(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】MET突然変異を宿すがんを治療するためのc-Met阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4985 20060101AFI20220502BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220502BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220502BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20220502BHJP
C12N 9/99 20060101ALN20220502BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61P35/00
A61P43/00 111
C12Q1/6869 Z
C12N9/99 ZNA
(21)【出願番号】P 2019536698
(86)(22)【出願日】2017-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2017073894
(87)【国際公開番号】W WO2018055029
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-10
(32)【優先日】2016-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】メラニー・メイ・フリゴー
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-153894(JP,A)
【文献】EUROPEAN UROLOGY,2015年,Vol. 67, ISSUE 2,p. 353-354,https://doi.org/10.1016/j.eururo.2014.10.012
【文献】Mol Cancer Ther.,2013年,12(11),p. 2415-2424,doi: 10.1158/1535-7163.MCT-13-0151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C12Q、C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療のための、有効成分としてc-Met阻害剤を含む医薬組成物であって、前記がんがMET L1195F変異を有し、かつ前記c-Met阻害剤がサボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である、医薬組成物。
【請求項2】
前記がんが肺がん、胃がんまたは乳頭状腎細胞がんである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記がんが乳頭状腎細胞がんである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記がんがII型乳頭状腎細胞がんである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
がんの治療が、患者のがんの代表的試料を、前記がんがMET L1195F変異を有するか否かを判定するためインビトロで分析するステップを含み、ここで前記患者のがんがMET L1195F変異を有することが見出される場合、前記患者はc-Met阻害剤での治療に適し、かつ前記c-Met阻害剤がサボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記がんが、MET L1195F変異を有するII型乳頭状腎細胞がんであり、かつ前記c-Met阻害剤が、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩であり、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
がん患者
がc-Met阻害剤での治療に対
して適合
するか否かの判定を補助する方法であって、患者のがんの代表的試料を、前記がんがMET L1195F変異を有するか否かを判定するためインビトロで分析するステップを含み、ここで前記患者のがんがMET L1195F変異を有することが見出される場合、前記患者はc-Met阻害剤での治療に適し、かつ前記c-Met阻害剤がサボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である、方法。
【請求項8】
前記がんが乳頭状腎細胞がんである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
がんの治療用の薬剤の調製におけるc-Met阻害剤の使用であって、前記がんがMET L1195F変異を有し、かつ前記c-Met阻害剤がサボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である、c-Met阻害剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、c-Met受容体チロシンキナーゼ(「c-Met」)阻害剤および特定のMET突然変異によって特徴づけられるがん(例えば、MET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異を有するMETタンパク質を発現する細胞を含むがん)の治療におけるその使用に関する。本明細書は、さらに、c-Met阻害剤での治療に適した患者を選択するためのMET突然変異状態の使用、および特定のMET突然変異によって特徴づけられるがんをc-Met阻害剤を用いて治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
c-Met受容体チロシンキナーゼとしても公知のMETタンパク質は、胚発生および創傷治癒に必須である膜貫通受容体である。MET受容体は通常、その特異的リガンド、肝細胞増殖因子(HGF)との相互作用を通じて活性化され、またHGFに対する唯一の高親和性細胞表面受容体である(Bottaro et al.1991)。MET受容体は、腎臓、肝臓、胃、肺、乳房、および脳のがんを含むヒト悪性腫瘍の多くのタイプにおいて調節解除される。腫瘍におけるHGF/c-Met軸の異常な活性化が腫瘍増殖を引き起こし、腫瘍血管新生を促進し、腫瘍転移を誘導する。さらに、異常なMET活性化は、薬剤耐性に関連し、予後不良と相関する。近年、c-Metシグナル伝達経路の阻害は、c-Met活性化によって駆動されるがんに対する有望な新しい治療法を探求する過程における関心領域となっている。
【0003】
MET遺伝子の遺伝子座7q31の生殖系列突然変異が、遺伝性乳頭状腎細胞がん(PRCC)を有する患者および孤発性PRCCにおいて検出されている(Salvi et al.2008,Schmidt et al.1997,Schmidt et al.1999)。I型腫瘍が一般に孤発性または遺伝性のいずれにしてもMET突然変異に関連すると一般に考えられている。MET突然変異はコホート分析においてI型PRCCに関連しているが、MET突然変異はPRCCの非I型の組織学的サブタイプにおいても報告されている(Albiges et al.2014,Linehan et al.2016)。孤発性PRCCにおけるMET体細胞突然変異が報告されている一方で、I型PRCC症例のみの分析では、METキナーゼドメイン突然変異の21.6%(11/51)の頻度が示され(Albiges et al.2014)、The Cancer Genome Atlas(TCGA)からの報告では、13/75(17.3%)のI型PRCCおよび1/26(3.8%)の未分類PRCCがMETキナーゼドメイン内に体細胞突然変異を宿すことが示されている(Linehan et al.2015)。すべての報告されたMET突然変異はミスセンス変異であり、ナンセンスまたは機能欠失変異は見出されていない。さらに、MET突然変異は、TCGAにより、PRCCにおいて最も頻繁に突然変異した遺伝子として報告されている(17/157(10.8%))。
【0004】
現在、PRCCの治療として詳細に指示された認可された治療法は存在しないことから、PRCCを有する患者は、明細胞(通常型としても公知)RCC患者(RCC=腎細胞がん)と同様に治療される。初期RCCを有する患者の一次治療は、患者の40%超~60%を治癒する根治的外科的切除を含むが、限局性疾患を有する多数の患者が再発することになる(Linehan et al.2001)。患者の約25%は、診断時に限局進行性または転移性疾患を呈することになる。遠隔転移を有する患者における予後は不良であり、ステージIV疾患を有する患者における5年生存率は10%である。明細胞RCCの認可された薬剤は、VEGF経路を標的にし、スニチニブ、ソラフェニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、およびアキシチニブを含む。認可されているmTOR経路を標的にする薬剤は、テムシロリムスおよびエベロリムスを含む。任意のVEGFまたはmTOR経路阻害剤によるPRCC患者における最良の奏効率は、11%のORRである。
【0005】
サボリチニブは、強力かつ選択的な小分子c-Metキナーゼ阻害剤である(Jia H.et al.,J.Med.Chem.2014;7577)。サボリチニブは、酵素および細胞レベルでc-Metキナーゼを阻害し、酵素および細胞内でのMetリン酸化の双方においてIC50が4nMであることが見出された。その強力な酵素および細胞活性に合致して、サボリチニブは、HGF刺激の不在下でのMET遺伝子増幅を伴う腫瘍に対して細胞増殖をインビトロで阻害し、IC50が一般に10nMより低いことが見出された。マウスにおけるヒト異種移植片モデルでは、サボリチニブは、MET遺伝子が増幅された胃および肺腫瘍に対して優れた抗腫瘍活性を示し、1日1回投与で投与される経口治療後、ED50が5mg/kgより低かった。
【0006】
METは、まだ臨床的に確認された標的ではない。しかし、METを偶発的に標的にする非選択的阻害剤は、治療における使用が認可されている。これらは、甲状腺髄様がん(そのRET活性の結果として)および明細胞RCC(そのVEGFR2活性の結果として)の治療において認可されているカボザンチニブ(RET、FLT3、KIT、MET、VEGFR2);ならびにALK融合を伴う非小細胞肺がんを治療するために認可されているクリゾチニブ(ALK、MET)を含む。これらの薬剤はMETキナーゼ阻害活性を有するが、MET駆動疾患を有する患者はまだ、標的化治療法による恩恵を受けていない。強力かつ選択的なMET阻害剤であるサボリチニブの使用により、患者に抗腫瘍利点をもたらすのに必要とされる臨床検証に、MET遺伝子増幅、MET突然変異および検証が残されている他のMET経路バイオマーカーを得ることができる。
【0007】
本明細書は、c-Met治療法におけるバイオマーカーとして有用であり得る特定のMET突然変異、例えば、MET L1195F、MET V1092IおよびMET H1094L突然変異の特徴づけに関する。MET L1195F突然変異は、乳頭状腎がん患者において以前に報告されている(Schmidt et al.Nature Genetics 1997,Albiges et al.CCR2014)が、かつて機能的に検討されていない。本明細書中に報告されるデータは、このMET L1195F突然変異体が利用可能であることを最初に示す。MET L1195Fは、過剰発現されるときにリン酸化され、これは、ERK1/2の活性化を含むMET経路を活性化するようなその性質を示す。MET L1195F突然変異体は、サボリチニブ阻害に対して感受性があることが示され、前臨床的、機能的に特徴づけられているM1250TであるMET突然変異と同程度に、安定細胞株における増殖の利点を与え得る(Bardelli et al.PNAS 1998)。
【0008】
本明細書はまた、MET L1195F突然変異体が利用可能であるという臨床検証を提供し、任意の他のMETの改変の不在下でMET L1195F突然変異を宿すPRCC患者がサボリチニブを用いた単独療法から利益を得ることを示す。まとめると、Met L1195Fの前臨床的な機能的特徴づけおよび臨床シグナルは、このキナーゼドメイン突然変異を基準で機能的に理解されることの第一報として分類するための基盤を提供し、臨床的な抗腫瘍検証を示す。注目すべきは、MET L1195F突然変異体は、PRCC患者のII型組織学的サブタイプとの関連で見出され、古典的I型のMET遺伝子突然変異との関連性ではなく、PRCCの分子分類のための症例をさらに提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
MET阻害剤は、理想的にはMET遺伝子コピー数の増幅セッティングにおいて開発されると考えられるが(Garber,Nature Reviews Drug Discovery 2014)、本明細書は、MET突然変異体の利用可能なバイオマーカーとしてのさらなる使用のための証拠を提供する。理解されるであろうが、本明細書は、MET L1195F、MET V1092IおよびMET H1094Lを含む特定のMET突然変異がc-Met阻害用のバイオマーカーとして利用可能であることを示す。したがって、がん細胞のMET突然変異状態は、c-Met阻害剤(例えば、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩)を用いる治療に対してより応答しやすいがん患者(例えば乳頭状腎細胞がん患者)を同定するのに有用であり得る。これは、あらゆる考えられるMET突然変異にとって真実とはならず:MET L1195F、MET V1092IおよびMET H1094Lがc-Met治療にとって利用可能なバイオマーカーであるという知見は、本明細書に記載されるのと同じインビトロ試験で試験されるとき、MET Y1230H突然変異(以前に乳頭状腎がん患者において報告され、活性化することが予測されたもう一つのc-Metキナーゼドメイン突然変異)を含む細胞がc-Met阻害剤での治療に対して感受性がなかったことを考えると、特に意外である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書は、一部には、がんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられる場合、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤について記載する。
【0011】
本明細書はまた、一部には、がん患者をc-Met阻害剤での治療に対する彼らの適合性について確立するためにスクリーニングする方法であって、がんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適する、方法について記載する。
【0012】
本明細書はまた、一部には、がんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられる場合、がんの治療用の薬剤の調製におけるc-Met阻害剤の使用について記載する。
【0013】
本明細書はまた、一部には、がんを治療するための方法であって、かかる治療を必要とする患者にc-Met阻害剤を治療有効量で投与するステップを含み、ここで前記がんはMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられる、方法について記載する。
【0014】
本明細書はまた、一部には、かかる治療を必要とする患者におけるがんを治療するための方法であって、a)患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを結果が判定し得るような試験を要求するステップと;b)患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者にc-Met阻害剤を治療有効量で投与するステップと、を含む、方法について記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】MET受容体チロシンキナーゼのリン酸化およびサボリチニブを用いたc-Met阻害への感受性に対する点突然変異の効果。
【
図2】サボリチニブおよび他のc-Met阻害剤に対するMET野生型(WT)の用量反応。
【
図3】サボリチニブおよび他のc-Met阻害剤に対するMET M1250T点突然変異体の用量反応。
【
図4】サボリチニブおよび他のc-Met阻害剤に対するMET V1092I点突然変異体の用量反応。
【
図5】サボリチニブおよび他のc-Met阻害剤に対するMET H1094L点突然変異体の用量反応。
【
図6】サボリチニブおよび他のc-Met阻害剤に対するMET L1195F点突然変異体の用量反応。
【
図7】サボリチニブおよび他のc-Met阻害剤に対するMET Y1230H点突然変異体の用量反応。
【
図8】MET変異細胞株におけるMET突然変異体クローンの安定な発現。
【
図11】MET Y1230H点突然変異体安定細胞株の形質転換能。
【
図12】MET M1250T点突然変異体安定細胞株の形質転換能。
【
図13】MET V1092I点突然変異体安定細胞株の形質転換能。
【
図14】MET H1094L点突然変異体安定細胞株の形質転換能。
【
図15】MET L1195F点突然変異体安定細胞株の形質転換能。
【
図16】MET L1195F突然変異体における乳頭状腎細胞がん患者の腫瘍応答。
【発明を実施するための形態】
【0016】
多くの実施形態が、本明細書で詳述され、当該技術分野の読者に明らかになるであろう。実施形態は、限定するものと解釈されるべきではない。
【0017】
第1の実施形態では、がんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられる場合、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供される。
【0018】
「c-Met阻害剤」は、c-Met受容体チロシンキナーゼの活性を低下させる分子である。c-Met阻害剤は、小分子(選択的または非選択的のいずれか)および生体分子(例えば、天然および改変双方の抗体)の双方を含む。c-Met阻害剤は、c-Met受容体チロシンキナーゼを、直接的に(例えば、酵素に直接的に結合することにより)または間接的に(例えば、肝細胞増殖因子、c-Met受容体チロシンキナーゼの天然リガンドに結合することにより)阻害し得る。
【0019】
c-Met阻害剤の例として、AMG-208、AMG-337、AMG-458、PHA-665752、SU11274、NPS-1034、SGX-523、BMS-777607、テポチニブ、BMS-794833、NVP-BVU972、MK-2461、MGCD-265、ゴルバチニブ、JNJ-38877605、BMS-754807、PF-04217903、サボリチニブ、クリゾチニブ、チバンチニブ、カボザンチニブ、フォレチニブ、カプマチニブ(INC280)、オナルツズマブ、フィクラツズマブまたはリロツムマブが挙げられる。
【0020】
c-Met阻害剤が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤は、AMG-208もしくはその薬学的に許容できる塩、AMG-458もしくはその薬学的に許容できる塩、PHA-665752もしくはその薬学的に許容できる塩、SU11274もしくはその薬学的に許容できる塩、NPS-1034もしくはその薬学的に許容できる塩、SGX-523もしくはその薬学的に許容できる塩、BMS-777607もしくはその薬学的に許容できる塩、テポチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、BMS-794833もしくはその薬学的に許容できる塩、NVP-BVU972もしくはその薬学的に許容できる塩、MK-2461もしくはその薬学的に許容できる塩、MGCD-265もしくはその薬学的に許容できる塩、ゴルバチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、JNJ-38877605もしくはその薬学的に許容できる塩、BMS-754807もしくはその薬学的に許容できる塩、PF-04217903もしくはその薬学的に許容できる塩、サボリチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、クリゾチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、チバンチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、カボザンチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、フォレチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、カプマチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、オナルツズマブ、フィクラツズマブまたはリロツムマブであってもよい。
【0021】
c-Met阻害剤が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤は、サボリチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、クリゾチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、チバンチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、カボザンチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、フォレチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、カプマチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、オナルツズマブ、フィクラツズマブまたはリロツムマブであってもよい。
【0022】
c-Met阻害剤が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤は、サボリチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、クリゾチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、チバンチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、カボザンチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、フォレチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、またはカプマチニブもしくはその薬学的に許容できる塩であってもよい。
【0023】
c-Met阻害剤が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤は、サボリチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、クリゾチニブもしくはその薬学的に許容できる塩またはカプマチニブもしくはその薬学的に許容できる塩であってもよい。
【0024】
c-Met阻害剤が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤は、カプマチニブもしくはその薬学的に許容できる塩であってもよい。
【0025】
c-Met阻害剤が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤は、クリゾチニブもしくはその薬学的に許容できる塩であってもよい。
【0026】
c-Met阻害剤が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤は、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩であってもよい。
【0027】
c-Met阻害剤が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤は、オナルツズマブ、フィクラツズマブまたはリロツムマブであってもよい。
【0028】
「サボリチニブ」は、国際公開第2011079804号パンフレット中に(106頁の化合物270として)記載されており、その内容は参照により本明細書中に援用される。遊離塩基としてのサボリチニブは、以下の構造:
【化1】
を有する。
【0029】
用語「薬学的に許容できる」は、対象(例えば塩または賦形剤)が患者における使用に適することを定義するために用いられる。薬学的に許容できる塩の事例リストは、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,2nd Revised Edition;editors P.H.Stahl and C.G.Wermuth;Wiley 2011;ISBN:978-3-90639-051-2(その内容は参照により本明細書中に援用される)中に見出すことができる。
【0030】
薬学的に許容できる塩が言及される場合の任意の実施形態では、薬学的に許容できる塩は、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,2nd Revised Edition;editors P.H.Stahl and C.G.Wermuth;Wiley 2011;ISBN:978-3-90639-051-2中に見出されるような任意の塩であってもよい。
【0031】
c-Met阻害剤は、不斉炭素原子が理由で、光学活性またはラセミ形態で存在し得る。例えば、サボリチニブおよびその薬学的に許容できる塩は、かかる不斉炭素原子を有する。光学活性形態の合成は、当該技術分野で周知の有機化学の標準技術により、例えば、光学活性材料を用いる合成により、またはラセミ形態の分割により実施されてもよい。
【0032】
c-Met阻害剤が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤は、単一の光学異性体が≧95%、≧98%または≧99%の鏡像体またはジアステレオマー過剰率(%ee)で存在する場合の医薬組成物を含んでもよい。
【0033】
c-Met阻害剤が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤は、単一の光学異性体が≧99%の鏡像体またはジアステレオマー過剰率(%ee)で存在する場合の医薬組成物を含んでもよい。
【0034】
サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩が言及される場合の任意の実施形態では、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩は、≧95%、≧98%または≧99%の鏡像体過剰率(%ee)であるような(S)-光学異性体で存在してもよい。サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩の(S)-異性体が言及される場合の任意の実施形態では、(S)-光学異性体は、≧99%の鏡像体過剰率(%ee)で存在してもよい。
【0035】
c-Met阻害剤は、1つ以上の薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物として投与されてもよい。特定組成物への封入用に選択される賦形剤は、提供される組成物の投与様式および形態などの要素に依存することになる。好適な薬学的に許容できる賦形剤は、当業者に周知であり、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th Edition;editors R.C.Rowe,P.J.Sheskey and M.Quinn;Pharmaceutical Press(その内容は参照により本明細書中に援用される)に記載されている。薬学的に許容できる賦形剤は、例えば、アジュバント、希釈剤、担体、安定化剤、香味料、着色剤、フィラー、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、滑剤、増粘剤およびコーティング剤として機能してもよい。特定の薬学的に許容できる賦形剤は、組成物中に存在する賦形剤の量や、組成物中に存在する他の賦形剤が何かに応じて、2つ以上の機能を果たしてもよく、また代替機能を果たしてもよい。
【0036】
c-Met阻害剤を含む医薬組成物は、経口使用(例えば、錠剤、トローチ剤、ハードまたはソフトカプセル、水性または油性懸濁液、乳剤、分散性散剤または顆粒剤、シロップ剤またはエリキシル剤として)、局所使用(例えば、クリーム、軟膏剤、ゲル剤、または水性または油性の溶液または懸濁液として)、吸入による投与(例えば、微粉化散剤または液体エアロゾルとして)、ガス注入による投与(例えば、微粉化散剤として)または非経口投与(例えば、静脈内、皮下、筋肉内または筋肉内投与用の滅菌水性または油性溶液として)、または直腸投与用の坐剤として好適な形態であってもよい。該組成物は、当該技術分野で周知の通常の手順により入手されてもよい。経口使用として意図された組成物は、追加的成分、例えば、1つ以上の着色剤、甘味料、香味料および/または保存剤を含有してもよい。
【0037】
c-Met阻害剤が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤は、経口的に投与されてもよい。
【0038】
c-Met阻害剤が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤は、錠剤またはカプセル剤として経口的に投与されてもよい。
【0039】
c-Met阻害剤は、治療有効量を得るように単位用量形態で投与されてもよい。錠剤またはカプセル剤などの単位用量形態は通常、例えば0.1~5000mgのc-Met阻害剤を含有することになる。総用量および投与計画は、必然的に、治療される宿主、特定の投与経路、同時投与されている任意の治療薬、および治療中の疾病の重症度に応じて変わることになる。したがって、任意の特定患者を治療中の施術者は、c-Met阻害剤に関連した任意の調節標識(regulatory label)を参照して最適用量を決定してもよい。
【0040】
c-Met阻害剤またはその薬学的に許容できる塩が言及される場合の任意の実施形態では、c-Met阻害剤またはその薬学的に許容できる塩は、0.1~1mg、1~10mg、10~50mg、50~100mg、100~500mg、または500mg~5000mgの間のc-Met阻害剤またはその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物中で投与されてもよい。
【0041】
サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩が言及される場合の任意の実施形態では、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩は、0.1~1mg、1~10mg、10~50mg、50~100mg、100~500mg、または500mg~5000mgの間のサボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物中で投与されてもよい。
【0042】
サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩が言及される場合の任意の実施形態では、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩は、100~1000mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物中で投与されてもよい。
【0043】
サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩が言及される場合の任意の実施形態では、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩は、500~1000mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物中で投与されてもよい。
【0044】
サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩が言及される場合の任意の実施形態では、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩は、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物中で投与されてもよい。
【0045】
サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩が言及される場合の任意の実施形態では、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩は、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与されてもよい。
【0046】
「MET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられる」がんは、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異を含むMETタンパク質を発現する細胞を含む。
【0047】
「MET1092、MET1094またはMET1195突然変異を含むMETタンパク質」は、特定のアミノ酸位置の1か所以上で生じる突然変異または変動(例えば、置換または欠失)の分だけ野生型METと異なるMETタンパク質である。
【0048】
野生型METタンパク質の配列は、RefSeq:NCBI Reference Sequence Database内に記載されている(RefSeq受入NM_00245)(本明細書中に提示される(配列番号1))。この配列は、本明細書中に記載されるタンパク質突然変異を記述するための参照配列として用いられる。例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるがんに対する参照では、本明細書中に列挙される配列の1092位、1094位または1195位の1か所以上に少なくとも1つの突然変異または変動を含むMETタンパク質を発現する細胞を含むがんが記述される。
【0049】
18の追加的なアミノ酸を有するMETの長いアイソフォームにおけるMET突然変異であれば、同じ生物学的結果、すなわちc-Met阻害剤に対する感受性をもたらすことになる。
【0050】
がんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが言及されるとき、がんがさらに他の突然変異(METに関連しないものを含む)によって特徴づけられてもよいことは理解されるべきである。同様に、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異を含むMETタンパク質はまた、他のアミノ酸位置に他の突然変異を有してもよい。
【0051】
MET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるがんが、特定の突然変異の1つ以上、例えば、MET1092およびMET1094突然変異、MET1092およびMET1195突然変異、MET1094およびMET1195突然変異、またはMET1092、MET1094およびMET1195突然変異によって特徴づけられてもよいことも理解されるべきである。同様に、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異を含むMETタンパク質は、特定の突然変異の1つ以上を含んでもよい。
【0052】
MET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるがんが言及される場合の任意の実施形態では、がんは、MET1092およびMET1094突然変異によって特徴づけられてもよい。
【0053】
MET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるがんが言及される場合の任意の実施形態では、がんは、MET1092およびMET1195突然変異によって特徴づけられてもよい。
【0054】
MET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるがんが言及される場合の任意の実施形態では、がんは、MET1094およびMET1195突然変異によって特徴づけられてもよい。
【0055】
MET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるがんが言及される場合の任意の実施形態では、がんは、MET1092、MET1094およびMET1195突然変異によって特徴づけられてもよい。
【0056】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、突然変異は、アミノ酸置換であってもよい。
【0057】
「アミノ酸置換」は、インフレームインデルを含んでもよい。「インフレームインデル」は、リーディングフレームにおけるアミノ酸の挿入および/または欠失であり、それ故、所与の位置で余分なアミノ酸または失われたアミノ酸のいずれかをもたらす。
【0058】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、該突然変異は、インデルであってもよい。
【0059】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、該突然変異は、インフレームインデルであってもよい。
【0060】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、該突然変異は、体細胞突然変異であってもよい。
【0061】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、MET突然変異は、生殖系列突然変異であってもよい。
【0062】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、MET突然変異は、MET V1092突然変異であってもよい。MET V1092突然変異は、野生型タンパク質の1092位のアミノ酸バリンが改変されるときに生じる。
【0063】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、MET突然変異は、MET V1092I突然変異であってもよい。MET V1092I突然変異は、野生型タンパク質の1092位のアミノ酸バリンがアミノ酸イソロイシンで置換されるときに生じる。
【0064】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、MET突然変異は、MET H1094突然変異であってもよい。MET H1094突然変異は、野生型タンパク質の1094位のアミノ酸ヒスチジンが改変されるときに生じる。
【0065】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、MET突然変異は、MET H1094L突然変異であってもよい。MET H1094L突然変異は、野生型タンパク質の1094位のアミノ酸ヒスチジンがアミノ酸ロイシンで置換されるときに生じる。
【0066】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、MET突然変異は、MET L1195突然変異であってもよい。MET L1195突然変異は、野生型タンパク質の1195位のアミノ酸ロイシンが改変されるときに生じる。
【0067】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、MET突然変異は、MET L1195F突然変異であってもよい。MET L1195F突然変異は、野生型タンパク質の1195位のアミノ酸ロイシンがアミノ酸フェニルアラニンで置換されるときに生じる。
【0068】
一実施形態では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられる。
【0069】
一実施形態では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、V1092I突然変異によって特徴づけられる。
【0070】
一実施形態では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET H1094L突然変異によって特徴づけられる。
【0071】
一実施形態では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET L1195F突然変異によって特徴づけられる。
【0072】
既に述べたように、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるがん細胞は、上記の変動の少なくとも1つを含むMETタンパク質を発現する。そのように、関連するがん細胞は、関連する変異タンパク質をコードする核酸配列内に対応する突然変異を有する。かかる変異核酸はまた、c-Met阻害におけるバイオマーカーとして用いることができ、故に本明細書の実施形態をも形成する。
【0073】
一実施形態では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET_c.3583C>T突然変異によって特徴づけられる。
【0074】
「MET_c.3583C>T突然変異」は、野生型METタンパク質をコードする核酸配列の3583位のシトシンヌクレオチドがチミンヌクレオチドで置換されるときに生じる。MET_c.3583C>T突然変異は、MET L1195F突然変異を含むMETタンパク質をコードする。
【0075】
野生型METタンパク質をコードする核酸配列は、RefSeq:NCBI Reference Sequence Database内に記載されている(RefSeq受入NM_00245)(本明細書に提供される(配列番号2))。提供されるRefSeqは、コード配列の開始前の202ヌクレオチド長UTR配列を含む、非コード配列(「非翻訳領域」または「UTR」)を含む。
【0076】
RefSeq:NCBI Reference Sequence Database(RefSeq受入NM_00245)は、本明細書中で考察される遺伝子突然変異を記述するときの参照配列として用いられる。例えば、MET_c.3583C>T突然変異を有する核酸に対する参照は、本明細書中に列挙される配列の3785位のシトシンヌクレオチドがチミンヌクレオチドで置換されている場合の核酸を記述する。
【0077】
「がん」は、患者の身体内で腫瘍または増殖をもたらす細胞の制御されない増殖を指す。「がん」および「腫瘍」は、がん患者の身体内に存在する物理的増殖を説明するため、交換可能に用いられる。「がん」は、非転移性がんおよび転移性がんの双方を含むことから、がんの治療は、原発性腫瘍とさらに局所または遠隔転移の双方の治療を含んでもよい。
【0078】
がん腫瘍は、天然に異質(heterogeneous)であり、がん患者の身体内の各腫瘍は、異なる理由のために制御されない様式で増殖している細胞の分離集団を含んでもよい。例えば、所与の腫瘍は、増殖がそれらの細胞機構における異なる異常、例えば異なるDNA突然変異によって駆動されているような異なる細胞の集団を含んでもよい。そのように、がんが、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられ、ひいてはMET1092、MET1094またはMET1195突然変異を含むMETタンパク質を発現する細胞を含むことが言及されるとき、がん細胞のすべてがかかる突然変異体METタンパク質を発現し得るわけではない。
【0079】
がんが言及される場合の任意の実施形態では、がんは、肺がん(例えば、小細胞肺がんまたは非小細胞肺がん)、胃がん、脳がん(例えば、神経膠芽腫)、結腸直腸がん、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)または腎がん(例えば、腎明細胞がんまたは乳頭状腎細胞がん)であってもよい。
【0080】
がんが言及される場合の任意の実施形態では、がんは、腎がん(例えば、腎明細胞がんまたは乳頭状腎細胞がん)であってもよい。
【0081】
がんが言及される場合の任意の実施形態では、がんは、乳頭状腎細胞がんであってもよい。
【0082】
乳頭状腎細胞がんが言及される場合の任意の実施形態では、乳頭状腎細胞がんは、I型乳頭状腎細胞がんであってもよい。
【0083】
「I型乳頭状腎細胞がん」は、透明細胞質から好塩基性細胞質を有する小細胞のライニングによって特徴づけられる組織学的サブタイプである。
【0084】
乳頭状腎細胞がんが言及される場合の任意の実施形態では、乳頭状腎細胞がんは、II型乳頭状腎細胞がんであってもよい。
【0085】
「II型乳頭状腎細胞がん」は、大量の好酸性細胞質を有する大細胞のライニングによって特徴づけられる組織学的サブタイプである。
【0086】
当業者は、上記および他の組織学的基準を用いて、乳頭状腎細胞がんの組織学的サブタイプ間の識別を行うことができる。
【0087】
一実施形態では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられ、かつc-Met阻害剤は、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩であり、500~1000mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される。
【0088】
一実施形態では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられ、かつc-Met阻害剤は、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩であり、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される。
【0089】
一実施形態では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられ、かつc-Met阻害剤は、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩であり、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される。
【0090】
一実施形態では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられる乳頭状腎細胞がんである。
【0091】
一実施形態では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられる乳頭状腎細胞がんであり、かつc-Met阻害剤は、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である。
【0092】
一実施形態では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられる乳頭状腎細胞がんであり、かつc-Met阻害剤は、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩であり、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される。
【0093】
一実施形態では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられるII型乳頭状腎細胞がんであり、かつc-Met阻害剤は、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩であり、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される。
【0094】
一実施形態では、MET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられるII型乳頭状腎細胞がんの治療において用いるためのサボリチニブが提供され、ここでサボリチニブは、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される。
【0095】
一実施形態では、がん患者をc-Met阻害剤での治療に対する彼らの適合性について確立するためにスクリーニングする方法であって、患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適する、方法が提供される。
【0096】
一実施形態では、がん患者をc-Met阻害剤での治療に対する彼らの適合性について確立するためにスクリーニングする方法であって、患者のがんの代表的試料を得るステップと、患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、該試料をインビトロで分析するステップと、を含み、ここで患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適する、方法が提供される。
【0097】
一実施形態では、がん患者がc-Met阻害剤での治療から利益を得る可能性が高いか否かを判定する方法であって、患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料におけるMET1092、MET1094またはMET1195突然変異の存在についてインビトロで試験するステップを含み、ここで患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療から利益を得る可能性がより高い、方法が提供される。
【0098】
一実施形態では、がん患者用の好適な治療レジームを選択するための方法であって、
a)患者のがん細胞内でのMET1092、MET1094またはMET1195突然変異の存在を、患者のがんの代表的試料中で分析することにより判定するステップと;
b)MET L1195F突然変異が患者のがん細胞内に存在する場合、c-Met阻害剤の投与を含む治療レジームを選択するステップと、
を含む、方法が提供される。
【0099】
一実施形態では、がん患者用の好適な治療レジームを選択するための方法であって、
a)患者のがんの代表的試料を得るステップと;
b)患者のがん細胞内でのMET1092、MET1094またはMET1195突然変異の存在を、試料を分析することにより判定するステップと;
c)MET1092、MET1094またはMET1195突然変異が患者のがん細胞内に存在する場合、c-Met阻害剤の投与を含む治療レジームを選択するステップと、
を含む、方法が提供される。
【0100】
一実施形態では、がん患者をc-Met阻害剤での治療に対する彼らの適合性について確立するためにスクリーニングする方法であって、患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適し、ここでc-Met阻害剤は、500~1000mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である、方法が提供される。
【0101】
一実施形態では、がん患者をc-Met阻害剤での治療に対する彼らの適合性について確立するためにスクリーニングする方法であって、患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適し、ここでc-Met阻害剤は、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である、方法が提供される。
【0102】
一実施形態では、がん患者をc-Met阻害剤での治療に対する彼らの適合性について確立するためにスクリーニングする方法であって、患者のがんがMET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195Fによって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適し、ここでc-Met阻害剤は、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である、方法が提供される。
【0103】
一実施形態では、がん患者をc-Met阻害剤での治療に対する彼らの適合性について確立するためにスクリーニングする方法であって、患者のがんがMET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195Fによって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適し、ここでがんは乳頭状腎細胞がんである。
【0104】
一実施形態では、がん患者をc-Met阻害剤での治療に対する彼らの適合性について確立するためにスクリーニングする方法であって、患者のがんがMET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195Fによって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適し、ここでがんは乳頭状腎細胞がんであり、かつc-Met阻害剤はサボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である、方法が提供される。
【0105】
一実施形態では、がん患者をc-Met阻害剤での治療に対する彼らの適合性について確立するためにスクリーニングする方法であって、患者のがんがMET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195Fによって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適し、ここでがんは乳頭状腎細胞がんであり、かつc-Met阻害剤は、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である、方法が提供される。
【0106】
一実施形態では、がん患者をc-Met阻害剤での治療に対する彼らの適合性について確立するためにスクリーニングする方法であって、患者のがんがMET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195Fによって特徴づけられることが見出される場合、患者は、がんがII型乳頭状腎細胞がんである場合、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される、c-Met阻害剤での治療に適する、方法が提供される。
【0107】
一実施形態では、乳頭状腎細胞がん患者をサボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩での治療に対する彼らの適合性について確立するためにスクリーニングする方法であって、患者のがんがMET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者はサボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩での治療に適する、方法が提供される。
【0108】
一実施形態では、がんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられる場合、がんの治療用の薬剤の調製におけるc-Met阻害剤の使用が提供される。
【0109】
一実施形態では、がんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるような患者においてがんを治療するための方法であって、c-Met阻害剤を治療有効量で前記患者に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0110】
一実施形態では、かかる治療を必要とする患者におけるがんを治療するための方法であって、
a)患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するステップと;
b)患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、c-Met阻害剤を治療有効量で患者に投与するステップと、
を含む、方法が提供される。
【0111】
一実施形態では、かかる治療を必要とする患者におけるがんを治療するための方法であって、
a)患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを結果が判定し得るような試験を要求するステップと;
b)患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、c-Met阻害剤を治療有効量で患者に投与するステップと、
を含む、方法が提供される。
【0112】
一実施形態では、かかる治療を必要とする患者におけるがんを治療するための方法であって、
a)患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを結果が判定し得るような試験を要求するステップと;
b)患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、c-Met阻害剤を治療有効量で患者に処方するステップと、
を含む、方法が提供される。
【0113】
一実施形態では、MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)の測定に適した診断キットであって、MET遺伝子における標的核酸を増幅するのに好適な縮重プライマー、および任意選択的には、増幅プロトコルおよび結果分析を含む使用説明書を含む、診断キットが提供される。
【0114】
MET突然変異の測定に適した診断キットが言及される場合の任意の実施形態では、キットは、増幅プロトコルおよび結果分析を含む使用説明書を含んでもよい。
【0115】
MET突然変異の測定に適した診断キットが言及される場合の任意の実施形態では、キットは、増幅および増幅生成物の分析を実施するための緩衝液、酵素、および容器を含んでもよい。
【0116】
MET突然変異の測定に適した診断キットが言及される場合の任意の実施形態では、キットは、1つ以上のDNAマイクロアレイを含んでもよい。
【0117】
MET突然変異の測定に適した診断キットが言及される場合の任意の実施形態では、キットは、1つ以上の対照鋳型を含んでもよい。好適な対照鋳型は、正常組織試料から単離される核酸を含み、試料は参照遺伝子において異なる変動を表す。
【0118】
MET突然変異の測定に適した診断キットが言及される場合の任意の実施形態では、キットは、2つ以上のプライマー対を含んでもよく(各対はMET遺伝子の異なる領域(各領域は潜在的変動の部位である)を増幅する能力がある)、それにより1つの反応または幾つかの平行反応における生体試料中での幾つかの遺伝子変動の存在についての分析用キットを提供する。
【0119】
好適なプライマーは、増幅生成物の検出および核酸変動の結果としての分析を容易にするため、(例えば蛍光的に)標識されてもよい。キットは、2つ以上の変動が1回の分析で検出されることを可能にし得る。したがって、組み合わせキットは、参照遺伝子の異なるセグメントを増幅する能力があるプライマーを含むことになる。プライマーは、変動間で識別するため、例えば異なる蛍光標識を用いて別々に標識されてもよい。
【0120】
MET突然変異の測定に適した診断キットが言及される場合の任意の実施形態では、キットは、METの変異形態が決定されることを可能にし得、ここで突然変異は、遺伝子にわたる任意の位置に存在する。
【0121】
MET突然変異の測定に適した診断キットが言及される場合の任意の実施形態では、キットは、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異が決定されることを可能にする。
【0122】
MET突然変異の測定に適した診断キットが言及される場合の任意の実施形態では、キットは、MET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異が決定されることを可能にする。
【0123】
がんが特定の突然変異によって特徴づけられるか否か(例えば、がんが野生型METタンパク質に対して1092位、1094位または1195位に突然変異を含むMETタンパク質を発現する細胞を含むか否か)の判定は、細胞のゲノムDNAの分析に基づいてもよく、またはDNAによってコードされるDNA転写物もしくはタンパク質の分析を介してもよい。突然変異が患者のがん細胞内で確かに発現されることを確認するため、がん細胞のゲノムDNAにおける所与の突然変異の存在を転写物および/またはタンパク質の並行分析により確認することが望ましい場合がある。
【0124】
タンパク質、例えばMETタンパク質における対応する突然変異をコードする、遺伝子における1つ以上の位置での突然変異を検出するために用いられてもよい、当該技術分野で周知の分析手法が多数存在する。一般に、かかる検出方法は、突然変異検出技術、任意選択的には増幅方法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、すなわち「PCR」)、任意選択的には捕獲または富化方法(例えば、次世代配列決定法におけるハイブリダイゼーション捕獲)および任意選択的にはシグナル生成システムを必要とする。遺伝子突然変異を検出するための方法の例が、Nollau et al.Clin.Chem.1997,43,1114-1120;Anderson,S.M;Expert Rev.Mol.Diagn.2011,11,635-642;Meyerson M. et al.,Nat.Rev.Genet.2010,11,685-696;ならびに標準的教科書、例えば、Laboratory Protocols for Mutation Detection,2nd Edition;Edited by U.Landegren;Oxford University Press 1996およびPCR by Newton&Graham,BIOS Scientific Publishers Limited 1997において考察されている。この段落に記載される参考文献のすべての内容は、参照により本明細書中に援用される。
【0125】
がんがMET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)によって特徴づけられるか否かを判定することが必要である場合の任意の実施形態では、該判定は、突然変異検出技術を含んでもよい。
【0126】
がんが突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)によって特徴づけられるか否かを判定することが必要である場合の任意の実施形態では、該判定は、突然変異検出技術および増幅方法を含んでもよい。
【0127】
がんが突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)によって特徴づけられるか否かを判定することが必要である場合の任意の実施形態では、該判定は、突然変異検出技術および捕獲または富化方法を含んでもよい。
【0128】
がんが突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)によって特徴づけられるか否かを判定することが必要である場合の任意の実施形態では、該判定は、突然変異検出技術およびシグナル生成システムを含んでもよい。
【0129】
がんが突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)によって特徴づけられるか否かを判定することが必要である場合の任意の実施形態では、該判定は、突然変異検出技術、増幅方法、捕獲または富化方法およびシグナル生成システムを含んでもよい。
【0130】
「突然変異検出技術」は、PCR、アレル特異的プローブを用いるハイブリダイゼーション、酵素突然変異検出、ミスマッチの化学的切断、質量分析またはDNA配列決定(ミニシークエンシングを含む)を含む種々の方法により、生体試料から収集されるDNAまたはRNAを分析することにより実施され得る。突然変異検出技術の例として、増幅不応性突然変異系(ARMS(商標))、増幅不応性突然変異系線形拡張(linear extension)(ALEX(商標))、競合オリゴヌクレオチドプライミング系(COPS)、Taqman、分子ビーコン、制限断片長多型(RFLP)、制限部位に基づくPCRおよび蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術およびオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)が挙げられる。
【0131】
アレル特異的プローブを用いるハイブリダイゼーションは、(1)例えば多数のDNAチップ適用と同様、溶液中の標識試料と接触される固相(例えば、ガラス、シリコン、ナイロン膜)に結合されるアレル特異的オリゴヌクレオチド;または、(2)結合された試料(多くはクローン化DNAまたはPCR増幅DNA)および溶液中の標識オリゴヌクレオチド(ハイブリダイゼーションによる配列決定を可能にするため、アレル特異的または短いかのいずれか)を用いて実施され得る。診断検査は、2つ以上の突然変異の同時測定を可能にする、多くは固体支持体上の突然変異のパネルを含んでもよい。かかるハイブリダイゼーションプローブは、当該技術分野で周知であり(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th Edition,Volumes 1-3;editors Green and Sambrook;Cold Spring Harbor,N.Y 2012,ISBN:9781936113422を参照)、2つ以上の変動部位におよんでもよい。
【0132】
突然変異検出技術が言及される場合の任意の実施形態では、突然変異検出技術は、推定上の突然変異部位を有するMET核酸を少なくとも1つの核酸プローブと接触させることを含んでもよい。
【0133】
突然変異検出技術が言及される場合の任意の実施形態では、突然変異検出技術は、潜在的な突然変異部位を有するMET核酸を少なくとも1つの核酸プローブと接触させることを含んでもよく、ここでは、プローブは、突然変異部位に相補的ヌクレオチド塩基を有する突然変異部位を含む核酸配列と選択的ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。
【0134】
ハイブリダイゼーションは、当業者に公知の標識を用いて検出され得る。かかる標識は、放射、蛍光、色素、および酵素標識を含む。
【0135】
突然変異検出技術が言及される場合の任意の実施形態では、突然変異検出技術は、潜在的な突然変異部位を有するMET核酸を少なくとも1つの核酸プライマーと接触させることを含んでもよい。
【0136】
突然変異検出技術が言及される場合の任意の実施形態では、突然変異検出技術は、潜在的な突然変異部位を有するMET核酸を少なくとも1つの核酸プライマーと接触させることを含んでもよく、ここでは、プライマーは、変動部位に相補的ヌクレオチド塩基を有する突然変異部位を含む核酸配列と選択的ハイブリダイゼーション条件下で優先的にハイブリダイズする。
【0137】
特異的増幅用のプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドは、分子の中心にある目的の突然変異に対して相補的なヌクレオチド塩基を有してもよく、増幅は、差次的ハイブリダイゼーション(例えば、Gibbs,et al.Nucl.Acids Res.1989,17,2437を参照)に依存し、または一方のプライマーの3’最末端では、適切な条件下で、ミスマッチがポリメラーゼ延長を阻止または低減し得る(例えば、Prossner 1993,Tibtech,11 238を参照)。
【0138】
突然変異検出技術が言及される場合の任意の実施形態では、突然変異検出技術は、少なくとも1つの核酸配列を配列決定し、得られた配列を既知の野生型核酸配列と比較することを含んでもよい。
【0139】
突然変異検出技術が言及される場合の任意の実施形態では、突然変異検出技術は、少なくとも1つの核酸配列の質量分析測定を含んでもよい。
【0140】
突然変異検出技術が言及される場合の任意の実施形態では、突然変異検出技術は、PCRを実施することを含んでもよい。
【0141】
ゲノム核酸における突然変異はまた、有利には、増幅された核酸断片における移動度シフトに基づく技術により検出されてもよい。例えば、Chen et al.,Anal Biochem.1996,239,61は、競合的移動度シフトアッセイによる一塩基突然変異の検出についての記載がある。さらに、Marcelino et al.,BioTechniques 1999,26,1134-1148の技術に基づくアッセイが商業的に利用可能である。
【0142】
突然変異検出技術が言及される場合の任意の実施形態では、突然変異検出技術は、ミスマッチの存在の結果としてのキャピラリーシステムにおける二本鎖核酸の移動度シフトに基づく突然変異の存在を検出するため、キャピラリーヘテロ二本鎖分析を用いることを含んでもよい。
【0143】
突然変異検出技術を通じて検出されるさらなる量の核酸を生成するために「増幅方法」を用い、その後の分析ステップを容易にしてもよい。大部分の増幅方法は、酵素連鎖反応(例えば、PCR、リガーゼ連鎖反応、または自家持続配列複製法)または核酸がクローン化されているベクターの全部または一部の複製に依存する。
【0144】
多数の標的およびシグナル増幅方法が、文献、例えば、Landegren,U.et al.,Science 1988,242,229-237およびLewis,R.,Genetic Engineering News 1990,10,54-55におけるこれらの方法の一般的レビューに記載されている。これらの増幅方法は、本明細書に記載の方法にて用いることができ、PCR、PCRインサイチュ、リガーゼ増幅反応(LAR)、リガーゼハイブリダイゼーション、Qβバクテリオファージレプリカーゼ、転写に基づく増幅系(TAS)、転写物配列決定を伴うゲノム増幅(GAWTS)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)およびインサイチュハイブリダイゼーションを含む。様々な増幅技術における使用に適したプライマーは、当該技術分野で公知の方法に従って調製され得る。
【0145】
PCRは、特に米国特許第4,683,195号明細書および米国特許第4,683,202号明細書に記載の核酸増幅法である。PCRは、DNAポリメラーゼによりもたらされるプライマー伸長反応の反復サイクルからなる。標的DNAが熱変性され、増幅されるべきDNAの逆鎖上の標的配列を挟む2つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイズされる。これらのオリゴヌクレオチドは、DNAポリメラーゼとの併用におけるプライマーになる。DNAはプライマー伸長により複製され、両鎖の第2のコピーが作られる。熱変性、プライマーハイブリダイゼーションおよび伸長のサイクルを反復することにより、標的DNAが約2~4時間以内に百万倍以上に増幅され得る。PCRは、増幅の結果を判定するための検出技術と併用される必要がある分子生物学ツールである。PCRの利点は、それが標的DNAの量を約4時間以内に百万倍~十億倍増幅することで、感度が高まる点である。PCRは、診断との関連で任意の既知の核酸を増幅するため、用いることができる(Mok et al.,Gynaecologic Oncology,1994,52:247-252)。
【0146】
一塩基突然変異を検出するため、増幅不応性突然変異系(ARMS(商標))(Newton et al.,Nucleic Acids Res.,1989,17,2503-2516)などのアレル特異的増幅技術もまた用いることができる。適切なPCR増幅条件下で、プライマーの3’末端に位置する一塩基ミスマッチは、完全にマッチした対立遺伝子の優先的増幅にとって十分であり(Newton et al.,1989、上記)、密接に関連した種の識別を可能にする。上記のプライマーを用いる増幅系の基盤として、ミスマッチ3’残基を有するオリゴヌクレオチドが適切な条件下でPCRにおけるプライマーとして機能しないことが挙げられる。この増幅系は、あくまで反応混合物のアガロースゲル電気泳動後の検査による遺伝子型判定を可能にする。
【0147】
増幅方法が言及される場合の任意の実施形態では、増幅方法はPCRを含んでもよい。
【0148】
増幅生成物を分析するため、様々な「シグナル生成システム」を用いることができる。シグナル生成システムは、増幅生成物をそれらのサイズに基づいて分離する能力がある任意の方法、例えば、自動および手動ゲル電気泳動、質量分析などを用いて実施され得る。
【0149】
核酸単離、増幅および分析の方法は、当業者にとってルーチン的であり、プロトコルの例は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th Edition,Volumes 1-3;editors Green and Sambrook;Cold Spring Harbor,N.Y 2012,ISBN:9781936113422)に見出すことができる。PCR増幅において用いられる方法において特に有用なプロトコル源は、PCRである(Basics:From Background to Bench)by M.J.McPherson,S.G.Mailer,R.Beynon,C.Howe,Springer Verlag;1st edition(October 15,2000),ISBN:0387916008(その内容は参照により本明細書中に援用される)。
【0150】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、MET突然変異の検出は、ゲル電気泳動であるシグナル生成システムを含んでもよい。
【0151】
MET突然変異(例えば、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異)が言及される場合の任意の実施形態では、MET突然変異の検出は、質量分析であるシグナル生成システムを含んでもよい。
【0152】
本明細書に記載のタンパク質突然変異を検出するために用いられてもよい方法は、質量分析または指定位置でアミノ酸置換を検出するように設計されている抗体に基づく手法を含む。
【0153】
「患者のがんの代表的試料」は、がん患者から入手されるかまたは入手可能である任意の腫瘍組織または腫瘍細胞を含有する試料、例えば腫瘍核酸、例えば循環遊離DNA(ctDNA)を含有する任意の試料であり得る。患者のがんの試料は、患者から得られる血液、口腔スワブ、生検、または他の体液もしくは組織を含んでもよい。特定例として、患者の血漿または血清中に存在する循環腫瘍細胞または循環腫瘍DNA、卵巣がん患者の腹水から単離される細胞、肺内部に腫瘍を有する患者から得られる肺痰、乳がん患者から得られる細針吸引物、尿、末梢血、細胞擦過物(cell scraping)、毛包、皮膚パンチまたは頬側試料が挙げられる。
【0154】
突然変異状態試験のための患者のがんの代表的試料は、同様に、患者のがんの代表的試料中で得られる配列に対応する核酸配列であってもよい、すなわち試料の核酸中の該領域の全部または一部は、分析前にまず任意の便宜的技術、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて増幅されてもよい。核酸は、ゲノムDNA、または分画もしくは全細胞RNAであってもよい。一部の実施形態では、RNAは、全細胞RNAであり、ランダムプライマーまたはポリAプライマーを用いて、第1鎖cDNAを標識するための鋳型として直接的に用いられる。患者のがんの試料中の核酸またはタンパク質は、標準的方法、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th Edition,Volumes 1-3;editors Green and Sambrook;Cold Spring Harbor,N.Y 2012,ISBN:9781936113422(その内容は参照により本明細書中に援用される)にて参照される方法に従い、試料から抽出されてもよい。
【0155】
患者のがんの代表的試料は、患者から予め採取されてもよい。かかる試料は、凍結により保存される、またはホルマリン-パラフィンもしくは他の培地で固定および包埋されてもよい。あるいは、新しい試料が入手され、用いられてもよい。
【0156】
患者のがんの代表的試料が言及される場合の任意の実施形態では、患者のがんの代表的試料は、腫瘍細胞試料を含んでもよい。
【0157】
患者のがんの代表的試料が言及される場合の任意の実施形態では、患者のがんの代表的試料は、腫瘍核酸を含有する試料を含んでもよい。
【0158】
患者のがんの代表的試料が言及される場合の任意の実施形態では、患者のがんの代表的試料は、腫瘍DNAを含有する試料を含んでもよい。
【0159】
患者のがんの代表的試料が言及される場合の任意の実施形態では、患者のがんの代表的試料は、腫瘍の循環遊離DNAを含有する試料を含んでもよい。
【0160】
実施形態[A]では、がんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられる。
【0161】
実施形態[B]では、実施形態[A]に記載のようにがんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでMET1092、MET1094またはMET1195突然変異は、アミノ酸置換である。
【0162】
実施形態[C]では、実施形態[A]または実施形態[B]に記載のようにがんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられる。
【0163】
実施形態[D]では、実施形態[C]に記載のようにがんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET V1092I突然変異によって特徴づけられる。
【0164】
実施形態[E]では、実施形態[C]に記載のようにがんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET H1094L突然変異によって特徴づけられる。
【0165】
実施形態[F]では、実施形態[A]に記載のようにがんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET L1195F突然変異によって特徴づけられる。
【0166】
実施形態[G]では、実施形態[A]~[F]のいずれか1つに記載のようにがんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、肺がん、胃がんまたは乳頭状腎細胞がんである。
【0167】
実施形態[H]では、実施形態[G]に記載のようにがんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、乳頭状腎細胞がんである。
【0168】
実施形態[I]では、実施形態[H]に記載のようにがんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、II型乳頭状腎細胞がんである。
【0169】
実施形態[J]では、実施形態[A]~[I]のいずれか1つに記載のようにがんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでc-Met阻害剤は、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩、クリゾチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、チバンチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、カボザンチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、フォレチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、カプマチニブもしくはその薬学的に許容できる塩、オナルツズマブ、フィクラツズマブまたはリロツムマブである。
【0170】
実施形態[K]では、実施形態[J]に記載のようにがんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでc-Met阻害剤は、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である。
【0171】
実施形態[L]では、実施形態[A]~[K]のいずれか1つに記載のようにがんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんの治療は、がんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適する。
【0172】
実施形態[M]では、実施形態[A]に記載のようにがんの治療において用いるためのc-Met阻害剤が提供され、ここでがんは、MET V1092I、MET H1094LまたはMET L1195F突然変異によって特徴づけられるII型乳頭状腎細胞がんであり、かつc-Met阻害剤は、600mgのサボリチニブをその遊離塩基形態で含む医薬組成物の1日1回投与で投与される、サボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である。
【0173】
実施形態[N]では、がん患者をc-Met阻害剤での治療に対する彼らの適合性について確立するためにスクリーニングする方法であって、がんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適する、方法が提供される。
【0174】
実施形態[O]では、実施形態[N]の方法であって、がんがMET V1092I突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET V1092I突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適する、方法が提供される。
【0175】
実施形態[P]では、実施形態[N]の方法であって、がんがMET H1094L突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET H1094L突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適する、方法が提供される。
【0176】
実施形態[Q]では、実施形態[N]の方法であって、がんがMET L1195F突然変異によって特徴づけられるか否かを判定するため、患者のがんの代表的試料をインビトロで分析するステップを含み、ここで患者のがんがMET L1195F突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、患者はc-Met阻害剤での治療に適する、方法が提供される。
【0177】
実施形態[R]では、実施形態[N]~[Q]のいずれか1つの方法であって、がんが乳頭状腎細胞がんである、方法が提供される。
【0178】
実施形態[S]では、実施形態[N]~[R]のいずれか1つの方法であって、c-Met阻害剤がサボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である、方法が提供される。
【0179】
実施形態[T]では、がんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられる場合、がんの治療用の薬剤の調製におけるc-Met阻害剤の使用が提供される。
【0180】
実施形態[U]では、かかる治療を必要とする患者におけるがんを治療するための方法であって、
a)患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられるか否かを結果が判定し得るような試験を要求するステップと;
b)患者のがんがMET1092、MET1094またはMET1195突然変異によって特徴づけられることが見出される場合、c-Met阻害剤を治療有効量で患者に投与するステップと、
を含む、方法が提供される。
【0181】
実施形態[V]では、がんが乳頭状腎細胞がんである場合、実施形態[U]の方法が提供される。
【0182】
実施形態[W]では、c-Met阻害剤がサボリチニブまたはその薬学的に許容できる塩である場合、実施形態[U]または実施形態[V]の方法が提供される。
【実施例】
【0183】
以下の試験は、本明細書に記載の実施形態:a)MET受容体チロシンキナーゼのリン酸化およびサボリチニブを用いたMET阻害への感受性に対する点突然変異の効果;b)サボリチニブおよび他のMET阻害剤に対するMET WTおよびMET点突然変異体の用量反応の測定;c)MET WT、MET突然変異体または親Ba/F3安定細胞株の形質転換能;d)MET L1195F突然変異体におけるPRCC患者の腫瘍応答を支持する。試験の説明にわたり、一般に次のことがいえる。
i.IC50値は、生物学的活性の50%を阻害する試験化合物の濃度である。
ii.用いられる略称は、主なテキスト内または以下の段落内で説明されるか、またはそれ以外の場合、当該技術分野の読者には周知のものとなる。aPTT=活性化部分トロンボプラスチン時間;BCA=ビシンコニン酸;EDTA=エチレンジアミン四酢酸;CTCAE=有害事象共通用語規準;DBP=拡張期血圧;DoR=応答の持続期間;DVT=深部静脈血栓症;ECOG=米国東海岸がん臨床試験グループ;ECG=心電図;FBS=胎児ウシ血清;h=時間(秒);GFR=糸球体濾過率;HEK=ヒト胚性腎細胞系;IL-3=インターロイキン-3;LDS=ローディング色素溶液;LMWH=低分子量ヘパリン;NGS=次世代配列決定;NYHA=ニューヨーク心臓協会;ORR=奏効率;OS=全生存;PD=進行性疾患;PBS=リン酸緩衝食塩水;PFS=進行のない生存;PK=薬物動態;PO=経口的に;QD=1日1回;RFP=赤色蛍光タンパク質;SC=皮下に;SBP=収縮期血圧;TBST=トリス緩衝生理食塩水-ツイーン20;ULN=正常上限;WB=ウエスタンブロット。
【0184】
試験a):MET受容体チロシンキナーゼのリン酸化およびサボリチニブを用いたMET阻害への感受性に対する点突然変異の効果
MET WTおよびアミノ酸置換を有する特異的突然変異体のHEK293T細胞における一過性トランスフェクションにより、リン酸化MET WB分析を用いてのMETキナーゼを活性化するそれらの能力、またp-ERK1/2 WB分析を用いての下流経路活性化について検討した。MET WTおよびすべてのMET突然変異体は、DMSO処理条件およびリン酸化MET(Y1234/Y1235)の検出によって示されるように一過性に過剰発現されるとき、活性化している。新規なMET突然変異体L1195Fは、METおよびERK1/2を活性化し得、MET WTと同程度までサボリチニブ阻害に対して感受性がある。新規なMET突然変異体V1092IおよびH1094Lもまた、過剰発現により活性化され、下流ERK経路活性化をもたらす。それに対し、既知の強固なMET突然変異体を活性化するM1250Tは、100nMであくまで部分的に阻害され、Y1230Hはサボリチニブに対して完全に抵抗性を示す。この試験の結果は、
図1に示し、MET L1195F、V1092IおよびH1094LがMETの突然変異体に加え、下流ERK1/2シグナル伝達を活性化しており、サボリチニブ処理により阻害され得ることを示す。
【0185】
試験b):サボリチニブおよび他のMET阻害剤に対するMET WTおよびMET点突然変異体の用量反応の測定
上記のようなMET WTおよびMET突然変異体構築物の一過性トランスフェクトHEK293T細胞を、指定用量(2.7nM~6.0μMの範囲)のサボリチニブ、INC280またはクリゾチニブで2.5時間処理し、リン酸化MET阻害の程度を検出した。結果を
図2~7および下の表1に示す。
【0186】
【0187】
表1では、IC50は、各MET WTおよび変異タンパク質の関連するc-Met阻害剤による阻害に対する感受性を示す。サボリチニブは、WT METタンパク質に対して13nMのIC50、また既知のMET突然変異体を活性化するM1250Tに対して6nMのIC50を有する。このように、サボリチニブは両タンパク質に対して同等のIC50値を有する。同様に、MET L1195Fを一過性に発現する細胞がサボリチニブにおける35nMのIC50を有することはまた、このMET突然変異体が、MET WTおよび既知の活性化M1250T突然変異体と同程度までサボリチニブにより阻害され得ることを示す。MET V1092IおよびH1094Lの一過性発現は、これらの変異タンパク質がリン酸化され、かつこのリン酸化がMET阻害剤により阻害され得、サボリチニブのIC50が各々、12nMおよび4nMであることを示す。それに対し、MET Y1230H突然変異体は、リン酸化MET MSDシグナルの少なくとも50%を阻害できないことが理由でIC50を測定できなかったことから、サボリチニブ阻害に対して感受性がない。リン酸化MET MSDシグナルは、全METシグナルに対して正規化する。
【0188】
試験c):MET WT、MET突然変異体または親Ba/F3安定細胞株の形質転換能;
増殖がIL-3に依存するような安定細胞株集団を、IL-3の存在下でのそれらの相対的生存度についてアッセイし、細胞増殖における傾向を確立した。IL-3を除去し、各MET構築物の形質転換能を測定した。さらに、HGF処理条件は、MET依存性細胞増殖に全面的に寄与することを示す。この試験の結果を
図8に示す。
【0189】
増殖においてIL-3依存性である親Ba/F3細胞がベクターまたはHGF処理に対して応答しなかった場合、MET WTの過剰発現も、IL-3依存性では増殖の利点をもたらさなかった。それに対し、MET M1250T細胞は、予想通り、IL-3の不在下で増殖し、新規なMET突然変異体L1195Fは、MET M1250Tと同程度に増殖を与える能力を有することが示される。他の新規なMET突然変異体(MET Y1230Hではなく、MET V1092IおよびMET H1094L)もまた、比較的より大きいIL-3非依存性細胞増殖を与える能力を有する。
【0190】
試験d)MET L1195F突然変異体におけるPRCC患者の腫瘍応答
2014年9月、PRCCを有する患者におけるサボリチニブ(AZD6094/HMPL-504)の有効性を評価するため、56歳女性を第II相試験に登録した(NCT02127710)。2012年12月、腹部リンパ節への幾つかの転移性病変の切除中、診断用試料を患者から収集した。このアーカイブ腫瘍試料を中央病理診断(central pathology)により分析し、高グレードを示したが、II型PRCCの鑑別は不十分であった。患者は、2014年9月2日、サボリチニブを用いた治療を開始した。先行全身療法は、スニチニブおよびサイトカインを含んだが、最良応答は先行選択された両治療法に対する進行性疾患(PD)であった。用いたサボリチニブサイクルは3週であった。
【0191】
500倍のエクソンカバレッジ中央値を有する診断用腫瘍試料(Foundation Medicine Inc,FMI)の配列決定(NGS)によると、MET突然変異MET_c.3583C>Tの存在が示され、対立遺伝子画分が24%であった。L1195Fのアミノ酸置換は、MET受容体チロシンキナーゼのキナーゼドメイン内のエクソン18に位置する。これは、有意性が未知の変異体としてFMIにより報告されている。この腫瘍検体は、同時発生するMET遺伝子コピー数の変動、他のMET突然変異を宿さないばかりか、PRCCの特徴である7番染色体の増加の下では、またMET遺伝子およびそのリガンドHGF遺伝子双方の遺伝子座が存在する場合には、同時発生しなかった。7番染色体コピー数は、400遺伝子の統合されたコピー数分析を用いて検出し、4200のSNPは、FMI配列決定アッセイにて測定した。
【0192】
被験者9203-002は、RECIST1.1基準に従う安定疾患を有した。しかし、サボリチニブ治療の36週目に生じるこの被験者の最良の腫瘍応答は、4つの標的病変の最長直径の和における29.7%の減少であった(
図9)。標的病変の和は、スパイダープロット上、mm単位でのデータラベルで示される。
【0193】
以下の一般的実験技術を上記試験にわたって用いた。
【0194】
MET WTおよび突然変異体クローン
合成遺伝子pLVXIP_MET_FLAGを合成オリゴヌクレオチドおよび/またはPCR産物から構築した。断片をベクター骨格pLVXIRES-Puro_P839クローニング部位BamHI/EcoRIに挿入した。プラスミドDNAを形質転換細菌から精製し、UV分光により濃度を測定した。最終構築物を配列決定により確認した。挿入部位内の配列(ABI)一致は100%であった。指定アミノ酸位置(NM_000245)M1250T、Y1230H、L1195F、H1094LおよびV1092Iでの点突然変異をMET WTと同様に作製した(Invitrogen byThermo Fischer Scientific)。
【0195】
一過性トランスフェクションおよび阻害剤治療
ヒト胚性腎細胞株(HEK293T)に、上のM&MのMET WTおよび突然変異体クローンのセクションにおいて概説したプラスミドを一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの日、HEK293T細胞を蒔いて、95%コンフルエント状態にした(各ウイルス構築物につき1プレート)。MET構築物(24μg)およびOptimem(1.5mL)を、MasterMixとしてのOptimem(1.5mL/反応)中リポフェクタミン2000(60μL/反応、Invitrogen)と組み合わせ、室温で5分間インキュベートした。最終体積が約3mLになるように、Master Mix1.5mLを、構築物を含有する各チューブに添加した。各混合物を上下にピペッティングし、混合し、室温で20分間静置しておいた。プラスミドミックス(3mL)を、培地12mLを含有する10cmの各プレートに緩やかに添加し、プレートを一晩インキュベートした。24時間後、培地を除去し、大きな力を用いて293T細胞から緩やかにピペッティングする工程を設け、所望される投与プレート(6ウェルまたは96ウェル)内に1:10で再播種し、それを一晩接着させておいた。サボリチニブ(AZD6094)を、指定濃度のDMSOで希釈し、その後2.5時間処理して細胞培養条件まで希釈した。培地を細胞から吸引し、投与培地と交換した。得られたプレートを2.5時間インキュベートし、直ぐに氷冷溶解緩衝液に溶解し、-20℃で貯蔵した。
【0196】
細胞可溶化物の調製
溶解緩衝液(TBS+1%NP40)に、PhosSTOPホスファターゼ阻害剤および完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を溶解緩衝液10mLごとに1錠ずつ添加した。混合物を冷却しておいた。半接着性293T細胞が懸濁されるまで溶解緩衝液培地(6ウェルディッシュ)をピペッティングすることにより、細胞をウェルから除去した。次に、これらを1500rpmで5分間遠心沈殿した。培地を吸引し、細胞ペレットを氷上で溶解緩衝液100μLに再懸濁した。直ぐに懸濁液をドライアイス下で2回凍結/解凍した。次に、試料を約14000rpmで10分間遠心分離した。上清を新しいチューブ(約85μL)に移し、使用準備が整うまで氷上で維持するかまたは-20℃で凍結させた。BCAアッセイを実施し、タンパク質濃度を測定した。溶解緩衝液を用いて試料を90μL中3.0mg/mlに正規化し、30μLのLDS試料緩衝液および還元剤溶液を添加した。得られた懸濁液を1500rpmで10秒間遠心分離し、試料を沸騰するまで加熱し(Thermo Cycler-200)、再び遠心分離し、冷却しておいた。
【0197】
ウエスタンブロット
全細胞可溶化物から40μgのタンパク質を、SDS-PAGE10%Bis-Tris MidiGel(LifeTech)を用いるゲル電気泳動を介して分離した。電気泳動後、分離されたタンパク質をニトロセルロース(LifeTech)膜上に移した。膜をブロッキングし、抗体とTBST中5%脱脂粉乳との非特異的結合を阻止した。次に、膜を目的のタンパク質に対して産生される一次抗体とともにインキュベートし、次にその後の二次抗体を一次抗体に対して産生されるHRPとコンジュゲートした。最後に、膜を増強された化学発光(ECL,Thermo Fisher Scientific)を介して検出可能な基質とともに室温で3分間インキュベートし、画像処理システム(Fuji,ImageQuant LAS-4000)を用いて展開した。
【0198】
使用抗体は、MET(CST、8198S、ウサギ)、pMET(CST、3077S、ウサギ)、ERK1/2(CST、4695S、ウサギ)、pERK(CST、4370S、ウサギ)、二次抗ウサギHRPコンジュゲート(CST、7074P2)を含んだ。
【0199】
MSDリン酸化タンパク質アッセイ
全細胞可溶化物を、Multi-SPOT Phospho(Tyr1349)/Total Met Assay(MesoScale Discovery,MSD)で用いるため、上記のように調製した。MSDは、空間的に異なるスポットでのリン酸化Met(Tyr1349)および全Metに対する捕捉抗体がプレコーティングされているプレートを提供する。ブロッキング溶液150μLを各ウェルに添加した。プレートを接着プレートシールで密封し、室温で激しく振盪させながら(300~1000rpm)1時間インキュベートした。プレートを300μL/ウェルのトリス洗浄緩衝液で3回洗浄した。試料を1ウェルあたり25μL添加した。プレートを接着プレートシールで密封し、室温で激しく振盪させながら(300~1000rpm)1時間インキュベートした。プレートを300μL/ウェルのトリス洗浄緩衝液で3回洗浄した。検出抗体溶液25μLを、MSDプレートの各ウェルに添加した(抗-全Metを電気化学発光化合物、MSD SULFO-TAG標識とコンジュゲートした)。プレートを接着プレートシールで密封し、室温で激しく振盪させながら(300~1000rpm)1時間インキュベートした。プレートを300μL/ウェルのトリス洗浄緩衝液で3回洗浄した。1×Read Buffer Tの150μLをMSDプレートの各ウェルに添加した。分析のため、プレートをMSD SECTOR(登録商標)Imagerに負荷した。SECTOR(登録商標)Imagerはプレート電極に電圧を印加することで、電極表面に結合した標識の発光を引き起こす。その装置では、発光の強度が測定され、試料中に存在するリン酸化Met(Tyr1349)および全Metの定量的尺度を提供する。パーセントリン酸化Metは、MSDリン酸化/全多重リン酸化タンパク質アッセイで、独立のMSDリン酸化Metおよび全Metタンパク質を用いて算出され得る。
【0200】
安定細胞株の作製
IL-3依存性マウスのプロB細胞株Ba/F3を、ウイルス構築物の突然変異体、ポリブレンを8μg/mLの最終濃度で有する6ウェルプレートに、5.2×105細胞/mLの密度で蒔き、完全培地(RPMI-1640(Gibco)、10%FBS、1%L-グルタミン(L-glut)、IL-3の1ng/mL)で体積が2mLになるまで満たした。懸濁培養物をパラフィルムで密封し、20℃、1500~2000rpmで45分間遠心分離し、次に一晩インキュベートし、完全培地と交換した。培養密度(2.0×106細胞/mL)で、2~4日後、培地がピューロマイシンを0.5μg/mLの最終濃度で含有する場合、選択的圧力を加えながら培地を交換した。ピューロマイシンとともにセレクチン下で細胞を3週間維持した。細胞集団を分割し、1ウェルを処理し、安定細胞株中で感染クローンを検証した。Qiagen Blood and Tissue Kitを用いてDNAを抽出し、NanoDropを用いてDNA濃度を検証した。Q5 Hot Start High Fidelity 2X Master Mix(New England BioLabs)を用いたPCRにより、DNAを増幅した。臭化エチジウムを有する1%アガロースゲル上での電気泳動により、PCR産物を精製した。正確な分子量のバンドをゲルから切断し、Wizard SV Gel Purification Kit(Promega)を用いて精製した。NanoDropを用いてDNA濃度を検証し、10nMの精製されたDNAおよび10μMのプライマーを配列決定し、MET突然変異体クローンの安定細胞株を確認した(Eton Bioscience)。Sequencer 5.4を用いて配列を確認した。細胞の陰性対照群を、ポリブレンおよび構築物を有しないウイルスパッケージに感染させ、また細胞の陽性対照群を、ポリブレンおよび赤色蛍光タンパク質(RFP)ウイルスに感染させた。
【0201】
使用したPCRプライマーは、METのセンス143090519およびアンチセンス143090520を含む。使用した配列決定プライマーは、F1 143090521、F2 143090522、F3 143090523、R1 143090524、R2 143090525、R3 143090526を含む。1195位、1092位および1094位での突然変異体構築物を確認するために用いるプライマーにおける配列を、下記および本明細書中の配列表に表す。
Met配列決定プライマー:
F1 AGATACGACGCCCGGGTGC(配列番号3)
F2 AGAAAATCCACTGCGCCG(配列番号4)
F3 CGTGCACAACAAGACAGG(配列番号5)
非コード鎖プライマー:
R1 TCTGGTCATCAGCTCCCA(配列番号6)
R2 AGCAGGCTCAGCACGTTGG(配列番号7)
R3 AACTGGTCCTCGGGGAAGG(配列番号8)
【0202】
1195突然変異体構築物において、F2およびR3プライマーを用いた。1092突然変異体において、構築物F1およびR2プライマーを用いた。1094突然変異体構築物において、F1およびR2プライマーを用いた。
【0203】
細胞形質転換アッセイ
細胞を完全培地(+IL-3、Ba/F3依存性増殖因子)、IL-3を含まない培地(-IL-3)、およびIL-3を含まないがMETに対するリガンドHGFを含む培地(-IL-3/+HGF)で処理した。CellTiter-Glo(登録商標)Cell Viability Assay(Promega)を用いて生存度を測定し、Cellometer(Nexcelom)を用いて21日の生細胞数を取得した。親Ba/F3細胞株を陰性対照としてアッセイした。すべてのMET安定株を、6ウェルフォーマットで二通りにアッセイした。つまり、細胞を1.0×106細胞/mlで蒔き、3つの条件:+IL-3(10ng/mL)、-IL-3、-IL-3/+HGF(100ng/mL)のいずれか1つの指定条件下で培養した。0日目および3日目にCellTiter-Glo(登録商標)試薬を血清添加培地中で培養した細胞に直接的に添加し、CellTiter-Glo(登録商標)試薬対細胞の体積比を1:1にし、室温で20分間振盪し、100μlを白色不透明の底板に移し、照度計(Tcan)を用いて記録する。二通りの読み取り値を各実験において平均化する(n=3)。
【0204】
腫瘍の中央組織診断
アーカイブ腫瘍検体の1つの5μM厚切片を、H&E染色および中央病理診断レビュー(Labcorp)に用いた。病理学者2名が染色切片を読み取り、PRCC診断を確認し、組織学的サブタイプ(1型または2型)を割り当てた。1名の病理学者が彼らの分析に確信をもてない場合、PRCC病理の専門知識を有する外部からの第3の病理学者が症例を読み取る(Brigham and Woman’s Hospital)。
【0205】
腫瘍配列決定
方法および材料は、その他でも記載されている(Frampton et al,Nature Biotechnology 2013)。つまり、400の遺伝子パネル(バージョンT7)の目標とするNGSが、Foundation Medicine Inc.CLIA研究室におけるDNAの調製およびライブラリーの構築の後に実施された。FMIパイプラインに由来する変異体を要求するため、専用分析を用いる。生の配列決定BAMファイルがAZバイオインフォマティクスパイプラインにより再分析され、FMIにより報告された知見を確認する。
【0206】
サボリチニブ臨床試験
MET L1195F突然変異体におけるPRCC患者の腫瘍応答は、未治療であるかまたは過去に治療された、乳頭状腎細胞がん(PRCC)を有する患者におけるサボリチニブ(AZD6094/HMPL-504)の有効性を評価するための非盲検単群多施設大規模第II相試験の間に測定した(ClinicalTrials.gov identifier:NCT02127710;ウェブアドレス:https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02127710)。熟練した臨床チームが結果を再現することを可能にするであろう主な試験および投与の詳細は、次の通りである。
【0207】
主要評価項目測定基準:PRCCを有する患者および治験責任医師による評価としてのMET陽性患者のサブグループにおけるAZD6094の抗腫瘍を評価する(奏効率の評価)。奏効率は、少なくとも4週後に確認される少なくとも1回の訪問での完全または部分寛解の応答を有する被験者の数(%)と定義される。
【0208】
二次評価項目測定基準:PFS、標的病変腫瘍サイズにおけるベースラインからの変化、PRCCを有する患者およびMET陽性患者のサブグループにおけるDoRおよびOS。進行のない生存は、無作為化から、被験者が進行前に無作為化治療から脱落するかまたは別の抗がん治療を受けるかに関わらない、客観的疾患進行または死亡(進行の不在下での任意の原因による)の日までの期間と定義される。
【0209】
AZD6094の安全性および耐容性を評価する。安全性特性は、全患者について収集されることになるAEおよび検査値、バイタルサインおよびECGの観点で評価されることになる。
【0210】
AZD6094ならびに主要な生成物M2およびM3のAUC、AUC(0~24)、AUC(0~t)、AUCss、Cmax、Css最大、およびCss最小(時間枠:サイクル1,8および15日目、サイクル2,1日目、サイクル3,1日目、およびサイクル4,1日目)についてのPK。経口投与時、複数回投与後の定常状態に至る、投与後のAZD6094ならびに主要な代謝産物M2およびM3のPKを特徴づける。
【0211】
標的病変腫瘍サイズにおけるベースラインからの変化を評価する。標的病変における変化は、12週目の腫瘍サイズにおけるベースラインからの百分率変化である。これは、ベースライン時および12週目に考慮されるRECIST標的病変尺度に基づく。標的病変は、測定可能な腫瘍病変である。
【0212】
RECIST v1.1に従い、応答の持続期間を評価する。応答の持続期間は、最初に記録された応答の日から記録された進行または任意の原因による死亡の日までの期間と定義される。被験者が応答後に進行しない場合の症例では、応答の持続期間は、PFS打ち切り期間と同じになる。
【0213】
RECIST v1.1に従い、全生存の持続期間を評価する。全生存(OS)-全生存は、無作為化の日から任意の原因による死亡までの期間と定義される。
【0214】
実験:600mgのAZD6094を毎日継続する。試験にエントリする全患者は、600mgのAZD6094を毎日経口摂取する。治療薬は継続的に投与される。薬剤:AZD6094・AZD6094は、強力かつ選択的な小分子c-Metキナーゼ阻害剤である。別名:HMPL-504。
【0215】
詳細な説明:これは、未治療であるかまたは先行治療を受けているPRCCを有する患者におけるAZD6094の有効性および安全性を評価するように設計された非盲検単群多施設第規模第II相試験である。
【0216】
登録全患者のPRCCの診断を確認するため、腫瘍試料の独立した中央病理診断レビューが用いられる。しかし、PRCCを確認する局所的に利用可能な病理学的結果により、タイムリーな試験登録が可能になる。
【0217】
試験に登録する全患者は、600mgのAZD6094を毎日経口摂取する。治療薬は継続的に投与される。
【0218】
適格性:試験に適格な年齢:18歳~99歳(成人、シニア);試験に適格な性別:両性;健常ボランティアの受け入れ:なし。
【0219】
組み入れ基準:任意の試験に特異的な手順、サンプリングおよび分析に先立つインフォームドコンセントの提供。
【0220】
限局進行性または転移性の乳頭状腎細胞がんを組織学的に確認。
【0221】
中央検査室および他のバイオマーカーによるPRCCの確認のためのアーカイブ腫瘍試料または新しい前処理腫瘍試料の利用可能性。
【0222】
PRCCについて未治療であるかまたは先行治療が奏功していない。先行治療は、標的化治療(すなわち、スニチニブ、ソラフェニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、テムシロリムス、およびエベロリムス)、伝統的免疫療法(すなわち、インターフェロン-a、インターロイキン-2)、化学療法または化学免疫療法の組み合わせを含んでもよい。
【0223】
0または1のECOG活動状態。
【0224】
少なくとも1つの病変が、過去に放射線治療されておらず、ベースライン時に正確に測定可能であり、正確な反復測定に適するようなスクリーニング期間中に実施される場合、生検用に選択されない。
【0225】
適切な血液学的機能は次のように定義される。
(ANC)≧1500/μL
(Hgb)≧9g/dL
血小板≧100,000/μL
【0226】
適切な肝機能は次のように定義される。
ALTおよびAST≦2.5×ULN
総ビリルビン≦1.5×ULN
【0227】
適切な腎機能は、GFR≧40mL/分と定義される。
【0228】
適切な凝固パラメータは、国際標準比(INR)<1.5×ULNまたはaPTT<1.5×ULNと定義される。
【0229】
既知の腫瘍血栓または深部静脈血栓症を有する患者は、≧4週にわたり低分子量ヘパリンが安定である場合、適格である。
【0230】
適切な避妊法を用いる必要がある女性は、母乳栄養すべきでない、妊娠可能性がある場合、投与開始前に妊娠検査陰性を有する必要がある、または妊娠可能性がない証拠を有する必要がある。
【0231】
男性患者は、バリアー避妊法、すなわちコンドームを自発的に用いる必要がある。
【0232】
経口薬を嚥下および保持する能力。
【0233】
予測される平均余命≧12週。
【0234】
少なくとも18歳の年齢。
【0235】
試験およびフォローアップ手順に従うような自発性および能力。
【0236】
この試験の性質を理解し、書面でのインフォームドコンセントを行う能力。
【0237】
除外基準:大部分の最近の化学療法薬、免疫療法薬、化学免疫療法薬、または治験薬は、試験治療薬の初回投与の21日以内。大部分の最近の標的化治療薬は、試験治療薬の初回投与の14日以内。
【0238】
脱毛症を別として、試験治療の開始時、任意の先行治療からのCTCAEグレード2以上の毒性から回復していない。
【0239】
c-Met阻害剤での先行または現行治療。
【0240】
CYP3A4の強力な誘導因子または阻害剤、CYP1A2の強力な阻害剤、または試験治療薬の初回投与前2週(セイヨウオトギリ(St.John’s Wort)に対しては3週)以内の狭い治療域を有するCYP3A4基質。
【0241】
広視野放射線療法(ストロンチウム-89などの治療用放射性同位元素を含む)が試験薬の開始前の28日以内、または寛解用の限定領域放射線が7日以内に施され、かかる治療の副作用から回復していない。
【0242】
大外科手術が試験薬開始の28日以内または小外科手術が7日以内。port-a-cath留置後の待ち時間は必要なし。
【0243】
先行的に未治療の脳転移。
【0244】
疾患に起因する現在の軟膜・髄膜転移または脊髄圧迫。
【0245】
急性または慢性の肝または膵疾患。
【0246】
制御されない糖尿病。
【0247】
経口治療薬の吸収、分布、代謝、または排泄と有意に干渉することになる胃腸疾患または他の状態。
【0248】
現在または直近6か月以内に以下の心疾患のいずれかを有する。
不安定狭心症。
うっ血性心不全(NYHA≧グレード2)。
急性心筋梗塞。
脳卒中または一過性脳虚血発作。
【0249】
不適切に制御された高血圧症(すなわち、SBP>160mmHgまたはDBP>100mmHg)(これらのレベルを超える値を有する患者は、治療開始前に薬物療法を用いて彼らの血圧が調節される必要がある)。
【0250】
平均安静時補正QT間隔(QTc)>470ミリ秒が3通りのECGから得られる。
【0251】
安静時ECGのリズム、伝導または形態における任意の臨床的に重要な異常、例えば、完全な左脚ブロック、第3度心ブロック、第2度心ブロック、PR間隔>250ミリ秒。
【0252】
QTc延長のリスクまたは不整脈事象のリスクを高める任意の要素、例えば、心不全、低カリウム血症、先天性もしくは家族性QT延長症候群または未解明の40歳以下の突然死の家族歴またはQT間隔を延長することで知られる任意の併用薬。
【0253】
治療量のワルファリンナトリウムを用いた治療を現在受けている。低分子量ヘパリンが許容される。
【0254】
治療時に重篤な活動性感染、または患者がプロトコル治療を受ける能力を損なわせるだろう別の重篤な基礎医学的状態。
【0255】
ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)(HIV)、B型肝炎、またはC型肝炎の既知の診断。
【0256】
他の活動性がんの存在、または5年以内の浸潤がんに対する治療歴。以前に少なくとも3年の根治的局所療法を受けており、再発する可能性が低いと考えられるステージIのがんを有する患者が適格である。以前に治療された上皮内がん(すなわち非浸潤性)を有するすべての患者が、非メラノーマ皮膚がんの病歴を有する患者であるとして適格である。
【0257】
プロトコルへのコンプライアンスを許容しない心理学的、家族性、社会学的、または地理的条件。
【配列表】