリボースをロックし、これは、A型二重鎖で見出されることが多い。LNAヌクレオシドおよびヌクレオチドは、それぞれ、たとえば、α-Dまたはβ-L立体配置をしたチオ-LNA、オキシ-LNA、またはアミノ-LNAの形態を含み、オリゴヌクレオチド中のDNAまたはRNAの残基と、それぞれ混合するまたは組み合わせることができる。
【0049】
「架橋核酸」は、修飾RNAヌクレオチドであり、時に拘束または隔絶(inaccessible)RNA分子とも呼ばれ、これは、「固定」C3’-endo糖パッカリングを有する5員、6員、またはさらには7員架橋構造を含有してもよい。ブリッジは、リボースの2’,4’位に合成により組み込まれ、2’,4’-BNA単量体がもたらされる。詳細な例は、「ENA」ヌクレオチドであり、ブリッジは、エチレンブリッジである。図3は、本発明において使用されてもよい多くのBNAヌクレオチドを示す。
【0050】
特定の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドにおける1つ以上のヌクレオチドは、修飾されており、修飾ヌクレオチドは、特にホスホロチオエートおよびメチルホスホネート、特にホスホロチオエートから選択される修飾リン酸基を含有する。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドのリン酸基はすべて、特にホスホロチオエートおよびメチルホスホネートから独立して選択される修飾リン酸基であり、特に、リン酸基はすべて、ホスホロチオエートである。
【0051】
特定の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドのヌクレオチドはすべて、ホスホロチオエート基によって連結される。
【0052】
特定の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドにおける1つ以上のヌクレオチドは、修飾されており、修飾ヌクレオチドは、LNA、c-ET、ENA、ポリアルキレンオキシド、2’-フルオロ、2’-O-メトキシ、FANA、および/または2’-O-メチル修飾ヌクレオチドである。
【0053】
特定の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの5’および/または3’端の5ヌクレオチドのストレッチ内にある、特に、オリゴヌクレオチドの5’および/または3’端にある。
【0054】
特定の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの5’および/または3’端に少なくとも1つの修飾ヌクレオチド、特に、少なくとも1つのLNA、c-ET、および/またはENAを含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、5’端の5つ以下のヌクレオチドのストレッチ内に1、2、3、または4つのLNAまたはc-ETまたはENAおよび3’端の5つ以下のヌクレオチドのストレッチ内に1、2、3、または4つのLNAまたはc-ETまたはENAを含む。別の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、5’端または3’端の5ヌクレオチドのストレッチ内に1、2、3、または4つのLNA、c-ET、またはENAおよび3’端または5’端の5ヌクレオチドのストレッチ内にTEGなどのようなポリアルキレンオキシドを含む。
【0055】
特定の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは、前記オリゴヌクレオチドの5’端の5ヌクレオチドのストレッチ内に少なくとも1つのLNAヌクレオチドおよび前記オリゴヌクレオチドの3’端の5ヌクレオチドのストレッチ内に少なくとも1つのLNAヌクレオチドを含むGapmerである。特定の実施形態では、前記Gapmerは、前記オリゴヌクレオチドの5’端の5ヌクレオチドのストレッチ内に2または3つのLNAヌクレオチドおよび前記オリゴヌクレオチドの3’端の5ヌクレオチドのストレッチ内に2または3つのLNAヌクレオチドを含む。
【0056】
本発明では、用語「Gapmer」は、RNase H切断を誘発するのに十分に長いデオキシヌクレオチド単量体の中央にあるブロックを含有するキメラアンチセンスオリゴヌクレオチドを指す。Gapmerの中央にあるブロックは、内側のブロックをヌクレアーゼ分解から保護する2’-O修飾リボヌクレオチドまたは架橋核酸(BNA)などのような他の人工的に修飾されたリボヌクレオチド単量体のブロックが側面に位置する。多くの以前の研究において、修飾DNAアナログは、体液中でのそれらの安定性について調査された。これらの実験の大多数において、ホスホロチオエートDNAアナログが、使用された。より最近では、BNA単量体を含むいくつかのタイプの人工ヌクレオチド単量体が、Gapmerの設計におけるそれらの有用性について調査された。Gapmerは、ホスホロチオエート連結の数を低下させると同時に、標的RNAのRNアーゼ-H媒介性の切断を達成するために使用された。ホスホロチオエートは、未修飾DNAと比較して、ヌクレアーゼに対する抵抗性が増加している。しかしながら、それらにはいくつかの不都合がある。これらには、相補的な核酸に対する結合能力が低いことおよび毒性の副作用を引き起こしてそれらの利用を制限する、タンパク質への非特異的な結合が含まれる。オフターゲットの影響を引き起こす非特異的な結合に加えて毒性の副作用が発生したことにより、毒性の副作用を示すことなく、インビボにおいて効率的で特異的なアンチセンス活性をもたらす修飾オリゴヌクレオチドの開発のための新たな人工核酸の設計が促された。
【0057】
LNA Gapmerは、タンパク質、mRNA、およびlncRNAの機能喪失型の研究についての強力なツールである。これらの単鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、相補的なRNA標的のRNase H依存性の分解を触媒する。LNA Gapmerは、典型的に12~20ヌクレオチド長で、フランキング領域にはLNAが、LNAがない中央にあるギャップにはDNAが豊富で、よってGapmerと名付けられた。LNA含有フランキング領域は、アンチセンスオリゴに対するヌクレアーゼ抵抗性を与え、同時に、GC含有量にかかわらず標的結合親和性を増加させる。中央にあるDNA「ギャップ」は、結合と同時に標的RNAのRNase H切断を活性化する。
【0058】
本発明の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列番号2~配列番号34および配列番号53~配列番号74からなる群から;特に、配列番号2~配列番号4、配列番号6~配列番号27、配列番号31~配列番号34、および配列番号53~配列番号74からなる群から;特に、配列番号2~配列番号4、配列番号6~配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号23~配列番号27、および配列番号53~配列番号64からなる群から;より詳細には、配列番号2~配列番号4、配列番号6~配列番号11、配列番号23~配列番号26、および配列番号53~配列番号62からなる群から;より詳細には、配列番号2~配列番号4、配列番号6~配列番号9、配列番号23、および配列番号53~配列番号59からなる群から;より詳細には、配列番号2~配列番号4、配列番号6、配列番号7、および配列番号53~配列番号55からなる群から選択される配列を含む。
【0059】
本発明のある実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列番号2および配列番号3からなる群から選択される配列を含む。
【0060】
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列番号2~配列番号34および配列番号53~配列番号74からなる群から選択される配列の変異体であり、そのような変異体において、1つ以上のホスホロチオエートは、独立して、未修飾ホスフェート、または、ホスホロチオエート以外の修飾ホスフェート、特にメチルホスホネートと交換される。
【0061】
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列番号2~配列番号34および配列番号53~配列番号74からなる群から選択される配列の変異体であり、そのような変異体は、1つ以上のヌクレオチドミスマッチ、特に、1つまたは2つのミスマッチ、より詳細には、1つのミスマッチを含む、ただし、ミスマッチを含むいずれのそのような変異体も、実施例1において記載される生物情報科学的ツールにより分析した場合、適した種に対して相同性を維持しながら、ヒト全ゲノムスクリーニングと比べて少なくとも1つのミスマッチを含有することを条件とする。
【0062】
第2の態様では、本発明は、本発明に記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物に関する。
【0063】
特定の実施形態では、医薬組成物は、医薬として許容されるキャリヤをさらに含む。
【0064】
特定の実施形態では、医薬組成物は、さらなるアンチセンス化合物、抗体、化学療法化合物、抗炎症化合物、抗ウイルス化合物、免疫調整化合物、医薬として許容される結合剤、および補助剤から選択される少なくとも1つの追加の構成成分をさらに含む。
【0065】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドおよび医薬組成物は、それぞれカプセル、錠剤、および丸剤などの形態をした投薬単位としてそれぞれ製剤され、たとえば以下の化合物を含有する:バインダーとしての結晶セルロース、ガム、またはゼラチン;賦形剤としてのデンプンまたはラクトース;潤滑剤としてのステアリン酸、様々な甘味料または香味料。カプセルについては、投薬単位は、脂肪油のような液体キャリヤを含有してもよい。同様に、糖または腸溶剤のコーティングは、投薬単位の一部であってもよい。
【0066】
オリゴヌクレオチドおよび/または医薬組成物は、様々なルートを介して投与できる。これらの投与ルートは、エレクトロポレーション、上皮、皮膚の中への陥入、動脈内、関節内、頭蓋内、皮内、病巣内、筋肉内、鼻内、眼内、髄腔内、前房内、腹腔内、前立腺内、肺内、脊髄内、気管内、腫瘍内、静脈内、膀胱内、身体の腔内への配置、経鼻吸入、経口、肺吸入(たとえば、ネブライザーによるものを含む、粉剤もしくはエアロゾルの吸入もしくはガス注入によるもの)、皮下、皮膚下、局所(眼ならびに膣および直腸送達を含む粘膜を含む)、または経皮投与を含むが、これらに限定されない。
【0067】
非経口、皮下、皮内、または局所投与については、オリゴヌクレオチドおよび/または医薬組成物は、たとえば滅菌希釈剤、バッファー、毒性の調節剤、および抗菌薬を含む。好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドまたは医薬組成物は、放出制御特性を有する移植片またはマイクロカプセルを含む、分解または身体からの即座の排出を防ぐキャリヤにより調製される。静脈内投与については、好ましいキャリヤは、たとえば生理的食塩水またはリン酸緩衝食塩水である。経口投与のためのそのようなオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドおよび/または医薬組成物は、たとえば粉剤もしくは顆粒剤、微小粒子、ナノ粒子、水もしくは非水溶媒中の懸濁剤もしくは水剤、カプセル、ゲルカプセル、サッシェ、錠剤、または小型の錠剤を含む。非経口、髄腔内、前房内、または脳室内投与のためのものを含むオリゴヌクレオチドおよび/または医薬組成物は、たとえば、バッファー、希釈剤、ならびに/または透過促進剤、キャリヤ化合物、および/または他の医薬として許容されるキャリヤもしくは賦形剤などのような他の適した添加剤を任意選択で含有する滅菌水溶液を含む。
【0068】
医薬として許容されるキャリヤは、たとえば液体または固体であり、ある特定の医薬組成物の核酸およびその他の構成成分と組み合わせられた場合に、所望の容積、濃度などを提供するために、考えられた投与計画方法により選択される。典型的な医薬として許容されるキャリヤは、結合剤(たとえばα化とうもろこしデンプン、ポリビニルピロリドン、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);増量剤(たとえばラクトースおよび他の糖、結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート、もしくはリン酸水素カルシウムなど);潤滑剤(たとえばステアリン酸マグネシウム、滑石、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、硬化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(disintegrate)(たとえばデンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど);または湿潤剤(たとえばラウリル硫酸ナトリウムなど)を含むが、これらに限定されない。経口的に投与される投薬形態のための徐放性経口送達系および/または腸溶コーティングは、米国特許第4,704,295号明細書;米国特許第4,556,552号明細書;米国特許第4,309,406号明細書;および米国特許第4,309,404号明細書において記載される。補助剤はこれらの語句に含まれる。
【0069】
ヒト疾患予防および/または処置の方法における使用に加えて、本発明に記載のオリゴヌクレオチドおよび/または医薬組成物はまた、家畜動物、爬虫類動物、鳥、外来の動物、および哺乳動物、げっ歯動物などを含む飼育動物を含む他の対象の予防および/または処置のための方法においても使用される。哺乳動物は、たとえばウマ、イヌ、ブタ、ネコ、または霊長動物(たとえばサル、チンパンジー、もしくはキツネザル)を含む。げっ歯動物は、たとえばラット、ウサギ、マウス、リス、またはモルモットを含む。
【0070】
第3の態様では、本発明は、急性炎症性疾患および慢性炎症性疾患、神経変性疾患、悪性腫瘍、ならびに良性腫瘍のリストから選択される疾患または障害を予防するならびに/または処置するための方法において使用するための本発明のオリゴヌクレオチドまたは本発明のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物に関する。
【0071】
第4の態様では、本発明は、急性炎症性疾患、慢性炎症性疾患、神経変性疾患、悪性腫瘍、および良性腫瘍のリストから選択される疾患または障害を予防するおよび/または処置するための方法であって、その必要がある患者に本発明のオリゴヌクレオチドまたは本発明の医薬組成物を投与するステップを含む方法に関する。
【0072】
本発明の特定の実施形態では、炎症性疾患は、乾癬、関節リウマチ(RA)、ベヒテレフ病、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ベーチェット病、ブドウ膜炎、シェーグレン症候群、炎症性腸疾患(IBD)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経因性疼痛、アトピー性皮膚炎、およびアレルギーからなる群から選択される。
【0073】
本発明の特定の他の実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍、血行性腫瘍、白血病、腫瘍転移、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、化膿性肉芽腫、乾癬、星状細胞腫、聴神経腫、芽細胞腫、ユーイング腫瘍、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、髄芽腫、神経膠腫、血管芽細胞腫、ホジキンリンパ腫、髄芽腫、白血病、中皮腫、神経芽細胞腫、神経線維腫、非ホジキンリンパ腫、松果体腫、網膜芽細胞腫、肉腫、セミノーマ、トラコーマ、およびウィルムス腫瘍からなる群から選択されるまたは胆管がん、膀胱がん、脳腫瘍、乳癌、気管支原性がん、腎臓のがん、子宮頸癌、絨毛がん、脈絡膜がん、嚢胞腺がん、胎児性がん、上皮がん、食道癌、子宮頸部のがん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌、胆嚢癌、胃癌、頭部癌、肝臓がん、肺がん、髄様がん、頚部癌、非小細胞気管支原性/肺がん、卵巣癌、膵臓がん、乳頭状がん、乳頭状腺がん、前立腺癌、小腸がん、前立腺がん、直腸癌、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、皮膚癌、小細胞気管支原性/肺がん、扁平上皮がん、脂腺がん、精巣がん、および子宮癌の群から選択される。
【0074】
理解しやすくするためおよび簡潔に説明するために、特徴について同じまたは別々の実施形態の一部として本明細書において記載するが、本発明の範囲は、記載される特徴のすべてまたはいくつかの組み合わせを有する実施形態を含んでいてもよいことが十分に理解されるであろう。
【0075】
以下の実施例は、本発明をさらに例証する役目を果たすであろうが、同時に、本発明を限定するものとみなされることは決してない。それどころか、本発明の範囲は、本明細書の説明を読み終えた後に本発明の精神から逸脱することなく当業者らに示唆されるかもしれない様々な他の実施形態、その変形、および等価物に言及することがはっきり理解されなければならない。
【実施例
【0076】
実施例1:配列の選択およびオリゴヌクレオチド修飾プロセス
初めに、可能性のある標的部位に相当する適した配列を専用の生物情報科学ツールを使用して同定した。第2のステップで、これらの配列に対する化学修飾の影響について、修飾パターンを最適化するためにインシリコで予測した。
【0077】
1.段階的な配列選別プロセス
RORCについては、特異なプロモーター使用頻度から生じ、したがって第1のエクソンが異なる2つのアイソフォームが、知られている。これらの2つの転写変異体は、次のように注釈を付けられる:RORγ(RORC1)のNM_005060およびRORγt(RORC2)のNM_001001523。変異体RORC2は、変異体RORC1と比較して5’UTRおよびコード領域が異なる。そのため、アイソフォームRORC2は、アイソフォームRORC1と比較して短く、かつ異なるN末端を有する。RORC2(NM_001001523)およびRORC1(NM_005060)のmRNAは、それぞれ、3054ヌクレオチドおよび3084ヌクレオチドからなる。両方の配列のアライメントは、5’非翻訳領域(UTR)内にほとんど位置する最初の148ヌクレオチドのみが、RORC2に特有であり、残りのヌクレオチドは共有されることを示す。
【0078】
この領域における13アミノ酸長の長さ~17アミノ酸長の長さの範囲にわたる配列長について、専用の生物情報科学的ツールを使用して分析した(合計800配列)。
【0079】
以下の因子について、RORC2特異的アンチセンス配列の選択のために考慮に入れた:
・RORC1 mRNAに対する少なくとも3つのミスマッチ
・部分的に相同な、可能性として考えられるオフターゲットmRNAが少ない
・マウスRORC2に対する交差反応性
【0080】
2.化学修飾の影響についての分析
融解温度およびヘアピンまたは二量体を形成する傾向などのような物理化学的特性に対する化学修飾の影響について、利用可能な予測ツールを使用して評価した。最も好都合な、予測された物理化学的特性を有するオリゴヌクレオチドを合成およびスクリーニングのために選択した。
【0081】
実施例2:アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはDNAザイムによるRORC2の阻害
材料:
HDLM2細胞株-DSMZ(Deutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zelllinien、Braunschweig、Germany/ACC-17)
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
プロトコール:
HDLM2細胞株をDSMZから購入し、マスターセルバンクおよびワーキングセルバンク用に増やし、すべてのさらなる実験のために補足RPMI 1640培地(5%COおよび37℃)において培養した。ワーキングセルバンクからのすべての解凍細胞バッチの培養期間を2~3週間とした。
【0086】
オリゴヌクレオチドはすべて、Exiqon(Vedbaek/Denmark)およびBiospring(Frankfurt/Germany)に注文した。凍結乾燥オリゴヌクレオチドを、DEPC処置水により1mMの濃度まで還元した。
【0087】
最初のスクリーニングは、それぞれのRORC2特異的オリゴヌクレオチドおよびネガティブコントロール(neg1;WO第2014154843A1号パンフレットにおいて記載される)について10μMの単一の濃度でHDLM2細胞株において実行した。細胞は、トランスフェクション試薬を用いないでオリゴヌクレオチドにより処置し(ジムノティック(gymnotic)送達)、RORC2のノックダウンを決定するために3日後に溶解した。
【0088】
結果:
HDLM2細胞におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの最初のスクリーニングにより、いくつかの非常に活性な分子がもたらされた。RORC2およびHPRT1のmRNAレベルは、Quantigene Singleplex bDNAアッセイによって決定した。RORC2 mRNAレベルをHPRT1レベル(ハウスキーピング遺伝子)に対して正規化(標準化)し、未処置コントロールとの関係について示した(図2A)。正規化後のRORC2 mRNA発現の平均値をそれぞれのオリゴヌクレオチドについて表3に列挙する。最高のノックダウン効率は、2つのオリゴヌクレオチド-A01018HM(94.8%)およびA01010HM(94.2%)により実現された。
【0089】
これらの2つのオリゴヌクレオチドのさらなる特徴付けのために、発明者らは、用量-応答(dose-response)実験を実行した。発明者らは、3日間、段階希釈オリゴヌクレオチドによりHDLM2細胞を処置し、Quantigene Singleplex bDNAアッセイを介して、残存しているRORC2 mRNAを決定した(図2B)。A01010HMについてのIC50値は、290.5nM(相対的)および237.2nM(絶対的;10μMの最も高い濃度で99.7%のノックダウン)である。A01018HMについては、相対的IC50は、277.5nMであり、絶対的IC50は、200.1nM(96.2%の最大のノックダウン)である。
【0090】
RORC2タンパク質の用量(dose)依存性のノックダウン
タンパク質レベルに対するノックダウン効果を決定するために、発明者らは、N末端hisタグつきRORC2タンパク質をコードするプラスミド構築物によりヒト癌細胞株、Helaをトランスフェクトし、漸増量のそれぞれのオリゴヌクレオチドによりそれらを処置した。ノックダウン効果は、RORC2およびhisタグのFACS共染色によって決定した(図2C)。
【0091】
RORCアイソフォーム1および2に対する影響
2つのRORCアイソフォームは、それらの5’領域、発現パターン、および生物学的機能が異なる。Th17促進性の、したがってRORC2促進性の自己免疫性の表現型に干渉するよう、発明者らは、RORC2を特異的に標的にすることを目的とする。発明者らは、3日間の処置と同時にHDLM2細胞におけるRORC1およびRORC2 mRNAの両方に対するASOの影響を分析し、RORC1 mRNA発現にはほとんど影響しないことを観察したが、RORC2は、用量依存的にノックダウンされた(図2D)。
【0092】
初代ヒトTh17細胞におけるASOの影響
ノックダウン効果の次のステップは、極性化ヒトTh17細胞において実行した。Th17細胞は、Acosta-Rodriguez et al.(Nat Immunol 2007)に従って、ヒトドナーの血液から生成した。極性化プロセスの間に、ヒトT細胞をオリゴヌクレオチドにより処置した。初めにRORC2のノックダウンが示され、その下流への影響-IL17A/F、IL22サイトカインの産生が続いた。
【0093】
極性化の間のASOの存在は、RORC2 mRNAの発現を少なくとも50%低下させた。さらに、IL17A/FおよびIL22サイトカイン分泌の低下は、RORC2特異的ASO処置群において観察された(図2E/F)。
【0094】
TNBS誘発性大腸炎マウスモデルにおけるRORC2特異的ASO
Th17に関係のある疾患モデルにおけるRORC2ノックダウンの影響を検証するために、発明者らは、1mg/kg(i.r.)のRORC2特異的ASO(A01010HM、A01018HM)またはネガティブコントロール(neg1)によりマウスを処置した。マウスは、大腸炎誘発性のチャレンジおよび疾患増悪の前に2回およびその間に2回、処置した。10日間の実験のエンドポイントで、発明者らは、結腸におけるRORC2ノックダウン、炎症スコア、およびミエロペルオキシダーゼ発現を測定した。A01010HMおよびA01018HMは両方とも、結腸におけるRORC2の発現および全体的な炎症を低下させる(ルミノール試験)(図2G/H)。炎症スコアは、皮膚粘膜腸パラメーターにおける全体的な変化を示し、RORC2特異的ASOの存在下において低下する(図2H)。さらに、結腸の至る所での炎症誘発性のミエロペルオキシダーゼの発現は、RORC2ノックダウンにより低下する(図2I)。総合的に考えると、示されるASOは、インビボにおいて強力なノックダウン効果を有し、TNBS誘発性大腸炎モデルにおいて炎症を抑える。
【0095】
実施例3:RORC2特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドのhit-to-lead最適化
最も高いノックダウン効果を有する最初に同定されたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、RORC2スプライスmRNA配列のみで生成される特有のエクソン-エクソンジャンクション部位に結合する。新たに設計し、かつスクリーニングしたASOも、特有のRORC2配列に結合する。この特有のRORC2配列は、次のとおりである(5’-3’、mRNA):
AAGGCTCAGTCATGAGAACACAAATTGAAGTGATCC
【0096】
HDLM2細胞におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの一用量スクリーニングにより、いくつかの非常に活性な分子がもたらされた。RORC2およびHPRT1のmRNAレベルは、bDNAアッセイによって決定した。RORC2 mRNAレベルをHPRT1レベル(ハウスキーピング遺伝子)に対して正規化(標準化)し、未処置コントロールとの関係について示した(図4)。正規化後のRORC2 mRNA発現の平均値をそれぞれのオリゴヌクレオチドについて表4に列挙する。A01018HM(最初のスクリーニングからの最も効率的なアンチセンスオリゴヌクレオチド)を内部標準として使用した。
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、炎症性障害を処置するための新規なアプローチを提供するものとして有用である。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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