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特許7065830異なる反復から抽出された特徴画像を使用する特徴ベースの画像処理
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】異なる反復から抽出された特徴画像を使用する特徴ベースの画像処理
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20220502BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20220502BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
A61B6/03 350X
G01T1/161 E
A61B5/055 376
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019510402
(86)(22)【出願日】2017-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017071175
(87)【国際公開番号】W WO2018037024
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】62/377,844
(32)【優先日】2016-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】バイ チュアンヨン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーエフ アンドリー
(72)【発明者】
【氏名】チャン ビン
(72)【発明者】
【氏名】ズー ヤン‐ミン
(72)【発明者】
【氏名】ソング シユン
(72)【発明者】
【氏名】イエ ジンハン
(72)【発明者】
【氏名】フー チーチャン
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500118(JP,A)
【文献】Zhanli Hu et al.,"A feature refinement approach for statistical interior CT reconstruction",Physics in Medicine & Biology,2016年,vol.61(2016),pp.5311-5334
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータと、
(i)反復再構成画像を生成するように、投影データ又はk空間撮像データに行われる反復画像再構成化、及び、
(ii)反復精緻化画像を生成するように、入力再構成画像に行われる反復画像精緻化、
の一方を含む反復処理であって、最後には前記反復再構成画像又は前記反復精緻化画像になる一連の更新画像を生成する当該反復処理を行うことと、
関心の特徴が強調されるように、前記一連の更新画像から2つの更新画像を選択し、選択した前記2つの更新画像間の差分画像を生成することと、
前記反復処理、又は、前記反復再構成画像若しくは前記反復精緻化画像に行われる後処理で、前記差分画像を使用すること、
とを含む演算を行うように、前記コンピュータによって読み出し可能及び実行可能である命令を記憶する少なくとも1つの非一時的記憶媒体と、
を含む、画像処理デバイス。
【請求項2】
前記差分画像は、前記2つの更新画像間の差分の絶対値を取った絶対値差分画像であり、前記絶対値差分画像の各ピクセル又はボクセルは、前記2つの更新画像の対応するピクセル又はボクセル間の差分の絶対値として計算される、請求項1に記載の画像処理デバイス。
【請求項3】
前記2つの更新画像間の前記差分画像は、前記2つの更新画像間の所定値以上の正又は負の変化率を示すピクセル値又はボクセル値を有する、請求項1に記載の画像処理デバイス。
【請求項4】
前記2つの更新画像それぞれは、前記反復再構成画像又は前記反復精緻化画像を生成する前に、前記反復処理によって生成される、請求項1から3の何れか一項に記載の画像処理デバイス。
【請求項5】
行われる前記演算は更に、
前記差分画像のピクセル若しくはボクセルを少なくともスケーリング又は重み付けすることを含む変換演算によって、前記差分画像を前記差分画像のコントラストを強調した特徴画像に変換することを含み、
前記使用することは、前記特徴画像を、前記反復処理で使用する、又は、前記反復再構成画像若しくは前記反復精緻化画像に行われる前記後処理で使用することを含む、請求項1から4の何れか一項に記載の画像処理デバイス。
【請求項6】
ディスプレイ部品を更に含み、
行われる前記演算は更に、前記ディスプレイ部品上に、前記特徴画像及び臨床画像の両方を同時に表示することを含む、請求項5に記載の画像処理デバイス。
【請求項7】
前記使用することは、画像変換:
T1(l(i))(1-f(i))+T2(l(i))f(i)
に従って、前記特徴画像を使用して、前記反復再構成画像又は前記反復精緻化画像を後処理することを含み、
式中、iは、ピクセル又はボクセルを示し、I(i)は、前記反復再構成画像又は前記反復精緻化画像のピクセル又はボクセルを示し、f(i)は、前記特徴画像の対応するピクセル又はボクセルを示し、T1及びT2は、2つの異なる画像変換である、請求項5又は6に記載の画像処理デバイス。
【請求項8】
前記2つの異なる画像変換T1及びT2は、2つの異なる画像フィルタである、請求項7に記載の画像処理デバイス。
【請求項9】
前記使用することは、画像変換:
I1(i)(1-f(i))+I2(i)f(i)
に従って、前記特徴画像を使用して、前記反復再構成画像又は前記反復精緻化画像を後処理することを含み、
式中、iは、ピクセル又はボクセルを示し、I1(i)及びI2(i)は、前記投影データ若しくは前記k空間撮像データ又は前記入力再構成画像に適用された2つの異なる画像再構成化アルゴリズム又は画像精緻化アルゴリズムによって生成される2つの異なる画像のピクセル又はボクセルを示し、f(i)は、前記特徴画像の対応するピクセル又はボクセルを示し、I1(i)及びI2(i)の一方は、前記反復処理によって生成される前記反復再構成画像又は前記反復精緻化画像である、請求項5又は6に記載の画像処理デバイス。
【請求項10】
前記使用することは、
前記2つの更新画像の生成に続いて行われる前記反復画像再構成化の反復に、前記差分画像を使用することを含む、請求項1から9の何れか一項に記載の画像処理デバイス。
【請求項11】
最後には反復再構成画像になる一連の更新画像を生成するように、投影データ又はk空間撮像データに反復画像再構成化を行うステップと、
関心の特徴が強調されるように、前記一連の更新画像から第1の更新画像及び第2の更新画像を選択し、選択した前記第1の更新画像と前記第2の更新画像との差分画像を生成するステップと、
前記差分画像のピクセル又はボクセルの少なくともスケーリング又は重み付けを含む変換演算によって、前記差分画像を前記差分画像のコントラストを強調した特徴画像に変換するステップと、
前記反復画像再構成化、又は、前記反復再構成画像に行われる後処理で、前記特徴画像を使用するステップと、
を含む画像処理方法を行うようにコンピュータによって読み取り可能及び実行可能である命令を記憶する、非一時的記憶媒体。
【請求項12】
前記差分画像は、前記第1の更新画像と前記第2の更新画像との差分の絶対値を取った絶対値差分画像であり、前記絶対値差分画像の各ピクセル又はボクセルは、前記第1の更新画像及び前記第2の更新画像の対応するピクセル又はボクセル間の差分の絶対値として計算される、請求項11に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項13】
前記第1の更新画像と前記第2の更新画像との前記差分画像は、前記2つの更新画像間の所定値以上の正又は負の変化率を示すピクセル値又はボクセル値を有する、請求項11に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項14】
前記使用するステップは、画像変換:
T1(l(i))(1-f(i))+T2(l(i))f(i)
に従って、前記特徴画像を使用して、前記反復再構成画像を後処理するステップを含み、
式中、iは、ピクセル又はボクセルを示し、I(i)は、前記反復再構成画像のピクセル又はボクセルを示し、f(i)は、前記特徴画像の対応するピクセル又はボクセルを示し、T1及びT2は、2つの異なる画像変換である、請求項11から13の何れか一項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項15】
前記使用するステップは、
前記第1の更新画像及び前記第2の更新画像の生成に続いて行われる前記反復画像再構成化の反復に、前記特徴画像を使用するステップを含む、請求項11から13の何れか一項に記載の非一時的記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、画像処理技術、画像再構成化技術、磁気共鳴(MR)撮像及び画像再構成化及び精緻化技術、核放出撮像及び画像再構成化及び精緻化技術、コンピュータ断層撮影(CT)撮像及び画像再構成化及び精緻化技術、並びに、関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医用撮像は、様々な撮像モダリティを使用して行われる。陽電子放出断層撮影(PET)又は単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)といった核放出撮像モダリティは、組織又は臓器内の放射性医薬品の吸収及び/又は分布の機能的画像化を提供する。透過型コンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴(MR)撮像は、通常、解剖学的特徴を撮像するために使用されるが、これらの技術を、造影剤や、例えば飛行時間型磁気共鳴アンギオグラフィ(TOF-MRA)である高度コントラスト技術と併せて使用して、追加情報を取得することもできる。
【0003】
これらの技術では、取得された撮像データは、通常、認識できる画像を直接形成しない。PETでは、撮像データは、検出された511keVのガンマ線対によって規定される反応線(LOR)であり、任意選択的に飛行時間(TOF)による位置特定を用いる。SPECTデータは、通常、ハニカム又は他のタイプのコリメータによって規定される線形又は狭角円錐投影として収集される一方で、CTデータは、X線管から検出器素子への経路に沿った投影(ここでは吸収線積分)である。MRデータは、通常、デカルト幾何学、ラジアル幾何学、スパイラル幾何学又は他の取得幾何学のk空間データとして取得される。これらの場合のいずれにおいても、適切な画像再構成化アルゴリズムが適用され、投影空間又はk空間からの撮像データを、2次元(2D)又は3次元(3D)画像空間における再構成画像に変換する。画像再構成化は、典型的には、反復処理であるが、フィルタ逆投影といった非反復再構成化アルゴリズムも知られている。任意選択的に、フィルタ及び/又は反復分解能補正といった様々な画像精緻化アルゴリズムを再構成画像に適用して、目立つ特徴を強調することができる。
【0004】
画像再構成化及び精緻化処理の難しい点は、ノイズ抑制とエッジ保存(又はエッジ強調)とのバランスである。ノイズ抑制とエッジ保存とは相反する傾向にある。というのは、ノイズは、抑制されるべき不所望の画像コントラストを構成する一方で、エッジは、保持されるべき、又は、場合によっては、更に強調されるべき所望の画像コントラストを構成するからである。医用撮像では、再構成後のフィルタリングが、ノイズ抑制の主なアプローチであるが、臨床分析用の(最適とまではいかなくても)許容画像を得るためには、フィルタタイプ及びフィルタパラメータを注意深く選択する必要がある。幾つかの既知のノイズ抑制フィルタには、ローパスフィルタ、バイラテラルフィルタ、適応フィルタ等が含まれる。ローパスフィルタは、画像を均一に平滑にする傾向があり、これは、病変コントラストを抑制する場合がある。バイラテラルフィルタは、局所画像情報を使用して、エッジの脇までの領域のみを平滑にし、エッジは触れないでおくか又は平滑化を最小限に抑える目的でエッジを特定する。これは、1つのタイプのエッジ保存フィルタであり、適切に調整されると、病変/臓器定量を保存する。しかし、フィルタパラメータによっては、幾つかの小さい/弱い病変/臓器の周りのエッジが検出されない場合があり、この場合、当該小さい/弱い病変/臓器はフィルタリングされ、定量的精度が低下する。他の高度適応画像フィルタも同様に注意深い調整を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題等に対処する新規且つ改良システム及び方法を、以下に開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの開示される態様では、画像処理デバイスが、コンピュータと、(i)反復再構成画像を生成するように、投影データ又はk空間撮像データに行われる反復画像再構成化、及び、(ii)反復精緻化画像を生成するように、入力再構成画像に行われる反復画像精緻化の一方を含む反復処理であって、最後には反復再構成画像又は反復精緻化画像になる一連の更新画像を生成する当該反復処理を行うことと、一連の更新画像の2つの更新画像間の差分画像を生成することと、反復処理、又は、反復再構成画像若しくは反復精緻化画像に行われる後処理で差分画像を使用することとを含む演算を行うように、コンピュータによって読み出し可能及び実行可能である命令を記憶する少なくとも1つの非一時的記憶媒体とを含む。
【0007】
別の開示される態様では、非一時的記憶媒体が、最後には反復再構成画像になる一連の更新画像を生成するように、投影データ又はk空間撮像データに反復画像再構成化を行うステップと、一連の更新画像の第1の更新画像と第2の更新画像との差分画像を生成するステップと、変換演算によって、差分画像を特徴画像に変換するステップと、反復画像再構成化、又は、反復再構成画像に行われる後処理で特徴画像を使用するステップとを含む画像処理方法を行うようにコンピュータによって読み取り可能及び実行可能である命令を記憶する。
【0008】
別の開示される態様では、画像処理方法が、第1の再構成画像を生成するように、投影データ又はk空間撮像データに第1の画像再構成化を行うステップと、第2の再構成画像を生成するように、投影データ又はk空間撮像データに第2の画像再構成化を行うステップと、第1の再構成画像、第1の画像再構成化の更新画像、第2の再構成画像及び第2の画像再構成化の更新画像からなる群からそれぞれ選択される2つの画像間の差分画像を生成するステップと、差分画像を使用して第1の再構成画像及び第2の再構成画像を組み合わせる最終再構成画像を生成するステップとを含む。
【0009】
1つの利点は、反復再構成画像の画質が向上される点にある。
【0010】
別の利点は、反復精緻化画像の画質が向上される点にある。
【0011】
別の利点は、悪性腫瘍又は病変の検出がより正確になる点である。
【0012】
別の利点は、臨床画像を不明瞭にするノイズが減少される点である。
【0013】
別の利点は、ノイズ抑制画像処理が小さい病変特徴を劣化させる又は除去する可能性が減少される点である。
【0014】
所与の実施形態が、上記利点を1つも提供しないか、又は、1つ、2つ、それ以上若しくはすべての利点を提供し、及び/又は、本開示を読み、理解した当業者には明らかとなる他の利点を提供してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明は、様々なコンポーネント及びコンポーネントの構成、また、様々なステップ及びステップの構成の形を取ってよい。図面は、好適な実施形態を例示することのみを目的とし、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0016】
図1図1は、反復画像再構成化の2つの異なる画像更新を使用して計算される差分画像を利用する画像再構成化及び/又は精緻化を含む例示的な撮像システムを概略的に示す。
図2図2は、反復画像精緻化処理の2つの異なる画像更新を使用して計算される差分画像を利用する画像精緻化を含む例示的な撮像システムを概略的に示す。
図3図3は、2つの異なる画像再構成化の重み付け組み合わせを構成する例示的な撮像システムを概略的に示し、重み付けは、2つの再構成間、又は、片方若しくは両方の画像再構成化の画像更新間の差分画像に従う図である。
図4図4は、本明細書において説明される画像再構成化結果を示す。
図5図5は、本明細書において説明される画像再構成化結果を示す。
図6図6は、本明細書において説明される画像再構成化結果を示す。
図7図7は、本明細書において説明される画像再構成化結果を示す。
図8図8は、本明細書において説明される画像再構成化結果を示す。
図9図9は、検出された特徴に関する視線誘導を提供するように表示される、本明細書に開示される通りの特徴画像の使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に開示される画像再構成化及び精緻化アプローチは、(例えば大きい画像強度勾配を検出することによって)局所的な空間的情報を使用して画像内のエッジを特定しようと試みるのではなく、(エッジだけではなく)画像特徴全体を、反復画像再構成化又は精緻化処理中の更新画像の「時間的」進化に基づいて効果的に検出することができるという洞察に基づいている。具体的には、差分画像が、反復画像再構成化又は精緻化処理の2つの異なる更新画像の対応するピクセル間の差分(例えば絶対値差分)として計算される。本明細書に開示されるように、当該差分画像は、更新画像の適切な選択について、小さい病変又は腫瘍といった画像特徴を、エッジ保存又はエッジ強調画像フィルタリングのように領域構造を描出するエッジとしてではなく、当該領域構造として捕捉する差分画像を生成する。開示される「時間的」アプローチは、PET及びSPECT画像の典型的な反復再構成中の更新画像の進化に関する幾つかの所見を利用する。
【0018】
1つの所見は、大きい構造が、通常、小さい構造よりも速く収束する点である。つまり、大きい構造が収束するのに必要な反復回数は少ない。同様に、低空間周波数成分が、画像内の高空間周波数成分よりも速く収束する。これらの所見は、直観的に関連付けられる。というのは、大きい構造は、(例えば空間フーリエ変換の意味で)より低い空間周波数成分を主に含む一方で、小さい構造は、より高い空間周波数成分を主に含むからである。不所望なノイズは、通常、高周波数成分(有用な現実的な構造に必要な周波数成分よりも高い)によって表される。これらの所見から、反復画像再構成化の前の更新画像を使用する差分画像は、大きい特徴を捕捉する傾向がある一方で、後の更新画像を使用する差分画像は、より小さい特徴を捕捉する傾向があることが理解できる。
【0019】
別の所見は、核放出画像(例えばPET又はSPECT)の場合、コールド領域が、ホット領域よりもゆっくりと収束する傾向がある点である。ここで、「コールド」とは、放射性医薬品の濃度が低い領域を指す一方で、「ホット」とは、放射性医薬品の濃度が高い領域を指す。より一般的に、小さい病変及び鮮明なエッジは、高空間周波数画像信号に対応する。
【0020】
差分画像用の更新画像の最適な選択は、例えば予想される腫瘍サイズを模倣するファントム特徴の最も強いコントラストを有する差分画像を生成する差分画像用の更新画像を選択するファントム研究を介してといったように、経験的に行うことができる。なお、差分画像を形成する2つの更新画像は、最後には最終反復再構成画像になる反復再構成の一連の更新画像における連続更新画像である必要は必ずしもない。(更に、終了する反復再構成画像自体は、様々に選択される反復再構成終了基準(例えば連続反復間の変化メトリックがある最小閾値よりも小さい場合に停止する、又は、決められた回数の反復後に停止する等)を使用して規定される)。
【0021】
更なる所見は、飛行時間型PET(即ち、TOF-PET)の場合、飛行時間(TOF)情報を有するデータからの再構成は、一般に、TOF情報なしよりも速く収束する点であり、これは、TOF位置特定が、収束を向上させる追加情報を提供するからである。したがって、PET撮像データが、TOF情報を利用するTOF再構成アルゴリズムを使用して再構成される場合と、TOF情報を利用しない非TOF再構成アルゴリズムを使用して再構成される場合とでは、前者が後者よりも速く収束することが予想される。より一般的に、同じ撮像データに適用される様々な画像再構成化アルゴリズムが、程度の差はあるが、高速に収束する。この所見は、差分画像を単一の画像再構成化の2つの更新画像の差として取るのではなく、差分画像は、同じ撮像データに適用される2つの異なる再構成アルゴリズムの再構成画像又は更新画像間の差分画像である本明細書に開示される変形実施形態の根拠となる。
【0022】
更なる所見は、収束速度と差分画像(又は差分画像内の特徴)との関係に関する。これは、当該関係が更新画像の選択に影響を及ぼすからである。収束速度の速い物体は、少数の更新又は反復後に、その最終再構成状態に近くなる。これに対して、収束速度の遅い物体は、高速収束物体の収束時間では、その最終再構成状態から遠く離れたままである。したがって、更新画像が、最先の更新から選択されると、高速収束物体及び低速収束物体の両方について差は大きく、したがって、物体を区別するには最適ではない。反対に、更新画像が、反復の終わりの近くから選択されると、高速収束物体又は低速収束物体の両方についての差は小さく、これも、最適な選択ではない。一般に、更新画像の最適な選択は、これらの限界間であり、好適には、高速収束物体が安定に近い(したがって、差は、高速収束物体では小さい)一方で、低速収束物体がまだ安定していない(したがって、差は依然として大きい)ように選択される。したがって、差分画像を計算するための更新画像のこのような選択は、より大きい(及び高速収束)背景と比べてより小さい(及び低速収束)特徴の最も強いコントラストを生成する。
【0023】
したがって、本明細書に開示される実施形態では、差分画像は、反復処理(画像再構成化又は精緻化)の2つの反復間の差分画像である。例えばスケーリング及び重み付けといった更なる変換を差分画像に適用して、特徴画像が生成される。特徴画像は、反復間の各物体/臓器の「進化」情報を伝える。様々な反復における画像内の同じピクセル又はボクセルの値は、エッジ保存又はエッジ強調フィルタリング技術のように個々の画像内のその隣接するボクセルと比較されるのではなく、互いに直接比較される。
【0024】
図1を参照するに、例示的な撮像デバイス10は、コンピュータ断層撮影(CT)ガントリ12と、陽電子放出断層撮影(PET)ガントリ14とを含み、CT又はPET撮像のために、患者又は他の被験者を選択されたガントリ12、14内へと移動させる共通の被験者支持体又は台16を有する複合システムである。有利には、この構成は、例えば解剖学的情報を提供するためにCT画像の取得を、また、機能的情報(例えば患者内の放射性医薬品の吸収及び/又は分布)を提供するためにPET画像の取得を可能にする。市販されているPET/CT撮像デバイスの一例は、オランダ、アイントホーヘンにあるコーニンクレッカ・フィリップス、N.V社から入手可能であるVereos(登録商標)デジタルPET/CTシステムである。これらは例示的な例に過ぎず、また、開示される画像再構成化及び精緻化アプローチは、CT撮像、PET撮像、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)撮像、磁気共鳴(MR)撮像等と併せて有用に使用することができる。撮像デバイス10は、投影データの形の撮像データを取得する。PETガントリ14を使用して取得されるPET撮像データは、任意選択的に飛行時間(TOF)位置特定を有する検出された511keVガンマ線対によって規定される反応線(LOR)の形の投影データを含む。CTガントリ12によって取得されるCT撮像データは、X線管から検出器素子までの経路に沿った投影(ここでは吸収線積分)を含む。SPECT撮像データも、同様に、ハニカム又は他のタイプのコリメータによって線形又は狭角円錐投影として規定される投影を含む。MR撮像データは、一般的に、k空間撮像データ(例えば適切に印加された磁場勾配によって実現される周波数及び/又は位相符号化によって規定されるk空間軌道(例えばデカルト、スパイラル、ラジアル、ジグザグ)に沿って取得されるk空間サンプル)として収集される。
【0025】
取得された撮像データは、例えば1つ以上の電子データ記憶デバイス(例えば1つ以上のハードドライブ、光学ディスク、固体ドライブ、他の電子デジタル記憶デバイス等)を含むか、又は、それらへの動作上のアクセスを有するコンピュータ22(ネットワークサーバ、デスクトップコンピュータ等)である演算デバイス20によって処理される。最初に、取得された撮像データは、撮像データ記憶デバイス24に記憶される。図1の実施形態では、コンピュータ22が、適切なソフトウェアを実行して、記憶装置28に記憶される再構成画像を生成する反復画像再構成化26を実現する。画像再構成化26は更に、特定用途向け集積回路(ASIC)等を使用して部分的に実現されてもよい。反復画像再構成化26は、投影撮像データ(又は、MR撮像の場合は、k空間撮像データ)に行われ、反復再構成画像が生成される。より具体的には、反復再構成26は、記憶装置28に記憶される反復再構成画像に最後にはなる一連の更新画像を生成する。PET撮像データを再構成するための幾つかの例示的な反復画像再構成化アルゴリズムは、二次的先行画像(quadratic prior)又は(相対差先行画像(relative differences prior)のような)エッジ保持先行画像(edge-preserving prior)を使用して、順序部分集合期待値最大化(OSEM)画像再構成化、及び、サブセット化による期待値最大化(MAP)画像再構成化を含む。MR撮像データの場合、様々な反復高速フーリエ変換(FFT)ベースの画像再構成化アルゴリズムが使用され、通常、MR撮像データを取得するために使用されたk空間軌道に部分的に基づき、特定のアルゴリズムが選択される。再構成される撮像データが2次元(2D)撮像データである場合がある。この場合、画像再構成化は、2D画像(画像スライスとも呼ぶ)を生成する。又は、再構成される撮像データが3次元(3D)撮像データである場合がある。この場合、画像再構成化は、3D画像(ボリューム画像とも呼ぶ)を生成する。
【0026】
前述の通り、反復再構成26は、(例えば指定回数の反復が行われると、又は、何らかの他の終了基準が満たされると)最後には反復再構成画像になる一連の更新画像を生成する。本明細書に開示されるアプローチでは、選択された更新画像が引き算されて、関心の特徴のコントラストを有する差分画像が生成される。図1では、2つの選択された更新画像30、32が示され、これらには、一般性を失うことなく、更新画像i及び更新画像jとインデックスが付けられている。一連の更新画像の第1の更新画像30と第2の更新画像32との差分画像34が生成される。負のピクセル又はボクセル値の可能性を回避するために、幾つかの実施形態では、差分画像34は、第1の更新画像30と第2の更新画像32との絶対値差分画像である。絶対値差分画像34内の各ピクセル又はボクセルは、第1の更新画像30及び第2の更新画像32の対応するピクセル又はボクセル間の差の絶対値として計算される。幾つかの実施形態では、差分画像内の負のピクセル又はボクセル値及び正の値を使用して、画像のコールド特徴及びホット特徴を区別することができる。任意選択的に、差分画像34は、特徴画像40を生成するために、差分画像のピクセル又はボクセルのスケーリング又は重み付けといった変換演算36によって変換される。
【0027】
(任意選択的に特徴画像40に変換される)差分画像34は、フィードバック経路42によって示されるように、反復再構成26に使用される(即ち、更新画像30、32を生成した反復の次に行われる反復に使用される)。例えば特徴画像40は、反復画像再構成化26の後続の反復における先行画像として働く。他の実施形態では、(任意選択的に特徴画像40に変換される)差分画像34は、画像保管通信システム(PACS)といった臨床画像記憶装置46に記憶される最終臨床画像を生成するように、反復再構成画像に行われる、例示的な画像精緻化44といった任意選択の後処理で使用される。後処理44における特徴画像40の使用は、図1に、データフロー経路48によって概略的に示される。
【0028】
図2を参照するに、他の実施形態では、差分画像は、反復画像再構成化ではなく、反復画像精緻化によって生成される更新画像から生成される。反復画像再構成化と反復画像精緻化との違いは、反復画像再構成化は、撮像データ(投影データ又はk空間データ)を2D又は3D画像空間における画像データに変換する働きをする一方で、反復画像精緻化は、2D又は3D画像空間に既にある画像を向上させる働きをする点である。説明を簡単にするために、図2は、再構成画像を記憶する再構成画像記憶装置28から開始するが、図2の実施形態では、記憶装置28に記憶される再構成画像は、反復又は非反復画像再構成化アルゴリズムを使用して生成されている可能性があることに留意されたい。図2の実施形態におけるコンピュータ22は、記憶装置28に記憶されている再構成画像に反復画像精緻化56を行うようにプログラミングされる。当該再構成画像は、図2のコンテキストでは、反復画像精緻化56に入力される入力再構成画像である。反復画像精緻化56は、例えば反復フィルタリング、反復分解能補正、反復散乱補正等である。
【0029】
反復画像精緻化56は、PACS又は他の臨床画像記憶装置46に記憶される反復精緻化画像を生成するように入力再構成画像に行われる。反復画像精緻化56は、(例えば指定回数の反復が行われると、又は、何らかの他の終了基準が満たされると)最後には反復精緻化画像になる一連の更新画像を生成する。図2の実施形態では、反復画像精緻化56によって生成される一連の更新画像の選択された更新画像が引き算されて、関心特徴のコントラストを有する差分画像が生成される。図2では、2つの選択された更新画像60、62が示され、これらには、一般性を失うことなく、更新画像IU1及び更新画像IU2とインデックスとが付けられている。一連の更新画像の第1の更新画像60と第2の更新画像62との差分画像64が生成される。負のピクセル又はボクセル値の可能性を回避するために、幾つかの実施形態では、差分画像64は、第1の更新画像60と第2の更新画像62との絶対値差分画像である。絶対値差分画像64内の各ピクセル又はボクセルは、第1の更新画像60及び第2の更新画像62の対応するピクセル又はボクセル間の差の絶対値として計算される。幾つかの実施形態では、差分画像内の負のピクセル又はボクセル値及び正の値を使用して、画像のコールド特徴及びホット特徴を区別することができる。任意選択的に、差分画像64は、特徴画像70を生成するために、差分画像のピクセル又はボクセルのスケーリング又は重み付けといった変換演算66によって変換される。(任意選択的に特徴画像70に変換される)差分画像64は、フィードバック経路72によって示されるように、反復画像精緻化56に使用される(即ち、更新画像60、62を生成した反復の次に行われる画像精緻化56の反復に使用される)。
【0030】
図3を参照するに、別の変形実施形態では、差分画像は、2つの異なる画像再構成化アルゴリズム(例えばTOFあり又はTOFなしの反復又は非反復再構成)によって生成される再構成画像間の差分画像である。したがって、図3の実施形態も、撮像デバイス10によって取得され、撮像データ記憶装置24に記憶される撮像データ(例えば投影撮像データ又はk空間撮像データ)に作用する。コンピュータ22は、第1の画像再構成化81を行うことによって第1の再構成画像80を生成し、第1の画像再構成化81とは異なる第2の画像再構成化83を行うことによって第2の再構成画像82を生成するようにプログラミングされる。例えばPET撮像データの場合、画像再構成化アルゴリズム81、83の一方は、TOF位置特定データを利用するTOF再構成である一方で、他方は、TOF位置特定データを使用しない非TOF再構成である。別の実施形態では、画像再構成化アルゴリズム81、83の一方は、他方よりも速く収束する。差分画像84は、2つの(異なるように)再構成された画像80、82間の差分画像として生成される。両再構成画像80、82は、同じ撮像データを再構成することによって生成されるので、2つの再構成画像80、82間の違い、異なる再構成アルゴリズム81、83に起因するものであることを強調しておく。代替アプローチでは、最終再構成画像80、82間の差分を取るのではなく、2つの画像再構成化アルゴリズム81、83の一方又は両方が反復再構成アルゴリズムである場合、図3に点線の入力86として示されるように、(最終)再構成画像80、82の生成に先行する中間画像更新が使用されてもよい。例えば差分画像84は、第1の画像再構成化81の中間更新画像と、第2の画像再構成化83の中間更新画像との差分画像である。或いは、差分画像84は、第1の画像再構成化81の2つの異なる更新画像間の差分画像であってもよい。図1及び図2に関連して既に説明したように、差分画像84は、絶対値差分画像であっても、及び/又は、特徴画像(図3には図示せず)となるようにスケーリング又は重み付けといった変換演算によって変換されてもよい。コンピュータ22は更に、PACS又は他の臨床画像記憶装置46に記憶される最終再構成画像を生成するように、(ここでも任意選択的に、スケーリング、重み付け等によって特徴画像に変換される)差分画像84を使用して、2つの再構成画像80、82を組み合わせる画像合成器88を実現するようにプログラミングされる。例えば2つの再構成画像80、82は、ピクセル毎又はボクセル毎に組み合わせられる。合成画像の各ピクセル又はボクセルは、2つの再構成画像80、82のピクセル値又はボクセル値の重み付け組み合わせであり、重みは、差分(又は特徴)画像84の対応するピクセル値又はボクセル値によって決定される。
【0031】
なお、ここでも、様々な計算コンポーネント26、36、44、56、66、81、83、88は、例示的なコンピュータ22の適切なプログラミングによって実現されるが、一部の計算集約的態様のASIC、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は他の電子機器を介する実現も想定される。コンピュータ22は、単一のコンピュータ(サーバコンピュータ、デスクトップコンピュータ等)であっても、相互接続された複数のコンピュータ(例えばコンピュータクラスタ)であっても、クラウド計算リソース等であってもよい。更に、当然ながら、開示される画像処理技術は、開示される演算を行うように例示的なコンピュータ22又は一部の他のコンピュータ若しくは計算リソースによって実行可能である命令を記憶する1つ以上の非一時的記憶媒体として具現化されてもよい。非一時的記憶媒体には、例えばハードディスク若しくは他の磁気記憶媒体、光学ディスク若しくは他の光学記憶媒体、半導体ドライブ、フラッシュメモリ又は他の電子記憶媒体、これらの様々な組み合わせ等が含まれる。
【0032】
以下に、幾つかのより詳細な例をファントム研究及び臨床研究の形で提供する。これらの例は、PET撮像に関するが、既に説明したように、反復画像再構成化又は精緻化によって生成される更新画像から作成された差分画像を利用する開示されるアプローチは、より一般的に、他のタイプの撮像(例えばPET、SPECT、CT、MR等)において有用である。
【0033】
図1に適合する第1の例は、反復再構成26の更新画像30、32から特徴画像40を生成し、当該特徴画像40を後続の画像精緻化44、即ち、再構成後のフィルタリングに使用する。この例では、撮像データは、TOF情報及び臨床的に関連のあるカウントレベルを有するデジタルPETシステムを使用して取得された。PET画像は、反復再構成26として、1回の反復と4つのサブセット(画像1、即ち、更新画像30)を用いた後に、2回の反復と4つのサブセット(画像2、即ち、更新画像32)を用いて反復TOFリストモードOSEM再構成を使用して再構成された。画像2から画像1を引くことによって、差分画像34が生成され、差分画像の各ボクセルの絶対値を取って、絶対値差分画像が生成された。特徴画像40を生成するための後続のスケーリング/重み付け36には、ボクセル毎に絶対値差分画像の画像1に対する比率を計算して比率画像Ratio12を生成し、この後に、ボクセル値を0.15にクランプし、次に、画像を0.15で除算して、特徴画像40を得ることが含まれる。この例では、0.15の値が効果的であると経験的に分かったが、より小さい又はより大きいクランプ値を使用して、様々な再構成からの画像の変化レベルを正確に測定することができる。及び/又は、クランプ値は、反復再構成がどのように行われたかに基づき調整されてよい。後者の例として、TOFが使用される場合、画像収束は、通常、非TOF再構成よりも速いので、TOF再構成には比較的大きいクランプ値が選ばれる場合がある。各反復においてより多くのサブセットが使用される場合、差分はより大きくなる。
【0034】
更に、本例における更新画像30、32は、異なる反復からの画像であるが、より一般的には、反復画像再構成化は、通常、幾つかのサブセットを用いて行われ、画像は、各サブセットにおいて更新される。「更新画像」との用語は、本明細書では、差分画像を生成するために使用される画像が必ずしも異なる反復からのものではなく、より一般的には、2つの異なる更新からの画像であることを強調するために使用される。
【0035】
本例において、前述の通り生成される特徴画像40は、次の特徴を有する。即ち、(1)画像1から画像2までに(この具体例では)15%(より一般的に、他の値を使用してもよい)以上の値変化を有する任意のボクセルは、値1を有する。(2)015%の値変化を有する任意のボクセルは、0~1にスケーリングされる。(3)小さい構造(例えば病変)及びコールド領域は、反復間で大きい変化率を有する傾向があるので、特徴画像内の対応するボクセルは、値1か又は1に近い値を有する。したがって、特徴画像40が、再構成後の画像精緻化44(この例ではフィルタリング)に使用される場合、特徴画像40は、追加情報を提供する。具体的には、ボクセルが病変からのものである場合、特徴画像40内のその値は、値1か又は1に近い値を有する。これは、最適化された性能のために、再構成後処理44を誘導するために使用される。画像の再構成後フィルタリングの例では、特徴画像40内の値1を有するボクセルは、全くフィルタリングされないか、ほんの少しだけフィルタリングされることが望ましい。対照的に、値0又は0に近い値を有する特徴画像40のボクセルは、強くフィルタリングされるべきである。0と1との間の値については、フィルタリング量は、特徴画像のボクセル値に(少なくとも大体)対応すべきである。即ち、特徴画像のボクセル値は、ボクセルがどれくらいフィルタリングされるのかを決定するための重みの役割を果たす。したがって、結果として得られるフィルタリングされた画像は、(弱いフィルタリング又はフィルタリングされないことによって)病変及び臓器境界の定量は保存する一方で、(強いフィルタリングによって)背景/均一領域内のノイズは取り除く。
【0036】
特徴画像40を、2つの画像変換T及びTの重み付け組み合わせにおける重みとして利用することは、次の通りに表現することができる。
(I(i))(1-f(i))+T(I(i))f(i) (1)
式中、iは、ピクセル又はボクセルを示し、I(i)は、反復再構成画像28のピクセル又はボクセルを示し、f(i)は、特徴画像の対応するピクセル又はボクセルを示し、T及びTは、2つの異なる画像変換を示す。具体的には、この具体例では、Tは、強いフィルタ(例えば大きいカーネルを有するガウスフィルタ)であり、Tは、弱いフィルタ(例えば小さいカーネルを有するガウスフィルタ)である。
【0037】
図4は、3000万カウントを用いるNEMA IECファントム研究について取得された画像1、画像2、絶対値差分画像及び特徴画像を示す。図5は、取得された特徴画像を使用するNEMA IECファントム画像の適切なフィルタリングスキームを示す。NEMA IECファントム画像は、最初に、標準再構成プロトコル(IEC0)を使用して再構成された。次に、ファントム画像は、ウィンドウサイズ3を有する3つの連続ボックスフィルタを使用して強くフィルタリングされ(IEC_Heavy)、中心において19のカーネル重みを有し、他の要素において1のカーネル重みを有するボックスフィルタを使用して少しフィルタリングされる(IEC_Slight)。2つのフィルタリングされた画像は、式(1)に従って特徴画像(IEC_Feature)を使用して組み合わせられ、最終的な共同でフィルタリングされた画像(IEC_Joint)が取得される。上記表記法を使用すると、このタスクについて、式(1)を次の通りに書くことができる:
IEC_Joint=(1-IEC_Feature)IEC_Heavy+IEC_FeatureIEC_Slight (2)
式(2)によれば、最終画像内のボクセルは、特徴画像内のボクセル値を重みの計算に使用する強くフィルタリングされた画像及び少しフィルタリングされた画像内の同じボクセルの値の加重和である。病変について、ボクセル値は、特徴画像内で1であるので、重みは、少しフィルタリングされた画像では1であり、強くフィルタリングされた画像では0である。したがって、病変は、少しフィルタリングされた画像からの値を有する。対照的に、背景領域は、特徴画像内で小さい値を有するので、強くフィルタリングされた画像の重みは大きい。したがって、取得された画像は、保存された球と、著しくフィルタリングされた背景とを示した。
【0038】
より具体的には、図4は、2つの異なるOSEM反復における画像から特徴画像(図1の特徴画像40の一実施形態)を抽出する例を示す。画像は、図4において、線形グレースケールを使用して表示され、各画像は、それ自身の最大値までスケーリングされている。図4では、左から右に、画像1(1回の反復、4つのサブセット;これは、図1の第1の更新画像30の一実施形態)、画像2(2回の反復、4つのサブセット;これは、図1の第2の更新画像32の一実施形態)、絶対値差分(図1の差分画像34の一実施形態)、及び、特徴画像(図1の特徴画像40の一実施形態)がある。IECファントムのホット球及びコールド球だけでなく、ファントムの中心における肺インサート(これはコールド)が、画像1と画像2との間で大きい変化を示した。特徴画像内の当該物体の対応するボクセルは大きい値を有した。撮像されたファントムの均一背景(低周波数成分)は、特徴画像内で小さい値(グレースケールディスプレイではより黒い領域)を有し、上記球(より高い周波数成分)よりも速い収束によって、画像1から画像2への比較的小さい変化を示す。
【0039】
図5は、標準再構成プロトコル(3回の反復、17個のサブセット)を使用して再構成されたNEMA画像をポストフィルタリングするために、図4からの特徴画像を使用する例を示す。左から右に、フィルタリングされるNEMA画像(これは、図1の記憶装置28に記憶される再構成画像の一実施形態)、強くフィルタリングされた画像(ウィンドウサイズ3のボックスフィルタ、3回連続的にフィルタリングする)、少しフィルタリングされた画像(ウィンドウサイズ3を有するが、中心について19、残りの部分について1のボックスフィルタ)、及び、特徴画像を使用して一緒にフィルタリングされた画像(即ち、式(2)を使用して組み合わせられる強くフィルタリングされた画像と軽くフィルタリングされた画像の加重和)がある。一緒にフィルタリングされた画像は、背景におけるノイズを著しく抑制する一方で、球定量は依然として保存する。
【0040】
次に、最終再構成画像が2つの異なる画像再構成化から合成される撮像例について説明する。正則化再構成では、様々な再構成スキームが、様々な画質につながる。例えば二次的先行画像を使用する場合、正則化再構成は、より滑らかな画像をもたらすが、このアプローチは、一部の小さい構造も取り除かれるという欠点を有する。反対に、エッジ保存先行画像を使用する場合、画像内のエッジは保存されるが、一部の領域は、当該領域におけるノイズレベルが比較的高い場合には、十分に平滑化されない場合がある。
【0041】
この例では、2つの再構成画像が生成される。一方は、二次的先行画像を使用して、(強く)平滑化された画像が得られ、他方は、エッジ保存先行画像を使用して、エッジ保存画像が得られる。これらの2つの画像は、特徴画像を使用して、重み付けされて組み合わされ、当該2つの再構成画像は1つの統合画像に合成される。適切な重み付け組み合わせは、次の通りである。
(i)(1-f(i))+I(i)f(i) (3)
式中、iは、ピクセル又はボクセルを示し、I(i)及びI(i)は、投影データ(又は、MR画像再構成化の場合にはk空間データ)に適用された2つの異なる画像再構成化又は精緻化アルゴリズムによって生成される2つの異なる画像のピクセル又はボクセルを示し、f(i)は、特徴画像の対応するピクセル又はボクセルを示す。I(i)及びI(i)の少なくとも一方は、反復再構成画像であり、特徴画像は、反復再構成の2つの更新画像から生成される。この例では、特徴画像は、図4のNEMA IECファントム研究と同じように生成されたが、(IECファントム研究を介して)特徴画像を生成するメカニズムが確立されると、当該メカニズムが、患者研究にも適用可能であることを実証するために、実際の患者データを使用して生成された(即ち、特徴を抽出するためのトライアル再構成がある)。
【0042】
1つの再構成画像が(例えば二次的先行画像を使用して)強く平滑化されたものであり、もう1つの再構成画像が(例えばエッジ保存先行画像を使用して)エッジ保存されたものである場合、組み合わせられた画像は、エッジ保存画像のエッジ保存利点と、滑らかな画像の平滑化利点との両方を提供する。これは、特徴画像は、空間周波数(つまり、それがどれくらい速く局所的に変化するか)といった追加情報と物体境界情報とを提供するからである。この追加情報を使用して、どの領域(又はピクセル)がより重く平滑化されるべきか又はより軽く平滑化されるべきかが決定される。
【0043】
図6は、二次的先行画像及びエッジ保存先行画像をそれぞれ使用して生成された画像の上記合成の有効性を説明する患者研究の画像の長軸断スライスを示す。図7は、コロナルスライスを使用する同じ患者研究の当該合成の効果を示す。合成画像では、肝臓領域が、エッジ保存画像に比べて著しくフィルタリングされたが、中心におけるホットスポットといった小さい構造は、二次的先行画像を使用する滑らかな画像に比べて保存されていた。
【0044】
より具体的には、図6は、エッジ保存先行画像(左から2番目の画像)を使用するMAP再構成画像と、(エッジを保存しない)二次的先行画像(左から3番目の画像、即ち、「滑らかな」画像)を使用するMAP再構成画像とを合成するために使用された特徴画像(図6の左端の画像)を示す。ここでも、特徴画像は、上記NEMA IECファントム研究と同じやり方で生成された。図6の右端の画像は、f(i)重みを提供する特徴画像(図6の左端の画像)を用いる式(3)を使用して組み合わされた合成画像である。合成画像は、画像内の小さい構造の保存と、(特徴画像内に黒い領域によって示される)軟組織のフィルタリングとを示す。この最終画像は、いずれのMAP画像(図6の真ん中の2つの画像)よりも優れていた。
【0045】
図7は、図6と同じ患者のコロナルスライスを示し、エッジ保存画像(左から2番目の画像、エッジ保存先行画像を使用するMAP再構成)における小さい特徴のエッジ保存の利点と、滑らかな画像(左から3番目の画像、二次的先行画像を使用するMAP再構成)の肝臓及び隔膜の滑らかさの利点との両方を有する最終合成画像(図7の右端の画像)を取得するために特徴画像(図7の左端の画像)を使用することの有効性を説明する。
【0046】
同じ合成アプローチを適用して、2つの異なる画像精緻化処理を使用して生成された2つの画像の特徴画像重み付け組み合わせが生成される。例えばエッジ適応異方性拡散フィルタ(ADF)を2つの異なるパラメータ設定と共に使用して、エッジ保存画像及び滑らかな画像がそれぞれ取得される。次に、特徴画像が2つの画像を合成するために使用され、最終画像が得られる。任意のこのようなアプローチにおいて、特徴画像は、反復画像処理(反復再構成か又は反復画像精緻化)の2つの更新画像を引き算することによって生成される差分画像から生成される。更新画像は、関心の特徴を強調するように選択される。
【0047】
更なる例では、特徴画像は、再構成化パラメータ誘導を提供するように使用される。正則化再構成化では、(特徴画像によって誘導される)可変強度の二次的先行画像を使用して、正則化を誘導することができる。例えば特徴画像内の1の値は、二次的先行画像の平滑化強度を低減し、より小さい値は、次第にそれを可能にする。結果として得られる画像再構成化は、特徴画像からの追加情報を使用して選択的正則化を適用し、(図6及び図7を参照して説明された例におけるように、2つの異なる再構成化を行うことに比べて)1つの再構成化における最適化された正則化につながる。
【0048】
図8は、この単一再構成化アプローチの例を示す。正則化再構成化において選択的正則化のために特徴画像を使用すると、有利な病変定量保存及び背景のノイズ低減が得られた。図8の左端の画像は、ノイズ制御のない古典的OSEM再構成化を使用する正則化再構成化を示す。病変は鮮明だが、背景のノイズは多い。図8の真ん中の画像は、背景におけるノイズを効果的に抑制するために二次的先行画像を使用する正則化再構成化を示すが、小さい病変も平滑化され、コントラストは著しく減少した。図8の右端の画像は、二次的先行画像の強度が特徴画像を使用することによって変調され、ボクセル毎に選択的正則化が誘導され、エッジが保存される正則化画像である。ここでも特徴画像は、上記NEMA IECファントム研究と同じやり方で作成された。このアプローチは、エッジ保存画像と同等の病変保存を提供し、背景のノイズは、特に温かい領域において、著しく低減/抑制された。別の例では、特徴画像は高い値を有する領域においてエッジ保存先行画像といった様々な先行画像の組み合わせを使用することができる。特徴画像において小さい値を有するボクセルには、より強いローパス二次的先行画像を使用することができる。
【0049】
次に図9を参照するに、特徴画像を追加的に又は代替的に表示して、医師又は他の医療専門家に、差分画像を介して検出される特徴に関して視線誘導を提供することができる。図9では、特徴画像40は、例えば医療専門家によって医療画像を確認するために使用される放射線学ワークステーション、腫瘍学ワークステーション若しくは他のコンピュータデバイス、フィルム等のLCD、プラズマ又は他のグラフィカルディスプレイ部品である表示デバイス92上に臨床画像90と並んで表示される。臨床画像90は、任意選択的に、本明細書に開示されるように特徴画像40を利用して生成されても、特徴画像40を用いることなく生成されてもよい。後者の一例として、臨床画像90は、エッジ保存先行画像を使用するMAP再構成化によって生成される。これは、著しいノイズ保持につながる場合があるが、医療専門家は、表示される特徴画像40である「特徴ガイド」を参照することによって、ノイズがあっても、病変を検出することが支援される。
【0050】
更に又は或いは、特徴画像40は、医療専門家によって特定された病変の評価に使用される。このような評価は、医療専門家によって病変と特定された特徴が、ノイズ又は何らかの他の画像アーチファクトではなくて、本当に病変である可能性の定量的評価を提供する際に、様々な要素又はメトリックを使用する。例示的なスケーリング/重み付けスキームを使用する特徴画像は、特徴については、1に近いピクセル又はボクセル値を有し、それ以外は、ゼロに近い値を有するので、医師によって病変と特定された領域又はボリューム内の特徴画像40のピクセル又はボクセル値の合計は、病変特定が正しい可能性のメトリックである。したがって、例えば病変の領域又はボリュームに亘る平均ピクセル又はボクセル値:
【数1】
は、病変可能性メトリックを提供する。式(4)中、Lは、特定された病変を示し、合計は、当該病変内のすべてのピクセル又はボクセルi(i∈L)に亘り、表記|L|は、病変L内のピクセル又はボクセルの総数を示す。式(4)の可能性メトリックは、任意選択的に、例えば特定された病変L全体が、当該病変を含むことが考えられる臓器内にあるかどうか(例えば病変は、前立腺がん解析の場合に、前立腺内にあるかどうか)という点、病変L内の画像テクスチャに基づいた尺度等といった他の要素又はメトリックと組み合わされてもよい。
【0051】
本開示は、好適な実施形態を参照して説明された。前述の詳細な説明を読み、理解した者は修正態様及び修正態様を想到できるであろう。本発明は、添付の請求項及びその等価物の範囲内にある限り、そのような修正態様及び修正態様をすべて含むものとして解釈されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9