(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】電磁比例弁
(51)【国際特許分類】
F16K 11/065 20060101AFI20220502BHJP
F16K 11/07 20060101ALI20220502BHJP
F16K 3/26 20060101ALI20220502BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
F16K11/07 J
F16K11/07 C
F16K3/26 A
F16K31/06 305L
(21)【出願番号】P 2019509156
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2018009207
(87)【国際公開番号】W WO2018180367
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017061439
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕平
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-038034(JP,U)
【文献】実開昭60-085676(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00- 3/36
F16K 11/00-11/24
F16K 31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在する弁孔と、圧油を供給する油圧源に連通するとともに前記弁孔に開口する入口ポートと、前記圧油が排出される排液部に連通するとともに前記弁孔に開口する出口ポートと、前記圧油の供給対象に連通するとともに前記弁孔に開口する出力ポートと、を有する弁本体と、
前記弁孔において前記軸方向へスライド可能に配置されるスプール本体であって、前記軸方向に延在するスプール孔と、前記スプール孔に開口する連絡孔、出口孔、入口孔及び出力孔と、を有するスプール本体と、
前記軸方向のうち順方向へ前記スプール本体を押圧する駆動部であって、印加される電流に応じて前記スプール本体に対する押圧力が可変である駆動部と、
前記軸方向のうち前記順方向に対向する逆方向へ前記スプール本体を付勢する付勢部と、を備え、
前記出力孔は、前記出力ポートに連通し、
前記弁孔は、前記軸方向と垂直な径方向に関して第1の径を有する大径孔部と、前記径方向に関して前記第1の径よりも小さな第2の径を有する小径孔部とを含み、
前記大径孔部には前記スプール本体の一端側が配置され、前記小径孔部には前記スプール本体の他端側が配置され、
前記大径孔部は前記連絡孔及び前記出力孔のうちの一方を介して前記スプール孔に連通し、前記小径孔部は前記連絡孔及び前記出力孔のうちの他方を介して前記スプール孔に連通し、
前記弁孔及び前記スプール孔に充填された前記圧油から前記順方向に力を受ける前記スプール本体の表面積は、当該圧油から前記逆方向に力を受ける前記スプール本体の表面積と異なって
おり、
前記出口孔及び前記入口孔は、前記軸方向に関して、前記連絡孔と前記出力孔との間に配置される電磁比例弁。
【請求項2】
前記スプール本体は、前記一端側及び前記他端側のうちの一方が前記駆動部によって押圧され、前記一端側及び前記他端側のうちの他方において前記出力孔を有する請求項1に記載の電磁比例弁。
【請求項3】
前記出力孔は、前記軸方向に開口する請求項1又は2に記載の電磁比例弁。
【請求項4】
前記スプール本体は、
前記駆動部に電流が印加されない場合又は前記駆動部に第1の電流が印加される場合には、前記スプール孔が前記出口孔を介して前記出口ポートに連通する第1のスライド位置に配置され、
前記第1の電流よりも大きな第2の電流が前記駆動部に印加される場合には、前記スプール孔が前記入口孔を介して前記入口ポートに連通する第2のスライド位置に配置される請求項1~
3のいずれか一項に記載の電磁比例弁。
【請求項5】
前記弁本体は、前記圧油が排出されるドレーン部に連通するとともに前記弁孔に開口するドレーンポートを更に有し、
前記大径孔部は、前記小径孔部よりも前記軸方向の前記順方向側に配置され、
前記スプール本体は、前記小径孔部に対応する外径を有する小径スプール部であって少なくとも一部が前記小径孔部に配置される小径スプール部と、前記小径スプール部に対して前記順方向側に配置される大径スプール部であって前記大径孔部に対応する外径を有し前記大径孔部に配置される大径スプール部と、を有し、
前記大径孔部のうち、前記小径スプール部、前記大径スプール部及び前記弁本体によって囲まれる空間は、前記ドレーンポートに連通する請求項
4に記載の電磁比例弁。
【請求項6】
前記スプール本体は、前記弁孔及び前記スプール孔に充填された前記圧油から前記軸方向の前記逆方向に力を受け、
前記第1のスライド位置に配置されたスプール本体は、前記第2のスライド位置に配置されたスプール本体よりも、前記軸方向の前記逆方向側に位置する請求項
4又は
5に記載の電磁比例弁。
【請求項7】
前記スプール本体は、
前記駆動部に電流が印加されない場合又は前記駆動部に第1の電流が印加される場合には、前記スプール孔が前記入口孔を介して前記入口ポートに連通する第1のスライド位置に配置され、
前記第1の電流よりも大きな第2の電流が前記駆動部に印加される場合には、前記スプール孔が前記出口孔を介して前記出口ポートに連通する第2のスライド位置に配置される請求項1~
3のいずれか一項に記載の電磁比例弁。
【請求項8】
前記弁本体は、前記圧油が排出されるドレーン部に連通するとともに前記弁孔に開口するドレーンポートを更に有し、
前記小径孔部は、前記大径孔部よりも前記軸方向の前記順方向側に配置され、
前記スプール本体は、前記大径孔部に対応する外径を有する大径スプール部であって前記大径孔部に配置される大径スプール部と、前記大径スプール部に対して前記順方向側に隣り合って配置される小径スプール部であって前記小径孔部に対応する外径を有し少なくとも一部が前記小径孔部に配置される小径スプール部と、を有し、
前記大径孔部のうち、前記小径スプール部、前記大径スプール部及び前記弁本体によって囲まれる空間は、ドレーンポートに連通する請求項
7に記載の電磁比例弁。
【請求項9】
前記スプール本体は、前記弁孔及び前記スプール孔に充填された前記圧油から前記軸方向の前記順方向に力を受け、
前記第1のスライド位置に配置されたスプール本体は、前記第2のスライド位置に配置されたスプール本体よりも、前記軸方向の前記逆方向側に位置する請求項
7又は
8に記載の電磁比例弁。
【請求項10】
前記第1の電流よりも大きく且つ前記第2の電流よりも小さい第3の電流が前記駆動部に印加される場合、前記スプール本体は、前記スプール孔が前記入口ポート及び前記出口ポートの両者から遮断される第3のスライド位置に配置される請求項
4~
9のいずれか一項に記載の電磁比例弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁比例弁に関する。
【背景技術】
【0002】
励磁電流に応じて圧油の供給圧を制御できる電磁比例弁として、スプール式の電磁比例弁が知られている。スプール式の電磁比例弁では、弁本体内にスライド自在に配置されたスプール本体と、電磁駆動式のプランジャーとが組み合わされている。励磁電流の印加に応じてプランジャーがスプール本体を押圧し、弁本体に対するスプール本体の位置が調整され、弁本体に形成された各流路に対する圧油の供給及び排出が制御される。そのためスプール本体に作用する油圧が大きくなるほど、プランジャーからスプール本体に加えられる力を大きくする必要がある。そのような大きな力を得るために、プランジャーを電磁駆動するソレノイドアクチュエータを大型化することが考えられるが、ソレノイドアクチュエータの大型化は製造コストの増大や設置スペースの拡大という不利益を招く。
【0003】
一方、特許文献1が開示する電磁比例弁では、スプールに受圧面積差が設けられており、出口側の油圧力が受圧面積差及び比例ソレノイドの推力によって決定される。そのため特許文献1の電磁比例弁は、油圧力を増大させるために必要な比例ソレノイドの推力の増大を抑えることができ、小さな比例ソレノイドを用いて高圧の油圧出力を得ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように特許文献1の電磁比例弁では小さなソレノイドを用いて高圧の油圧出力を得ることができるが、入口ポート、出口ポート及びドレーンポートをスプール軸線方向へ並べて配置する必要がある。そのため特許文献1の電磁比例弁は、これらのポートを設けるのに十分な軸長を有する必要があり、軸方向長さを短縮化してコンパクトに構成することが難しい。
【0006】
また特許文献1の電磁比例弁では、出口ポートを入口ポートとドレーンポートとの間に設ける必要があるため、軸方向に関する出口ポートの位置が制限されるとともに、出口ポートは必然的に軸方向と垂直な径方向に開口させられる。したがって特許文献1の電磁比例弁を用いる場合、出口ポートの設置に関するこれらの制限下で、出口ポートに連通する油圧アクチュエータを配置する必要があり、装置レイアウトの面で不利である。
【0007】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、コンパクトに構成される電磁比例弁を提供することを目的とする。また、装置レイアウトの面で有利な電磁比例弁を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、軸方向に延在する弁孔と、圧油を供給する油圧源に連通するとともに弁孔に開口する入口ポートと、圧油が排出される排液部に連通するとともに弁孔に開口する出口ポートと、圧油の供給対象に連通するとともに弁孔に開口する出力ポートと、を有する弁本体と、弁孔内において軸方向へスライド可能に配置されるスプール本体であって、軸方向に延在するスプール孔と、スプール孔に開口する連絡孔、出口孔、入口孔及び出力孔と、を有するスプール本体と、軸方向のうち順方向へスプール本体を押圧する駆動部であって、印加される電流に応じてスプール本体に対する押圧力が可変である駆動部と、軸方向のうち順方向に対向する逆方向へスプール本体を付勢する付勢部と、を備え、出力孔は、出力ポートに連通し、弁孔は、軸方向と垂直な径方向に関して第1の径を有する大径孔部と、径方向に関して第1の径よりも小さな第2の径を有する小径孔部とを含み、大径孔部にはスプール本体の一端側が配置され、小径孔部にはスプール本体の他端側が配置され、大径孔部は連絡孔及び出力孔のうちの一方を介してスプール孔に連通し、小径孔部は連絡孔及び出力孔のうちの他方を介してスプール孔に連通し、弁孔及びスプール孔に充填された圧油から順方向に力を受けるスプール本体の表面積は、当該圧油から逆方向に力を受けるスプール本体の表面積と異なっている電磁比例弁に関する。
【0009】
スプール本体は、一端側及び他端側のうちの一方が駆動部によって押圧され、一端側及び他端側のうちの他方において出力孔を有してもよい。
【0010】
出力孔は、軸方向に開口してもよい。
【0011】
出口孔及び入口孔は、軸方向に関して、連絡孔と出力孔との間に配置されてもよい。
【0012】
スプール本体は、駆動部に電流が印加されない場合又は駆動部に第1の電流が印加される場合には、スプール孔が出口孔を介して出口ポートに連通する第1のスライド位置に配置され、第1の電流よりも大きな第2の電流が駆動部に印加される場合には、スプール孔が入口孔を介して入口ポートに連通する第2のスライド位置に配置されてもよい。
【0013】
弁本体は、圧油が排出されるドレーン部に連通するとともに弁孔に開口するドレーンポートを更に有し、大径孔部は、小径孔部よりも軸方向の順方向側に配置され、スプール本体は、小径孔部に対応する外径を有する小径スプール部であって少なくとも一部が小径孔部に配置される小径スプール部と、小径スプール部に対して順方向側に配置される大径スプール部であって大径孔部に対応する外径を有し大径孔部に配置される大径スプール部と、を有し、大径孔部のうち、小径スプール部、大径スプール部及び弁本体によって囲まれる空間は、ドレーンポートに連通してもよい。
【0014】
スプール本体は、弁孔及びスプール孔内に充填された圧油から軸方向の逆方向に力を受け、第1のスライド位置に配置されたスプール本体は、第2のスライド位置に配置されたスプール本体よりも、軸方向の逆方向側に位置してもよい。
【0015】
スプール本体は、駆動部に電流が印加されない場合又は駆動部に第1の電流が印加される場合には、スプール孔が入口孔を介して入口ポートに連通する第1のスライド位置に配置され、第1の電流よりも大きな第2の電流が駆動部に印加される場合には、スプール孔が出口孔を介して出口ポートに連通する第2のスライド位置に配置されてもよい。
【0016】
弁本体は、圧油が排出されるドレーン部に連通するとともに弁孔に開口するドレーンポートを更に有し、小径孔部は、大径孔部よりも軸方向の順方向側に配置され、スプール本体は、大径孔部に対応する外径を有する大径スプール部であって大径孔部に配置される大径スプール部と、大径スプール部に対して順方向側に隣り合って配置される小径スプール部であって小径孔部に対応する外径を有し少なくとも一部が小径孔部に配置される小径スプール部と、を有し、大径孔部のうち、小径スプール部、大径スプール部及び弁本体によって囲まれる空間は、ドレーンポートに連通してもよい。
【0017】
スプール本体は、弁孔及びスプール孔内に充填された圧油から軸方向の順方向に力を受け、第1のスライド位置に配置されたスプール本体は、第2のスライド位置に配置されたスプール本体よりも、軸方向の逆方向側に位置してもよい。
【0018】
第1の電流よりも大きく且つ第2の電流よりも小さい第3の電流が駆動部に印加される場合、スプール本体は、スプール孔が入口ポート及び出口ポートの両者から遮断される第3のスライド位置に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、連絡孔及び出力孔のうちの一方を介して大径孔部がスプール孔に連通し、他方を介して小径孔部がスプール孔に連通する。これにより、連絡孔及び出力孔を必ずしも径方向に開口させる必要がない。また、連絡孔及び出力孔を必ずしもスプール本体の軸線方向に並べて配置する必要がない。したがって、電磁比例弁をコンパクトに構成することが可能になり、また装置レイアウトの面でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】
図1Aは、ポジティブタイプの電磁比例弁の概略構成を示す断面図である。
【
図1B】
図1Bは、ポジティブタイプの電磁比例弁の概略構成を示す断面図である。
【
図1C】
図1Cは、ポジティブタイプの電磁比例弁の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るポジティブタイプの電磁比例弁の具体例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、ネガティブタイプの電磁比例弁の概略構成を示す断面図である。
【
図3B】
図3Bは、ネガティブタイプの電磁比例弁の概略構成を示す断面図である。
【
図3C】
図3Cは、ネガティブタイプの電磁比例弁の概略構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係るネガティブタイプの電磁比例弁の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0022】
励磁電流に応じて圧油の供給圧を制御できる電磁比例弁は、油圧アクチュエータ等の油圧機器に接続され、所望圧の圧油を当該油圧機器に供給する。なお、ここで言う圧油は、必ずしも鉱物油等の油には限定されず、エネルギー伝達媒体として使用可能な流体(特に液体)全般を含みうる概念である。
【0023】
一般に、電磁比例弁には、ポジティブタイプの電磁比例弁と、ネガティブタイプの電磁比例弁とが存在する。励磁電流が増大するに従って、出力される圧油の圧力(すなわち油圧)が増大する電磁比例弁はポジティブタイプの電磁比例弁に分類され、出力される圧油の圧力が低下する電磁比例弁はネガティブタイプの電磁比例弁に分類される。
【0024】
本発明は、ポジティブタイプの電磁比例弁及びネガティブタイプの電磁比例弁のいずれにも応用可能である。以下では、まずポジティブタイプの電磁比例弁について説明し、その後、ネガティブタイプの電磁比例弁について説明する。
【0025】
[ポジティブタイプの電磁比例弁]
図1A~
図1Cは、ポジティブタイプの電磁比例弁10の概略構成を示す断面図である。
図1Aは、ソレノイドアクチュエータによって構成される駆動部13に対して励磁電流が流されていない非励磁状態を示す。
図1Bは、駆動部13に対して比較的小さな励磁電流が流され、スプール本体12が中立位置に配置されている状態を示す。
図1Cは、駆動部13に対して比較的大きな励磁電流が流されている状態を示す。
【0026】
図1A~
図1Cに示す電磁比例弁10は、弁本体11、スプール本体12、駆動部13及び付勢部14を備える。
【0027】
弁本体11は、軸方向Dxに延在する弁孔21と、当該弁孔21に開口する入口ポート31、出口ポート32、ドレーンポート33及び出力ポート34と、を有する。入口ポート31は圧油を供給する油圧源Pに連通し、出口ポート32は圧油が排出される排液部Tに連通する。ドレーンポート33は、圧油が排出されるドレーン部に連通する。
図1A~
図1Cに示す電磁比例弁10では排液部Tがドレーン部として働き、出口ポート32及びドレーンポート33は、共通の排液部T(すなわちドレーン部)に連通する。出力ポート34は、圧油の供給対象である油圧アクチュエータAに連通する。油圧アクチュエータAの具体的構成は限定されず、典型的には油圧シリンダや油圧モータによって油圧アクチュエータAが構成される。
【0028】
弁孔21は、軸方向Dxと垂直な径方向Drに関して第1の径H1を有する大径孔部22と、径方向Drに関して第1の径H1よりも小さな第2の径H2を有する小径孔部23と、を含む。大径孔部22は、小径孔部23と隣り合って設けられており、小径孔部23よりも順軸方向Dx1側に配置される。大径孔部22にはスプール本体12の一端側が配置され、小径孔部23にはスプール本体12の他端側が配置される。
図1A~
図1Cには、明確には示されていないが、大径孔部22及び小径孔部23の各々は閉じられた空間を形成し、油圧源Pから供給される圧油によって満たされる。なお大径孔部22は、出力ポート34(特に順軸方向Dx1へ開口する出力ポート34)を介して外部(特に本実施形態では油圧アクチュエータA)に連通する。
【0029】
大径孔部22のうち小径スプール部46、大径スプール部47及び弁本体11によって囲まれる空間であるドレーン空間24は、スプール本体12の軸方向Dxの位置に応じて容積が変わるが、スプール本体12の軸方向Dxの位置によらずドレーンポート33に連通する。そのため、スプール本体12の軸方向Dxの位置によらず、ドレーン空間24内の圧油はドレーンポート33を介して排液部Tに流出し、弁本体11及びスプール本体12はドレーン空間24内の圧油から圧力を受けない。
【0030】
スプール本体12は、弁孔21において軸方向Dxへスライド可能に配置される。スプール本体12の一端側(
図1A~
図1Cでは右側)は大径孔部22に配置され、スプール本体12の他端側(
図1A~
図1Cでは左側)は小径孔部23に配置される。大径孔部22に配置されるスプール本体12の一端側には、大径孔部22の径に対応する外径を有する大径スプール部47が設けられている。小径孔部23に配置されるスプール本体12の他端側には、小径孔部23の径に対応する外径を有する小径スプール部46が設けられている。このように大径スプール部47は、小径スプール部46に対して順軸方向Dx1側に隣り合って配置され、大径孔部22に配置される。また小径スプール部46は、少なくとも一部が小径孔部23に配置され、スプール本体12の軸方向Dxの位置に応じて小径スプール部46の一部が大径孔部22に配置される。
【0031】
大径スプール部47は、スプール本体12の軸方向Dxへのスライド移動を許容する程度に、弁本体11の内壁面(特に大径孔部22を形成する内壁面)に密着している。また小径スプール部46は、スプール本体12の軸方向Dxへのスライド移動を許容する程度に、弁本体11の内壁面(特に小径孔部23を形成する内壁面)に密着している。ただし弁孔21内の圧油は、基本的に、大径スプール部47と弁本体11との間及び小径スプール部46と弁本体11との間を通過しない。そのため、小径孔部23からドレーン空間24に圧油は流入せず、或いはごく小量の圧油のみが小径孔部23からドレーン空間24に流入する。同様に、大径孔部22からドレーン空間24に圧油は流入せず、或いはごく小量の圧油のみが大径孔部22からドレーン空間24に流入する。
【0032】
スプール本体12は、軸方向Dxに延在するスプール孔41と、スプール孔41に開口する連絡孔42、出口孔43、入口孔44及び出力孔45と、を有する。本実施形態では、連絡孔42及び出力孔45が、それぞれスプール本体12の両端部に形成され、出口孔43及び入口孔44が、スプール本体12のうちの連絡孔42と出力孔45との間の部分に形成されている。すなわち、スプール本体12の一端側及び他端側のうちの一方(
図1A~
図1Cでは大径スプール部47側)において出力孔45が形成され、他方(
図1A~
図1Cでは小径スプール部46側)において連絡孔42が形成されている。また、スプール本体12の大径スプール部47に出口孔43及び入口孔44が形成され、軸方向Dxに関して連絡孔42と出力孔45との間に出口孔43及び入口孔44が配置されている。
【0033】
連絡孔42、出口孔43及び入口孔44は、径方向Drに開口している。特に、連絡孔42は、小径孔部23に開口し、スプール本体12の軸方向Dxの位置によらず、小径孔部23とスプール孔41とを相互に連通させる。またスプール本体12の軸方向Dxの位置に応じて、出口孔43は出口ポート32又は弁本体11の内壁面(特に大径孔部22を形成する内壁面)に向かって開口し、入口孔44は入口ポート31又は弁本体11の内壁面(特に大径孔部22を形成する内壁面)に向かって開口する。
【0034】
一方、出力孔45は、軸方向Dx(
図1A~
図1Cでは順軸方向Dx1)に開口し、弁孔21(特に大径孔部22)を介して出力ポート34に連通する。出力ポート34を介して油圧アクチュエータAに接続される大径孔部22は、連絡孔42及び出力孔45のうちの一方(
図1A~
図1Cでは「出力孔45」)を介し、スプール孔41に連通する。また小径孔部23は、連絡孔42及び出力孔45のうちの他方(
図1A~
図1Cでは「連絡孔42」)を介してスプール孔41に連通する。したがって弁孔21における大径孔部22と小径孔部23とは、スプール孔41、連絡孔42及び出力孔45を介して相互に連通し、大径孔部22内の圧油の圧力、小径孔部23内の圧油の圧力、及び弁孔21内の圧油の圧力は相互に等しい。
【0035】
駆動部13は、軸方向Dxのうち順方向Dx1(以下「順軸方向Dx1」とも称する)へスプール本体12を押圧し、印加される電流(すなわち励磁電流)に応じてスプール本体12に対する押圧力が可変である。本実施形態の駆動部13は、電磁石(図示省略)及びプランジャー51が組み合わされたソレノイドアクチュエータによって構成されている。このソレノイドアクチュエータの具体的な構成は限定されず、プランジャー51からスプール本体12に加えられる押圧力が励磁電流の大きさに応じて決定される任意のソレノイドアクチュエータにより、駆動部13を構成することが可能である。
【0036】
付勢部14は、軸方向Dxのうち順方向Dx1に対向する逆方向Dx2(以下「逆軸方向Dx2」とも称する)へスプール本体12(本実施形態では大径スプール部47)を付勢する。スプール本体12の軸方向Dxの位置に応じて付勢部14からスプール本体12に加えられる力は変動し、スプール本体12が順軸方向Dx1側に配置される程、付勢部14からスプール本体12に加えられる力は大きくなる。このような付勢部14は、弾性体によって構成可能であり、典型的にはコイルばねによって構成される。コイルばねは、細長い線状の材料(すなわち素線)が螺旋状に巻かれることによって構成できる。
【0037】
このように、スプール本体12の一端側及び他端側のうちの一方(
図1A~
図1Cでは「小径スプール部46」側)は駆動部13のプランジャー51によって押圧され、駆動部13からスプール本体12には順軸方向Dx1への力が加えられる。またスプール本体12の一端側及び他端側のうちの他方(
図1A~
図1Cでは「大径スプール部47」側)は出力孔45が設けられるとともに付勢部14によって付勢され、付勢部14からスプール本体12には逆軸方向Dx2への力が加えられる。
【0038】
上述の構成を有するポジティブタイプの電磁比例弁10では、スプール本体12の両端部間に受圧面積差が設けられており、この受圧面積差に起因する油圧力、駆動部13の推進力及び付勢部14の付勢力を相互にバランスさせることによって、所望圧の圧油を出力孔45から油圧アクチュエータAに向かって送り出すことができる。
【0039】
すなわち、弁孔21及びスプール孔41に充填された圧油から順軸方向Dx1に力を受けるスプール本体12の表面積は、当該圧油から逆軸方向Dx2に力を受けるスプール本体12の表面積と異なっている。具体的には、圧油から逆軸方向Dx2に力を受けるスプール本体12の表面積の方が、圧油から順軸方向Dx1に力を受けるスプール本体12の表面積よりも大きい。
【0040】
そのため、スプール本体12に対して圧油が順軸方向Dx1に及ぼす力F1(すなわち油圧力)は、スプール本体12に対して圧油が逆軸方向Dx2に及ぼす力F2と異なっており、
図1A~
図1Cに示す電磁比例弁10では「F1<F2」の関係が成立する。したがってスプール本体12は、弁孔21及びスプール孔41に充填された圧油から逆軸方向Dx2に力を受ける。具体的には「F0=F2-F1={(圧油から逆軸方向Dx2に力を受けるスプール本体12の表面積)-(圧油から順軸方向Dx1に力を受けるスプール本体12の表面積)}×(圧油の圧力)」によって導き出される力F0が、圧油からスプール本体12に対して逆軸方向Dx2へ作用する。
【0041】
スプール本体12は、更に駆動部13のプランジャー51及び付勢部14からも力を受ける。弁孔21内及びスプール孔41内の圧油の圧力を「Ph」で表し、弁孔21内及びスプール孔41内の圧油から順軸方向Dx1に力を受けるスプール本体12の表面積S1と当該圧油から逆軸方向Dx2に力を受けるスプール本体12の表面積S2との差を「Up(=S2-S1)」で表し、駆動部13が順軸方向Dx1へスプール本体12に付与する力を「Fd」で表し、付勢部14が逆軸方向Dx2へスプール本体12に付与する力を「Fsp」で表した場合、以下の関係式1が成立する。
【0042】
[関係式1] Fd=Ph×Up+Fsp
【0043】
実際の電磁比例弁10では、上記の「Up」は基本的に固定値に設定される。また上記「Fsp」は、スプール本体12の軸方向Dxの位置に応じてスプール孔41及び弁孔21に対する圧油の供給及び排出が行われる本実施形態の電磁比例弁10では、ある範囲内の値をとる。そのため、上記関係式1からも明らかなように、駆動部13からスプール本体12に付与される力「Fd」の増大に伴って、弁孔21内及びスプール孔41内の圧油の圧力「Ph」も増大する。したがって、図示しない制御部によって駆動部13に印加する励磁電流値を制御し、駆動部13がスプール本体12に付与する力(Fd)を調整することによって、所望の圧力を有する圧油を、出力孔45から大径孔部22及び出力ポート34を介して油圧アクチュエータAに送り出すことができる。
【0044】
次に、上述のポジティブタイプの電磁比例弁10における挙動について説明する。
【0045】
駆動部13に電流が印加されない場合又は駆動部13に第1の電流が印加される場合には、スプール本体12は
図1Aに示す第1のスライド位置に配置される。この場合、スプール孔41は出口孔43を介して出口ポート32に連通し、スプール孔41内の圧油及び弁孔21内の圧油の圧力は低下する。
【0046】
また第1の電流よりも大きな第2の電流が駆動部13に印加される場合、スプール本体12は、駆動部13のプランジャー51により順軸方向Dx1へ押され、
図1Cに示す第2のスライド位置に配置される。この場合、スプール孔41は入口孔44を介して入口ポート31に連通し、油圧源Pからの圧油がスプール孔41に供給されるため、スプール孔41内の圧油及び弁孔21内の圧油の圧力は増大する。このように本実施形態の電磁比例弁10では、第1のスライド位置に配置されたスプール本体12(
図1A参照)が、第2のスライド位置に配置されたスプール本体12(
図1C参照)よりも、逆軸方向Dx2側に位置する。
【0047】
また第1の電流よりも大きく且つ第2の電流よりも小さい第3の電流が駆動部13に印加される場合、スプール本体12は、
図1Bに示す第3のスライド位置(すなわち中立位置)に配置される。この場合、出口孔43は出口ポート32と連通せず且つ入口孔44は入口ポート31と連通しない。これにより、スプール孔41が入口ポート31及び出口ポート32の両者から遮断され、スプール孔41内の圧油及び弁孔21内の圧油の圧力は、基本的に低下も増大もせずに維持される。
【0048】
このようにポジティブタイプの電磁比例弁10では、駆動部13に印加する励磁電流が小さくプランジャー51の推力がゼロ(0)又は弱い場合には、弁孔21内及びスプール孔41内の圧油が排液部Tに排出される量が増え、弁孔21内及びスプール孔41内の圧油の圧力は低下する。一方、駆動部13に印加する励磁電流が大きくプランジャー51の推力が強い場合には、油圧源Pから弁孔21内及びスプール孔41内に供給される圧油の量が増え、弁孔21内及びスプール孔41内の圧油の圧力は上昇する。そして、駆動部13に印加する励磁電流が中間的な範囲にありスプール本体12が
図1Bに示す中立位置に配置される場合には、弁孔21及びスプール孔41と油圧源P及び排液部Tとの間の流路は遮断され、弁孔21内及びスプール孔41内に対する圧油の供給及び排出は停止する。
【0049】
上述の挙動を示すポジティブタイプの電磁比例弁10は、以下のメカニズムに従って、所望圧の圧油が出力孔45から送り出される。
【0050】
すなわち図示しない制御部によって、圧油の所望圧に応じて予め定められた値の励磁電流が駆動部13に印加される。これにより、駆動部13のプランジャー51はスプール本体12を順軸方向Dx1へ移動させて第2のスライド位置(
図1C参照)に配置し、出口孔43と出口ポート32との間が遮断されるとともに入口孔44を入口ポート31に連通させる。そのため、油圧源Pからの圧油がスプール孔41及び弁孔21に供給され、スプール孔41内及び弁孔21内の圧油は圧力が上昇する。
【0051】
そして、駆動部13に印加される励磁電流の大きさが維持された状態でスプール孔41内及び弁孔21内の圧油の圧力が所望圧よりも大きくなると、スプール本体12が逆軸方向Dx2へスライド移動して第1のスライド位置(
図1A参照)に配置される。これにより、入口孔44と入口ポート31との間が遮断されるとともに出口孔43が出口ポート32に連通し、スプール孔41内及び弁孔21内の圧油は圧力が低下する。
【0052】
そして、駆動部13に印加される励磁電流の大きさが維持された状態でスプール孔41内及び弁孔21内の圧油の圧力が所望圧よりも小さくなると、スプール本体12が順軸方向Dx1へスライド移動して、再び第2のスライド位置(
図1C参照)に配置される。これにより、出口孔43と出口ポート32との間が遮断されるとともに入口孔44が入口ポート31に連通し、スプール孔41内の圧油の圧力は再び上昇する。
【0053】
このように、圧油の所望圧に応じて予め定められた値の励磁電流が駆動部13に対して継続的に印加された状態で、スプール本体12が第2のスライド位置(
図1C参照)と第1のスライド位置(
図1A参照)との間での移動を繰り返し行うことで、スプール孔41に対する圧油の供給及び排出が繰り返し行われる。これにより、スプール孔41内及び弁孔21内の圧油の圧力が所望圧に保たれ、所望圧の圧油が出力孔45から流出して油圧アクチュエータAに供給される。
【0054】
上述のように本実施形態の電磁比例弁10によれば、駆動部13に印加する励磁電流を制御することによって、油圧源P及び排液部Tに対する弁孔21及びスプール孔41の開度を調整し、出力孔45から油圧アクチュエータAに所望圧の圧油が送り出すことができる。なお、駆動部13に励磁電流を印加せず、且つ、スプール孔41内及び弁孔21内の圧油の圧力が高い場合には、スプール本体12が第1のスライド位置(
図1A参照)に配置され、スプール孔41内及び弁孔21内の圧油は、出口孔43及び出口ポート32を介して排液部Tに排出される。
【0055】
図2は、本発明の一実施形態に係るポジティブタイプの電磁比例弁10の具体例を示す図である。なお
図2に示す電磁比例弁10では、部分的に断面状態が示されている。
【0056】
スプール本体12は軸方向Dxに関して左右対称の構成を有するが、
図2に示すスプール本体12は左半分と右半分とで異なる状態が示されている。すなわち、
図2に示すスプール本体12の左半分は、中立位置(
図1B参照)にスプール本体12が配置された状態を示す。一方、
図2に示すスプール本体12の右半分は、入口ポート31と入口孔44との間が遮断され且つ出口孔43と出口ポート32とが相互に連通している第1のスライド位置(
図1A参照)にスプール本体12が配置された状態を示す。
【0057】
なお
図2おける図示は省略されているが、
図2に示す電磁比例弁10においても、入口ポート31と入口孔44とが相互に連通し且つ出口孔43と出口ポート32との間が遮断される第2のスライド位置(
図1C参照)に、スプール本体12を配置することが可能である。
【0058】
図2に示す電磁比例弁10は、
図1A~
図1Cに示す電磁比例弁10と基本的に同様の構成を有し、上述の
図1A~
図1Cに示す電磁比例弁10と同様の挙動を示す。
【0059】
ただし、
図1A~
図1Cに示す電磁比例弁10の連絡孔42は径方向Drに開口しているが、
図2に示す電磁比例弁10の連絡孔42は軸方向Dx(特に逆軸方向Dx2)に開口している。また
図1A~
図1Cに示す電磁比例弁10の出力ポート34は軸方向Dx(特に順軸方向Dx1)に開口しているが、
図2に示す電磁比例弁10の出力ポート34は径方向Drに開口しており、出力孔45からの圧油は大径孔部22及び出力ポート34を介して径方向Drへ送り出されて油圧アクチュエータAに供給される。
【0060】
以上説明したように上述のポジティブタイプの電磁比例弁10によれば、スプール孔41、連絡孔42及び出力孔45を介して大径孔部22と小径孔部23とが相互に連通し、大径孔部22内の圧油の圧力、小径孔部23内の圧油の圧力、及びスプール孔41内の圧油の圧力が相互に等しくなる。そのためスプール本体12が圧油から実質的に受ける力は、弁孔21内及びスプール孔41内(具体的には小径孔部23内)の圧油から順軸方向Dx1に力を受けるスプール本体12の表面積S1と、弁孔21内及びスプール孔41内(具体的には大径孔部22内及びスプール孔41内)の圧油から逆軸方向Dx2に力を受けるスプール本体12の表面積S2との差Upに応じた力となる。したがって、出力孔45から送り出される圧油の圧力の上昇に比べ、スプール本体12に圧油が作用する力の実質的な増大は緩やかになり、小さな駆動部13(本実施形態ではソレノイドアクチュエータ)を用いて高圧の油圧出力を得ることが可能である。
【0061】
また本実施形態の電磁比例弁10によれば、出力孔45がスプール本体12の端部に形成され、また出力ポート34が弁本体11の端部に形成される。これにより、出力孔45及び出力ポート34の配置の自由度が広がる。例えば、出力孔45及び出力ポート34の各々を軸方向Dx及び径方向Drのいずれにも開口させることが可能になる。
【0062】
特に、出力孔45を軸方向Dxに開口させることにより、スプール本体12の軸長を短縮化することが可能である。また出力ポート34を軸方向Dxに開口させることにより、弁本体11の軸長を短縮化することが可能である。これにより、電磁比例弁10を全体としてコンパクトに構成することができる。また、電磁比例弁10に対する油圧アクチュエータAの具体的な配置位置に応じて出力孔45及び出力ポート34の開口方向を調整することにより、電磁比例弁10に対して様々な位置に油圧アクチュエータAを配置することができるため、装置レイアウトの面でも有利である。
【0063】
[ネガティブタイプの電磁比例弁]
以下に説明するネガティブタイプの電磁比例弁10において、上述のポジティブタイプの電磁比例弁10(
図1A~
図1C及び
図2参照)と同一又は同様の構成には同一の符合を付し、その詳細な説明は省略する。
【0064】
図3A~
図3Cは、ネガティブタイプの電磁比例弁10の概略構成を示す断面図である。
図3Aは駆動部13に対して励磁電流が流されていない非励磁状態を示し、
図3Bはスプール本体12が中立位置に配置されている状態を示し、
図3Cは駆動部13に対して比較的大きな励磁電流が流されている状態を示す。
【0065】
本実施形態の弁孔21の小径孔部23は、大径孔部22と隣り合って設けられており、大径孔部22よりも順軸方向Dx1側に配置される。
図3A~
図3Cには、明確には示されていないが、大径孔部22及び小径孔部23の各々は閉じられた空間を形成し、油圧源Pから供給される圧油によって満たされる。なお小径孔部23は、出力ポート34(特に順軸方向Dx1へ開口する出力ポート34)を介して外部(特に本実施形態では油圧アクチュエータA)に連通する。
【0066】
スプール本体12の一端側(
図3A~
図3Cでは左側)は大径孔部22に配置され、スプール本体12の他端側(
図3A~
図3Cでは右側)は小径孔部23に配置される。大径孔部22に配置されるスプール本体12の一端側には、大径孔部22の径に対応する外径を有する大径スプール部47が設けられている。小径孔部23に配置されるスプール本体12の他端側には、小径孔部23の径に対応する外径を有する小径スプール部46が設けられている。このように大径スプール部47は、小径スプール部46に対して逆軸方向Dx2側に隣り合って配置され、大径孔部22に配置される。また小径スプール部46は、少なくとも一部が小径孔部23に配置され、スプール本体12の軸方向Dxの位置に応じて小径スプール部46の一部が大径孔部22に配置される。
【0067】
スプール本体12の一端側及び他端側のうちの一方(
図3A~
図3Cでは小径スプール部46側)において出力孔45が形成され、他方(
図3A~
図3Cでは大径スプール部47側)において連絡孔42が形成されている。また、スプール本体12の小径スプール部46に、出口孔43及び入口孔44が形成されている。
【0068】
連絡孔42は、大径孔部22に開口し、スプール本体12の軸方向Dxの位置によらず、大径孔部22とスプール孔41とを相互に連通させる。またスプール本体12の軸方向Dxの位置に応じて、出口孔43は出口ポート32又は弁本体11の内壁面(特に小径孔部23を形成する内壁面)に向かって開口し、入口孔44は入口ポート31又は弁本体11の内壁面(特に小径孔部23を形成する内壁面)に向かって開口する。
【0069】
出力孔45は、軸方向Dx(
図3A~
図3Cでは順軸方向Dx1)に開口し、弁孔21(特に小径孔部23)を介して出力ポート34に連通する。このように、出力ポート34を介して油圧アクチュエータAに接続される小径孔部23は、連絡孔42及び出力孔45のうちの一方(
図3A~
図3Cでは「出力孔45」)を介し、スプール孔41に連通する。また大径孔部22は、連絡孔42及び出力孔45のうちの他方(
図3A~
図3Cでは「連絡孔42」)を介してスプール孔41に連通する。したがって大径孔部22と小径孔部23とは、スプール孔41、連絡孔42及び出力孔45を介して相互に連通し、大径孔部22内の圧油の圧力、小径孔部23内の圧油の圧力、及びスプール孔41内の圧油の圧力が相互に等しくなる。
【0070】
駆動部13は、順軸方向Dx1へスプール本体12を押圧し、励磁電流に応じてスプール本体12に対する押圧力が可変である。付勢部14は、逆軸方向Dx2へスプール本体12(本実施形態では小径スプール部46)を付勢する。このように、スプール本体12の一端側及び他端側のうちの一方(
図3A~
図3Cでは「大径スプール部47」側)は駆動部13のプランジャー51によって押圧され、駆動部13からスプール本体12には順軸方向Dx1への力が加えられる。またスプール本体12の一端側及び他端側のうちの他方(
図3A~
図3Cでは「小径スプール部46」側)は出力孔45が設けられるとともに付勢部14によって付勢され、付勢部14からスプール本体12には逆軸方向Dx2への力が加えられる。
【0071】
上述のネガティブタイプの電磁比例弁10においても、スプール本体12の両端部間に受圧面積差が設けられており、この受圧面積差に起因する油圧力、駆動部13の推進力及び付勢部14の付勢力を相互にバランスさせることによって、所望圧の圧油を出力孔45から油圧アクチュエータAに向かって送り出すことができる。
【0072】
すなわち、弁孔21及びスプール孔41に充填された圧油から順軸方向Dx1に力を受けるスプール本体12の表面積は、当該圧油から逆軸方向Dx2に力を受けるスプール本体12の表面積と異なっている。具体的には、圧油から順軸方向Dx1に力を受けるスプール本体12の表面積の方が、圧油から逆軸方向Dx2に力を受けるスプール本体12の表面積よりも大きい。
【0073】
そのため、スプール本体12に対して圧油が順軸方向Dx1に及ぼす力F1は、スプール本体12に対して圧油が逆軸方向Dx2に及ぼす力F2と異なっており、
図3A~
図3Cに示す電磁比例弁10では「F1>F2」の関係が成立する。したがってスプール本体12は、弁孔21及びスプール孔41に充填された圧油から順軸方向Dx1に力を受ける。具体的には「F0=F1-F2={(圧油から順軸方向Dx1に力を受けるスプール本体12の表面積)-(圧油から逆軸方向Dx2に力を受けるスプール本体12の表面積)}×(圧油の圧力)」によって導き出される力F0が、圧油からスプール本体12に対して順軸方向Dx1へ作用する。
【0074】
弁孔21内及びスプール孔41内の圧油の圧力を「Ph」で表し、弁孔21内及びスプール孔41内の圧油から順軸方向Dx1に力を受けるスプール本体12の表面積S1と当該圧油から逆軸方向Dx2に力を受けるスプール本体12の表面積S2との差を「Un(=S1-S2)」で表し、駆動部13が順軸方向Dx1にスプール本体12に付与する力を「Fd」で表し、付勢部14が逆軸方向Dx2にスプール本体12に付与する力を「Fsp」で表した場合、以下の関係式2が成立する。
【0075】
[関係式2] Fd=Fsp-Ph×Un
【0076】
実際の電磁比例弁10では、上記の「Un」は基本的に固定値に設定される。また上記「Fsp」は、スプール本体12の軸方向Dxの位置に応じてスプール孔41及び弁孔21に対する圧油の供給及び排出が行われる本実施形態の電磁比例弁10では、ある範囲内の値をとる。そのため、上記関係式2からも明らかなように、駆動部13からスプール本体12に付与される力「Fd」の増大に伴って、弁孔21内及びスプール孔41内の圧油の圧力「Ph」は低減する。したがって、図示しない制御部によって駆動部13に印加する励磁電流値を制御し、駆動部13がスプール本体12に付与する力(Fd)を調整することによって、所望の圧力を有する圧油を、出力孔45から小径孔部23及び出力ポート34を介して油圧アクチュエータAに送り出すことができる。
【0077】
次に、上述のネガティブタイプの電磁比例弁10における挙動について説明する。
【0078】
駆動部13に電流が印加されない場合又は駆動部13に第1の電流が印加される場合には、スプール本体12は
図3Aに示す第1のスライド位置に配置される。この場合、スプール孔41は入口孔44を介して入口ポート31に連通し、スプール孔41内の圧油及び弁孔21内の圧油の圧力は増大する。
【0079】
また第1の電流よりも大きな第2の電流が駆動部13に印加される場合、スプール本体12は、駆動部13のプランジャー51により順軸方向Dx1へ押され、
図3Cに示す第2のスライド位置に配置される。この場合、スプール孔41は出口孔43を介して出口ポート32に連通し、スプール孔41内の圧油及び弁孔21内の圧油の圧力は低下する。なお本実施形態の電磁比例弁10では、第1のスライド位置に配置されたスプール本体12(
図3A参照)が、第2のスライド位置に配置されたスプール本体12(
図3C参照)よりも、逆軸方向Dx2側に位置する。
【0080】
また第1の電流よりも大きく且つ第2の電流よりも小さい第3の電流が駆動部13に印加される場合、スプール本体12は、
図3Bに示す第3のスライド位置に配置される。この場合、出口孔43は出口ポート32と連通せず且つ入口孔44は入口ポート31と連通せず、スプール孔41内の圧油及び弁孔21内の圧油の圧力は、基本的に低下も増大もせずに維持される。
【0081】
このようにネガティブタイプの電磁比例弁10では、駆動部13に印加する励磁電流が小さくプランジャー51の推力がゼロ(0)又は弱い場合には、油圧源Pから弁孔21内及びスプール孔41内に供給される圧油の量が増え、弁孔21内及びスプール孔41内の圧油の圧力は上昇する。一方、駆動部13に印加する励磁電流が大きくプランジャー51の推力が強い場合には、弁孔21内及びスプール孔41内の圧油が排液部Tに排出される量が増え、弁孔21内及びスプール孔41内の圧油の圧力は低下する。そして、駆動部13に印加する励磁電流が中間的な範囲にありスプール本体12が
図3Bに示す中立位置に配置される場合には、弁孔21及びスプール孔41と油圧源P及び排液部Tとの間の流路は遮断される。これにより、弁孔21内及びスプール孔41内に対する圧油の供給及び排出は停止し、弁孔21内及びスプール孔41内の圧油の圧力は維持される。
【0082】
上述の挙動を示すネガティブタイプの電磁比例弁10は、以下のメカニズムに従って、所望圧の圧油が出力孔45から送り出される。
【0083】
すなわち、弁孔21内及びスプール孔41内が圧油で満たされている状態で、圧油の所望圧に応じて予め定められた値の励磁電流が駆動部13に印加される。これにより、駆動部13のプランジャー51はスプール本体12を順軸方向Dx1へ移動させて第2のスライド位置(
図3C参照)に配置し、入口孔44と入口ポート31との間が遮断されるとともに出口孔43が出口ポート32に連通する。これによりスプール孔41内及び弁孔21内の圧油は圧力が低下する。
【0084】
そして、駆動部13に印加される励磁電流の大きさが維持された状態でスプール孔41内及び弁孔21内の圧油の圧力が所望圧よりも小さくなると、スプール本体12が逆軸方向Dx2へスライド移動して第1のスライド位置(
図3A参照)に配置される。これにより、出口孔43と出口ポート32との間が遮断されるとともに入口孔44は入口ポート31に連通し、油圧源Pからの圧油がスプール孔41及び弁孔21に供給され、スプール孔41内及び弁孔21内の圧油は圧力が上昇する。
【0085】
そして、駆動部13に印加される励磁電流の大きさが維持された状態でスプール孔41内及び弁孔21内の圧油の圧力が所望圧よりも大きくなると、スプール本体12が順軸方向Dx1へスライド移動して、入口孔44と入口ポート31との間が遮断されるとともに出口孔43が出口ポート32に連通する。これによりスプール孔41内及び弁孔21内の圧油は圧力が再び低下する。
【0086】
このように、圧油の所望圧に応じて予め定められた値の励磁電流が駆動部13に対して継続的に印加された状態で、スプール本体12が第2のスライド位置(
図3C参照)と第1のスライド位置(
図3A参照)との間での移動を繰り返し行うことで、スプール孔41に対する圧油の供給及び排出が繰り返し行われる。これにより、スプール孔41内及び弁孔21内の圧油の圧力が所望圧に保たれ、所望圧の圧油が出力孔45から流出して油圧アクチュエータAに供給される。
【0087】
なお、駆動部13に励磁電流を印加せず、且つ、スプール孔41内及び弁孔21内の圧油の圧力が高い場合には、スプール本体12が第1のスライド位置(
図3A参照)に配置され、スプール孔41及び弁孔21には、入口孔44及び入口ポート31を介して油圧源Pからの圧油が供給される。
【0088】
図4は、本発明の一実施形態に係るネガティブタイプの電磁比例弁10の具体例を示す図である。なお
図4に示す電磁比例弁10では、部分的に断面状態が示されている。
【0089】
スプール本体12は軸方向Dxに関して左右対称の構成を有するが、
図4に示すスプール本体12は左半分と右半分とで異なる状態が示されている。すなわち、
図2に示すスプール本体12の左半分は、中立位置(
図3B参照)にスプール本体12が配置された状態を示す。一方、
図2に示すスプール本体12の右半分は、入口ポート31と入口孔44とが相互に連通し且つ出口孔43と出口ポート32との間が遮断されている第1のスライド位置(
図3A参照)にスプール本体12が配置された状態を示す。
【0090】
なお図示は省略されているが、
図4に示す電磁比例弁10においても、入口ポート31と入口孔44との間が遮断され且つ出口孔43と出口ポート32とが相互に連通する第2のスライド位置(
図3C参照)に、スプール本体12を配置することが可能である。
【0091】
図4に示す電磁比例弁10は、
図3A~
図3Cに示す電磁比例弁10と基本的に同様の構成を有し、上述の
図3A~
図3Cに示す電磁比例弁10と同様の挙動を示す。
【0092】
ただし、
図3A~
図3Cに示す電磁比例弁10の連絡孔42は径方向Drに開口しているが、
図4に示す電磁比例弁10の連絡孔42は軸方向Dx(特に逆軸方向Dx2)に開口している。また
図3A~
図3Cに示す電磁比例弁10の出力ポート34は軸方向Dx(特に順軸方向Dx1)に開口しているが、
図4に示す電磁比例弁10の出力ポート34は径方向Drに開口しており、出力孔45からの圧油は大径孔部22及び出力ポート34を介して径方向Drへ送り出されて油圧アクチュエータAに供給される。
【0093】
以上説明したように上述のネガティブタイプの電磁比例弁10によれば、大径孔部22内の圧油の圧力、小径孔部23内の圧油の圧力、及びスプール孔41内の圧油の圧力が相互に等しくなる。そのためスプール本体12が圧油から実質的に受ける力は、弁孔21内及びスプール孔41内(具体的には大径孔部22内)の圧油から順軸方向Dx1に力を受けるスプール本体12の表面積S1と、弁孔21内及びスプール孔41内(具体的には小径孔部23内及びスプール孔41内)の圧油から逆軸方向Dx2に力を受けるスプール本体12の表面積S2との差Unに応じた力となる。したがって、出力孔45から送り出される圧油の圧力の上昇に比べ、スプール本体12に圧油が作用する力の実質的な増大は緩やかになり、小さな駆動部13を用いて高圧の油圧出力を得ることが可能である。
【0094】
また本実施形態の電磁比例弁10によれば、出力孔45がスプール本体12の端部に形成され、また出力ポート34が弁本体11の端部に形成され、出力孔45及び出力ポート34の配置の自由度が広がる。特に、出力孔45を軸方向Dxに開口させることにより、スプール本体12の軸長を短縮化することが可能であり、また出力ポート34を軸方向Dxに開口させることにより、弁本体11の軸長を短縮化することが可能である。これにより、電磁比例弁10を全体としてコンパクトに構成することができ、装置レイアウトの面でも有利である。
【0095】
本発明は、上述の実施形態及び変形例には限定されない。例えば、上述の実施形態及び変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また、上述の構成要素以外の構成要素を含む形態も、本発明の実施形態に含まれる。また、上述の構成要素のうちの一部の要素が含まれない形態も、本発明の実施形態に含まれる。また、本発明のある実施形態に含まれる一部の構成要素と、本発明の他の実施形態に含まれる一部の構成要素とを含む形態も、本発明の実施形態に含まれる。したがって、上述の実施形態及び変形例、及び上述以外の本発明の実施形態の各々に含まれる構成要素同士が組み合わされてもよく、そのような組み合わせに係る形態も本発明の実施形態に含まれる。また、本発明によって奏される効果も上述の効果に限定されず、各実施形態の具体的な構成に応じた特有の効果も発揮されうる。このように、本発明の技術的思想及び趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲、明細書、要約書及び図面に記載される各要素に対して種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。