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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】PTP包装機及びPTPシート製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/06 20060101AFI20220502BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220502BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
B41J2/01 109
B41J2/01 207
B41J2/165 203
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019207883
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021078677
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】野田 尚彦
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/84812(WO,A1)
【文献】特開2015-186783(JP,A)
【文献】特開2002-321413(JP,A)
【文献】特開2017-124578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
B41J 2/01
B41J 2/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器フィルムに形成されたポケット部にワークが収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるPTPシートを製造可能なPTP包装機であって、
前記ワークを吸着保持して搬送可能な搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されるワークを撮像し、該ワークの状態を検出可能なワーク検出手段と、
インクを吐出可能な複数のノズルを有した印刷ヘッドを少なくとも1つ備え、前記ワーク検出手段により検出された前記ワークの状態に合わせて、該ワークに対し印刷予定の識別情報に対応するノズルを選択し、前記搬送手段により搬送される前記ワークに対しインクを吐出して印刷を行う印刷手段と、
前記印刷手段により印刷された前記ワークの印刷部を撮像し、該印刷部の印刷状態を把握可能な印刷状態把握手段と、
前記印刷状態把握手段により把握された前記印刷部の印刷状態と、該印刷部を印刷する際に前記印刷手段において選択されたノズルとの関係から、目詰まりしたノズルの位置を特定可能な目詰まり特定手段と、
前記目詰まりしたノズルの位置を記憶可能な目詰まり位置記憶手段と、
前記ワークの状態、前記印刷予定の識別情報、及び、前記目詰まり位置記憶手段に記憶されたノズルの目詰まり位置に基づき、前記ワークに印刷され得る前記印刷部の印刷状態を予測する印刷状態予測手段と、
前記印刷状態予測手段により予測された前記印刷部の印刷状態が、予め設定された所定条件を満たすか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記所定条件を満たさないと判定された場合に、前記印刷ヘッドのクリーニングを実施するクリーニング手段とを備えたことを特徴とするPTP包装機。
【請求項2】
前記印刷ヘッドを複数備え、
前記判定手段により前記所定条件を満たさないと判定された場合に、前記印刷ヘッドを切換可能なヘッド切換手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のPTP包装機。
【請求項3】
前記搬送手段は、搬送するワークを所定時間、停留可能なバッファ手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のPTP包装機。
【請求項4】
容器フィルムに形成されたポケット部にワークが収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるPTPシートを製造するPTPシート製造方法であって、
前記ワークを吸着保持して搬送可能な搬送工程と、
搬送される前記ワークを撮像し、該ワークの状態を検出するワーク検出工程と、
インクを吐出可能な複数のノズルを有した印刷ヘッドを少なくとも1つ備えた印刷手段によって、前記ワーク検出工程において検出された前記ワークの状態に合わせて、該ワークに対し印刷予定の識別情報に対応するノズルを選択し、搬送される前記ワークに対しインクを吐出して印刷を行う印刷実施工程と、
前記印刷実施工程において印刷された前記ワークの印刷部を撮像し、該印刷部の印刷状態を把握する印刷状態把握工程と、
前記印刷状態把握工程において把握された前記印刷部の印刷状態と、該印刷部を印刷する際に前記印刷実施工程において選択されたノズルとの関係から、目詰まりしたノズルの位置を特定する目詰まり特定工程と、
前記目詰まりしたノズルの位置を記憶する目詰まり位置記憶工程と、
前記ワークの状態、前記印刷予定の識別情報、及び、前記目詰まり位置記憶工程において記憶されたノズルの目詰まり位置に基づき、前記ワークに印刷され得る前記印刷部の印刷状態を予測する印刷状態予測工程と、
前記印刷状態予測工程において予測された前記印刷部の印刷状態が、予め設定された所定条件を満たすか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程において前記所定条件を満たさないと判定された場合に、前記印刷ヘッドのクリーニングを実施するクリーニング工程とを備えたことを特徴とするPTPシート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤等のワークに印刷を施し包装するPTP包装機及びPTPシート製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に医薬品や食料品等の分野において用いられるブリスタシートとしてPTP(プレススルーパック)シートが知られている。PTPシートは、錠剤等のワークが収容されるポケット部を有する容器フィルムと、その容器フィルムに対しポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとを備えている。
【0003】
かかるPTPシートは、帯状に搬送される容器フィルムに対しポケット部を形成する工程、該ポケット部に錠剤等のワークを充填する工程、該ポケット部の開口側を密封するように容器フィルムに対しカバーフィルムを取着する工程、容器フィルム及びカバーフィルムからなる帯状のPTPフィルムをPTPシート単位に打ち抜く工程等を経て製造される。
【0004】
従来、錠剤等のワークには、その表面に製品名や製品番号など、文字や記号等からなる識別情報が印刷されているものがある。また、インクジェット方式の印刷装置を備え、搬送される錠剤等のワークに対し非接触で印刷を行いながら、容器フィルムのポケット部に充填していく包装機なども提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2008/0152756号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェット方式の印刷装置においては、印刷ヘッドのノズルが、塵埃や増粘又は固形化したインク等によって目詰まりを起こし、正常に印刷が行われない場合がある。
【0007】
かかる場合、ノズル内に詰まったインク等を取り除くため、ノズルからインクを吸引又は加圧によって排出させるパージを行い、印刷ヘッドのクリーニングが行われる。
【0008】
しかしながら、例えば印刷不良の発生率が一定レベルを超えたタイミングで印刷ヘッドのクリーニングを実施する構成とした場合には、一定量の不良品の発生が避けられない。一方、包装機の稼働時間が所定時間経過する毎に定期的に印刷ヘッドのクリーニングを実施する構成とした場合には、クリーニングの回数が必要以上に多くなってしまい、印刷に用いられない無駄なインクの消費量が増加する。結果として、インク損失が多くなり、生産性が低下するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情等に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷不良の発生を低減すると共に、生産性の低下抑制を図ることのできるPTP包装機及びPTPシート製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.容器フィルムに形成されたポケット部にワーク(錠剤等)が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるPTPシートを製造可能なPTP包装機であって、
前記ワークを吸着保持して搬送可能な搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されるワークを撮像し、該ワークの状態(位置や向き、表裏など)を検出可能なワーク検出手段と、
インクを吐出可能な複数のノズルを有した印刷ヘッドを少なくとも1つ備え、前記ワーク検出手段により検出された前記ワークの状態に合わせて、該ワークに対し印刷予定の識別情報に対応するノズルを選択し、前記搬送手段により搬送される前記ワークに対しインクを吐出して印刷を行う印刷手段と、
前記印刷手段により印刷された前記ワークの印刷部を撮像し、該印刷部の印刷状態を把握可能な印刷状態把握手段と、
前記印刷状態把握手段により把握された前記印刷部の印刷状態と、該印刷部を印刷する際に前記印刷手段において選択されたノズルとの関係から、目詰まりしたノズルの位置を特定可能な目詰まり特定手段と、
前記目詰まりしたノズルの位置を記憶可能な目詰まり位置記憶手段と、
前記ワークの状態、前記印刷予定の識別情報、及び、前記目詰まり位置記憶手段に記憶されたノズルの目詰まり位置に基づき、前記ワークに印刷され得る前記印刷部の印刷状態を予測する印刷状態予測手段と、
前記印刷状態予測手段により予測された前記印刷部の印刷状態が、予め設定された所定条件を満たすか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記所定条件を満たさないと判定された場合に、前記印刷ヘッドのクリーニングを実施するクリーニング手段とを備えたことを特徴とするPTP包装機。
【0012】
尚、上記「ワークの状態」には、例えば「ワークの位置(搬送方向におけるワークの位置や、搬送方向と直交する方向における位置など)」や、「ワークの向き(割線を有する錠剤の場合には、割線の向き)」、「ワークの表裏」などが含まれる。
【0013】
上記手段1によれば、ワークに印刷形成された印刷部の印刷状態から、目詰まりしたノズルの位置を特定し、該ノズルの目詰まり位置に基づき、ワークに印刷され得る印刷部の印刷状態を予測し、該予測された印刷部の印刷状態が所定条件を満たさない場合に、印刷ヘッドのクリーニングを実施する構成となっている。
【0014】
これにより、上記所定条件によっては、印刷不良が発生する前に印刷ヘッドのクリーニングを実施することが可能となり、印刷不良の発生を著しく抑制することができる。
【0015】
結果として、印刷ヘッドのクリーニングを、例えば印刷不良の発生率が一定レベルを超えた場合に行う構成や、所定時間経過する毎に定期的に行う構成などと比較して、印刷不良の発生を著しく低減することができると共に、クリーニング頻度を低減し、生産性の低下抑制を図ることができる。
【0016】
尚、搬送手段により吸着搬送されるワークの状態(位置や向き、表裏など)がランダムで、その都度、各ワークの印刷に選択使用されるノズルの位置が異なる構成においては、所定のノズルが目詰まりした場合であっても、ワークの状態によっては、直ちに印刷不良が発生するわけではない。
【0017】
例えば印刷ヘッドの端部近傍に位置するノズルなど、使用頻度の低いノズルは、インクが乾きやすく、目詰まりが発生しやすい。そのため、使用頻度の低いノズルが目詰まりしたとしても、印刷不良が発生しないこともある。このような場合まで、一律にクリーニングを実施する構成、例えば1つでもノズルの目詰まりを検出した場合、又は、目詰まりしたノズルの数が所定数以上となった場合に、即座にクリーニングを実施する構成となっている場合には、クリーニングの頻度が必要以上に多くなってしまうおそれがある。
【0018】
この点、本手段では、上記のとおり、ノズルの目詰まり位置に基づき、ワークに印刷され得る印刷部の印刷状態を予測して、印刷ヘッドのクリーニングを実施する構成となっているため、上記不具合の発生を抑制し、クリーニングの頻度を低減することができる。
【0019】
一般に、PTP包装機は、帯状に搬送される容器フィルムに対しポケット部を形成するポケット部形成手段と、前記ポケット部に対し錠剤を充填する充填手段と、前記ポケット部に前記錠剤が収容された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状のカバーフィルムを取着する取着手段と、前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状のPTPフィルムからPTPシートを切離す切離手段(シート単位に打抜く打抜手段を含む)とを備える。そして、上記「充填手段」において、上記手段1に係る「搬送手段」、「ワーク検出手段」、「印刷手段」、「印刷状態把握手段」などが設けられる構成としてもよい。
【0020】
手段2.前記印刷ヘッドを複数備え、
前記判定手段により前記所定条件を満たさないと判定された場合に、前記印刷ヘッドを切換可能なヘッド切換手段を備えていることを特徴とする手段1に記載のPTP包装機。
【0021】
例えば特許文献1に記載の従来技術において、印刷ヘッドのクリーニングを行う場合には、包装機を停止する必要があり、生産性が低下するおそれがある。加えて、クリーニング後、包装機を再起動する際に、容器フィルムやカバーフィルム等の包材ロス(損失)が発生するおそれがある。一方、印刷ヘッドのクリーニング中に包装機を停止しない場合には、不良品や包材ロスを出し続けるおそれがある。
【0022】
これに対し、本手段2によれば、複数の印刷ヘッドを備え、印刷ヘッドのクリーニングを行うタイミングで印刷ヘッドの切換えを行うことで、一方の印刷ヘッドのクリーニング中に他方の印刷ヘッドで印刷を実施することが可能となる。結果として、一方の印刷ヘッドのクリーニング中においても、印刷処理を中断することなく印刷処理を継続することができ、包材ロス等を低減することができる。
【0023】
尚、複数の印刷ヘッドを備えた構成の下であっても、例えば印刷不良の発生率が一定レベルを超えたタイミングで印刷ヘッドを切換え、印刷ヘッドのクリーニングを実施するような構成とした場合には、一定量の不良品の発生が避けられない。一方、包装機の稼働時間が所定時間経過する毎に印刷ヘッドを切換え、定期的に印刷ヘッドのクリーニングを実施するような構成とした場合には、クリーニングの回数が必要以上に多くなってしまい、印刷に用いられない無駄なインクの消費量が増加し、インク損失が多くなるおそれがある。
【0024】
これに対し、本手段では、上記手段1の構成が奏効することとなり、印刷不良の発生を低減しつつ、上記各種不具合の発生を抑制し、生産性の低下抑制を図ることができる。
【0025】
手段3.前記搬送手段は、搬送するワークを所定時間(例えば5秒間)、停留可能なバッファ手段を備えていることを特徴とする手段1に記載のPTP包装機。
【0026】
上記手段3によれば、印刷ヘッドを複数備えることなく、ワークを停留させた所定時間の間に印刷ヘッドのクリーニング処理を行うことが可能となる。結果として、包装機を停止することなく、印刷ヘッドのクリーニングを実施することができる。ひいては、上記手段2と同様の作用効果が奏される。
【0027】
さらに、本手段によれば、印刷ヘッドを複数備える必要がないため、装置の大型化やコスト増加を抑制することができる。
【0028】
手段4.容器フィルムに形成されたポケット部にワーク(錠剤等)が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるPTPシートを製造するPTPシート製造方法であって、
前記ワークを吸着保持して搬送可能な搬送工程と、
搬送される前記ワークを撮像し、該ワークの状態(位置や向き、表裏など)を検出するワーク検出工程と、
インクを吐出可能な複数のノズルを有した印刷ヘッドを少なくとも1つ備えた印刷手段によって、前記ワーク検出工程において検出された前記ワークの状態に合わせて、該ワークに対し印刷予定の識別情報に対応するノズルを選択し、搬送される前記ワークに対しインクを吐出して印刷を行う印刷実施工程と、
前記印刷実施工程において印刷された前記ワークの印刷部を撮像し、該印刷部の印刷状態を把握する印刷状態把握工程と、
前記印刷状態把握工程において把握された前記印刷部の印刷状態と、該印刷部を印刷する際に前記印刷実施工程において選択されたノズルとの関係から、目詰まりしたノズルの位置を特定する目詰まり特定工程と、
前記目詰まりしたノズルの位置を記憶する目詰まり位置記憶工程と、
前記ワークの状態、前記印刷予定の識別情報、及び、前記目詰まり位置記憶工程において記憶されたノズルの目詰まり位置に基づき、前記ワークに印刷され得る前記印刷部の印刷状態を予測する印刷状態予測工程と、
前記印刷状態予測工程において予測された前記印刷部の印刷状態が、予め設定された所定条件を満たすか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程において前記所定条件を満たさないと判定された場合に、前記印刷ヘッドのクリーニングを実施するクリーニング工程とを備えたことを特徴とするPTPシート製造方法。
【0029】
上記手段4によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。尚、一般に、PTPシート製造方法は、帯状に搬送される容器フィルムに対しポケット部を形成するポケット部形成工程と、前記ポケット部にワークを充填する充填工程と、前記ポケット部に前記ワークが充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状のカバーフィルムを取着する取着工程と、前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状のPTPフィルムからPTPシートを切離す切離工程(シート単位に打抜く打抜工程を含む)とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】PTPシートを示す斜視図である。
図2】PTPシートの部分拡大断面図である。
図3】(a)は錠剤の表面を示す平面図であり、(b)は錠剤の裏面を示す平面図である。
図4】PTPフィルムを示す斜視図である。
図5】PTP包装機の概略構成を示す模式図である。
図6】錠剤印刷充填装置の概略構成を示す部分断面模式図である。
図7】錠剤印刷充填装置の一部を示す斜視模式図である。
図8】印刷ヘッドにおけるノズル列の配置構成を示す平面模式図である。
図9】(a),(b)は、目詰まり位置記憶テーブルの構成を説明するための模式図である。
図10】印刷ヘッドと、搬送される錠剤との関係を示す模式図である。
図11】(a),(b),(c)は、目詰まりしたノズルと、錠剤に印刷形成された印刷部との関係を示す模式図である。
図12】充填工程を示すフローチャートである。
図13】印刷工程を示すフローチャートである。
図14】別の実施形態における判読可否判定基準データを説明するための図であり、(a)は、不良品を示す模式図であり、(b)は、良品を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まずPTPシートの構成について詳しく説明する。
【0032】
図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
【0033】
本実施形態における容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の透明の熱可塑性樹脂材料により形成され、透光性を有している。一方、カバーフィルム4は、例えばポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。勿論、各フィルム3,4の材料は、これらに限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。
【0034】
PTPシート1は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(図4参照)がシート状に打抜かれることによって製造されるものであり、平面視略矩形状に形成されている。
【0035】
PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。つまり、計10個のポケット部2が形成されている。各ポケット部2には、ワークとしての錠剤5が1つずつ収容されている。
【0036】
図2図3(a),(b)に示すように、本実施形態における錠剤5は、平面視円形状をなす円盤状の素錠であって、側面5Aと、該側面5Aを挟む平坦状の表面5B及び裏面5Cとを有した構成となっている。図3(a)は錠剤5の表面5Bを示す平面図であり、図3(b)は錠剤5の裏面5Cを示す平面図である。
【0037】
また、表面5Bの周縁部には、側面5Aとの境界部を面取りするようにテーパ部5Dが形成され、裏面5Cの周縁部には、側面5Aとの境界部を面取りするようにテーパ部5Eが形成されている。
【0038】
さらに、錠剤5の表面5Bには、該表面5Bの中心を通り直線状に延びる溝状の割線5Fが刻設されている。尚、割線5Fは、表面5Bにのみ刻設されており、裏面5Cには刻設されていない。
【0039】
また、図3(a),(b)に示すように、錠剤5の表面5B及び裏面5Cには、それぞれ錠剤5に関する製品情報を示す識別情報(文字や記号、数字、図形など)がインクジェット印刷されている。
【0040】
錠剤5に関する製品情報としては、例えば「製品名」、「含量」、「剤形」、「製造元」及び「ロット番号」などを挙げることができる。図3(a),(b)に示す例では、表面5Bにおいて、割線5Fを挟んで一方側の領域に「製品名」として「ABC」の文字が印刷され、他方側の領域に「含量」として「20」の数字が印刷されている。一方、割線5Fのない裏面5Cにおいては、向きを問わず、「ABC」の文字と、「20」の数字が印刷されている。これら「ABC」の文字や「20」の数字が印刷された部位を、以下「印刷部5G」と称する。
【0041】
次に、上記PTPシート1を製造可能なPTP包装機10の概略構成について図5を参照して説明する。
【0042】
図5に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール13に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール13の下流側において間欠送りロール14に掛装されている。間欠送りロール14は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0043】
ガイドロール13と間欠送りロール14との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、加熱装置15及びポケット部形成装置16が順に配設されている。そして、加熱装置15によって容器フィルム3が加熱されて該容器フィルム3が比較的柔軟になった状態において、ポケット部形成装置16によって容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2が形成される(ポケット部形成工程)。加熱装置15及びポケット部形成装置16によって、本実施形態におけるポケット部形成手段が構成される。ポケット部2の形成は、間欠送りロール14による容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。
【0044】
間欠送りロール14から送り出された容器フィルム3は、テンションロール18、ガイドロール19及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。フィルム受けロール20は、一定回転するモータに連結されているため、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール14とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の弛みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。
【0045】
ガイドロール19とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、錠剤印刷充填装置21及び検査装置22が順に配設されている。
【0046】
本実施形態における錠剤印刷充填装置21は、錠剤5に印刷部5Gを形成する印刷手段としての機能と、該錠剤5をポケット部2に充填する充填手段としての機能とを有する。錠剤印刷充填装置21は、フィルム受けロール20による容器フィルム3の搬送動作と同期して錠剤5を吸着搬送しつつ、該錠剤5に印刷部5Gを形成した後、該錠剤5をポケット部2へと充填する(充填工程)。錠剤印刷充填装置21の詳細については後述する。
【0047】
検査装置22は、例えば錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、錠剤5の異常の有無、ポケット部2への異物混入の有無など、主として錠剤不良に関する検査を行う。
【0048】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール24によって加熱ロール25の方へと案内されている。
【0049】
加熱ロール25は、前記フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ロール20,25間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3にカバーフィルム4が取着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる(取着工程)。これにより、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状のPTPフィルム6が製造される。フィルム受けロール20及び加熱ロール25により本実施形態における取着手段が構成される。
【0050】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。間欠送りロール28は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記フィルム受けロール20と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム6の弛みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0051】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。間欠送りロール32は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の弛みを防止する。
【0052】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット形成装置33及び刻印装置34が順に配設されている。スリット形成装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用スリットを形成する機能を有する。また、刻印装置34はPTPフィルム6の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す機能を有する。
【0053】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6をPTPシート1単位にその外縁を打抜く機能を有する。シート打抜装置37により本実施形態におけるシート打抜手段(切離手段)が構成される。
【0054】
シート打抜装置37によって打抜かれたPTPシート1は、コンベア39によって搬送され、完成品用ホッパ40に一旦貯留される(切離工程)。但し、上記検査装置22並びに後述する第一印刷検査装置59及び第二印刷検査装置84のうちの少なくとも1つによって不良と判定された錠剤5又は空のポケット部2を含むPTPシート1は、完成品用ホッパ40へ送られることなく、図示しない排出手段としての不良シート排出機構によって別途排出される。
【0055】
前記連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。そして、シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残った残材部(スクラップ部)を構成する不要フィルム部42は、テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。尚、連続送りロール36は従動ロールが圧接されており、不要フィルム部42を挟持しながら搬送動作を行う。裁断装置41は、不要フィルム部42を所定寸法に裁断する。裁断された不要フィルム部42(スクラップ)はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0056】
尚、上記各ロール14,20,28,31,32などは、そのロール表面とポケット部2とが対向する位置関係となっているが、間欠送りロール14等の表面には、ポケット部2が収容される凹部が形成されているため、ポケット部2が潰れてしまうことがない。また、ポケット部2が間欠送りロール14等の各凹部に収容されながら送り動作が行われることで、間欠送り動作や連続送り動作が確実に行われる。
【0057】
次いで、錠剤印刷充填装置21の構成について詳しく説明する。図6は、錠剤印刷充填装置21等の概略構成を示す部分断面模式図である。図6に示すように、錠剤印刷充填装置21は、上流側機構部51及び下流側機構部71、並びに、これらを動作制御する制御装置91を備えている。
【0058】
まず、上流側機構部51について説明する。上流側機構部51は、錠剤5の供給経路に沿って上流側より順に、貯留部52、供給シュート53、第一ロータリドラム54及び第一吸着ベルト55を備えている。また、上流側機構部51は、第一吸着ベルト55に対応して第一印刷システム56を備えている。
【0059】
貯留部52は、多数の錠剤5を貯留可能に構成されるとともに、ここから供給シュート53へ錠剤5が順次供給されるように構成されている。貯留部52に貯留される錠剤5は、割線5Fが既に形成されたものであるが、印刷部5Gは未形成のものである。
【0060】
供給シュート53は、水平搬送される容器フィルム3の幅方向(図6の紙面奥行方向)における各ポケット部2の位置に対応して、それぞれ設けられている。つまり、本実施形態では、容器フィルム3の幅方向に沿って5本の供給シュート53が並設されている。各供給シュート53は、筒状をなし、錠剤5を横姿勢で鉛直方向に一列に積載できるよう構成されている。また、各供給シュート53は、その下側開口部が第一ロータリドラム54の回転軸の真上に位置し第一ロータリドラム54に近接するようにして配置されている。
【0061】
各供給シュート53の下側開口部の近傍には、該下側開口部を開閉可能なシャッタ53Aが設けられている。そして、シャッタ53Aが開閉動作を行うことにより、供給シュート53から錠剤5を1錠ずつ自然落下させ、第一ロータリドラム54へ供給することができるようになっている。尚、第一ロータリドラム54へと供給される錠剤5の表裏や割線5Fの向きは様々であり、一定ではない。
【0062】
第一ロータリドラム54は、所定の第一ポジションP1において供給シュート53から供給された錠剤5を受取った上で、該錠剤5を吸着保持しつつ、第一吸着ベルト55側へと搬送するものである。第一ポジションP1は、供給シュート53からの錠剤5の落下位置に相当するポジションである。
【0063】
第一ロータリドラム54は、図6及び図7に示すように、円筒形状をなすとともに回転可能に軸支されており、また、その回転軸が容器フィルム3の幅方向と平行となるように配置されている。さらに、第一ロータリドラム54は、図示しないモータ等の駆動手段に対し直接又は間接に連結されており、該モータによって回転駆動される。本実施形態では、図6の紙面上において、第一ロータリドラム54は時計回り方向に連続回転する。
【0064】
さらに、第一ロータリドラム54の外周面には、錠剤5を吸着保持するための吸着部54Aが多数形成されている。各吸着部54Aは、第一ロータリドラム54の径方向に見た平面視で、略円形状をなし、錠剤5を収容可能な大きさを有している。
【0065】
また、吸着部54Aは、第一ロータリドラム54の周方向及び軸方向に所定間隔で規則的に配列されている。本実施形態では、容器フィルム3の幅方向における各ポケット部2の位置に対応して、第一ロータリドラム54の軸方向に等間隔で5つの吸着部54Aが設けられている。そして、この軸方向に並ぶ5つの吸着部54Aからなる列が第一ロータリドラム54の周方向に等間隔で多数設けられている。さらに、第一ロータリドラム54の周方向に対する吸着部54Aの形成間隔(ピッチ)は、容器フィルム3の搬送方向(図6の右向き方向)に対するポケット部2の形成間隔と同一間隔となっている。
【0066】
さらに、各吸着部54Aは、第一ロータリドラム54の回転に伴い第一ロータリドラム54の回転軸の真上から真下付近まで移動する間、図示しない所定のブロアにより負圧が供給された状態となるように構成されている。これにより、各吸着部54Aは、第一ロータリドラム54の回転軸の真上から真下付近まで移動する間、錠剤5を吸着保持することができるようになっている。尚、錠剤5を吸着部54Aにより吸着保持した状態では、錠剤5の一部が第一ロータリドラム54の外周面より突出するようになっている。
【0067】
一方、各吸着部54Aは、第一ロータリドラム54の回転に伴い第一ロータリドラム54の回転軸の真下から真上付近まで移動する間、大気に開放された状態となるように構成されている。これにより、第一ロータリドラム54に吸着保持された錠剤5は、第一ロータリドラム54の回転軸の真下にて吸着が解除されるようになっている。
【0068】
尚、第一ロータリドラム54(後述する第一吸着ベルト55、第二吸着ベルト72、及び、第二ロータリドラム73についても同様)には、図示しないエンコーダが設けられており、該エンコーダから制御装置91へ回転量(移動量)に関する信号が所定時間毎に出力される。これにより、制御装置91は、第一ロータリドラム54の回転位置を把握可能となり、ひいては吸着搬送される錠剤5の位置を把握できるようになっている。
【0069】
第一吸着ベルト55は、所定の第二ポジションP2にて第一ロータリドラム54から錠剤5を受取った上で、該錠剤5を吸着搬送し、下流側機構部71へと受け渡すものである。第二ポジションP2は、第一ロータリドラム54の回転軸の真下位置に相当するポジションである。
【0070】
第一吸着ベルト55は、一対のプーリ55A,55Bと、複数の保持板55Dをベルト状につなぎ合わせてなる搬送ベルト55Cと、図示しない吸引機構とを有している。
【0071】
一対のプーリ55A,55Bは、容器フィルム3の搬送方向に沿って間隔をあけた状態で配置されており、それぞれ所定の駆動手段によって第一ロータリドラム54の回転軸と平行な回転軸にて回転可能とされている。また、一対のプーリ55A,55Bのうち、容器フィルム3の搬送方向下流側に配置されるプーリ55Aは、第一ロータリドラム54の鉛直下方において該第一ロータリドラム54に近接した状態で配置されている。
【0072】
搬送ベルト55Cは、一対のプーリ55A,55Bに架け渡されており、プーリ55A,55Bの回転に伴い回転移動する。本実施形態では、図6の紙面上において、搬送ベルト55Cは、反時計回り方向に回転移動する。また、搬送ベルト55Cのうちプーリ55Bからプーリ55Aへと移動する部位、つまり搬送ベルト55Cのうち外周面が下側を向く部位は、フィルム受けロール20による容器フィルム3の搬送速度と同一速度で連続移動するようになっている。
【0073】
さらに、各保持板55Dには、搬送ベルト55Cの幅方向に沿って等間隔に複数の吸着孔55Eが設けられている。本実施形態において、吸着孔55Eは、搬送ベルト55Cの幅方向に沿って5つ設けられており、前記幅方向に沿った各吸着孔55Eの間隔は、容器フィルム3の幅方向に沿ったポケット部2の形成間隔と同一とされている。
【0074】
また、前記吸引機構を作動させることによって各吸着孔55Eに負圧を供給した状態とすることができるように構成されている。これにより、第一吸着ベルト55は、各吸着孔55Eの形成箇所において錠剤5を吸着保持可能となっている。従って、「第一吸着ベルト55」が本実施形態における「搬送手段」を構成する。
【0075】
加えて、第一吸着ベルト55の内部には、図示しないブロー機構が設けられている。当該ブロー機構は、吸着孔55Eに向けて加圧されたエアーを吹き付けることができる。ブロー機構がエアーを吹き付けることによって、吸着孔55Eに大気圧よりも高い圧力を生じさせることができ、その結果、第一吸着ベルト55による錠剤5の吸着を解除することができる。
【0076】
また、当該ブロー機構は、搬送ベルト55Cの幅方向に並ぶ5つの吸着孔55Eの中から選択したものに向けてエアーを吹き付けることができるようになっている。そのため、一列に並ぶ5つの錠剤5のいずれかを選択的に吸着解除することが可能である。
【0077】
本実施形態では、前記ブロー機構として、次述する第七ポジションP7の不良品収納部75に対応するものと、後述する第八ポジションP8の受渡し位置に対応するものとがそれぞれ設けられている。
【0078】
所定の第七ポジションP7の不良品収納部75に対応するブロー機構の作動により、第一吸着ベルト55は、第七ポジションP7に搬送された錠剤5の吸着を解除することで、不良品収納部75へと錠剤5を排出する。
【0079】
また、所定の第八ポジションP8の受渡し位置に対応するブロー機構の作動により、第一吸着ベルト55は、第八ポジションP8に搬送された錠剤5の吸着を解除することで、後述する第二吸着ベルト72へと錠剤5を受け渡す。これにより、第二吸着ベルト72は、第一吸着ベルト55から錠剤5を表裏反転させた状態で受取って吸着保持する。そして、第二吸着ベルト72により吸着保持された錠剤5は、搬送ベルト72Cの移動により下流側へと搬送される。第八ポジションP8は、搬送ベルト55Cの移動方向に沿ってプーリ55Aの回転軸の真下位置よりも若干下流側のポジションである。
【0080】
次いで、第一印刷システム56について説明する。第一印刷システム56は、第一吸着ベルト55によって吸着搬送されている錠剤5に印刷を施すとともに、形成された印刷部5Gの良否を判定する機能を有する。
【0081】
第一印刷システム56は、第一吸着ベルト55による錠剤5の搬送経路に沿って、第一錠剤検査装置57、第一印刷装置58(第一印刷ヘッド58A、第二印刷ヘッド58B)及び第一印刷検査装置59をこの順序で備えている。
【0082】
第一錠剤検査装置57は、本実施形態における「ワーク検出手段」を構成するものであり、第一吸着ベルト55により吸着搬送される錠剤5の検査を行う錠剤検査装置である。
【0083】
第一錠剤検査装置57は、錠剤5を撮像する撮像手段としてのカメラ57aを備えている。加えて、図示は省略するが、第一錠剤検査装置57は、カメラ57aによって得られた画像データに画像処理を行う画像処理部や、該画像処理により把握される錠剤5の状態情報(位置や向き、表裏など)を第一印刷装置58等へ出力する情報出力部、これらを制御する制御部などを備えている。
【0084】
尚、本実施形態における錠剤5の状態情報には、所定の基準位置に対する錠剤5の搬送方向(X方向)及びこれに直交する方向(Y方向)における位置ずれ量や、所定の基準線に対する割線5Fの傾斜角度、表裏などに関する情報が含まれる。
【0085】
カメラ57aは、例えばCCDカメラやCMOSカメラ等により構成され、プーリ55Aからプーリ55Bへと移動する搬送ベルト55Cの上方にあたる第三ポジションP3に対応して配置されている。
【0086】
カメラ57aは、その撮像範囲が搬送ベルト55Cの幅方向に並ぶ5つの錠剤5(吸着孔55E)を1回で撮像可能な範囲となっている。これに代えて、搬送ベルト55Cの幅方向に並ぶ5つの錠剤5(吸着孔55E)それぞれに対応してカメラを設けた構成としてもよい。
【0087】
カメラ57aは、第三ポジションP3に搬送された錠剤5のうち、第一吸着ベルト55によって吸着された吸着面とは反対側の非吸着面を撮像する。例えば、第一吸着ベルト55によって錠剤5の表面5B側が吸着されている場合、カメラ57aは、錠剤5の裏面5C側を撮像する。
【0088】
第一錠剤検査装置57の画像処理部は、例えばカメラ57aによって得られた画像データに二値化処理を施すことにより割線5Fの領域を抽出した上で、錠剤5の位置や向き、表裏などを把握する。
【0089】
第一印刷装置58は、本実施形態における「印刷手段」を構成するものであり、第一錠剤検査装置57によって得られた各錠剤5の状態情報に基づいて、該錠剤5に対し非接触で印刷を行うことのできる錠剤印刷装置である。
【0090】
第一印刷装置58は、所定のインクジェット方式(例えばピエゾ方式やサーマル方式)で印刷を行う第一印刷ヘッド58A及び第二印刷ヘッド58Bと、該印刷ヘッド58A,58B等の駆動制御を行う制御部(図示略)と、各種データを記憶可能な記憶部(図示略)とを備えている。尚、前記制御部は、第一錠剤検査装置57や第一印刷検査装置59等と各種データを送受信可能に構成されている。
【0091】
第一印刷ヘッド58Aは、搬送ベルト55Cの移動経路に沿った第三ポジションP3よりも下流位置にあたる第四ポジションP4に対応して配置されている。第一印刷ヘッド58Aは、搬送ベルト55Cの幅方向に並ぶ5つの吸着孔55E(錠剤5)に対応可能に構成されている。そして、第一印刷ヘッド58Aは、第一吸着ベルト55により吸着搬送されて第四ポジションP4を通過する各錠剤5に向けてインクを吐出し、非接触で印刷可能に構成されている。
【0092】
第二印刷ヘッド58Bは、搬送ベルト55Cの移動経路に沿った第四ポジションP4よりも下流位置にあたる第五ポジションP5に対応して配置されている。第二印刷ヘッド58Bは、搬送ベルト55Cの幅方向に並ぶ5つの吸着孔55E(錠剤5)に対応可能に構成されている。そして、第二印刷ヘッド58Bは、第一吸着ベルト55により吸着搬送されて第五ポジションP5を通過する各錠剤5に向けてインクを吐出し、非接触で印刷可能に構成されている。
【0093】
ここで、各印刷ヘッド58A,58Bの構成について詳しく説明する。各印刷ヘッド58A,58Bは、それぞれ搬送ベルト55Cの移動経路上に配置される印刷位置と、搬送ベルト55Cの移動経路上から奥側(図6の紙面奥側)に退避した待機位置との間を図示しない駆動手段により移動可能に構成されている。
【0094】
そして、第一印刷ヘッド58Aが使用される場合には、該第一印刷ヘッド58Aが印刷位置に配置され、第二印刷ヘッド58Bが待機位置に配置された状態となる。逆に、第二印刷ヘッド58Bが使用される場合には、該第二印刷ヘッド58Bが印刷位置に配置され、第一印刷ヘッド58Aが待機位置に配置された状態となる。
【0095】
図8図10に示すように、印刷ヘッド58A,58Bは、インクの液滴を吐出可能な複数のノズルを一定間隔で配列した2列のノズル列La,Lbを備えている。
【0096】
ノズル列La,Lbは、並行するように、錠剤5の搬送方向と直交する印刷ヘッド58A,58Bの幅方向(以下、「ヘッド幅方向」という。)に沿って配設されている。具体的には、錠剤搬送方向の下流側にノズル列Laが配置され、上流側にノズル列Lbが配設されている。
【0097】
ノズル列Laは、m個のノズルNa(Na1,Na2,Na3,Na4,Na5,・・・,Nam)をヘッド幅方向に一定間隔で備え、ノズル列Lbは、m個のノズルNb(Nb1,Nb2,Nb3,Nb4,NB5,・・・,Nbm)をヘッド幅方向に一定間隔で備えている。本実施形態では、各ノズルNa,Nbに対して、図示しないインクタンクから同一色(例えば黒色)の可食性インクが供給されるように構成されている。これに限らず、複数色のインクが供給される構成としてもよい。
【0098】
また、両ノズル列La,Lbは、ノズル列Laの各ノズルNaが、ノズル列Lbの各ノズルNbに対してヘッド幅方向に位置ずれし、ノズル列Lbの各ノズルNb間に位置するように配設されると共に、ノズル列Lbの各ノズルNbが、ノズル列Laの各ノズルNaに対してヘッド幅方向に位置ずれし、ノズル列Laの各ノズルNa間に位置するように配設されている。つまり、両ノズル列La,LbのノズルNa,Nbは、全体として千鳥状に配置され、ヘッド幅方向に一定間隔に並んだ状態となっている。
【0099】
また、図示は省略するが、印刷ヘッド58A,58Bには、ノズルNa,Nbの内部に詰まった塵埃や増粘又は固形化したインク等を外部に排出する加圧パージを行うクリーニング手段としてのクリーニング機構と、パージ後の印刷ヘッド58A,58Bを拭くワイピング機構とが設けられている。
【0100】
第一印刷装置58の記憶部には、錠剤5の印刷部5Gを形成する印刷予定の印刷データ(識別情報)が登録されている。尚、印刷データは、例えば印刷部5Gを構成する複数の印刷ラインの1ラインを形成するためのラインデータが複数列集まって構成されたものである。また、ラインデータは、各ノズル列La,LbのノズルNa,Nbに割り当てられるインクの吐出又は非吐出を示す複数のドットデータで構成される。
【0101】
本実施形態では、印刷データの向きを0度から359度の範囲で1度ずつ回転させた360通りの印刷データが登録されている。これに限らず、印刷基準データを1つだけ登録しておき、錠剤5の状態に応じて、その都度、該印刷基準データの向きを0度から359度の範囲で所定角度回転させた印刷データを作成する構成としてもよい。
【0102】
第一印刷検査装置59は、本実施形態における「印刷状態把握手段」を構成するものであり、第一印刷装置58(第一印刷ヘッド58A又は第二印刷ヘッド58B)によって印刷された印刷部5Gの印刷状態を検査する印刷検査装置である。
【0103】
第一印刷検査装置59は、錠剤5の印刷部5Gを撮像する撮像手段としてのカメラ59aを備えている。加えて、図示は省略するが、第一印刷検査装置59は、カメラ59aによって得られた画像データに画像処理を行う画像処理部や、該画像処理により把握される印刷部5Gの印刷状態を判定するための判定処理部、各種データを記憶する記憶部、該印刷部5Gの印刷状態の良否判定結果等を制御装置91へ出力する出力部、これらを制御する制御部などを備えている。
【0104】
カメラ59aは、例えばCCDカメラやCMOSカメラ等により構成され、搬送ベルト55Cの移動経路に沿った第五ポジションP5よりも下流位置にあたる第六ポジションP6に対応して配置されている。
【0105】
カメラ59aは、その撮像範囲が搬送ベルト55Cの幅方向に並ぶ5つの錠剤5(吸着孔55E)を1回で撮像可能な範囲となっている。これに代えて、搬送ベルト55Cの幅方向に並ぶ5つの錠剤5(吸着孔55E)それぞれに対応してカメラを設けた構成としてもよい。
【0106】
カメラ59aは、第六ポジションP6に搬送された錠剤5のうち、第一吸着ベルト55によって吸着された吸着面とは反対側の非吸着面、つまり第一印刷装置58によって印刷された印刷部5Gが形成された面を撮像する。
【0107】
第一印刷検査装置59の画像処理部は、例えばカメラ59aにより得られた画像データに二値化処理を施すことにより印刷部5Gの領域を抽出した上で、当該領域を予め前記記憶部に記憶されている所定の印刷データ(良否判定基準データ)と比較すること等により、印刷部5Gの良否判定を行う。かかる良否判定結果は、前記出力部を介して制御装置91へと出力される。尚、印刷部5Gの良否判定手法は、上記以外の手法であってもよい。
【0108】
不良品収納部75は、第一印刷検査装置59において不良判定された錠剤5を収納するための容器であり、第一吸着ベルト55の下方において搬送ベルト55Cの移動経路に沿って配置されている。不良品収納部75は、これに対応する前記ブロー機構の作動により吸着解除されて落下した錠剤5を、第一吸着ベルト55から受け取って収納する。
【0109】
次いで、下流側機構部71について説明する。下流側機構部71は、錠剤5の供給経路に沿って上流側より順に、第二吸着ベルト72及び第二ロータリドラム73を備えている。また、下流側機構部71は、第二吸着ベルト72に対応して第二印刷システム81を備えている。
【0110】
第二吸着ベルト72は、基本的に、第一吸着ベルト55と同一の構成を有している。つまり、第二吸着ベルト72は、一対のプーリ72A,72Bと、複数の保持板72Dをベルト状につなぎ合わせてなる搬送ベルト72Cと、図示しない吸引機構とを有している。
【0111】
第二吸着ベルト72は、第八ポジションP8にて第一吸着ベルト55から錠剤5を受取った上で、該錠剤5を吸着搬送し、第二ロータリドラム73へと受け渡すものである。
【0112】
一対のプーリ72A,72Bは、容器フィルム3の搬送方向に沿って間隔をあけた状態で配置されており、それぞれ所定の駆動手段によって第二ロータリドラム73の回転軸と平行な回転軸にて回転可能とされている。また、一対のプーリ72A,72Bのうち、容器フィルム3の搬送方向上流側に配置されるプーリ72Aは、第八ポジションP8の受渡し位置において、上記第一吸着ベルト55に近接した状態で配置されている。
【0113】
搬送ベルト72Cは、一対のプーリ72A,72Bに架け渡されており、プーリ72A,72Bの回転に伴い回転移動する。本実施形態では、図6の紙面上において、搬送ベルト72Cは、時計回り方向に回転移動する。
【0114】
また、搬送ベルト72Cのうちプーリ72Aからプーリ72Bへと移動する部位、つまり、搬送ベルト72Cのうち外周面が上側を向く部位は、フィルム受けロール20による容器フィルム3の搬送速度と同一速度で連続移動するようになっている。
【0115】
さらに、各保持板72Dには、搬送ベルト72Cの幅方向に沿って等間隔に複数の吸着孔72Eが設けられている。本実施形態において、吸着孔72Eは、搬送ベルト72Cの幅方向に沿って5つ設けられており、前記幅方向に沿った各吸着孔72Eの間隔は、容器フィルム3の幅方向に沿ったポケット部2の形成間隔と同一とされている。
【0116】
また、前記吸引機構を作動させることによって各吸着孔72Eに負圧を供給した状態とすることができるように構成されている。これにより、第二吸着ベルト72は、各吸着孔72Eの形成箇所において錠剤5を吸着保持可能となっている。尚、図7では、吸着孔72Eを示すべく、実際には存在する一列分の錠剤5を消去した状態としている。従って、「第二吸着ベルト72」が本実施形態における「搬送手段」を構成する。
【0117】
加えて、第二吸着ベルト72の内部には、第一吸着ベルト55と同様、図示しないブロー機構が設けられている。当該ブロー機構は、吸着孔72Eに向けて加圧されたエアーを吹き付けることができる。ブロー機構がエアーを吹き付けることによって、吸着孔72Eに大気圧よりも高い圧力を生じさせることができ、その結果、第二吸着ベルト72による錠剤5の吸着を解除することができる。
【0118】
また、当該ブロー機構は、搬送ベルト72Cの幅方向に並ぶ5つの吸着孔72Eの中から選択したものに向けてエアーを吹き付けることができるようになっている。そのため、一列に並ぶ5つの錠剤5のいずれかを選択的に吸着解除することが可能である。
【0119】
本実施形態では、前記ブロー機構として、次述する第十三ポジションP13の不良品収納部76に対応するものと、後述する第十四ポジションP14の受渡し位置に対応するものとがそれぞれ設けられている。
【0120】
所定の第十三ポジションP13の不良品収納部76に対応するブロー機構の作動により、第二吸着ベルト72は、第十三ポジションP13に搬送された錠剤5の吸着を解除することで、不良品収納部76へと錠剤5を排出する。
【0121】
また、所定の第十四ポジションP14の受渡し位置に対応するブロー機構の作動により、第二吸着ベルト72は、第十四ポジションP14に搬送された錠剤5の吸着を解除することで、後述する第二ロータリドラム73へと錠剤5を受け渡す。第十四ポジションP14は、搬送ベルト72Cの移動方向に沿ってプーリ72Aの回転軸の真下位置に相当するポジションである。
【0122】
第二ロータリドラム73は、所定の第十四ポジションP14において第二吸着ベルト72から錠剤5を受取った上で、該錠剤5を吸着保持しつつ、容器フィルム3側へと搬送するものである。
【0123】
第二ロータリドラム73は、第一ロータリドラム54と同様、円筒形状をなすとともに回転可能に軸支されており、また、その回転軸が容器フィルム3の幅方向と平行となるように配置されている。さらに、第二ロータリドラム73は、図示しないモータ等の駆動手段に対し直接又は間接に連結されており、該モータによって回転駆動される。本実施形態では、図6の紙面上において、第二ロータリドラム73は反時計回り方向に連続回転する。
【0124】
さらに、第二ロータリドラム73の外周面には、錠剤5を吸着保持するための吸着部73Aが多数形成されている。各吸着部73Aは、第二ロータリドラム73の径方向に見た平面視で略円形状に形成されている。
【0125】
また、吸着部73Aは、第二ロータリドラム73の周方向及び軸方向に所定間隔で規則的に配列されている。本実施形態では、容器フィルム3の幅方向における各ポケット部2の位置に対応して、第二ロータリドラム73の軸方向に等間隔で5つの吸着部73Aが設けられている。そして、この軸方向に並ぶ5つの吸着部73Aからなる列が第二ロータリドラム73の周方向に等間隔で多数設けられている。さらに、第二ロータリドラム73の周方向に対する吸着部73Aの形成間隔(ピッチ)は、容器フィルム3の搬送方向(図6の右向き方向)に対するポケット部2の形成間隔と同一間隔となっている。
【0126】
さらに、各吸着部73Aは、第二ロータリドラム73の回転に伴い第二ロータリドラム73の回転軸の真上から真下付近まで移動する間、図示しない所定のブロアにより負圧が供給された状態となるように構成されている。これにより、各吸着部73Aは、第二ロータリドラム73の回転軸の真上から真下付近まで移動する間、錠剤5を吸着保持することができるようになっている。尚、錠剤5を吸着部73Aにより吸着保持した状態では、錠剤5の一部が第二ロータリドラム73の外周面より突出するようになっている。
【0127】
一方、各吸着部73Aは、第二ロータリドラム73の回転に伴い第二ロータリドラム73の回転軸の真下から真上付近まで移動する間、大気に開放された状態となるように構成されている。これにより、第二ロータリドラム73に吸着保持された錠剤5は、第二ロータリドラム73の回転軸の真下にて吸着が解除されるようになっている。
【0128】
第二ロータリドラム73は、前記ガイドロール19及び前記フィルム受けロール20に架け渡された容器フィルム3に近接した位置に配置されている。また、第二ロータリドラム73は、所定の第十五ポジションP15に搬送された錠剤5の吸着を解除することで、該錠剤5を落下させ、容器フィルム3のポケット部2へ充填する。
【0129】
尚、第十五ポジションP15は、第二ロータリドラム73の回転軸の真下位置にあたり、充填ポジションに相当する。そして、第十五ポジションP15を、第二ロータリドラム73の吸着部73Aが通過するタイミングと、容器フィルム3のポケット部2が通過するタイミングとが一致するように設定される。
【0130】
次いで、第二印刷システム81について説明する。第二印刷システム81は、第二吸着ベルト72によって吸着搬送されている錠剤5に印刷を施すとともに、形成された印刷部5Gの良否を判定する機能を有する。
【0131】
第二印刷システム81は、第二吸着ベルト72による錠剤5の搬送経路に沿って、第二錠剤検査装置82、第二印刷装置83(第一印刷ヘッド83A、第二印刷ヘッド83B)及び第二印刷検査装置84をこの順序で備えている。
【0132】
尚、第二錠剤検査装置82、第二印刷装置83(第一印刷ヘッド83A、第二印刷ヘッド83B)及び第二印刷検査装置84の基本構成は、上述した第一錠剤検査装置57、第一印刷装置58(第一印刷ヘッド58A、第二印刷ヘッド58B)及び第一印刷検査装置59と同様であるため、これらの基本構成についての詳細な説明は省略する。
【0133】
第二錠剤検査装置82は、本実施形態における「ワーク検出手段」を構成するものであり、第二吸着ベルト72により吸着搬送される錠剤5の検査を行う錠剤検査装置である。第二錠剤検査装置82のカメラ82aは、プーリ72Aからプーリ72Bへと移動する搬送ベルト72Cの上方にあたる第九ポジションP9に対応して配置されており、該第九ポジションP9を通過する錠剤5を撮像する。
【0134】
第二錠剤検査装置82では、第九ポジションP9に搬送された錠剤5のうち、第二吸着ベルト72によって吸着された吸着面とは反対側の面、すなわち第一印刷装置58によって印刷部5Gが形成された面とは反対側の面が撮像される。例えば第一印刷装置58によって錠剤5の表面5Bに印刷部5Gが形成され、第二吸着ベルト72によって錠剤5の表面5B側が吸着されている場合、錠剤5の裏面5C側を撮像する。
【0135】
第二印刷装置83は、本実施形態における「印刷手段」を構成するものであり、第二錠剤検査装置82によって得られた各錠剤5の状態情報に基づいて、該錠剤5に対し非接触で印刷を行うことのできる錠剤印刷装置である。
【0136】
第二印刷装置83は、所定のインクジェット方式(例えばピエゾ方式やサーマル方式)で印刷を行う第一印刷ヘッド83A及び第二印刷ヘッド83Bを備えている。
【0137】
第一印刷ヘッド83Aは、搬送ベルト72Cの移動経路に沿った第九ポジションP9よりも下流位置にあたる第十ポジションP10に対応して配置されている。第一印刷ヘッド83Aは、第二吸着ベルト72により吸着搬送されて第十ポジションP10を通過する各錠剤5に向けてインクを吐出し、非接触で印刷可能に構成されている。
【0138】
第二印刷ヘッド83Bは、搬送ベルト72Cの移動経路に沿った第十ポジションP10よりも下流位置にあたる第十一ポジションP11に対応して配置されている。第二印刷ヘッド83Bは、第二吸着ベルト72により吸着搬送されて第十一ポジションP11を通過する各錠剤5に向けてインクを吐出し、非接触で印刷可能に構成されている。
【0139】
第二印刷検査装置84は、本実施形態における「印刷状態把握手段」を構成するものであり、第二印刷装置83(第一印刷ヘッド83A又は第二印刷ヘッド83B)によって形成された印刷部5Gの印刷状態を検査する印刷検査装置である。
【0140】
第二印刷検査装置84のカメラ84aは、搬送ベルト72Cの移動経路に沿った第十一ポジションP11よりも下流位置にあたる第十二ポジションP12に対応して配置されている。
【0141】
カメラ84aは、第十二ポジションP12に搬送された錠剤5のうち、第二吸着ベルト72に吸着された吸着面とは反対側の面、つまり第二印刷装置83によって印刷された印刷部5Gが形成された面側を撮像する。
【0142】
不良品収納部76は、第二印刷検査装置84において不良判定された錠剤5を収納するための容器であり、第二吸着ベルト72の下方において搬送ベルト72Cの移動経路に沿って配置されている。不良品収納部76は、これに対応する前記ブロー機構の作動により吸着解除されて落下した錠剤5を、第二吸着ベルト72から受け取って収納する。
【0143】
制御装置91は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、各種データを一時的に記憶するRAM、情報を長期記憶するための記憶媒体(例えばハードディスク等)などを備えている。制御装置91は、CPUが所定のプログラムを実行することによって、錠剤印刷充填装置21における各機構部に関する制御処理を実行する。
【0144】
例えば、第一吸着ベルト55のエンコーダから入力される信号に基づき、第一印刷システム56(第一錠剤検査装置57、第一印刷装置58及び第一印刷検査装置59)に対し錠剤5の通過タイミングを通知するなど、第一印刷システム56に関する各種制御処理を実行すると共に、第二吸着ベルト72のエンコーダから入力される信号に基づき、第二印刷システム81(第二錠剤検査装置82、第二印刷装置83及び第二印刷検査装置84)に対し錠剤5の通過タイミングを通知するなど、第二印刷システム81に関する各種制御処理を実行する。
【0145】
さて、以上のように構成されたPTP包装機10によってPTPシート1を製造する手順及びその作用効果について説明する。
【0146】
PTPシート1は、帯状に搬送される容器フィルム3に対しポケット部形成装置16においてポケット部2を形成するポケット部形成工程、該ポケット部2に対し錠剤印刷充填装置21において内容物5を充填する充填工程、該ポケット部2の開口側を密封するようにフィルム受けロール20及び加熱ロール25によって容器フィルム3に対しカバーフィルム4を取着する取着工程、容器フィルム3及びカバーフィルム4からなる帯状のPTPフィルム6をシート打抜装置37においてPTPシート単位に打ち抜く打抜工程(切離工程)等を経て製造される。
【0147】
ここで、本発明における主要部を構成する充填工程について、より詳しく説明する。図12は、充填工程を示すフローチャートである。
【0148】
充填工程は、錠剤供給工程(ステップS11)、第一印刷工程(ステップS12)、第二印刷工程(ステップS13)、錠剤投入工程(ステップS14)からなる。
【0149】
ステップS11の錠剤供給工程は、第一ロータリドラム54へと錠剤5を供給する工程である。錠剤供給工程(ステップS11)では、まず、第一ロータリドラム54の回転に伴い移動する空の吸着部54Aが第一ポジションP1に到達する所定のタイミングで、シャッタ53Aを開閉動作させる。シャッタ53Aの開閉動作により、各供給シュート53から錠剤5が1つずつ落下し、第一ポジションP1へ移動してきた吸着部54Aに収容される。このとき、錠剤5を収容した吸着部54Aは負圧が供給された状態となっているため、該錠剤5は吸着保持された状態となる。尚、供給シュート53においては、1つの錠剤5が落下すると、その上の錠剤5が下側開口部まで降下して、シャッタ53Aにより落下が阻止された状態となる。
【0150】
その後、第一ロータリドラム54の回転に伴い、錠剤5が第二ポジションP2に移動すると、該錠剤5は吸着解除されて第一吸着ベルト55へと受け渡される。このとき、吸着孔55Eは負圧が供給された状態となっているため、錠剤5は第一吸着ベルト55によって吸着保持された状態となる。
【0151】
続いて、錠剤5は、搬送ベルト55Cの移動に伴い、第一印刷システム56へと搬送されていき、第一印刷工程(ステップS12)に供される。尚、ステップS12の第一印刷工程の詳細については後述する。
【0152】
そして、第一吸着ベルト55により搬送された錠剤5が第八ポジションP8に移動すると、該第八ポジションP8に対応する前記ブロー機構が作動し、該錠剤5を吸着する吸着孔55Eに向けてエアーが吹き付けられ、該錠剤5の吸着保持が解除される。これにより、第一吸着ベルト55から第二吸着ベルト72へと錠剤5が受け渡される。このとき、第二吸着ベルト72の吸着孔72Eは負圧が供給された状態となっているため、錠剤5は第二吸着ベルト72によって吸着保持された状態となる。
【0153】
続いて、錠剤5は、搬送ベルト72Cの移動に伴い、第二印刷システム81へと搬送されていき、第二印刷工程(ステップS13)に供される。尚、ステップS13の第二印刷工程の詳細については後述する。
【0154】
そして、第二吸着ベルト72により搬送された錠剤5が第十四ポジションP14に移動すると、該第十四ポジションP14に対応する前記ブロー機構が作動し、該錠剤5を吸着する吸着孔72Eに向けてエアーが吹き付けられ、該錠剤5の吸着保持が解除される。これにより、第二吸着ベルト72から第二ロータリドラム73へと錠剤5が受け渡される。このとき、第二ロータリドラム73の吸着部73Aは負圧が供給された状態となっているため、錠剤5は第二ロータリドラム73によって吸着保持された状態となる。
【0155】
その後、ステップS14の錠剤投入工程が行われる。詳しくは、第二ロータリドラム73に吸着保持された錠剤5が第十五ポジションP15に移動すると、該錠剤5が、該第十五ポジションP15に位置する容器フィルム3のポケット部2内に入り込む。同時に、該錠剤5の吸着保持が解除される。これにより、第二ロータリドラム73から錠剤5がポケット部2へと落下し、ポケット部2へと錠剤5が充填されることとなる。
【0156】
次に、ステップS12の第一印刷工程、及び、ステップS13の第二印刷工程について、図13を参照しつつ詳しく説明する。但し、第一印刷工程(ステップS12)と第二印刷工程(ステップS13)は、実質的に同一内容であるため、1つの印刷工程として、まとめて説明する。図13は、印刷工程を示すフローチャートである。
【0157】
図13に示すように、まずステップS21において錠剤検査処理を実行する。かかる処理を行う工程が本実施形態における「ワーク検出工程」に相当する。
【0158】
ここでは、第一吸着ベルト55(第二吸着ベルト72)により吸着搬送されている錠剤5を、第一錠剤検査装置57(第二錠剤検査装置82)によって撮像し検査する。
【0159】
より詳しくは、錠剤5が第三ポジションP3(第九ポジションP9)を通過する所定のタイミングで第一錠剤検査装置57のカメラ57a(第二錠剤検査装置82のカメラ82a)を作動させる。
【0160】
尚、錠剤5の通過タイミングは、第一吸着ベルト55(第二吸着ベルト72)に設けられた前記エンコーダから制御装置91へ入力される信号に基づき把握可能となっている(以下同様)。「第一吸着ベルト55(第二吸着ベルト72)」によって錠剤5が吸着搬送される工程が本実施形態における「搬送工程」に相当する。
【0161】
これにより、第一錠剤検査装置57(第二錠剤検査装置82)は、第一吸着ベルト55(第二吸着ベルト72)によって吸着搬送されて第三ポジションP3(第九ポジションP9)を通過する錠剤5の非吸着面(表面5B側又は裏面5C側の面)を撮像する。
【0162】
続いて、第一錠剤検査装置57(第二錠剤検査装置82)は、カメラ57a(カメラ82a)により得られた画像データに二値化処理を施すことにより割線5Fの領域を抽出した上で、錠剤5の状態(位置や向き、表裏など)を把握する画像処理を行う。例えば割線5Fの領域が抽出されない場合は、錠剤5の裏面5Cであると把握することができる。そして、該画像処理により把握される錠剤5の状態情報を第一印刷装置58(第二印刷装置83)等へ出力する。
【0163】
次いで、ステップS22において印刷処理が行われる。かかる処理を行う工程が本実施形態における「印刷実施工程」に相当する。
【0164】
ここで第一錠剤検査装置57(第二錠剤検査装置82)から錠剤5の状態情報を取得した第一印刷装置58(第二印刷装置83)は、まず自身の記憶部に登録された上記360通りの印刷データの中から、当該錠剤5の状態情報における傾斜角度に適合するものを選択する。
【0165】
例えば、傾斜角度が90度である場合、第一印刷装置58(第二印刷装置83)は、360通りの印刷データの中から、印刷データの向きを90度回転させたものを選択する。但し、本実施形態では、錠剤5の表裏情報から、該錠剤5の非吸着面が裏面5Cであると把握される場合には、傾斜角度が0度の印刷データが選択される。
【0166】
続いて、第一印刷装置58(第二印刷装置83)は、選択した印刷データ、並びに、錠剤5の搬送方向(X方向)における位置ずれ量、及び、錠剤5の搬送方向に直交する方向(Y方向)における位置ずれ量に基づき、現在、印刷位置にあり使用している第一印刷ヘッド58A又は第二印刷ヘッド58B(第一印刷ヘッド83A又は第二印刷ヘッド83B)において使用するノズルNa,Nb及びその吐出タイミングを決定する。
【0167】
つまり、どのタイミングでノズル列La,Lbのうちの何番目のノズルNa,Nbからインクを吐出させるといったノズル制御データが作成される。
【0168】
そして、上記錠剤検査処理(ステップS21)を経た錠剤5が、搬送ベルト55C(搬送ベルト72C)の移動に伴い、さらに搬送され、第四ポジションP4又は第五ポジションP5(第十ポジションP10又は第十一ポジションP11)のうち、現在、印刷位置にあり使用されている第一印刷ヘッド58A又は第二印刷ヘッド58B(第一印刷ヘッド83A又は第二印刷ヘッド83B)のいずれかに対応する位置に到達する所定のタイミングとなると、第一印刷装置58(第二印刷装置83)は、上記ノズル制御データに基づき、対応する第一印刷ヘッド58A又は第二印刷ヘッド58B(第一印刷ヘッド83A又は第二印刷ヘッド83B)を作動させ、所定のノズルNa,Nbから所定のタイミングでインクを吐出する。
【0169】
これにより、第四ポジションP4又は第五ポジションP5(第十ポジションP10又は第十一ポジションP11)を通過する錠剤5の非吸着面側の所定位置に印刷が施され、印刷部5Gが形成される。尚、各ノズルNa,Nbからのインクの吐出タイミングは、錠剤5の搬送速度と同期しており、搬送中の錠剤5に対し正確に印刷処理を施すことができる。
【0170】
次いで、ステップS23において印刷検査処理が行われる。かかる処理を行う工程が本実施形態における「印刷状態把握工程」に相当する。
【0171】
ここでは、第一吸着ベルト55(第二吸着ベルト72)により吸着搬送されている錠剤5の印刷部5Gを、第一印刷検査装置59(第二印刷検査装置84)によって撮像し検査する。
【0172】
より詳しくは、搬送ベルト55C(搬送ベルト72C)の移動に伴い、錠剤5が第六ポジションP6(第十二ポジションP12)を通過する所定のタイミングで、第一印刷検査装置59のカメラ59a(第二印刷検査装置84のカメラ84a)を作動させる。
【0173】
これにより、第一印刷検査装置59(第二印刷検査装置84)は、第一吸着ベルト55(第二吸着ベルト72)によって吸着搬送されて第六ポジションP6(第十二ポジションP12)を通過する錠剤5の非吸着面(印刷面)を撮像する。
【0174】
続いて、第一印刷検査装置59(第二印刷検査装置84)は、カメラ59a(カメラ84a)により得られた画像データに二値化処理を施すことにより印刷部5Gの領域を抽出し、印刷部5Gの状態を把握する画像処理を行う。そして、第一印刷検査装置59(第二印刷検査装置84)は、ここで取得された印刷部5Gの二値化画像データを自身の記憶部に記憶すると共に、第一印刷装置58(第二印刷装置83)へ出力する。
【0175】
次いで、ステップS24において印刷良否判定処理が行われる。ここで、第一印刷検査装置59(第二印刷検査装置84)は、例えば上記印刷検査処理(ステップS23)で得られた印刷部5Gの二値化画像データと、予め自身の記憶部に設定された良否判定基準データと比較する等して、印刷部5Gの良否判定を行う。かかる良否判定結果は、自身の出力部を介して制御装置91へと出力される。
【0176】
ここで印刷不良と判定された場合(ステップS24:NO)には、ステップS31へ移行する。一方、印刷不良ではないと判定された場合(ステップS24:YES)には、ステップS25へ移行する。
【0177】
ステップS25においては、目詰まり記憶処理が行われる。ここで、第一印刷装置58(第二印刷装置83)は、まず上記印刷検査処理(ステップS23)で得られた印刷部5Gの二値化画像データと、該印刷部5Gを印刷する際に使用した上記ノズル制御データ(選択されたノズルNa,Nb等)との関係から、印刷部5Gにおいて空白ラインとなったドット抜け位置を特定することにより、目詰まりしたノズルNa,Nbの位置(番号)を特定し記憶する。
【0178】
従って、この目詰まり記憶処理(ステップS25)を実行する工程が本実施形態における「目詰まり特定工程」及び「目詰まり位置記憶工程」に相当し、この目詰まり記憶処理(ステップS25)を実行する機能により「目詰まり特定手段」が構成されることとなる。
【0179】
詳しくは、図9(a),(b)に示すように、第一印刷装置58(第二印刷装置83)の記憶部には、目詰まり位置記憶手段としての目詰まり位置記憶テーブル100が設けられている。
【0180】
目詰まり位置記憶テーブル100は、ノズル列Laのm個のノズルNa(Na1,Na2,Na3,Na4,Na5,・・・,Nam)、及び、ノズル列Lbのm個のノズルNb(Nb1,Nb2,Nb3,Nb4,NB5,・・・,Nbm)に対応する2m個の記憶領域を有している。そして、これら各ノズルNa,Nbに対応する記憶領域に対し、それぞれ該ノズルNa,Nbの状態が記憶されている。
【0181】
例えば図9(a)に示すように、すべてのノズルNa,Nbが目詰まりしていない場合には、目詰まり位置記憶テーブル100の2m個の記憶領域すべてに「0」が記憶されている。一方、図9(b)に示すように、ノズル列Lbの1番目のノズルNb1が目詰まりした場合には、該ノズルNb1に対応する記憶領域に「1」が記憶される。
【0182】
尚、ここで目詰まり位置記憶テーブル100の各記憶領域に記憶された目詰まり位置を示す値「1」は、後述するステップS30のクリーニング処理が行われるまではリセットされることなく累積的に記憶されていく。
【0183】
これに限らず、一旦、目詰まりした判断され、目詰まり位置記憶テーブル100の記憶領域に「1」が記憶されたノズルNa,Nbに対応する印刷部位から、その後、クリーニング処理が行われるまでの間に空白ラインが検出されなくなった場合には、目詰まりが解消したとみなし、該ノズルNa,Nbに係る記憶領域の値を「0」にリセットする構成としてもよい。
【0184】
続いて、ステップS26において、目詰まり位置記憶テーブル100に対し、新たに目詰まりしたノズルNa,Nbが累積記憶されたか否かを判定する。ここで、新たに目詰まりしたノズルNa,Nbがある場合には、ステップS27へ移行し、新たに目詰まりしたノズルNa,Nbがない場合には、そのまま、本印刷工程を終了する。
【0185】
次いで、ステップS27において印刷状態予測処理が行われる。かかる処理を実行する工程が本実施形態における「印刷状態予測工程」に相当し、かかる処理を実行する機能により本実施形態における「印刷状態予測手段」が構成される。
【0186】
ここで、第一印刷装置58(第二印刷装置83)は、まず自身の記憶部に登録された上記360通りの印刷データ、及び、目詰まり位置記憶テーブル100に記憶された目詰まりした全てのノズルNa,Nbの位置情報を基に、錠剤5が搬送方向に直交する方向(Y方向)の所定範囲内で所定量ずつ(例えば1画素ずつ)位置ずれし、かつ所定角度ずつ(例えば1度ずつ)姿勢変化した場合の全てのケースについて、該錠剤5に印刷形成され得る印刷部5Gの印刷状態を示す印刷予測データを作成する。
【0187】
続いて、ステップS28において判読可否判定処理が行われる。かかる処理を実行する工程が本実施形態における「判定工程」に相当し、かかる処理を実行する機能により本実施形態における「判定手段」が構成される。
【0188】
本実施形態では、ここで、第一印刷装置58(第二印刷装置83)は、上記印刷状態予測処理(ステップS27)にて作成された前記全てのケースの印刷予測データの中で、印刷部5Gにおいてドット抜けとなる空白ラインが3ライン以上生じる印刷予測データがあるか否かを判定する。
【0189】
そして、ここで空白ラインが3ライン以上生じる印刷予測データがある場合(ステップS28:YES)には、ステップS29へ移行する。一方、空白ラインが3ライン以上生じる印刷予測データがないと判定された場合(ステップS28:NO)には、そのまま本印刷工程を終了する。
【0190】
例えば図11(a)に示すように、ノズル列Laの16番目のノズルNa16が目詰まりして、空白ラインB1が生じている場合や、図11(b)に示すように、ノズル列Laの16番目のノズルNa16に加えて、新たにノズル列Lbの5番目のノズルNb5が目詰まりして、空白ラインB1,B2が生じている場合には、ステップS28において、空白ラインが3ライン以上生じる印刷予測データがないと判定され、そのまま本印刷工程を終了する。
【0191】
一方、図11(c)に示すように、ノズル列Laの16番目のノズルNa16、及び、ノズル列Lbの5番目のノズルNb5に加えて、新たにノズル列Laの7番目のノズルNa7が目詰まりして、空白ラインB1,B2,B3が生じている場合には、ステップS28において、空白ラインが3ライン以上生じる印刷予測データがあると判定され、ステップS29へ移行する。尚、図の簡素化のため、図10図11においては、各錠剤5の割線5Fを省略して示し、図11においては、搬送方向に直交する方向(Y方向)における錠剤5の位置ずれのない状態を示している。
【0192】
次いで、ステップS29において印刷ヘッド切換処理が行われる。かかる印刷ヘッド切換処理は、印刷処理を行う印刷ヘッドを切換える処理である。従って、かかる処理を実行する機能により本実施形態におけるヘッド切換手段が構成される。
【0193】
ここで、第一印刷装置58(第二印刷装置83)は、まず現在、印刷位置にあり使用している第一印刷ヘッド58A又は第二印刷ヘッド58B(第一印刷ヘッド83A又は第二印刷ヘッド83B)の一方を待機位置へ退避させる。
【0194】
続いて、現在、待機位置にあり使用していない第一印刷ヘッド58A又は第二印刷ヘッド58B(第一印刷ヘッド83A又は第二印刷ヘッド83B)の他方を印刷位置へ移動する。
【0195】
切換後は、一方の印刷ヘッドによる印刷処理が停止されるとともに、他方の印刷ヘッドによる印刷処理が可能な状態となる。
【0196】
続いて、ステップS30において、クリーニング処理が行われる。かかる処理を行う工程が本実施形態における「クリーニング工程」に相当する。
【0197】
ここで、第一印刷装置58(第二印刷装置83)は、待機位置へ移動した第一印刷ヘッド58A又は第二印刷ヘッド58B(第一印刷ヘッド83A又は第二印刷ヘッド83B)の前記クリーニング機構を駆動させ、ノズルNa,Nbの内部に詰まった塵埃や増粘又は固形化したインク等を外部に排出する加圧パージを行うと共に、前記ワイピング機構によってパージ後の印刷ヘッド58A,58Bを拭く。
【0198】
また、第一印刷装置58(第二印刷装置83)は、クリーニング処理の終了後、目詰まり位置記憶テーブル100の各記憶領域に記憶された値を「0」にリセットする。その後、本印刷工程を終了する。
【0199】
さて、上記ステップS24から移行するステップS31の不良排出処理では、第一印刷検査装置59(第二印刷検査装置84)により得られた検査結果に基づき、印刷不良判定された錠剤5を排出する処理を行う。
【0200】
詳しくは、第一印刷検査装置59(第二印刷検査装置84)により印刷不良判定された錠剤5に関しては、該錠剤5が第七ポジションP7の不良品収納部75(第十三ポジションP13の不良品収納部76)に対応する位置へ移動したタイミングで、該錠剤5を吸着する吸着孔55E(吸着孔72E)に向けてエアーを吹き付けるように、不良品収納部75(不良品収納部76)に対応する前記ブロー機構を動作させる。これにより、印刷不良判定された錠剤5は、吸着が解除されて第一吸着ベルト55(第二吸着ベルト72)から落下し、不良品収納部75(不良品収納部76)へと収納される。その後、本印刷工程を終了する。
【0201】
以上詳述したように、本実施形態に係る充填工程においては、第一吸着ベルト55によって錠剤5を吸着搬送しつつ該錠剤5の一方面に印刷が施された後、第二吸着ベルト72によって錠剤5を吸着搬送しつつ該錠剤5の他方面に非接触で印刷が施され、その後、該錠剤5が容器フィルム3のポケット部2に充填される。
【0202】
また、錠剤5の印刷工程においては、錠剤5に印刷形成された印刷部5Gの印刷状態から、目詰まりしたノズルNa,Nbの位置を特定し、該ノズルNa,Nbの目詰まり位置に基づき、錠剤5に印刷され得る印刷部5Gの印刷状態を予測し、該予測された印刷部5Gの印刷状態が所定条件を満たさない場合に、第一印刷ヘッド58A等のクリーニングを実施する構成となっている。
【0203】
これにより、印刷不良が発生する前に第一印刷ヘッド58A等のクリーニングを実施することが可能となり、印刷不良の発生を著しく抑制することができる。また、印刷ヘッドのクリーニングを所定時間経過する毎に定期的に行う構成などと比較して、クリーニング頻度を低減し、生産性の低下抑制を図ることができる。
【0204】
さらに、本実施形態では、第一印刷装置58(第二印刷装置83)において、第一印刷ヘッド58A及び第二印刷ヘッド58B(第一印刷ヘッド83A及び第二印刷ヘッド83B)を備えている。これにより、印刷ヘッドのクリーニングを行うタイミングで印刷ヘッドの切換えを行い、一方の印刷ヘッドのクリーニング中に他方の印刷ヘッドで印刷を実施することが可能となる。
【0205】
結果として、一方の印刷ヘッドのクリーニング中においても、印刷処理を中断することなく印刷処理を継続することができ、生産性の低下抑制を図ることができる。ひいては、不良品の発生や、容器フィルム3及びカバーフィルム4の包材ロス等を低減することができる。
【0206】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0207】
(a)上記実施形態では、錠剤5として、平面視円形状をなす円盤状の素錠(円盤形状の平錠)が例示されているが、錠剤の種別や形状等については、上記実施形態に限定されるものではない。
【0208】
例えば錠剤には、医薬のみならず、飲食用に用いられる錠剤なども含まれる。また、錠剤には、素錠のみならず、糖衣錠やフィルムコーティング錠、口腔内崩壊錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠などが含まれるのは勿論のこと、硬カプセルや軟カプセルなどの各種カプセル錠なども含まれる。
【0209】
さらに、錠剤の形状に関しては、例えば平面視円形状のみならず、平面視多角形状、平面視楕円形状、平面視長円形状等であってもよい。加えて、上記実施形態では、割線5Fが、錠剤5の表面5Bにのみ刻設され、裏面5Cには刻設されていない構成となっているが、これに代えて、表面5B及び裏面5Cの両面に割線5Fが刻設された構成としてもよい。勿論、錠剤5の表面5B及び裏面5Cの両面に割線5Fを備えない構成であってもよい。
【0210】
また、印刷部5Gに関して、上記実施形態では、錠剤5の表面5B及び裏面5Cの両面において同一の内容が印刷されているが、これに限らず、表面5B及び裏面5Cにおいて異なる内容が印刷される構成としてもよい。また、上記実施形態では、印刷部5Gが、錠剤5の表面5B及び裏面5Cの双方に設けられているが、表面5B及び裏面5Cのうちの一方のみに印刷部5Gを設ける構成としてもよい。
【0211】
また、ワークの種別は、錠剤に限定されるものではなく、例えば食品や電子部品等がワークとして充填される構成であってもよい。勿論、これらのワークに対応して形成されるポケット部2の形状や大きさ等に関しても上記実施形態に限定されるものではない。
【0212】
(b)製造されるPTPシートの構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えばPTPシート1単位のポケット部2の配列や個数は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、3列12個のポケット部2を有するタイプをはじめ、様々な配列、個数からなるPTPシートを採用することができる。
【0213】
また、上記実施形態において、PTPフィルム6は、その幅方向に沿って1シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成となっているが、これに限定されるものではなく、例えば、その幅方向に沿って複数シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成であってもよい。
【0214】
また、容器フィルム3やカバーフィルム4の材質等の構成に関しても、上記実施形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
【0215】
(c)搬送手段の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、第一印刷システム56(第二印刷システム81)に対応する搬送手段として第一吸着ベルト55(第二吸着ベルト72)を用いているが、これに限らず、例えばロータリドラムなどを用いた構成としてもよい。
【0216】
(d)印刷手段の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態に係る第一印刷装置58(第二印刷装置83)は、2つの第一印刷ヘッド58A及び第二印刷ヘッド58B(第一印刷ヘッド83A及び第二印刷ヘッド83B)を備えている。これに限らず、例えば各印刷装置58,83が1つ又は3つ以上の印刷ヘッドを備えた構成としてもよい。
【0217】
但し、印刷ヘッドを1つしか備えない場合には、搬送する錠剤5を所定時間(例えば5秒間)停留可能なバッファ手段を搬送手段に備えることが好ましい。尚、かかる機能を有するバッファ手段には、公知の任意の構成を採用することができる。
【0218】
尚、印刷ヘッドを1つしか備えない場合や、複数の印刷ヘッドの切換時に印刷処理を実行できない期間がある場合には、印刷処理を実行できない期間中に印刷ヘッドを通過した未印刷の錠剤5を回収する構成としてもよい。
【0219】
(e)印刷ヘッドの構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態に係る第一印刷ヘッド58A及び第二印刷ヘッド58B(第一印刷ヘッド83A及び第二印刷ヘッド83B)は、それぞれ2列のノズル列La,Lbを備えた構成となっている。これに限らず、1列又は3列以上のノズル列を備えた構成としてもよい。
【0220】
また、上記実施形態の印刷ヘッド58A,58B(印刷ヘッド83A,83B)に係るクリーニング機構は、ノズルNa,Nbの内部に詰まった塵埃やインク等を加圧パージにより取り除く構成となっているが、これに限らず、吸引パージにより取り除く構成としてもよい。
【0221】
また、上記実施形態では、第一印刷ヘッド58A又は第二印刷ヘッド58B(第一印刷ヘッド83A又は第二印刷ヘッド83B)を待機位置へ移動した後、ステップS30に係るクリーニング処理を行う構成となっているが、これには、待機位置へ移動した直後に行う場合だけでなく、再び第一印刷ヘッド58A又は第二印刷ヘッド58B(第一印刷ヘッド83A又は第二印刷ヘッド83B)が印刷位置へ戻る直前に行われる場合も含まれる。
【0222】
勿論、待機位置へ移動した直後と、印刷位置へ移動する直前の両タイミングでクリーニング処理を行う構成としてもよい。但し、印刷処理に使用されない待機期間が長い場合には、待機中にノズルNa,Nbが目詰まりしてしまうおそれがあるため、前記両タイミングのうち、少なくとも印刷位置へ移動する直前にクリーニング処理が行われる構成とすることが好ましい。
【0223】
(f)第一印刷システム56に係る第一錠剤検査装置57、第一印刷装置58及び第一印刷検査装置59において行われる各種画像処理や判定処理、並びに、第二印刷システム81に係る第二錠剤検査装置82、第二印刷装置83及び第二印刷検査装置84において行われる各種画像処理や判定処理を制御装置91が行う構成としてもよい。
【0224】
(g)上記実施形態では、印刷ヘッドのクリーニングを開始する所定条件が成立した否かを判定するステップS28の判読可否判定処理において、多数の印刷予測データの中で、印刷部5Gにおいてドット抜けとなる空白ラインが3ライン以上生じる印刷予測データがあるか否かを判定する構成となっているが、印刷予測データの判読可否判定基準は、これに限定されるものではない。
【0225】
例えば判読可否判定基準データを予め登録しておき、これらと印刷予測データとを比較して、判読可否判定を行う構成としてもよい。例えば、図14(a)に示すように、2本の空白ラインB11,B12だけしか生じていない場合であっても、文字等として認識できない又は誤読のおそれがある場合には、これを不良品データとして予め登録しておき、これに一致する場合は、印刷不良として取り扱う構成としてもよい。
【0226】
一方、図14(b)に示すように、3本の空白ラインB21,B22,B23生じている場合であっても、文字等として認識可能である又は誤読のおそれがない場合には、これを良品データとして予め登録しておき、これに一致する場合は、良品として取り扱う構成としてもよい。
【0227】
また、AI(人工知能)等を用いて過去の良品印刷と不良品印刷を学習する機械学習機能を備え、例えばドット抜けとなる空白部の総数、連続性、パターンなどを考慮して判読可否判定基準データを作成し、これを基にAI機能やOCR(光学文字認識)機能等を用いて印刷部5Gの判読可否や不良品印刷の検出、印刷ヘッドのクリーニング開始時期の判断などを行う構成としてもよい。
【0228】
(h)上記実施形態では、多数の印刷予測データの中で、印刷部5Gにおいてドット抜けとなる空白ラインが3ライン以上生じる印刷予測データが1つでもある場合には、印刷ヘッドのクリーニング処理を実行する構成となっている。
【0229】
これに限らず、仮に所定の錠剤5に対し印刷を行った場合には、空白ラインが3ライン以上生じ得る又は印刷不良が生じ得ると予測し、クリーニング処理が必要であると判断された場合であっても、他の錠剤5の状態によっては、空白ラインが3ライン以上生じない印刷部5Gを形成できる場合がある。
【0230】
かかる場合には、印刷ヘッドのクリーニング処理に移行することなく、そのまま印刷工程を継続し、空白ラインが3ライン以上生じると予測された錠剤5に対してのみ印刷処理を実行せず、該錠剤5を印刷部5G未形成の状態で回収する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0231】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤、5B…表面、5C…裏面、5F…割線、5G…印刷部、10…PTP包装機、15…加熱装置、16…ポケット部形成装置、20…フィルム受けロール、21…錠剤印刷充填装置、25…加熱ロール、37…シート打抜装置、51…上流側機構部、55…第一吸着ベルト、56…第一印刷システム、57…第一錠剤検査装置、58…第一印刷装置、58A…第一印刷ヘッド、58B…第二印刷ヘッド、59…第一印刷検査装置、71…下流側機構部、72…第二吸着ベルト、81…第二印刷システム、82…第二錠剤検査装置、83…第二印刷装置、83A…第一印刷ヘッド、83B…第二印刷ヘッド、84…第二印刷検査装置、100…目詰まり位置記憶テーブル、La,Lb…ノズル列、Na,Nb…ノズル。
図1
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