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特許7065868新規エステル化合物、それらの製造方法ならびにそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】新規エステル化合物、それらの製造方法ならびにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C11C 3/00 20060101AFI20220502BHJP
   C11C 3/04 20060101ALI20220502BHJP
   C10M 105/36 20060101ALI20220502BHJP
   C10M 105/38 20060101ALI20220502BHJP
   C07C 67/38 20060101ALI20220502BHJP
   C07C 67/303 20060101ALI20220502BHJP
   C07C 67/313 20060101ALI20220502BHJP
   C07C 69/675 20060101ALI20220502BHJP
   C12P 7/62 20220101ALI20220502BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220502BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20220502BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20220502BHJP
   C10N 40/32 20060101ALN20220502BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220502BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220502BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20220502BHJP
【FI】
C11C3/00
C11C3/04
C10M105/36
C10M105/38
C07C67/38
C07C67/303
C07C67/313
C07C69/675
C12P7/62
C07B61/00 300
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:32
C10N30:06
C10N30:00 Z
C10N30:08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019550862
(86)(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018000197
(87)【国際公開番号】W WO2018188803
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】102017003647.0
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018002891.8
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509350664
【氏名又は名称】クリューバー リュブリケーション ミュンヘン ソシエタス ヨーロピア ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Klueber Lubrication Muenchen SE & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Geisenhausenerstrasse 7, D-81379 Muenchen, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】510020239
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート ビーレフェルト
【氏名又は名称原語表記】Universitaet Bielefeld
【住所又は居所原語表記】Universitaetsstrasse 25, D-33615 Bielefeld, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ベトケ
(72)【発明者】
【氏名】カーメン プラス
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト グレーガー
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ローデラー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ゼーマイアー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス キルタウ
(72)【発明者】
【氏名】リン マ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-523797(JP,A)
【文献】特表2015-501507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0193802(US,A1)
【文献】特開昭59-065043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07B 31/00 - 63/04
C07C 1/00 -409/44
C11B 1/00 - 15/00
C11C 1/00 - 5/02
C12P 1/00 - 41/00
C12N 11/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造(Ib)
【化1】
で示される少なくとも2種のエステル化合物の混合物であって、式中、
n’およびn’’は、1および2、または2および1のいずれかであり、n’’’は、0~10であり、
m’は、0~5であり、
基Rは、分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルキル基、分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルケニル基、C~C60-アリールアルキル基および/またはC~C60-ヘテロアリールアルキル基および/または環状で飽和および/もしくは不飽和のC~C60-アルキル基からなる群から選択され、これらの基は、非置換であるか、または少なくとも1個のOHでモノ置換もしくはポリ置換されており、ただし基R はCH OHを含まず、
基Rは、分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルキル基ならびに分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルケニル基からなる群から選択されることを特徴とする、少なくとも2種のエステル化合物の混合物。
【請求項2】
一般構造(Ic)
【化2】
で示される少なくとも2種のエステル化合物の混合物であって、式中、
n’およびn’’は、1および2、または2および1のいずれかであり、n’’’は、0~10であり、
m’は、0~5であり、
基Rは、水素、分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルキル基、分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルケニル基、C~C60-アリールアルキル基、C~C60-ヘテロアリールアルキル基および/またはC~C60-アリール基からなる群から選択され、
基Rは、分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルキル基、ならびに分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルケニル基からなる群から選択されることを特徴とする、少なくとも2種のエステル化合物の混合物。
【請求項3】
これらの化合物のうちそれぞれ2種が、相互に位置異性体であることを特徴とする、請求項1または2に記載のエステル化合物の混合物。
【請求項4】
一般式(I)
【化3】
[式中、
基Aは、CH、CHCH、シス-CH=CHおよび/またはトランス-CH=CHからなる群から選択され、
nは、0または1~20であり、
mは、0または1~20であり、
基Rは、水素、分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルキル基、分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルケニル基、C~C60-アリールアルキル基、C~C60-ヘテロアリールアルキル基、C~C60-アリール基、および/または環状で飽和もしくは不飽和のC~C60-アルキル基からなる群から選択され、これらの基は、非置換であるか、またはOH、R、R、O-アセチルの群から選択される少なくとも1個の置換基でモノ置換もしくはポリ置換されており、
基Rは、H、分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルキル基、C~C60-ヘテロアルキル基、C~C60-アリールアルキル基、C~C60-ヘテロアリールアルキル基、C~C60-アリール基、および/または環状で飽和もしくは不飽和のC~C60-アルキル基からなる群から選択され、これらの基は、非置換であるか、またはOH、O-C(O)-R、CHOH、COH、CO、Rの群から選択される少なくとも1個の置換基でモノ置換もしくはポリ置換されており、ならびにさらにm=1~20の場合に分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルケニル基もしくはメチルからも選択され、これは、非置換であるか、またはOH、O-C(O)-R、CHOH、COH、CO、Rの群から選択される少なくとも1個の置換基でモノ置換もしくはポリ置換されており、
基Rは、分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルキル基、分岐状もしくは非分岐状のC~C60-アルケニル基、C~C60-アリールアルキル基および/またはC~C60-ヘテロアリールアルキル基からなる群から選択され、これらの基は、非置換であるか、またはOH、CHOH、CH-Rの群から選択される少なくとも1個の置換基でモノ置換もしくはポリ置換されており、
基Rは、以下の構造(II)
【化4】
[式中、この中に含まれる基R、RおよびA、ならびに数mおよびnは、上記で定義されているとおりのもの表す]を有し、
基Rは、以下の構造(III)
【化5】
[式中、この中に含まれる基R、RおよびA、ならびに数mおよびnは、上記で定義されているとおりのもの表す]の少なくとも2種のエステル化合物の混合物を製造する方法であって、
(A)一般式(IV)
【化6】
[式中、R、Rおよびnは、上記で定義されているとおりのもの表す]を有する不飽和脂肪酸またはそれに由来するエステルから出発して、
エン反応および続いてその際に生じるC=C二重結合の任意の水素化を実施して、一般式(VI)
【化7】
[式中、R、R、Aおよびnは、上記で定義されているとおりのもの表す]を有する化合物を形成し、かつ
(B)得られた一般式(VI)の化合物を、続いて、式(VII)
【化8】
[式中、R、R、R、Aおよびnならびにmは、上記で定義されているとおりのもの表す]を有するアシル供与体を使用してエステル形成反応に供し、それにより、一般式(I)
【化9】
[式中、R、R、R、Aおよびnならびにmは、上記で定義されているとおりのもの表す]の化合物を得る、前記方法。
【請求項5】
さらなる反応工程(D)として、R基をエステル化反応またはエステル交換反応に供することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
さらなる反応工程(E)として、基R中の遊離ヒドロキシ基の場合に、そのさらなるエステル化を実施することを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
出発化合物として、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、ネルボン酸、ガドレイン酸および/またはその他のω-n-脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種の不飽和脂肪酸が使用されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
関与しているエステル化反応のうち少なくとも1つに、加水分解酵素の酵素クラスから選択される生体触媒が使用されることを特徴とする、請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
関与しているエステル化反応のうち少なくとも1つが、無溶媒の反応条件下で行われることを特徴とする、請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
潤滑剤組成物における、請求項1から3までのいずれか1項に記載のエステル化合物の混合物の使用。
【請求項11】
海洋分野における、食品加工工業における機械装置の潤滑のため、車両技術、搬送技術、機械工学、オフィス技術における転がり軸受および滑り軸受、輸送チェーンおよび制御チェーンの潤滑のため、かさ歯車および平歯車、連続鋳造設備中のロール支持軸受および連続炉中の輸送用ロール軸受の潤滑のため、および殊にセメント工業、石灰工業、セッコウ工業、鉱業および化学工業におけるようなロータリーキルン、チューブミル、トロンメルおよびミキサーの開放歯車潤滑のための、潤滑剤組成物における請求項10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)
【化1】
の新規エステル化合物、それらの製造方法ならびにそれらの使用に関する。これらのエステル化合物は、一般式(I)の少なくとも2種の化合物の混合物を含有していてよい。
【0002】
エステル化合物は、近年、潤滑剤配合物においてますます頻繁に使用されている。該エステル化合物中のエステル単位は、天然油ならびに合成エステル油中で加水分解を受けやすいので、潤滑剤における使用のための高い要求を満たすエステル化合物への大きな需要がある。公知のエステル化合物の場合、水の存在下での該潤滑剤の使用の際に、該エステルは、脂肪酸およびアルコールへ分解される。この反応は、例えば、酸、塩基によるか、または銅により触媒されうる。これは、その分子を破壊する結果となり、それにより、該潤滑剤は潤滑作用を失う。
【0003】
さらに、例えば天然エステルをベースとする、従来の潤滑剤は、高温用途に適していない。それというのも、これらは高温で、酸化過程および/または熱分解過程により、ならびに重合により破壊されることがあり、それにより、それらの潤滑特性および潤滑作用は、大きく制限されるからである。分解反応の際に、該潤滑剤は低分子量の揮発性成分へ分解される。これらの揮発性成分の蒸発は、望ましくない粘度変化、油損失および過剰の蒸気形成をまねく。このことから、該潤滑作用の損失が同様に生じる。重合によっても、該潤滑剤は、不溶性の重合生成物の形成に基づき、それらの潤滑作用を失う。これらの汚れは除去しなければならず、それにより保守作業が増える。さらにまた、化学系廃棄物が発生し、これらは煩雑な方法で廃棄しなければならない。増えた清浄および保守作業に基づき、潤滑すべき装置の停止時間が増える。全体として、高温用途に適していない潤滑剤の使用はより高いコストをまねく。それというのも、その機械装置を汚し、かつ潤滑剤をより多く必要とするからである。さらにまた、その製品品質は低下する。
【0004】
その多様な要求を満たすために、潤滑剤はとりわけ、高い安定性、低い摩擦係数および高い耐摩耗性を有していなければならない。高温は、しばしば、チェーン、転がり軸受および滑り軸受における、車両技術、搬送技術、機械工学、オフィス技術における、ならびに工業用設備および機械における、あるいは家庭用電化製品および家庭用電子機器の分野にもおける使用の際に生じる。高い加工温度は、例えば、しばしば食品加工の際に、例えば煮る、焼く、茹でる、焙煎する、煮込む、殺菌する、揚げるおよび蒸す際に生じる。これらの過程の際に、多様な機械装置が使用される。これらの機械装置の潤滑のためには、高温耐性の潤滑剤が必要である。
【0005】
食品加工用の機械装置を潤滑するための基油には、それらの環境適合性および毒性に関して特別な要求が課される。原則的に、食品適合性の潤滑剤H1は、該潤滑剤が食物、嗜好品および食品と、間接的に、または直接接触しうる場合に適しているであろう。食品工業における好ましい適用分野には、オーブンおよびその他の高温用途におけるチェーン、ならびに懸垂輸送具、殊にトロリーおよびそれらの軸受が含まれる。
【0006】
これらの潤滑剤は、法的な規則、例えば、NSF/H1またはNSF/H2による認証を受ける。
【0007】
海洋分野における、たいてい喫水線よりも下である、潤滑剤の用途の場合に、海環境もしくは水環境を潤滑剤の流出により汚染するリスクがある。これらの用途の場合に水側を可能な限り最善にコーキングすることが試みられるにもかかわらず、潤滑剤損失は日常的である。2011年の“United States Environmental Protection Agency”(米国環境保護庁)の資料によれば、様々な船舶が、1日および1隻あたり潤滑剤1リットル未満から最大20リットルを失う。該潤滑剤の良好な生分解性は、この場合に、該潤滑剤の高い環境適合性の必要条件である。一般に、そのような用途は、法的要求または規格、例えばVGP、エコラベルまたはOSPARを通じて規制される。
【0008】
しかしながら、これまで公知の潤滑剤は、これら全ての要求を満たすことができない。
【0009】
いわゆるエストリド化合物を潤滑剤において使用することは、すでに提案されていた。通例、植物油をベースとするこれらのエステル化合物は、S. C. Cermak et al., Industrial Crops and Products 2013, 46, 386-392に従って合成される。この文献ならびに欧州特許第1051465号明細書(EP 1 051 465 B1)によれば、その際に、図解1に示された一般構造Lit-1の化合物が得られ、ここで、xおよびyは1以上であり、x+yは10であり、nは1以上であり、RはCHRであり、RおよびRは互いに独立して、水素および飽和または不飽和の、分岐状または非分岐状の、置換または非置換のC-~C36-炭化水素から選択され、Rは、オレイン酸、ステアリン酸またはその他の脂肪酸から生じる構造フラグメントであり、かつ第2のエステル分岐の好ましい位置は、9位または10位である(x=5もしくは6およびy=5もしくは4に相当)。
【化2】
【0010】
タイプLit-1のこれらのいわゆるエストリド化合物の製造は、上述の文献によれば、脂肪酸の、隣の脂肪酸のC=C二重結合への付加により行われるので、対応するダイマー(n=0)ならびにさらにまたトリマー、テトラマー、ペンタマーおよびヘキサマー(n=1、2、3、4)も得られる。しかしながら、示された構造は、繰返し単位の科学的説明の観点からは正しくないかもしれない。それというのも、該繰返し単位の結合はそれから読み取れないからである。この方法にとって不利であるのは、低い選択率(それに応じて、定義された生成物化合物の代わりに、ダイマーとオリゴマー混合物との混合物をまねく)、苛酷な反応条件、低い収率ならびにダイマー/オリゴマー混合物の煩雑な分離である。次いで、最後の2つの工程は、残っているC=C二重結合の水素化ならびに残っているカルボン酸基のエステル化であり、ここで、アルコール成分として、好ましくは2-エチルヘキサン-1-オールが使用される。
【0011】
したがって、本発明には、潤滑剤における使用のための上述の要求を満たし、かつ出発材料として単純かつ容易に入手可能な、好ましくは再生可能な原料から、持続可能で環境に優しい経路で製造することができる、新種のエステル化合物を提供するという課題が根底にあった。さらにまた、その合成方法は、高い選択率を有するべきであり、高い収率が達成されるべきであり、かつ単純な後処理が可能であるべきである。
【0012】
この課題は、新種のエステル化合物およびそれらの製造に適した合成方法を提供することによって解決された。
【0013】
本発明によるエステル化合物は、以下に示される一般式(I)を有し、かつ一般式(I)の少なくとも2種の化合物の混合物であり、
【化3】
式中、
基Aは、CH、CHCH、シス-CH=CHおよび/またはトランス-CH=CHからなる群から選択され、
nは、0または1~20であり、
mは、0または1~20であり、
基Rは、水素、分岐状または非分岐状のC~C60-アルキル基、分岐状または非分岐状のC~C60-アルケニル基、C~C60-アリールアルキル基、C~C60-ヘテロアリールアルキル基、C~C60-アリール基、および/または環状で飽和または不飽和のC~C60-アルキル基からなる群から選択され、ここで、これらの基は、非置換であるか、またはOH、R、R、O-アセチルの群から選択される少なくとも1個の置換基でモノ置換またはポリ置換されており、
基Rは、H、分岐状または非分岐状のC~C60-アルキル基、C~C60-ヘテロアルキル基、C~C60-アリールアルキル基、C~C60-ヘテロアリールアルキル基、C~C60-アリール基、および/または環状で飽和または不飽和のC~C60-アルキル基からなる群から選択され、ここで、これらの基は、非置換であるか、またはOH、O-C(O)-R、CHOH、COH、CO、Rの群から選択される少なくとも1個の置換基でモノ置換またはポリ置換されており、ならびに付加的にm=1~20の場合には分岐状または非分岐状のC~C60-アルケニル基またはメチルからも選択され、ここで、この基は、非置換であるか、またはOH、O-C(O)-R、CHOH、COH、CO、Rの群から選択される少なくとも1個の置換基でモノ置換またはポリ置換されており、
基Rは、分岐状または非分岐状のC~C60-アルキル基、分岐状または非分岐状のC~C60-アルケニル基、C~C60-アリールアルキル基および/またはC~C60-ヘテロアリールアルキル基からなる群から選択され、ここで、これらの基は、非置換であるか、またはOH、CHOH、CH-Rの群から選択される少なくとも1個の置換基でモノ置換またはポリ置換されており、
基Rは、以下の構造(II)
【化4】
[式中、この中に含まれる基R、RおよびAならびに数mおよびnは、上記のとおり定義されている]を有し、
基Rは、以下の構造(III)
【化5】
[式中、この中に含まれる基R、RおよびAならびに数mおよびnは、上記のとおり定義されている]を有する。
【0014】
さらにまた、一般構造(I)を有する少なくとも2種の化合物を含有する混合物も提供され、ここで、それぞれ、これらの化合物のうち2種は、相互に位置異性体である。これらの対の位置異性体は、例えば、9、10位の二重結合のヒドロホルミル化の場合に9位および10位へのヒドロキシメチル官能基の同時の導入により生じる。しかし、続いて、そのような“位置異性体の対”から出発すると、“m”が異なる混合物も製造されうる。他方では、これらの化合物は、比べると、もはや全てが相互に位置異性体ではない。
【0015】
図解1に示されている構造Lit-1を有する公知のいわゆるエストリド化合物とは対照的に、本発明による一般構造(I)を有する化合物は、その脂肪酸鎖の炭素と、隣接したエステル基のC-O単結合の酸素との間に付加的な“メチレン結合”(メチレン単位、-(CH)-)を有する。この“メチレン結合”は、それぞれの分子の配座の変更に関して付加的な選択肢を広げ、したがって、より高い立体的な柔軟性に寄与することができ、相応して有利な生成物特性と結び付く。これは、例えばいわゆるエストリド化合物のような、より堅いその他の潤滑剤に比較して、新種の生成物特性への可能性も与える。明細書によれば、複数の不飽和脂肪酸の結合により、不飽和脂肪酸のカルボン酸単位の、さらなる不飽和脂肪酸のアルケン単位との制御されない付加の結果として、製造され、相応して異なる鎖長の化合物の混合物をまねくエストリド化合物とは異なり、本発明による方法を用いて、特定の鎖長の化合物の意図的な製造が可能であり、ここで、これらは位置異性体として存在する。異なる鎖長の化合物のこの選択的合成および単離された形でのそれらの存在は、後での意図的な「ブレンディング」、すなわち、所望の潤滑剤特性を達成するために異なる鎖長の化合物の目的とする個々の用途のためのテーラーメイドな混合を可能にする。したがって、本発明による化合物の個々の代表例は、モジュールの「ビルディングブロックシステム」を形成し、該システムは、そうすれば特別な潤滑剤用途に意図的に使用することができる。
【0016】
本発明による一般式(I)の化合物の特に好ましい代表例として、不飽和脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、ネルボン酸、ガドレイン酸およびその他のω-n-脂肪酸から出発して製造することができる化合物が当てはまる。
【0017】
本発明による一般構造(I)を有する化合物のこれらの特に好ましい代表例の例示的な化合物タイプとして、その際に、以下に図解2に示され、かつオレイン酸に由来する一般構造(Ia)の化合物が挙げられ、ここで、m’は、1~5であり、n’およびn’’は、1および2、または2および1のいずれかであり、かつRおよびRは、上記の意味を有する。
【化6】
【0018】
本発明による一般構造(I)を有する化合物の特に好ましい代表例のさらなる化合物タイプは、以下に図解3に示され、かつオレイン酸に由来する、“ジオール結合”を有する一般構造(Ib)の化合物であり、ここで、m’は、0~5であり、n’およびn’’は、1および2、または2および1のいずれかであり、n’’’は、0~10であり、RおよびRは、上記の意味を有し、かつ基Rは、分岐状または非分岐状のC~C60-アルキル基ならびに分岐状または非分岐状のC~C60-アルケニル基からなる群から選択される。m’=1~5の場合に、基Rは付加的に、分岐状または非分岐状のC~C60-アルケニル基またはメチル基からなる群から選択され、ここで、この基は、非置換であるか、またはOH、O-C(O)-R、CHOH、COH、CO、Rの群から選択される少なくとも1個の置換基でモノ置換またはポリ置換されている。
【化7】
【0019】
本発明による一般構造(I)を有する化合物の特に好ましい代表例の選択的な、さらなる例示的な化合物タイプは、その際に、以下に図解4に示され、かつオレイン酸に由来する、“ジカルボン酸結合”を有する一般構造(Ic)の化合物であり、ここで、m’は、0~5であり、n’およびn’’は、1および2、または2および1のいずれかであり、n’’’は、0~10であり、RおよびRは、上記の意味を有し、かつ基Rは、分岐状または非分岐状のC~C60-アルキル基ならびに分岐状または非分岐状のC~C60-アルケニル基からなる群から選択される。m’=1~5の場合に、基Rは付加的に、分岐状または非分岐状のC~C60-アルケニル基またはメチル基からなる群から選択され、ここで、この基は、非置換であるか、またはOH、O-C(O)-R、CHOH、COH、CO、Rの群から選択される少なくとも1個の置換基でモノ置換またはポリ置換でされている。
【化8】
【0020】
本発明によるタイプ(I)の新種の化合物の製造は、多様な経路で行うことができ、ここで、以下に2つの好ましい実施態様が記載される。この合成は、その際に、その他の潤滑剤化合物をまねく製造方法とは、例えば、典型的には本発明による化合物を得ることができない経路で、いわゆるエストリド化合物を製造する方法に比較して、かなり相違する。
【0021】
本発明によるタイプ(I)の化合物を合成する、双方の好ましい実施態様は、出発化合物として不飽和脂肪酸から出発する。殊に、この場合に、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸およびネルボン酸、ガドレイン酸およびその他のω-n-脂肪酸が使用される。出発化合物としての再生可能原料の使用は、この際に、経済性ならびに持続可能性の観点から有利である。
【0022】
上述の2つの好ましい合成戦略の双方のためには、その際に、それぞれ異なる実施態様がある。殊に、その際に関与している反応工程の順序は、任意の形で変更することができる。
【0023】
上述の2つの好ましい合成戦略の双方が、以下に詳細に記載される。
【0024】
第1の好ましい実施態様において、本発明による方法は、不飽和脂肪酸から出発し、これが最初にエステル化されるか、または直接、対応するエステルが使用される。このエステル化された生成物は、次いで、分子状水素(H)ならびに一酸化炭素(CO)の存在下で、ヒドロホルミル化反応に供され、続いて、好ましくはその場で行われる水素化後に、対応するメチロール置換誘導体が得られる。不飽和脂肪酸のヒドロホルミル化もしくは続いての対応するメチロール置換誘導体へのそれらの水素化のこれらの工程は、しばしば文献に、例えば、R. Lai, M. Naudet, E. Ucciani, Rev. Fr. Corps Gras 1966, 13, 737-745, R. Lai, M. Naudet, E. Ucciani, Rev. Fr. Corps Gras 1968, 15, 5-21, R. Lai, E. Ucciani, M. Naudet, Bull. Soc. Chim. Fr. 1969, 793-797, E. N. Frankel, J. Am. Oil Chem. Soc. 1971, 48, 248-253, E. N. Frankel, F. L. Thomas, J. Am. Oil Chem. Soc. 1972, 49, 10-14, J. P. Friedrich, G. R. List, V. E. Sohns, J. Am. Oil Chem. Soc. 1973, 50, 455-458, E. H. Pryde, J. Am. Oil Chem. Soc. 1984, 61, 419-425, E. H. Pryde, J. Am. Oil Chem. Soc. 1984, 61, 419-425およびE. Benetskiy, S. Luehr, M. Vilches-Herrera, D. Selent, H. Jiao, L. Domke, K. Dyballa, R. Franke, A. Boerner, ACS Catal. 2014, 4, 2130-2136に記載されている。
【0025】
このテーマについての総説論文として、当業者には、さらに例えば、E. H. Pryde, E. N. Frankel, J. C. Cowan, J. Am. Oil Chem. Soc. 1972, 49, 451-456, E. N. Frankel, Ann. N.Y. Acad. Sci. 1973, 214, 79-93, J. W. E. Coenen, Fette, Seifen, Anstrichmittel 1975, 77, 461-467, E. N. Frankel, E. H. Pryde, J. Am. Oil Chem. Soc. 1977, 54, 873A-881A, E. H. Pryde, J. Am. Oil Chem. Soc. 1979, 56, 719A-725Aの寄稿が利用できる。
【0026】
得られたメチロール置換誘導体のヒドロキシ基は、続いて再びエステル化されるが、ここのエステル化は、例えば直接、ヒドロキシ置換されていない脂肪酸と、または他の、少なくとも1個のヒドロキシ基を有する長鎖アルカンカルボン酸と(またはそれらのエステルとエステル交換反応の意味で)行うことができる。この、少なくとも1個のヒドロキシ基を有する長鎖アルカンカルボン酸は、その際に好ましくは、少なくとも1個のヒドロキシメチル基を持ち、かつ例えば上記で描写された経路で製造することができる長鎖脂肪酸である。このダイマーもしくはオリゴマーを製造するための該ヒドロキシ基のエステル化には、それぞれの酸を直接、または活性化された酸誘導体、例えば酸塩化物および無水物、または酸エステル(エステル交換反応用)を使用することができる。ジカルボン酸、トリカルボン酸およびより多価のカルボン酸もしくはそれらの誘導体を使用することもできる。
【0027】
詳細には、本発明による一般式(I)のエステル化合物を製造する本発明による方法の第1の好ましい実施態様は、次の工程を含む:
(A)一般式(IV)
【化9】
[式中、R、Rおよびnは、上記のとおり定義されている]を有する不飽和脂肪酸もしくはそれに由来するエステルから出発して、
ヒドロホルミル化を、一般式(V)
【化10】
[式中、R、R、Aおよびnは、上記のとおり定義されている]を有する化合物の形成下に実施し、かつ
(B)得られた一般式(V)を有する化合物を続いて、水素化により、一般式(VI)
【化11】
[式中、R、R、Aおよびnは、上記のとおり定義されている]を有する化合物へ変換し、かつ
(C)続いて、エステル形成反応を、式(VII)
【化12】
[式中、R、R、R、Aおよびnならびにmは、上記のとおり定義されている]を有するアシル供与体を使用して実施し、それにより、一般式(I)
【化13】
[式中、R、R、R、Aおよびnならびにmは、上記のとおり定義されている]の本発明による化合物が得られる。任意に、続いてさらに、エステル化反応もしくはエステル交換反応によるR基の交換を行うことができる。同様に任意に、基R中の遊離ヒドロキシ基の場合にさらに、そのさらなるエステル化を行うことができる。
【0028】
この第1の好ましい実施態様は、以下に、出発化合物としての不飽和脂肪酸の例示的な代表例としてオレイン酸から出発する、対応する本発明による化合物の製造の例に即してさらに提示されているか、もしくは説明されている。この合成経路は、さらに、以下の図解5に図にまとめて示されている。
【0029】
再生可能原料から簡単に入手可能な出発化合物としてのオレイン酸1から出発して、最初にエステル化反応が行われるが、例示的な例において、2-エチルヘキサン-1-オールは、容易に入手可能で大量に得ることができるバルク化学品として使用される(図解5)。該エステル化のためには、当業者には、一般に、幅広い範囲の方法が利用でき、ここで、魅力的な合成の選択肢は、酸または生体触媒、好ましくはリパーゼを使用する、触媒による方法である。
【0030】
【化14】
【0031】
該エステル化反応の際に得られたエステル2は、続いて、ヒドロホルミル化反応にかけられ、それにより、9位でCH(=O)-基で置換された化合物3が(10位でCH(=O)-基で置換された位置異性体との混合物で)生じる。続いて3中のカルボニル基の水素化により、次いで、9位でメチロール置換されたオレイン酸エステル4が(10位でメチロール置換された位置異性体との混合物で)得られ、これは続いて該ヒドロキシ基のアシル化により所望の目的化合物5へ変換される。
【0032】
ヒドロホルミル化および水素化の反応工程は、その際に組み合わせることができるので、該ヒドロホルミル化後にその場で直接、続いて該アルデヒド基のメチロール置換誘導体4への水素化が行われる。該ヒドロホルミル化の際に生じるヒドロキシメチル基(メチロール基)は、その際に、該ヒドロホルミル化反応の典型的には低い、もしくは際立たない位置選択性に基づき、9位ならびに10位に存在しうるものであり、かつ典型的には、双方の異性体の混合物が含まれる。図解5には、分かりやすさの理由から、9位で置換された異性体のみが図で示されている。形成されるタイプ5の生成物では、m’が0または1~5である化合物が特に好ましい。
【0033】
選択的に、該目的化合物は、以下に記載される経路で第2の好ましい実施態様の経路でも製造できる。この場合に、最初に、不飽和脂肪酸とホルムアルデヒド(またはホルムアルデヒド誘導体、例えばパラホルムアルデヒド)との反応が、エン反応、任意に、生じるC=C結合の後続の還元(例えば不均一系接触水素化による)の範囲内で行われ、ならびに引き続きその後のエステル化が行われる。該順序は、ここでも変えることができ、例えばまず最初に該エステル化で開始し、引き続き該エン反応および後続のエステル化を行うことができる。このダイマーもしくはオリゴマーを製造するための該ヒドロキシ基のエステル化には、カルボン酸を直接、または活性化されたカルボン酸誘導体、例えばカルボン酸塩化物および無水物、またはカルボン酸エステル(エステル交換反応用)を使用することができる。ジカルボン酸、トリカルボン酸およびより多価のカルボン酸もしくはそれらの誘導体を使用することもできる。
【0034】
不飽和脂肪酸およびホルムアルデヒド(またはホルムアルデヒド誘導体、例えばパラホルムアルデヒド)から出発して、ヒドロキシメチル置換基に隣接した位置にトランス-C=C二重結合を有するヒドロキシメチル置換された不飽和脂肪酸誘導体生成物を形成するエン反応の工程は、文献、例えばU. Biermann, J. Metzger, Fat. Sci. Technol. 1991, 93, 282-284およびJ. Metzger, U. Biermann, Synthesis 1992, 5, 463-465にすでに記載されているので、当業者は、該反応条件の選択の際に、これらの記載された論文に合わせることができる。そして、例えばU. Biermann, J. Metzger, Fat. Sci. Technol. 1991, 93, 282-284において、脂肪酸としてのオレイン酸とパラホルムアルデヒド(2.3当量)との反応の際に、さらにMeAlClが、化学量論量で添加されるルイス酸として同様に2.3当量で使用される。他の基質とのエン反応は、すでに以前に、とりわけB. Snider, D. Rodini, T. Kirk, R. Cordova, J. Am. Chem. Soc. 1982, 104, 555-563に報告されているので、当業者により、該反応条件の選択の際に、これらの論文に記載された反応条件も考慮することができる。
【0035】
詳細には、本発明による一般式(I)のエステル化合物を製造する本発明による方法のこの第2の好ましい実施態様は、次の工程を含む:
(A)一般式(IV)
【化15】
[式中、R、Rおよびnは、上記のとおり定義されている]を有する不飽和脂肪酸もしくはそれに由来するエステルから出発して、
エン反応および続いてその際に生じるC=C-二重結合の任意の水素化を実施して、一般式(VI)
【化16】
[式中、R、R、Aおよびnは、上記のとおり定義されている]を有する化合物が形成され、かつ
(B)得られた一般式(VI)を有する化合物を、続いて、式(VII)
【化17】
[式中、R、R、R、Aおよびnならびにmは、上記のとおり定義されている]を有するアシル供与体を使用するエステル形成反応に供し、それにより、一般式(I)
【化18】
[式中、R、R、R、Aおよびnならびにmは、上記のとおり定義されている]の本発明による化合物が得られる。任意に、続いてさらに、エステル化反応もしくはエステル交換反応によるR基の交換を行うことができる。同様に任意に、基R中の遊離ヒドロキシ基の場合にさらに、そのさらなるエステル化を行うことができる。
【0036】
第2の実施態様は、以下に、出発化合物としての不飽和脂肪酸の例示的な代表例としてオレイン酸から出発する、それぞれの本発明による化合物の製造の例に即して提示されており、かつ説明されている。この例は、さらに、以下の図解6に図にまとめて示されている。この場合に、関与される個々の工程の反応順序は変更することができるので、とりわけ、以下に記載される実施態様AおよびBがそれから得られる。
【0037】
オレイン酸1から出発して、実施態様Aの場合に、最初にエステル化反応が行われ、ここで、例示的な例において、2-エチルヘキサン-1-オールは、容易に入手可能で大量に得ることができるバルク化学品として使用される。すでに上記のとおり、該エステル化のためには、当業者には、一般に、幅広い範囲の方法が利用でき、ここで、魅力的な合成の選択肢は、酸または生体触媒、好ましくはリパーゼを使用する、触媒による方法である。該エステル化反応の際に得られたエステル2は、続いて、ルイス酸の存在下でパラホルムアルデヒドとのエン反応にかけられ、それにより、ヒドロキシメチル置換基に隣接した位置にトランス-C=C二重結合を有するヒドロキシメチル置換された不飽和脂肪酸誘導体6が生じる(例えば、該二重結合は、9位にヒドロキシメチル官能基を導入する場合に、10,11位にある)、(図解6)。6中のメチロール基に隣接した、このC=C二重結合(アルケン単位)のその後の水素化により、次いで、メチロール置換された飽和オレイン酸エステル4が得られ、これは続いて、該ヒドロキシ基のアシル化により、タイプ5の所望の目的化合物へ変換される。
【化19】
【0038】
該エン反応の際に生じるヒドロキシメチル基は、その際に、該エン反応の低い、もしくは際立たない位置選択性に基づき、9位にならびに10位に、トランス-C=C二重結合の対応する配置が10,11位で(該ヒドロキシメチル基の9位の場合)、または8,9位で(該ヒドロキシメチル基の10位の場合)、存在しうる。典型的には、双方の異性体の混合物が含まれる。図解6には、分かりやすさの理由から、10,11位にトランス-C=C二重結合を有する9位でヒドロキシメチル置換された異性体のみが図で示されている。形成されるタイプ5の生成物では、m’が、0または1~5である化合物が特に好ましい。
【0039】
任意に、該エン反応から生じるC=C二重結合の水素化は、最初にオリゴマー化が行われた後に最終的にはじめて実施することもできる。さらにまた、任意にさらに、該水素化工程の1つ以上を一般に放棄することができ、ここで、次いで生じる生成物は、少なくとも1個の二重結合を有する。
【0040】
同様に好ましい実施態様Bの場合に、実施態様Aに比較して反応順序は変更されている(図解6)。例えば、最初に、直接オレイン酸1から出発してエン反応が行われて、化合物7が得られ、これは続いて、該トランス-C=C二重結合の水素化およびその後のエステル化の経路で、中間体4へ変換される。任意におよび選択的に、まず最初に、化合物7のエステル化(それにより、化合物6が形成されることになる)および最後に該水素化を行ってもよく、それにより、同様に化合物4が得られる。1から出発するエン反応のこの場合にも、化合物7中で生じるヒドロキシメチル基は、該エン反応の低い、もしくは際立たない位置選択性に基づき、9位にならびに10位に、トランス-C=C二重結合の対応する配置が10,11位で(該ヒドロキシメチル基の9位の場合)、または8,9位で(該ヒドロキシメチル基の10位の場合)、存在しうる。典型的には、双方の異性体の混合物が含まれる。図解6には、分かりやすさの理由から、10,11位にトランス-C=C二重結合を有する9位でヒドロキシメチル置換された異性体のみが図で示されている。化合物4は、次いで、上記ですでに実施態様Aで記載されたとおり、タイプ5の所望の目的化合物へ変換され、ここで、m’が、0または1~5である化合物が特に好ましい。
【0041】
好ましい化合物クラス(Ib)の例示的な代表例は、以下に挙げられる例9に記載される2種の位置異性体の混合物と(ジ-)アルコール成分としての1,6-n-ヘキサンジオールとのエステル交換による3種の、以下に記載される混合物である(図解7)。1,6-n-ヘキサンジオールは、ジオールであり、ひいてはジエステル化することができ、この際に、1,6-n-ヘキサンジオールと、例9において製造されるエステル混合物の9位でならびに10位で置換された位置異性体が反応しうるので、この際に、3種の位置異性体の混合物が(そのようなエステル交換反応における2種の9-置換位置異性体もしくは2種の10-置換位置異性体もしくは1種の9-置換位置異性体および1種の10-置換位置異性体の関与により)生じ、これは以下の図解7に示されている。より分かりやすくするために、それぞれ、1,6-n-ヘキサンジオールに由来する分子フラグメントは、枠内に示されている。選択的に、化合物クラス(Ib)のそのような代表例の製造は、単純なアルキルエステル(例えばメチルおよびエチルエステル)から出発するエステル交換によるか、または直接、対応するカルボン酸から出発してエステル化反応により、行うこともできる。
【化20】
【0042】
好ましい化合物クラス(Ic)の例示的な代表例として、以下の例8に記載される2種の位置異性体の混合物と、(ジ-)カルボン酸成分としてのn-ヘキサンジカルボン酸とのエステル化による3種の、以下に記載される混合物が挙げられる(図解8)。n-ヘキサンジカルボン酸は、ジカルボン酸であり、ひいてはジエステル化することができ、この際に、n-ヘキサンジカルボン酸と、例8において製造されるエステル混合物の9位でならびに10位で置換された位置異性体は反応しうるので、この際に、ついで3種の位置異性体からなる混合物が(そのようなエステル交換反応における2種の9-置換位置異性体もしくは2種の10-置換位置異性体もしくは1種の9-置換位置異性体および1種の10-置換位置異性体の関与により)生じ、これは以下の図解8に示されている。より分かりやすくするために、それぞれ、n-ヘキサンジカルボン酸に由来する分子フラグメントは、枠内に示されている。選択的に、化合物クラス(Ic)のそのような代表例の製造は、構造的により単純なアシル成分(例えばアセチル、プロパノイル)を有する類似のO-アシル化された化合物から出発するエステル交換によるか、または直接、遊離ヒドロキシメチル基を有する対応するO-アシル化されていない化合物から出発してエステル化反応により、行うこともできる。
【化21】
【0043】
さらに、この化合物クラス(Ic)の代表例は、以下の例13に記載され、その中に含まれており、一般構造(Ic)に対応する位置異性体の混合物であり、これは、例8に記載される本発明による混合物とCroda GmbH社のジカルボン酸Pripol 1013とのエステル化反応から形成される(図解9)。より分かりやすくするために、それぞれ、商業的なジカルボン酸Pripol 1013に由来する分子フラグメントは、枠内に示されている。
【化22】
【0044】
n-ヘキサンジカルボン酸およびダイマー酸(Pripol 1013)に加えて、さらなる多価カルボン酸およびカルボン酸無水物、殊に水素化ダイマー酸、水素化または非水素化トリマー酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリト酸、ヘミメリト酸、トリメシン酸、クエン酸、イタコン酸、シュウ酸、2,2’-チオ二酢酸、3,3’-チオジプロピオン酸、アドメルギン酸(Admerginsaeure)、2,5-フランジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキセン-4,5-ジカルボン酸、フェニルコハク酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジグリコール酸およびイミノ二酢酸およびそれらの誘導体が使用される。
【0045】
本発明による方法のさらなる特徴は、不飽和脂肪酸から出発する該方法の好ましい実施態様およびその際に適用される合成順序の範囲内のエステル化の反応タイプを取り入れることである。ヒドロキシ基のエステル化のためには、当業者には多様な可能性が利用できる。例えば、必要とされる酸を直接、またはそれらに由来する、活性化された酸誘導体、例えば酸塩化物および無水物、または酸エステル(エステル交換反応用)を、使用することができる。特に魅力的な合成の選択肢は、その際に、アルコールおよび酸成分から出発して、活性化されたカルボン酸誘導体、例えばカルボン酸塩化物および無水物の使用を必要とすることのない、直接エステル化を可能にする、触媒による方法である。そのような触媒による方法は、化学触媒もしくは生体触媒の関与のもとで公知であり、例えば(殊に生体触媒に焦点を合わせて)、G. Hills, Eur. J. Lipid Sci. Technol. 2003, 105, 601-607, O. Thum, K. M. Oxenboell, SOFW J. 2008, 134, 44-47, L. Hilterhaus, O. Thum, A. Liese, Org. Process Res. Dev. 2008, 12, 618-625およびM. B. Ansorge-Schumacher, O. Thum, Chem. Soc. Rev. 2013, 42, 6475-6490に記載されている。生体触媒の使用は、その際に特に魅力的である、それというのも、温和な反応条件下でエステル化反応を高効率に実施することができるからである。相応して、本発明による一般式(I)の化合物の製造は、その際に関与しているエステル化反応のうち少なくとも1つのために加水分解酵素の酵素クラスから選択される生体触媒が使用される合成方法の範囲内で、特に好ましい実施態様である。該加水分解酵素の酵素クラスからの生体触媒として特に適しているのは、本発明による方法のためには、その際にリパーゼであり、ここで、また、カンジダ アンタルクティカ(Candida antarctica)B由来の商業的に利用可能なリパーゼが、特に適したリパーゼ成分である。
【0046】
本発明による一般式(I)の化合物をもたらす合成方法のためには、当業者には、該反応条件の選択の際に多様な選択可能性が利用でき、その際に、関与される個々の反応タイプについて、これらは文献に詳細に記載されている。とりわけ、当業者は、それぞれの反応媒体の選択の際に自由であり、例えば、本発明による方法の合成反応を実施するために幅広い範囲の溶媒を利用することができる。しかしながら、特に有利であるのは、その際に、該製造方法の持続可能性に関して、溶媒を回避することである。殊にエステル化反応のためには、無溶媒合成は、文献にすでに効率的であるとして、例えばすでに上述の寄稿G. Hills, Eur. J. Lipid Sci. Technol. 2003, 105, 601-607, O. Thum, K. M. Oxenboell, SOFW J. 2008, 134, 44-47, L. Hilterhaus, O. Thum, A. Liese, Org. Process Res. Dev. 2008, 12, 618-625およびM. B. Ansorge-Schumacher, O. Thum, Chem. Soc. Rev. 2013, 42, 6475-6490に記載されている。該エステル化の反応タイプは、本発明による方法の特徴でもあるので、本発明による一般式(I)の化合物の製造は、その際に関与しているエステル化反応のうち少なくとも1つが無溶媒の反応条件下で行われる合成方法の範囲内で、特に好ましい実施態様である。
【0047】
本発明により開発された方法ならびにこうして得られたO-アシル化されたメチロール官能基を有する生成物の特別な技術的利点は、基質としての母体となるヒドロキシメチロール置換された脂肪酸エステルでの第一級アルコール官能基の存在である。この第一級アルコール官能基は、温和な製造条件下で、および低温での酵素触媒による反応に大いに適しており、それにより、低いエネルギー消費と同時に環境に優しい条件下での所望の化合物の製造を可能にする。
【0048】
本発明による化合物ならびに本発明による製造方法のさらなる一般的な技術的な利点は、非常に高い選択率にある。独国特許発明第69835694号明細書(DE 698 35 694 T2)に開示されたエストリド化合物は、この選択率で製造することができない。それというのも、ここでは、基本構成単位としての不飽和脂肪酸から出発して、この構成単位の脂肪酸単位の、隣の構成単位のアルケン単位への付加により、反応結合が行われ、それにより、ダイマー、トリマー、テトラマーもしくは一般にオリゴマーおよびそれどころかポリマーが混合物として形成されるからである。しかし、本発明による方法の場合には、温和な反応条件および高選択的な酵素反応によって、該反応操作の戦略によっても、好ましくはそれぞれ、該出発化合物のメチロール成分の一官能化のみが達成される(これは例えば混合物として、9-および10-メチロール置換された脂肪酸エステルからなる)。さらにまた、相応して意図的な合成による選択的なやり方で、より多く置換されたトリマーおよびテトラマーのテーラーメイドな製造も考えられる。したがって、目的化合物は、高い選択率で定義された形で、より高次のオリゴマーまたはポリマー構造を回避して得られるが、これは、例えば、複雑な生成物混合物が得られる公知の方法では不可能である。
【0049】
本発明による一般式(I)のエステル化合物は、潤滑剤組成物において使用するのに卓越して適しており、かつ高温領域、海洋分野における使用に、ならびに食品分野において使用される潤滑剤として適している。
【0050】
新規エステル化合物に加えて、本発明による潤滑剤組成物は、殊に天然グリセリドエステルおよび脂肪酸をベースとする、さらなる基油成分、好ましくはひまわり油、なたね油または精製なたね油、あまに油、とうもろこし油またはとうもろこし胚芽油、サフラワー油、大豆油、亜麻油、落花生油、“Lesqueralle”(レスクエラ)油、パーム油、オリーブ油を、モノマー型、オリゴマー型および/または重合型でまたは挙げた油の混合物で含有していてよい。
【0051】
さらにまた、本発明による潤滑剤組成物は、新規エステル化合物に加えて、さらなるエステル、例えば、鎖長C~C36の飽和および/またはモノ不飽和またはポリ不飽和のカルボン酸で完全にまたは部分エステル化され、ここで、これらのカルボン酸が線状または分岐状であってよい、トリメチロールプロパンエステルおよびペンタエリトリトールエステルならびにTMP複合エステル、ダイマー酸の複合エステル、ダイマー酸エステル、例えばダイマー酸エチルヘキシル、脂肪族カルボン酸エステルおよびジカルボン酸エステルならびにリン酸エステル、トリメリト酸エステルおよびピロメリト酸エステル、エーテル、ポリエーテルポリオールならびにペルフルオロポリエーテル、アルキルジフェニルエーテルおよびポリフェニルエーテル、シリコーン油、統計的に分布したポリオキシエチレン単位および/またはポリオキシプロピレン単位および/またはその他のポリオキシアルキレン構成単位からなるポリグリコールならびにその他のグリコール誘導体、ポリα-オレフィンおよびメタロセンで触媒されて製造されたポリα-オレフィンならびにα-オレフィンコポリマー、ポリマー系、例えば非水素化、部分水素化または完全水素化ポリイソブチレンまたはこれらの混合物、スチレンおよびポリスチレンならびにその誘導体、および/またはアクリレート、アセテートポリマーおよびアミドをベースとするポリマー系、ポリエチレン、ポリプロピレン、ハロゲン化ポリプロピレンおよび/またはシクロアルカン、鉱油、例えばホワイト油、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ナフタレンおよびペルフルオロポリエーテルを含有していてよい。
【0052】
本発明による一般式(I)のエステル化合物を含有する潤滑剤は、潤滑油の形で、ならびに潤滑グリースとして使用することができる。
【0053】
該潤滑剤は、さらに、個々にかまたは組合せで使用され、かつ防食添加剤、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、紫外線安定剤、無機または有機の固形潤滑剤、流動点降下剤および粘度指数(VI)向上剤、ポリマー、粘着性付与剤、着色剤、乳化剤、消泡剤および固体潤滑剤からなる群から選択され、潤滑油もしくは潤滑グリースの配合に典型的である、添加剤を含む。
【0054】
潤滑グリースは、異なる増ちょう剤を用いて製造することができる。可能な増粘剤群は、個々にまたは組合せで使用することができるジイソシアネート、好ましくは2,4-ジイソシアナトトルエン、2,6-ジイソシアナトトルエン、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’-ジイソシアナトフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナトジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルフェニルメタンと、一般式R’-N-Rのアミン、または一般式R’-N-R-NR’のジアミン[式中、Rは、炭素原子2~22個を有するアリール基、アルキル基またはアルキレン基であり、かつR’は、同じか、または異なり、水素、アルキル基、アルキレン基またはアリール基である]、またはアミンおよびジアミンの混合物との反応生成物からなる尿素であるか、または増ちょう剤として、代表例は、Al複合石けん、周期表の第1および第2主族の元素の単一金属石けん、周期表の第1および第2主族の元素の金属複合石けん、ベントナイト、スルホネート、シリケート、アエロジル、ポリイミドまたはPTFEまたは前記の増ちょう剤の混合物の群から選択される。
【0055】
食品の加工用の機械装置を潤滑するための潤滑剤の使用に関する法的規定に適合するために、使用される添加剤がH1分類を有する場合が適切である。
【0056】
酸化防止剤の添加は、本発明による油またはグリースの酸化を、殊にその使用の際に、低下させるか、または防止することすらできる。相応して、酸化防止剤の添加は、本発明による方法のさらに好ましい実施態様である。該酸化防止剤は、ジ芳香族アミン、フェノール樹脂、チオフェノール樹脂、ホスフィット、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、オクチル化/ブチル化ジフェニルアミン、ジ-α-トコフェロール、ジ-tert-ブチル-フェニル、ベンゼンプロパン酸およびこれらの成分の混合物からなる群から選択される。
【0057】
本発明による潤滑剤は、防食添加剤、金属不活性化剤またはイオン錯化剤を含有していてよい。これらには、トリアゾール類、イミダゾリン類、N-メチルグリシン(サルコシン)、ベンゾトリアゾール誘導体、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)-ar-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-メタンアミン;N-メチル-N-(1-オキソ-9-オクタデセニル)グリシン、(C11~14)-アルキルアミンと反応されたリン酸およびそのモノおよびジイソオクチルエステルの混合物、tert-アルキルアミンおよび第一級(C12~14)-アミンと反応されたリン酸およびモノおよびジイソオクチルエステルの混合物、ドデカン酸、トリフェニルホスホロチオネートおよびアミンホスフェートが含まれる。商業的に入手可能な添加剤は、例えば、以下に挙げられる製品である:IRGAMET(登録商標) 39、IRGACOR(登録商標) DSS G、Amin O;SARKOSYL(登録商標) O (Ciba)、COBRATEC(登録商標) 122、CUVAN(登録商標) 303、VANLUBE(登録商標) 9123、CI-426、CI-426EP、CI-429およびCI-498。
【0058】
本発明による潤滑剤は、そのうえ、耐摩耗添加剤、抗摩耗添加剤および摩擦調整剤を含有していてよい。
【0059】
耐摩耗添加剤は、アミン、アミンホスフェート、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホロチオネート、アリールホスフェート、アルキル化ポリスルフィド、硫化アミン化合物、硫化脂肪酸メチルエステル、ナフテン酸、Al、SiO、TiO、ZrO、WO、Ta、V、CeO、チタン酸アルミニウム、BN、MoSi、SiC、Si、TiC、TiN、ZrB、粘土鉱物および/またはそれらの混合物の群からのナノ粒子ならびに熱安定なカーボネートおよび/またはスルフェート、およびこれらの成分の混合物である。商業的に入手可能な耐摩耗添加剤には、IRGALUBE(登録商標) TPPT、IRGALUBE(登録商標) 232、IRGALUBE(登録商標) 349、IRGALUBE(登録商標) 211およびADDITIN(登録商標) RC3760 Liq 3960、FIRC-SHUN(登録商標) FG 1505およびFG 1506、NA-LUBE(登録商標) KR-015FG、LUBEBOND(登録商標)、FLUORO(登録商標) FG、SYNALOX(登録商標) 40-D、ACHESON(登録商標) FGA 1820およびACHESON(登録商標) FGA 1810が含まれる。
【0060】
本発明による潤滑剤は、流動点降下剤および粘度指数向上剤および粘着性付与剤を含有していてよい。流動点降下剤および粘度指数向上剤は、線状および/または分岐状の、アルキル化された、アクリル化された、および脂肪族のポリマーおよびコポリマー、ならびに重合脂肪酸エステルの群から、ならびに部分水素化または完全水素化されたPIB(ポリイソブチレン)およびPB(ポリブテン)の群から、選択されている。
【0061】
本発明による潤滑剤は、さらに紫外線安定剤を含有していてよい。紫外線安定剤は、窒素複素環式化合物、置換窒素複素環式化合物、線状および分岐状の、アルキル化された、アシル化された、脂肪族の窒素複素環式化合物、ならびにそれらの誘導体の群から選択されている。
【0062】
本発明による潤滑剤は、固体潤滑剤を含有していてもよい。固体潤滑剤は、例えばPTFE、BN、ピロリン酸塩、酸化Zn、酸化Mg、ピロホスフェート、チオスルフェート、炭酸Mg、炭酸Ca、ステアリン酸Ca、硫化Zn、硫化Mo、硫化W、硫化Sn、黒鉛、グラフェン、ナノチューブ、SiO多形またはそれらの混合物である。
【0063】
本発明による潤滑剤は、乳化剤を含有していてよい。乳化剤は、分岐状および/または線状のエトキシル化および/またはプロポキシル化アルコールおよびそれらの塩、例えばアルコール、C16~C18、エトキシル化、プロポキシル化、ポリグリコール、脂肪酸エステル、シリケート、イオン界面活性剤、例えばアルキルスルホン酸のナトリウム塩の群から選択されており、ここで、その鎖はC14~17-炭素を有する。
【0064】
本発明による潤滑剤は、消泡剤を含有していてよい。消泡剤は、エトキシル化および/またはプロポキシル化された鎖長C10~C18のアルコール、食用脂のモノグリセリドおよびジグリセリド、アクリレート、プロポキシル化および/またはエトキシル化されたアルキルエーテル(ポリグリコール)、アルコール、シロキサンの群から選択されている。
【0065】
油配合物のための製造方法の好ましい形は、その際に、次のとおりである:一般式(I)のエステル化合物は、釜中に装入される。粘性を付与する成分および/または1種以上のさらなる基油が添加され、撹拌しながら、かつ任意に、定義された温度に加熱しながら、澄明な溶液が生成される。次いで、固体の添加剤が、それらの融点を上回る温度で添加され、これらが溶解するまで撹拌される。続いて、釜内容物は、最大60℃に冷却され、かつ液状添加剤が添加される。さらに1時間の撹拌時間後に、該油を詰め替えることができる。
【0066】
グリース配合物のための製造方法の好ましい形の場合に、さらに、次のとおり行われる:該基油混合物は、釜中に装入される。該増ちょう剤成分は、撹拌しながら、定義された温度において、定義されたやり方で添加される。こうして生じるグリースは、定義された時間撹拌され、かつ殊に石けん基の増ちょう剤の使用の際に、無水で煮沸される。次いで、固体の添加剤は、それらの融点を上回る温度で添加され、これらが溶解するまで撹拌される。続いて、釜内容物は、最大60℃に冷却され、かつ液状添加剤が添加される。さらに1時間の撹拌時間後に、該グリースを詰め替えることができる。
【0067】
一般式(I)のエステル化合物、例えば一般式(Ia)または(Ib)または(Ic)のエステル化合物をベースとする本発明による潤滑剤組成物は、海洋分野において、陸水の分野において、およびオフショア設備で、すなわち、海洋分野において塩水とまたは陸水中で水および水性媒体と接触する、チェーン、滑り軸受、プロペララダー、プロペラ軸、機械部品および設備の潤滑のために使用される。さらに、これらは、食品加工工業における機械装置の潤滑の際に、食品加工工業における作動油として、輸送チェーンおよび制御チェーンのために、穀物、穀粉および動物用飼料の加工用の装置のために、ならびにオーブン中で使用される。そのうえ、これらは、転がり軸受および滑り軸受、輸送チェーンおよび制御チェーンの潤滑のために、車両技術、搬送技術、機械工学、オフィス技術において、ならびに工業用設備および機械中で、家庭用電化製品および家庭用電子機器の分野において使用される。さらにまた、これらは、かさ歯車および平歯車、連続鋳造設備中のロール支持軸受および連続炉中の輸送用ロール軸受の潤滑のため、および殊にセメント工業、石灰工業、セッコウ工業、鉱業および化学工業におけるような、ロータリーキルン、チューブミル、トロンメルおよびミキサーの開放歯車潤滑のために使用される。
【0068】
補足して、本発明による化合物は、これらが立体中心を有する限り、ラセミ化合物ならびにエナンチオマー豊富化した、もしくはエナンチオマー純粋な化合物であってよいことが注記される。
【0069】
以下のセクションにおいて、本発明によるエステル化合物およびそれらの製造ならびに潤滑剤組成物におけるそれらの使用は、対応する実験例に基づいて説明される。
【実施例
【0070】
一般実験方法1(GEM1):オレイン酸およびゲルベアルコールから出発する、オレイン酸エステルの生体触媒による合成
【化23】
【0071】
オレイン酸(1.0当量)およびゲルベアルコール(1.0当量)を装入し、CAL-B(Novozym 435、30mg/mmol基質)およびモレキュラーシーブ4Å(120mg/mmol)を添加した。反応混合物を、50℃で24時間撹拌し、続いて、0.2μM PTFEフィルターによりろ過した。対応するオレイン酸エステルは、生成物純度97~99%で得られた。
【0072】
例1
オレイン酸および2-エチルヘキサン-1-オールから出発する、2-エチルヘキシルオレエートの製造
【化24】
【0073】
GEM1に従って合成を行った。オレイン酸(31.6ml、100mmol)および2-エチルヘキサン-1-オール(15.6ml、100mmol)に、Novozym 435(3.0g)およびモレキュラーシーブ4Å(12.0g)を添加した。2-エチルヘキシルオレエート(純度99%)が、無色の液体として得られた。
収量:37.3g、95%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.34 (m, 2H, CH=CH), 3.98 (dd, 2H, 2J = 5.8 Hz, 3J = 2.4 Hz, OCH2), 2.29 (t, 2H, 3J = 7.5 Hz, CH2CH2COOR), 2.01 (m, 4H, CH2CH=CHCH2), 1.61 (qi, 2H, 3J = 7.3 Hz, CH2CH2COOR), 1.56 (sept, 1H, 3J = 6.0 Hz, OCH2CH), 1.28 (m, 28H), 0.88 (m, 9H, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 174.21, 130.11, 129.87, 66.76, 38.90, 34.58, 32.05, 30.57, 29.91, 29.84, 29.67, 29.47, 29.33, 29.29, 29.26, 29.07, 27.36, 27.31, 25.19, 23.95, 23.12, 22.83, 14.25, 14.18。
GC (FID): Phenomenex ZB-5MSi, 0.5 ml/min (H2), 注入温度: 300℃, 検出温度: 350℃; 300℃ → 350℃ (5℃/min), 350℃で5 min, Rt = 3.51 min。
高分解能質量分析(HRMS)(ESI):C2650Na[M+Na]の計算値:417.3703、実測値:417.3699。
IR (ニート) [cm-1]: 2956, 2922, 2853, 1736, 1461, 1240, 1171, 724。
【0074】
例2
オレイン酸および2-ブチルオクタン-1-オールから出発する、2-ブチルオクチルオレエートの製造
【化25】
【0075】
GEM1に従って合成を行った。オレイン酸(1.59ml、5.00mmol)および2-ブチルオクタン-1-オール(1.12ml、5.00mmol)に、Novozym 435(150mg)およびモレキュラーシーブ4Å(600mg)を添加した。2-ブチルオクチルオレエート(純度97%)が、無色の液体として得られた。
収量:1.30g、58%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.34 (m, 2H, CH=CH), 3.96 (d, 2H, 2J = 5.8 Hz, OCH2), 2.29 (t, 2H, 3J = 7.5 Hz, CH2CH2COOR), 2.01 (m, 4H, CH2CH=CHCH2), 1.61 (m, 2H, CH2CH2COOR), 1.60 (m, 1H, OCH2CH), 1.28 (m, 36H), 0.88 (m, 9H, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 174.21, 130.11, 129.87, 67.16, 37.43, 34.60, 32.06, 31.97, 31.44, 31.11, 29.92, 29.86, 29.78, 29.68, 29.47, 29.35, 29.31, 29.28, 29.07, 27.36, 27.32, 26.82, 25.21, 23.14, 22.83, 22.81, 14.25, 14.24, 14.19。
GC (FID): Phenomenex ZB-5MSi, 0.5 ml/min (H2), 注入温度: 300℃, 検出温度: 350℃; 300℃ → 350℃ (5℃/min), 350℃で5 min; Rt = 4.27 min。
HRMS(ESI):C3058Na[M+Na]の計算値:473.4329、実測値:473.4324。
IR (ニート) [cm-1]: 2954, 2922, 2853, 1737, 1457, 1241, 1169, 723。
【0076】
例3
オレイン酸および2-ヘキシルデカン-1-オールから出発する、2-ヘキシルデシルオレエートの製造
【化26】
【0077】
GEM1に従って合成を行った。オレイン酸(1.59ml、5.00mmol)および2-ヘキシルデカン-1-オール(1.44ml、5.00mmol)に、Novozym 435(150mg)およびモレキュラーシーブ4Å(600mg)を添加した。2-ヘキシルデシルオレエート(純度97%)が、無色の液体として得られた。
収量:1.51g、60%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.34 (m, 2H, CH=CH), 3.97 (d, 2H, 2J = 5.8 Hz, OCH2), 2.29 (t, 2H, 3J = 7.5 Hz, CH2CH2COOR), 2.01 (m, 4H, CH2CH=CHCH2), 1.61 (m, 2H, CH2CH2COOR), 1.60 (m, 1H, OCH2CH), 1.28 (m, 44H), 0.88 (m, 9H, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 174.22, 130.12, 129.87, 67.18, 37.45, 34.61, 32.06, 31.97, 31.44, 30.12, 29.92, 29.86, 29.78, 29.72, 29.68, 29.48, 29.36, 29.32, 29.29, 27.37, 27.32, 26.86, 26.82, 25.21, 22.84, 22.81, 14.26, 14.25。
GC (FID): Phenomenex ZB-5MSi, 0.5 ml/min (H2), 注入温度: 300℃, 検出温度: 350℃; 300℃ → 350℃ (5℃/min), 350℃で5 min; Rt = 5.65 min。
HRMS(ESI):C3466Na[M+Na]の計算値:529.4955、実測値:529.4951。
IR (ニート) [cm-1]: 2921, 2852, 1737, 1464, 1169, 722。
【0078】
例4
オレイン酸および2-オクチルドデカン-1-オールから出発する、2-オクチルドデシルオレエートの製造
【化27】
【0079】
GEM1に従って合成を行った。オレイン酸(1.59ml、5.00mmol)および2-オクチルドデカン-1-オール(1.78ml、5.00mmol)に、Novozym 435(150mg)およびモレキュラーシーブ4Å(600mg)を添加した。2-オクチルドデシルオレエート(純度98%)が、無色の液体として得られた。
収量:1.67g、59%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.34 (m, 2H, CH=CH), 3.97 (d, 2H, 2J = 5.8 Hz, OCH2), 2.29 (t, 2H, 3J = 7.5 Hz, CH2CH2COOR), 2.01 (m, 4H, CH2CH=CHCH2), 1.61 (m, 2H, CH2CH2COOR), 1.60 (m, 1H, OCH2CH), 1.28 (m, 52H), 0.88 (m, 9H, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 174.22, 130.12, 129.87, 67.19, 37.43, 34.61, 32.08, 32.07, 31.42, 30.12, 29.92, 29.87, 29.82, 29.81, 29.77, 29.72, 29.69, 29.52, 29.48, 29.36, 29.32, 29.29, 27.37, 27.32, 26.85, 25.21, 22.84, 14.27。
GC (FID): Phenomenex ZB-5MSi, 0.5 ml/min (H2), 注入温度: 300℃, 検出温度: 350℃; 300℃ → 350℃ (5℃/min), 350℃で5 min; Rt = 7.70 min。
HRMS(ESI):C3466Na[M+Na]の計算値:585.5581、実測値:585.5568。
IR (ニート) [cm-1]: 2920, 2852, 1737, 1464, 1170, 722。
【0080】
一般実験方法2(GEM2):オレイン酸/オレイン酸エステルと、パラホルムアルデヒドおよびルイス酸とのエン反応
【化28】
【0081】
MetzgerおよびBiermannの実験方法(U. Biermann, J. Metzger, Fat. Sci. Technol. 1991, 93, 282-284; J. Metzger, U. Biermann, Synthesis 1992, 5, 463-465)に従って、オレイン酸(1.0当量)またはその2-エチルヘキシルエステル(1.0当量)およびパラホルムアルデヒド(2.3当量)を、アルゴン下に無水ジクロロメタン中に装入し、0℃に冷却した。続いて、EtAlClまたはMeAlCl(2.3~3.3当量、n-ヘキサン中1.0M)を滴加し、反応混合物をその後にゆっくりと室温に温め、2時間撹拌した。水(1:1 v/v)を添加し、4M HClでpH=1に酸性化した。相を分離させ、水相をジエチルエーテル(1:1 v/v)でさらに3回抽出した。合一した抽出物を、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧で除去した。続いてカラムクロマトグラフィーにより、生成物が無色の油として得られた。該生成物は、C9およびC10-付加物の1:1-混合物として得られた。
【0082】
例5
E-9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エン酸およびE-10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸の混合物の製造
【化29】
【0083】
GEM2に従って合成を行った。オレイン酸(4.73ml、15mmol)およびパラホルムアルデヒド(1.04g、34.5mmol)を、MeAlCl(34.5ml、34.5mmol)を添加しながら、反応させた。後処理およびカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 7:3、v/v)により、生成物が無色の液体として得られた。
収量:1.50g、32%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.52 (m, 1H, CH=CHCH), 5.13 (m, 1H, CH=CHCH), 3.52 (m, 1H, CH2OH), 3.33 (m, 1H, CH2OH), 2.34 (2 t, 2H, 3J = 7.5 Hz, CH2COO), 2.15 (m, 1H, CH=CHCH), 2.04 (m, 2H, CH2CH=CH), 1.64 (m, 2H, CH2CH2COO), 1.27 (m, 22H), 0.88 (2 t, 3H, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 179.15, 179.07, 134.33, 133.88, 131.64, 131.30, 66.15, 66.10, 46.06, 34.01, 34.01, 32.82, 32.68, 32.03, 32.01, 31.27, 31.21, 29.82, 29.69, 29.68, 29.57, 29.45, 29.37, 29.29, 29.28, 29.26, 29.16, 28.99, 28.79, 27.24, 27.15, 27.07, 24.80, 24.75, 22.82, 22.81, 14.25。
【0084】
分析データは、文献(J. Metzger, U. Biermann, Synthesis 1992, 5, 463-465)と一致する。
【0085】
例6
E-9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよびE-10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物の製造
【化30】
【0086】
GEM2に従って合成を行った。2-エチルヘキシルオレエート(23.7g 60mmol)およびパラホルムアルデヒド(4.14g、138mmol)を、EtAlCl(198ml、198mmol)を添加しながら、反応させた。後処理および真空蒸留(10-3mbarで)により、生成物が無色の液体として得られた。
収量:17.6g、69%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.51 (m, 1H, CH=CHCH), 5.12 (m, 1H, CH=CHCH), 3.98 (m, 2H, COOCH2), 3.51 (m, 1H, CH2OH) 3.32 (m, 1H, CH2OH), 2.29 (2 t, 2H, 3J = 7.5 Hz, CH2COO), 2.12 (m, 1H, CH=CHCH), 2.02 (m, 2H, CH2CH=CH), 1.61 (m, 2H, CH2CH2COO), 1.56 (m, 1H, OCH2CH), 1.27 (m, 28H), 0.88 (3 t, 9H, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 174.21, 174.18, 134.27, 133.90, 131.58, 131.33, 66.79, 66.77, 66.12, 66.09, 46.09, 38.88, 34.56, 34.54, 32.81, 32.72, 32.02, 31.99, 31.25, 31.23, 30.56, 29.81, 29.67, 29.67, 29.64, 29.46, 29.44, 29.34, 29.28, 29.24, 29.10, 29.06, 28.90, 27.23, 27.18, 25.16, 25.12, 23.93, 23.12, 22.81, 22.80, 14.25, 14.24, 14.19, 11.13。
GC (FID): Phenomenex ZB-5MSi, 0.5 ml/min (H2), 注入温度: 300℃, 検出温度: 350℃; 300℃ → 350℃ (5℃/min), 350℃で5 min; Rt = 4.29, 4.53 min。
HRMS(ESI):C2752Na[M+Na]の計算値:447.3809、実測値:447.3813。
IR (ニート) [cm-1]: 2923, 2854, 1733, 1462, 1379, 1171, 1032, 969。
【0087】
一般実験方法3(GEM3):不飽和オレイン酸誘導体のパラジウムで触媒されたC=C水素化
【化31】
【0088】
不飽和遊離酸(1.0当量)またはその2-エチルヘキシルエステル(1.0当量)を、水素雰囲気下でシクロヘキサン中に溶解させ、活性炭上のパラジウム(Pd/C、10% Pd、20質量%)を添加した。反応混合物を、室温で2時間撹拌し、続いて、0.2μM PTFEフィルターによりろ過した。カラムクロマトグラフィーにより、所望の生成物が無色の油として得られた。
【0089】
例7
9-(ヒドロキシメチル)オクタデカン酸および10-(ヒドロキシメチル)オクタデカン酸の混合物の製造
【化32】
【0090】
GEM3に従って合成を実施した。E-9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エン酸およびE-10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸の混合物(450mg、1.44mmol)を、水素雰囲気下でシクロヘキサン25ml中に溶解させ、Pd/C(90mg)を添加した。後処理およびカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 1:2、v/v)により、所望の生成物が無色の油として得られた。
収量:130mg、25%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 3.53 (d, 2H, 3J = 5.5 Hz CH2OH), 2.35 (t, 2H, 3J = 7.5 Hz, CH2COO), 1.63 (qi, 2H, 3J = 7.3 Hz, CH2CH2COO), 1.45 (m, 1H, HOCH2CH), 1.27 (m, 36H), 0.88 (t, 3H, 3J = 6.9 Hz, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 179.62, 65.81, 65.79, 40.59, 34.15, 34.14, 32.05, 31.07, 31.02, 30.99, 30.22, 30.05, 29.91, 29.80, 29.78, 29.76, 29.49, 29.30, 29.15, 29.13, 27.04, 26.92, 26.88, 24.80, 22.83, 14.27。
HRMS(ESI):C1938Na[M+Na]の計算値:337.2713、実測値:337.2717。
IR (ニート) [cm-1]: 2913, 2848, 1699, 1469, 1185, 972, 719。
【0091】
例8
9-(ヒドロキシメチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよび10-(ヒドロキシメチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物の製造
【化33】
【0092】
GEM3に従って合成を実施した。E-9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよびE-10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物(1.06g、2.50mmol)を、水素雰囲気下でシクロヘキサン50ml中に溶解させ、Pd/C(212mg)を添加した。後処理およびカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 7:1、v/v)により、所望の生成物が無色の油として得られた。
収量:660mg、62%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 3.97 (m, 2H, COOCH2), 3.54 (d, 2H, 3J = 5.5 Hz CH2OH), 2.29 (t, 2H, 3J = 7.5 Hz, CH2COO), 1.61 (m, 2H, CH2CH2COO), 1.56 (m, 1H, OCH2CH), 1.27 (m, 36H), 0.89 (3 t, 9H, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 174.27, 174.26, 66.79, 65.85, 65.83, 40.67, 38.90, 34.60, 34.58, 32.05, 31.08, 31.07, 31.05, 30.57, 30.22, 30.14, 30.02, 29.81, 29.78, 29.76, 29.59, 29.49, 29.41, 29.40, 29.30, 29.07, 27.05, 27.01, 26.97, 25.19, 23.95, 23.13, 22.83, 14.27, 14.20, 11.15。
GC (FID): Phenomenex ZB-5MSi, 0.5 ml/min (H2), 注入温度: 300℃, 検出温度: 350℃; 300℃ → 350℃ (5℃/min), 350℃で5 min; Rt = 4.61 min。
HRMS(ESI):C2754Na[M+Na]の計算値:449.3965、実測値:449.3975。
IR (ニート) [cm-1]: 2921, 2853, 1736, 1459, 1171, 1031。
【0093】
例9
9-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよび10-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物の製造
【化34】
【0094】
GEM3に従って合成を実施した。E-9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エン酸-(2’-エチルヘキシル)エステルおよびE-10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物(2.00g、2.90mmol)を、水素雰囲気下でシクロヘキサン50ml中に溶解させ、Pd/C(400mg)を添加した。後処理およびカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 15:1、v/v)により、所望の生成物が無色の油として得られた。
収量:1.62g、81%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 3.97 (m, 4H, COOCH2), 2.28 (t, 4H, 3J = 7.5 Hz, CH2COO), 1.61 (m, 6H, CH2CH2COO), 1.25 (m, 62H), 0.89 (m, 12H, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 174.22, 174.16, 67.13, 66.75, 38.91, 37.46, 34.60, 34.58, 32.07, 31.42, 30.58, 30.12, 30.06, 29.94, 29.85, 29.81, 29.76, 29.71, 29.65, 29.63, 29.58, 29.46, 29.43, 29.39, 29.34, 29.32, 29.07, 26.85, 25.21, 23.95, 23.12, 22.84, 14.25, 14.18, 11.13。
GC (FID): Phenomenex ZB-5MSi, 0.5 ml/min (H2), 注入温度: 300℃, 検出温度: 350℃; 300℃ → 350℃ (5℃/min), 350℃で5 min; Rt = 14.4 min。
HRMS(ESI):C4588Na[M+Na]の計算値:715.6575、実測値:715.6573。
IR (ニート) [cm-1]: 2921, 2852, 1736, 1463, 1169。
【0095】
【表1】
【0096】
一般実験方法4(GEM4):脂肪酸とヒドロキシメチル化ステアリン酸誘導体との、“ダイマー”への生体触媒によるエステル化
【化35】
【0097】
ヒドロキシメチル化ステアリン酸(2’-エチルヘキシル)エステル(1.0当量)を、MTBE中に溶解させ、Novozym 435(CAL-B、30mg/mmol)およびモレキュラーシーブ4Å(120mg/mmol)ならびに脂肪酸(1.0当量)を添加した。反応混合物を50~60℃で24時間撹拌し、続いて、0.2μM PTFEフィルターによりろ過した。減圧下での溶媒の除去により、生成物が無色の油として得られた。
【0098】
例10
9-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよび10-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物の製造
【化36】
【0099】
GEM4に従って合成を行った。9-(ヒドロキシメチル)オクタデカン酸-(2’-エチルヘキシル)エステルおよび10-(ヒドロキシメチル)オクタデカン酸-(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物(51.7mg、100μmol)およびステアリン酸(28.4mg、100μmol)を、MTBE 50μL中に溶解させ、Novozym 435(3mg)およびモレキュラーシーブ4Å(12mg)を添加し、50℃で撹拌した。後処理により、所望の生成物が無色の油として得られた。
収量:58mg、85%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 3.98 (m, 2H, COOCH2), 3.95 (m, 2H, COOCH2), 2.29 (2 t, 4H, 3J = 7.4 Hz, CH2COO), 1.61 (m, 4H, CH2CH2COO), 1.56 (m, 2H, OCH2CH), 1.27 (m, 62H), 0.89 (4 t, 12H, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 174.29, 174.27, 174.22, 67.16, 66.78, 38.91, 37.46, 34.63, 34.60, 34.59, 32.08, 32.07, 31.43, 30.58, 30.13, 29.86, 29.83, 29.82, 29.77, 29.72, 29.66, 29.64, 29.52, 29.51, 29.48, 29.44, 29.35, 29.33, 29.08, 26.86, 25.22, 25.21, 23.96, 23.14, 22.85, 14.28, 14.21, 11.15。
【0100】
分析データは、例9からの化合物のそれと一致する。
【0101】
例11
9-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-10-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよび10-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-8-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物の製造
【化37】
【0102】
E-9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよびE-10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物(10.0g、23.5mmol)を、ステアリン酸(6.70g、23.5mmol)と混合し、70℃に加熱し、それにより、ステアリン酸が溶融した。Novozym 435(CAL-B、706mg、30mg/mmol)およびモレキュラーシーブ4Å(3.3g、120mg/mmol)を添加した。反応混合物を70℃で24時間撹拌した。続いて、0.2μM PTFEフィルターによりろ過した。真空中での溶媒の除去およびシリカゲルによるろ過(シクロヘキサン/酢酸エチル 15:1、v/v)により、生成物が無色の油として得られた。
収量:11.9g、73%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.40 (m, 1H, CH=CH), 5.14 (m, 1H, CH=CH), 3.98 (m, 2H, COOCH2), 2.29 (m, 4H, CH2COO), 1.97 (m, 2H, CHCH2) 1.61 (m, 5H, CH2CH2COO + OCH2CH), 1.27 (m, 60H), 0.88 (4 t, 12H, CH3)。
GC (FID): Phenomenex ZB-5MSi, 0.5 ml/min (H2), 注入温度: 300℃, 検出温度: 350℃; 300℃ → 350℃ (5℃/min), 350℃で5 min; Rt = 14.1 min。
HRMS(ESI):C4586Na[M+Na]の計算値:713.6418、実測値:713.6419。
IR (ニート) [cm-1]: 2959, 2926, 2856, 1736, 1257, 1011, 865, 790, 700。
【0103】
例12
9-((オクタデカ-9-エノイルオキシ)メチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよび10-((オクタデカ-9-エノイルオキシ)メチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物の製造
【化38】
【0104】
GEM4に従って合成を行った。9-(ヒドロキシメチル)オクタデカン酸-(2’-エチルヘキシル)エステルおよび10-(ヒドロキシメチル)オクタデカン酸-(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物(51.7mg、100μmol)およびオレイン酸(28.2mg、100μmol)に、Novozym 435 (3mg)およびモレキュラーシーブ4Å(12mg)を添加し、60℃で撹拌した。後処理により、所望の生成物が無色の油として得られた。
収量:39mg、56%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.34 (m, 2H, CH=CH), 3.98 (m, 2H, COOCH2), 3.95 (m, 2H, COOCH2), 2.29 (2 t, 4H, 3J = 7.4 Hz, CH2COO), 1.61 (m, 4H, CH2CH2COO), 1.56 (m, 2H, OCH2CH), 1.27 (m, 58H), 0.89 (4 t, 12H, CH3)。
MS(ESI):m/z=691.5[M+H]
IR (ニート) [cm-1]:2959, 2926, 2856, 1736, 1257, 1011, 865, 790, 700。
【0105】
例13
9-(((12-ヒドロキシオクタデカノイル)-オキシ)メチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよび10-(((12-ヒドロキシオクタデカノイル)-オキシ)メチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物の製造
【化39】
【0106】
GEM4に従って合成を行った。9-(ヒドロキシメチル)オクタデカン酸-(2’-エチルヘキシル)エステルおよび10-(ヒドロキシメチル)オクタデカン酸-(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物(213.2mg;500μmol)、および12-ヒドロキシステアリン酸(142.8mg;480μmol)に、モレキュラーシーブ4Å(59.53mg)、Novozym 435(14.5mg)およびMTBE(0.5mL)を添加し、50℃で24h撹拌した。後処理により、所望の生成物が無色の油として得られた。
収量:267mg、76%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 4.05-3.86 (m, 4H, COOCH2); 3.58 (dt, 1H, 3J = 7.4, 4.2 Hz, CH2OH); 2.29 (t, 4H, 3J = 7.5 Hz, CH2COO); 1.58 (dt, 6H, 3J = 24,3, 6,6 Hz); 1.41 (d, 6H, 3J = 6.5 Hz); 1,37-1,20 (m, 55H); 0.88 (td, 12H, 3J = 6.9, 6.3, 3.8 Hz, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 174.22, 150.97, 67.14, 66.78, 38.91, 37.63, 37.46, 34.59, 32.05, 31.99, 31.43, 30.58, 30.11, 29.85, 29.83, 29.75, 29.73, 29.69, 29.66, 29.61, 29.58, 29.52, 29.49, 29.46, 29.43, 29.40, 29.32, 29.30, 29.07, 26.84, 25.79, 25.76, 25.19, 23.95, 23.12, 22.82, 22.76, 14.24, 14.22, 14.18, 11.13。
HRMS(ESI):C4588Naの計算値:731.6524;実測値:731.6521。
【0107】
例14
(E)-11-((2-エチルヘキシル)オキシ)-2-オクチル-11-オキソウンデカ-3-エン-1-イル-((E)-2-(8-((2-エチルヘキシル)オキシ)-8-オキソオクチル)ウンデカ-3-エン-1-イル)アジピン酸エステル、ビス((E)-11-((2-エチルヘキシル)オキシ)-2-オクチル-11-オキソウンデカ-3-エン-1-イル)アジピン酸エステルおよびビス((E)-2-(8-((2-エチルヘキシル)オキシ)-8-オキソオクチル)ウンデカ-3-エン-1-イル)アジピン酸エステルの混合物の製造
【化40】
【0108】
GEM4に従って合成を行った。E-9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよびE-10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物(999.6mg、2.4mmol)およびアジピン酸(172.6mg、1.2mmol)に、Novozym 435(70.6mg)およびモレキュラーシーブ4Å(288mg)を添加し、60℃で撹拌した。後処理により、所望の生成物が帯黄色の油として得られた。
収量:1.06g、94%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.43 (m, 2H, CH=CH), 5.19-5.09 (m, 2H, CH=CH), 4.07-3.86 (m, 8H, COOCH2), 2.29 (m, 8H, CH2COO), 1.98 (m, 4H, CHCH2) 1.61 (m, 10H, CH2CH2COO + OCH2CH), 1.27 (m, 60H), 0.88 (4 t, 16H, CH3)
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 174.13, 174.06, 174.02, 173.53, 173.51, 173.32, 132.68, 132.62, 132.38, 132.32, 130.56, 130.44, 130.38, 67.73, 67.59, 66.80, 66.64, 42.10, 42.05, 38.76, 38.74, 34.47, 34.43, 34.39, 34.01, 33.96, 32.61, 32.57, 32.55, 31.93, 31.89, 31.46, 30.43, 30.41, 29.70, 29.65, 29.54, 29.50, 29.37, 29.32, 29.31, 29.25, 29.18, 29.17, 29.06, 29.02, 28.93, 28.80, 28.76, 26.88, 25.07, 25.04, 25.01, 24.48, 24.45, 23.81, 23.79, 22.99, 22.97, 22.70, 22.68, 14.12, 14.06, 11.00, 10.99。
HRMS(ESI):C60110Naの計算値:981.8093;実測値:981.8094。
【0109】
例15
(Z)-ヘキサン-1,6-ジイル ジオレエートの製造
【化41】
【0110】
合成を、Raghunanan et al.(L. Raghunanan, S. Narine ACS Sust. Chem. & Eng. 2016 4 (3), 693-700)およびNeises et al.(B. Neises, W. Steglich, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1978, 17, 522-524)の実験方法に従って行った。オレイン酸(5.01g、17.7mmol)、1,6-ヘキサンジオール(804.6mg、6.8mmol)、N,N-ジメチルアミノピリジン(86.7mg、0.71mmol)およびN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(2.84g、13.8mmol)を、ジクロロメタン中で室温で撹拌した。18h後に、相を分離させ、水相をジクロロメタン(1:1 v/v)でさらに3回抽出した。合一した抽出物を、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧で除去した。該生成物は帯黄色の油として得られた。
収量:2.79g、63%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.34 (4H, m, CH=CH), 4.06 (4H, t, O-CH2), 2.28 (4H, t, CH2COO), 2.00 (8H, m, CH=CH-CH2), 1.63 (8H, m, O-CH2-CH2, CH2-CH2-COO), 1.21-1.35 (44H, m), 0.88 (6H, t, CH3)。
MS(ESI):m/z=669.6[M+Na]
【0111】
分析データは、該文献(L. Raghunanan, S. Narine ACS Sust. Chem. & Eng. 2016 4 (3), 693-700)と一致する。
【0112】
例16
6-(((E)-9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エノイル)オキシ)ヘキシル-(E)-10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸エステル、ヘキサン-1,6-ジイル (10E,10’E)-ビス(9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エン酸エステル)およびヘキサン-1,6-ジイル (8E,8’E)-ビス(10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸エステル)の混合物の製造
【化42】
【0113】
GEM2に従って合成を行った。(Z)-ヘキサン-1,6-ジイル ジオレエート(1.73g、2.68mmol)およびパラホルムアルデヒド(373mg、12.4mmol)を、EtAlCl(19ml、19mmol)を添加しながら、反応させた。後処理およびカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 15:1、v/v)により、所望の生成物が無色の油として得られた。
収量:353mg、19%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.51 (m, 2H, CH=CHCH), 5.13 (m, 2H, CH=CHCH), 4.06 (m, 4H, COOCH2), 3.53 (m, 2H, CH2OH) 3.32 (m, 2H, CH2OH), 2.29 (t, 4H, CH2COO), 2.14 (m, 2H, CH=CHCH), 2.02 (m, 4H, CH2CH=CH), 1.63 (m, 8H, CH2CH2COO, OCH2CH), 1.32 (m, 42H), 0.88 (t, 6H, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 134.29, 133.92, 131.62, 131.34, 66.13, 64.32, 46.10, 34.50, 34.48, 32.83, 32.73, 32.04, 32.01, 31.28, 31.24, 29.82, 29.69, 29.64, 29.46, 29.34, 29.29, 29.26, 29.11, 28.91, 28.71, 27.25, 27.19, 25.78, 25.13, 25.09, 22.81, 14.26。
HRMS(ESI):C4482Naの計算値:729.6004;実測値:729.6014。
【0114】
一般実験方法5(GEM5):酸塩化物を使用する、より高分子量の脂肪酸エステルの製造
【化43】
【0115】
酸塩化物を、商業的に購入するか、または次の方法により調製した:トルエン中に溶解させたカルボン酸(1.0当量)を、0℃で撹拌しながら、ゆっくりと塩化チオニル(15当量)を滴加した。還流下で16h加熱した後に、過剰の塩化チオニルならびに溶媒を、ミクロ蒸留によって除去して、酸塩化物を得た。これを直ちに使用した。
【0116】
遊離アルコール官能基を有する脂肪酸成分(1.0当量)を、トルエン中でピリジン(1.1当量)と共に装入し、氷冷で撹拌しながら、ゆっくりと該酸塩化物(1.2当量)を添加した。この混合物を15min以内に室温にし、続いて還流下で6~16h加熱した。相分離後に、水相を酢酸で酸性化し、酢酸エチルでさらに2回抽出した。合一した抽出物を、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧で濃縮乾固した。カラムクロマトグラフィーにより、所望の生成物が得られた。
【0117】
例17
9-(((12-(ヘキサノイルオキシ)-オクタデカノイル)-オキシ)メチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよび10-(((12-(ヘキサノイルオキシ)-オクタデカノイル)-オキシ)メチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物の製造
【化44】
【0118】
GEM5に従って合成を行った。9-(((12-ヒドロキシオクタデカノイル)-オキシ)メチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよび10-(((12-ヒドロキシオクタデカノイル)-オキシ)メチル)オクタデカン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物(2.04g、2.87mmol)を、ピリジン(0.25mL、3.16mmol)およびヘキサン酸塩化物(0.5mL、3.58mmol)と反応させた。後処理およびC18-RPカラムを用いるカラムクロマトグラフィ(アセトニトリル)ーにより、所望の生成物が無色の油として得られた。
収量:8mg、2%。4.86 (s, 1H), 4.01 - 3.91 (m, 8H), 2.27 (s, 5H), 1.76 - 1.15 (m, 64H), 0.89 (s, 9H)。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 4.86 (m, 1H, COOCH), 4.01-3.91 (m, 4H, COOCH2); 2.27 (m, 6H, CH2COO); 1.76-1.15 (m, 72H); 0.88 (m, 15H, CH3)。
HRMS(ESI):C5198Naの計算値:829.7256;実測値:829.7261。
【0119】
例18
6-(((E)-9-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-10-エノイル)オキシ)ヘキシル-(E)-10-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-8-エン酸エステル、ヘキサン-1,6-ジイル (10E,10’E)-ビス(9-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-10-エン酸エステル)およびヘキサン-1,6-ジイル (8E,8’E)-ビス(10-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-8-エン酸エステル)の混合物の製造
【化45】
【0120】
GEM5に従って合成を行った。6-(((E)-9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エノイル)オキシ)ヘキシル-(E)-10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸エステル、ヘキサン-1,6-ジイル (10E,10’E)-ビス(9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エン酸エステル)およびヘキサン-1,6-ジイル (8E,8’E)-ビス(10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸エステル)の混合物(181mg、0.26mmol)を、ピリジン(0.25μL、0.28mmol)およびステアリン酸塩化物(95.6mg、0.31mmol)と反応させた。後処理および分取薄層クロマトグラフィーにより、所望の生成物が無色の油として得られた。
収量:20mg、3%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.43 (m, 2H, CH=CH), 5.15 (m, 2H, CH=CH), 4.04 (m, 4H, COOCH2), 3.94 (t, 4H, COOCH2-(CH2)4-CH2OOC), 2.28 (m, 4H, CH2COO), 1.98 (m, 4H, CH2CH2), 1.61 (m, 10H, CH2CH2COO + OCH2CH), 1.45-1.11 (m, 108H), 0.88 (t, 12H, CH3)。
HRMS(ESI):C80150Naの計算値:1261.1223;実測値:1262.1246。
【0121】
例19
(E)-9-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-10-エン酸および(E)-10-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-8-エン酸の混合物の製造
【化46】
【0122】
GEM5に従って合成を行った。E-9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エン酸およびE-10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸の混合物(428g、1.3mmol)を、ピリジン(0.13mL、1.65mmol)およびステアリン酸塩化物(ステアリン酸:467mg、1.64mmolから)と反応させた。後処理およびシリカゲルによるろ過(シクロヘキサン:酢酸エチル 15:1 v/v)により、所望の生成物が無色のろうとして得られた。
収量:716mg、92%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.42 (m, 1H, CH=CH-CH), 5.21 (m, 1H, CH=CH-CH), 3.94 (m, 2H, CH-CH2-O), 2.34 (m, 2H, CH2COOH), 2.28 (m, 2H, CH2-COOCH2), 2.04-1.93 (m, 2H, CH2-CH=CH), 1.61 (m, 5H. CH=CH-CH. CH2-CH2-COO), 1.25 (s, 47H), 0.88 (t, 3J = 6.9 Hz, 6H, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 179.15, 179.07, 134.33, 133.88, 131.64, 131.30, 66.15, 66.10, 46.06, 34.01, 34.01, 32.82, 32.68, 32.03, 32.01, 31.27, 31.21, 29.82, 29.69, 29.68, 29.57, 29.45, 29.37, 29.29, 29.28, 29.26, 29.16, 28.99, 28.79, 27.24, 27.15, 27.07, 24.80, 24.75, 22.82, 22.81, 14.25。
HRMS(ESI):C3770Naの計算値:601.5166;実測値:601.5158。
元素分析(EA):C3770の計算値 C:76.76%、H:12.19%、
実測値:C:76.71%、H:12.42%。
【0123】
例20
(E)-9-((((E)-9-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-10-エノイル)オキシ)メチル)オクタデカ-10-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステル、
(E)-9-((((E)-9-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-10-エノイル)オキシ)メチル)オクタデカ-8-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステル、
(E)-10-((((E)-9-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-10-エノイル)オキシ)メチル)オクタデカ-10-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよび
(E)-10-((((E)-9-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-10-エノイル)オキシ)メチル)オクタデカ-8-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステル
の混合物の製造
【化47】
【0124】
(E)-9-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-10-エン酸および(E)-10-((ステアロイルオキシ)メチル)オクタデカ-8-エン酸の混合物(271mg、0.47mmol)を、トルエン中のE-9-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-10-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルおよびE-10-(ヒドロキシメチル)オクタデカ-8-エン酸(2’-エチルヘキシル)エステルの混合物(188mg、0.44mmol)と共に装入し、p-トルエンスルホン酸(84mg、0.44mmol)およびモレキュラーシーブ4Å(62mg、121.2mg/mmol)を添加した。40℃で2h撹拌後に、氷を添加した。相分離後に、水相を酢酸エチル(1:1 v/v)で3回抽出した。合一した有機相を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、続いて飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮乾固した。カラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル 20:1 v/v)により、所望の生成物が無色の油として得られた。
収量:14mg、3%。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 5.42 (m, 2H, CH=CH-CH), 5.21 (m, 2H, CH=CH-CH), 3.98 (m, 2H, CH-CH2-O-エチルヘキシル), 3.96-3.87 (m, 4H, CH-CH2-O), 2.28(m, 6H, CH2-COOCH2), 1.98 (m, 4H, CH2-CH=CH), 1.68-1.50 (m, 8H. CH=CH-CH. CH2-CH2-COO), 1.43-1.15 (s, 77H), 0.88 (t, 3J = 4.7 Hz, 15H, CH3)。
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 174.21, 174.17, 174.05, 174.00, 173.96, 132.77, 132.47, 130.76, 130.75, 130.59, 67.74, 67.72, 66.79, 42.25, 42.20, 38.90, 34.59, 34.58, 34.55, 32.77, 32.72, 32.70, 32.08, 32.04, 31.61, 30.58, 29.86, 29.83, 29.82, 29.80, 29.69, 29.66, 29.52, 29.47, 29.46, 29.42, 29.40, 29.35, 29.34, 29.22, 29.21, 29.19, 29.17, 29.08, 28.95, 28.91, 27.05, 27.03, 25.20, 25.19, 25.16, 25.14, 23.95, 23.14, 22.85, 22.83, 14.27, 14.21, 11.15。
HRMS(ESI):C64120Naの計算値:1007.8984;実測値:1007.8977。
EA:C3770の計算値 C:77.99%、H:12.27%、
実測値:C:78.17%、H:12.30%。