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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】ポリオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20220502BHJP
   C08K 5/5425 20060101ALI20220502BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20220502BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220502BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20220502BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K5/5425
C08K5/14
C08K3/013
H01B3/44 F
H01B7/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019568189
(86)(22)【出願日】2017-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 CN2017102074
(87)【国際公開番号】W WO2019000654
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/090770
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】チャン、カイナン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヤーピン
(72)【発明者】
【氏名】コーゲン、ジェフリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】パーソン、ティモシー ジェイ.
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-006184(JP,B1)
【文献】特公昭48-024492(JP,B1)
【文献】米国特許第04005254(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00 - 23/36
C08K 5/00 - 5/59
C08K 3/00 - 3/40
H01B 3/00 - 3/56
H01B 7/00 - 7/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)総重量パーセントが100.00重量%である、50~100重量パーセント(重量%)のエチレンモノマー単位、50~0重量%の(C-C20)アルファ-オレフィン由来のコモノマー単位、および20~0重量%のジエンコモノマー単位を含む、低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーである、ポリオレフィンポリマーと、
架橋有効量の(B)式(I):[R,RSiO2/2(I)の単環式オルガノシロキサンであって、式中、下付き文字nが3以上の整数であり、各Rが、独立して、(C-C)アルケニルまたはHC=C(Ra)-C(=O)-O-(CH-であり、R1aが、Hまたはメチルであり、下付き文字mが1から4の整数であり、各Rが、独立して、H、(C-C)アルキル、フェニル、またはRである、(B)と、
(C)有機過酸化物と、を含むが、ただし、
ポリオレフィン組成物が、ホスファゼン塩基を含まない(すなわち、欠いている)ことが条件であり
下付き文字nが3であり、前記(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンが、下記制限(i)~(x)のうちのいずれか1つによって説明されるか、または、
(i)各Rが独立して(C-C)アルケニルであり、各Rが独立してH、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、
(ii)各Rがビニルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(iii)各Rがビニルであり、各Rがメチルである、
(iv)各Rがアリルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(v)各Rがアリルであり、各Rがメチルである、
(vi)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHまたはメチルであり、下付き文字mが1~4の整数であり、各Rが独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、
(vii)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(viii)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがメチルであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(ix)前記ポリオレフィン組成物が、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、24重量%以上含有しない、ならびに
(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のうちのいずれか1つとの組み合わせである、
下付き文字nが5または6であり、前記(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンが、下記制限(i)~(x)のうちのいずれか1つによって説明される、ポリオレフィン組成物。
(i)各Rが独立して(C-C)アルケニルであり、各Rが独立してH、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、
(ii)各Rがビニルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(iii)各Rがビニルであり、各Rがメチルである、
(iv)各Rがアリルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(v)各Rがアリルであり、各Rがメチルである、
(vi)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHまたはメチルであり、下付き文字mが1~4の整数であり、各Rが独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、
(vii)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(viii)各Rが独立して、HC=C(Ra)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがメチルであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(ix)前記ポリオレフィン組成物が、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、24重量%以上含有しない、ならびに
(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のうちのいずれか1つとの組み合わせである
【請求項2】
制限(i)~(vii)のいずれか1つによって説明される、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
(i)前記(A)ポリオレフィンポリマーが、ASTM D792-13の方法Bで測定する場合、立方センチメートル当たり0.86~0.97グラム(g/cm)の密度を特徴とする、
(ii)前記(A)ポリオレフィンポリマーが、前記ポリオレフィン組成物の重量の80~99.89重量パーセント(重量%)である、
(iii)前記(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンが、前記ポリオレフィン組成物の0.1~3重量%であり、前記(C)有機過酸化物が、前記ポリオレフィン組成物の0.01~4.5重量%である、
(iv)(i)と(ii)の両方である
(v)(i)と(iii)の両方である
(vi)(ii)と(iii)の両方である、および
(vii)(i)、(ii)、および(iii)の各々である
【請求項3】
(D)従来の助剤、(E)酸化防止剤、(F)充填剤、(G)難燃剤、(H)ヒンダードアミン安定剤、(I)トリー遅延剤、(J)メチルラジカル捕捉剤、(K)スコーチ遅延剤、(L)核剤、および(M)カーボンブラックからなる群から選択される、少なくとも1つの添加剤をさらに含むが、ただし、
前記少なくとも1つの添加剤の総量が、前記ポリオレフィン組成物の、>0~70重量%であることが条件であり、
前記(F)充填剤が、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を含まないことが条件である、
請求項1又は2に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン組成物を作製する方法であって、ホスファゼン塩基の非存在下で、(A)ポリオレフィンポリマーと(B)式(I):[R,RSiO2/2(I)の単環式オルガノシロキサンと、(C)有機過酸化物とを一緒に混合して、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物を作製することを含む、方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物をフリーラジカル硬化して、架橋ポリオレフィン生成物を作製する方法であって、前記(A)ポリオレフィンポリマーを前記(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンと反応させるような方式で、前記(C)有機過酸化物を含む前記ポリオレフィン組成物を硬化有効温度で加熱し、それにより架橋ポリオレフィン生成物を作製することを含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化する方法によって作製された、架橋ポリオレフィン生成物。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物、または請求項6に記載の架橋ポリオレフィン生成物の成形形態を含む、製造物品。
【請求項8】
伝導性コアと、前記伝導性コアを少なくとも部分的に被覆する絶縁層とを含むコーティングされた導体であって、前記絶縁層の少なくとも一部分が、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物、または請求項6に記載の架橋ポリオレフィン生成物を含む、コーティングされた導体。
【請求項9】
送電する方法であって、請求項8に記載のコーティングされた導体の伝導性コア全体に電圧を印加して、前記伝導性コアを通る電気の流れを発生させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本分野には、ポリオレフィン組成物、それから生成される生成物、それを生成および使用する方法、ならびにそれを含有する物品が含まれる。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月29日に出願の、PCT国際特許出願第PCT/CN2017/090770号の優先権の利益を主張し、その全内容を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0003】
絶縁された導電体は、典型的には、絶縁層で被覆された伝導性コアを備える。伝導性コアは、中実または撚り線(例えばワイヤの束)であり得る。いくつかの絶縁された導電体は、半導体層(複数可)および/または保護ジャケット(例えば、巻線、テープ、またはシース)などの1つ以上の追加の要素も含有し得る。低電圧(「LV」、>0~<5キロボルト(kV))、中電圧(「MV」、5~<69kV)、高電圧(「HV」、69~230kV)、および超高電圧(「EHV」、>230kV)の送電/配電用途に使用するためのものを含む、コーティングされた金属ワイヤおよび電力ケーブルが例である。電力ケーブルの評価には、AEIC/ICEA規格、および/またはIEC試験方法が使用され得る。
【0004】
BT MacKenzie,Jr.(「MacKenzie」)の米国特許第US4,005,254号は、エチレン含有ポリマーを化学的に架橋するための無加圧硬化システム、およびそれにより形成された生成物に関する。硬化性組成物は、エチレン含有ポリマー、硬化剤、およびテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンで処理された無機充填剤を含む。組成物の調製では、ポリマー、無機充填剤、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、およびその他の添加剤は、Banburyのように密接に混和される。この配合作業中、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンは、充填剤と相互作用するか、または充填剤をコーティングすると言われており、結果的にシロキサン処理充填剤と称されている。必要な場合、別々の作業で無機充填剤をテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンで前処理してもよく、次いでシロキサン処理充填剤をポリマーおよび他の添加剤と混和する。実施例1(0.0重量パーセント(重量%)のテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン)のMacKenzieのトルエン抽出物データ(化合物での%)は11.6%であり、実施例2および3(組成物の重量に基づいて各々0.97重量%のテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン)は、それぞれ9.6%および11.8%である(表I)。実施例2および3の抽出物と比較して比較例1の抽出物の百分率を考慮すると、実施例2および3のテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンはエチレン含有ポリマーの架橋に寄与しなかったことが当業者によって認識されるであろう。マッケンジーが教示するように、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンは、むしろケイ酸アルミニウム充填剤をコーティングした。
【0005】
J.M.Cogenらの米国特許第US8,426,519 B2号は、経済的な反応器後の反応性混合、例えば押出を使用して調製されたシリコーン熱可塑性ポリマー反応性ブレンドおよびコポリマー生成物に関する。この手順は、熱可塑性ポリマーマトリックス内の環式シロキサンの開環重合に基づく。好ましい様式では、熱可塑性ポリマーは、任意選択的にその場で形成されるシリコーンポリマーとの反応に利用可能なシラン基を含有する、ポリオレフィンである。得られる材料は、熱可塑性ポリマー、またはシリコーン単独、またはそれらの物理的ブレンドによって提供されるものを超えて用途の範囲を拡大することができる、ハイブリッドな性能を提供する。
【0006】
Z-l Wuらの中国特許第CN104277182A号、および文献Crosslinking of low density polyethylene with Octavinyl polyhedral oligomeric silsesquioxane as the crosslinker(J.Wu.,et al.,RSC Advances,2014,volume4,page44030)は、オクタビニル多面体オリゴマーシルセスキオキサンを架橋剤として使用して、架橋低密度ポリエチレンを調製する方法に関する。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、従来のポリオレフィンの架橋と性能を損なわせる問題を認識した。助剤をポリオレフィンとブレンドして、架橋能力が増加したポリオレフィン組成物を得ることができるが、従来の助剤には限界がある。例えば、従来の助剤は、典型的には、ポリオレフィン組成物への可溶性または混和性が制限される。これは、組成物における助剤の最大充填レベルを制限する。それはまた、望ましくないことに、組成物の表面(例えば、ペレットの表面)への助剤の移行を引き起こし、組成物の貯蔵寿命を制限する。従来の助剤は、他の問題も提起する。例えば、硬化すると、架橋の程度が不十分な架橋生成物が得られる場合がある。あるいは、ある特定の製造作業(例えば、電力ケーブル製造、射出成形、フィルム押出)で使用するには、組成物の硬化が遅すぎる場合がある。あるいは、組成物は硬化が早すぎる場合がある(すなわち、ケーブル押出、射出成形、およびフィルム押出中に焦げやすい)。驚くことではないが、これらの問題により、ポリオレフィンと共に使用されてきた従来の助剤の構造が制限されてきた。典型的には、従来の助剤は、2つ以上のオレフィン架橋基に結合した従来の部分構造基を含む。従来の部分構造基は、骨格または環に炭素原子、ならびに任意選択的に窒素および/または酸素原子を含有するがケイ素原子を含有しない、それぞれ骨格または環を含む非環式または環式多価基である。
【0008】
この問題は、より高い電圧で動作する電力ケーブルの性能を損なわせる。絶縁層の押出中にスコーチが発生し、最終的には絶縁層の破損につながり得る。絶縁層により弾力性の高い材料を使用することにより、かかる破損に達するまでの時間を長くすることができ、したがって送電の信頼性が増加し、維持費が削減される。
【0009】
この問題に対する技術的な解決策は、従来技術では明らかではなかった。次いで本発明によって解決されるべき問題は、ポリオレフィン組成物および架橋したその硬化生成物が、より高電圧の電力ケーブル(HVまたはEHV電力ケーブル)における絶縁層として有用な、ポリオレフィンポリマーと改善された助剤とを含む新しいポリオレフィン組成物を発見することである。分析により、新しい助剤は、理想的には、炭素または窒素原子を環に含有しない環式分子であろうことが示唆されている。
【0010】
この問題に対する技術的解決策には、ポリオレフィンポリマーとアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンを含むポリオレフィン組成物、それから作製された架橋ポリオレフィン生成物、それを作製および使用する方法、ならびにそれを含有する物品が含まれる。
【0011】
本発明のポリオレフィン組成物および生成物は、押出成形品、コーティング、フィルム、シートおよび射出成形物品、ならびに送電用途、ならびに容器または車両部品などの他の無関係の用途を含む、架橋ポリオレフィンを含むポリオレフィンが利用される任意の用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概要および要約は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
ポリオレフィンポリマーおよびアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンを含有する本発明のポリオレフィン組成物は、照射またはアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの開環を伴わない有機過酸化物を介して硬化(架橋)することができる。硬化反応は、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンが重合シロキサン(シリコーンポリマー)を得ないような方式で行われる。理論に拘束されることなく、ポリオレフィン組成物の構成成分は、ポリオレフィン組成物の硬化中にアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンが開環して開環シラノール(S-OH)官能性オルガノシロキサンオリゴマー(線状または分岐状)を得ないように選択され、したがって、重合シロキサン(シリコーンポリマー)は、ポリオレフィンポリマー内でその場で形成されないと考えられている。アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンは、ポリオレフィン組成物を含有せず、したがって硬化反応が開環触媒の不在下で行われるので、少なくとも部分的に開環し得ない。除外される開環触媒は既知であり、ホスファゼン塩基が含まれる。ホスファゼン塩基は、遊離N原子価が水素、ヒドロカルビル、-P=Nまたは=PNに結合し、遊離P原子価が=Nまたは-Nに結合している、コア構造P=Nを有する。ホスファゼン塩基の例は、米国特許第US8,426,519 B2、第9欄第29行~第10欄第31行に見られる。ポリオレフィン組成物から、したがってそれから調製される架橋ポリオレフィン生成物から除外される他の種類の開環触媒が知られている。例えば、F.O.Stark et al.,Silicones,Comprehensive Organometallic Chemistry,volume2,305,Pergamon Press(1982)を参照されたい。トリフルオロメタンスルホン酸およびその金属塩、硫酸、過塩素酸、塩酸などの強酸;金属ハロゲン化物などのカチオン開環触媒;ならびにオルガノリチウム、アルカリ金属酸化物、およびアルカリ金属水酸化物などのアニオン開環触媒が例である。開環触媒の不在下で、本発明のポリオレフィン組成物は、フリーラジカル硬化を介して、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンがポリオレフィンポリマーに架橋して、架橋ポリオレフィン生成物を形成する。本発明の架橋は、周囲水分の存在下でさえ、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの開環を伴わずに有利に行われる。本発明の架橋の実施形態は、架橋レベル(架橋の程度または度合い)に対する、ホスファゼン塩基の有害な影響(複数可)を回避する。
【0014】
予測外にも、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンを含有する本発明のポリオレフィン組成物、またはそれから調製された本発明の架橋ポリオレフィン生成物は、それぞれ、線状ビニルメトキシシロキサンホモポリマー(オリゴマー)、ビニル、メチルシロキサンホモポリマー(オリゴマー)、もしくはかご様のビニル官能性シルセスキオキサン、またはそれらから調製された生成物のいずれかを含有する比較ポリオレフィン組成物と比較して、少なくとも1つの改善された特性を有する。改善された特性は、後述のT90架橋時間試験方法によって測定される場合の、有益により速い硬化速度を示す、架橋ポリオレフィン生成物中90%の架橋(「T90」)を達成するまでのより短い期間、T90架橋時間試験方法によって測定される場合の、架橋ポリオレフィン生成物の有益により高い架橋の程度を示す、より高い最大トルク値(「MH」)、後述のスコーチ時間試験方法によって測定される場合の、押出中(例えば、押出機後の作業の代わりに押出機での硬化)のポリオレフィン組成物の有益に増加した早期硬化に対する耐性を示す140℃でのスコーチ時間(「ts1」)の増加、および/または、ポリオレフィンポリマーに従来の助剤を充填して可能なものと比較して、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの「滲み出し」を伴わずに、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンがポリオレフィンポリマーにより高い濃度で充填される能力、であり得る。「滲み出し」は、ポリオレフィン組成物の長期貯蔵中の、(シリコン系助剤としての)アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの、ポリオレフィン組成物のポリオレフィンポリマーへのより高い適合性および/または可溶性を示す、後述する移行測定試験方法または表面移行試験方法によって決定されるとおりである。
【0015】
本発明のポリオレフィン組成物は、硬化剤として有機過酸化物を含有し、得られる本発明の架橋ポリオレフィン生成物は、それを硬化させることによって作製され、ポリオレフィンと有機過酸化物を含有するがアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンを含まない比較ポリオレフィン組成物を硬化させることにより作製された比較架橋ポリオレフィン生成物で達成され得るよりも高い程度の架橋(より多数の架橋)を特徴とし得る。得られる本発明の架橋ポリオレフィン生成物は、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの代わりに従来の助剤を使用して達成され得るよりも高い程度の架橋を有し得る。ポリオレフィン組成物は、おそらく、ポリオレフィンポリマー中のアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの可溶性が、ポリオレフィンポリマー中の従来の助剤のものよりも高いことに起因して、「滲み出し」を経験することなく、より長い貯蔵寿命を有し得る。本発明のポリオレフィン組成物は、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの代わりに従来の助剤を使用して達成され得るよりも短いT90架橋時間(より速い架橋)を有し得る。本発明の架橋ポリオレフィン生成物は、比較架橋ポリオレフィン生成物が本発明の架橋ポリオレフィン生成物と同じ数の架橋を有するように配合されると、比較架橋ポリオレフィン生成物と比較して、スコーチ(例えば140℃でts1)に対してより高い耐性を有し得る。
【0016】
ある特定の本発明の実施形態は、相互参照を容易にするための番号付き態様として以下に記載される。追加の実施形態は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0017】
態様1.(A)総重量パーセントが100.00重量%である、50~100重量パーセント(重量%)のエチレンモノマー単位、50~0重量%の(C-C20)アルファ-オレフィン由来のコモノマー単位、および20~0重量%のジエンコモノマー単位を含む、低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーである、ポリオレフィンポリマーと、架橋有効量の(B)式(I):[R,RSiO2/2(I)の単環式オルガノシロキサンであって、式中、下付き文字nが3以上の整数であり、各Rが、独立して、(C-C)アルケニルまたはHC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、R1aが、Hまたはメチルであり、下付き文字mが1から4の整数であり、各Rが、独立して、H、(C-C)アルキル、フェニル、またはRである、(B)と、(C)有機過酸化物と、を含むが、ただし、ポリオレフィン組成物が、ホスファゼン塩基を含まない(すなわち、欠いている)ことが条件である、ポリオレフィン組成物。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は、いずれの開環触媒も含まない。下付き文字nが4であるいくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、24重量%以上含有しないか、あるいは22重量%以上含有しないか、あるいは20.0重量%以上含有しないか、あるいは15重量%以上含有しないか、あるいは10重量%以上含有しないか、あるいは含有しない。いくつかの態様では、nは、3、4、5、または6、あるいは3、4、または5、あるいは5または6、あるいは3または4、あるいは3、あるいは4、あるいは5、あるいは6である。
【0018】
態様2.(A)総重量パーセントが100.00重量%である、50~100重量パーセント(重量%)のエチレンモノマー単位、50~0重量%の(C-C20)アルファ-オレフィン由来のコモノマー単位、および20~0重量%のジエンコモノマー単位を含む、低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーである、ポリオレフィンポリマーと、(B)式(I):[R,RSiO2/2(I)の単環式オルガノシロキサンであって、式中、下付き文字nが3以上の整数であり、各Rが、独立して、(C-C)アルケニルまたはHC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、R1aが、Hまたはメチルであり、下付き文字mが1から4の整数であり、各Rが、独立して、H、(C-C)アルキル、フェニル、またはRである、(B)と、(C)有機過酸化物と、を含むが、ただし、下付き文字nが4のとき、ポリオレフィン組成物が、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、24重量%以上含有しないか、あるいは22重量%以上含有しないか、あるいは20.0重量%以上含有しないか、あるいは15重量%以上含有しないか、あるいは10重量%以上含有しないか、あるいは含まないことが条件であり、ポリオレフィン組成物がホスファゼン塩基を含まないことが条件である、ポリオレフィン組成物。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は、いずれの開環触媒も含まない。いくつかの態様では、nは、3、4、5、または6、あるいは3、4、または5、あるいは5または6、あるいは3または4、あるいは3、あるいは4、あるいは5、あるいは6である。
【0019】
態様3.下付き文字nが3である(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンが、制限(i)~(x):(i)各Rが独立して(C-C)アルケニルであり、各Rが独立してH、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、(ii)各Rがビニルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、(iii)各Rがビニルであり、各Rがメチルである、(iv)各Rがアリルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、(v)各Rがアリルであり、各Rがメチルである、(vi)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHまたはメチルであり、下付き文字mが1~4の整数であり、各Rが独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、(vii)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、(viii)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがメチルであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、(ix)ポリオレフィン組成物が、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、24重量%以上含有しないか、あるいは22重量%以上含有しないか、あるいは20.0重量%以上含有しないか、あるいは15重量%以上含有しないか、あるいは10重量%以上含有しないか、あるいは含まない、ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のうちのいずれか1つとの組み合わせ、のうちのいずれか1つによって説明される、態様1または2に記載のポリオレフィン組成物。
【0020】
態様4.下付き文字nが4であり、(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンが、制限(i)~(x):(i)各Rが独立して(C-C)アルケニルであり、各Rが独立してH、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、(ii)各Rがビニルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、(iii)各Rがビニルであり、各Rがメチルである、(iv)各Rがアリルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、(v)各Rがアリルであり、各Rがメチルである、(vi)各Rが独立して、HC=C(Ra)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHまたはメチルであり、下付き文字mが1~4の整数であり、各Rが独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、(vii)各Rが独立して、HC=C(Ra)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、(viii)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがメチルであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、(ix)ポリオレフィン組成物が、任意の無機充填剤を、24重量%以上含有しないか、あるいは22重量%以上含有しないか、あるいは20.0重量%以上含有しないか、あるいは15重量%以上含有しないか、あるいは10重量%以上含有しないか、あるいはいずれも含まない、ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のうちのいずれか1つとの組み合わせ、のうちのいずれか1つによって説明される、態様1または2に記載のポリオレフィン組成物。
【0021】
態様5.下付き文字nが5または6であり、(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンが、制限(i)~(x):(i)各Rが独立して(C-C)アルケニルであり、各Rが独立してH、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、(ii)各Rがビニルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、(iii)各Rがビニルであり、各Rがメチルである、(iv)各Rがアリルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、(v)各Rがアリルであり、各Rがメチルである、(vi)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHまたはメチルであり、下付き文字mが1~4の整数であり、各Rが独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、(vii)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、RaがHであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、(viii)各Rが独立して、HC=C(Ra)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがメチルであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、(ix)ポリオレフィン組成物が、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、24重量%以上含有しないか、あるいは22重量%以上含有しないか、あるいは20.0重量%以上含有しないか、あるいは15重量%以上含有しないか、あるいは10重量%以上含有しないか、あるいは含まない、ならびに(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のうちのいずれか1つとの組み合わせ、のうちのいずれか1つによって説明される、態様1または2に記載のポリオレフィン組成物。
【0022】
態様6.制限(i)~(vii):(i)(A)2-プロパノール中、ASTM D792-13の方法Bで測定する場合、ポリオレフィンポリマーが、立方センチメートル当たり0.86~0.97グラム(g/cm)の密度を特徴とする、(ii)(A)ポリオレフィンポリマーが、ポリオレフィン組成物の重量の80~99.89重量パーセント(重量%)である、(iii)(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンが、ポリオレフィン組成物の0.1~3重量%であり、(C)有機過酸化物が、ポリオレフィン組成物の0.01~4.5重量%である、(iv)(i)と(ii)の両方、(v)(i)と(iii)の両方、(vi)(ii)と(iii)の両方、および(vii)(i)、(ii)、および(iii)の各々、のいずれか1つによって説明される態様1~5のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物。
【0023】
態様7.(D)従来の助剤、(E)酸化防止剤、(F)充填剤、(G)難燃剤、(H)ヒンダードアミン安定剤、(I)トリー遅延剤、(J)メチルラジカル捕捉剤、(K)スコーチ遅延剤、(L)核剤、および(M)カーボンブラックからなる群から選択される、少なくとも1つの添加剤をさらに含むが、ただし、少なくとも1つの添加剤の総量が、ポリオレフィン組成物の、>0~70重量%、あるいは>0~60重量%、あるいは>0~40重量%、あるいは>0~20重量%であることが条件であり、(F)充填剤が、任意の省略された充填剤を含まないことが条件である、態様1~6のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は、(E)酸化防止剤、あるいは(E)酸化防止剤と(H)ヒンダードアミン安定剤とさらに含む。
【0024】
態様8.ポリオレフィン組成物を作製する方法であって、(A)総重量パーセントが100.00重量%である、50~100重量パーセント(重量%)のエチレンモノマー単位、50~0重量%(C-C20)のアルファ-オレフィン由来のコモノマー単位、および20~0重量%のジエンコモノマー単位を含む、低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーであるポリオレフィンポリマーと、(B)式(I):[R,RSiO2/2(I)の単環式オルガノシロキサンと、(C)有機過酸化物とを一緒に混合して、態様1~6のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物を作製することを含む、方法。下付き文字nおよび基RおよびRは、態様1~5のいずれか一項で定義されているとおりである。(A)ポリオレフィンポリマーは、態様1、2、および6のうちのいずれか一項で定義されているとおりである。方法は、態様7で定義された添加剤のうちの少なくとも1つを構成成分(A)、(B)、および(C)と混合して、態様7に記載のポリオレフィン組成物を作製することをさらに含み得る。
【0025】
態様9.態様1~7のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物をフリーラジカル硬化して、架橋ポリオレフィン生成物を作製する方法であって、(A)ポリオレフィンポリマーを(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンと反応させるような方式で、ポリオレフィン組成物を硬化有効温度で加熱し、それにより架橋ポリオレフィン生成物を作製することを含む、方法。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、ホスファゼン塩基、あるいは任意の開環触媒を含まない。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は、態様1~6のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物である。硬化有効温度で架橋有効量の(B)と(C)有機過酸化物とを組み合わせること、ならびに任意の他の所望の反応条件(例えば、圧力または不活性ガス雰囲気)は、十分にポリオレフィン組成物を硬化し、状況下で架橋ポリオレフィン生成物を作製する。
【0026】
態様10.態様9に記載の硬化する方法によって作製された、架橋ポリオレフィン生成物。
【0027】
態様11.態様1~7のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物、または態様10に記載の架橋ポリオレフィン生成物の成形形態を含む、製造物品。いくつかの態様では、製造物品は、コーティング、フィルム、シート、押出物品、および射出成形物品から選択される。例えば、コーティングされた導体、電力または通信を伝送するためのワイヤおよびケーブルのコーティング、農業用フィルム、食品包装、布製バッグ、食料品袋、頑丈な袋、工業用シート、パレットおよびシュリンクラップ、袋、バケツ、冷凍庫用容器、蓋、おもちゃ。
【0028】
態様12.伝導性コアと、伝導性コアを少なくとも部分的に被覆する絶縁層とを含むコーティングされた導体であって、絶縁層の少なくとも一部分が、態様1~7のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物、または態様10に記載の架橋ポリオレフィン生成物を含む、コーティングされた導体。伝導性コアの実施形態は、近位端および遠位端を有するワイヤであってもよく、その少なくとも一方は絶縁層を含まなくてもよい。
【0029】
態様13.送電する方法であって、態様12に記載のコーティングされた導体の伝導性コア全体に電圧を印加して、伝導性コアを通る電気の流れを発生させることを含む、方法。伝導性コアは、近位端および遠位端を有するワイヤであってもよく、電気は、ワイヤの一端から他端へと流れ得る。
【0030】
「助剤」という用語は、架橋を向上する化合物、すなわち硬化助剤を意味する。「従来の助剤」は、架橋を向上し、それぞれの骨格または環の部分構造に炭素原子を含有する非環式または環式化合物である。したがって、従来の助剤の骨格または環の部分構造は、炭素に基づいている(炭素系部分構造)。対照的に、シリコン系助剤とは、架橋を向上し、それぞれの骨格または環の部分構造にケイ素原子を含有する非環式または環式化合物を意味する。(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンは、環式ケイ素系助剤である。
【0031】
「硬化」および「架橋」という用語は、本明細書では互換的に使用され、開環重合を伴わずに架橋生成物(ネットワークポリマー)を形成することを意味する。
【0032】
「硬化有効温度」という表現は、構成成分(A)と(B)との間の(フリーラジカル)反応であるような(C)有機過酸化物の分解を開始するのに十分な熱エネルギーの程度または度合いである。
【0033】
「エチレン含有ポリマー」という用語は、HC=CHに由来する繰り返し単位を含有する高分子を意味する。
【0034】
「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート、メタクリレート、およびそれらの組み合わせを含む。(メタ)アクリレートは、非置換であってもよい。
【0035】
本明細書で使用される「開環触媒」という用語は、環式シロキサンモノマーの、開環重合反応を開始する、かつ/あるいは開環重合反応の速度を向上する物質を意味する。
【0036】
本明細書で使用される「開環重合」という用語は、ポリマー鎖の反応性末端が環式モノマーの環を開いてより長いポリマー鎖を得る、鎖成長重合反応の一種である。
【0037】
ポリオレフィン組成物:単相または多相、均一または不均一、連続相または不連続相、炭素-炭素二重結合を含有する1つ以上のモノマーとアルケニル官能性単環式オルガノシロキサンの分子に由来する繰り返し単位で構成される高分子を含有する架橋性材料。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は、1つ、2つ、またはそれ以上の任意選択的な成分または添加剤をさらに含有してもよい。ポリオレフィン組成物の重量は、100.00重量%である。
【0038】
ポリオレフィン組成物は、多くの異なる方式によって作製され得る。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は、(A)ポリオレフィンポリマーの融解物を、(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンと、(C)有機過酸化物と、任意の任意選択的な構成成分(例えば、構成成分(D)~(M)のうちの任意のゼロ、1つ以上と混合することによって作製され得、構成成分(A)、(B)、(C)、および任意の任意選択的な構成成分の混和物としてポリオレフィン組成物を得る。混合は、配合、混練、または押出を含み得る。1つ以上の構成成分(例えば(B)、添加剤(C)、(D)、(E)など)の混合を促進するために、添加剤マスターバッチ形態で(A)の一部分に提供され得る。
【0039】
別の態様では、ポリオレフィン組成物は、(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンと、任意の任意選択的な構成成分(例えば(D)酸化防止剤)のうちの任意選択的なゼロ、1つ以上とを、非融解形態の(A)ポリオレフィンポリマーと接触させることによって作製され得、構成成分(A)、(B)、および任意の任意選択的な構成成分の混和物としてポリオレフィン組成物を得る。接触は、浸漬、吸収、または注入を含み得る。構成成分(B)と任意の任意選択的な構成成分(複数可)とを、独立して、配合、押出、吸収、注入、混練、または浸漬によって組み合わせてもよい。混合または接触は、約20°~100℃の温度で0.1~100時間、例えば60°~80℃で0.1~24時間実行してもよい。混合または接触により高い温度を使用してもよいが、ただし、(C)有機過酸化物により高い温度を施さないことが条件である。その後、必要に応じて、(C)有機過酸化物と混合または接触させる前に、混和物を過酸化物分解温度未満の温度に冷却してもよい。必要に応じて、ポリオレフィン組成物を貯蔵温度(例えば23℃)に冷却し、1時間、1週間、1か月、またはそれ以上の期間貯蔵してもよい。
【0040】
ポリオレフィン組成物は、一部構成型配合物、あるいは二部構成型配合物、あるいは三部構成型配合物などの多部構成型配合物として調製してもよい。構成成分の任意の組み合わせをこれらの配合物の一部または複数部分に含めることができない性質上の理由はない。
【0041】
構成成分(A)ポリオレフィンポリマー:高分子が炭素原子から基本的になるか、または炭素原子からなる骨格を有する、オレフィンモノマーと任意選択的な1つ以上のオレフィン官能性コモノマーとから作製された繰り返し単位で構成される架橋性高分子、または構成成分(B)と架橋する際にネットワーク構造を得るかかる架橋性高分子の集合体。(A)は、同じモノマーに由来する繰り返し単位を含有するホモポリマー、またはモノマーに由来する繰り返し単位と、モノマーとは異なるコモノマーに由来する繰り返し単位とを含有する、コポリマーとも称されるインターポリマーであってもよい。インターポリマーには、バイポリマー、ターポリマーなどが含まれる。いくつかの態様では、(A)はケイ素原子を含まない。
【0042】
(A)ポリオレフィンポリマーは、99~100重量%のエチレンモノマー単位を含有するポリエチレンホモポリマーであってもよい。ポリエチレンホモポリマーは、配位重合によって作製された高密度ポリエチレン(HDPE)ホモポリマー、またはラジカル重合によって作製された低密度ポリエチレン(LDPE)ホモポリマーであってもよい。
【0043】
あるいは、(A)ポリオレフィンポリマーは、50~<100重量%のエチレンモノマー単位、および50~0重量%の(C-C20)アルファ-オレフィン由来のコモノマー単位を含有するエチレン/アルファ-オレフィンコポリマーであってもよい。(A)エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーのエチレン/アルファ-オレフィンコポリマーの実施形態は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、または高密度ポリエチレン(HDPE)であってもよい。あるいは、ポリオレフィンポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)であってもよい。インターポリマーの全重量に基づいて、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、または少なくとも25重量%のα-オレフィン含有量を有するエチレン/アルファ-オレフィン(「α-オレフィン」)インターポリマー。これらのインターポリマーは、インターポリマー全重量に基づいて、50重量%未満、45重量%未満、40重量%未満、または35重量%未満のアルファ-オレフィン含有量を有し得る。例示的なエチレン/α-オレフィンインターポリマーは、20~1重量%のジエンコモノマー単位を含有するエチレン/プロピレン、エチレン/1-ブテン、エチレン/1-ヘキセン、エチレン/1-オクテン、エチレン/ジエン、50~100重量%のエチレンモノマー単位、49~>0重量%のプロピレンコモノマー単位、および20~1重量%のジエンコモノマー単位を含有するエチレン/プロピレン/1-オクテン、エチレン/プロピレン/1-ブテン、エチレン/1-ブテン/1-オクテン、エチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)である。エチレン/ジエンコポリマーまたはEPDM中のジエンコモノマー単位を作製するために使用されるジエンは、独立して、1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせであり得る。
【0044】
エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーの(C-C20)アルファ-オレフィン、および(A)ポリオレフィンポリマーのポリ((C-C20)アルファ-オレフィンポリマーの態様は、式(I):HC=C(H)-R(I)の化合物であり得、式中、Rが直鎖(C-C8)アルキル基である。(C-C18)アルキル基は、1~18個の炭素原子を有する一価の非置換飽和炭化水素である。Rの例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、およびオクタデシルである。いくつかの実施形態では、(C-C20)アルファ-オレフィンは、1-プロペン、1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテン、あるいは1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテン、あるいは1-ブテンまたは1-ヘキセン、あるいは、1-ブテンまたは1-オクテン、あるいは1-ヘキセンまたは1-オクテン、あるいは1-ブテン、あるいは1-ヘキセン、あるいは1-オクテン、あるいは1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンのうちの任意の2つの組み合わせである。あるいは、アルファ-オレフィンは、3-シクロヘキシル-1-プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサンなどのα-オレフィンをもたらす、シクロヘキサンまたはシクロペンタンなどの環式構造を有してもよい。(C-C20)アルファ-オレフィンは、エチレンモノマーとのコモノマーとして使用してもよい。
【0045】
あるいは、(A)ポリオレフィンポリマーは、アクリレート、メタクリレート、およびトリアルコキシシリルから選択される少なくとも1つのグラフト化官能基を有するポリオレフィンであってもよい。
【0046】
(A)ポリオレフィンポリマーは、前述のポリマーとコポリマーとのうちの2つ以上のブレンドまたは組み合わせであってもよい。
【0047】
(A)ポリオレフィンポリマーは、2つ以上の異なるポリオレフィンポリマーのブレンド、または2つ以上の異なる触媒との重合反応の反応器生成物であってもよい。(A)ポリオレフィンポリマーは、The Dow Chemical CompanyのELITE(商標)ポリマーなどの2つ以上の反応器で作製されてもよい。
【0048】
(A)ポリオレフィンポリマーは、その多くが当技術分野で周知である任意の好適なプロセスによって作製されてもよい。(A)を調製するために、ポリオレフィンポリマーを生成するための、任意の従来のまたは今後発見される生成プロセスを用いてもよい。典型的には、生成プロセスは、1つ以上の重合反応を含む。例えば、LDPEは、高圧重合プロセスを使用して調製してもよい。あるいは、LDPEは、チーグラ-ナッタ、酸化クロム、メタロセン、ポストメタロセン触媒などの1つ以上の重合触媒を使用して行われる配位重合プロセスを使用して調製してもよい。好適な温度は、0°~250℃、または30°~200℃である。好適な圧力は、大気圧(101kPa)~10,000気圧(およそ1,013メガパスカル(「MPa」))である。ほとんどの重合反応では、用いられる触媒対重合性オレフィン(モノマー/コモノマー)のモル比は、10-12:1~10-1:1、または10-9:1~10-5:1である。
【0049】
ポリオレフィン組成物中の(A)ポリオレフィンポリマーの量は、すべてポリオレフィン組成物の重量に基づいて、40~99.99重量%、あるいは55~99.00重量%、あるいは70~98重量%、あるいは80~97重量%であり得る。
【0050】
構成成分(B)式(I)の単環式オルガノシロキサン:交互配置に配置されたケイ素および酸素原子で構成される単環式部分構造、ならびに不飽和有機基、ならびに任意選択的にH、飽和または芳香族置換基を含有する分子であって、少なくとも2つの不飽和有機基があり、環の部分構造の少なくとも2つのケイ素原子の各々に、少なくとも1つの不飽和有機基が結合しており、不飽和有機基と酸素原子を構成した後、ケイ素原子の任意の残りの原子価が、H、飽和または芳香族置換基に結合している、分子、またはかかる分子の集合。構成成分(B)は、6員環(n=3)、8員環(n=4)、10員環(n=5)、または12員環(n=6)で構成される単環式オルガノシロキサンであり得る。環の部分構造は、式(I):[R,RSiO2/2(I)の単位で構成され、式中、下付き文字n、R、およびRは、先に定義されているとおりである。各[R,RSiO2/2]単位では、そのRおよびR基がそのケイ素原子に結合している。単位は、式(I)が[DR、R]nになるように、従来のオルガノシロキサンの略記法を使用して、単にDR、Rと示す場合がある。RとRとは、同じでもあるいは異なっていてもよい。
【0051】
(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンのいくつかの態様では、Rはビニルであり、Rはエチルであり、(B)はDVi,Etであり、式中、Viがビニルであり、Etがエチルであるか、あるいはRはアリルであり、Rはエチルであり、(B)はDAllyl,Etであるか、あるいはRはブテニル(HC=C(H)CHCH-)であり、Rはエチルであり、(B)はDButenyl,Etである。いくつかの態様では、Rはビニルであり、Rはビニルであり、(B)はDVi,Viであるか、あるいはRはアリルであり、Rはアリルであり、(B)はDAllyl,Allylであるか、あるいはRはブテニル(HC=C(H)CHCH-)であり、Rはブテニルであり、(B)はDButenyl,Butenylである。いくつかの態様では、Rはビニルであり、Rはフェニルであり、(B)はDVi,Phであり、式中Phがフェニルであるか、あるいはRはアリルであり、Rはフェニルであり、(B)はDAllyl,Phであるか、あるいはRはブテニル(HC=C(H)CHCH-)であり、Rはフェニルであり、(B)はDButenyl,Phである。Rがメチル(CH)のとき、式(I)が[DR]nになるように、単位をより単純にDRと示す場合がある。いくつかの態様では、Rはビニルであり、Rはメチルであり、(B)はDViであるか、あるいはRはアリルであり、Rはメチルであり、(B)はDAllylであるか、あるいはRはブテニル(HC=C(H)CHCH-)であり、Rはメチルであり、(B)はDButenylである。いくつかの実施形態では、(B)は、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニル-シクロトリシロキサン、「(DVi)3」(CAS番号3901-77-7)、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニル-シクロテトラシロキサン、「(DVi)4」(CAS番号2554-06-5)、またはそれらの組み合わせである。
【0052】
(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンのいくつかの態様では、各Rは、独立して、HC=C(Ra)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、Raおよび下付き文字mが、先に定義されているとおりである。いくつかの態様では、RaはHであるか、あるいはRaはメチルである。いくつかの態様では、下付き文字mは、1、2、または3であるか、あるいはmは2、3、または4であるか、あるいはmは2または3であるか、あるいはmは1であるか、あるいはmは2であるか、あるいはmは3であるか、あるいはmは4である。いくつかの態様では、各Rは、独立して、(C-C)アルキルまたは(C-C)アルケニルであるか、あるいは各Rは独立して(C-C)アルキルであるか、あるいは各Rは独立してメチルである。
【0053】
ポリオレフィン組成物中の構成成分(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンの量は、すべてポリオレフィン組成物の重量に基づいて、0.01~50重量%、あるいは0.1~25重量%、あるいは1.00~20重量%、あるいは1.05~15重量%、あるいは0.01~5重量%、あるいは0.05~4.0重量%、あるいは0.1~3重量%、あるいは0.10~2.0重量%、あるいは0.20~1.0重量%であり得る。
【0054】
ポリオレフィン組成物中の構成成分(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンの量は、架橋有効量であり得る。「架橋有効量」という用語は、状況下で(B)に由来する多価架橋剤基を介して、ポリオレフィン高分子を架橋させることが可能になるのに十分な量(上述の重量%)を意味する。状況には、(B)の充填レベル(重量%)、(C)有機過酸化物の充填レベル(重量%)が含まれ得る。(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンの架橋有効量は、(C)有機過酸化物の特定の充填レベル(重量%)で、(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンを含まない比較組成物よりも高い程度の架橋を得る。状況はまた、存在する場合、ポリオレフィン組成物中に存在する、(E)酸化防止剤、(F)充填剤、および/または(G)難燃剤などの、任意の任意選択的な添加剤の総量にも依存し得る。ポリオレフィン組成物の特定の実施形態の架橋有効量を決定するために、ポリオレフィン組成物中の(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンの量は、最初は架橋有効量未満でもよい。その後、(B)の量は、状況下での架橋効果量に達するまで、増分(例えば、各増加で倍にする)で増加する。
【0055】
ポリオレフィン組成物中の構成成分(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンの架橋有効量は、すべて充填剤を含まないポリオレフィン組成物の重量に基づいて、0.01~50重量%、あるいは0.1~25重量%、あるいは1.00~20重量%、あるいは1.05~15重量%、あるいは0.01~5重量%、あるいは0.050~4.0重量%、あるいは0.10~2.0重量%、あるいは0.20~1.0重量%であり得る。ポリオレフィン組成物中の構成成分(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンの架橋有効量は、上述の状況に応じて変動し得る。例えば、(B)の架橋有効量は、(F)充填剤を含まないポリオレフィン組成物の実施形態よりも、(F)充填剤を含有するポリオレフィン組成物の実施形態で高くてもよい。
【0056】
構成成分(B)の架橋有効量の決定に関して、架橋の存在は、ムービングダイレオメーター(MDR)を使用するトルクの増加によって検出することができる。いくつかの態様では、架橋の存在は、溶媒抽出の割合(Ext%)として検出することができる。Ext%=W1/Wo*100%、式中、W1が抽出後の重量であり、Woが抽出前の元の重量であり、/は除算を示し、*が乗算を示す。((A)ポリオレフィンポリマーとのカップリングに起因する)架橋ポリオレフィン生成物中の(B)の不飽和有機基(例えばR)の炭素-炭素二重結合の不在または低減されたレベルは、炭素-13またはケイ素-29核磁気共鳴(13C-NMR分光法および/または29Si-NMR)分光法によって検出してもよい。
【0057】
構成成分(C)有機過酸化物:炭素原子、水素原子、および2つ以上の酸素原子を含有し、少なくとも1つの-O-O-基を有するが、ただし、2つ以上の-O-O-基があるとき、各-O-O-基は、1つ以上の炭素原子を介して、別の-O-O-基に間接的に結合していることを条件とする、分子、またはかかる分子の集合。硬化のために、(C)有機過酸化物をポリオレフィン組成物に添加して、構成成分(A)、(B)、および(C)を含むポリオレフィン組成物を(C)有機過酸化物の分解温度以上の温度に加熱することを含んでもよい。(C)有機過酸化物は、式RO-O-O-ROのモノペルオキシドであってもよく、式中、各ROが、独立して(C-C20)アルキル基、または(C-C20)アリール基である。各(C-C20)アルキル基は独立して非置換であるか、または1もしくは2個の(C-C12)アリール基で置換されている。各(C-C20)アリール基は、非置換であるか、または1~4個の(C-C10)アルキル基で置換されている。あるいは、(C)は、式RO-O-O-R-O-O-ROのジペルオキシドであってもよく、式中、Rが、(C-C10)アルキレン、(C-C10)シクロアルキレン、またはフェニレンなどの二価炭化水素基であり、各ROが上に定義されているとおりである。(C)有機過酸化物は、ビス(1,1-ジメチルエチル)過酸化物、ビス(1,1-ジメチルプロピル)ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキシン、4,4-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)吉草酸、ブチルエステル、1,1-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、過酸化ベンゾイル、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、ジ-tert-アミルペルオキシド(「DTAP」)、ビス(アルファ-t-ブチル-ペルオキシイソプロピル)ベンゼン(「BIPB」)、イソプロピルクミルt-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3,1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルクミルクミルペルオキシド、4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)吉草酸ブチル、またはジ(イソプロピルクミル)ペルオキシド、またはジクミルペルオキシドであってもよい。(C)有機過酸化物は、ジクミルペルオキシドであってもよい。いくつかの態様では、2つ以上の(C)有機過酸化物のブレンドのみ、例えば、t-ブチルクミルペルオキシドとビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンとの20:80(重量/重量)ブレンド(例えば、Arkemaより市販のLUPEROX D446B)が使用される。いくつかの態様では、少なくとも1つの、あるいは各(C)有機過酸化物は、1つの-O-O-基を含有する。(C)有機過酸化物は、ポリオレフィン組成物の0.01~4.5重量%、あるいは0.05~2重量%、あるいは0.10~2.0重量%、あるいは0.2~0.8重量%であってもよい。
【0058】
任意選択的な構成成分(D)従来の助剤:骨格または環の部分構造、それに結合した1つ、あるいは2つ以上のプロペニル、アクリレート、ならびに/もしくはビニル基を含有する分子であって、部分構造が炭素原子および任意選択的に窒素原子で構成される、分子、またはかかる分子の集合体。(D)従来の助剤は、シリコン原子を含まない。(D)従来の助剤は、制限(i)~(v):(i)(D)が、2-アリルフェニルアリルエーテル、4-イソプロペニル-2,6-ジメチルフェニルアリルエーテル、2,6-ジメチル-4-アリルフェニルアリルエーテル、2-メトキシ-4-アリルフェニルアリルエーテル、2,2’-ジアリルビスフェノールA、O,O’-ジアリルビスフェノールA、またはテトラメチルジアリルビスフェノールAである、(ii)(D)が、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンまたは1,3-ジイソプロペニルベンゼンである、(iii)(D)が、トリアリルイソシアヌレート(「TAIC」)、トリアリルシアヌレート(「TAC」)、トリアリルトリメリテート(「TATM」)、N,N,N′,N′,N″,N″-ヘキサアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン(「HATATA」、N,N,N,N,N,N-ヘキサアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンとしても知られている)、オルトギ酸トリアリル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、クエン酸トリアリル、またはアコニチン酸トリアリルである、(iv)(D)が、(i)のプロペニル官能性助剤のうちのいずれか2つの混合物である、のうちのいずれか1つによってさらに説明されるとおりの、プロペニル官能性の従来の助剤であってもよい。あるいは、(D)は、トリメチロールプロパントリアクリレート(「TMPTA」)、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート(「TMPTMA」)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、およびプロポキシ化グリセリルトリアクリレートから選択されるアクリレート官能性の従来の助剤であってもよい。あるいは、(D)は、少なくとも50重量%の1,2-ビニル含有量を有するポリブタジエンおよびトリビニルシクロヘキサン(「TVCH」)から選択されるビニル官能性の従来の助剤であってもよい。あるいは、(D)は、米国特許第US5,346,961号または同第US4,018,852号に記載の従来の助剤であってもよい。あるいは、(D)は、前述の従来の助剤のうちの組み合わせまたは任意の2つ以上であり得る。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、(D)を含まない。存在する場合、(D)従来の助剤は、ポリオレフィン組成物の0.01~4.5重量%、あるいは0.05~2重量%、あるいは0.1~1重量%、あるいは0.2~0.5重量%であってもよい。
【0059】
任意選択的な構成成分(E)酸化防止剤:酸化を阻害する有機分子、またはかかる集合体。(E)酸化防止剤は、ポリオレフィン組成物および/または架橋ポリオレフィン生成物に酸化防止特性を提供するように機能する。好適な(E)の例は、ビス(4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル)アミン(例えば、NAUGARD445)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)(例えば、VANOX MBPC)、2,2’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール(CAS番号90-66-4、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾールとしても知られている)、CAS番号96-69-5、市販のLOWINOX TBM-6)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール(CAS番号90-66-4、市販のLOWINOX TBP-6)、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4、6-トリオン(例えば、CYANOX1790)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(例えば、IRGANOX1010、CAS番号6683-19-8)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸2,2’-チオジエタンジイルエステル(例えば、IRGANOX1035、CAS番号41484-35-9)、ジステアリルチオジプロピオネート(「DSTDP」)、ジラウリルチオジプロピオネート(例えば、IRGANOX PS800)、ステアリル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、IRGANOX1076)、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェニル(IRGANOX1726)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(例えば、IRGANOX1520)、および2’,3-ビス[[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]pプロピオニル]]プロピオノヒドラジド(IRGANOX1024)である。いくつかの態様では、(E)は、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)としても知られている、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、ジステアリルチオジプロピオネート、またはジラウリルチオジプロピオネート、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせである。組み合わせは、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンとジステアリルチオジプロピオネートであってもよい。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、(E)を含まない。存在する場合、(E)酸化防止剤は、ポリオレフィン組成物の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%であってもよい。
【0060】
任意選択的な構成成分(F)充填剤:ホスト材料の空間を占め、任意選択的にホスト材料の機能に影響を与える、微細に分割された微粒子の固体またはゲル。(F)充填剤は、焼成粘土、有機粘土、またはCabot CorporationからのCAB-O-SILの商品名で市販されているものなどの疎水化ヒュームドシリカであってもよい。(F)充填剤は、難燃効果を有し得る。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、(F)を含まない。存在する場合、(F)充填剤は、ポリオレフィン組成物の1~40重量%、あるいは2~30重量%、あるいは5~20重量%であってもよい。
【0061】
(F)充填剤に関しては、いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、15重量%以上含有しないか、あるいは10重量%以上含有しない。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は、Alを含有する固体、Caを含有する固体、Mgを含有する固体、Siを含有する固体、Tiを含有する固体、およびそれらの混合物からなる群から選択される任意の無機充填剤を、20重量%以上含有しないか、あるいは15重量%以上を含有しないか、あるいは10重量%以上を含有しないか、あるいは含まない。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は、シルセスキオキサン、あるいは構成成分(B)以外の任意のシロキサンを含まない。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物は、シルセスキオキサン、および上述の無機充填剤の群のうちのいずれも含まない。疑義を避けるために明記すると、「無機充填剤」という用語は、カーボンブラックを含まない。
【0062】
任意選択的な構成成分(G)難燃剤:燃焼を阻害する分子もしくは物質、またはかかる分子の集合体。(G)は、ハロゲン化化合物またはハロゲンを含まない化合物であってもよい。(G)ハロゲン化(G)難燃剤の例は、有機塩化物および有機臭化物であり、有機塩化物の例は、クロレン酸誘導体および塩素化パラフィンである。有機臭化物の例は、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエタン、臭素化ポリスチレン、臭素化カーボネートオリゴマー、臭素化エポキシオリゴマー、テトラブロモフタル酸無水物、テトラブロモビスフェノールAおよびヘキサブロモシクロドデカンなどのポリマー性臭素化化合物である。典型的には、ハロゲン化(G)難燃剤は、効率を向上するために相乗剤と組み合わせて使用される。相乗剤は、三酸化アンチモンであってもよい。ハロゲンを含まない(G)難燃剤の例は、無機鉱物、有機窒素膨張性化合物、およびリン系膨張性化合物である。無機鉱物の例は、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムである。リン系膨張性化合物の例は、有機ホスホン酸、ホスホネート、ホスフィネート、ホスホナイト、ホスフィナイト、ホスフィンオキシド、ホスフィン、ホスファイト、リン酸塩、窒化塩化リン三量体、アミドリン酸エステル、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、メラミン、ならびにメラミンポリホスフェート、メラミンピロホスフェートおよびメラミンシアヌレートを含むそれらのメラミン誘導体、ならびにこれらの材料のうちの2つ以上の混合物である。例には、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニルエチレンリン酸水素、フェニルビス-3,5,5’リン酸トリメチルヘキシル)、エチルジフェニルホスフェート、2エチルヘキシルジ(p-トリル)ホスフェート、ジフェニルリン酸水素、ビス(2-エチル-ヘキシル)パラ-トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)-フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、フェニルメチルリン酸水素、ジ(ドデシル)p-トリルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2-クロロエチルジフェニルホスフェート、p-トリルビス(2,5,5’-トリメチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、およびジフェニルリン酸水素が含まれる。米国特許第6,404,971号に記載のリン酸エステルの種類は、リン系難燃剤の例である。追加の例には、ビスフェノールAジホスフェート(BAPP)(Adeka Palmarole)および/またはレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(Fyroflex RDP)(Supresta、ICI)などの液体ホスフェート、ポリリン酸アンモニウム(APP)、ピペラジンピロホスフェート、およびピペラジンポリホスフェートなどの固体リンが含まれる。ポリリン酸アンモニウムは、メラミン誘導体などの難燃性共添加剤と共によく使用される。Melafine(DSM)(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン、微粉砕メラミン)も有用である。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、(G)を含まない。存在する場合、(G)は、ポリオレフィン組成物の0.01~70重量%、あるいは0.05~40重量%、あるいは1~20重量%の濃度であってもよい。
【0063】
任意選択的な構成成分(H)ヒンダードアミン安定剤:少なくとも1つの立体的にかさ高い有機基に結合し、劣化または分解の阻害剤として機能する塩基性窒素原子を含有する分子、またはかかる分子の集合体。(H)は、立体障害のあるアミノ官能基を有し、酸化的劣化を阻害し、(C)有機過酸化物を含有するポリオレフィン組成物の実施形態の保存期間を増加することもできる化合物である。好適な(H)の例は、ブタン二酸ジメチルエステル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-エタノール(CAS番号65447-77-0、市販のLOWILITE62)を含むポリマー、およびN,N′-ビスホルミル-N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ヘキサメチレンジアミン(CAS番号124172-53-8、市販のUvinul4050H)である。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、(H)を含まない。存在する場合、(H)ヒンダードアミン安定剤は、ポリオレフィン組成物の、0.001~1.5重量%、あるいは0.002~1.2重量%、あるいは0.002~1.0重量%、あるいは0.005~0.5重量%、あるいは0.01~0.2重量%、あるいは0.05~0.1重量%であってもよい。
【0064】
任意選択的な構成成分(I)トリー遅延剤:水および/または電気トリーイングを阻害する分子、またはかかる分子の集合体。トリー遅延剤は、水トリー遅延剤または電気トリー遅延剤であってもよい。水トリー遅延剤は、電界と湿気または水分との複合効果にさらされるとポリオレフィンを劣化させるプロセスである、水トリーイングを阻害する化合物である。電圧安定剤とも呼ばれる電気トリー遅延剤は、部分的な放電に起因する固体電気絶縁における電気的前駆破壊プロセスである、電気トリーイングを阻害する化合物である。電気トリーイングは、水がない場合に発生し得る。水トリーイングおよび電気トリーイングは、コーティングがポリオレフィンを含有するコーティングされた導体を収容する電気ケーブルにとって問題である。(I)は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)であってもよい。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、(I)を含まない。存在する場合、(I)トリー遅延剤は、ポリオレフィン組成物の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%であってもよい。
【0065】
任意選択的な成分(J)メチルラジカル捕捉剤:メチルラジカルと反応する分子、またはかかる分子の集合体。(J)は、ポリオレフィン組成物または架橋ポリオレフィン生成物中のメチルラジカルと反応する。(J)は、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニル-N-オキシル、または1,1-ジアリールエチレンの「TEMPO」誘導体であり得る。TEMPO誘導体の例としては、4-アクリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニル-N-オキシル(CAS番号21270-85-9、「アクリレートTEMPO」)、4-アリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニル-N-オキシル(CAS番号217496-13-4、「アリルTEMPO」)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニル-N-オキシル)セバケート(CAS番号2516-92-9、「ビスTEMPO」))、N,N-ビス(アクリロイル-4-アミノ)-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニル-N-オキシル(CAS番号1692896-32-4、「ジアクリルアミドTEMPO」)、およびN-アクリロイル-4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニル-N-オキシル(CAS番号21270-88-2、「モノアクリルアミドTEMPO」)である。1,1-ジアリールエチレンの例は、1,1-ジフェニルエチレンおよびアルファ-メチルスチレンである。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、(J)を含まない。存在する場合、(J)メチルラジカル捕捉剤は、ポリオレフィン組成物の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%であってもよい。
【0066】
任意選択的な構成成分(K)スコーチ遅延剤:早期硬化を阻害する分子、またはかかる分子の集合体。スコーチ遅延剤の例は、ヒンダードフェノール、セミ-ヒンダードフェノール、TEMPO、TEMPO誘導体、1,1-ジフェニルエチレン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン(アルファ-メチルスチレンダイマーまたはAMSDとしても知られている)、および米国特許第US6277925B1号、第2欄第62行~第3欄第46行に記載のアリル含有化合物である。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、(K)を含まない。存在する場合、(K)スコーチ遅延剤は、ポリオレフィン組成物の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%であってもよい。
【0067】
任意選択的な構成成分(L)核剤:ポリオレフィンポリマーの結晶化速度を向上する有機または無機添加剤。(L)の例は、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、超高分子量ポリエチレン、フタル酸水素カリウム、安息香酸化合物、安息香酸ナトリウム化合物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸二ナトリウム、モノグリセリン酸亜鉛、および1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、カルシウム塩:ステアリン酸亜鉛である。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、(L)を含まない。存在する場合、(L)は、ポリオレフィン組成物の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%の濃度であってもよい。
【0068】
任意選択的な構成成分(M)カーボンブラック:高いが活性炭のものよりも低い表面積対体積比を有する、微細に分割された形態の準結晶炭素。(M)の例は、ファーネスカーボンブラック、アセチレンカーボンブラック、伝導性カーボン(例えば、カーボンファイバ、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、および膨張グラファイト小板)である。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、(M)を含まない。存在する場合、(M)は、ポリオレフィン組成物の0.01~40重量%、あるいは0.05~35重量%、あるいは0.1~20重量%、あるいは0.5~10重量%、あるいは1~5重量%であってもよい。
【0069】
加えて、ポリオレフィン組成物は、独立して、0.001~50重量%、あるいは0.05~30重量%、あるいは0.1~20重量%、あるいは0.5~10重量%、あるいは1~5重量%の、キャリア樹脂、潤滑剤、加工助剤、スリップ剤、可塑剤、界面活性剤、増量オイル、酸捕捉剤、金属不活性化剤から選択される1つ以上の任意選択的な添加剤の各々をさらに含み得る。例えば、増量オイルは、ポリオレフィン組成物の50重量%ほど高くてもよい。いくつかの態様では、ポリオレフィン組成物および架橋ポリオレフィン生成物は、直前の添加剤のうちのいずれも含まない。
【0070】
ポリオレフィン組成物の前述の構成成分は、その中の環式シロキサンの開環触媒として機能するとは考えられていない。しかしながら、ポリオレフィン組成物の前述の構成成分のうちのいずれか1つ以上が、環式シロキサンの開環触媒(複数可)として機能することが予想外に見出される場合、かかる構成成分(複数可)は、ポリオレフィン組成物から除外されるであろう。
【0071】
架橋ポリオレフィン生成物:ポリオレフィン組成物の硬化(架橋)中に形成されるC-C結合架橋を含有する、ネットワーク状のポリオレフィン樹脂を含有する反応生成物。ネットワーク状のポリオレフィン樹脂は、(A)ポリオレフィンポリマーの高分子と(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンの分子とのカップリングの反応生成物を含んで、(A)ポリオレフィンポリマーの2つ以上の高分子と(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンの分子の1つ以上のR基との反応を介した、(A)ポリオレフィンポリマーからの2つ以上の高分子に結合している多価単環式オルガノシロキサン架橋剤基を含有する、ネットワーク構造を得ることができる。いくつかの態様では、1つのRの同じ炭素-炭素二重結合全体に(A)の2つの高分子を付加してもよい。例えば、2つ以上のRがビニルであり、ゼロ、1つ以上のRがビニルであるとき、架橋ポリオレフィン生成物のネットワーク構造は、式(II)[-CHCH(R)SiO2/2](II)の2つ以上の多価単環式オルガノシロキサン架橋剤基と、[-CHCH(R)SiO2/2](II)および/または式(III)[CHC(-)(H),(R)SiO2/2](III)、および存在する場合、n-2もしくはより少ない(例えばn-3)式(I)の未反応単位と、を含有し得、式中、下付き文字nが式(I)について定義されているとおりであり、「-」が多価のうちの1つを示す。式(I)の各Rが独立してH、(C-C)アルキル、またはフェニルであるとき、式(II)および(III)の各Rは独立してH、(C-C)アルキル、またはフェニルである。
【0072】
架橋ポリオレフィン生成物はまた、(C)有機過酸化物の反応のアルコールとケトンとの副生成物などの、硬化副生成物を含有し得る。ポリオレフィン組成物が、(E)酸化防止剤などの任意の任意選択的な添加剤または構成成分のうちの1つ以上をさらに含有するとき、架橋ポリオレフィン生成物はまた、(E)などの任意選択的な添加剤または構成成分のうちのいずれか1つ以上、またはポリオレフィン組成物の硬化中にポリオレフィン組成物から形成される1つ以上の反応生成物を含有し得る。架橋ポリオレフィン生成物は、分割固体形態または連続形態であり得る。分割固体形態は、顆粒、ペレット、粉末、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせを含み得る。連続形態は、成形部品(例えば、射出成形部品)または押出成形部品(例えば、コーティングされた導体またはケーブル)であってもよい。
【0073】
架橋ポリオレフィン生成物は、開環触媒および/またはシロキサンポリマー分子((B)の開環重合によって調製されたシリコーン)を含まなくてもよい。
【0074】
コーティングされた導体。コーティングされた導体は、絶縁された導電体であってもよい。絶縁された導電体は、低電圧(「LV」、>0~<5キロボルト(kV))、中電圧(「MV」、5~<69kV)、高電圧(「HV」、69~230kV)、または超高電圧(「EHV」、>230kV)のデータ伝送および送電/配電用途に使用するための電力ケーブルを含む、コーティングされた金属ワイヤまたは電気ケーブルであり得る。「ワイヤ」は、例えば銅またはアルミニウムなどの伝導性金属などの伝導性材料の単一の撚り線またはフィラメントを意味する。「ケーブル」と「電力ケーブル」は同義語であり、シース、ジャケット(保護外側ジャケット)、またはコーティングと称され得る、被覆内に配置された少なくとも1つのワイヤを含む絶縁された導電体を意味する。絶縁された電導体は、中電圧、高電圧、または超高電圧用途に使用するために設計および構成され得る。好適なケーブル設計の例は、米国特許第US5,246,783号、米国特許第US6,496,629号、および米国特許第US6,714,707号に示されている。
【0075】
絶縁された導電体は、外部環境から導体/伝送コアを保護および絶縁するために、導体/伝送コアおよびその周囲に配置された外側単層被覆または外側多層被覆を含有し得る。導体/伝送コアは、1つ以上の金属ワイヤで構成されてもよい。導体/伝送コアが2つ以上の金属ワイヤを収容するとき、金属ワイヤは個別のワイヤ束に細分されてもよい。導体/伝送コア内の各ワイヤは、束ねられているか束ねられていないかに関わらず、絶縁層で個々にコーティングされてもよく、および/または個別の束を絶縁層でコーティングしてもよい。単層被覆または多層被覆(例えば、単層または多層被覆もしくはシース)は、主に、日光、水、熱、酸素、他の伝導性材料(例えば、短絡防止のため)、および/または他の腐食性物質(例えば、化学ガス)などの外部環境から導体/伝送コアを保護または絶縁するように機能する。
【0076】
ある絶縁された導電体から次の絶縁された導電体への単層または多層被覆は、それぞれの意図された用途に応じて異なって構成されてもよい。例えば、断面で見ると、絶縁された導電体の多層被覆は、その最内層からその最外層まで次の構成要素:内側半導体層、架橋ポリオレフィン生成物(本発明の架橋生成物)を含む架橋ポリオレフィン絶縁層、外側半導体層、金属シールド、および保護シースの順番で構成され得る。層およびシースは、円周方向および同軸方向(長手方向)に連続している。金属シールド(接地)は、同軸方向に連続しており、円周方向には連続(層)または不連続(テープまたはワイヤ)のいずれかである。意図する用途に応じて、絶縁光ファイバ用の多層被覆は、半導体層および/または金属シールドを省略してもよい。外側半導体層は、存在する場合、架橋ポリオレフィン層から結合または剥離可能な過酸化物架橋半導体生成物で構成されていてもよい。
【0077】
いくつかの態様では、コーティングされた導体を作製する方法であって、導体/伝送コア上にポリオレフィン組成物の層を含むコーティングを押し出して、コーティングされたコアを得ることと、ポリオレフィン組成物を硬化するための好適なCV条件で構成された連続加硫(CV)装置にコーティングされたコアを通してコーティングされた導体を得ることと、を含む、方法である。CV条件には、温度、雰囲気(例えば、窒素ガス)、およびCV装置を通るライン速度または通過期間が含まれる。好適なCV条件では、CV装置を出るコーティングされた導体を得ることができ、コーティングされた導体が、架橋ポリオレフィン層の層を硬化することによって形成された架橋ポリオレフィン層を含有する。
【0078】
導電する方法。本発明の導電する方法は、絶縁された導電体の実施形態を含む本発明のコーティングされた導体を使用することができる。また、絶縁された導電体を含む本発明のコーティングされた導体を使用して、データを伝送する方法も考慮される。
【0079】
密度は、ASTM D792-13、変位によるプラスチックの密度および比重(相対密度)のための標準試験方法の方法B(水以外の液体中、例えば液体2-プロパノール中の固体プラスチックを試験するための)に従って測定される。結果は、立方センチメートル当たりのグラム単位(g/cmまたはg/cc)で報告する。
【0080】
メルトインデックス(I)は、以前「条件E」として知られ、またIとしても知られている、190℃/2.16キログラム(kg)の条件を使用する、ASTM D1238-04(190℃、2.16kg)、押出プラトメーターによる熱可塑性樹脂のメルトフローレートの標準試験方法に従って測定する。結果は、10分当たりの溶出したグラム単位(g/10分)、または1.0分当たりのデシグラム(dg/1分)当量で報告する。10.0dg=1.00g。
【0081】
移行測定試験方法。移行添加剤は、5グラム(g)のペレットを未使用の透明な防漏ポリエチレンバッグに入れ、ペレットを5回プレスして、バッグに印(オイル跡)がつくのを確認することで観察され得る。印が観察される場合は「はい」を記録し、印が観察されない場合は「いいえ」を記録する。
【0082】
スコーチ時間試験方法。試料「X」のスコーチ時間またはスコーチまでの時間(ts1)は、140℃でMDRによって測定し、ts1@140℃と略する。スコーチ時間は、ISO6502に従って、Alpha TechnologiesレオメーターMDR2000Eで次のように測定する。5~6gの試験材料(ペレット)をMDR200E機器に入れる。トルクは、140℃で0(開始)~120分までの時間と相関する、1分当たり100サイクル(cpm)での0.5弧度の振動変形を測定し、時間に対するトルク曲線をプロットする。ts1は、トルク曲線の最小値からのトルクにおける、試験開始(0分)からの1デシニュートンメートル(dNm)のトルクの増加の観察に要する時間の長さである。ts1@140℃を使用して、融解加工プロセス(例えば融解配合または押出)中のスコーチ耐性を特徴評価する。
【0083】
T90架橋時間試験方法:ASTM D5289-12、ロータレス加硫計を使用したゴム特性加硫の標準試験方法。次の手順を使用して、試験試料のトルクを測定する。180℃のムービングダイレオメーター(MDR)機器MDR2000(Alpha Technologies)で、試験試料を20分間加熱しながら、100cpmで0.5弧度の振動変形のトルクの変化を監視する。測定された最低トルク値を、デシニュートンメートル(dN-m)で表される「ML」として示す。硬化または架橋が進行すると、測定されるトルク値が増加し、最終的に最大トルク値に達する。最大または最高の測定トルク値を、dN-mで表される「MH」として示す。すべての他のものが等しい場合、MHトルク値が高いほど、架橋の程度が高い。MHとMLとの差(MH-ML)の90%、すなわちMLからMHに至るまでの道程のうちの90%に等しいトルク値を達成するのに必要な分の数として、T90架橋時間を決定する。T90架橋時間が短いほど、すなわち、トルク値がMLからMHに至るまでの道程のうちの90%になるのが早いほど、試験試料の硬化速度が速い。逆に、T90架橋時間が長いほど、すなわち、トルク値がMLからMHに至るまでの道程のうちの90%を取得するのにかかる時間が長いほど、試験試料の硬化速度は遅い。
【0084】
次のデータは、ケーブルの絶縁層を形成するために(例えば、CV装置内で)押し出され架橋されたときに本発明の組成物がどのように機能するかを予測するものである。
【実施例
【0085】
LDPE(A1):LDPE(A2)を0.12重量%の酸化防止剤(E1)、0.24重量%の酸化防止剤(E2)、および50百万分率(重量)のヒンダードアミン安定剤(H1)((A2)、(E1)、(E2)、および(H1)の説明については以下参照)と配合することによって、0.92g/cmの密度、2g/10分のメルトインデックス(I2)を有する低密度ポリエチレン(LDPE)を調製する。
【0086】
LDPE(A2):高圧反応器で作製した低密度ポリエチレン(LDPE)生成物であって、炭素原子1,000個当たり平均0.3を超える炭素-炭素二重結合、0.92g/cmの密度、2g/10分のメルトインデックス(I2)(190℃、2.16kg)を有し、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan,USA)より入手される。LDPE(A2)は、Introduction to Polymer Chemistry,Stille,Wiley and Sons,New York,1962、149~151頁に記載の種類の管状高圧反応器およびプロセスで作製される。プロセスは、フリーラジカルで開始され、170~310メガパスカル(MPa、すなわち平方インチ当たり25,000~45,000ポンド(psi))の圧力、および200~350℃の温度で行われる。
【0087】
LDPE(A3):120℃のBrabender単軸押出機によって、既知の量のLDPE(A2)をLDPE(A1)にブレンドして低密度ポリエチレン(LDPE)を調製し、0.06重量%の酸化防止剤(E1)、0.09重量%の酸化防止剤(E2)、および19ppmのヒンダードアミン安定剤(H1)の充填量を有し、2.0g/cmの密度、および0.92g/10分のメルトインデックス(I2)を有するLDPE(A3)を得る。
【0088】
単環式オルガノシロキサン(B1):2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニル-シクロトリシロキサン、「(DVi)3」(CAS番号3901-77-7)、Gelestより入手。
【0089】
単環式オルガノシロキサン(B2):2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニル-シクロテトラシロキサン、「(DVi)4」(CAS番号2554-06-5)、The Dow Chemical Companyより入手。
【0090】
単環式オルガノシロキサン(B3):2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10-ペンタビニル-シクロペンタシロキサン、「(DVi)5」(CAS番号17704-22-2)、Gelestより入手。
【0091】
有機過酸化物(C):過酸化ジクミル(「DCP」)、Fangruidaより入手。
【0092】
従来の助剤(D1):トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、Fangruida,People’s Republic of Chinaより入手。
【0093】
酸化防止剤(E1):Cytec Industries Inc.より入手可能なCyanox1790。
【0094】
酸化防止剤(E2):Reagens,Inc.より入手可能なDSTDP
【0095】
ヒンダードアミン安定剤(H1):BASFよりUvinul4050。
【0096】
オクタビニル多面体オリゴマーシルセスキオキサン(OV-POSS):500mLの三口フラスコに、無水メタノール(200mL)、脱イオン水(9mL)、および濃塩酸(36重量%、2mL)を添加した。得られた最初の混合物を40℃で約10分間撹拌した。次いで、最初の混合物に、メタノール(50mL)中のビニルトリメトキシシラン(20mL、HC=C(H)Si(OCH)の溶液を4時間にわたり滴加した。ビニルトリメトキシシラン溶液の添加が完了した後、メタノールの追加部分(30mL)を一度にすべて添加した。得られた組み合わせた混合物を40℃で5日間撹拌した。OV-POSSの沈殿物が形成され、ろ過した。得られた濾過ケーキを最小量のテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液にエタノールを添加してOV-POSSを再沈殿させた。再沈殿させたOV-POSSを濾過し、減圧下で乾燥させて、1g(11%収率)のOV-POSSを白色固体として得た。
【0097】
ホスファゼン塩基(「P4-t-Bu」):Sigma-Aldrichから入手した、ヘキサン中の1-tert-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-25,45-カテナジ(ホスファゼン)の0.4モル溶液。
【0098】
比較例1および2(CE1およびCE2):別々の実験で、1分当たり40回転(rpm)のBrabender密閉式ミキサで、5分間120℃でOV-POSSをLDPE(A3)の融解物に添加して、中間組成物を得る。次いで、120℃で2分間中間組成物をプレスし、プラークを形成する。プラークをペレットに切り、ペレットを80℃の有機過酸化物(C1)で6時間浸漬して、CE1およびCE2を得る。表1および3を参照されたい。
【0099】
比較例3および4(CE3およびCE4):別々の実験で、1分当たり50回転(rpm)のHAAKE密閉式混合物中に、5分間120℃でLDPE(A2)を融解させる。次いで、単環式オルガノシロキサン(B3)およびホスファゼン塩基P4-t-Bu(異なる量)を添加し、得られた組み合わせを30秒混合する。次いで、有機過酸化物(C1)を添加し、得られた組み合わせを30秒間混合して、中間組成物を得る。中間組成物を10メガパスカル(MPa)の圧力で、30秒間120℃でプレスして、プラークとしてCE3およびC4をそれぞれ得る。表1および3を参照されたい。
【0100】
比較例5および6:LDPE(A3)ペレットを80℃の有機過酸化物(C1)に6時間浸漬して、組成物CE5およびCE6を得る。表1および3を参照されたい。
【0101】
【表1】
【0102】
発明例1~6(IE1~IE6):別々の実験で、LDPE(A3)または(A2)のペレットを、単環式オルガノシロキサン(B1)、(B2)、または(B3)、および任意選択的にトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、および有機過酸化物(C1)に80℃のオーブンで6時間浸漬して、ペレット形態の本発明の組成物IE1~IE6を得る。表2および4を参照されたい。
【0103】
【表2】
【0104】
T90架橋時間試験方法、スコーチ時間試験方法、および移行測定試験方法のうちの1つ以上に従って、CE1~CE6、およびIE1~IE6の組成物のペレットの試験試料を特徴評価する。表3および4を参照されたい。
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
同じ硬化レベルを達成する、CE1のデータとCE5のデータとを比較することによって示されるように、(分での)CE1の値よりもCE5の値の140℃でのより短いスコーチ時間ts1によって示されるように、OV-POSSは、スコーチ耐性を損なわせる。同じ硬化レベルを達成する、CE6のデータとIE1のデータとを比較することによって示されるように、(分での)CE6の値よりもIE1の値の140℃でのより長いスコーチ時間ts1によって示されるように、(B)単環式オルガノシロキサンは、スコーチ耐性を改善する。他の助剤トリアリルイソシアヌレートの存在時での、CE2のデータとCE5のデータとを比較することによって示されるように、OV-POSSは、(分での)CE2の値よりもCE5の値の140℃での同等のスコーチ時間ts1によって示されるスコーチ耐性を損なわない。他の助剤トリアリルイソシアヌレートの存在時での、CE6のデータとIE4のデータとを比較することによって示されるように、(B)単環式オルガノシロキサンは、(分での)CE6の値よりもIE4の値の140℃でのより長いスコーチ時間ts1によって示されるスコーチ耐性をさらに改善する。CE3およびCE4のデータとIE6のデータとを比較することによって示されるように、CE3およびCE4のホスファゼン塩基(P4-t-Bu)は架橋に寄与せず、実際に180℃での最高トルクMHによって示されるように架橋レベルを害する(減少させる)。CE3およびCE4の値は、IE6の180℃での最高トルクMHの値よりも、顕著に低下する。架橋レベルに対するホスファゼン塩基の有害な影響は、ホスファゼン塩基の濃度が増加するにつれて次第に大きくなる(CE3対CE4)。
【0108】
「請求項」および「複数の請求項」をそれぞれ「態様」または「複数の態様」で置き換えることを除いて、以下の特許請求の範囲を番号付き態様として本明細書に組み込む。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
(A)総重量パーセントが100.00重量%である、50~100重量パーセント(重量%)のエチレンモノマー単位、50~0重量%の(C-C20)アルファ-オレフィン由来のコモノマー単位、および20~0重量%のジエンコモノマー単位を含む、低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーである、ポリオレフィンポリマーと、
架橋有効量の(B)式(I):[R,RSiO2/2(I)の単環式オルガノシロキサンであって、式中、下付き文字nが3以上の整数であり、各Rが、独立して、(C-C)アルケニルまたはHC=C(Ra)-C(=O)-O-(CH-であり、R1aが、Hまたはメチルであり、下付き文字mが1から4の整数であり、各Rが、独立して、H、(C-C)アルキル、フェニル、またはRである、(B)と、
(C)有機過酸化物と、を含むが、ただし、
ポリオレフィン組成物が、ホスファゼン塩基を含まない(すなわち、欠いている)ことが条件である、
ポリオレフィン組成物。
項2.
(A)総重量パーセントが100.00重量%である、50~100重量パーセント(重量%)のエチレンモノマー単位、50~0重量%の(C-C20)アルファ-オレフィン由来のコモノマー単位、および20~0重量%のジエンコモノマー単位を含む、低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーである、ポリオレフィンポリマーと、
(B)式(I):[R,RSiO2/2(I)の単環式オルガノシロキサンであって、式中、下付き文字nが3以上の整数であり、各Rが、独立して、(C-C)アルケニルまたはHC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、R1aが、Hまたはメチルであり、下付き文字mが1から4の整数であり、各Rが、独立して、H、(C-C)アルキル、フェニル、またはRである、(B)と、
(C)有機過酸化物と、を含むが、ただし、
前記ポリオレフィン組成物は、ホスファゼン塩基を含まないことを条件とし、
下付き文字nが4のとき、(A)ポリオレフィン組成物が、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、24重量%以上含有しないことが条件である、
ポリオレフィン組成物。
項3.
下付き文字nが3であり、前記(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンが、制限(i)~(x)のうちのいずれか1つによって説明される、項1または2に記載のポリオレフィン組成物。
(i)各Rが独立して(C-C)アルケニルであり、各Rが独立してH、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、
(ii)各Rがビニルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(iii)各Rがビニルであり、各Rがメチルである、
(iv)各Rがアリルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(v)各Rがアリルであり、各Rがメチルである、
(vi)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHまたはメチルであり、下付き文字mが1~4の整数であり、各Rが独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、
(vii)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(viii)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがメチルであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(ix)前記ポリオレフィン組成物が、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、24重量%以上含有しない、ならびに
(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のうちのいずれか1つとの組み合わせである。
項4.
下付き文字nが4であり、前記(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンが、制限(i)~(x)のうちのいずれか1つによって説明される、項1または2に記載のポリオレフィン組成物。
(i)各Rが独立して(C-C)アルケニルであり、各Rが独立してH、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、
(ii)各Rがビニルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(iii)各Rがビニルであり、各Rがメチルである、
(iv)各Rがアリルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(v)各Rがアリルであり、各Rがメチルである、
(vi)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHまたはメチルであり、下付き文字mが1~4の整数であり、各Rが独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、
(vii)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(viii)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがメチルであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(ix)前記ポリオレフィン組成物が、任意の無機充填剤を、24重量%以上含有しない、ならびに
(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のうちのいずれか1つとの組み合わせである。
項5.
下付き文字nが5または6であり、前記(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンが、制限(i)~(x)のうちのいずれか1つによって説明される、項1または2に記載のポリオレフィン組成物。
(i)各Rが独立して(C-C)アルケニルであり、各Rが独立してH、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、
(ii)各Rがビニルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(iii)各Rがビニルであり、各Rがメチルである、
(iv)各Rがアリルであり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(v)各Rがアリルであり、各Rがメチルである、
(vi)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHまたはメチルであり、下付き文字mが1~4の整数であり、各Rが独立して、H、(C-C)アルキル、または(C-C)アルケニルである、
(vii)各Rが独立して、HC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがHであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(viii)各Rが独立して、HC=C(Ra)-C(=O)-O-(CH-であり、式中、R1aがメチルであり、下付き文字mが3であり、各Rが独立して(C-C)アルキルである、
(ix)前記ポリオレフィン組成物が、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、二酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤を、24重量%以上含有しない、ならびに
(x)制限(ix)と制限(i)~(viii)のうちのいずれか1つとの組み合わせである。
項6.
制限(i)~(vii)のいずれか1つによって説明される、項1~5のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物。
(i)前記(A)2-プロパノール中、ASTM D792-13の方法Bで測定する場合、ポリオレフィンポリマーが、立方センチメートル当たり0.86~0.97グラム(g/cm)の密度を特徴とする、
(ii)前記(A)ポリオレフィンポリマーが、前記ポリオレフィン組成物の重量の80~99.89重量パーセント(重量%)である、
(iii)前記(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンが、前記ポリオレフィン組成物の0.1~3重量%であり、前記(C)有機過酸化物が、前記ポリオレフィン組成物の0.01~4.5重量%である、
(iv)(i)と(ii)の両方である、
(v)(i)と(iii)の両方である、
(vi)(ii)と(iii)の両方である、および
(vii)(i)、(ii)、および(iii)の各々である。
項7.
(D)従来の助剤、(E)酸化防止剤、(F)充填剤、(G)難燃剤、(H)ヒンダードアミン安定剤、(I)トリー遅延剤、(J)メチルラジカル捕捉剤、(K)スコーチ遅延剤、(L)核剤、および(M)カーボンブラックからなる群から選択される、少なくとも1つの添加剤をさらに含むが、ただし、
前記少なくとも1つの添加剤の総量が、前記ポリオレフィン組成物の、>0~70重量%であることが条件であり、
前記(F)充填剤が、任意の省略された充填剤を含まないことが条件である、
項1~6のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物。
項8.
ポリオレフィン組成物を作製する方法であって、(A)ポリオレフィンポリマーと(B)式(I):[R,RSiO2/2(I)の単環式オルガノシロキサンとを一緒に混合して、項1~6のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物を作製することを含む、方法。
項9.
項1~7のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物をフリーラジカル硬化して、架橋ポリオレフィン生成物を作製する方法であって、前記(A)ポリオレフィンポリマーを前記(B)式(I)の単環式オルガノシロキサンと反応させるような方式で、前記(C)有機過酸化物を含む前記ポリオレフィン組成物を硬化有効温度で加熱し、それにより架橋ポリオレフィン生成物を作製することを含む、方法。
項10.
項9に記載の硬化する方法によって作製された、架橋ポリオレフィン生成物。
項11.
項1~8のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物、または項10に記載の架橋ポリオレフィン生成物の成形形態を含む、製造物品。
項12.
伝導性コアと、前記伝導性コアを少なくとも部分的に被覆する絶縁層とを含むコーティングされた導体であって、前記絶縁層の少なくとも一部分が、項1~7のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物、または項10に記載の架橋ポリオレフィン生成物を含む、コーティングされた導体。
項13.
送電する方法であって、項12に記載のコーティングされた導体の伝導性コア全体に電圧を印加して、前記伝導性コアを通る電気の流れを発生させることを含む、方法。