(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】抗p53抗体の検出
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20220502BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20220502BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220502BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220502BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/543 551D
G01N33/543 575
G01N33/53 N
G01N33/543 551F
C07K19/00
C07K14/47
(21)【出願番号】P 2018546865
(86)(22)【出願日】2017-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2017055190
(87)【国際公開番号】W WO2017153336
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-03-02
(32)【優先日】2016-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス,ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】カール,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】クーネルト,ウルスラ
(72)【発明者】
【氏名】スウィアテク-デ・ランゲ,マグダレーナ
(72)【発明者】
【氏名】ニースナー,マリオン
(72)【発明者】
【氏名】マイスラー,ニーナ
(72)【発明者】
【氏名】モーゲンスターン,デーヴィッド
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-506917(JP,A)
【文献】国際公開第2015/128394(WO,A2)
【文献】特開2015-028479(JP,A)
【文献】特表平08-502414(JP,A)
【文献】特開2008-263983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C07K 19/00
C07K 14/47
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料において、p53に対する抗体(抗p53抗体)を検出するためのin vitro
方法であって:
a)分析しようとする試料をp53捕捉抗原およびp53検出抗原とインキュベートし、それによって、該p53捕捉抗原、該抗p53抗体および該p53検出抗原を含む複合体を形成し、
b)(a)で形成された複合体を、未結合検出抗原から分離し、
c)工程(b)で得られた複合体を、該複合体に含まれる検出抗原を通じて測定し、それによって試料中に含まれる抗p53抗体を検出する
工程を含む、前記方法。
【請求項2】
前記p53捕捉抗原が固相に結合可能である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記p53捕捉抗原が結合対の第一のパートナーに共有結合し、そして該結合対の第二のパートナーが固相に結合している、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
結合対の第一のパートナーが、ハプテン、ビオチンまたはビオチン類似体、DsFおよび受容体のリガンドより選択され、そして該結合対の第二のパートナーが、抗ハプテン抗体、アビジンまたはストレプトアビジン、FmG DsF、およびリガンド受容体より選択される、請求項
3記載の方法。
【請求項5】
前記ビオチン類似体が、アミノビオチン、イミノビオチンおよびデスチオビオチンから選ばれる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記p53捕捉抗原がビオチン化され、そして固相がアビジンまたはストレプトアビジンでコーティングされる、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記p53捕捉抗原が固相に結合されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
前記p53検出抗原が直接検出可能な標識を含む、請求項1~7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
直接検出可能な標識が、発光標識、蛍光標識、化学発光標識または電気化学発光標識からなる群より選択される、請求項
8記載の方法。
【請求項10】
直接検出可能な標識が化学発光または電気化学発光標識である、請求項
8または9記載の方法。
【請求項11】
前記p53捕捉抗原および前記p53検出抗原の両方が、配列番号1のペプチドを含む、請求項1~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記p53捕捉抗原および前記p53検出抗原の両方が、配列番号2のペプチドを含む、請求項1~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
配列番号1および配列番号2のペプチドが、各々、p53捕捉抗原およびp53検出抗原の両方に含まれる、請求項1~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記p53検出抗原が、配列番号1および配列番号2のペプチドの両方を少なくとも2回含む、請求項1~13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記検出抗原が、少なくとも1つの多量体化ドメイン、少なくとも1つの配列番号1のポリペプチドおよび少なくとも1つの配列番号2のポリペプチドを含む融合ポリペプチドを含み、該多量体化ドメインが、FkpA、Skp、SecB、Hsp25、MIP、GroEL、ClpBおよびClpXからなる群より選択される原核または真核シャペロンである、請求項1~14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記p53検出抗原が間接的に検出可能な標識を含む、請求項1~15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの多量体化ドメイン、少なくとも1つの配列番号1のポリペプチドおよび少なくとも1つの配列番号2のポリペプチドを含み、該多量体化ドメインが、FkpA、Skp、SecB、Hsp25、MIP、GroEL、ClpBおよびClpXからなる群より選択される原核または真核シャペロンである、p53検出抗原としての融合ポリペプチド。
【請求項18】
請求項1に記載のin vitro
方法において用いるための、請求項17記載の融合ポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、p53に対する抗体(抗p53抗体)の検出のための方法に関する。開示する方法は、最新技術の方法と比較した際に、より高い特異性を持つ抗p53抗体の検出を可能にする。本開示記載の方法は、p53捕捉抗原およびp53検出抗原を必要とする。該方法は、p53捕捉抗原およびp53検出抗原を、抗p53抗体を含むことが知られるかまたは含むと推測される試料とインキュベートし、それによって、p53捕捉抗原および抗p53抗体およびp53検出抗原を含む複合体を形成し、形成された複合体を未結合検出抗原から分離し、得られた複合体を該複合体に含まれる検出抗原を通じて測定し、そしてそれによって試料中に含まれる抗p53抗体を検出する工程を含む。
【発明の概要】
【0002】
発明の背景
抗p53抗体(抗p53 Ab)は、腫瘍関連抗原スクリーニングの過程で、30年以上前に発見された。Crawford L.V.ら, Int. J. Cancer, 30: 403-408, 1982。しかし、この研究、ならびに1980年代初めに行われたいくつかの類似のものは、その期間中にはp53には関心が持たれていなかったために、10年以上実質的に無視されてきた。
【0003】
1990年代初め、p53遺伝子が、ヒト癌のほぼすべてのタイプにおいて、分子改変の最も一般的なターゲットであることが発見された。これにより、正常および形質転換細胞における、p53タンパク質およびその機能の研究に、かなりの関心が誘発された。これはまた、癌患者においてすでにそれより以前に見出されていた、体液性反応の再発見にもつながった。
【0004】
腫瘍抑制因子p53は、正常細胞の核において辛うじて検出可能なリンタンパク質である(Benchimol, S.ら, EMBO J. 1 (1982) 1055-1062)。細胞性ストレス、特にDNA損傷によって誘導されたストレスに際して、p53は、細胞周期進行を抑止し、それによってDNAが修復されることを可能にする、またはこれはアポトーシスを導きうる。突然変異体p53を所持する癌細胞において、このタンパク質はもはや細胞増殖を制御することは不可能であり、この結果、DNA修復が不十分となる(Levine, A. Cell 88 (1997) 323-331)。ヒト癌におけるp53の最も一般的な変化は、点ミスセンス突然変異であり、これは、結腸、胃、乳房、肺、脳および食道の癌に見出される(Greenblatt, M.ら, Cancer Res. 54 (1994) 4855-4878)。p53突然変異は、ヒト癌において最も頻繁な遺伝子事象であり、そして症例の50%以上と概算される。p53抗体の頻度およびp53突然変異の頻度の間には、非常に強い相関があり、p53突然変異がこれらの抗体の出現に関与することを示している(Soussi, T. Cancer Res. 60 (2000) 1777-1788)。抗p53抗体は、ヒト癌患者において、約96%の特異性で見出されるが、こうした検出の感度はわずか約30%である。
【0005】
抗p53抗体とp53突然変異の関連は、抗p53体液性免疫反応が、p53タンパク質の強い免疫原性に関連した自己免疫プロセスのためであることを示唆する。
発癌におけるp53突然変異の役割は徹底的に研究されてきており、そして抗p53抗体は、とりわけ、結腸直腸癌(CRC)、食道癌および乳癌などの多くの癌タイプに関連することが見出されてきている。これらの3つの癌タイプは、かなりの医療負荷に相当する。
【0006】
男性において、746,000症例/年の発症があるCRCは、世界中の男性において3番目に一般的な癌であり、そして男性患者の癌全体の10.0%に相当する。CRCはまた、世界中の女性において2番目に多く、毎年614,000の新規症例があり、女性患者が罹患する癌の9.2%に相当する。食道癌は、癌による死因で6番目目に多く、そして男性および女性の456,000の新規症例の発症があると概算され、毎年の新規癌総数の3.2%に相当する。乳癌は、女性の間で圧倒的に最も頻繁な癌であり、2012年には、世界中で概算167万の新規癌症例があり、これは女性患者のすべての癌の25%に相当する。全体で、乳癌は世界中で2番目に最も一般的な癌である。抗p53(自己)抗体と関連する癌タイプの発症率が高いことから明らかであるように、抗p53(自己)抗体の検出のために、高感度でそして信頼性がある診断法に関する必要性がある。
【0007】
Soussi, T.(Cancer Research 60 (2000) 1777-1788)によって要約されるように、抗p53に関する多くの論文が発表されてきている。用いられる検出法は非常に多様であり、ELISA法、免疫沈降法およびウェスタンブロッティングが最も顕著なものである。抗p53抗体検出のための多くの異なる方法の使用が、抗p53抗体の診断有用性に関して、いくつかの矛盾した結果およびある程度の不確実性を生じていることも十分にありうる。
【0008】
抗p53抗体の測定のために最初の商業的アッセイが利用可能になったことは、抗p53抗体に対するデータ/論文の比較可能性を改善する際に大きな価値を有している。抗p53抗体の測定のために最も頻繁に用いられるアッセイの1つは、株式会社医学生物学研究所、KDX、日本・名古屋によって販売されている「MESACUP抗p53試験」である。ヒト血清における抗p53 IgGの検出のためのこの酵素イムノアッセイは、面倒であり、そして例えば、それぞれ特異的(非特異的を含む)および非特異的結合両方の平行測定を必要とする。次いで、特異的結合の割合は、特異的および非特異的結合の合計から、非特異的結合に関して決定された値を引くことによって、計算されなければならない。
【0009】
抗体のIgMクラスの抗体は、一般に、より粘着性が高く、そしてさらなる複雑な事態、例えばさらなる交差反応性および非特異的結合を導く。このため、抗p53検出法は、大部分の場合、抗ヒトIgG検出試薬、すなわち免疫グロブリンGクラスのヒト(自己)抗体のみの検出に頼り、そして免疫グロブリンMクラスの検出には頼らない。Mesacupアッセイを実行すべき方法によってさらに明らかであるように、非特異的結合は、抗p53抗体の検出において用いられる方法いずれに関しても重要な問題である可能性が最も高い。
【0010】
抗p53(自己)抗体に関連する癌タイプの高い発症率から明らかであるように、そしてこれらの抗体を検出するために用いられている最新技術の方法の欠点からさらに明らかであるように、抗p53(自己)抗体の検出のための高感度でそして信頼性があるイムノアッセイ法に関する非常に大きな必要性がある。
【0011】
驚くべきことに、本明細書に開示するような抗p53(自己)抗体を検出するための方法は、迅速で、信頼性があり、特異的、高感度であり、そして抗p53(自己)抗体の検出において新規の基準となる可能性を有することが見出されてきている。
【0012】
発明の要約
本明細書において、試料において、p53に対する抗体(抗p53抗体)を検出するためのin vitro法であって:a)分析しようとする試料をp53捕捉抗原およびp53検出抗原とインキュベートし、それによって、p53捕捉抗原、抗p53抗体およびp53検出抗原を含む複合体を形成し、b)(a)で形成された複合体を、未結合検出抗原から分離し、c)工程(b)で得られた複合体を該複合体に含まれる検出抗原を通じて測定し、それによって試料中に含まれる抗p53抗体を検出する工程を含む、前記方法を報告する。さらなるそしてより詳細な態様は、例えば、本開示に記載する方法で使用するための、p53の特異的部分的配列に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】Elecsys抗p53アッセイのアッセイ原理。二重抗原サンドイッチアッセイ(DAGS)形式を模式的に示す。→ビオチン化捕捉抗原(常磁性ビーズにコーティングされたストレプトアビジンに結合する)およびルテニウム化p53検出抗原を通じて、試料中に存在する抗p53自己抗体の検出を達成する。
【
図2】ROCブロット。分析した両方のアッセイに関する受信者動作曲線(ROC)を提供する。MesaCupアッセイに関するROCを破線として示す一方、本出願に開示するアッセイに関するROCを実線/全線として示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、試料において、p53に対する抗体(抗p53抗体)を検出するためのin vitro法であって:a)分析しようとする試料をp53捕捉抗原およびp53検出抗原とインキュベートし、それによって、p53捕捉抗原、抗p53抗体およびp53検出抗原を含む複合体を形成し、b)(a)で形成された複合体を、未結合検出抗原から分離し、c)工程(b)で得られた複合体を該複合体に含まれる検出抗原を通じて測定し、それによって試料中に含まれる抗p53抗体を検出する工程を含む、前記方法に関する。
【0015】
以下において、用語「抗p53(自己)抗体」、「抗p53抗体」または「p53抗体」は、交換可能に用いられる。抗p53抗体は、配列番号3のp53ポリペプチドまたはその部分配列に結合する抗体である。
【0016】
上述のように、本発明記載の方法は、それぞれ、p53捕捉抗原およびp53検出抗原の両方の使用を必要とする。調べようとする試料中に存在するp53に対する抗体は、これらの抗原の両方に結合し、それによって、p53捕捉抗原、抗p53抗体およびp53検出抗原を含む複合体を形成する。
【0017】
用語「捕捉抗原」は、当業者によく知られる。
二重抗原サンドイッチイムノアッセイを実行するため、エピトープを少なくとも2つ提供することが必要であり、少なくとも1つは固相への結合を仲介するために捕捉抗原に対し、そして少なくとも1つは、形成されたサンドイッチ複合体(抗原-抗体-抗原)の検出を可能にするために検出抗原に対する。
【0018】
1つの態様において、p53捕捉抗原は、固相への結合が可能である。
固相(固体支持体)を製造するための材料は、当該技術分野に周知であり、そしてこれにはとりわけ、商業的に入手可能なカラム材料、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、コロイド金属粒子、ガラスおよび/またはシリコンチップおよび表面、ニトロセルロースストリップ、膜、シート、デュラサイト(duracyte)、反応トレイのウェルおよび壁、反応容器のウェルおよび壁、プラスチックチューブ等が含まれる。
【0019】
1つの態様において、固相は、マイクロタイタープレートのウェルおよび壁によって代表される。
1つの態様において、固相は、粒子の形である。粒子は、磁性または強磁性金属、合金または組成物であるかまたはこれらを含む、微粒子であることも可能である。さらなる態様において、固相材料は、特定の特性を有することも可能であり、そして例えば疎水性または親水性であることも可能である。本発明の1つの態様において、微粒子は常磁性微粒子であり、そして本開示記載の測定法におけるこうした粒子の分離は、磁力によって促進される。磁力を適用して常磁性または磁性粒子を溶液/懸濁物から引き出し、そしてこれらを望ましいように保持しながら、溶液/懸濁物の液体を除去することも可能であり、そして粒子を、例えば洗浄することも可能である。
【0020】
上に示すように、1つの態様において、p53捕捉抗原は固相に結合可能である。捕捉抗原が固相に結合することを可能にするため、特異的結合対を使用することが好ましい。こうした結合対の一方のパートナーを捕捉抗原に結合させ、そしてこうした結合対のもう一方のパートナーを固相に結合させる。
【0021】
「結合対」は、本明細書において、高アフィニティで、すなわち1ナノモルのアフィニティまたはそれより優れたアフィニティで互いに結合する2つのパートナーからなる。結合対に関する態様は、例えば、受容体およびリガンド、抗原および抗体、ハプテンおよび抗ハプテン抗体からなる結合対、ならびに天然に存在する高アフィニティ結合対に基づく結合対である。
【0022】
受容体-リガンド結合対の1つの例は、ステロイドホルモン受容体および対応するステロイドホルモンからなる対である。
本発明記載の方法に適した、結合対の1つのさらなるタイプは、ハプテンおよび抗ハプテン抗体結合対である。ハプテンは、100~2000ダルトン、好ましくは150~1000ダルトンの分子量を持つ有機分子である。こうしたものとして用いる場合、こうした小分子は非免疫原性であるが、キャリアー分子にカップリングすることによって免疫原性を与えられることも可能であり、そして標準法にしたがって、抗ハプテン抗体を生成することも可能である。ハプテンは、ステロール、胆汁酸、性ホルモン、コルチコイド、カルデノリド、カルデノリド-グリコシド、ブファジエノリド、ステロイド-サポゲニンおよびステロイドアルカロイド、カルデノリドおよびカルデノリド-グリコシドを含む群より選択されることも可能である。これらの物質クラスの代表は、ジゴキシゲニン、ジギトキシゲニン、ジトキシゲニン、ストロファンチジン、ジゴキシン、ジギトキシン、ジトキシン、ストロファンチンである。別の適切なハプテンは、例えば、フルオレセインである。
【0023】
天然に存在する高アフィニティ結合対に基づく結合対の例は、ビオチンまたはビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン、ならびにFimGおよびDsF結合対である。ビオチン-(ストレプト)アビジン結合対は、当該技術分野に周知である。FimG-DsF結合対の基本原理は、例えば、WO2012/028697に記載される。
【0024】
1つの態様において、p53捕捉抗原は、結合対の第一のパートナーに共有結合し、そして前記結合対の第二のパートナーは固相に結合する。
1つの態様において、結合対の第一のパートナーは、ハプテン、ビオチンまたはビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチン、DsFおよび受容体のリガンドより選択され、そして前記結合対の第二のパートナーは、抗ハプテン抗体、アビジンまたはストレプトアビジン、FmGおよびリガンド受容体より選択される。
【0025】
1つの態様において、結合対の第一のパートナーは、ハプテン、ビオチンまたはビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチンおよびDsFより選択され、そして前記結合対の第二のパートナーは、抗ハプテン抗体、アビジンまたはストレプトアビジンおよびFmGより選択される。
【0026】
1つの態様において、結合対の第一のパートナーは、ビオチンまたはビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチン、およびDsFより選択され、そして前記結合対の第二のパートナーは、アビジンまたはストレプトアビジンおよびFmGより選択される。
【0027】
1つの態様において、結合対の第一のパートナーは、ビオチンまたはビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチンであり、そして前記結合対の第二のパートナーは、アビジンまたはストレプトアビジンより選択される。
【0028】
1つの態様において、結合対の第一のパートナーはビオチンであり、そして前記結合対の第二のパートナーはストレプトアビジンである。
1つの態様において、本発明記載の方法は、ビオチン化されたp53捕捉抗原およびアビジンまたはストレプトアビジンでコーティングされた固相を用いて実施される。
【0029】
しかし、固相に捕捉抗原を直接結合させることもまた可能である。1つの態様において、本発明記載の方法は、固相に結合したp53捕捉抗原を用いて実施される。
抗体は少なくとも二価であり、すなわち1つの「アーム」で捕捉抗原に結合し、そしてもう一方のアーム(または多価抗体に関しては他のアームいずれか)で検出抗原に結合する能力を有する。
【0030】
調べようとする試料中に存在するp53に対する抗体は、これらの抗原の両方に結合し、それによって、捕捉抗原、抗p53抗体および検出抗原を含む複合体が形成される。
当業者は、用語「検出抗原」をよく知っている。
【0031】
用語、検出抗原は、この抗原が検出可能であることを意味する。こうした検出は、直接的または間接的のいずれかで検出可能な、多様なタイプの標識によって達成可能である。
1つの態様において、本開示記載の方法は、p53検出抗原が直接検出可能な標識を含む方法である。
【0032】
用語、検出可能に標識される、は、直接または間接的に検出可能な標識を含む。
直接検出可能な標識は、検出可能シグナルを提供するか、または第二の標識と相互作用して、第一または第二の標識により提供される検出可能なシグナルを修飾し、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を生じる。標識、例えば蛍光色素および発光(化学発光および電気化学発光を含む)色素などの標識(Briggsら「官能化蛍光色素の合成、ならびにアミンおよびアミノ酸へのそのカップリング」J. Chem. Soc., Perkin-Trans. 1(1997)1051-1058)は、検出可能なシグナルを提供し、そして一般的に標識に適用可能である。1つの態様において、検出可能に標識される、は、それぞれ、検出可能なシグナルを提供するかまたは提供するよう誘導可能である標識、すなわち、発光標識、蛍光標識、化学発光標識または電気化学発光標識を指す。
【0033】
本開示にしたがった1つの態様において、微粒子に基づく分析物特異的結合アッセイは、化学発光または電気化学発光標識および対応する光検出系を利用する。標識によって産生される光を測定し、そしてこの光は、直接または間接的に、分析物の存在または量を示す。
【0034】
電気化学発光(ECL)アッセイは、関心対象の分析物の存在および濃度の高感度でそして正確な測定を提供する。こうした技術は、適切な化学的環境において、電気化学的に酸化されるかまたは還元された際、発光するように誘導することが可能な標識または他の反応体を用いる。こうした電気化学発光は、特定の時間にそして特定の方式で、作用電極に課された電圧によって誘発される。標識によって産生された光を測定し、そしてこの光は分析物の存在または量を示す。こうしたECL技術のより詳細な説明に関しては、米国特許第5,221,605号、米国特許第5,591,581号、米国特許第5,597,910号、PCT公開出願WO90/05296、PCT公開出願WO92/14139、PCT公開出願WO90/05301、PCT公開出願WO96/24690、PCT公開出願US95/03190、PCT出願US97/16942、PCT公開出願US96/06763、PCT公開出願WO95/08644、PCT公開出願WO96/06946、PCT公開出願WO96/33411、PCT公開出願WO87/06706、PCT公開出願WO96/39534、PCT公開出願WO96/41175、PCT公開出願WO96/40978、PCT/US97/03653および米国特許出願08/437,348(米国特許第5,679,519号)を参照されたい。また、Knightら(Analyst, 1994, 119:879-890)によるECLの分析適用の1994年の概説および該文献に引用される参考文献もまた参照されたい。1つの態様において、電気化学発光標識を用いた、本明細書記載の方法を実施する。
【0035】
1つの態様において、直接検出可能な標識(本開示の方法において、検出抗原を標識するために用いられる)は、発光標識、蛍光標識、化学発光標識または電気化学発光標識からなる群より選択される。
【0036】
1つの態様において、直接検出可能な標識は化学発光または電気化学発光標識である。
1つの態様において、本開示記載の二重抗原サンドイッチアッセイは、捕捉ならびに検出抗原の両方として、配列番号3の全長p53ポリペプチドを用いる。
【0037】
p53ポリペプチドのp53の少なくとも1つの重要なエピトープに相当する合成ペプチドは、本開示記載の方法において非常に有用である。理論に束縛されることは望ましくないが、こうした合成ペプチド配列が、全長p53ポリペプチドにもまた結合する、試料中のこれらの抗体のかなりの割合によって結合されるエピトープを含む可能性も十分にある。同時に、まれにしかまたはまったく抗p53抗体(例えば体液試料中に含まれるようなもの)に結合されないp53ポリペプチドのストレッチが、抗体、特に粘着性が高いIgMクラス抗体の非特異的結合に有意に寄与する配列ストレッチである可能性も十分にある。
【0038】
1つの態様において、本発明記載の抗p53抗体の検出のためのin vitro法は、p53捕捉抗原およびp53検出抗原の両方が配列番号1のペプチドを含む、二重抗原サンドイッチイムノアッセイ法である。
【0039】
1つの態様において、本発明記載の抗p53抗体の検出のためのin vitro法は、p53捕捉抗原およびp53検出抗原の両方が配列番号2のペプチドを含む、二重抗原サンドイッチイムノアッセイ法である。
【0040】
1つの態様において、本発明記載の抗p53抗体の検出のための方法は、配列番号1および配列番号2のペプチドが、各々、p53捕捉抗原およびp53検出抗原の両方に含まれる、二重抗原サンドイッチイムノアッセイ法である。
【0041】
1つの態様において、本発明記載の抗p53抗体の検出のための方法で用いられるp53ポリペプチドの適切な部分配列に相当するペプチドは、それぞれ、配列番号1および配列番号2からなるペプチドである。
【0042】
1つの態様において、本発明記載の抗p53抗体の検出のための方法は、p53検出抗原が、配列番号1および配列番号2のペプチドの両方を少なくとも2回含む単一ポリペプチドである、二重抗原サンドイッチイムノアッセイ法である。
【0043】
1つの態様において、本発明記載の抗p53抗体の検出のための方法は、p53検出抗原が、少なくとも1つの多量体化ドメイン、少なくとも1つの配列番号1のポリペプチドおよび少なくとも1つの配列番号2のポリペプチドを含む、融合ポリペプチドを含む、二重抗原サンドイッチイムノアッセイ法であって、該多量体化ドメインが、FkpA、Skp、SecB、Hsp25、MIP、GroEL、ClpBおよびClpXからなる群より選択される原核または真核シャペロンである、前記方法である。
【0044】
1つの態様において、本開示は、少なくとも1つの多量体化ドメイン、少なくとも1つの配列番号1のポリペプチドおよび少なくとも1つの配列番号2のポリペプチドを含む、融合ポリペプチドであって、該多量体化ドメインが、FkpA、Skp、SecB、Hsp25、MIP、GroEL、ClpBおよびClpXからなる群より選択される原核または真核シャペロンである、前記融合ポリペプチドに関する。
【0045】
多量体化ドメインは、好ましくは、融合ポリペプチドのNおよび/またはC末端、より好ましくはN末端に位置する。多量体化ドメインは、個々の融合ポリペプチド分子の多量体化を支持するポリペプチド配列であって、これにより、非共有相互作用によって会合する、複数の単量体サブユニットで構成される多量体が形成される。複合体の単量体サブユニットは遺伝子融合タンパク質であり、個々のアミノ酸残基はペプチド結合によって連結される。多量体の単量体サブユニットは、好ましくは同一である。
【0046】
例えば、多量体化ドメインは、二量体化ドメイン、すなわち2つのサブユニットの非共有会合を支持するドメイン、3つのサブユニットの非共有会合を支持する三量体化ドメイン、四量体化ドメインまたはさらにより高次の多量体化ドメインであってもよい。好ましくは、多量体化ドメインは、二量体化ドメイン、三量体化ドメインまたは四量体化ドメインである。
【0047】
多量体化ドメインは、原核または真核シャペロンから、好ましくはATP非依存性シャペロンから選択されることも可能である。多量体化ドメインの特定の例は、大腸菌(E. coli)由来のタンパク質FkpA、SkpおよびSecB、または他の原核生物由来のそのオルソログである。FkpAは、大腸菌由来のATP非依存性周辺質二量体化シャペロンである。Skpは、大腸菌由来のATP非依存性周辺質三量体化シャペロンである。SecBは、大腸菌由来のATP非依存性細胞質ゾル四量体化シャペロンである。さらに適切な多量体化ドメインは、真核または原核生物由来の熱ショックタンパク質、例えばATP非依存性真核細胞質ゾル/核オリゴマー化シャペロンであるHsp25である。さらに適切な多量体化ドメインは、FkpAに構造的に関連する、ATP非依存性二量体化シャペロンであるMIP(マクロファージ感染性増強因子)である。大腸菌由来のATP依存性細胞質七量体化シャペロンであるGroEL、または大腸菌由来のATP依存性六量体化シャペロンであるClpBまたはClpXのようなATP非依存性シャペロンもまた適切である。さらに、多量体化ドメインは、多量体形成能力を保持する、上記ポリペプチドの断片または変異体より選択されることも可能である。
【0048】
融合ポリペプチド中の配列番号1および配列番号2の個々のポリペプチド配列は、それぞれ、スペーサー配列によって分離されていることも可能である。スペーサー配列は、好ましくは、p53に対して異種性の配列である。現実的な目的のため、スペーサー配列は、抗p53抗体を決定するための抗原としての融合ポリペプチドの使用と、まったくではなくてもほとんど干渉しない配列から選択される。これは、スペーサー配列が試験しようとしている抗体に対して免疫学的に反応性でないことを意味する。例えば、スペーサー配列は、グリシンおよび/またはセリン残基を含む。1つの態様において、スペーサーはポリグリシンスペーサーである。スペーサー配列の長さは、好ましくは、1~10アミノ酸である。
【0049】
さらに、スペーサー配列は、多量体化ドメインならびに配列番号1のポリペプチドおよび/または配列番号2のポリペプチドの間に存在することも可能である。
このスペーサー配列は、例えば1~100アミノ酸の長さを有することも可能である。好ましくは、このスペーサー配列は上記の通りである。
【0050】
1つの態様において、本開示記載の方法は、間接的に検出可能な標識を含む、p53検出抗原を用いて実施される。
間接的に検出可能に標識された、は、例えば、ハプテンを含む検出抗原、および直接検出可能な標識を所持する抗ハプテン抗体によるこうしたハプテン化化合物の検出、または酵素を含む検出抗原、および適切な色素基質の変換を生じる対応する酵素活性によるこうした酵素の検出を指す。多様な酵素-基質標識が利用可能であるかまたは開示されている(例えばUS 4,275,149を参照されたい)。酵素は、一般的に、多様な技術を用いて測定可能である発色基質の化学的改変を触媒する。例えば、酵素は、基質における色の変化を触媒することも可能であり、これを分光光度的に測定することも可能である。あるいは、酵素は、基質の蛍光または化学発光を改変することも可能である。化学発光基質は、化学反応によって電気的に励起されるようになり、そして次いで、測定可能(例えば化学発光測定装置を用いて)な光を放出することも可能であるし、またはエネルギーを蛍光アクセプターに供与する。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えばホタル(firefly)ルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;US 4,737,456)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えばセイヨウワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類オキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ等が含まれる。酵素をポリペプチドにコンジュゲート化するための技術は、O’Sullivanら「酵素イムノアッセイにおいて使用するための酵素-抗体コンジュゲートの調製法」, Methods in Enzym.(J. Langone & IT Van Vunakis監修)中, Academic Press, New York, 73(1981)147-166に記載される。
【0051】
酵素-基質の組み合わせの例(US 4,275,149; US 4,318,980)には、例えば:セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)と、基質としての過酸化水素、ここで過酸化水素が色素前駆体(例えばオルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3’、5,5’-テトラメチルベンジジン塩酸(TMB))を酸化する;アルカリホスファターゼ(AP)と、発色基質としてのリン酸パラ-ニトロフェニル;およびβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)と、発色基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼが含まれる。
【0052】
上述のように、そして実施例セクションに示すように、抗p53抗体は、最も頻繁には、CRCにおいて見出される。1つの態様において、本発明は、試料において、p53に対する抗体(抗p53抗体)を検出することによって、CRCを診断するためのin vitro法であって:a)分析しようとする試料をp53捕捉抗原およびp53検出抗原とインキュベートし、それによって、p53捕捉抗原、抗p53抗体およびp53検出抗原を含む複合体を形成し、b)(a)で形成された複合体を、未結合検出抗原から分離し、c)工程(b)で得られた複合体を該複合体に含まれる検出抗原を通じて測定し、そしてd)抗p53抗体が試料中で測定される場合、CRCと診断する工程を含む、前記方法に関する。
【0053】
本開示記載の方法において、抗p53抗体の特異的なin vitro検出のための方法において、液体試料を用いることも可能である。試料は、抗p53抗体を含むことが知られていてもよいし、または抗p53抗体を含むと推測されることも可能である。1つの態様において、本開示記載の方法で用いるin vitro診断のための試料は、全血、血清、血漿、髄液、尿または唾液より選択される体液である。1つの態様において、抗p53抗体を含むと推測されるかまたは含む試料は、血清、血漿または髄液である。1つの態様において、抗p53抗体を含むと推測されるかまたは含む試料は、血清または血漿である。
【0054】
以下の実施例および図は、本発明の理解を補助するために提供され、本発明の真の範囲は、付随する請求項に示される。本発明の精神から逸脱することなく、示す方法に修飾を行うことも可能であることが理解される。
【実施例】
【0055】
実施例1:
抗p53自己抗体の検出のために用いられる捕捉および検出抗原
多様なタイプの二重抗原サンドイッチアッセイ(DAGS)が用いられてきている。
【0056】
マイクロタイタープレート中の酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)として、試料中に存在する抗p53自己抗体の検出のためのDAGSアッセイを実行することが可能である。
【0057】
配列番号1および配列番号2の合成ペプチドは、それぞれ、好適であることが立証された。これらは容易に、そして再現可能に合成可能であり、そして抗p53抗体の特異的結合によって適切であるようであった。
【0058】
より高いスループットおよびより高い再現可能性のため、Roche Diagnostics、ドイツ・マンハイムから、自動化電気化学発光に基づく分析装置上で作動する抗p53アッセイが開発された。
【0059】
1つのアッセイ形式において、一方は配列番号1のペプチドを含み、そして他方は配列番号2のペプチドを含む2つのビオチン化ペプチドを捕捉抗原として用い、そして両方のこれらのペプチドのルテニウム化型を検出抗原として用いる。
【0060】
1.1 捕捉抗原として用いられるビオチン化ペプチド
上述のように、配列番号1および配列番号2の配列はどちらも、それぞれ、抗p53(自己)抗体によって好ましく結合されるエピトープを含むようである。これらの配列に加えて、3組の二ペプチド、グルタミン酸(E)-β-アラニン(U)からなるリンカー(=EU3)をN末端に含む合成ペプチドを、活性化ビオチンにN末端でカップリングさせて、以下により詳細に記載するElecsys法で一緒に用いられる2つの捕捉抗原を生じた。これらのビオチン化捕捉抗原は、それぞれ、p53(11-35)[Bi(EU)3-11]amidおよびp53(41-60)[Bi(EU)3-41]amidと命名された。
【0061】
1.2 検出抗原として用いられるルテニウム化組換え融合タンパク質
多量体検出抗原を用いることによって、アッセイ感度を改善することが可能であることが見いだされた。多量体抗原の使用によって、低アフィニティIgG自己抗体の結合が可能になり、そして/またはIgM型の自己抗体の結合が可能になる。この目的に向けて、配列番号1(p53のアミノ酸11~35)および配列番号2(p53のアミノ酸41~60)のp53ペプチドを、Skp、2組の配列番号1および配列番号2、ならびにオクタHisタグを含む組換えポリペプチドの一部として、大腸菌中で発現させた。
【0062】
組換えp53構築物(配列番号4)の配列は以下の通りであった:
【0063】
【0064】
配列の下線部分は、それぞれ、配列番号1および配列番号2に相当する。筆記体(cursory writing)で示す配列部分は、シャペロンSkp由来の配列に対応する。オクタHisタグは、p53検出抗原で用いられるようにこの組換えポリペプチドのC末端にある。
【0065】
当該技術分野に周知であり、そして例えばEP 1 982 993 B1に詳述される方法にしたがって、配列番号3の組換えポリペプチドを産生した。
標準法にしたがって、ルテニウム化を行った。ルテニウム化のための典型的なプロトコルにおいて、融合タンパク質のリジンε-アミノ基を、約10mg/mlのタンパク質濃度で、N-ヒドロキシ-スクシンイミド活性化ルテニウム標識で修飾する。標識:タンパク質モル比は、それぞれの融合タンパク質の標識密度に関する必要性に応じて、2:1~7:1に変化させうる。反応緩衝剤は、通常、150mMリン酸カリウム(pH8.0)、50mM塩化カリウム、1mM EDTAである。カップリングまたは標識反応は通常、室温で10分間行われ、そして緩衝L-リジンを最終濃度10mMまで添加することによって停止される。活性化標識の加水分解的不活性化を回避するため、それぞれのストック溶液を、例えば、乾燥DMSO(seccosolv品質、Merck、ドイツ)中で調製する。反応緩衝液中、最大20%のDMSO濃度は、本明細書に開示するような配列番号4の融合タンパク質によってよく許容される。カップリング反応後、ゲルろ過カラム(Superdex 200 HiLoad)上に未精製タンパク質コンジュゲートを通過させることによって、未反応の遊離標識および有機溶媒を除去した。
【0066】
p53構築物のシャペロン部分(「Skp」)のため、タンパク質は、制御再フォールディングおよび精製プロセスにおいて、Ni-NTAカラムからの溶出中に自発的に三量体化する。生じる三量体は非常に安定であり、そしてルテニウム化およびさらなるプロセシング中、その立体配置を保持する。
【0067】
実施例2:
抗p53自己抗体の測定のためのElecsys(登録商標)アッセイ
抗p53抗体の検出のためのElecsys(登録商標)アッセイのアッセイ原理を
図1に示す。
【0068】
簡潔には、ビオチン化捕捉抗原(実施例1.1のビオチン化ペプチド)、試料およびルテニウム化検出抗原(実施例1.2の標識融合タンパク質)をインキュベートして、捕捉抗原-抗p53抗体-検出抗原の複合体の形成を可能にする。Elecsys(登録商標)イムノアッセイにおけるシグナル検出は、電気化学発光に基づく。ビオチン・コンジュゲート化捕捉抗原を、ストレプトアビジン・コーティング磁気ビーズ表面上に固定する一方、検出抗原は、発光部分として、錯体化ルテニウム陽イオンを所持する。抗p53抗体の存在下で、発色ルテニウム錯体は固相に架橋され、そして白金電極での励起後、620nmで光を放出する。シグナル出力は、恣意的な光単位である。
【0069】
以下の免疫学的試薬を用いた:
【0070】
【0071】
両ペプチドを各々、上記の濃度で含む75μlの捕捉抗原、75μlの検出抗原および20μlの試料を9分間インキュベートした。磁気Elecsys(登録商標)ビーズ30μlを添加し、そして9分間インキュベートして、捕捉抗原-抗p53抗体-検出抗原の複合体を吸着させた。
【0072】
標準法によって、Elecsys(登録商標)e601分析装置上で、シグナル測定を行った。
捕捉抗原用に用いた緩衝剤は、以下の構成要素を含む:
【0073】
【0074】
pH7.2
検出抗原用に用いた緩衝剤は、以下の構成要素を含む:
【0075】
【0076】
pH5.4
実施例3:
臨床試料における抗p53自己抗体の検出
463人の患者由来の試料を、実施例2に記載するような抗p53アッセイ、および株式会社医学生物学研究所、KDX、日本・名古屋によって販売される商業的に入手可能なアッセイ「MESACUP抗p53試験」を用いて、抗p53抗体に関してサイドバイサイドで分析した。後者は、製造者に提供される指示にしたがって用いた。
【0077】
【0078】
上記表からわかるように、新規抗p53抗体アッセイは、競合者のアッセイに比較した際、結腸直腸癌患者において、匹敵する量またはわずかにより少ない抗p53陽性試料を検出する。
【0079】
しかし、驚くべきことに、新規に開発されたアッセイは、p53に対する抗体と関連することが知られていない疾患実体において、「陽性」シグナルを生じる傾向がはるかにより低い。
【0080】
図2に示すように、曲線下面積(AUC)は、商業的に入手可能なキットに比較した際、ここで開発したアッセイに関してより優れている。
CRCスクリーニング由来の対照、IBD(感染性腸疾患)、変形性関節症、関節リウマチ、肝硬変、腎不全または自己免疫疾患患者で見られる陽性測定は、偽陽性測定に相当する可能性が最も高い。新規アッセイでは、非常に少ない偽陽性しか見られず、一方、最新技術のアッセイは、非常にしばしば偽陽性結果を導く。明らかに、上に示すCRC症例において、競合
者のアッセイで見られるさらなる陽性のいくつかは、
競合者の抗p53アッセイに関する偽陽性である可能性が非常に高い。
【0081】
本明細書に開示するような、抗p53抗体のin vitro検出のための新規に開発されたアッセイは、非常に優れた特異性を有する。こうした優れた特異性は、例えば、抗p53抗体陽性として誤って見出された患者の臨床的精密検査を減らすことにつながる。
【配列表】