(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】オプトエレクトロニクス部品用の誘導的にドープされた混合層、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20220502BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/22 B
H05B33/14 B
H05B33/22 D
(21)【出願番号】P 2019519722
(86)(22)【出願日】2017-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2017076172
(87)【国際公開番号】W WO2018069496
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】102016119599.5
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017117082.0
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519098682
【氏名又は名称】イヌル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルコウスキー、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ラタジクザック、マルチン
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-164533(JP,A)
【文献】特開2008-235327(JP,A)
【文献】特開2007-042314(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002051(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/180036(WO,A1)
【文献】特開2010-067960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード(3)およびアノード(5)と、前記カソード(3)と前記アノード(5)との間の層系とを有するオプトエレクトロニクス部品(1)の製造方法であって、前記層系は、複数の電気活性層と、少なくとも1つの光学的に活性な層(15)とを備え、
前記カソード(3)と前記アノード(5)との間の少なくとも2つの層は、以下のステップ:
a)第1のキャリア手段に溶解した第1の半導体材料を含む第1のインクの提供
b)第2のキャリア手段に溶解した第2の半導体材料を含む第2のインクの提供
c)印刷法を用いた前記第1のインクの適用による第1の層の生成
d)前記第1の層の乾燥
e)第2の層の生成のために、前記第1の層への印刷法を用いた前記第2のインクの適用、
f)前記第2の層の乾燥
を含む方法によって製造することができ、
前記第2のキャリア手段は、前記方法
のステップe)によって、前記第1の層が少なくとも部分的に表面的に溶解するように選択され、その結果、前記第1および第2の層の間に、前記第1および第2の半導体材料が混合して存在す
るドープされた混合層(2)が生成され、前記第2のキャリア手段が、少なくとも2つの異なる溶媒の混合物を含み、第1の溶媒が、前記第1の半導体材料を少なくとも1g/Lの濃度まで完全に溶解し
、第2の溶媒が、前記第1の半導体材料を最大で0.1g/Lの濃度まで完全に溶解し、前記混合層(2)の厚さが、1nm~20n
mである
ことを特徴とする、オプトエレクトロニクス部品(1)の製造方法。
【請求項2】
前記層系が、
少なくとも1つの電子注入層(7)または電子抽出層
少なくとも1つの電子輸送層(11)
少なくとも1つの光学的に活性な層(15)
少なくとも1つの正孔輸送層(13)
少なくとも1つの正孔注入層(9)または正孔抽出層を備え、
少なくとも1つ
のドープされた混合層(2)が、正孔輸送層(13)と正孔注入層(9)または正孔抽出層との間に存在し、および/または少なくとも1つ
のドープされた混合層(2)が、電子輸送層(11)と電子注入層(7)または電子抽出層との間に存在する
ことを特徴とする、請求項1に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)の製造方法。
【請求項3】
前記第1または第2の層が、正孔注入層(
9)または正孔抽出層であり、その有機半導体材料が、誘電性ポリマ
ーからなる群から選択される
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)の製造方法。
【請求項4】
前記第1または第2の層が、正孔輸送層(13)であり、そ
の半導体材料が、ドープされた金属チオシアネー
トおよび/もしくはドープされた金属酸化
物からなる群から選択さ
れる
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)の製造方法。
【請求項5】
前記第1または第2の層が、電子注入層(7)または電子抽出層であり、その有機半導体材料が、誘電性ポリマ
ーからなる群から選択される
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)の製造方法。
【請求項6】
前記第1または第2の層が、電子輸送層(11)であり、その半導体材料が、ドープされた金属酸化
物からなる群から選択され
る
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)の製造方法。
【請求項7】
前
記ドープされた混合層(
2)は、表面的な溶解によって形成された混合層であり、誘起効果に基づ
いて、電気伝導率が増加する
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)の製造方法。
【請求項8】
前記第2のキャリア手段が、少なくとも1つの非プロトン性極性溶媒を含む
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)の製造方法。
【請求項9】
前記印刷法が、スリットノズルコーティング、彫刻印刷、スクリーン印刷、ドクターブレード印刷、スプレーおよび/またはインクジェット印刷法である
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)の製造方法。
【請求項10】
ステップf)での前記乾燥が、赤外線ランプを用いて、1秒~60秒の乾燥時間で行われる
ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)の製造方法。
【請求項11】
ステップe)での前記第2のインクの前記適用およびステップf)での前記乾燥後、0~60秒の待機時間が観察される
ことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)の製造方法。
【請求項12】
カソード(3)およびアノード(5)と、前記カソード(3)と前記アノード(5)との間の層系とを有するオプトエレクトロニクス部品(1)であって、前記層系は、複数の電気活性層と、少なくとも1つの光学的に活性な層(15)とを備え、
前記カソード(3)と前記アノード(5)との間の少なくとも2つの層は
、
a)第1のキャリア手段に溶解した第1の半導体材料を含む第1のインク
を提供
し、
b)第2のキャリア手段に溶解した第2の半導体材料を含む第2のインク
を提供
し、
c)印刷法を用いた前記第1のインクの適用による第1の層
を生成
し、
d)前記第1の層の乾燥
し、
e)第2の層の生成のために、前記第1の層への印刷法を用いた前記第2のインク
を適用
し、
f)前記第2の層の乾燥
すること
によって製造
され、
前記第2のキャリア手段は、前
記ステップe)によって、前記第1の層が少なくとも部分的に表面的に溶解するように選択され、その結果、前記第1および第2の層の間に、前記第1および第2の半導体材料が混合して存在す
るドープされた混合層(2)が
提供され、前記第2のキャリア手段が、少なくとも2つの異なる溶媒の混合物を含み、第1の溶媒が、前記第1の半導体材料を少なくとも1g/Lの濃度まで完全に溶解し
、第2の溶媒が、前記第1の半導体材料を最大で0.1g/Lの濃度まで完全に溶解し、前記混合層(2)の厚さが、1nm~20n
mである
ことを特徴とする、オプトエレクトロニクス部品(1)。
【請求項13】
前記層系が、
少なくとも1つの電子注入層(7)または電子抽出層
少なくとも1つの電子輸送層(11)
少なくとも1つの光学的に活性な層(15)
少なくとも1つの正孔輸送層(13)
少なくとも1つの正孔注入層(9)または正孔抽出層を備え、
少なくとも1つ
のドープされた混合層(2)が、正孔輸送層(13)と正孔注入層(9)または正孔抽出層との間に存在し、および/または少なくとも1つ
のドープされた混合層(2)が、電子輸送層(11)と電子注入層(7)または電子抽出層との間に存在する
ことを特徴とする、請求項
12に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)。
【請求項14】
前記第1または第2の層が、正孔注入層(
9)または正孔抽出層であり、その有機半導体材料が、誘電性ポリマ
ーからなる群から選択される
ことを特徴とする、請求項
12または13に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)。
【請求項15】
前記第1または第2の層が、正孔輸送層(13)であり、そ
の半導体材料が、ドープされた金属チオシアネー
トおよび/もしくはドープされた金属酸化
物からなる群から選択さ
れる
ことを特徴とする、請求項
12~14のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)。
【請求項16】
前記第1または第2の層が、電子注入層(7)または電子抽出層であり、その有機半導体材料が、誘電性ポリマ
ーからなる群から選択される
ことを特徴とする、請求項
12~15のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)。
【請求項17】
前記第1または第2の層が、電子輸送層(11)であり、その半導体材料が、ドープされた金属酸化
物からなる群から選択され
る
ことを特徴とする、請求項
12~16のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)。
【請求項18】
前記部品が、少なくとも2つの電子注入層(7)または電子抽出層と、少なくとも2つの電子輸送層(11)および/または少なくとも2つの正孔輸送層(13)と、少なくとも2つの正孔注入層(9)または正孔抽出層とを備え、
前記電子注入層(7)もしくは電子抽出層および前記電子輸送層(11)ならびに/または前記正孔注入層(9)もしくは正孔抽出層および前記正孔輸送層(13)が、交互に配置され、
各場合において輸送層(11、13)と注入層(7、9)または抽出層との間には
、ドープされた混合層が存在する
ことを特徴とする、請求項13~17のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)。
【請求項19】
前記第1または第2の層が
、スーパーイエロー(ポリフェニレンビニレン共重合体)、ポリ[2-メトキシ-5-(3’,7’-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン(MDMO-PPV)、ポリ[9,9-ジデカンフルオレン-alt-(ビス-チエニレン)ベンゾチアジアゾール](PF10TBT)、ポリ(9,9-ジ-n-オクチルフルオレニル-2,7,-ジイル
)(PFO)、ポリ(スピロフルオレン)、ポリ(アリールフルオレン)、ならびにそれらの共重合体および混合物からなる群から選択される
光学的に活性な層(15)である
ことを特徴とする、請求項
12~18のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)。
【請求項20】
前
記ドープされた混合層(
2)は、表面的な溶解によって形成された混合層であり
、ドーピングにより、電気伝導率が増加する
ことを特徴とする、請求項
12~19のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス部品(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは、カソードおよびアノードと、複数の電気活性層を備える、カソードとアノードとの間の層系とを有するオプトエレクトロニクス部品に関し、部品は、誘導的にドープされた混合層が半導体材料で作られる少なくとも2つの層の間に生成される方法によって製造することができる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、オプトエレクトロニクス部品の分野に関する。例えば有機基材上の、または有機および無機層で作られるハイブリッド部品の形態のオプトエレクトロニクス部品が、この技術において一般的に使用されている。
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)は、一般に、サンドイッチ構造からなり、有機半導体材料の複数の層は、一般に、2つの電極の間に位置する。特に、OLEDは、1つまたは複数のエミッタ層(EL)を備え、好ましくは、可視範囲の電磁放射線は、電子と電子正孔との再結合によって生成される。電子および電子正孔は各々、カソードまたはアノードによって提供され、好ましくは、いわゆる注入層は、注入障壁を下げることによってプロセスを容易にする。したがって、OLEDは、一般に、電子または正孔注入層を有する。さらに、概して、OLEDは、電子および正孔のエミッタ層に向かう拡散方向を支持する電子輸送層(ETL)および正孔輸送層(HTL)を有する。OLEDの場合には、これらの層は、有機材料から構成され、ハイブリッドオプトエレクトロニクス構成部品の場合には、層は、部分的に有機半導体材料および部分的に無機半導体材料を含むことができる。専門用語を単純化するために、有機および無機半導体層を備えることができるハイブリッドLEDは、有機発光ダイオード(OLED)とも呼ばれる。
【0004】
従来の無機LEDと比較して、OLEDは、薄くて柔軟な層構造を特徴とする。このため、OLEDは、従来の無機LEDよりも明らかに多様な用途に使用することができる。
【0005】
その柔軟性のために、OLEDは、例えばスクリーン、電子ペーパーまたは室内照明における使用に非常に適している。
【0006】
光生成のための有機半導体材料(OLED)を含むオプトエレクトロニクス部品の有利な特性はまた、電流の生成にも適用することができる。したがって、有機太陽電池またはハイブリッド電池はまた、従来の無機太陽電池と比較して用途の可能性を明らかに高める薄層構造を特徴とする。有機太陽電池またはハイブリッド太陽電池の構成は、OLEDまたはハイブリッドLEDの構成と類似している。言語的な単純化のために、有機-無機層で作られるハイブリッド太陽電池もまた、有機太陽電池という用語に包含される。
【0007】
しかしながら、エミッタ層の代わりに、1つまたは複数の吸収層が光活性層として存在する。吸収層において、入射電磁放射線により、電子-正孔対が生成される。無機太陽電池とは対照的に、概して、有機エミッタ層では、最初にいわゆる励起子の形成が起こり、これは束縛電子-正孔対として存在する。それらは、自由電荷キャリアにその後分離される。
【0008】
追加の層は、電子および正孔輸送層、ならびに電子抽出および正孔抽出層を備える。それらは有機材料または有機および無機材料からなり、それらの電気化学電位が供与体および受容体層としてシフトして内部電界を太陽電池に生成し、励起子を分離して自由電荷キャリアを電極に向けて消散させる。吸収層への電磁放射線の入射により、電圧または電流の生成のために電子がカソードに提供され、電子正孔がアノードに提供される。
【0009】
有機太陽電池の特定の利点は、特に有機半導体の非常に高い光吸収係数にあり、それによって、100nm未満の範囲の薄い吸収層の場合でさえ、優れた結果を依然として達成することができる。
【0010】
薄層構造のために、有機太陽電池は有利に製造することができ、それらは広い表面にわたって建物にフィルムコーティングとして適用することができ、または包装のような紙製品に一体化することができる。
【0011】
有機または無機-有機層で作られるオプトエレクトロニクス部品のさらなる適用可能性は、例えば光検出器に関する。それらも光電効果を使用し、電子-正孔対が光活性層に生成される。太陽電池のように電流を生成するために使用される代わりに、それらは、例えばカメラ用の光を検出するために使用される。
【0012】
有機半導体をベースとする、上述のオプトエレクトロニクス部品の薄層構造は、日常生活において明らかにより柔軟な使用を可能にするだけでなく、無機半導体をベースとする従来のLED、太陽電池または光検出器と比較して、費用効果の高い製造可能性を特徴とする。
【0013】
しかしながら、有機半導体と比較して、現在使用されている有機半導体は、欠点を有する。したがって、有機半導体の電気性能、すなわち、特に伝導率は、従来の無機半導体よりも平均して劣っている。これは、特に有機半導体の自由電荷キャリアの低い電荷密度によるものである。
【0014】
有機エレクトロニクスでは、半導体層の材料は、いわゆるパイ系またはπ系から構成される。使用される有機分子および/またはポリマーのパイ系は、非局在化している、すなわち自由電子であり、これが材料中の電荷または電流を可能にする。
【0015】
有機半導体の導電性は、存在する非局在化電子(パイ電子)の数によって本質的に予め決定される。さらに、パイ電子は、特別な幾何学的形状を有するパイ軌道上でのみ非局在化され、したがって有機材料中に異方性(空間内の全方向に均一ではない)の電気伝導率をもたらす。
【0016】
これは、当然の制限となる。この制限は、それ自体が有機系の電気伝導率の制限要因として現れる。
【0017】
有機半導体の電荷輸送(電流)および固有の電荷は、典型的には、無機半導体よりも数桁少ない。
【0018】
有機半導体の電気伝導率および性能を改善するために、有機半導体に他の有機材料をドープすることが知られている。ここでは、電気特性、特に電荷キャリア密度に目標とする方法で影響を及ぼすために、外来分子が有機半導体層に導入される。例えば、有機半導体の分子を還元または酸化するために、異なる電子親和力またはイオン化電位を有する無機分子を導入することができる。異なる構成を有する外来原子が導入される無機半導体とは対照的に、ドーパントの質量分率は、かなり高い。ドーパントの導入量はキャリア材料の導入量よりも少ないが、パーミルまたはパーセントの範囲のドーピング物質の濃度は、珍しいことではない。いわゆるp型ドーピングでは、電子受容体がドープされ、いわゆるn型ドーピングでは、電子供与体がドープされる。
【0019】
オプトエレクトロニクス部品を製造するための有機半導体層の適用のために、様々な方法が開発されてきた。それらは、特に真空蒸着プロセスまたは湿式化学堆積法を含む。
【0020】
蒸着プロセスでは、分子は蒸着によって、すなわち真空条件下での昇華によって堆積される。したがって、方法は、真空堆積とも呼ばれる。真空蒸着プロセスは、特に規定された層の製造を可能にし、有機半導体のドーピングも可能である。しかしながら、方法の欠点は、プロセスコストが高いことである。一方では、高価な設備が真空堆積には必要である。さらに、方法は、堆積が概して非特異的に起こり、また堆積が基板だけでなく蒸着設備の他の部分にも起こるので高い材料損失を特徴とする。
【0021】
有機構成部品の大量製造のためには、湿式化学堆積プロセスがはるかに有望である。ここでは、有機半導体材料の流体処理が行われる。この目的のために、有機材料は、適切に選択された溶媒に溶解して存在する。
【0022】
既知の湿式化学法は、例えばスピンコーティング法であり、基板を回転プレートに適用し、ポリマーまたは小分子を含む溶液をスピンコーティングによって均一に適用することができる。ディップコーティング法では、基板をコーティング溶液に浸漬する。基板を引き出すと、その上に流体フィルムが残るので、層を次々に適用することができる。
【0023】
加えて、例えばインクジェット(インクジェット印刷)、スロットダイ(スロットダイコーティング)、ブレードコーティング(フィルムコーティング)法のような印刷法は、低い製造コストで特に高い柔軟性を特徴とする。
【0024】
スピンコーティングまたはディップコーティング法では、ドープされた有機半導体も適用することができるが、これは一般的な印刷法において工業的規模では不可能である。有機半導体のドーピングによって、凝集物が溶液中に形成され、それが効果的な印刷を防止するか、または少なくとも印刷をかなり妨げる。この場合、印刷ヘッドに目詰まりが発生する。目詰まりは濾過プロセスを介して減少させることができるが、そのような凝集物の濾過は、厳密には所望のドーピングの排除をもたらすことになる。
【0025】
したがって、現時点では、p型またはn型にドープされた有機材料の印刷を用いた有機オプトエレクトロニクス構成部品の信頼性がありかつ費用効果の高い製造に適した印刷法は、産業界には存在しない。
【0026】
有機半導体層のための既知の印刷法の別の欠点は、例えば3~8層の複雑な多層構造を有する薄層構成部品の製造にそれ自体が現れる。
【0027】
例えば有機発光ダイオード、トランジスタおよび太陽電池などの有機エレクトロニクスにおける最新の構成部品のためには、好ましくは、機能的に最適化された多層構造が使用される。例えば、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層などのような異なる層は、部品の電気効率または性能を向上させるために、部品において特定の目的を満たす。複数の注入および輸送層の電気特性を調整することによって、例えばOLEDが同じ電圧および同じ電流消費でより強い光度を生成することを達成することが可能である。
【0028】
従来技術では、例えば3~8層が上下に重なっているそのような多層構造の印刷中に、第1の層の後の各連続層は、下層を表面的に溶解または分離してはならないと考えられる。そのような制御されていない表面的な溶解は、場合によっては層の欠陥または損傷をもたらし、それによってオプトエレクトロニクス構成部品の電気性能ならびに有効寿命をかなり減少させる可能性がある。
【0029】
異なる層の表面的な溶解を防止するために、異なるプロセスが確立されている。これは、特に架橋および直交溶媒の使用に関する。
【0030】
架橋のための典型的な温度は、150~250℃であり、湿潤層の通常の乾燥は、100~140℃で行われる。加えて、架橋法は、むしろ有機材料を損傷する傾向があり(有機材料の劣化温度は140~250℃の範囲である)、使用において少数の非常に安定な有機材料に限定される。さらに、それらの固有の分解温度未満の有機材料は酸素で酸化し始めるので、空気中での処理ももはや不可能である。
【0031】
架橋中、印刷後の印刷されたインク、すなわち、溶媒に溶解して存在する有機材料は、強力なUV放射線または150℃を超える非常に高い温度でエネルギー的に活性化される。それによって、化学プロセスが開始され、分子またはポリマーの分子内架橋をもたらす。最終的には、化学的に結合したネットワークが形成されるが、これは溶解するのが困難である。
【0032】
しかしながら、ここでの欠点は、有機材料を架橋するために開始された化学反応が、特に電荷キャリア移動度の減少により、電気性能に悪影響を及ぼすことである。例えば、電荷輸送を担うパイ系は、損なわれたり破壊されたりすることがある。
【0033】
架橋のための典型的な温度は、150~250℃であり、湿潤層の通常の乾燥は、100~140℃で行われる。このことから、架橋法は、有機材料を損傷する傾向があるという結果になる。一般的に使用される有機材料の分解温度は、140~250℃の範囲である。このため、架橋法は、使用を少数の非常に安定な有機材料に限定する。さらに、それらの固有の分解温度未満の有機材料は酸素で酸化し始めるので、空気中での処理は不可能である。これに対する代替案は、直交溶媒の使用からなる。ここでは、有機半導体層の印刷用のインクは、次の層の溶媒が下層を表面的に溶解することができないように製造される。すなわち、下層の材料は、次の層の溶媒に不溶であるべきである。しかしながら、厳密には3層を超える薄層構造においては、この条件が実際の実施において著しく困難をもたらす。特に、4層を超える場合、下層の表面的な溶解を確実に防止する直交溶媒はほとんど存在しない。
【0034】
問題、すなわちその後に印刷された層が表面的に溶解し、その結果下にある層を損傷する可能性があるという問題に対処するために、混合(ハイブリッド)プロセスを使用した作業が産業界において行われることがある。ここでは、通常、最初の1~3層、すなわち、発光層までの層が印刷され、残りの層は真空蒸着法によって適用される。追加の蒸着ステップが必要であるため、ハイブリッド法は、層の完全な印刷よりも明らかに高価でコストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
本発明の目的は、従来技術の欠点を排除したオプトエレクトロニクス部品、およびそれを製造するための方法を開発することであった。特に、オプトエレクトロニクス部品およびそれを製造するための方法が提供されるべきであり、それによって印刷された有機材料のドーピングは、構成部品の高い電気性能を同時に確実にするために、費用効果および信頼性があり、かつ簡単な方法で達成される。さらに、本発明は、好ましくは、多層の薄層構造を有する印刷されたオプトエレクトロニクス構成部品の提供を可能にするものであり、それによって望ましくない表面的な溶解プロセスは、簡単かつ効果的な方法で防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の目的は、独立請求項によって達成される。従属請求項は、本発明のオプトエレクトロニクス構成部品およびオプトエレクトロニクス構成部品を製造するための本発明の方法の好ましい実施形態を特徴付ける。
【0037】
好ましい実施形態では、本発明は、カソードおよびアノードと、カソードとアノードとの間の層系とを有するオプトエレクトロニクス部品に関し、層系は、複数の電気活性層と、少なくとも1つの光学的に活性な層とを備え、カソードとアノードとの間の少なくとも2つの層は、以下のステップ:
a)第1のキャリア手段に溶解した第1の半導体材料を含む第1のインクの提供
b)第2のキャリア手段に溶解した第2の半導体材料を含む第2のインクの提供
c)印刷法を用いた第1のインクの適用による第1の層の生成
d)第1の層の乾燥
e)第2の層の生成のために、第1の層への印刷法を用いた第2のインクの適用、
f)第2の層の乾燥
を含む方法によって製造することができ、
第2のキャリア手段は、方法ステップe)によって、第1の層が少なくとも部分的に表面的に溶解するように選択され、その結果、第1および第2の層の間に、第1および第2の半導体材料が混合して存在する誘導的にドープされた混合層が生成される。
【0038】
方法は、ステップb)の後にステップ
b-ビス)基板の提供
に続くように修正されることもまた好ましい場合がある。
【0039】
この修正された方法では、さらにステップc)は、ステップ
c’)基板への印刷法を用いた第1のインクの適用による第1の層の生成
になる。
【0040】
この修正された方法によって、非常に信頼性があり堅牢な部品を製造することができる。
【0041】
本発明によるオプトエレクトロニクス部品は、好ましくは、電極(すなわち、アノードまたはカソード)と、光学的に活性な層および電気的に活性な層(すなわち、例えば電荷キャリア注入または抽出層、または電荷キャリア輸送層)とを備えることを特徴とする。オプトエレクトロニクス部品の機能性は、好ましくは、特に光または電流生成のために使用することができる光学的に活性な層を特徴とする。本発明の意味における電気的に活性な層は、部品の電気機能性を確実にし、光学的に活性な層と電極との間に配置される層を表す。本発明の意味において、例えば、電荷キャリア注入または抽出層および電荷キャリア輸送層は、電気的に活性な層である。さらに、本発明の意味において、電荷キャリアは、好ましくは、電子または電子正孔を意味すると理解される。ここで正孔または電子正孔という用語は、好ましくは、同義的に使用される。当業者は、光学的に活性な層の機能として、オプトエレクトロニクス部品の所望の機能を達成するためにどのように電気的に活性な層を配置するべきかを知っている。オプトエレクトロニクス部品または構成部品、あるいは薄層構成部品または薄層部品という用語は、好ましくは、同義的に使用される。例えば、電極、アノード、カソード、光学的に活性な層、電荷キャリア抽出または注入層、および電荷キャリア輸送層などのオプトエレクトロニクス構成部品を説明するために本明細書で使用される用語は、当業者がこれに関連して使用する意味を有すると理解されるべきである。さらなる定義もまた、本文書の以下に見出すことができる。
【0042】
半導体材料は、好ましくは、有機半導体材料を表す。しかしながら、有機および無機半導体材料または他の無機半導体材料で作られるハイブリッド材料もまた、使用することができる。有機半導体材料という用語は、好ましくは、パイ電子系の構成のために半導体である有機系材料を表す。半導体および半導体材料という用語は、好ましくは、同義的に使用される。半導体およびパイ電子系などの本明細書で使用される用語は、好ましくは、それらが当業者によって解釈されるように、またはそれらが専門文献、例えばThorsten U.KampenによるLow Molecular Weight Organic Semiconductorsで使用される通りであると理解されるべきである。
【0043】
本発明のオプトエレクトロニクス構成部品は、好ましくは、電気的に活性なおよび/または光学的に活性な層が印刷法を用いて適用され得ることを特徴とする。印刷法という用語は、物理または電子マスタの再現のためのすべての方法を網羅するその最も広い意味で理解されるべきであり、印刷インクの形態の半導体材料の基板を適用することができる。印刷法という用語はまた、物理または電子マスタを再現するためのすべての方法を最も広い意味で包含することができ、印刷インクの形態の半導体材料を基板に適用することができる。本発明の意味において、印刷インクまたはインクという用語は、好ましくは、室温で液体の形態で存在し、半導体材料およびキャリア材料を含むかまたはそれらからなる組成物を意味すると理解される。キャリア手段は、好ましくは、印刷される半導体材料が溶解して存在する溶媒または溶媒混合物であり、それによってオプトエレクトロニクス部品用の層は、一般的な印刷法を使用して適用され得る。
【0044】
印刷法としては、例えば、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、または特に、インクジェット印刷法および/またはスリットノズルコーティング法を考慮することができる。例えば蒸着法とは対照的に、印刷法は、特に大量製造へのそれらの高い適合性を特徴とする。加えて、プロセスは、特に費用効果が高い。
【0045】
例えば、Novaledの材料の場合のように、一般に使用される有機ドーピングでは、新しい電子バンドが生成され、それによって電荷キャリア濃度が無機ドーピングの場合と同様に増加する。ここでは、基本エネルギー状態における供与体から受容体への電荷移動は、2つの材料が互いに混合されるときに追加の励起なしに起こる。このプロセスで凝集物が形成され、これは電荷移動錯体とも呼ばれる。それらは、ドーピング自体を形成する2つの元の材料から形成された新しい材料を表す。
【0046】
本発明の基礎として、印刷法によって製造することができる既知のオプトエレクトロニクス部品では、有機半導体材料で作られるドープされた層を適用することができないことが認識されており、これについては、例えばインク中の有機材料の印刷中に凝集物が形成されるために印刷ノズルの目詰まりが起こり得るからである。それによって、電気的に活性な層の電気伝導率は、既知の印刷されたオプトエレクトロニクス構成部品においてかなり制限される可能性がある。
【0047】
驚くべきことに、本発明によれば、印刷法を介して有機半導体材料で作られるドープされた層を備える印刷された構成部品を提供することができ、これは製造中に複雑さを招くことはない。
【0048】
この目的のために、既知の手法とは対照的に、ドープされた有機半導体材料を既に含有するインクが印刷されても印刷は行われない。代わりに、本発明によれば、印刷された層に使用されるインクのキャリア材料の適切な選択の場合、印刷が行われた後に層のドーピングを行うことができることが認識されている。この目的のために、混合材料の電荷キャリア密度のみが供与体と受容体の異なる電子親和力のためにシフトされ、その結果として移動度の対応する電荷タイプが増加するという事実に基づく誘導ドーピングの効果が利用され、これは電気伝導率を増加させる。ここでは、それは主に電荷キャリア濃度の増加ではなく、むしろ発生する電荷キャリアの移動度の増加である。
【0049】
本発明のオプトエレクトロニクス構成部品において、これに関して、第2のキャリア手段は、下層または第1の層への適用後に前記第1の層が少なくとも部分的に表面的に溶解するように選択されることが好ましく、すなわち、好ましくは、層の表面的に溶解した部分は、適用時に固体の凝集物状態にあり、有利にはここでもまた実質的に液化され、この部分と第2のキャリア手段との混合が可能であるような状態にされる。この目的のために、キャリア手段は、好ましくは、下層または第1の層の第1の半導体材料に対して中から貧溶媒に相当するように選択される。
【0050】
印刷された第2のキャリア手段の溶解特性のために、2つの層の間の境界表面には、誘導的にドープされた混合層が生成される。ここでは、第1の層または下層から第2の層への有機または無機分子の部分的な浸出が起こる。プロセスで生成された混合層において、したがって第1および第2の半導体材料は、2つの層の境界領域において混合して存在する。それによって、ドープされた半導体材料が実装される。有機化学における誘起効果によれば、それによって混合層の電荷は、移動度を増す。プロセスにおいて、追加の自由電荷キャリアは生成されないが、むしろ分極効果によって所望の方向にフェルミ準位がシフトする。
【0051】
誘起効果は、特に、炭素化合物の原子または官能基の異なる電気陰性度によって引き起こされる。これにより電荷の非対称性が生じ、それによって分子の電子密度が変化する。負の誘起効果(-I効果)では、電子はより高い電気陰性度を有する原子または分子の方にシフトするが、正の誘起効果では、電子は低い電気陰性度を有する原子または分子から引き離される。電荷キャリアのシフトは、電荷キャリアのより高い移動度を有利にもたらす。
【0052】
本発明の意味において、したがって誘導的にドープされた混合層は、好ましくは、表面的な溶解によって形成された混合層を表し、誘起効果に基づくドーピングのために、電気伝導率が増加する。
【0053】
有利には、誘導ドーピングでは、電荷移動錯体の形成による既知のドーピングの場合のように凝集物形成が生じることなく、ドープされた層を1つのステップで印刷することもできる(
図3と
図4を比較されたい)。溶解または表面的な溶解のプロセスは、ここで印刷ステップの数を減らすことができるので、誘導的にドープされた混合層の形成が実際に有利であるために、有利である。誘導混合層の別個の印刷の場合のように、3つの印刷ステップの代わりに、2つの印刷ステップのみが必要である。
【0054】
したがって、本発明のオプトエレクトロニクス構成部品は、費用効果がありかつ信頼性がある印刷法によってもたらされ得る、特に満足のいく電気性能を特徴とする。構成部品は、性能の改善が達成される。さらに、方法によって、時間、材料および作業ステップの節約を達成することができ、製造が単純化される。特に作業ステップの削減により、誤差を排除することができ、品質を向上させることができる。提示された方法は、オプトエレクトロニクス部品を製造するための技術的可能性の数を増加させる。
【0055】
有機および/または無機半導体材料を含むインクを使用して印刷される層は、好ましくは、両方とも電気活性層、すなわち、例えば注入または抽出層または輸送層、また光学的に活性な層であり得る。したがって、提示された方法は、多種多様な層についての一般的な方法に対する代替案を構成する。
【0056】
例えば、第1および第2の層は各々、第1および第2の電気活性層であり得、これらの電気活性層の間には、有利に誘導的にドープされた混合層が生成される。しかしながら、第1の層は、例えば電気活性層でもあり得る一方、第2の層は、光学的に活性な層であり、その結果、誘導的にドープされた混合層がこれらの層の間に形成される。
【0057】
本発明のオプトエレクトロニクス部品は、好ましくは、それらの境界領域に誘導混合層を有する有機および/または無機半導体材料で作られる少なくとも2つの層の存在を特徴とする。オプトエレクトロニクス部品の追加の層は、有機半導体材料を使用して印刷することができるが、そうである必要はない。例えば、追加の電子輸送層が無機ドープ半導体材料、例えば酸化アルミニウム亜鉛を含むことが好ましい場合がある。このように組み合わされた層は、構成部品の改善をもたらすことができる。
【0058】
特に好ましい実施形態では、混合層の厚さは、1nm~20nm、好ましくは、1nm~10nmである。一方では、混合層の厚さが1nm~20nmであることが特に好ましい。この厚さは、特に有利な電気特性をもたらし、同時に上記の方法で実施するのが驚くほど容易であることがわかった。ここでは、混合層の厚さは、1nm~10nmであることが特に好ましい。混合層のそのような厚さは、特に改善された電気特性によって、部品の有効性を増大させる。混合層の厚さは、好ましくは、第1および第2の半導体材料が存在する、第1および第2の層の間の境界領域の面積に対応する。したがって、混合層の下境界は、表面的に溶解していない第1の層の上領域に対応する。混合層の上境界は第2の層の下領域に対応し、第1の半導体材料の分子はもはや存在せず、したがってドーピングは存在しない。好ましくは、下方および上方は、層の連続的な適用に沿った方向を表す。
【0059】
混合層の厚さは、特に第1の半導体材料の溶解度および乾燥前の曝露時間によって設定することができる。乾燥は、好ましくは、材料を少なくとも部分的な液体の凝集物状態から固体の凝集物状態に変換するための、熱の誘発作用を意味すると理解される。特に溶液が存在するとき、少なくとも1つの溶媒を蒸発させ、溶液の以前に溶解した固体成分のみが残るようにすることもまた好ましい場合がある。混合層の厚さを測定し、この層の材料の対応する溶媒への溶解度を知ることにより、対応する適切なキャリア手段を日常的に決定することができる。
【0060】
混合層の厚さの測定のために、誘導ドーピングにおいて、より短いまたはより長い波長への光吸収端のシフトが観察され得るという事実を利用することが可能である。光学バンド端のシフトに基づいて、誘導ドーピングの強度、したがって層厚を決定することができる。この目的のために、UV-Vis分光計を測定機器として好ましくは使用することができる。UV-Vis分光計を用いて、UVおよび可視光を使用する分光法を好ましくは実行することができる。UV光は、好ましくは、10nm未満~380nmまでの波長範囲の光を意味すると理解される。当業者には、可視光は、特に380nm~700nmの光を意味すると理解される。
【0061】
一定の層厚を設定するために、例えば以下の経験的方法を使用することができる。インクは、最初に複数の溶媒とその中に溶解した固体、すなわち、半導体材料から製造される。
【0062】
インクの溶剤の選択においては、下層を溶解することができる溶媒Aと、下層を溶解することができない溶媒Bとを選択することが好ましい。
【0063】
2つの溶媒AおよびBから、異なる混合比を有する混合物が調製されるが、その中に溶解される固体の濃度は、一定に保たれる。30:70、50:50および70:30の割合で、互いに対する溶媒の質量比で作業することが特に効果的であることが見出された。上述の割合で行われる経験的方法は、その特定の効率のために優れていることがわかった。そのような試験方法によって、1回の試験反復内で適切なキャリア手段が既に見出され得ることは驚くべきことであった。
【0064】
続いて、3つのインクの組合せすべてが下層の別々の部位に印刷されて表面的に溶解される。UV-Vis分光計によって、誘導ドーピングおよび光学バンド端の強度を決定することができる。評価において、純粋な材料、すなわち、下層および印刷された固体の吸収も考慮に入れる必要がある。
【0065】
混合層について述べた好ましい層厚は、5nm~50nmの第1または第2の層の層厚と組み合わせると特に有利である。この範囲において、誘導的にドープされた混合層は、例えば輸送または注入層としての層の特定の機能性に影響を及ぼすことなく、層の間の電気伝導率を最適に支持する。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、第2のキャリア手段は、第1の半導体材料を少なくとも1g/Lの濃度まで完全に溶解する少なくとも1つの溶媒を含む。したがって、第2のキャリア手段の第1の半導体材料の溶解度は、少なくとも1g/L(グラム/リットル)である。指標は、質量濃度による定量的溶解度の一般的な定義に対応する。溶解度は、好ましくは、材料が溶媒に溶解することができる濃度を示す。すなわち、材料が沈殿することなく均一な分布で溶媒中に混合する濃度である。上記の境界は、特に1nm~20nm、好ましくは、1nm~10nmの好ましい厚さを有する、誘導的にドープされた混合層の特に信頼性がある形成を可能にする。この好ましい実施形態によって、混合層の製造における誤差を排除することができる。
【0067】
溶解度は、理論モデルに基づいて予測することができる。例えば、ハンセン溶解度パラメータは、この目的に適している可能性がある(Hansen、Charles M.「The three dimensional solubility parameter」、Danish Technical:Copenhagen:14(1967))。しかしながら、好ましくは、溶解度は実験的に決定される。定量的溶解度を決定するための適切な実験的方法は、以下の方法であり、これは考慮中の10ミリリットルの溶媒に10ミリグラムの固体を溶解することを含む。一定量の固体を、溶媒と共に容器に添加する。加えて、テフロン被覆磁気撹拌棒を加え、容器を気密に閉鎖する。続いて、容器を制御可能な磁場を有する加熱プレート上に置き、25℃の加熱温度を設定し、そして磁場をオンにして撹拌棒が混合物を撹拌するようにする。このプロセスは、24時間行われる。その後、容器を開けて溶液をマイクロシーブ(孔径0.2μm)で濾過する。濾過された溶液を捕捉する容器の重量は、予め決定されている。濾過後、溶液を真空オーブン中で蒸発させる。加熱温度は、使用される溶媒に依存する。乾燥するまで加熱した後、容器の重量を再び測定するが、重量の増加は、10ミリリットルの溶媒に溶解した固体の量に対応する。この方法により、定量的溶解度は、特に確実に決定することができる。
【0068】
このようにして選択された溶媒を有する層、すなわち電気活性または光学的に活性な層の適用のためのインクの使用は、驚くべき利点を伴う従来技術からの逸脱を表す。従来技術においては、特に、滑らかな境界表面を得るために、下にある層を表面的に溶解することが厳密には想定されていない溶媒が選択される。溶解度を適切に選択すると混合層が形成され、したがって電気性能を改善することは、驚くべき発見であった。
【0069】
少なくとも1g/Lの定量的溶解度は、特に非プロトン性極性溶媒の材料のクラスによって達成される。
【0070】
好ましい実施形態では、第2のキャリア手段は、したがって少なくとも1つの非プロトン性極性溶媒を含む。
【0071】
溶媒の分子が、有機化合物が存在し、そこからプロトンとしての水素原子を切り離すことができる原子団を有さない場合、溶媒は、非プロトン性と呼ばれる。極性は、好ましくは、原子団における電荷シフトの結果として形成される電荷の別々の重心の形成を指し、それによって原子団の中性を保つことができる。
【0072】
非プロトン性極性溶媒の形態の第2のキャリア材料を提供することによって、上述の特性を有する誘導的にドープされた混合層は、特に簡単かつ確実に製造することができる。
【0073】
本発明のさらに好ましい実施形態では、オプトエレクトロニクス部品は、印刷法がスリットノズルコーティング、彫刻印刷、スクリーン印刷、ドクターブレード印刷、スプレーおよび/またはインクジェット印刷法であることを特徴とする。スリットノズルコーティングは、好ましくは、薄い液体層をウェブタイプの基板に適用するために使用される、当業者に公知のコーティング技術である。彫刻印刷は、特に当業者によく知られている種類のグラビア印刷法を指す。グラビア印刷法は、有利には、再現される要素が印刷ブロックに凹部として存在する印刷技術である。ここでは、印刷インクは、典型的には、凹部にのみ存在し、印刷される基板は、印刷ブロックに対して押し付けられる。スクリーン印刷は、好ましくは、印刷インクが細かいメッシュの布を通して印刷用の基板または材料に印刷される印刷法を指す。ドクターブレード印刷では、好ましくは、印刷シリンダから過剰の印刷インクを拭き取るために、いわゆるドクターブレードが使用される。インクジェット印刷法では、印刷された画像は、小さなインク液滴の目標とされた発射または偏向によって生成される。
【0074】
上述の方法によって、特にインクジェット印刷法を使用して、層を特に正確かつ均一に適用することができる。それによって、特に信頼性がある均一な分布およびドーピングを有する混合層が形成される。このようにして製造されたオプトエレクトロニクス部品は、優れた品質、堅牢性および性能を特徴とする。
【0075】
第2の電気活性層の適用後の乾燥は、好ましくは、表面的な溶解プロセスを完了し、そして混合層の層厚を決定する。乾燥のためには、種々の方法が適しており、好ましくは、成分の加熱によってキャリア手段または溶媒の蒸発を促進する。例えば、熱風乾燥機が適している。しかしながら、層を室温で乾燥させることも好ましい場合がある。乾燥中の温度が低い場合、乾燥は概してより長くかかる。
【0076】
オプトエレクトロニクス部品の好ましい実施形態では、乾燥は、ステップf)において、すなわち第2の層の適用後に赤外線ランプを用いて、好ましくは、60℃~200℃、特に好ましくは、80℃~150℃の温度で、1秒~60秒、好ましくは、5秒~30秒の乾燥時間で行われる。60℃~200℃の好ましい温度範囲および1秒~60秒の好ましい乾燥時間によって、適切な層系は、特に信頼性が高く製造することができる。上記の温度範囲および5秒~30秒の好ましい乾燥時間によって、層系の堅牢性が向上する。乾燥中、1秒~60秒の乾燥時間で80℃~150℃の温度範囲を使用することが特に好ましい。それによって、製造における誤差を排除することができる。特に、80℃~150℃の温度範囲において5秒~30秒の乾燥時間で乾燥することを含む製造は、方法の単純化をもたらし、特に堅牢な部品をもたらす。
【0077】
特に上述の温度および継続時間を使用する赤外線ランプの使用は、特に効果的であると同時に穏やかな乾燥を表す。したがって、例えば既知の架橋法とは対照的に、本実施形態では、関係する材料の化学活性化は起こらないか、またはほとんど起こらない。キャリア手段を迅速かつ効率的に蒸発させる一方で、層および形成された混合層の電気または光学特性は維持される。特に、そのような乾燥法は、非常に満足のいくように自動化および合理化することができる。
【0078】
さらに好ましい実施形態では、ステップe)での第2のインクの適用およびステップf)での乾燥後、0~60秒、好ましくは、3秒~40秒の待機時間が観察される。待機時間は、好ましくは、少なくとも混合層の乾燥および形成に供される時間に対応する。したがって、混合層の厚さは、このパラメータによって影響を受ける可能性がある。キャリア手段中の半導体材料の定量的溶解度が少なくとも1g/Lであることに関連した上述の待機時間の場合、優れた結果を得ることができる。実験的経験によれば、表面的な溶解のプロセスは印刷中に既に開始し、乾燥ステップの開始によりすぐには終わらないことに留意しなければならない。そのため、待機時間を観察しないことも好ましい場合があるが、3秒~40秒の待機時間は、特に信頼性がある混合層を生成する。0~60秒の待機時間も利点があり、このようにして製造された混合層は、特に高性能の部品を確実にする。
【0079】
さらに好ましい実施形態では、オプトエレクトロニクス部品は、第2のキャリア手段が、少なくとも2つの異なる溶媒の混合物を含み、第1の溶媒が、第1の半導体材料を少なくとも1g/Lの濃度まで完全に溶解し、第2の溶媒が、第1の半導体材料を最大で0.1g/Lの濃度まで完全に溶解することを特徴とする。
【0080】
好ましい実施形態では、第2の半導体材料が溶解して存在する第2のキャリア手段は、したがって、異なる表面的な溶解強度の異なる溶媒の組合せを含む。それによって、第2の層を第1の層に適用する間、誘導混合層の形成のための表面的な溶解プロセスは、特に確実に制御することができる。
【0081】
溶媒の選択は、有利には、溶解させるべき第1の(下)層の半導体材料に依存する。
【0082】
第1の半導体材料が有機材料、例えばポリフェニレンビニレン共重合体、例えばMEH-PPV、スーパーイエローまたはMDMO-PPVである場合、乳酸ブチルを高い表面的な溶解強度を有する溶媒として使用することができる。乳酸ブチルは、下層の第1の層のポリフェニレンビニレン共重合体を少なくとも1g/Lの濃度まで完全に溶解する。一方、例えばイソプロパノールは、ポリフェニレンビニレン共重合体を0.1グラム/リットル未満でしか溶解しない。したがってこの場合、イソプロパノールは、弱い溶解強度を有する溶媒として適している。したがって、第2の有機半導体材料のためのキャリア手段として、乳酸ブチルとイソプロパノールとの組合せを好ましくは使用することができ、その比は、表面的な溶解容量を制御する。イソプロパノールに対する乳酸ブチルの比の割合が高いほど、誘導的にドープされた混合層の面積が大きくなる。30:70の乳酸ブチル対イソプロパノールの比が、1nm~10nmの混合層の好ましい層厚のために特に有利であることが見出された。このようにして、特に堅牢な部品を製造することができる。
【0083】
他方、第1の(下)層が、例えばポリ(塩化ビニリデン-co-アクリロニトリル)からなる場合、80:20の比の溶媒オルトジクロロベンゼンとメシチレンとの組合せを有するキャリア手段は、ほぼ完全に直交している。すなわち、オルトジクロロベンゼンおよびメシチレンからなる溶媒の組合せは、ポリ(塩化ビニリデン-co-アクリロニトリル)を0.1グラム/リットルの濃度未満でしか溶解しない。上記のキャリア手段を用いて、したがって明らかに1nm未満の層の表面的な溶解が起こる。
【0084】
しかしながら、誘導的にドープされた混合層を形成するための表面的な溶解を達成するために、より強力に溶解する溶媒をキャリア手段に添加することができる。例えば、アセトフェノンがこの目的に適しており、これはポリ(塩化ビニリデン-co-アクリロニトリル)を明らかに1g/Lを超える濃度で溶解することができる。o-ジクロロベンゼンの代わりに5体積%のアセトフェノンを添加することによって、すなわち、75体積%のo-ジクロロベンゼン、20体積%のメシチレンおよび5体積%のアセトフェノンを含むキャリア手段を添加することによって、ポリ(塩化ビニリデン-co-アクリロニトリル)(PVDC-co-PAN共重合体)に関して1~3nmの表面的な溶解を達成することができ、それによって電気的に有利なドープされた混合層が達成される。
【0085】
直交溶媒の組合せへの少量の特に強力に溶解する溶媒の添加は、第2のキャリア手段の表面的な溶解挙動の特に正確な調整を可能にする。
【0086】
有利には、例えばアセトフェノンなどの非プロトン性極性溶媒は、例として挙げたPVDC-co-PAN共重合体だけでなく、電気的に活性または光学的に活性な層であると考えることができるほぼすべての有機半導体材料に適している。したがって、好ましくは、第1の層の多種多様な材料に対して、弱い溶媒または溶媒混合物を含有するキャリア手段を製造することができ、これは、誘導的にドープされた混合層を形成するために少量の非プロトン性極性溶媒を添加することによって最適に設定することができる。したがって、特に簡単で費用効果の高い製造を達成することができる。
【0087】
第1の層の制御された表面的な溶解下で第2の層を適用することの追加の利点は、ドープされた混合層による電気性能の改善に加えて、層の組合せを後続の層の表面的な溶解に対するシールドとしても使用できることである。したがって、第2の層の第2の材料は、下にある第1の層の材料よりも数桁も溶解度が低い、または第2の層の材料がはるかに少ない数の溶媒に溶解するように選択することができる。これにより、次の層、すなわち、例えば追加の電気的または光学的に活性な層を、より広い選択の溶媒からのキャリア手段を使用して印刷することが可能になる。
【0088】
したがって、第2の半導体材料は、第2の層が、印刷される後続のインクの追加の溶媒に対して不動態化をもたらす一種の電気的に活性な犠牲層または界面層(中間層)として機能するように選択することができる。連続して印刷される材料の溶解度を適切に選択することによって、下層に望ましくない表面的な溶解が生じることなく、多数の層をしたがって部品に適用することができる。この実施形態を含む製造方法は、時間、材料、作業ステップ、したがってコストを節約する。
【0089】
本発明の好ましい実施形態では、オプトエレクトロニクス部品は、
層系が、
好ましくは、カソードに隣接する少なくとも1つの電子注入層または電子抽出層、
少なくとも1つの電子輸送層
少なくとも1つの光学的に活性な層
少なくとも1つの正孔輸送層
好ましくは、アノードに隣接する少なくとも1つの正孔注入層または正孔抽出層を備え、
少なくとも1つの誘導的にドープされた混合層が、正孔輸送層と正孔注入層または正孔抽出層との間に存在し、および/または少なくとも1つの誘導的にドープされた混合層が、電子輸送層と電子注入層または電子抽出層との間に存在する
ことを特徴とする。
【0090】
この好ましい実施形態では、本発明は、好ましくは、2つの群のオプトエレクトロニクス部品に関する。第1の群において、光学的に活性な層は、光の生成のために使用されるエミッタ層である。この場合、オプトエレクトロニクス部品は、好ましくは、有機発光ダイオード(OLED)として使用される。第2の群では、光学的に活性な層は、自由電荷キャリアが電磁放射線の吸収によって生成される吸収層である。したがって、第2の群のオプトエレクトロニクス部品は、好ましくは、有機太陽電池または光検出器に関する。
【0091】
部品の光学的に活性な層の最適な機能を確実にするために、電気的に活性な層の好ましい配置が行われる。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明は、例えば発光ダイオードの形態の光を生成するためのオプトエレクトロニクス部品に関する。この好ましい実施形態では、オプトエレクトロニクス部品は、カソードおよびアノードと、カソードとアノードとの間の層系とを備え、層系は、好ましくは、カソードに隣接する少なくとも1つの電子注入層、少なくとも1つの電子輸送層、エミッタ層である少なくとも1つの光学的に活性な層、少なくとも1つの正孔輸送層、好ましくは、アノードに隣接する少なくとも1つの正孔注入層を備え、少なくとも1つの誘導的にドープされた材料は、正孔輸送層と正孔注入層との間に存在し、および/または少なくとも1つの誘導的にドープされた混合層は、電子輸送層と電子注入層との間に存在することを特徴とする。
【0093】
この好ましい実施形態では、カソードは、電子供与体として使用される。好ましくは、カソードは、OLEDの表面上に可能な限り均一に電子を注入することを可能にするために、低い表面抵抗を有する。
【0094】
一方、電子注入層は、カソードと次の層、すなわち電子輸送層との仕事関数のバランスをとる機能を果たす。仕事関数は、好ましくは、少なくとも非荷電固体から電子を除去するために使用しなければならないエネルギーに対応する。電子輸送層に対するカソードの仕事関数のバランスをとることによって、カソードから電子輸送層への電子の供給または注入に必要な電圧が減少する。
【0095】
電子輸送層は、カソードと光学的に活性な層との間の指向性電子輸送、すなわち、エミッタ層の好ましい実施形態に使用される。この目的のために、電子輸送層は、好ましくは、電子の十分な運動度または移動度(好ましくは、10-6~100cm2/(V*秒))を有するべきである。加えて、好ましくは、電荷輸送エネルギーレベル、すなわち、電子輸送層の伝導バンドまたはLUMO(最低空分子軌道)は、エミッタ材料のエネルギーレベルとカソードの仕事関数との間にあるべきであり、すなわち仕事関数を実行した後、正孔と再結合する前に電子を輸送するための追加のエネルギーは必要とされない。
【0096】
エミッタ層は、好ましくは、電気励起の間に可視範囲、すなわち、好ましくは、400~700nmの波長範囲の光を発生する半導体有機ポリマーまたは分子からなる。エミッタ層において、カソードの電子は、好ましくは、アノードの正孔と再結合して励起子を形成する。好ましくは、一重項励起子の割合がここでは支配的であるため、効果的な光の生成が行われる。
【0097】
正孔輸送層は、電子輸送層の対応物であり、アノードからエミッタ層への(電子)正孔の輸送に使用される。したがって、好ましくは、正孔輸送層は、電子正孔の十分な運動度または移動度、好ましくは、10-6~100cm2/(V*秒)を示すべきである。加えて、電子正孔の輸送のエネルギーレベル、すなわち、正孔輸送層の伝導バンドまたはHOMO(最高被占分子軌道)は、エミッタ材料のエネルギーレベルとアノードの仕事関数との間にあるべきである。
【0098】
正孔注入層は、カソード側のその対応物(電子注入層)と同様に、好ましくは、強誘電性ポリマーからなり、好ましくは、絶縁体である。好ましくは、正孔注入層は、電子正孔の効果的な注入を確実にするために、アノードおよび次の層、すなわち正孔輸送層のエネルギーレベルのバランスをとるために使用される。
【0099】
アノードは、好ましくは、電子正孔供与体であり、したがって好ましくは、カソードよりも著しく高い仕事関数を有する。さらに、アノードは、正孔に対して高い表面伝導率を有することが好ましい。加えて、アノード材料は、例えばアノードを通る光の出射を可能にするために、透明であることが好ましい場合がある。
【0100】
この好ましい実施形態では、光学的に活性な層は、エミッタ層であり、電気的に活性な層は、少なくとも1つの電子注入層、少なくとも1つの電子輸送層、少なくとも1つの正孔輸送層、および少なくとも1つの正孔注入層である。
【0101】
輸送層と注入層との間の1つまたは複数の本発明の混合層の形成によって、活性層の特に高い電気伝導率を達成することができる。このようにして製造することができるOLEDは、同一の適用電圧の場合、ドープされた混合層を有さないOLEDと比較して著しく増大した光度、したがってかなり増大した効率を特徴とする。
【0102】
この実施形態では、簡単な印刷法によって大量製造に適した方法で、製造コストが低いことに加えて、低い運用コストおよび改善された性能によっても特徴付けられるOLEDをしたがって製造することができる。
【0103】
光生成の代わりに部品による電流生成が起こるべきである第2の群の好ましい実施形態の場合、当業者は、好ましくは、以下のように電気的に活性な層および光学的に活性な層を適合させるであろう。
【0104】
光学的に活性な層として、好ましくは、吸収層が使用され、これは光子吸収によって、入射電磁放射線のエネルギーを自由電荷キャリアの生成に変換することが可能である。電気的に活性な層は、好ましくは、光電部品内に、励起子を分離して自由電荷キャリアを対応する電極に向かって引き離す内部電界が生成されることを確実にする。カソードでは、電子が抽出され、アノードでは、正孔が抽出される。それによって利用可能にされる電位差は、電圧の生成、または負荷の下での電流の生成に使用される。
【0105】
オプトエレクトロニクス部品のこの好ましい実施形態では、層構造は、好ましくは、以下の通りである。
【0106】
オプトエレクトロニクス部品は、カソードおよびアノードと、カソードとアノードとの間の層系とを備え、層系は、好ましくは、カソードに隣接する少なくとも1つの電子抽出層、少なくとも1つの電子輸送層、吸収層である少なくとも1つの光学的に活性な層、少なくとも1つの正孔輸送層、好ましくは、アノードに隣接する少なくとも1つの正孔抽出層を備え、少なくとも1つの誘導的にドープされた混合層は、正孔輸送層と正孔注入層との間に存在し、および/または少なくとも1つの誘導的にドープされた混合層は、電子輸送層と電子抽出層との間に存在することを特徴とする。
【0107】
電気的に活性な層は、吸収層の機能および電荷キャリアの効果的な抽出が確実にされるように設計されている。この好ましい実施形態では、光学的に活性な層は、吸収層であり、電気的に活性な層は、少なくとも1つの電子抽出層、少なくとも1つの電子輸送層、少なくとも1つの正孔抽出層、および少なくとも1つの正孔輸送層である。
【0108】
この実施形態においても、輸送層と注入層との間に1つまたは複数の本発明の混合層を設けることは、特に満足のいく電気的に活性な層をもたらす。混合層における誘導ドーピングは、輸送または注入層の電気特性を明らかに改善する。したがって、このようにして製造することができる有機太陽電池またはフォトトランジスタは、特に満足のいく光収量または感度、したがって高い効率を特徴とする。
【0109】
さらに、印刷法を介した生産性が、異なる用途に効率的な太陽電池を提供するための高度な柔軟性を可能にするのは、まさに有機太陽電池のためである。加えて、他の方法と比較してコストも削減することができる。
【0110】
本発明の好ましい実施形態では、オプトエレクトロニクス部品は、第1または第2の層が、正孔注入層または正孔抽出層であり、その有機半導体材料が、誘電性ポリマー、好ましくは、-CN、-SCN、-F、-Cl、-Iおよび/または-Brからなる群から選択される官能基を有するポリマー、特に好ましくは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ(塩化ビニリデン-co-アクリロニトリル)、ポリアクリロニトリル(PAN)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HATCN)、銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトネート[Cu(tfac)2]、銅(II)トリフルオロアセチルアセトネート[Cu(hfac)]、タングステン(IV&V)エトキシド(W-EtOH)、ならびにそれらの共重合体および混合物からなる群から選択されることを特徴とする。
【0111】
第1または第2の層が、正孔注入層または正孔抽出層であり、その有機半導体材料が、誘電性ポリマーからなる群から選択されることも有利である。これらのポリマーは、優れた電気および機械特性を示し、したがって信頼性を高める。それらは、好ましくは、-CN、-SCN、-F、-Cl、-Iおよび/または-Brからなる群から選択される官能基を有するポリマーであり、特に堅牢でメンテナンスフリーである。部品の改善および性能向上は、特に好ましくは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ(塩化ビニリデン-co-アクリロニトリル)、ポリアクリロニトリル(PAN)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HATCN)、銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトネート[Cu(tfac)2]、銅(II)トリフルオロアセチルアセトネート[Cu(hfac)]、タングステン(IV&V)エトキシド(W-EtOH)、ならびにそれらの共重合体および混合物の少なくとも1つの正孔注入層または正孔抽出層への包含によって達成される。
【0112】
上述の材料は、電子正孔に対する注入または抽出層の電気機能を確実にするのに特に適している。特に、上述のポリマーは、好ましい注入特性、すなわち、注入層と接触している表面の電子に対する仕事関数の増加、したがって効果的な正孔注入を確実にする。
【0113】
さらに好ましい実施形態では、オプトエレクトロニクス部品は、第1または第2の層が、正孔輸送層であり、その半導体材料が、ドープされた金属チオシアネート、好ましくは、ドープされたチオシアン酸銅および/もしくはドープされた金属酸化物、好ましくは、ドープされた酸化亜鉛からなる群から選択され、好ましくは、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸銀、チオシアン酸タングステン、チオシアン酸バナジウム、チオシアン酸モリブデン、チオシアン酸銅および/もしくは他の遷移金属チオシアネートからなる群から選択される金属チオシアネートで好ましくはドープされ、かつ/または好ましくは、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化モリブデンおよび/もしくは他の遷移金属酸化物からなる群から選択される金属酸化物で好ましくはドープされ、かつ/またはハロゲン、特に好ましくは、フッ素で好ましくはドープされることを特徴とする。
【0114】
したがって、第1または第2の層は、正孔輸送層であり、その有機半導体材料は、ドープされた金属チオシアネートからなる群から選択されることが好ましい。この群から選択された材料は、処理が特に容易である。好ましくは、ドープされたチオシアン酸銅および/またはドープされた金属酸化物をここに含めることができ、これらは特に有利な機械特性を有する。また含まれることが好ましいドープされた酸化亜鉛は、構成部品の効率を改善する。金属チオシアネートによる好ましいドーピングは、電気特性を改善する。チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸銀、チオシアン酸タングステン、チオシアン酸バナジウム、チオシアン酸モリブデン、チオシアン酸銅および/または他の遷移金属チオシアネートからなる群からの金属チオシアネートの好ましい選択は、部品の性能向上を確実にする。また、金属酸化物での好ましいドーピングは、部品の製造における誤差を排除する。金属酸化物が、ここで好ましくは、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化モリブデンおよび/または他の遷移金属酸化物からなる群から選択されるという事実は、構成部品をよりメンテナンスフリーにすることができる。また、ハロゲンでの好ましいドーピングは、電気特性をさらに改善することができる。ここで特に好ましいフッ素は、部品の信頼性と効率の両方を向上させる。
【0115】
したがって、正孔輸送層には、金属チオシアネート、特に好ましくは、チオシアン酸銅、または金属酸化物、特に好ましくは、酸化亜鉛をドープすることが好ましい。この実施形態では、ドーピングは、外来原子、すなわちドーパントの層への導入を表し、導入される量は概して、キャリア材料と比較して少ない。すなわち、ドーパントの質量分率は全層の10%未満、好ましくは、1%未満であることが好ましい場合がある。しかしながら、ドーパントの質量分率が全層の40%までであることも好ましい場合がある。いわゆるp型ドーピングでは、電子受容体がドープされ、いわゆるn型ドーピングでは、電子供与体がドープされる。電子受容体または電子供与体は、好ましくは、電子を受容または供与することが可能な粒子(原子、分子、イオン)を意味すると理解される。正孔輸送層としては、強力な受容体特性を有する材料、好ましくは、金属チオシアネートまたは金属酸化物、好ましくは、チオシアン酸銅または酸化亜鉛のキャリアのHOMO付近のLUMOを選択することが好ましい。有機p型ドーパントはまた、好ましくは、例えばテトラフルオロテトラシアノキノジメタンまたはさらにはヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルでもあり得る。それらは、特定の効率を特徴とする。正孔輸送層のキャリアとして、チオシアン酸銅、酸化ニッケル、酸化銅(I)または酸化亜鉛を上述の適切なドーパントと共に使用することが特に好ましい。この組合せは、改善された電気特性を有する。
【0116】
正孔輸送層のために、有機半導体材料として、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(4-sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン)](TFB)および/または4,4’,4’’-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)を使用することがさらに特に好ましい場合があり、これらは特定の信頼性を印象的に示す。
【0117】
正孔輸送層について好ましく言及された材料を、正孔注入および正孔抽出層について好ましく言及された材料と組み合わせることが特に好ましい。溶媒の適切な選択により、したがって、誘導的にドープされた混合層に対して満足のいく結果が達成され得る。
【0118】
本発明のさらに好ましい実施形態では、オプトエレクトロニクス部品は、第1または第2の層が、電子注入層または電子抽出層であり、その有機半導体材料が、誘電性ポリマー、好ましくは、親水性ポリマーおよび/または高分子電解質、特に好ましくは、ポリオキサゾリン、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、多糖類、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ならびにそれらの共重合体からなる群から選択されるポリマー、最も特に好ましくは、ポリエチレンイミン(PEI)またはエトキシル化ポリエチレンイミン(PEIE)からなる群から選択されることを特徴とする。
【0119】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1つの電子注入層または電子抽出層が、誘電性ポリマーを備えることを特徴とする。これらのポリマーは、特定の堅牢性を特徴とし、それによって長い耐用年数を有する部品を製造することができる。ここでは、親水性ポリマーおよび/または高分子電解質を使用することが特に好ましい。それらは特に容易に処理することができ、したがって時間、材料および作業ステップ、ひいてはコストの節約をもたらす。最も特に好ましくは、ポリマーは、ポリオキサゾリン、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、多糖類、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ならびにこの群の共重合体からなる群から選択される。それらは特に有用であることが見出されており、優れた電気特性を特徴とする。特に、ポリエチレンイミン(PEI)またはエトキシル化ポリエチレンイミン(PEIE)の使用は、それらが部品のさらなる改善および性能向上をもたらすので好ましい。
【0120】
上述の材料は、電子に対する注入または抽出層の電気機能を確実にするのに特に適している。したがって、電荷キャリアとしての電子は、「トンネリング」の量子効果を使用し、カソードから電子輸送層に(電子注入層の場合)、または電子輸送層からカソードに(電子抽出層の場合)ジャンプすることができる。上述の誘電性ポリマーは、好ましくは、対応する表面双極子を生成し、したがって電子に対する注入障壁を減少させる。
【0121】
さらに好ましい実施形態では、オプトエレクトロニクス部品は、第1または第2の層が、電子輸送層を備え、その半導体材料が、ドープされた金属酸化物、好ましくは、ドープされた酸化亜鉛からなる群から選択され、ドーピングが、好ましくは、アルミニウム、マグネシウム、アルカリ、アルカリ土類金属、メタロセンおよび/または有機nドーパント行われ、電子輸送層が、特に好ましくは、酸化アルミニウム亜鉛を含むことを特徴とする。
【0122】
ドープされた金属酸化物は、特に部品の品質の向上を特徴とする。ドープされた酸化亜鉛は、特に堅牢な部品をもたらす。アルミニウム、マグネシウム、アルカリ、アルカリ土類金属、メタロセンおよび/または有機nドーパントでの好ましいドーピングは、改善された電気特性をもたらす。酸化アルミニウム亜鉛を含む電子輸送層は、特に有効な構成部品を確実にする。
【0123】
本発明の好ましい実施形態では、オプトエレクトロニクス部品は、部品が、少なくとも2つの電子注入層または電子抽出層と、少なくとも2つの電子輸送層および/または少なくとも2つの正孔輸送層と、少なくとも2つの正孔注入層または正孔抽出層とを備え、電子注入層もしくは電子抽出層および電子輸送層ならびに/または正孔注入層もしくは正孔抽出層および正孔輸送層が、交互に配置され、各場合において輸送層と注入層または抽出層との間には、誘導的にドープされた混合層が存在することを特徴とする。
【0124】
交互の電気的に活性な層の間の誘導的にドープされた混合層の形成によって、部品の特に高い性能を達成することができる。それぞれ上下に積み重ねられる電気的に活性な層の材料の溶解度の適切な選択の場合には、特に安定な層構造を達成することがさらに可能である。
【0125】
さらに好ましい実施形態では、オプトエレクトロニクス部品は、第2の誘導的にドープされた混合層が電気活性層と光学的に活性な層との間に存在することを特徴とする。
【0126】
誘導的にドープされた混合層による追加の電荷キャリアの提供による電気性能の改善に関して述べた利点は、光学的に活性な層と隣接する電気的に活性な層との間に追加のドープされた混合層を形成することによって増大させることができる。例えば、エミッタ層のキャリア手段は、下にある電気的に活性な層を表面的に溶解するように選択することができる。このようにして誘導された混合層は、電荷キャリアの金属層への供給に寄与し、したがってOLEDの性能を向上させる。
【0127】
本発明の好ましい実施形態では、オプトエレクトロニクス部品は、光学的に活性な層が、スーパーイエロー(ポリフェニレンビニレン共重合体)、ポリ[2-メトキシ-5-(3’,7’-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン(MDMO-PPV)、ポリ[9,9-ジデカンフルオレン-alt-(ビス-チエニレン)ベンゾチアジアゾール](PF10TBT)、ポリ(9,9-ジ-n-オクチルフルオレニル-2,7,-ジイル)(PFO)、ポリ(スピロフルオレン)、ポリ(アリールフルオレン)、ならびにそれらの共重合体および混合物からなる群から選択される発光層であることを特徴とする。
【0128】
これらの材料は、光生成に対する高い有効係数を特徴とする。加えて、上記の材料は、隣接する電気的に活性な層に誘導的にドープされた混合層を形成するのに特に適している。
【0129】
追加の実施形態では、本発明は、以下のステップ:
a)第1のキャリア手段に溶解した第1の半導体材料を含む第1のインクの提供
b)第2のキャリア手段に溶解した第2の半導体材料を含む第2のインクの提供
c)印刷法を用いた第1のインクの適用による第1の層の生成
d)第1の層の乾燥
e)第2の層の生成のために、第1の層への印刷法を用いた第2のインクの適用、
f)第2の層の乾燥
を含む方法に関し、
第2のキャリア手段は、方法ステップe)によって、第1の層が少なくとも部分的に表面的に溶解するように選択され、その結果、第1および第2の層の間に、第1および第2の半導体材料が混合して存在する誘導的にドープされた混合層が生成される。
【0130】
方法は、好ましくは、複数の電気活性層と、少なくとも1つの光学的に活性な層とを備える、カソードおよびアノードと、カソードとアノードとの間の層系とを有するオプトエレクトロニクス部品を製造するのに適している。
【0131】
方法は、ステップb)の後にステップ
b-ビス)基板の提供
に続くように修正されることもまた好ましい場合がある。
【0132】
この修正された方法では、さらにステップc)は、ステップ
c’)基板への印刷法を用いた第1のインクの適用による第1の層の生成
になる。
【0133】
この修正された方法によって、非常に信頼性があり堅牢な部品を製造することができる。
【0134】
好ましくは、第1および第2の層は、電気活性層または光学的に活性な層である。方法は、好ましくは、追加のステップを含むことができる。例えば、続いて第1の層として電極注入層をカソードに印刷するために、例えば印刷法ステップによって最初にカソードを設けることができる(方法ステップc、d)。したがって、特にメンテナンスフリーの構成部品が製造される。製造された第1の電気的に活性な層の上に、第2の層、例えば電子輸送層を混合層の形成のために印刷することができる(方法ステップd~f)。それによって、構成部品の品質を向上させることができる。発光オプトエレクトロニクス部品の製造のために、好ましくは、例えばエミッタ層、正孔輸送層、正孔注入層およびアノードを続いて適用することが可能である。このようにして製造された部品は、特に高性能である。
【0135】
特に、本発明による方法は、本発明によるオプトエレクトロニクス部品を製造するのに適している。本発明にしたがって製造することができる部品について開示された有利な実施形態はまた、有利には、本発明による方法に適用することができる。例えば、オプトエレクトロニクス部品の一実施形態では、第2のキャリア手段が、好ましくは、第1の半導体材料を少なくとも1g/Lの濃度まで完全に溶解する少なくとも1つの溶媒を含むことが開示されている。当業者は、本発明の方法の好ましい実施形態がまた、そのような溶媒を第2のキャリアに提供することを含むことを認識する。
【0136】
本発明を実施し、本発明による解決策を得るために、本発明の記載された実施形態に対する様々な代替物が使用され得ることが指摘されてきた。本発明のオプトエレクトロニクス部品および記載した方法におけるそれらの製造は、それらの設計の観点から、上記の好ましい実施形態に限定されない。代わりに、提示された解決策から逸脱する可能性がある複数の設計変形例が考えられる。特許請求の範囲の目的は、本発明の保護範囲を定義することである。特許請求の範囲の保護範囲は、本発明のオプトエレクトロニクス部品およびそれを製造するための方法、ならびにそれらの等価な実施形態を網羅することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【
図1】誘導的にドープされた混合層を有するオプトエレクトロニクス部品の好ましい実施形態の概略図である。
【
図2】2つの誘導的にドープされた混合層を有するオプトエレクトロニクス部品の好ましい実施形態の概略図である。
【
図3】既知のドーピングの場合における電荷移動錯体の形成の概略図である。
【
図4】本発明の好ましい実施形態による誘導ドーピングの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0138】
[実施例1]
図1は、誘導的にドープされた混合層を有するオプトエレクトロニクス部品1の好ましい実施形態の概略図を示す。示されているオプトエレクトロニクス部品1は、有機発光ダイオード(OLED)である。その層構造は、以下の構成を有する。カソード3は、電子を提供するために使用され、アノード5は、電圧が適用されるとすぐに電子正孔を供給する。+および-の記号は、それぞれの電圧方向を示す。電子注入層7および正孔注入層9の特性は、好ましくは、電荷キャリアの効率的な量子力学的トンネリングを可能にする。電子輸送層11および正孔輸送層13は、電荷キャリアに対する高い移動度を特徴とし、発光またはエミッタ層である光学的に活性な層15への目標とする輸送を確実にする。光学的に活性な層15では、電荷キャリアが再結合して励起子および可視光の放射線を生成する。
【0139】
示されているOLEDは、正孔注入層9と正孔輸送層13との間に、誘導的にドープされた混合層2があることを特徴とする。誘導的にドープされた混合層2は、印刷インクのキャリア手段を適切に選択した印刷法を用いて、正孔注入層9および正孔輸送層13を連続的に適用することにより得られる。ここでは、特に、適用される第2の正孔輸送層13の印刷インクのキャリア手段は、先に適用された下正孔注入層9の材料を表面的に溶解することができるように選択される。表面的な溶解によって、誘起効果に基づいて、正孔注入層9の材料が正孔輸送層13にドープされて存在する混合層2が形成される。このようにして形成されたドープされた混合層2は、電荷キャリアの高い密度および移動度を特徴とし、それによってオプトエレクトロニクス部品1の電気性能を向上させることができる。
【0140】
以下に、
図1によるオプトエレクトロニクス部品1にとって特に好ましい層構造の例を示す。
【表1】
【0141】
誘導混合層2は、好ましくは、以下の方法ステップによって製造することができる。
1)正孔注入層9の第1のインクの提供。このインクでは、有機半導体材料PAN-co-PVDCは、第1のキャリア手段に溶解して存在する。適切な組成物は、20体積%のアセトフェノンおよび80体積%のL-乳酸エチルに溶解した1mg/mLのPAN-co-PVDCである。
2)インクジェットプリンタを用いたアノード5への第1のインクの適用、ITOは、好ましくは、オゾンで前処理されている。
3)80℃で15秒間、赤外線ランプを用いた適用された層の乾燥、その結果、8nmの正孔注入層9の乾燥層の層厚が達成される。
4)正孔輸送層13の第2のインクの提供。その中では、無機半導体材料Cu(I)SCNは、第2のキャリア手段に溶解して存在する。適切な組成物は、60体積%のメシチレンおよび40体積%の3-エチルピリジンに溶解した3mg/mLのCu(I)SCNである。
5)PAN-co-PVDC有する乾燥した正孔注入層9へのCu(I)SCNを有する第2のインクの適用。
6)80℃で15秒間、続いて110℃でさらに15秒間、赤外線ランプを用いた適用された層の乾燥、その結果、20nmの理論層厚が達成され、そのうち3nmがドープされた混合層に流れ込み、18nmが純粋な層として残る。
【0142】
正孔輸送層13の第2のインクにおける第2のキャリア手段の選択により、正孔注入層9のPAN-co-PVDCは、ステップ5)および6)で表面的に溶解し、その結果、2つの適用された層の間の境界領域において、Cu(I)SCNおよびPAN-co-PVDCからなる誘導的にドープされた混合層2が形成される。
【0143】
上記の方法パラメータに対して、正孔注入層9については5nm、誘導的にドープされた混合層2については3nm、および正孔輸送層13については17nmの最終層厚が達成される。
【0144】
正孔輸送層13が適用されるアノード5の提供、ならびに追加の光学的に活性な層15、電子輸送層11、電子注入層7およびカソード3の提供もまた、好ましくは、
図1による
オプトエレクトロニクス部品1を得るために、印刷法、好ましくは、インクジェット印刷法によって行われる。
【0145】
[実施例2]
図2は、2つの誘導的にドープされた混合層2を有するオプトエレクトロニクス部品1のさらに好ましい実施形態の概略図を示す。
図1の場合と同様に、示されているオプトエレクトロニクス部品1は、有機発光ダイオード(OLED)である。層構造の個々の層の機能は、
図1に類似している。
【0146】
しかしながら、示されているOLEDは、正孔輸送層13と正孔注入層9との間および正孔注入層9と光学的に活性な層15との間の両方に、誘導的にドープされた混合層2がそれぞれ存在することを特徴とする。
【0147】
誘導的にドープされた混合層は、印刷インクのキャリア手段を適切に選択した印刷法を用いて、層13、9および15を連続的に適用することにより得られる。プロセスでは、特に、適用される第2の正孔注入層9の印刷インクのキャリア手段は、先に適用された下正孔輸送層13の材料を表面的に溶解することができるように選択される。表面的な溶解によって、誘起効果に基づいて、正孔注入層9の材料と共に正孔輸送層13の材料がドープされて存在する混合層2が形成される。さらに、光学的に活性な層15を適用するためのインクのキャリア手段は、正孔注入層9を表面的に溶解することができるように選択される。それによって、ドープされた混合層2が光学的に活性な層15と正孔注入層9との間に形成される。
【0148】
このようにして形成された2つの混合層2は、オプトエレクトロニクス部品1の電気性能を特に強力に向上させ、低い電流要求で高い光度をもたらす。
【0149】
以下の例は、
図2によるオプトエレクトロニクス部品1にとって特に好ましい層構造を表す。
【表2】
【0150】
2つの誘導混合層2は、好ましくは、以下の方法ステップによって製造することができる。
1)正孔輸送層13の第1のインクの提供。その中では、有機半導体材料m-MTDATAは、第1のキャリア手段に溶解して存在する。適切な組成物は、90体積%のオルトジクロロベンゼンおよび10体積%のメシチレンに溶解した4mg/mLのm-MTDATAである。
2)インクジェットプリンタを用いたアノード5への第1のインクの適用、ITOは、好ましくは、オゾンで前処理されている。
3)80℃で15秒間、赤外線ランプを用いた適用された層の乾燥、その結果、30nmの正孔輸送層13の乾燥層の層厚が達成される。
4)正孔注入層9の第2のインクの提供。この正孔注入層では、有機半導体材料PAN-co-PVDCは、第2のキャリア手段に溶解して存在する。適切な組成物は、80体積%のL-乳酸エチルおよび20体積%のアセトフェノンに溶解した3mg/mLのPAN-co-PVDCである。
5)インクジェット印刷法を用いた、m-MTDATAを有する乾燥した正孔輸送層13へのPAN-co-PVDCを有する第2のインクの適用。
6)80℃で10秒間、赤外線ランプを用いた適用された層の乾燥、その結果、15nmの理論層厚が達成される。
7)光学的に活性な層15の第3のインクの提供。この光学的に活性な層では、有機半導体材料PFOは、第3のキャリア手段に溶解されている。適切な組成物は、75体積%のメシチレン、20体積%のオルトジクロロベンゼン、および5体積%のアセトフェノンに溶解した7mg/mLのPFOである。
8)インクジェット印刷法を用いた、PAN-co-PVDCを有する乾燥した正孔注入層9へのPFOを有する第3のインクの適用。
9)80℃で15秒間、赤外線ランプを用いた適用された層の乾燥、その結果、55nmの光学的に活性な層15の理論層厚が達成される。
【0151】
正孔注入層9の第2のインクにおける第2のキャリア手段の選択により、正孔輸送層13のm-MTDATAは、ステップ5)および6)で表面的に溶解し、その結果、2つの適用された層の間の境界領域において、PAN-co-PVDCおよびm-MTDATAの誘導的にドープされた混合層2が形成される。
【0152】
同様に、光学的に活性な層15の第3のインクにおける第3のキャリア手段の選択により、正孔注入層9のPAN-co-PVDCは、ステップ8)および9)で表面的に溶解し、その結果、2つの適用された層の間の境界領域において、PFOおよびPAN-co-PVDCの誘導的にドープされた混合層2が形成される。
【0153】
上述の方法パラメータに対して、m-MTDATAを有する正孔輸送層13については25nm、PAN-co-PVDCおよびm-MTDATAを有する誘導的にドープされた混合層2については5nm、PAN-co-PVDCを有する正孔注入層9については5nm、PAN-co-PVDCおよびPFOを有する誘導的にドープされた混合層2については15nm、ならびにPFOを有する光学的に活性な層15については50nmの最終層厚が達成される。
【0154】
正孔輸送層13が適用されるアノード5の提供、ならびに追加の電子注入層7、電子輸送層11およびカソード3の提供もまた、好ましくは、
図2によるオプトエレクトロニクス部品1を得るために、印刷法、好ましくは、インクジェット印刷法によって行われる。
【0155】
図3は、有機半導体材料の既知のドーピングにおける電荷移動錯体の形成の概略図を示す。ここでは、例えば分子および/またはポリマーの有機材料間のハイブリダイゼーションによる新しい分子間軌道の形成を示す(Salzmannら、Intermolecular Hybridization Governs Molecular Electrical Doping;Phys.Rev.Lett.108、035502(2012)、Mendezら、Doping of Organic Semiconductors:Impact of Dopant Strength and Electronic Coupling;Angewandte Chemie 52;7751~7755;(2013))。
【0156】
図3に示すように、有機材料の既知のドーピングでは、半導体とドーパントとの間のハイブリダイゼーションが起こる。ここでは、一方では、電荷キャリア移動が起こり、それによって電荷移動錯体が形成される。電荷移動錯体は、新しい化合物を形成する。
【0157】
対照的に、
図4は、誘導ドーピングの原理の概略図を示す。誘起効果によって、分子内電荷キャリア密度のシフトが起こる。分極は、周囲の材料の電子密度に影響を与える。隣接する分子の電子密度が変化し、隣接する分子またはポリマー中の電荷キャリアの溶解または付加を促進する。図
4は、1-フルオロプロパン中の電子密度の分子内シフト(活性内誘起効果)を示す。図
4は、偏光した1-フルオロプロパンを無偏光ルブレン付近に持っていったときに生じる電子電荷密度のシフトを示す。この電荷シフトにより、隣接する分子中の電荷キャリアの脱離または付加、したがって誘導ドーピングが可能になる。
【符号の説明】
【0158】
1 オプトエレクトロニクス部品
2 誘導的にドープされた混合層
3 カソード
5 アノード
7 電子注入層
9 正孔注入層
11 電子輸送層
13 正孔輸送層
15 光学的に活性な層