(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】リチウム-硫黄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20220502BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220502BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220502BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20220502BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20220502BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20220502BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20220502BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20220502BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M50/449
H01M50/414
H01M50/42
H01M10/058
H01M50/403 D
(21)【出願番号】P 2019568206
(86)(22)【出願日】2018-05-04
(86)【国際出願番号】 KR2018005189
(87)【国際公開番号】W WO2018236046
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2019-12-10
(31)【優先権主張番号】10-2017-0077983
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0051030
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】キヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・キョン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミ・ジン
(72)【発明者】
【氏名】チャンフン・イ
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0303516(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103490027(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0315545(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105140447(CN,A)
【文献】H. Chen et al.,In-situ activated polycation as a multifunctional additive for Li-S batteries,Nano Energy,2016年,Vol.26,pp.43-49
【文献】C. Chang et al.,Ultra-lightweight PANiNF/MWCNT-functionalized separators with synergistic suppression of polysulfide migration for Li-S batteries with pure sulfur cathodes,Journal of Materials Chemistry A,2015年,Vol.3,pp.18829-18834
【文献】G. Ma et al.,Enhanced performance of lithium sulfur battery with self-assembly polypyrrole nanotube film as the functional interlayer,Journal of Power Sources,2015年,Vol.273,pp.511-516
【文献】H. Chen et al.,In-situ activated polycation as a multifunctional additive for Li-S batteries,Nano Energy,2016年,Vol.26,pp.43-49
【文献】C. Chang et al.,Ultra-lightweight PANiNF/MWCNT-functionalized separators with synergistic suppression of polysulfide migration for Li-S batteries with pure sulfur cathodes,Journal of Materials Chemistry A,2015年,Vol.3,pp.18829-18834
【文献】G. Ma et al.,Enhanced performance of lithium sulfur battery with self-assembly polypyrrole nanotube film as the functional interlayer,Journal of Power Sources,2015年,Vol.273,pp.511-516
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00-4/62
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄-炭素複合体を含む正極;
前記正極と対向して配置される負極;及び
前記正極と負極の間に介在される分離膜を含むリチウム-硫黄電池であって、
前記分離膜は、分離膜本体;及び前記分離膜本体の少なくとも一面に形成されたリチウムポリスルフィド吸着層を含み、
前記吸着層は、ニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物を含み、
前記ラジカル化合物は、分子内のニトロキシルラジカル官能基を有するポリマーであり、
前記ポリマーは、ポリ(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ-4-イル(メタ)アクリレート
)、ポリ(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ-4-イルビニルエーテル
)、ポリ(2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル-3-イルエチレンオキシド
)、ポリ[2,3-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-オキシパーボニル)-5-ノボラン]及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種以上であることを特徴とするリチウム-硫黄電池。
【請求項2】
前記ポリマーは、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、無水物、スチレン、エポキシ、イソシアネート及びビニル基で構成された群から選択されたいずれか一つの官能基を含む単量体から重合されたことを特徴とする請求項1に記載のリチウム-硫黄電池。
【請求項3】
前記ポリマーは、ポリ(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ-4-イルメタクリレート
)であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム-硫黄電池。
【請求項4】
前記ニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物の含量は、吸着層総重量の80重量%以上である請求項1から3の何れか一項に記載のリチウム-硫黄電池。
【請求項5】
前記吸着層の厚さは0.1ないし10μmである請求項1から4の何れか一項に記載のリチウム-硫黄電池。
【請求項6】
前記吸着層は伝導性高分子をさらに含むことを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のリチウム-硫黄電池。
【請求項7】
前記伝導性高分子は、ポリアニリン(Polyaniline)、ポリピロール(Polypyrrole)、ポリチオフェン(Polythiopene)、ポリアズレン(Polyazulene)、ポリピリジン(Polypyridine)、ポリインドル(Polyindole)、ポリカルバゾール(Polycarbazole)、ポリアジン(Polyazine)、ポリキノン(Polyquinone)、ポリアセチレン(Polyacetylene)、ポリセレノフェン(Polyselenophene)、ポリテルロフェン(Polytellurophene)、ポリパラフェニレン(Poly-p-phenylene)、ポリフェニレンビニレン(Polyphenylenevinylene)、ポリフェニレンスルフィド(Polyphenylenesulfide)、ポリエチレンジオキシチオフェン(Polyethylenedioxythiophene)、ポリエチレングリコール(Polyethyleneglycol)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種以上の請求項6に記載のリチウム-硫黄電池。
【請求項8】
請求項1に記載のリチウム-硫黄電池の製造方法において、
前記分離膜は、
i)分離膜本体を準備する段階;
ii)ニトロキシルラジカル部位を有するラジカル化合物を溶媒に混合して溶液を製造する段階;
iii)前記溶液を分離膜本体の少なくとも一面にコーティングする段階;及び
iv)前記コーティングされた分離膜を乾燥してリチウムポリスルフィド吸着層を形成する段階;
を含んで製造されることを特徴とするリチウム-硫黄電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年06月20日付韓国特許出願第10-2017-0077983号及び2018年05月03日付韓国特許出願第10-2018-0051030号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されているすべての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、ニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物を含む吸着層が形成されたリチウム-硫黄電池に係り、より詳しくは、分離膜の少なくとも一面にニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物を含むコーティング層を適用してリチウムポリスルフィドの拡散が抑制されたリチウム-硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電子製品、電子機器、通信機器などの小型軽量化が急速に進められていて、環境問題と関わって電気自動車の必要性が大きく台頭されることにより、これらの製品の動力源で使用される二次電池の性能改善に対する要求も増加する実情である。その中で、リチウム二次電池は高エネルギー密度及び高い標準電極電位のため高性能電池として相当な脚光を浴びている。
【0004】
特に、リチウム-硫黄(Li-S)電池は、S-S結合(Sulfur-sulfurbond)を有する硫黄系物質を正極活物質で使用し、リチウム金属を負極活物質で使用する二次電池である。正極活物質の主材料である硫黄は資源がとても豊かで、毒性がなく、低い原子の重さを有している長所がある。また、リチウム-硫黄電池の理論放電容量は1675mAh/g-硫黄で、理論エネルギー密度が2,600Wh/kgであって、現在研究されている他の電池システムの理論エネルギー密度(Ni-MH電池:450Wh/kg、Li-FeS電池:480Wh/kg、Li-MnO2電池:1,000Wh/kg、Na-S電池:800Wh/kg)に比べてとても高いため、現在まで開発されている電池の中で最も有望な電池である。
【0005】
リチウム-硫黄電池の放電反応中、負極(Anode)ではリチウムの酸化反応が発生し、正極(Cathode)では硫黄の還元反応が発生する。放電前の硫黄は環状のS8構造を有しているが、還元反応(放電)時にS-S結合が切れながらSの酸化数が減少し、酸化反応(充電)時にS-S結合が再び形成され、Sの酸化数が増加する酸化-還元反応を利用して電気エネルギーを貯蔵及び生成する。このような反応の中で、硫黄は環状S8で還元反応によって線形構造のリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide、Li2SX、x=8、6、4、2)に変換され、結局、このようなリチウムポリスルフィドが完全に還元されると、最終的にリチウムスルフィド(Lithium sulfide、Li2S)が生成される。各々のリチウムポリスルフィドに還元される過程によって、リチウム-硫黄電池の放電挙動はリチウムイオン電池とは違って段階的に放電電圧を示すのが特徴である。
【0006】
Li2S8、Li2S6、Li2S4、Li2S2などのリチウムポリスルフィドの中で、特に硫黄の酸化数が高いリチウムポリスルフィド(Li2SX、通常は、x>4)は親水性の電解液に溶けやすい。電解液に溶け込んだリチウムポリスルフィドは、濃度差によってリチウムポリスルフィドが生成された正極から遠い方へ拡散して行く。このように正極から溶出されたリチウムポリスルフィドは、正極反応領域の外に流失され、リチウムスルフィド(Li2S)への段階的還元が不可能である。すなわち、正極と負極を脱して溶解された状態で存在するリチウムポリスルフィドは、電池の充・放電反応に参加できなくなるので、正極で電気化学反応に参加する硫黄物質の量が減少し、結局リチウム-硫黄電池の充電容量減少及びエネルギー減少を起こす主な要因となる。
【0007】
さらに、負極へと拡散したリチウムポリスルフィドは、電解液中に浮遊または沈澱されること以外にも、リチウムと直接反応して負極表面にLi2S形態で固着されるので、リチウム金属の負極を腐食させる問題を発生させる。
【0008】
このようなリチウムポリスルフィドの溶出を最小化するために、多様な炭素構造に硫黄粒子を満たす複合体を形成する正極複合体のモルフォロジー(Morphology)を変形する研究が進められているが、このような方法は製造方法が複雑で、根本的な問題を解決できない実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0146844号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Hongwei Chena、Changhong Wanga、Yafei Daib、Jun Gea、Wei Lua and Liwei Chen、In-situactivated polycation as a multifunctional additive for Li-S batteries.Nano Energy.2016.26.43-49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したように、リチウム-硫黄電池は、正極から溶出されて拡散するリチウムポリスルフィドによって電池の容量及び寿命特性が低下する問題点がある。ここで、本発明者らは多様な研究を行った結果、安定した自由ラジカル分子であるニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物がリチウムポリスルフィドを吸着することに効果があることを確認して本発明を完成した。
【0012】
よって、本発明の目的は前記ポリスルフィド吸着層を含む分離膜を提供することで、電池の容量及び寿命特性を向上させることである。
【0013】
本発明のまた別の目的は、前記ポリスルフィド吸着層を含む分離膜の製造方法を提供することである。
【0014】
本発明のまた別の目的は、前記分離膜を含むリチウム-硫黄電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、
硫黄-炭素複合体を含む正極;
前記正極と対向して配置される負極;及び
前記正極と負極の間に介在される分離膜を含むリチウム-硫黄電池であって、
前記分離膜は、分離膜本体;及び前記分離膜本体の少なくとも一面に形成されたリチウムポリスルフィド吸着層を含み、
前記吸着層は、ニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物を含むことを特徴とするリチウム-硫黄電池を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記リチウム-硫黄電池の製造方法において、
前記分離膜は、i)分離膜本体を準備する段階;ii)ニトロキシルラジカル部位を有するラジカル化合物を溶媒に混合して溶液を製造する段階;iii)前記溶液を分離膜本体の少なくとも一面にコーティングする段階;及びiv)前記コーティングされた分離膜を乾燥してリチウムポリスルフィド吸着層を形成する段階;を含んで製造されることを特徴とするリチウム-硫黄電池の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるリチウム-硫黄電池は、正極から溶出されるリチウムポリスルフィドをニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物が吸着して、リチウムポリスルフィドの溶出及び拡散を防止することで電池の容量及び寿命特性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】リチウムスルフィドの吸着層を有する分離膜を含むリチウム-硫黄電池の断面図である。
【
図2】ニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物であるポリ(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ-4-イルメタアクリレート(PTMA)がコーティングされた分離膜の走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
【
図3】PTMAがコーティングされていない分離膜の走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
【
図4】本発明の実施例1及び比較例1による比放電容量(Specific discharging capacity)及びクーロン効率(Coulombic Efficiency)の電池寿命特性の効果を示すグラフである。
【
図5】リチウム-硫黄電池の10サイクル後の放電容量を示すグラフである。
【
図6】リチウム-硫黄電池の30サイクル後の放電容量を示すグラフである。
【
図7】リチウム-硫黄電池の60サイクル後の放電容量を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施例1及び比較例2による比放電容量(Specific discharging capacity)及びクーロン効率(Coulombic Efficiency)の電池寿命特性の効果を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施例1及び比較例3による比放電容量(Specific discharging capacity)及びクーロン効率(Coulombic Efficiency)の電池寿命特性の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施例を添付の例示図面に基づいて詳しく説明する。このような図面は本発明を説明するための一具現例であって、幾つか異なる形態で具現されてもよく、本明細書に限定されない。
【0020】
リチウム-硫黄電池用分離膜
本発明は、リチウムポリスルフィドの拡散を防止して電池の容量と寿命を向上させるために、分離膜本体の少なくとも一面にニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物を含むリチウムポリスルフィド吸着層及びこれを含むリチウム-硫黄電池用分離膜を提供する。前記分離膜本体の少なくとも一面とは、電極を組み立てる時に正極と対向する面を必ず含む一面または両面である。
【0021】
また、ニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物は、分離膜表面または内部に位置することができ、リチウム-硫黄電池の正極で生成されるリチウムポリスルフィドの拡散を防止するために、好ましくは正極と対向する分離膜の表面に位置することができる。
【0022】
図1は、本発明によるリチウム-硫黄電池を示す断面図である。
図1に図示されたように、リチウム-硫黄電池は、正極200、負極300を具備し、これらの間に電解質400及び分離膜100が介在された構造を有し、特に、本発明は分離膜本体110と吸着層120が順に積層された分離膜100を提供する。この時、吸着層120は
図1に示すように、分離膜本体110の一側面に形成されてもよく、必要な場合に両側面に形成可能である。
【0023】
前記分離膜本体110は、本発明では特にその材質を限定せず、電極を物理的に分離し、電解質及びイオン透過能を有するものであって、通常の分離膜で使用されるものであれば、特に制限されずに使用可能であるが、多孔性で非伝導性または絶縁性の物質であって、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液の含湿能に優れるものが好ましい。
【0024】
具体的には、前記分離膜本体110では、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独で、またはこれらを積層して使用してもよく、または通常的な多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなった不織布を使用してもよいが、これに限定されることではない。
【0025】
前記吸着層120に含まれるニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物は、下記化学式1の官能基を有する構造を意味する。
【0026】
【0027】
前記化学式1において、R1及びR2はそれぞれ脂肪族、芳香族、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基またはこれらの組み合わせであってもよく、接するものが結合しあって環を形成することができ、前記R1及びR2は異なっても同一でもよい。
【0028】
また、本発明で提供するラジカル化合物は、分子内のニトロキシルラジカル官能基を有するポリマーであってもよい。
【0029】
この時、ポリマーは、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、無水物、スチレン、エポキシ、イソシアネート及びビニル基で構成された群から選択されるいずれか一つの官能基を含む単量体から重合されたものであってもよい。
【0030】
前記ポリマーは、ポリ(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ-4-イル(メタ)アクリレート(PT(M)A)、ポリ(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ-4-イルビニルエーテル(PTVE)、ポリ(TEMPO-置換ノボラン)(PTN)、ポリ(2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル-3-イルエチレンオキシド(PTEO)、ポリ[2,3-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-オキシパーボニル)-5-ノボラン](PTNB)、ポリ(テトラメチルピペリジノキシ)アクリルアミド(PTAm)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種以上であってもよい。この時、前記TEMPOは、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル化合物を意味する。
【0031】
また、前記ニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物は、ポリマーとしてそれ自体も吸着層を形成することができるため、本発明でニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物の含量は、吸着層総重量の80重量%以上であってもよい。
【0032】
下記化学式2は、本発明で提供する分子内のニトロキシルラジカル官能基を含み、重合反応によって形成されたポリマーの一種であるPTMAを示す。
【0033】
【0034】
前記PTMAの単量体の形態はTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-イル)オキシル)化合物で、ポリマーバックボーン(backbone)に付着されてPTMAを形成することができる。
【0035】
本発明で示すラジカル化合物であるPTMAは、窒素から酸素に電子の非偏在化現象によって比較的に安定した化合物であって、下記化学式3を通じてPTMAの安定性を説明することができる。
【0036】
【0037】
前記化学式3をよく見ると、(B)状態で電子を奪われたPTMAは、(C)状態の活性化された陽イオン(activatedcation)に変わるし、(C)状態でのPTMAが下記化学式4のようにポリスルフィド(下記化学式4で
【0038】
【0039】
)を吸着する機能をする。
【0040】
【0041】
また、本発明では高分子であるPTMAを使用するが、このようなPTMAは分子量が高いため電解液に溶解されず、分離膜にコーティングして使うことができる長所がある。
【0042】
また、本発明の吸着層120は、リチウム-硫黄電池にさらに電気伝導性を与えるために、上述したニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物とともに伝導性物質を含むことができる。リチウム-硫黄電池の正極活物質である硫黄は、それ自体では伝導性を有しないので、導電性炭素系物質と複合化して硫黄-炭素複合体の正極200で製造するのが一般的である。本発明の吸着層120は伝導性物質を含み、正極反応サイト以外にもさらなる硫黄物質の還元反応サイトを提供することができる。
【0043】
より具体的には、吸着層120は伝導性物質の多孔性構造によって、硫黄の還元段階の中間生成物であるリチウムポリスルフィド(Lithiumpolysulfide、Li2Sx、x=8、6、4、2)20を吸着して拡散を抑制することができる。また、吸着層120の導電性物質が前記吸着されたリチウムポリスルフィド20の還元反応サイトをさらに提供して電極の効率を高めることができる。
【0044】
本発明による吸着層120に含まれる前記伝導性物質は、炭素系導電材、伝導性高分子及びこれらの組み合わせからなる群から選択するものであってもよい。
【0045】
前記炭素系導電材は、その種類は制限されないが、天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹黒鉛、グラフェン(Graphene)、スーパー-P(Super-P)、スーパー-C(Super-C)のような黒鉛(Graphite)系、活性炭(Activecarbon)系、チャンネルブラック(Channel black)、デンカブラック(Denka black)、ファーネスブラック(Furnace black)、サーマルブラック(Thermal black)、コンタクトブラック(Contact black)、ランプブラック(Lamp black)、アセチレンブラック(Acetylene black)のようなカーボンブラック(Carbon black)系;炭素繊維(Carbon fiber)系、炭素ナノチューブ(Carbon nano tube:CNT)、フラーレン(Fullerene)のような炭素ナノ構造体及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を含んでもよく、好ましくはスーパー-Pを使用してもよい。
【0046】
前記伝導性高分子はその種類が制限されないが、ポリアニリン(Polyaniline)、ポリピロール(Polypyrrole)、ポリチオフェン(Polythiopene)、ポリアズレン(Polyazulene)、ポリピリジン(Polypyridine)、ポリインドル(Polyindole)、ポリカルバゾール(Polycarbazole)、ポリアジン(Polyazine)、ポリキノン(Polyquinone)、ポリアセチレン(Polyacetylene)、ポリセレノフェン(Polyselenophene)、ポリテルロフェン(Polytellurophene)、ポリパラフェニレン(Poly-p-phenylene)、ポリフェニレンビニレン(Polyphenylenevinylene)、ポリフェニレンスルフィド(Polyphenylenesulfide)、ポリエチレンジオキシチオフェン(Polyethylenedioxythiophene)、ポリエチレングリコール(Polyethyleneglycol)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を含んでもよい。
【0047】
上述したリチウムポリスルフィドの拡散防止効果と、リチウムポリスルフィドの還元反応サイトを提供するための伝導性付与効果のために、ニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物と伝導性物質の重量比は3:1~7:1範囲内で調節可能である。もし、前記範囲よりニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物を過量使用する場合は、抵抗層で作用して電池性能低下の問題が発生し、逆に伝導性物質を過量使用する場合は、相対的にニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物の含量が減少するので、ラジカル化合物による効果を確保しがたい問題が発生するので、前記範囲で適切に使用することが好ましい。
【0048】
このような吸着層120は、前記効果を確保するために分離膜本体110上に0.1~10μm、好ましくは0.1~5μmの厚さで形成することができる。もし、その厚さが前記範囲未満であれば、リチウムポリスルフィドの吸着効果が微々たるものであり、これと逆に、前記範囲を超える場合は、リチウムイオン伝導性が低下して電極性能に問題が発生するので、前記範囲内で適切に使用することが好ましい。
【0049】
また、本発明の硫黄-炭素複合体を含む正極;前記正極と対向して配置される負極;及び前記正極と負極の間に介在される分離膜を含むリチウム-硫黄電池であって、前記分離膜の一部にテトラメチルピペリジンN-オキシルを含むリチウム-硫黄電池を提供する。この時、分離膜に含まれたテトラメチルピペリジンN-オキシルは、電池の放電及び充電の間に電解質に溶解されることがある。
【0050】
リチウム-硫黄電池用分離膜の製造方法
本発明によるリチウム-硫黄電池の分離膜は、i)分離膜本体を準備する段階;ii)ニトロキシルラジカル部位を有するラジカル化合物を溶媒に混合して溶液を製造する段階;iii)前記溶液を分離膜本体の少なくとも一面にコーティングする段階;及びiv)前記コーティングされた分離膜を乾燥してリチウムポリスルフィド吸着層を形成する段階を含むことを特徴として製造されてもよい。
【0051】
先ず、分離膜本体110を準備する。分離膜本体110は、本発明で特に限定せず、前述した分離膜本体のいずれか一つを選択することができ、直接製造したり市販の分離膜を購入して使用することが可能である。
【0052】
次に、ニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物を所定の溶媒に分散させてラジカル化合物溶液を製造する。前記溶媒ではラジカル化合物を均一に分散させることができ、蒸発されやすくて容易に乾燥するものを使うことが好ましく、具体的には、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコールなどを挙げることができるし、好ましくはNMPを使うことができる。また、前記ラジカル化合物溶液を製造するための混合は、通常の混合器、例えば、ペーストミキサー、高速せん断ミキサー、ホモミキサーなどを利用して通常の方法で撹拌することができる。
【0053】
次に、前記製造された溶液を分離膜本体110の一面にコーティングする。ここで分離膜本体110の一面とは、追って電極を組み立てる時、正極200と対向して組み立てられる分離膜本体110の一面である。この時、前記スラリーをコーティングする方法で、例えば、ドクターブレードコーティング(Doctor blade coating)、ディップコーティング(Dip coating)、グラビアコーティング(Gravure coating)、スリットダイコーティング(Slit die coating)、スピンコーティング(Spin coating)、コンマコーティング(Comma coating)、バーコーティング(Bar coating)、リバースロールコーティング(Reverse roll coating)、スクリーンコーティング(Screen coating)、キャップコーティング(Cap coating)方法などを行って製造することができる。
【0054】
次に、前記コーティングされた分離膜を乾燥して吸着層120を形成する。前記乾燥工程は、分離膜にコーティングされた吸着層120内の溶媒及び水気を取り除く過程で、使用した溶媒によって乾燥温度及び時間が変わることがあり、一般に50~200℃の真空オーブンで48時間以内で乾燥することが好ましい。
【0055】
また、吸着層120は本発明によるニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物がポリマーとしてそれ自体でも吸着層を形成することができるので、前記ラジカル化合物の含量は吸着層総重量の80重量%以上であってもよい。
【0056】
リチウム-硫黄電池
本発明では、硫黄-炭素複合体を含む正極;前記正極と対向して配置される負極;及び前記正極と負極の間に介在される分離膜を含むリチウム-硫黄電池であって、前記分離膜は、分離膜本体;及び前記分離膜本体の少なくとも一面に形成されたリチウムポリスルフィド吸着層を含み、前記吸着層はニトロキシルラジカル官能基を有するラジカル化合物を含むことを特徴とするリチウム-硫黄電池を提供する。
【0057】
本発明で示す分離膜100は、好ましくはリチウム-硫黄電池の分離膜で適用可能であり、
図1に示したように、分離膜100は正極200及び負極300の間に介在され、この時、吸着層120が一面のみにコーティングされる場合、好ましくはリチウムポリスルフィドの拡散を防止するために吸着層120が正極200と対向するように配置して組み立てるようにする。
【0058】
前記正極200は正極活物質として硫黄元素(Elemental sulfur、S8)、硫黄系化合物またはこれらの混合物を含んでもよく、これらは硫黄物質単独では電気伝導性がないため導電材と複合して適用する。前記硫黄系化合物は、具体的に、Li2Sn(n≧1)、有機硫黄化合物または炭素-硫黄ポリマー((C2Sx)n:x=2.5~50、n≧2)などであってもよい。
【0059】
リチウム-硫黄電池の正極で寿命特性が良いSPAN(sulfurized poly-acrylonitrile)正極を使用してもよいが、SPAN正極の場合、平均作動電圧が1.7Vで、平均作動電圧2.1Vの硫黄-炭素複合体正極に比べてエネルギー密度が低く、SPAN正極の場合、硫黄の含有量も硫黄-炭素複合体の正極に比べて40%近く小さいので、本発明でリチウム-硫黄電池の正極は硫黄-炭素複合体の正極で限定する。
【0060】
前記導電材は多孔性であってもよい。よって、前記導電材としては多孔性及び導電性を有するものであれば制限されずに使用することができ、例えば、多孔性を有する炭素系物質を使用することができる。このような炭素系物質としては、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、活性炭、炭素繊維、炭素ナノチューブ(CNT)などを使うことができる。また、金属メッシュなどの金属性繊維;銅、銀、ニッケル、アルミニウムなどの金属性粉末;またはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料も使用することができる。前記導電性材料は、単独または混合して使用することができる。
【0061】
前記負極300は、負極活物質としてリチウムイオン(Li+)を可逆的に吸蔵(Intercalation)または放出(Deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を使用することができる。前記リチウムイオン(Li+)を可逆的に吸蔵または放出できる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。前記リチウムイオン(Li+)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、チタンナイトレートまたはシリコンであってもよい。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金であってもよい。
【0062】
また、リチウム-硫黄電池を充・放電する過程において、正極活物質で使用される硫黄が非活性物質に変化されてリチウム負極表面に付着することがある。このように、非活性硫黄(Inactive sulfur)は硫黄が様々な電気化学的または化学的反応を経て正極の電気化学反応にそれ以上参加できない状態の硫黄を意味し、リチウム負極の表面に形成された非活性硫黄は、リチウム負極の保護膜(Protective layer)として役目をする長所もある。
【0063】
前記正極200、負極300及び分離膜100に含浸されている電解質400はリチウム塩を含む非水系電解質であってリチウム塩と電解液で構成され、それ以外にも有機固体電解質及び無機固体電解質などが使用されてもよい。
【0064】
本発明のリチウム塩は、非水系有機溶媒に溶解されやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiB(Ph)4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiSO3CH3、LiSO3CF3、LiSCN、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiNO3、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、イミドからなる群から一つ以上が含まれてもよい。
【0065】
前記リチウム塩の濃度は、電解質混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解された塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウムバッテリー分野に公知された別の要因のような多くの要因によって、0.2~4M、具体的に0.3~2M、さらに具体的に0.3~1.5Mであってもよい。0.2M未満で使えば電解質の伝導度が低くなって電解質の性能が低下することがあるし、4Mを超えて使えば電解質の粘度が増加してリチウムイオン(Li+)の移動性が減少することがある。
【0066】
前記非水系有機溶媒はリチウム塩をよく溶解しなければならず、本発明の非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキセン、ジエチルエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用されてもよく、前記有機溶媒は一つまたは2つ以上の有機溶媒の混合物であってもよい。
【0067】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(Agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用されてもよい。
【0068】
本発明の無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用されてもよい。
【0069】
本発明の電解質には、充・放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を与えるために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませてもよく、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含ませてもよく、フルオロエチレンカーボネート(FEC:Fluoro-ethylene carbonate)、プロペンスルトン(PRS:Propene sultone)、フルオロプロピレンカーボネート(FPC:Fluoro-propylene carbonate)などをさらに含ませることがある。
【0070】
また、本発明によるリチウム-硫黄電池は、リチウム-硫黄電池分野で通常使用する添加剤を含むものであってもよく、好ましくはビニレンカーボネート(VC)またはエチレンカーボネート(EC)であってもよい。
【0071】
上述した正極200と負極300を所定の大きさで切り取った正極板と負極板の間に前記正極板と負極板に対応する所定の大きさで切り取った分離膜100を介在させた後で積層することで、スタック型電極組立体を製造することができる。
【0072】
また、正極200と負極300が分離膜100シートを間に置いて対向するよう、2つ以上の正極板及び負極板を分離膜シート上に配列したり、または前記2つ以上の正極板及び負極板が分離膜を間に置いて積層されているユニットセル2つ以上を分離膜シート上に配列し、前記分離膜シートを捲取したり、電極板またはユニットセルの大きさで分離膜シートを折り曲げることでスタックアンドフォールディング型電極組立体を製造することができる。
【0073】
前記リチウム-硫黄電池を含む電池パックは、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)、電力貯蔵装置の電源で使用してもよい。
【0074】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は幾つか異なる別の形態で変形されてもよく、本発明の範囲が以下で説明する実施例に限定されるもので解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的知識を有する者に本発明をもっと完璧に説明するために提供されるものである。
【0075】
実施例
製造例.分離膜製造
PTMAをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶かしてPTMA 1wt%溶液を製造した。
【0076】
20μmのポリプロピレン分離膜の上に前記溶液をバーコターを利用して塗布した後、真空乾燥過程を経って0.5μmのPTMAがコーティングされた分離膜を製造した。
【0077】
実施例1.リチウム-硫黄電池の製造
炭素及び硫黄を9:1の重量比で混合して製造された正極活物質70重量%、導電材のデンカブラック(Denkablack)20重量%及びバインダーとしてSBR/CMC(重量比1:1)10重量%組成の正極合剤をD.I waterに添加して正極スラリーを製造した後、アルミニウム集電体にコーティングして正極を製造した。ただし、バインダーでSBRはスチレンブタジエンゴムで、CMCはカルボキシメチルセルロースである。
【0078】
負極として150μmの厚さを有するリチウムホイルを使用した。前記製造例で製造された分離膜に1M LiN(CF3SO2)2が溶解されたジメトキシエタンとジオキソルランを1:1の体積比で混合した電解液を70μl介在し、前記正極と負極の間に前記分離膜を介在して電極組立体を製造した。前記電極組立体を電池ケースに収納してリチウム-硫黄電池コインセルを製造した。
【0079】
比較例
比較製造例.PTMAを含有しない分離膜の製造
前記ポリプロピレンにPTMA溶液がコーティングされた分離膜の代わりに、PTMA溶液がコーティングされていない20μm厚さのポリプロピレンフィルムを分離膜で使用することを除いて、前記製造例と同様の方法で分離膜を製造した。
【0080】
比較例1.リチウム-硫黄電池の製造
実施例1で前記ポリプロピレンにPTMA溶液がコーティングされた分離膜の代わりに、比較製造例1の分離膜を使用することを除いて、実施例1と同様の方法でコインセルを製作した。
【0081】
比較例2.リチウム-硫黄電池の製造
PTMAを分離膜にコーティングせずに、炭素及び硫黄を9:1の重量比で混合して製造された正極活物質70重量%、導電材のデンカブラック(Denka black)20重量%及びバインダーとしてSBR/CMC(重量比1:1)9重量%及びPTMA 1重量%組成の正極合剤をD.I waterに添加して正極スラリーを製造した後、アルミニウム集電体にコーティングして正極を製造したことを除いて、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池コインセルを製造した。
【0082】
比較例3.リチウム-硫黄電池の製造
前記実施例1でPTMAがコーティングされたポリプロピレン分離膜の代わりに、PTMA溶液に分離膜を1分間担持して分離膜の内部までPTMAが含浸された分離膜を使用したことを除いて、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池コインセルを製造した。
【0083】
分離膜表面の分析結果
製造例と比較製造例の分離膜表面を走査電子顕微鏡(SEM)を通して確認した。
【0084】
製造例による分離膜の表面(
図2)を確認した結果、比較製造例による分離膜の表面(
図3)と比べてコーティング前後で表面上の大きい変化は見えなかったので、PTMA溶液が分離膜に薄くて均一にコーティングされたことを確認した。
【0085】
抵抗測定結果
実施例1と比較例1によって同一なコインセルをそれぞれ3個ずつ製造して各試料の抵抗を測定した。
【0086】
各試料の抵抗測定値の平均と標準偏差を下記表1に示す。
【0087】
【0088】
各3個ずつの試料の抵抗値を測定して平均及び標準偏差を確認した結果、PTMA溶液がコーティングされた分離膜が適用された電池の抵抗増加が比較例1に比べて微々たるものであった。したがって、コーティング後の抵抗増加による電池の性能低下はほぼないことを確認した。
【0089】
リチウム-硫黄電池の寿命特性試験
前記実施例1及び比較例1ないし3の電池の寿命特性を比べるために、次の条件で充放電を繰り返して比放電容量(Specific discharging capacity)及びクーロン効率(Coulombic Efficiency)を測定した。
【0090】
充電:電圧2.6Vの終了条件、CC/CV(0.1Cで5%電流カット(5% current cut at 0.1C))
放電:電圧1.8Vの終了条件、CC
充/放電いずれも初期3サイクル(cycle)の間、レート0.1C、以後3サイクル(cycle)のレート0.2C、以後0.5Cで評価(10サイクルごとに3回0.2Cで評価)
【0091】
実施例1及び比較例1の電池の比放電容量及びクーロン効率をそれぞれ
図4に示す。
【0092】
図4を参照すれば、PTMAがコーティングされた分離膜を利用したリチウム-硫黄電池である実施例1の場合、比較例1に比べて顕著に改善された容量維持率及びクーロン効率を示すことが分かる。
【0093】
図8を見れば、PTMAを分離膜にコーティングせずに、リチウム-硫黄電池のバインダーで適用した比較例2の場合、実施例1に比べて電池の容量維持率及びクーロン効率が低下することが分かった。
【0094】
また、PTMAを分離膜に含浸させた比較例3の場合、分離膜の気孔を防いでリチウムイオン伝導度が低下するので、やはり実施例1に比べて電池の容量維持率及びクーロン効率が低下することを
図9を通じて分かった。
【0095】
リチウム-硫黄電池の放電サイクル特性試験
前記実施例1及び比較例1の電池の放電特性を比べるために、充放電サイクルによる放電容量を測定した。
【0096】
図5ないし
図7を比べてみると、実施例1のリチウム-硫黄電池がPTMAによるポリスルフィドの吸着効果によって、10サイクル後、30サイクル及び60サイクル後にも比較例1より優れた890mAh/g水準の容量を示すものと表れた。
【符号の説明】
【0097】
10.リチウムイオン
20.リチウムポリスルフィド
100.分離膜
110.分離膜本体
120.吸着層
200.正極
300.負極
400.電解質
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のリチウム-硫黄電池はポリスルフィドの拡散を抑制することで、電極ローディング及び初期放電容量を改善することはもとより、最終的にリチウム-硫黄電池のエネルギー密度が増加される。その結果、前記リチウム-硫黄電池は、高密度電池または高性能電池として好ましく適用可能である。