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7065894超音波画像を処理するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】超音波画像を処理するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019569330
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2018065720
(87)【国際公開番号】W WO2018229159
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-01-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】17180090.7
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/520,174
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニョン フランソワ ガイ ジェラルド マリエ
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュン ソブ
(72)【発明者】
【氏名】フアン シェン‐ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ジャン‐ルック フランソワ‐マリエ
【合議体】
【審判長】福島 浩司
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-103431(JP,A)
【文献】特開平5-115477(JP,A)
【文献】欧州特許第3638124(EP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/121295(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像において軸外クラッターフィルタ処理を実施する方法であって、前記方法は、
イメージング点の集合を規定するチャンネルデータを超音波プローブから取得するステップであって、前記超音波プローブが、トランスデューサー要素のアレイを備える、取得するステップと、
関心領域内における各イメージング点に対して、
前記超音波プローブから取得したチャンネルデータから前記イメージング点に対応するチャンネルデータを分離するステップと、
前記分離されたチャンネルデータの1つ又は複数の空間周波数成分を特定するように、前記分離されたチャンネルデータの空間スペクトル推定を実施するステップと、
前記空間スペクトル推定に基づいて減弱係数により、前記分離されたチャンネルデータの前記1つ又は複数の空間周波数成分を選択的に減弱させるステップにより、フィルタ処理されたチャンネルデータを生成することと、
前記イメージング点の集合の各前記イメージング点に対応する前記フィルタ処理されたチャンネルデータを加算するステップにより、フィルタ処理された超音波画像を生成することと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記チャンネルデータの分離は、前記イメージング点の複数の観測結果を処理することを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空間スペクトル推定は、前記チャンネルデータを複素指数関数の有限個の和に分解することを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複素指数関数は、
第1のモデルパラメータと
第2のモデルパラメータとを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のモデルパラメータは、複素数である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のモデルパラメータは、前記超音波プローブの隣接するトランスデューサー要素間の距離に逆比例する、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のモデルパラメータ及び前記第2のモデルパラメータは、前記空間スペクトル推定により推定される、請求項4から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記減弱係数は、ガウシアンである、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記減弱係数は深さに依存する、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記減弱係数は、前記第2のモデルパラメータに依存する、請求項4から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記減弱係数は受信ビームパターンの幅の半分に前記チャンネルデータを減弱させる、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記空間スペクトル推定は、自己回帰モデルに基づく、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータにおいて動作させられるとき、請求項1から12の何れか一項に記載の方法を実施するように適応されたコンピュータプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
超音波画像において軸外クラッターのフィルタ処理を制御するための制御装置であって、前記制御装置が、
イメージング点の集合を規定するチャンネルデータを超音波プローブから取得することと、
関心領域内における各イメージング点に対して、
前記超音波プローブから取得したチャンネルデータから前記イメージング点に対応するチャンネルデータを分離することと、
前記分離されたチャンネルデータの1つ又は複数の空間周波数成分を特定するように、前記分離されたチャンネルデータの空間スペクトル推定を実施することと、
前記空間スペクトル推定に基づいて減弱係数により、前記分離されたチャンネルデータの前記1つ又は複数の空間周波数成分を選択的に減弱させることにより、フィルタ処理されたチャンネルデータを生成することと、
前記イメージング点の集合の各前記イメージング点に対応する前記フィルタ処理されたチャンネルデータを加算することにより、フィルタ処理された超音波画像を生成することと、
をする、制御装置。
【請求項15】
超音波システムであって、前記超音波システムは、
トランスデューサー要素のアレイを備える超音波プローブと、
請求項14に記載の制御装置と、
フィルタ処理された超音波画像を表示するためのディスプレイデバイスと、
を備える、超音波システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波イメージングの分野に関し、特に、超音波画像フィルタ処理の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波イメージングは、様々な異なる用途において益々多く使用されている。超音波システムにより生成された画像は、走査される対象者の現実に即した解釈をユーザーに与えるために、できる限り明確かつ正確であることが重要である。これは特に、問題の対象者が医療超音波走査を受ける患者である場合に妥当である。この場合、正確な診断を行う医師の能力は、超音波システムにより生成された画像の品質に依存する。
【0003】
軸外クラッターは、超音波における画像の劣化の重大な要因である。画像品質の改善を達成するために超音波イメージングに対して、適応型ビーム形成技術、例えば最小分散(MV)ビーム形成が開発及び適用されているが、空間共分散行列の反転が画像の各ピクセルに対して必要なので、MVビーム形成は演算的に負荷がかかる。加えて、MVビーム形成が主に空間分解能の改善のために開発され、軸外クラッターを減らすために理想的ではない場合であっても、その性能は、空間分解能を改善するという観点から多くの場合、サブアレイ寸法を小さくすることにより犠牲にされる必要がある。別のやり方をとる場合には、信号キャンセルに起因して、スペックルに画像アーチファクトが発生する。
【0004】
適応型重み付け技術、例えば、コヒーレンス因子(CF)、一般化コヒーレンス因子(GCF)、位相コヒーレンス因子(PCF)、及び、短ラグ空間コヒーレンス(SLSC)が提案されているが、すべて、画像に適用される重み付けマスクを演算するためにチャンネルごとのデータへのアクセスを必要とする。さらに、これらの方法は、集束型送信ビームを使用した従来のイメージングに対して機能するのみであり、数回の送信しか伴わない平面波イメージング(PWI)、又は、分散波イメージング(DWI)には適さない。
【0005】
加えて、超音波画像における空間分解能、特に、方位分解能は、多くの場合、最適ではない。焦点深度における-6dBの横方向ビーム幅は、次式により決定される。
【数1】
ここで、λは波長であり、zは送信焦点深度であり、Dはアパチャーサイズである。波長が短いほど(又は、中心周波数が高いほど)、方位分解能がより良くなるが、より短い波長は、侵入深さを犠牲にして達成される。その一方で、より大きいアパチャーサイズDが、より良い方位分解能を達成するために必要とされるが、アパチャーサイズは、ヒトの解剖学的構造、ハードウェア的な検討、及びシステムコストにより制限されることが多い。
【0006】
適応型ビーム形成技術、例えば前述の最小分散(MV)ビーム形成は、活発な研究の題材となっている。これらの方法は、回折限界を越えた方位分解能をもたらすアポダイゼーション関数を適応的に推定することを狙ったデータ依存ビーム形成方法である。
【0007】
標準的な超音波イメージング技術に加え、フェーズドアレイの場合、平面波イメージング(PWI)又は分散波イメージング(DWI)が1kHzより高い、場合によっては数kHzの非常に高フレームレートにおいてイメージングを実施する可能性のある比較的新しいイメージング技術である。これらの技術は、さらに、従来の集束型送信ビームを使用して以前には不可能であった、異なる用途のための多くの新しい可能なイメージングモードを利用可能にしている。この理由により、それは、近年、学究的な世界において最も活発に研究されている題材のいくつかに該当している。
【0008】
PWI/DWIは、異なる角度における広い送信ビームから取得された画像をコヒーレントにコンパウンディングすることにより高フレームレートを達成し得る。PWI/DWIにおける空間分解能は、概して、集束型送信ビームを使用した従来のイメージングと比べてわずかに悪いだけか、又は同等であることが知られているので、その主な欠点は、送信角度の数に直接関係した、画像コントラストの劣化である。PWI/DWIにおける数の少ない送信角度に対して画像コントラストが概して低く、したがって、集束型送信ビームを使用した従来のイメージングの画像品質と同等の画像品質を維持するために、多くの送信角度が必要とされる。
【0009】
個々の画像ピクセルは異なる送信ビームからの信号から構築されるので、PWI/DWIは、さらに、特に心臓などの速く動く臓器をイメージングするとき、運動アーチファクトの影響を受ける。送信角度の数が増えるにつれて、運動の影響はより深刻になり、したがって、PWI/DWIシステムにおけるジレンマが明確となり、すなわち、より多くの送信角度が高画像コントラストを達成するために必要とされるが、画像品質を劣化させる、より多くの運動アーチファクトを結果的にもたらすことにもなる。
【0010】
さらに、送信角度の数に関わらず、PWI/DWIは、基本Bモード超音波画像における画像品質の劣化の主因のうちの1つである残響クラッターを減らさない。
【0011】
米国特許出願公開第2005/033165(A1)号の文献は、受信された超音波データの処理が過剰な格子ローブエネルギーの検出に応じて変更される、超音波イメージングにおける格子ローブの適応的抑制のための技術を説明している。特に、受信ビーム形成器における個々のトランスデューサー要素の利得は、任意の検出された格子ローブエネルギーの関数として変調される。
【0012】
その一方で、米国特許出願公開第2014/316274(A1)号では、物体に超音波信号を送信することと、オブジェクトで反射された反射信号を受信することと、反射信号を構成する複数のDoppler信号に対して特異値分解(SVD)を実施することと、SVDを実施することの結果に従ってオブジェクトの表現を複数の領域に分割することと、異なる方法に従って複数の領域のカットオフ周波数を決定することと、決定されたカットオフ周波数を使用することにより複数の領域に対してクラッターフィルタ処理を実施することとを有するクラッターフィルタ処理方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、大幅な追加的なハードウェアを必要とせずに超音波システム内において軸外クラッターフィルタ処理を実施する手段が必要とされる。加えて、大幅な追加的なハードウェアを必要とせずに超音波画像の空間分解能を改善する手段が必要とされる。大幅な追加的なハードウェアを必要とせずに超音波システムにおける画像コントラストを改善する手段も必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、請求項により規定される。
【0015】
本発明の一態様の例によると、超音波画像において軸外クラッターフィルタ処理を実施する方法が提供され、本方法は、
イメージング点の集合を規定する超音波プローブからチャンネルデータを取得することであって、超音波プローブが、トランスデューサー要素のアレイを備える、取得することと、
関心領域内における各イメージング点に対して、
イメージング点に関係したチャンネルデータを分離することと、
分離されたチャンネルデータの1つ又は複数の空間周波数成分を特定するように、分離されたチャンネルデータの空間スペクトル推定を実施することと、
空間スペクトル推定に基づいて減弱係数により、分離されたチャンネルデータの1つ又は複数の空間周波数成分を選択的に減弱させることにより、フィルタ処理されたチャンネルデータを生成することと、
イメージング点の集合の各イメージング点に関係したフィルタ処理されたチャンネルデータを加算することにより、フィルタ処理された超音波画像を生成することと、
を有する。
【0016】
この方法は、超音波画像において軸外クラッターフィルタ処理を実施する。チャンネルデータの空間スペクトル推定を実施することにより分離されたチャンネルデータの周波数成分(すなわち、1つ又は複数の空間周波数成分)を特定することが可能である。典型的には、軸外クラッター信号は、チャンネルデータの空間スペクトル推定において特定される高い空間周波数を保有する。このように、高い空間周波数をもつ信号を選択的に減弱させることにより、最終的な超音波画像における軸外クラッター信号を低減及び/又は除去することが可能である。
【0017】
画像点集合の各イメージング点は、好ましくは、チャンネルデータの軸方向セグメントである。
【0018】
好ましくは、チャンネルデータの分離は、チャンネルデータの軸方向イメージング深さに基づく。
【0019】
一実施形態において、チャンネルデータの分離は、イメージング点の複数の観測結果を処理することを有する。
【0020】
このように、複数の測定結果にわたって平均化されたチャンネルデータに対して空間スペクトル推定を実施することが可能である。このように、チャンネルデータの正確さ、したがって、最終的な超音波画像の正確さが高まる。
【0021】
一構成において、空間スペクトル推定は、チャンネルデータを複素指数関数の有限個の和に分解することを有する。
【0022】
チャンネルデータを複素指数関数の有限個の和に分解することにより、高い空間周波数をもつ成分を特定することが単純となり、それにより、超音波画像において軸外クラッター信号を減弱させることをより容易にする。
【0023】
さらなる構成において、複素指数関数は、第1のモデルパラメータと第2のモデルパラメータとを含む。
【0024】
さらなる一実施形態において、第1のモデルパラメータは、複素数である。
【0025】
さらに異なるさらなる実施形態において、第2のモデルパラメータは、超音波プローブの隣接するトランスデューサー要素間の距離に逆比例する。
【0026】
第1のモデルパラメータ及び第2のモデルパラメータは、チャンネルデータの性質を説明するために使用される。第1のモデルパラメータが複素数である場合、虚数成分は信号の位相に関し、実数の正の数である絶対値は信号の振幅に関係する。第2のモデルパラメータは、信号の空間周波数に関係する。
【0027】
さらに違う異なるさらなる構成において、第1のモデルパラメータ及び第2のモデルパラメータは、空間スペクトル推定により推定される。
【0028】
いくつかの設計において、減弱係数は、ガウシアンである。
【0029】
このように、より高い空間周波数に近づく信号に対して減弱を実施しやすい。フィルタ処理のアグレッシブ性は、使用されるガウシアンの幅を変更することにより調整される。
【0030】
一実施形態において、減弱係数は深さに依存する。
【0031】
減弱係数を深さに依存させることにより、異なる深さに対して軸外クラッター信号フィルタ処理の量を制御することが可能である。
【0032】
一構成において、減弱係数は、第2のモデルパラメータに依存する。
【0033】
このように、減弱係数は、信号の空間周波数に直接依存し、減弱係数がユーザーからの入力を必要とするのではなく、個々に信号に適応することを意味する。
【0034】
いくつかの実施形態において、減弱係数は受信ビームパターンの幅の半分にチャンネルデータを減弱させるように適応される。
【0035】
このように、方位分解能を改善することと、フィルタ処理された超音波画像における軸外クラッターを減らすこととの両方をすることが可能である。
【0036】
いくつかの構成において、空間スペクトル推定は、自己回帰モデルに基づく。
【0037】
本発明のさらなる一態様の例によると、コンピュータプログラムがコンピュータにおいて動作させられたときに上述の方法を実施するように適応されるコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0038】
本発明のさらなる一態様の例によると、超音波画像において軸外クラッターのフィルタ処理を制御するための制御装置が提供され、制御装置が、
イメージング点の集合を規定する超音波プローブからチャンネルデータを取得することと、
関心領域内における各イメージング点に対して、
イメージング点に関係したチャンネルデータを分離することと、
分離されたチャンネルデータの1つ又は複数の空間周波数成分を特定するように、分離されたチャンネルデータの空間スペクトル推定を実施することと、
空間スペクトル推定に基づいて減弱係数により、分離されたチャンネルデータの1つ又は複数の空間周波数成分を選択的に減弱させることにより、フィルタ処理されたチャンネルデータを生成することと、
イメージング点の集合の各イメージング点に関係したフィルタ処理されたチャンネルデータを加算することにより、フィルタ処理された超音波画像を生成することと、
をするように適応される。
【0039】
本発明のさらなる一態様の例によると、超音波システムが提供され、本システムは、
超音波プローブであって、超音波プローブが、トランスデューサー要素のアレイを備える、超音波プローブと、
上記のように規定された制御装置と、
フィルタ処理された超音波画像を表示するためのディスプレイデバイスと、
を備える。
【0040】
本発明のさらなる一態様の例によると、超音波画像を生成する方法が提供され、本方法は、
超音波プローブによりチャンネルデータを取得することと、
チャンネルデータの各チャンネルに対して、チャンネルデータの軸方向イメージング深さに基づいてチャンネルデータをセグメント分けすることと、
セグメント分けされたチャンネルデータの各セグメントに対して、
セグメント分けされたチャンネルデータに基づいて外挿フィルタを推定することであって、外挿フィルタが、フィルタ次数をもつ、推定することと、
外挿フィルタに基づいて、セグメント分けされたチャンネルデータを、外挿乗数を使用して外挿することにより、外挿されたチャンネルデータを生成することと、
すべてのセグメントにわたり外挿されたチャンネルデータを加算することにより、超音波画像を生成することと、
を有する。
【0041】
この方法は、チャンネルデータに対してアパチャー外挿を実施することにより、超音波画像の方位分解能を高める。セグメント分けされたチャンネルデータに基づいて外挿フィルタを推定することにより、外挿フィルタは、チャンネルデータに直接対応する。このように、セグメント分けされたチャンネルデータに対して実施される外挿の正確さが高められる。言い換えると、この方法は、既存のチャンネルデータを外挿することにより超音波プローブ内に物理的に存在しないトランスデューサー要素からのチャンネルデータを予測する。
【0042】
一実施形態において、本方法は、
チャンネルデータの各軸方向セグメントに対して、チャンネルデータの軸方向セグメントに対してフーリエ変換を適用することと、
外挿されたチャンネルデータに対して逆フーリエ変換を実施することと、
をさらに有する。
【0043】
時間周波数領域において、セグメント分けされたチャンネルデータの外挿を実施することにより、外挿されたチャンネルデータの正確さが、さらに高められる。
【0044】
一構成において、軸方向セグメントは、深さにおいて4波長未満、例えば、深さにおいて2波長以下である。
【0045】
このように、外挿されるチャンネルデータのセグメント数に大きく依存するシステムの性能が、軸方向セグメントの寸法に逆比例する画像の方位分解能の改善を維持しながら、改善される。
【0046】
一実施形態において、外挿乗数は10倍以下、例えば8倍以下である。
【0047】
このように、画像内におけるスペックルテクスチャを保持しながら、超音波画像の方位分解能の大幅な改善を達成することが可能である。
【0048】
いくつかの設計において、外挿フィルタの推定は、自己回帰モデルを使用して実施される。
【0049】
一構成において、外挿フィルタの推定は、Burg技術を使用して実施される。
【0050】
このように、外挿フィルタは、相当な量の処理パワーを必要とせずに簡単に推定される。
【0051】
いくつかの実施形態において、フィルタ次数は5以下、例えば4以下である。
【0052】
このように、画像内におけるスペックルテクスチャを保持しながら、超音波画像の方位分解能の大幅な改善を達成することが可能である。
【0053】
一実施形態において、外挿は、アパチャー領域においてアジマス方向に発生する。
【0054】
本発明のさらなる一態様の例によると、コンピュータプログラムがコンピュータにおいて動作させられたときに上記のように規定された方法を実施するように適応されるコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0055】
本発明のさらなる一態様の例によると、超音波画像の生成を制御するための制御装置が提供され、制御装置が、
超音波プローブによりチャンネルデータを取得することと、
チャンネルデータの各チャンネルに対して、チャンネルデータの軸方向イメージング深さに基づいてチャンネルデータをセグメント分けすることと、
セグメント分けされたチャンネルデータの各セグメントに対して、
セグメント分けされたチャンネルデータに基づいて外挿フィルタを推定することであって、外挿フィルタが、フィルタ次数をもつ、推定することと、
外挿フィルタに基づいて、セグメント分けされたチャンネルデータを、外挿乗数を使用して外挿することにより、外挿されたチャンネルデータを生成することと、
すべてのセグメントにわたり外挿されたチャンネルデータを加算することにより、超音波画像を生成することと、
をするように適応される。
【0056】
本発明のさらなる一態様の例によると、超音波システムが提供され、本システムは、
超音波プローブと、
上記のように規定された制御装置と、
超音波画像を表示するためのディスプレイデバイスと、
を備える。
【0057】
一実施形態において、本システムは、ユーザー入力を含むユーザーインターフェースをさらに備える。
【0058】
このように、ユーザーが超音波システムに命令を提供することが可能である。
【0059】
一構成において、ユーザー入力は、軸方向セグメントの軸方向深さを調節するように適応される。
【0060】
さらなる構成において、ユーザー入力は、外挿乗数を変更するように適応される。
【0061】
さらに異なるさらなる構成において、ユーザー入力は、フィルタ次数を変更するように適応される。
【0062】
このように、ユーザーは、それらの主観的見解に従って画像品質を最大化するために、外挿方法の様々なパラメータを経験的に適応させる。
【0063】
本発明のさらなる一態様の例によると、超音波画像を生成する方法が提供され、本方法は、
超音波プローブによりビーム加算されたデータを取得することであって、ビーム加算されたデータが、複数の操縦角を含む、取得することと、
ビーム加算されたデータの各操縦角に対して、チャンネルデータの軸方向イメージング深さに基づいて、ビーム加算されたデータをセグメント分けすることと、
セグメント分けされたビーム加算されたデータの各セグメントに対して、
セグメント分けされたビーム加算されたデータに基づいて外挿フィルタを推定することであって、外挿フィルタが、フィルタ次数をもつ、推定することと、
外挿フィルタに基づいて、セグメント分けされたビーム加算されたデータを、外挿乗数を使用して外挿することにより、外挿されたビーム加算されたデータを生成することと、
すべてのセグメントにわたる外挿されたビーム加算されたデータをコヒーレントにコンパウンディングすることにより、超音波画像を生成することと、
を有する。
【0064】
この方法は、ビーム加算されたデータに対して送信外挿を実施することにより、超音波画像のコントラストを改善する。ビーム加算データは、関心点において重なるいくつかの送信ビームに対するアパチャーにわたって加算されたデータに対応する。加えて、この方法は、実際の送信事象をより少なくするとともにコントラスト及び分解能を維持することにより、最終的な超音波画像における超音波画像フレームレートの増加、及び、運動アーチファクトの減少を提供する。セグメント分けされたビーム加算されたデータに基づいて外挿フィルタを推定することにより、外挿フィルタは、ビーム加算されたデータに直接対応する。このように、セグメント分けされたビーム加算されたデータに対して実施された外挿の正確さが高められる。言い換えると、この方法は、外挿により元のビーム加算されたデータを取得するために使用された角度範囲の外側において送信角度からビーム加算されたデータを予測する。
【0065】
一実施形態において、本方法は、ビーム加算されたデータの各軸方向セグメントに対して、ビーム加算されたデータの軸方向セグメントにフーリエ変換を適用することと、
外挿されたビーム加算されたデータに逆フーリエ変換を実施することと、
をさらに有する。
【0066】
時間周波数領域において、セグメント分けされたビーム加算されたデータの外挿を実施することにより、外挿されたビーム加算されたデータの正確さがさらに高められる。
【0067】
一構成において、ビーム加算されたデータは、平面波イメージングと分散波イメージングとのうちの少なくとも1つにより取得される。
【0068】
このように、画像コントラスト及びフレームレートの高い超高速超音波イメージング方法を提供することが可能である。
【0069】
いくつかの実施形態において、軸方向セグメントは、深さにおいて4波長未満、例えば深さにおいて2波長以下である。
【0070】
このように、軸方向セグメントの寸法に逆比例する画像品質の改善を維持しながら、外挿されるビーム加算されたデータのセグメント数に大きく依存するシステムの性能が改善される。
【0071】
いくつかの構成において、複数の操縦角は、20個未満の角度、例えば10個以下の角度を含む。
【0072】
このように、使用される操縦角の数に比例した最終的な超音波画像の細部を維持しながら、処理する操縦角がより少ないので、超音波システムの演算性能が改善される。
【0073】
いくつかの設計において、フィルタ次数は、操縦角の数の半分以下である。
【0074】
一実施形態において、外挿乗数は、10倍以下、例えば8倍以下である。
【0075】
このように、画像内におけるスペックルテクスチャを保持しながら、超音波画像のコントラスト分解能の大幅な改善を達成することが可能である。
【0076】
一構成において、外挿フィルタの推定は、自己回帰モデルを使用して実施される。
【0077】
一実施形態において、外挿フィルタの推定は、Burg技術を使用して実施される。
【0078】
このように、外挿フィルタは、相当な量の処理パワーを必要とせずに簡単に推定される。
【0079】
一構成において、外挿は、送信方向に発生する。
【0080】
本発明のさらなる一態様の例によると、コンピュータプログラムがコンピュータにおいて動作させられたときに上記のように規定された方法を実施するように適応されるコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0081】
本発明のさらなる一態様の例によると、超音波画像の生成を制御するための制御装置が提供され、制御装置が、
超音波プローブによりビーム加算されたデータを取得することであって、ビーム加算されたデータが、複数の操縦角を含む、取得することと、
ビーム加算されたデータの各操縦角に対して、ビーム加算されたデータの軸方向深さに基づいてビーム加算されたデータをセグメント分けすることと、
セグメント分けされたビーム加算されたデータの各セグメントに対して、
セグメント分けされたビーム加算されたデータに基づいて外挿フィルタを推定することであって、外挿フィルタが、フィルタ次数をもつ、推定することと、
外挿フィルタに基づいて、セグメント分けされたビーム加算されたデータを、外挿乗数を使用して外挿することにより、外挿されたビーム加算されたデータを生成することと、
すべてのセグメントにわたる外挿されたビーム加算されたデータをコヒーレントにコンパウンディングすることにより、超音波画像を生成することと、
をするように適応される。
【0082】
本発明のさらなる一態様の例によると、超音波システムが提供され、本システムは、
超音波プローブと、
上記のように規定された制御装置と、
高コントラスト超音波画像を表示するためのディスプレイデバイスと、
を備える。
【0083】
一実施形態において、システムは、ユーザー入力を含むユーザーインターフェースをさらに備える。
【0084】
このように、ユーザーが超音波システムに命令を提供することが可能である。
【0085】
さらなる一実施形態において、ユーザー入力は、軸方向セグメントの軸方向深さと外挿乗数とフィルタ次数とのうちの少なくとも1つを調節するように適応される。
【0086】
このように、ユーザーは、それらの主観的見解に従って画像品質を最大化するために外挿方法の様々なパラメータを経験的に適応させる。
【0087】
本発明の例が、添付図面を参照しながら以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】概括的な動作を説明するための超音波診断イメージングシステムを示す図である。
図2】超音波画像のチャンネルデータを選択的に減弱させる方法を示す図である。
図3図2の方法の実施態様の例を示す図である。
図4】超音波画像に対してアパチャー外挿を実施する方法を示す図である。
図5図4の方法の例を示す図である。
図6図4の方法の実施態様の例を示す図である。
図7図4の方法の実施態様の例を示す図である。
図8図4の方法の実施態様の例を示す図である。
図9図4の方法の実施態様の例を示す図である。
図10】超音波画像に対して送信外挿を実施する方法を示す図である。
図11図10の方法の例を示す図である。
図12図10の方法の実施態様の例を示す図である。
図13図10の方法の実施態様の例を示す図である。
図14図10の方法の実施態様の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
本発明は、超音波画像を生成するための方法及びシステムを提供する。一方法において、超音波画像の生成は、チャンネルデータを取得することであって、チャンネルデータが、イメージング点の集合を規定する、取得することと、各イメージング点に対して、チャンネルデータを分離することと、分離されたチャンネルデータに対して空間スペクトル推定を実施することと、空間スペクトル推定チャンネルデータを選択的に減弱させることにより、フィルタ処理されたチャンネルデータを生成することと、フィルタ処理されたチャンネルデータを加算することにより、フィルタ処理された超音波画像を形成することとを有する。
【0090】
いくつかの例において、本方法は、アパチャー外挿を有する。アパチャー外挿は、超音波画像の方位分解能を改善する。他の例において、本方法は、送信外挿を有する。送信外挿は、画像のコントラストを改善する。加えて、送信外挿は、フレームレートを改善し、超音波画像において運動アーチファクトを減らす。さらなる例において、アパチャー及び送信外挿が組み合わされる。
【0091】
例示的な超音波診断イメージングシステムの概括的な動作が、まず図1を参照して説明され、本発明はトランスデューサーアレイにより測定された信号の処理に関するので、システムの信号処理機能に重点が置かれる。
【0092】
本システムは、超音波を送信する、及び、エコー情報を受信するためのCMUTトランスデューサーアレイ100を含むアレイトランスデューサープローブ10を備える。トランスデューサーアレイ100は、代替的にPZT又はPVDFなどの材料から形成された圧電トランスデューサーを含む。トランスデューサーアレイ100は、2D平面において、又は、3Dイメージングのために三次元において走査することが可能なトランスデューサー110の二次元アレイである。別の例において、トランスデューサーアレイは、1Dアレイである。
【0093】
トランスデューサーアレイ100は、CMUTアレイセル又は圧電要素による信号の受信を制御するプローブにおけるマイクロビーム形成器12に結合される。米国特許第5,997,479号(Savordら)、第6,013,032号(Savord)、及び第6,623,432号(Powersら)において説明されているように、マイクロビーム形成器は、トランスデューサーのサブアレイ(又は、「グループ」又は「パッチ」)により受信された信号の少なくとも部分的なビーム形成をすることが可能である。
【0094】
マイクロビーム形成器は、完全に任意選択的であることに留意されたい。以下の例は、アナログビーム形成ではないと仮定する。
【0095】
マイクロビーム形成器12は、送信/受信(T/R)スイッチ16にプローブケーブルにより結合され、送信/受信(T/R)スイッチ16は、送信と受信との間でスイッチングし、マイクロビーム形成器が使用されずに、トランスデューサーアレイが主システムビーム形成器により直接操作されるとき、高エネルギー送信信号から主ビーム形成器20を保護する。トランスデューサーアレイ10からの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ16によりマイクロビーム形成器に結合されたトランスデューサー制御装置18、及び、ユーザーインターフェース又は制御パネル38のユーザーの操作から入力を受信する主送信ビーム形成器(図示されていない)により方向付けされる。
【0096】
トランスデューサー制御装置18により制御される機能のうちの1つが、ビームが操縦される、及び集束させられる方向である。ビームは、トランスデューサーアレイからまっすぐに(トランスデューサーアレイに直交して)、又は、より幅の広い視野のために異なる角度で操縦される。トランスデューサー制御装置18は、CMUTアレイに対してDCバイアス制御部45を制御するように結合され得る。DCバイアス制御部45は、CMUTセルに適用されるDCバイアス電圧を設定する。
【0097】
受信チャンネルにおいて、部分的にビーム形成された信号が、マイクロビーム形成器12により生成され、主受信ビーム形成器20に結合され、主受信ビーム形成器20において、トランスデューサーの個々のパッチからの部分的にビーム形成された信号が完全にビーム形成された信号へと組み合わされる。例えば、主ビーム形成器20は、128個のチャンネルを含み、その各々が、何十もの、又は何百ものCMUTトランスデューサーセル又は圧電要素のパッチから部分的にビーム形成された信号を受信する。このように、トランスデューサーアレイの何千ものトランスデューサーにより受信された信号が、単一のビーム形成された信号に効果的に寄与し得る。
【0098】
ビーム形成された受信信号は、信号プロセッサ22に結合される。信号プロセッサ22は、帯域通過フィルタ処理、デシメーション、I成分とQ成分との分離、及び、組織及びマイクロバブルから戻された非線形の(基本周波数より高い高調波の)エコー信号の特定を可能にするために、線形及び非線形信号を分離するように機能する高調波信号分離などの様々な手法により、受信されたエコー信号を処理し得る。信号プロセッサは、スペックル低減、信号コンパウンディング、及びノイズ除去などの追加的な信号強調をさらに実施する。信号プロセッサにおける帯域通過フィルタは、エコー信号が次第に深くなる深さから受信されるにつれて、その通過帯域をより高い周波数帯域からより低い周波数帯域にスライドさせるトラッキングフィルタであり得、それにより深い深さからのより高い周波数であって、これらの周波数が解剖学的情報を含まない周波数におけるノイズを阻止する。
【0099】
送信のための、及び受信のためのビーム形成器は、異なるハードウェアにおいて実施され、及び、異なる機能をもち得る。もちろん、受信器ビーム形成器は、送信ビーム形成器の特性を考慮するように設計される。図1では、簡潔さを目的として受信器ビーム形成器12、20のみが示される。完全なシステムでは、送信マイクロビーム形成器及び主送信ビーム形成器を含む送信チェーンがさらに存在する。
【0100】
マイクロビーム形成器12の機能は、アナログ信号路の数を減らすために、信号の初期コンビネーションを提供することである。これは典型的には、アナログ領域において実施される。
【0101】
最終的なビーム形成は、主ビーム形成器20において行われ、典型的にはデジタル化後である。
【0102】
送信及び受信チャンネルは、固定の周波数帯域をもつ同じトランスデューサーアレイ10’を使用する。しかし、送信パルスが占有する帯域幅は、使用された送信ビーム形成に応じて異なり得る。受信チャンネルはトランスデューサー帯域幅全体を捕捉し得る(これは、これまでのアプローチである)か、又は、帯域通過処理を使用することにより、受信チャンネルは、有用な情報を含む帯域幅(例えば、主高調波の高調波)のみを抽出し得る。
【0103】
処理された信号は、Bモード(すなわち、明度モード、又は2Dイメージングモード)プロセッサ26及びドップラープロセッサ28に結合される。Bモードプロセッサ26は、体内における臓器の組織及び脈管などの体内における構造物のイメージングのために、受信された超音波信号の振幅の検出を使用する。体の構造物のBモード画像は、米国特許第6,283,919号(Roundhillら)及び米国特許第6,458,083号(Jagoら)において説明されているように、高調波画像モード若しくは基本波画像モード、又は、両方の組合せにおいて形成される。ドップラープロセッサ28は、画像フィールド内の血液細胞の流れなどの物質の運動の検出のために、組織の動き及び血流からの時間的に区別される信号を処理する。ドップラープロセッサ28は、典型的には体内における選択された種類の物質から戻されたエコーを通過させる、及び/又は阻止するように設定されるパラメータをもつウォールフィルタを含む。
【0104】
Bモード及びドップラープロセッサにより生成された構造的な信号及び運動信号は、スキャンコンバーター32及び多面リフォーマッタ44に結合される。スキャンコンバーター32は、エコー信号を所望の画像形式で、エコー信号が受信された元の空間的関係により配置する。例えば、スキャンコンバーターは、二次元(2D)セクター形の形式、又は、ピラミッド形三次元(3D)画像にエコー信号を配置する。スキャンコンバーターは、画像フィールド内に組織の運動及び血流を描写したカラードップラー画像を生成するように、それらのドップラー推定速度をもつ画像フィールド内の点における運動に対応した色を、Bモード構造画像に重ね得る。多面リフォーマッタは、米国特許第6,443,896号(Detmer)において説明されているように、体のボリュメトリック領域における共通面における点から受信されたエコーを、その平面の超音波画像に変換する。ボリュームレンダラー42は、3Dデータ集合のエコー信号を、米国特許第6,530,885号(Entrekinら)において説明されているように所与の基準点から見られる投影された3D画像に変換する。
【0105】
2D又は3D画像は、画像ディスプレイ40における表示のためのさらなる強調、バッファリング、及び、一時的な記憶のために、スキャンコンバーター32、多面リフォーマッタ44、及びボリュームレンダラー42から、画像プロセッサ30に結合される。イメージングのために使用されることに加えてドップラープロセッサ28により生成された血流値、及び、Bモードプロセッサ26により生成された組織構造情報は、定量化プロセッサ34に結合される。定量化プロセッサは、血流の体積流量などの異なる流れの状態の尺度、及び、臓器の寸法及び妊娠期間などの構造上の測定結果を生成する。定量化プロセッサは、測定が行われる画像の解剖学的構造における点などの、ユーザー制御パネル38からの入力を受信する。定量化プロセッサからの出力データは、ディスプレイ40における画像を伴う測定結果のグラフィック及び値の再現のために、及び、ディスプレイデバイス40からの音声出力のためにグラフィックプロセッサ36に結合される。グラフィックプロセッサ36は、超音波画像を使用した表示のためにグラフィックオーバーレイをさらに生成し得る。これらのグラフィックオーバーレイは、例えば、患者名、画像の日時、イメージングパラメータなどの標準的な識別情報を含み得る。これらの目的のために、グラフィックプロセッサは、ユーザーインターフェース38から患者名などの入力を受信する。ユーザーインターフェースは、トランスデューサーアレイ10’からの超音波信号、及び結果として、トランスデューサーアレイ及び超音波システムにより生成される画像の生成を制御する送信制御装置18にも結合される。制御装置18の送信制御機能は、実施される機能のうちの1つにすぎない。制御装置18は、(ユーザーにより与えられた)動作モード、及び、受信器アナログ・デジタル(analog to digital)コンバーターにおける、対応する要求される送信器構成及び帯域通過構成をさらに考慮する。制御装置18は、固定の状態をもつステートマシンであり得る。
【0106】
ユーザーインターフェースは、MPR画像の画像フィールド内において定量化された測定を実施するのに使用される複数の多面リフォーマット(MPR)画像の平面の選択及び制御のために、多面リフォーマッタ44にも結合される。
【0107】
図2は、超音波画像に選択的減弱を実施する方法200を示す。
【0108】
ステップ210において、超音波プローブからチャンネルデータが取得される。チャンネルデータは、関心領域内におけるイメージング点の集合を規定する。
【0109】
ステップ220において、所与のイメージング点に対してチャンネルデータが分離され、このことは、それが残りのチャンネルデータとは無関係に処理されることを意味する。
【0110】
ステップ230において、分離されたチャンネルデータに対して、空間スペクトル推定が実施される。例えば、チャンネルデータは、以下のように複素指数関数の有限個の和に分解される。
【数2】
ここで、xは超音波プローブのトランスデューサー要素のアレイに沿った横方向の座標であり、S(x)はxにおける測定されたチャンネルデータ信号であり、Nはチャンネルデータを説明するために使用される正弦関数成分の数であるモデル次数であり、aは第1のモデルパラメータであり、kは第2のモデルパラメータである。分離されたチャンネルデータに対して、任意の空間スペクトル推定方法が実施される。例えば、フーリエ変換は、トータルバリエーション法と組み合わされて実施される。別の例において、複素数L1/L2最小化は、軸外及び範囲外成分のスパースな和としてチャンネルデータ信号を分解するために使用される。上述の例において、自己回帰モデルが使用される。
【0111】
この場合、aは複素数パラメータであり、位相は-πからπの間であり、絶対値はチャンネルデータ信号の強度を示す実数の正の数である。
【0112】
も理論上は複素数であるが、この例ではkは実数である。kは理論上は-∞から∞までの範囲であるが、実際には、サンプリングの制約に起因してkは、
【数3】
から
【数4】
までの範囲にある。ここで、dxは超音波プローブのトランスデューサーアレイにおける要素間隔である。
【0113】
この例において、第1のモデルパラメータ及び第2のモデルパラメータは、スペクトル推定技術の分野における任意の知られた方法を通して推定される。例えば、パラメータは、ノンパラメトリックな方法、例えば、高速フーリエ変換(FFT)又は離散フーリエ変換(DFT)、又はパラメトリックな方法、例えば、自己回帰(AR)又は自己回帰移動平均(ARMA)法により推定される。
【0114】
ステップ240において、チャンネルデータは上述の式に減弱係数を含めることにより選択的に減弱させられる。
【数5】
ここで、S(x)はxにおけるフィルタ処理されたチャンネルデータ信号であり、w(k)は減弱係数であり、w(k)は、実数≦1である。
w(k)はkに逆比例し、このことは、より高い空間周波数において、w(k)の値が小さくなることにより、高空間周波数クラッター信号を減弱させることを意味する。言い換えると、減弱係数は、チャンネルデータの空間周波数に依存する。減弱係数がチャンネルデータの空間周波数スペクトル全体にわたって適用されることにより、チャンネルデータ内に含まれる任意の高い空間周波数の信号を減弱させる。w(k)は、次式に示されるように形状という観点において例えばガウシアンである。
【数6】
ここで、kは、ガウシアンの幅、したがって、高い空間周波数の信号の減弱のアグレッシブ性を決定付ける追加的なパラメータである。より低い値のkに対して、ガウシアンはより細く、したがって、クラッターフィルタ処理はよりアグレッシブである。より大きい値のkに対して、ガウシアンの幅が大きくされて、アグレッシブ性のより低いクラッターフィルタ処理につながり、結果として、より多くの信号が最終的な超音波画像に寄与することを可能にする。この例において、kの値は、アパチャーサイズの逆数の大きさ程度であるように選択される。例えば、
【数7】
ここで、aは、アパチャーサイズである。加えて、kの値は、現在のチャンネルデータセグメントの軸方向深さに応じて変更される。
【0115】
代替的な関数がさらに減弱係数として使用される。例えば、重み付けマスクとして使用するために、例えばシミュレーションを通して、角度送信、又は往復、チャンネルデータのビームパターンを推定することが可能である。さらに、矩形関数が使用されてよく、関数の幅はカットオフ周波数を決定付け、カットオフ周波数より高い周波数ですべての信号が阻止される。さらに依然として、指数関数的減衰関数も使用されてよい。
【0116】
ステップ220から240は、チャンネルデータの各軸方向セグメントに対して繰り返される。チャンネルデータの最終的なセグメントが選択的減弱を受けた場合、本方法はステップ250に進む。
【0117】
ステップ250において、フィルタ処理されたチャンネルデータが加算されて、最終的なクラッターのフィルタ処理された超音波画像を形成する。
【0118】
図3は、図2を参照した上述の方法における様々な段階における心臓の超音波画像間の比較を示す。
【0119】
第1の画像260は、生のチャンネルデータから捕捉された元の超音波画像を示す。見てわかるように、画像は、ハイレベルのノイズを含み、詳細は判別することが難しい。
【0120】
第2の画像270は、方法のステージ230における超音波画像を示し、画像は、上述のようにスパース正弦関数分解を使用して再構成されている。この例において、モデルの次数N=4は、各深さにおけるチャンネルデータが4次の正弦関数の和としてモデル化されることを意味する。画像の鮮明さの改善が既に観測され得るが、信号は依然としてノイズを含み、細部は、特に画像の上部に向かって、大幅に不鮮明なままである。
【0121】
第3の画像280は、選択的減弱の適用により最高の空間周波数を含む正弦信号を除去した後における、方法のステージ250における超音波画像を示す。画像から確認され得るように、信号ノイズは高い空間周波数の信号の減弱により大幅に小さくされている。
【0122】
図4は、超音波画像にアパチャー外挿を適用する方法300を示す。
【0123】
ステップ310において、超音波プローブによりチャンネルデータが取得される。
【0124】
ステップ320において、チャンネルは、軸方向データの軸方向イメージング深さに基づいてセグメント分けされる。
【0125】
セグメント分けされたチャンネルデータの軸方向のウィンドウサイズは、ユーザーの視覚的な好みに適するように経験的に決定される。例えば、1~2波長の範囲内の軸方向ウィンドウサイズが、好ましい画像品質の改善をもたらす。より大きい軸方向ウィンドウは、画像品質のより信頼可能な改善、及び、スペックルテクスチャのより良い保持を提供するが、それは超音波画像の軸方向分解能に悪影響を及ぼす。
【0126】
ステップ330において、セグメント分けされたチャンネルデータに基づいて、次数pの外挿フィルタaが推定され、ここで、1≦j≦pである。この場合、外挿フィルタは、自己回帰(AR)パラメータ推定のためのよく知られたBurg技術により推定される。
【0127】
ステップ340において、セグメント分けされたチャンネルデータがステップ330において推定された外挿フィルタを使用して外挿される。この場合、1ステップ線形予測外挿器が、次に示されるように外挿フィルタと前のp個のサンプルとを使用して、第1の前方外挿されたサンプルXN+1を取得する。
【数8】
ここで、Xは現在のサンプルであり、XN+1は前方外挿されたサンプルであり、pは外挿フィルタaの次数である。
【0128】
前方外挿は、次のように一般化される。
【数9】
、k>N (前方外挿)、
ここで、kは実施される前方外挿の数である。
【0129】
フィルタ次数を反転させ、及び、フィルタ係数の複素共役をとることにより、最初のp個のチャンネルの線形結合として第kのチャンネルまで値を後方外挿することが可能である。
【数10】
、k<1 (後方外挿)
【0130】
前方外挿の式と後方外挿の式との両方を使用することにより、セグメント分けされたチャンネルデータを完全に外挿することが可能である。ステップ330及びステップ340は、セグメント分けされたチャンネルデータの各軸方向セグメントに対して繰り返される。
【0131】
ステップ350において、完全に外挿されたチャンネルデータセグメントは、ビーム加算信号を取得するように、及び、最終的な超音波画像を生成するように加算される。
【0132】
図5は、図4の方法の一実施形態の例400を示す。
【0133】
ステップ410において、超音波プローブによりチャンネルデータが取得される。プロットは、所与の軸方向深さにおける各チャンネルに対する、シェーディングによる信号強度を示す。ステップ410、440、450及び460のプロットにおいて、横軸は、測定されるチャンネルを表し、縦軸は、測定されたチャンネルデータの軸方向深さを表し、軸方向深さは、縦軸の高さに逆比例する。ステップ420及び430のプロットにおいて、横軸は測定されるチャンネルを表し、縦軸はチャンネルデータの時間周波数を表す。
【0134】
ステップ420において、高速フーリエ変換(FFT)がチャンネルデータに適用されることにより、チャンネルデータを時間周波数領域に変換する。この場合、外挿フィルタは、さらに時間周波数領域において推定される。推定は、この場合も、Burg技術により実施される。
【0135】
ステップ430において、推定された外挿フィルタが、利用可能なアパチャーを越えて時間周波数領域チャンネルデータを外挿するために使用される。外挿されたデータは、プロットにおいて、前方外挿されたチャンネルデータを表す右側の、及び、後方外挿されたチャンネルデータを表す左側のボックスにより強調表示される。
【0136】
ステップ440において、逆フーリエ変換が外挿された時間周波数チャンネルデータに適用されることにより、空間チャンネルデータを生成する。プロットから理解され得るように、チャンネルデータは、本例では、ステップ410の場合より幅の広いアパチャーをカバーする。
【0137】
ステップ450において、軸方向ウィンドウが新しい軸方向セグメントに動かされて、ステップ420からステップ440までが繰り返される。
【0138】
ステップ460において、完全に外挿されたチャンネルデータが取得される。これは、次に、最終的な超音波画像を生成するために使用される。
【0139】
図6から図11は、図4の方法の実施形態の実施態様の例を示す。
【0140】
図6は、図4の方法の2つの実施形態の実施態様の前及び後における超音波画像間の比較を示す。図6から図8において、画像の横軸は、信号のmmで測定された横位置を表し、縦軸は、信号のmmで測定された軸方向位置を表す。階調のある目盛りは、所与の信号位置における信号強度を示す。
【0141】
第1の画像500は、シミュレーションによるファントムの従来の遅延和(DAS)ビーム形成画像を示す。この場合、32-要素アパチャーが、送信ステップと受信ステップとの両方において使用された。画像から確認され得るように、2つのシミュレーションによる嚢胞が超音波画像において激しい散乱を誘発し、多量のノイズをもたらす。これは、嚢胞が不明瞭な輪郭をもち不鮮明に現れることを結果的にもたらす。
【0142】
第2の画像510は、上述のアパチャー外挿技術の適用後における同じ超音波画像を示す。この場合、受信アパチャーが4次の外挿フィルタを使用して乗数を2として外挿された。画像から理解され得るように、外挿が、スペックルテクスチャの品質を維持しながら、画像の方位分解能を大幅に改善した。
【0143】
第3の画像520も上述のアパチャー外挿技術の適用後における同じ超音波画像を示すが、この場合、受信アパチャーは4次の外挿フィルタを使用して乗数を4として外挿された。画像から理解され得るように、このさらなる乗数による外挿は、超音波画像の方位分解能をさらに高めた。
【0144】
図7及び図8は、上述のアパチャー外挿方法の適用前及び後における超音波画像間の比較を示す。画像は、60dBのダイナミックレンジにより示される。
【0145】
両方の場合において、上の画像570及び590は、従来のDASビーム形成による心臓画像を示す。下の画像580及び600は、乗数を8としたアパチャー外挿後における超音波画像を示す。両方の図において、アパチャー外挿が方位分解能と画像コントラストとの両方の改善につながることが確認され得る。
【0146】
図9は、上述のアパチャー外挿方法の適用前及び後における足の超音波画像間の比較を示す。画像は、60dBのダイナミックレンジにより示される。
【0147】
第1の画像610は、従来のDASビーム形成による超音波画像を示す。第2の画像620は、上述のアパチャー外挿方法の適用後における同じ超音波画像を示す。アパチャーは、乗数を8として外挿された。第2の画像から確認され得るように、アパチャー外挿は超音波画像の方位分解能の改善につながる。
【0148】
図6から図9は、幅広い様々なイメージングシナリオにおける、アパチャー外挿方法に起因した方位分解能の改善を示す。
【0149】
図10は、超音波画像に送信外挿を適用する方法700を示す。
【0150】
ステップ710において、超音波プローブにより、ビーム加算されたデータが取得され、ビーム加算されたデータは、複数の操縦角を含む。
【0151】
ステップ720において、ビーム加算されたデータが、ビーム加算されたデータの軸方向深さに基づいて各操縦角に対してセグメント分けされる。
【0152】
ステップ730において、次数pの外挿フィルタaが、セグメント分けされたビーム加算されたデータに基づいて推定され、ここで、1≦j≦pである。この場合、外挿フィルタは、自己回帰(AR)パラメータ推定に対するよく知られたBurg技術により推定される。
【0153】
ステップ740において、セグメント分けされたビーム加算されたデータが、ステップ730において推定された外挿フィルタを使用して外挿される。この場合、1ステップ線形予測外挿器は、次に示されるように、外挿フィルタと利用可能な送信角度の前のp個のサンプルとを使用して、第1の前方外挿されたサンプルXN+1を取得する。
【数11】
ここで、Xは現在のサンプルであり、XN+1は前方外挿されたサンプルであり、pは外挿フィルタaの次数である。
【0154】
前方外挿は、次のように一般化される。
【数12】
、k>N (前方外挿)
ここで、kは、実施される前方外挿の数である。
【0155】
フィルタ次数を反転させること、及び、フィルタ係数の複素共役をとることにより、最初のp個の送信角度の線形結合として、第kの送信角度まで値を後方外挿することが可能である。
【数13】
、k<1 (後方外挿)
【0156】
前方外挿の式と後方外挿の式との両方を使用することにより、セグメント分けされたビーム加算されたデータを完全に外挿することが可能である。セグメント分けされたビーム加算されたデータの各軸方向セグメントに対して、ステップ730及びステップ740が繰り返される。
【0157】
ステップ750において、完全に外挿されたビーム加算されたデータセグメントが、コヒーレントにコンパウンディングされて、最終的なビーム加算信号を取得し、最終的な超音波画像を生成する。
【0158】
上述の方法において使用される送信スキームは、平面型、発散型、単一要素型、又は集束型である。
【0159】
図11は、図10の方法の例を示す。複数の操縦角752の各々に対して、低コントラスト超音波画像754が取得される。複数の低コントラスト超音波画像をコヒーレントにコンパウンディングすること(756)により、単一の高コントラスト超音波画像758を生成することが可能である。画像コントラストの改善は、使用される操縦角の数、したがって、高コントラスト超音波画像を生成するためにコヒーレントにコンパウンディングされた低コントラスト超音波画像の数に比例するが、初期操縦角の数の多さは、超音波システムの演算性能の低下を結果的にもたらす。少数の初期操縦角から外挿することにより、超音波システムの性能を大幅に低下させることなく、画像コントラストを高めることが可能である。
【0160】
図12は、送信外挿の実施の前及び後における超音波画像と基準画像との間の比較を示す。
【0161】
第1の画像760は、直径40mmの無エコー嚢胞病変を含むシミュレーションによるファントムの基準画像を示す。ファントムはスペックルバックグラウンドにおける4つの強い点散乱体、及び、無エコー病変の内側における4つの弱い点散乱体を含む。画像は、24個の分散波を使用して形成された。
【0162】
第2の画像770は、基準画像の24個の操縦角のうちの6つの中央の角度のみから形成された、同じシミュレーションによるファントムの画像を示す。24個の操縦角は、-45°から45°の間に一様に離隔しており、このことは、中央の6つの操縦角が3.91°の角度だけ分離されていることを意味する。より少ない数の操縦角がより低い画像コントラストを結果的にもたらすことがこの画像から確認されることが明らかである。
【0163】
第3の画像780は、第2の画像770に上述のように送信外挿を適用した結果を示す。この場合、送信角度の数に乗数4を乗じるように外挿するために、3次の外挿フィルタが使用された。外挿からの18個の予測されたビーム加算データを使用して、最初の6つの送信角度からのデータをコヒーレントにコンパウンディングすることにより、画像が生成された。第3の画像から確認され得るように、コントラストが第2の画像から大幅に改善されており、基準画像のコントラストと同等である。加えて、コントラストの強調は、無エコー病変の内側における弱い点散乱体を抑制するアーチファクトを一切もたらさない。
【0164】
図13は、送信外挿の実施の前及び後における超音波画像と基準画像との間の比較を示す。
【0165】
第1の画像790は、患者からの心臓の心尖部四腔像の基準画像を示す。画像は、24個の分散波を使用して形成された。
【0166】
第2の画像800は、6つの分散波のみを使用して形成された同じデータ集合の画像を示す。前述のように、6つの分散波は、24個の操縦角の中央の6つとして選択された。画像から確認され得るように、第2の画像の画像コントラストは、第1の画像の画像コントラストより大幅に低い。
【0167】
第3の画像810は、上述のように第2の画像に送信外挿を適用した結果を示す。この場合、操縦角の数に乗数4を乗じるように外挿するために、3次の外挿フィルタが使用された。同様に、画像は、外挿からの18個の予測されたビーム加算データを使用して、最初の6つの送信角度からのデータをコヒーレントにコンパウンディングすることにより生成される。画像コントラストが送信外挿により改善されていることが第3の画像から確認されることが明らかである。
【0168】
図14は、送信外挿の実施の前及び後における超音波画像と基準画像との間の比較を示す。
【0169】
第1の画像820は、図13とは異なる患者からの心臓の心尖部四腔像の基準画像を示す。画像は、24個の分散波を使用して形成された。図13と異なり、この患者に対する初期基準画像は、低水準の画像コントラストをもつ。
【0170】
第2の画像830は、6つの分散波のみを使用して形成された同じデータ集合の画像を示す。前述のように、6つの分散波が24個の操縦角の中央の6つとして選択された。画像から確認され得るように、第2の画像の画像コントラストは、第1の画像のものより大幅に低く、第2の画像はこの場合、多くの細部を非常に不鮮明にレンダリングする。
【0171】
第3の画像840は上述のように第2の画像に送信外挿を適用した結果を示す。この場合、3次の外挿フィルタが、操縦角の数に乗数4を乗じるように外挿するために使用された。同様に、画像は、外挿からの18個の予測されたビーム加算データを使用して、最初の6つの送信角度からのデータをコヒーレントにコンパウンディングすることにより生成される。画像コントラストが送信外挿により改善されていることが第3の画像から確認されることが明らかである。
【0172】
外挿乗数及び外挿フィルタ次数の任意の組合せが上述の方法のうちの任意のものに使用されてよいことが留意されなければならない。加えて、任意の数の操縦角が、最終的な方法において選択されてよい。
【0173】
いくつかの超音波システムにおいて、最終的な超音波画像の画像品質をさらに高めるために、上記の方法の組合せが使用されてよい。
【0174】
例えば、図4から図9を参照して説明されるアパチャー外挿方法がチャンネルデータの集合に対して実施された後、図10から図14を参照して説明される送信外挿方法が続いてよい。この場合、アパチャー外挿が、超音波プローブの各送信信号、及び、アパチャーにわたって加算された外挿されたチャンネルデータに対して実施されることにより、アパチャー外挿されたチャンネルデータの集合を生成する。加算に続いて、送信外挿がアパチャー外挿されたチャンネルデータに対して実施される。このように、最終的な超音波画像の方位分解能及び画像コントラストが改善される。加えて、PWI及びDWI超音波システムに対して、送信外挿方法の使用が、超音波画像のフレームレートの増加を可能にする。
【0175】
別の例において、送信外挿方法は、アパチャー外挿方法の前に実施されてよい。この場合、送信外挿が、超音波プローブの各トランスデューサー要素、及び、すべての送信角度にわたって加算された外挿されたチャンネルデータに対して実施されることにより、送信外挿されたチャンネルデータの集合を生成する。次に、アパチャー外挿方法が、送信外挿されたチャンネルデータにわたって実施される。
【0176】
両方の場合において、図2及び図3を参照しながら説明される選択的減弱方法が、最終的な超音波画像における軸外クラッターの量を減らすために使用されてよい。この方法は高い空間周波数を保有する信号を簡単に減弱させるので、この方法は、アパチャー外挿及び送信外挿方法を使用して任意の順序で実施されてよい。代替的に、選択的減弱方法は、アパチャー外挿方法又は送信外挿方法のみと組み合わされてよい。
【0177】
チャンネル(及びビーム加算された)データを形成するために使用される信号は、上述の方法を実施する前に幾何学的に位置合わせさてよいことが留意されなければならない。
【0178】
上述のように、実施形態は、データ処理ステップを実施するために制御装置を使用する。
【0179】
制御装置は、必要とされる様々な機能を実施するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを使用して多くの手法により実施され得る。プロセッサは、要求される機能を実施するようにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされる1つ又は複数のマイクロプロセッサを使用する制御装置の一例である。制御装置は、しかし、プロセッサを使用して、又は使用せずに実施されてよく、いくつかの機能を実施する専用ハードウェア、及び、他の機能を実施するプロセッサ(例えば、1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関係する回路)の組合せとして実施されてもよい。
【0180】
本開示の様々な実施形態において使用される制御装置コンポーネントの例として、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラム可能ゲートアレイ(FPGA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
様々な実施態様において、プロセッサ又は制御装置は、1つ又は複数の記憶媒体、例えば、揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ例えば、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM(登録商標)と関連付けられてよい。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又は制御装置において実行されたとき、要求される機能において実施する1つ又は複数のプログラムを使用して符号化されてよい。様々な記憶媒体は、プロセッサ又は制御装置内に固定されてよく、又は、記憶媒体に記憶された1つ又は複数のプログラムがプロセッサ又は制御装置にロードされ得るように、移動可能であってよい。
【0182】
開示される実施形態に対する他の変形例が、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の考察により、請求項に記載された発明を実施する当業者により理解及び実現され得る。特許請求の範囲において、「備える(含む、有する、もつ)」という用語は、他の要素もステップも排除せず、単数形の表現は、複数を排除しない。単に特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているということが、利点を得るためにこれらの手段の組合せが使用不可能なことを示すわけではない。特許請求の範囲における参照符号は、いずれも特許請求の範囲を限定するように解釈されてはならない。
図1
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