(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220502BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20220502BHJP
B29C 55/14 20060101ALI20220502BHJP
B29C 55/16 20060101ALI20220502BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220502BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20220502BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220502BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20220502BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B29C55/12
B29C55/14
B29C55/16
C08L67/00
C08K3/01
B32B27/36
B29K67:00
(21)【出願番号】P 2020148872
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2020-09-04
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】楊 文政
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 文瑞
(72)【発明者】
【氏名】蕭 嘉▲彦▼
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-221412(JP,A)
【文献】特開2010-221413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00-5/02
5/12-5/22
B29C55/12
B29C55/14
B29C55/16
C08L67/00
C08K 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリエステル組成物を未延伸ポリエステル厚手シートに形成させ、
2倍~6倍の拡張倍率で、前記未延伸ポリエステル厚手シートに対し、縦方向(MD)及び横方向(TD)延伸加工を行って、二軸延伸のポリエステルフィルムを形成する、
低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法であって、
前記ポリエステル組成物は、
0.60dl/g~0.80dl/gとなる固有粘度を有するポリエステル樹脂94~99.974重量%と、
一次酸化防止剤0.01~1重量%と、
二次酸化防止剤0.01~1重量%と、
造核剤0.003~2重量%と、
流動促進剤0.003~2重量%と
を含む、低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記二軸延伸のポリエステルフィルムに対し、さらに横方向および/または縦方向の予備収縮を行う、請求項1に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記縦方向(MD)延伸加工及び前記横方向(TD)延伸加工順番に行っており、前記縦方向(MD)延伸加工は温度70℃~145℃で行い、前記横方向(TD)延伸加工は温度90℃~160℃で行う、請求項1に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記縦方向(MD)延伸加工及び前記横方向(TD)延伸加工は、温度70℃~160℃で、2倍~6倍の拡張倍率により同期に行う、請求項1に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記未延伸ポリエステル厚手シートを形成する前に、温度120℃~180℃で、少なくとも1つの前記ポリエステル組成物に対し、結晶化乾燥工程を行う、請求項2に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記結晶化乾燥工程の時間は、3~8時間である、請求項5に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ポリエステル組成物はさらに、粒子径が1μm~5μmである潤滑剤粒子0.5~2重量%を含む、請求項1に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.65dl/g~0.78dl/gである、請求項1に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項9】
ベース層と、
前記ベース層における少なくとも1つの表面に形成された少なくとも1つのスキン層と、
を含む、低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムであって、
前記ベース層及び少なくとも1つの前記スキン層の各々は、ポリエステル組成物で形成され、
前記ポリエステル組成物は、:
0.60dl/g~0.80dl/gとなる固有粘度を有するポリエステル樹脂94~99.974重量%と、
一次酸化防止剤0.01~1重量%と、
二次酸化防止剤0.01~1重量%と、
造核剤0.003~2重量%と、
流動促進剤0.003~2重量%と
を含む、低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム。
【請求項10】
少なくとも1つの前記スキン層に形成された前記ポリエステル組成物は、粒子径が1μm~5μmである潤滑剤粒子0.5~2重量%をさらに含む、請求項9に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.65dl/g~0.78dl/gである、請求項9に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム。
【請求項12】
温度210℃での、前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)の収縮率は、いずれも1%未満である、請求項9に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム。
【請求項13】
前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの厚さは、15μm~350μmであり、かつ、少なくとも1つの前記スキン層の厚さは、前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの厚さの2%~30%を占める、請求項9に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム。
【請求項14】
少なくとも1つの前記スキン層の厚さは、前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの厚さの3%~20%を占める、請求項13に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム。
【請求項15】
少なくとも1つの前記スキン層の厚さは、前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの厚さの4%~15%を占める、請求項14に記載の低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムに関し、特に低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6-ナフタレンジカルボン酸エステル等)は、成形性、機械的性質、熱的性質、電気的性質、耐薬品性等の点で良好な性能を有しており、光学フィルム、電気絶縁フィルム、バリアフィルム、キャリアフィルム、離型フィルム、保護フィルム、農業用フィルム、包装材、断熱フィルム等の各種用途に使用することができる。
【0003】
しかしながら、ポリエステルフィルムを装置の一部として使用したり、高温環境下で加工したりすると、白化やクラックが発生しやすいだけでなく、熱収縮が著しく、フィルムの寸法不安定性につながり、さらにはフィルム表面に多量のオリゴマー(oligomer)が析出してしまい、ポリエステルフィルムの用途が限定されてしまうという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、既存技術の欠点を解消するために、高温環境下で使用可能な低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム提供すると共に、その低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムを製造する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するために,本発明で用いられる技術的解決策の一つは、低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法を提供することである。該製造方法は、少なくとも1つのポリエステル組成物を未延伸ポリエステル厚手シートとして形成させ、2倍~6倍の拡張倍率により未延伸ポリエステル厚手シートに対して縦方向(MD)及び横方向(TD)の延伸加工を行うことである。前記ポリエステル組成物は、ポリエステル樹脂94~99.974重量%と、一次酸化防止剤0.01~1重量%と、二次酸化防止剤0.01~1重量%と、造核剤0.003~2重量%と、流動促進剤0.003~2重量%とを含む。なかでも、ポリエステル樹脂は、0.60dl/g~0.80dl/gである固有粘度を有する。
【0006】
本発明に係る特定の実施形態において、前記二軸延伸加工したポリエステルフィルムに対し横方向および/または縦方向の予備収縮を行う。
【0007】
本発明に係る特定の実施形態において、前記縦方向(MD)延伸加工と前記横方向(TD)延伸加工は順番に行っており、前記縦方向(MD)延伸加工は、温度70℃~145℃で行って、前記横方向(TD)延伸加工は、温度90℃~160℃で行うことになる。
【0008】
本発明に係る特定の実施形態において、前記縦方向(MD)延伸加工及び前記横方向(TD)延伸加工は、温度70℃~160℃で、2倍~6倍の拡張倍率により、同期に行うようになる。
【0009】
本発明に係る特定の実施形態において、前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法は、前記未延伸ポリエステル厚手シートを形成する前、温度120℃~180℃で少なくとも1つの前記ポリエステル組成物に対し結晶化乾燥工程を行うステップをさらに含む。
【0010】
本発明に係る特定の実施形態において、前記結晶化乾燥工程の時間は、3~8時間である。
【0011】
本発明係る特定の実施形態において、前記ポリエステル組成物はさらに、粒子径が1μm~5μmである潤滑剤粒子0.5~2重量%を含む。
【0012】
本発明に係る特定の実施形態において、前記ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.65dl/g~0.78dl/gである。
【0013】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する他の技術的手段としては、ベース層と、ベース層に形成される少なくとも1つのスキン層とを備える、低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムを提供することである。少なくとも1つの前記スキン層は、前記ベース層の少なくとも1つの表面に形成され、前記ベース層及び少なくとも1つの前記スキン層のそれぞれはポリエステル組成物で形成される。前記ポリエステル組成物は、ポリエステル樹脂94~99.974重量%と、一次酸化防止剤0.01~1重量%と、二次酸化防止剤0.01~1重量%と、造核剤0.003~2重量%と、流動促進剤0.003~2重量%とを含む。なかでも、ポリエステル樹脂は、0.60dl/g~0.80dl/gである固有粘度を有する。
【0014】
本発明に係る特定の実施形態において、少なくとも1つの前記スキン層が形成された前記ポリエステル組成物はさらに、粒子径が1μm~5μmであ潤滑剤粒子0.02~0.5重量%を含む。
【0015】
本発明に係る特定の実施形態において、前記ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.65dl/g~0.78dl/gである。
【0016】
本発明に係る特定の実施形態において、前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの厚さは、15μm~350μmであり、少なくとも1つの前記スキン層の厚さは、前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの全厚さの2%~30%を占める。
【0017】
本発明に係る特定の実施形態において、前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムは、210℃での縦方向(MD)及び横方向(TD)の収縮率は、1%未満である。
【0018】
本発明に係る特定の実施形態において、前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの厚さは、15μm~350μmであり、かつ、少なくとも1つの前記スキン層の厚さは、前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの厚さの2%~30%を占める。
【0019】
本発明に係る特定の実施形態において、少なくとも1つの前記スキン層の厚さは、前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの厚さの3%~20%を占める。
【0020】
本発明に係る特定の実施形態において、少なくとも1つの前記スキン層の厚さは、前記低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの厚さの4%~15%を占める。
【発明の効果】
【0021】
本発明による有益な効果の1つとしては、本発明に係る低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムは、「ベース層とスキン層とはそれぞれポリエステル組成物で形成され、なかでも、ポリエステル組成物は、所定の配合で、ポリエステル樹脂、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、造核剤及び流動促進剤を含み、かつ、ポリエステル樹脂は、0.60dl/g~0.80dl/gとなる固有粘度を有する」技術的手段により、高温環境下での膜表面へのオリゴマーの析出を防止することができる。
【0022】
本発明に係る低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法は、所定の延伸加工パラメータを採用して、延伸加工を行う前に、ポリエステルフィルムに対し縦方向予備収縮及び横方向予備収縮を行うことになる。そのため、製造されたポリエステルフィルムでは、高温時の縦方向熱収縮、横方向熱収縮が非常に少なく、ヘイズ変化量(△Haze)は1%未満となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明に係る低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムによる1つの構造を示す模式図である。
【
図3】本発明に係る低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムによる別の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【0025】
ポリエステルフィルムは幅広い用途に使用されており、機械的特性、電気的特性、熱的特性を考慮して、電池(自動車用電池、燃料電池、リチウムイオン電池など)のバリアフィルム、ラミネート金型用の離型フィルムや、高温耐性のある離型フィルム、熱圧着用フィルムなどに使用することができる。そのため、本発明は、ポリエステルフィルムの耐熱性及び寸法安定性を向上させ、ポリエステルオリゴマーの析出を抑制する技術的解決策を提供するものである。
【0026】
下記より、具体的な実施例で本発明が開示する「低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム及びその製造方法」に係る実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。
【0027】
なお、本明細書において「第1」、「第2」、「第3」等の用語で各種の部品又は信号を説明する可能性があるが、これらの部品又は信号はこれらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は、主として一つの部品と別の部品、又は一つの信号と別の信号を区分するためのものであることが理解されたい。また、本明細書に用いられる「又は」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目中の何れか一つ又は複数の組合せを含み得る。
【0028】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。用語が単数形で使用される場合は、用語の複数形を含む。
【0029】
本明細書中で言及されているすべてのパーセントは、特に示されていない限り、重量%である。上限と下限の範囲が提供されている場合、言及されている範囲のすべての組み合わせは、それぞれが明示的にリストされているかのようにカバーされている。
【0030】
図1を参照されたい。本発明の実施形態に係る低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法では、主に下記のステップを含む。ステップS1は、計量と混合ステップであり、所要の成分を計量し混合して、少なくとも1種のポリエステル組成物を得る。ステップS2では、結晶化乾燥ステップであり、120℃~180℃の温度でポリエステル原料を結晶化乾燥加工する。ステップS3では、溶融押出・冷却成形ステップであり、ポリエステル原料を溶融押出した後、鋳造冷却成形して、未延伸ポリエステル厚手シートを取得する。ステップS4では、延伸処理ステップであり、未延伸ポリエステル厚手シートを予熱および延伸に続いて、横方向および/または縦方向の熱収縮(または「予備収縮」)を行う。
【0031】
特筆に値するのは、ポリエステル組成物の配合は、ポリエステルオリゴマーの移行を抑制するという直接的な技術的効果を有することである。ポリエステル組成物は、ポリエステル樹脂94~99.974重量%と、一次酸化防止剤0.01~1重量%と、二次酸化防止剤0.01~1重量%と、造核剤0.003~2重量%と、流動促進剤0.003~2重量%とを含む。
【0032】
さらに言えば、ポリエステル樹脂は、1種以上の二塩基酸と一種以上のグリコールで形成されてもよい。二塩基酸としては、芳香族二塩基酸、脂環式二塩基酸又はそれらの組み合わせが挙げられる。グリコールとしては、芳香族ジオール、脂肪族ジオール、脂環式ジオール又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
芳香族二塩基酸の具体的な例としては、p-ベンゼンジカルボン酸、M-イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、メソベンゼン-1,2-ジカルボン酸ナトリウム、及びジブロモフタル酸が挙げられる。脂環式二塩基酸の具体的な例としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びダイマー酸が挙げられる。グリコールとしては、芳香族ジオール、脂肪族ジオール、脂環式ジオール又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
芳香族ジオールの具体的な例としては、ナフタレンジオール、2,2 ビス(4-ヒドロキシジフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、及びハイドロキノンが挙げられる。脂肪族ジオールの具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びジエチレングリコールが挙げられる。脂環式ジオールの具体的な例としては、シクロヘキサンジメタノール及びシクロヘキサンジオールが挙げられる。特定の実施形態において、ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレングリコールポリ-p-ベンゼンジカルボン酸塩(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エチレングリコールポリナフタレンジカルボン酸塩(PEN)、ブタンジオールポリナフタレンジカルボン酸塩(PBN)、ポリ(4-フェニレンジカルボキシレート)シクロヘキシルジメチル(PCT)、ポリカーボネート(PC)、またはポリアリレートから選ばれるものであってもよい。ポリエステル樹脂としては、PETが好ましい。ポリエステル樹脂の固有粘度(intrinsic viscosity,IV)は、0.60dl/g~0.80dl/gであってもよいが、0.65dl/g~0.78dl/gが好ましい。それにより、成形時のポリエステル樹脂への負荷(環境負荷、外部負荷等)を低減することができ、剪断工程での発熱を低減することができ、樹脂の熱分解を回避することができる。
【0035】
一次酸化防止剤及び二次酸化防止剤がうまく連携して、より良い酸化防止効果を発揮することができる。さらに言えば、さらに、一次酸化防止剤は、ペルオキシラジカル(peroxy radical,ROO・)と迅速に反応してフリーラジカル連鎖反応を終了させ、二次酸化防止剤は、ヒドロペルオキシド(ROOH)と反応してそれを非ラジカルで非反応性の生成物に変換する。一次酸化防止剤フェノール化合物またはアミン化合物から選択することができ、具体的には商標名がIrganox 1010、Irganox 1425、Irganox 245、Anox 1315、Anox PP18、Anox 20、Lowinox 1790、Lowinox TBM-68及びNaugard 445となる市販品が挙げられる。二次酸化防止剤は、リン化合物または硫黄エステル化合物から選択することができ、具体的には商標名がSandostab P-EPQ、Irgafos 168及びNaugard 412Sとなる市販品が挙げられる。
【0036】
造核剤は、ポリエステルフィルムの全体的な結晶性を向上させ、耐熱性を向上させることができ、さらに、結晶化の成長を促進し、結晶化の大きさを小さくし、大きな球状結晶の生成を抑え、フィルム表面の脆化を回避することができる。造核剤としては、鉱物材料、金属酸化物、シリコン化合物、有機または無機酸の金属塩、芳香族リン酸エステル金属塩、ポリオール誘導体、スルファニリド化合物、ガラス粉末、金属粉末、又はそれらの組み合わせが挙げられる。鉱物材料の具体例としては、グラファイト、タルク、カオリンなどが挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。ケイ素化合物の具体例としては、酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。有機酸又は無機酸の金属塩の具体例としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、及びp-tert-ブチル安息香酸アルミニウム等が挙げられる。リン酸金属塩の具体例としては、芳香族リン酸金属塩が挙げられる。ポリオール誘導体の具体例としては、ジベンジリデンソルビトールが挙げられる。耐熱性を考慮すると、好ましい造核剤は無機材料である。
【0037】
流動促進剤は、ポリエステル材料の溶融押出時の機械的なねじり力を効果的に減少させ、ポリマー分子鎖の断裂を低減させる。流動促進剤は、ペンタエリスリチルステアレート(PETS)またはその類縁体であり得る。それは、熱安定性が良好で、揮発性が低く、高温での離型性、流動性が良好で、部分結晶化ポリエステルに対し核生成効果が良好である。
【0038】
ポリエステル組成物は、さらに0.02~0.5重量%の潤滑剤粒子を含んでいてもよい。潤滑剤粒子は、ポリエステルフィルムの耐熱性を向上させるだけでなく、オリゴマーの流動を阻害し、オリゴマーがフィルム表面からの析出を防止することができる。潤滑剤粒子の粒子径は、1μmから5μmであり、好ましくは1.5μmである。
【0039】
以下、本発明の製造方法の各ステップの実施形態のさらなる詳細を説明する。
【0040】
ステップS1は、ベース層とスキン層のそれぞれに必要な一般的なポリエステル顆粒と、少なくとも1種類の機能性改質剤(例えば造核剤)ポリエステル顆粒とを計量混合して、基材層とスキン層の混合ポリエステル顆粒の原料を調製する計量と混合テップである。ここで、本発明の機能性改質剤ポリエステル顆粒の機能性原料は、重合工程中及び/又は混合工程中に添加することができる。
【0041】
ステップS2は結晶乾燥工程であり、ポリエステル原料(ポリエステル顆粒)を120℃~180℃の温度で結晶乾燥処理することにより、ポリエステル原料の含水率を30ppm未満とすることができ、結晶乾燥処理の時間は 3~8時間ですが、これに限定されない。
【0042】
ステップS3は、溶融押出及び冷却成形ステップであり、ポリエステル原料を溶融押出した後、鋳造冷却成形して、未延伸ポリエステル厚手シートを製造するステップである。さらに、ポリエステル原料を単層または多層に押し出して、流動性のある溶融物を形成することができる。このステップは、2軸押出機を使用して実現できる。次に、溶融物をキャスティングロール間でフィルム状にキャストし、固まるまで冷却する。なお、これらの詳細は、この実施形態によって提供される実現可能な実装のみであり、本発明を限定することを意図していない。
【0043】
ステップS4は、延伸処理ステップであり、未延伸ポリエステル厚手シートに対し予熱および延伸に続いて、横方向および/または縦方向の熱収縮(または「予収縮」)を行うステップである。延伸処理には、逐次二軸延伸処理又は同時二軸延伸処理が採用できる。ところで、所定の条件で延伸処理を行うことにより、ポリエステルフィルムの結晶配向を完成させることができ、ポリエステルフィルムは高温での縦方向および横方向の熱収縮率が非常に低いものとすることができる。さらに言えば、未延伸ポリエステル厚手シートは、2倍~6倍の拡張倍率により、70℃~145℃の温度で縦方向(又は「長尺方向」、MD)に延伸処理を行って、一軸延伸のポリエステルフィルムに形成され、さらに、2倍~6倍の拡張倍率によって90℃~160℃の温度で、横方向(又は「幅方向」、TD)に延伸処理を行って、二軸延伸のポリエステルフィルムをなしている。実際のニーズに応じて、縦方向延伸処理と横方向延伸処理の順序を倒置してもよい。ポリエステルフィルムの延伸処理は、既存のテンター延伸機で実現してもよいが、それに制限されない。
【0044】
また、未延伸ポリエステル厚手シートに対し同時二軸延伸処理を行ってもよい。さらに言えば、未延伸ポリエステル厚手シートを、2倍~6倍の拡張倍率により70℃~160℃の温度で同時に縦方向延伸処理と横方向延伸処理を行い、それにより、直接に二軸延伸のポリエステルフィルムを形成させる。
【0045】
特筆に値するのは、ステップS4において、さらに二軸延伸のポリエステルフィルムを横方向および/または縦方向の熱収縮を行い、それにより、ポリエステルフィルムの結晶性を向上させ、ポリエステルフィルムの収縮ストレスを改善することができることにある。さらに言えば、前記熱収縮ステップは、前記ポリエステルフィルムの幅方向及び長さ方向のいずれかの端部をクランプして、延伸と弛緩を繰り返して行うことができ、延伸引張範囲は500%、弛緩範囲は10%である。このようにすることで、高温下でのポリエステルフィルムの熱収縮を効果的に抑制することができ、すなわち、追加の延伸工程を必要とせず、ポリエステルフィルムの熱寸法安定性を向上させることができる。
図2及び
図3を参照されたい。本発明の製造方法で製造したポリエステルフィルム1(以下、「低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム」と称する)は、
図2に示すように、ベース層11と、ベース層11の一方の表面(例えば、上面)に形成された第1のスキン層12とを含んでもよい。或いは、低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム1は、
図3に示すように、ベース層11と、ベース層11の一方の表面(例えば、上面)に形成された第1のスキン層12と、ベース層11の他方の表面(例えば、下面)に形成された第2のスキン層13とを含んでもよい。また、図示されない別の実施形態において、低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム1は単一層の構造として形成されてもよい。
【0046】
さらに言えば、ベース層11は、ポリエステル樹脂94~99.974重量%と、一次酸化防止剤0.01~1重量%と、二次酸化防止剤0.01~1重量%と、造核剤0.003~2重量%と、流動促進剤0.003~2重量%とを含む。なかでも、ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.60dl/g~0.80dl/gであり、好ましくは0.65dl/g~0.78dl/gである。耐熱性とオリゴマーの移動阻害の改善を考えて、第1のスキン層12/第2のスキン層13は、上記の成分以外、粒子径が1μm~5μmである潤滑剤粒子0.02~0.5重量%をさらに含んでもよい。潤滑剤粒子の粒子径が1.5μmが好ましい。
【0047】
低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム1の厚さは、15μm~350μmである。なかでも、第1のスキン層12と第2のスキン層13とのそれぞれの厚さは、ポリエステルフィルムの全厚さの2%~30%を占め、好ましくはポリエステルフィルムの全厚さの3%~20%を占め、さらに好ましくはポリエステルフィルムの全厚さの4%~15%を占める。これは、オリゴマーの表面への移動を制限し、フィルムヘイズを制限するのに非常に効果的である。第1のスキン層12/第2のスキン層13の厚さの割合が2%未満となれば、オリゴマーは膜の表面に移動しやすい。ポリエステルフィルムを加熱すると、フィルム表面に多量の環状オリゴマーが析出し、フィルムの見た目に影響を与える。第1のスキン層12/第2のスキン層13の厚さの割合が30%を超えれば、フィルム表面へのオリゴマーの移行を抑制する効果はあるが、フィルムのヘイズが上がってしまい、透明度が不足になってしまう。
【実施例】
【0048】
[特性評価]
実施例1~5及び比較例1及び2に係るポリエステルフィルムは、上記ステップS1~ステップS4によって製造し得る。各ステップの加工条件は、表1に表示される。これらのポリエステルフィルムは、いずれも
図3に示すように、A/B/Aの三層構造を有しており、Aはスキン層を表し、Bはベース層を表している。なかでも、各層の厚さ、及び各層に含まれるポリエステル顆粒の固有粘度と機能性添加剤の濃度も、表1に表示される。これらのポリエステルフィルムの代表特性について、試験方法は以下に説明し、結果は表1に表示される。
【0049】
光透過率とヘイズ測定:日本のTokyo Denshoku社のヘイズメーター(型番:TC-HIII DPK)を使用。JIS K7705試験規格「TC-HIII DPK」に準拠し、実施例1~5、及び比較例1~5のポリエステルフィルムの加熱前後の光透過率及びヘイズを計測し、これらのポリエステルフィルムのヘイズ変化量(△Haze)を計算する。この試験は、加熱温度が210℃、加熱時間が3時間であり、オーブンで行う。
【0050】
熱収縮性測定:実施例1~5、及び比較例1~5に係るポリエステルフィルムを15cm×15cmの長さと幅にして、オーブンにおいて210℃で3時間置いた後、これらのポリエステルフィルムの長尺方向の長さ及び幅方向の長さを測定し、加熱前後で、これらのポリエステルフィルムの長尺方向と幅方向の長さ変化量を計算する。それにより得られた長尺方向の長さ変化量を最初の長さ、即ち、15 cmで割ってさらに100%をかける。同じように、それにより得られた幅方向の長さ変化量を最初の幅即ち、15cmで割ってさらに100%をかける。それにより、ポリエステルフィルムの縦方向と横方向の収縮率を得た。
【0051】
フィルムIV値測定: SI Analytics AVSPRO3 IV測定器で分析する。まず、実施例1~5と比較例1~5とのポリエステルフィルムについて、その試料を125mg秤量し、100mlの広口瓶に入れる。そして、IV溶媒25mlを加え、122℃の加熱板上で試料を撹拌し、ポリエステルフィルムを完全に溶解させて測定する。
【0052】
【0053】
【0054】
上記から、実施例1~5のポリエステルフィルムの配合が、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、造核剤及び流動促進剤を含有することにより、低オリゴマー製品の全体的に最適な協働効果を実現することができることを明らかにした。
【0055】
実施例1~5のポリエステルフィルムにおいて、スキン層の構成によって、少なくとも以下のいくつかの効果を果たせることができる。ポリエステル樹脂の原料は、0.60dl/g~0.80dl/gとなる固有粘度を有することになる。一次酸化防止剤と二次酸化防止剤の含有量がそれぞれ0.01~1重量%となった場合、抗酸化相乗効果を発揮し、ポリマー鎖の断裂を抑え、オリゴマーの生成を抑えることができる。造核剤の含有量が0.003~2重量%となった場合、全体の結晶性を向上させることができ、ポリエステルフィルムの耐熱性を向上させることができ、オリゴマーの流動を阻害してフィルム表面へのオリゴマーの析出を防止することができる。さらに、造核剤は、結晶の成長を促進し、結晶のサイズを小さくし、大きな球状結晶の生成を抑制し、膜表面の脆化を回避することができる。流動促進剤の含有量が0.003~2重量%となる場合、ポリエステル材料の溶融押出時の機械的トルクを効果的に低減することができ、ポリマー分子鎖の断線を低減することができる。
【0056】
実施例による製品は、縦方向(MD)及び横方向(TD)の予備収縮を経た後、結晶性を向上させ、収縮応力を解放できる。実施例からは、ポリエステルフィルムの配合に、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、造核剤及び流動促進剤を含む四種類の添加剤が加えられた場合、ポリエステルフィルムオリゴマーの生成を効果的に抑制することができる。前述した予備収縮工程と一緒に実行されれば、製造したフィルムが温度210℃で3時間加熱した後に測定された縦方向(MD)及び横方向(TD)の収縮率は、いずれも1%未満であり、ヘイズ変化量(△Haze)も1%未満であり、低収縮性低オリゴマーの効果を実現した。
【0057】
実施例1~5に係るポリエステルフィルムは、造核剤を含有し、縦方向及び横方向の収縮率が、明らかに比較例のポリエステルフィルムよりも低いとなる。かつ、ポリエステルフィルムの熱収縮率は、造核剤の濃度が高いほど低くなる傾向にある。
【0058】
比較例1に係るポリエステルフィルムでは、縦方向の予備収縮を行っておらず、製造したフィルムの縦方向(MD)収縮率及び横方向(TD)収縮率は著しく高くなる(MD収縮率が2.0%、TD収縮率が1.02%である)。また、比較例1に係るポリエステルフィルムの配合に、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、造核剤及び流動促進剤を含む四種類の添加剤が加えられておらず、製造したフィルムが温度210℃で3時間加熱した後に測定されたヘイズ変化量(△Haze)は、13.35%にも達し、フィルム表面に著しくヘイズが酷く発生する。さらに、ポリエステルフィルム明らかに耐熱性が悪く、熱暴露後の寸法安定性が悪いので使用できない。
【0059】
比較例2に係るポリエステルフィルムでは、縦方向の予備収縮工程を行っておらず、製造したフィルムの縦方向(MD)収縮率及び横方向(TD)収縮率は著しく高くなる(縦方向収縮率1.98%、横方向収縮率1.0%)。また、比較例2に係るポリエステルフィルムの配合は、一次酸化防止剤と二次酸化防止剤とをそれぞれ添加剤として5000 ppmを加えたため、耐熱性に大きな改善がない。製造したフィルムが温度210℃で3時間加熱した後に測定されたヘイズ変化量(△Haze)は、10.95%に達し、フィルム表面に著しくヘイズが酷く発生する。さらに、ポリエステルフィルム明らかに耐熱性が悪く、熱暴露後の寸法安定性が悪いため、応用範囲に制限がある。
【0060】
比較例3に係るポリエステルフィルムでは、縦方向の予備収縮工程を行っておらず、製造したフィルムの縦方向(MD)収縮率及び横方向(TD)収縮率は著しく高くなる(縦方向収縮率1.99%、横方向収縮率1.01%)。さらに、比較例3に係るポリエステルフィルムの配合は、造核剤1500 ppmのみを添加されたため、耐熱性に大きな改善がない。製造したフィルムが温度210℃で3時間加熱した後に測定されたヘイズ変化量(△Haze)は、8.66%に達し、フィルム表面に著しくヘイズが酷く発生する。さらに、ポリエステルフィルム明らかに耐熱性が悪く、熱暴露後の寸法安定性が悪いため、応用範囲に制限がある。
【0061】
比較例4に係るポリエステルフィルムは、縦方向の予備収縮工程を行っておらず、製造したフィルムの縦方向(MD)収縮率及び横方向(TD)収縮率は著しく高くなる(縦方向収縮率2.00%、横方向収縮率1.01%)。さらに、比較例4に係るポリエステルフィルムの配合には、流動促進剤1500 ppmのみが添加されたため、耐熱性に大きな改善がない。製造したフィルムが温度210℃で3時間加熱した後に測定されたヘイズ変化量(△Haze)は、12.58%にも達し、フィルム表面に著しくヘイズが酷く発生する。さらに、ポリエステルフィルム明らかに耐熱性が悪く、熱暴露後の寸法安定性が悪いため、応用範囲に制限がある。
【0062】
比較例5に係るポリエステルフィルムでは、縦方向の予備収縮工程を行っておらず、製造したフィルムの縦方向(MD)収縮率及び横方向(TD)収縮率は著しく高くなる(縦方向収縮率1.58%、横方向収縮率0.92%)。さらに、比較例5に係るポリエステルフィルムの配合には、一次酸化防止剤と二次酸化防止剤それぞれ5000 ppmと、流動促進剤1500 ppmと添加されたため、耐熱性に大きな改善がない。製造したフィルムが温度210℃で3時間加熱した後に測定されたヘイズ変化量(△Haze)は、7.37%に達し、フィルム表面に著しくヘイズが酷く発生する。さらに、ポリエステルフィルム明らかに耐熱性が悪く、熱暴露後の寸法安定性が悪いため、応用範囲に制限がある。
【0063】
[実施形態による有益な効果]
本発明による有益な効果の1つとしては、本発明に係る低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムは、「ベース層とスキン層とは別々にポリエステル組成物で形成され、なかでも、なかでも、ポリエステル組成物は、所定量のポリエステル樹脂、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、造核剤及び流動促進剤を含み、かつ、ポリエステル樹脂は、0.60dl/g~0.80dl/gとなる固有粘度を有する」という技術手段により、高温環境下での膜表面へのオリゴマーの析出を防止することができる。
【0064】
本発明に係る低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルムの製造方法では、所定の延伸加工パラメータを採用し、さらに延伸加工工程を行う前に、ポリエステルフィルムに対して、縦方向予備収縮及び横方向予備収縮を行うため、得られたポリエステルフィルムは、高温条件下での縦方向および横方向の熱収縮率が非常に低い他、ヘイズ変化量が(△Haze)1%未満となる。
【0065】
以上に開示される内容は本発明の好ましい実施可能な実施例に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではないので、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0066】
1 ・・・低収縮性低オリゴマーポリエステルフィルム
11 ・・・ベース層
12 ・・・第1のスキン層
13 ・・・第2のスキン層
S1~S4 ・・・ステップ