IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アディダス アーゲーの特許一覧

特許7065933一体的なアイレットを含む編成シューアッパー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】一体的なアイレットを含む編成シューアッパー
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20220502BHJP
   D04B 1/22 20060101ALI20220502BHJP
   D04B 1/18 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
A43B23/02 105Z
A43B23/02 101A
D04B1/22
D04B1/18
【請求項の数】 45
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020204619
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2021098006
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】10 2019 220 470.8
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510204998
【氏名又は名称】アディダス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ポェーグル
(72)【発明者】
【氏名】マルコ フィッシュホールド
(72)【発明者】
【氏名】リ ピン
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン デュズ
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ゴデンベグル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス リンツ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン モーア
(72)【発明者】
【氏名】セルギウス メルカー
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0037966(US,A1)
【文献】国際公開第2013/108506(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/00-23/06
D04B 1/22
D04B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューアッパーであって、
編成構成要素
を備え、この編成構成要素が、
連続的な列のセットを含む複数の一体に編成された輪奈の列を含み、
連続的な列のセット内の各列が、それぞれの列の隣接する輪奈と輪奈係合されかつセットに含まれない列の輪奈とは輪奈係合されない複数の連続的な輪奈を含み、また、
連続的な列のセットが、紐を受け入れるように構成されるアイレットの少なくとも一部分を形成
前記連続的な列のセットが引返し編みによって編まれる、
シューアッパー。
【請求項2】
列がウェールである、請求項に記載のシューアッパー。
【請求項3】
連続的な列のセット内の第1の列、およびセットに含まれない第1の隣接する列が、編成構成要素内に第1の開口を形成し、
連続的な列のセット内の最後の列、およびセットに含まれない第2の隣接する列が、編成構成要素内に第2の開口を形成し、
第1および第2の開口が、紐が両方の開口を通過することができるように構成される、
請求項1または2に記載のシューアッパー。
【請求項4】
連続的な列のセット内の第1の列が、アイレットの第1の端部からアイレットの第2の端部まで延在し、かつ、第1の数の輪奈を含み、セットに含まれない第2の列が、アイレットの第1の端部に隣接する輪奈とアイレットの第2の端部に隣接する輪奈との間の全ての輪奈を含み、かつ、第2の数の輪奈を含み、第1の数が、第2の数よりも大きい、
請求項1~のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【請求項5】
アイレットが、5から15mmの間の幅を有する、請求項1~のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【請求項6】
連続的な列のセットが、2~10個の列を含む、請求項1~のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【請求項7】
輪奈の連続的な列のセット内の列が、10から30mmの間の長さを有する、請求項1~のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【請求項8】
輪奈の連続的な列のセット内の各列が、15~25個の輪奈を含む、請求項1~のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【請求項9】
輪奈の連続的な列のセット内の第1の列と最後の列との間に位置する列の輪奈の数が、第1および最後の列の輪奈の数よりも大きい、請求項1~のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【請求項10】
編成構成要素が、輪奈の連続的な列のセットの領域内に少なくとも1本の可融性ヤーンを備える、請求項1~のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【請求項11】
可融性ヤーンが、輪奈の連続的な列のセットの列内にのみ配置される、請求項10に記載のシューアッパー。
【請求項12】
可融性ヤーンが、ポリエステルヤーン、ポリアミドヤーン、またはウレタンベースのヤーンの中から選択される、請求項または10に記載のシューアッパー。
【請求項13】
内側編成層および外側編成層を単一ニット構造で備え、内側層および外側層が、少なくともシューアッパーのカラー領域内で接続され、外側層が内側層に被せられるか、または、内側層が外側層内に挿入される、請求項1~12のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【請求項14】
輪奈の連続的な列のセットが、外側層上に配置される、請求項13に記載のシューアッパー。
【請求項15】
2つの層が、輪奈の連続的な列のセットの領域内で重なり合う、請求項13または14に記載のシューアッパー。
【請求項16】
2つの層が、輪奈の連続的な列のセットの領域内で接続されない、請求項15に記載のシューアッパー。
【請求項17】
2つの層が、アッパーの甲の領域内で重なり合い、かつ、甲の領域内で接続されない、請求項1316のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【請求項18】
編成構成要素が、輪奈の連続的な列のセットの領域内に少なくとも1本の弾性ヤーンを備える、請求項1~17のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【請求項19】
弾性ヤーンが、輪奈の連続的な列のセットの列内にのみ配置される、請求項18に記載のシューアッパー。
【請求項20】
弾性ヤーンが、編成構成要素の別のヤーンよりも高い弾性のものである、請求項18または19に記載のシューアッパー。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1つに記載のシューアッパーと、
シューアッパーに取り付けられたソール構造体と
を備える、靴。
【請求項22】
シューアッパーを製造する方法であって、
編成構成要素を用意するステップと、
連続的な列のセット内の各列が複数の連続的な輪奈を備え、複数の連続的な輪奈がそれぞれの列の隣接する輪奈と輪奈係合されかつセットに含まれない列の輪奈とは輪奈係合されないように、連続的な列のセットを含む複数の一体に編成された輪奈の列を編成構成要素に設けるステップと、
紐を受け入れるように構成されるアイレットの少なくとも一部分として連続的な列のセットを形成するステップと
引返し編みにより前記連続的な列のセットを編成するステップと
を含む、方法。
【請求項23】
列がウェールである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
連続的な列のセット内の第1の列およびセットに含まれない第1の隣接する列を使用して編成構成要素内に第1の開口を形成するステップと、
連続的な列のセット内の最後の列およびセットに含まれない第2の隣接する列を使用して編成構成要素内に第2の開口を形成するステップと、
紐が両方の開口を通過することができるように第1および第2の開口を構成するステップと
をさらに含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
連続的な列のセット内の第1の列が、アイレットの第1の端部からアイレットの第2の端部まで延在し、かつ、第1の数の輪奈を含み、セットに含まれない第2の列が、アイレットの第1の端部に隣接する輪奈とアイレットの第2の端部に隣接する輪奈との間の全ての輪奈を含み、第1の数が、第2の数よりも大きい、
請求項2224のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
アイレットが、5から15mmの間の幅を有する、請求項2225のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
連続的な列のセットが、2~10個の列を含む、請求項2226のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
輪奈の連続的な列のセット内の列が、10から30mmの間の長さを有する、請求項2227のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
輪奈の連続的な列のセット内の各列が、15~25個の輪奈を含む、請求項2228のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
輪奈の連続的な列のセット内の第1の列と最後の列との間に位置する列の輪奈の数が、第1および最後の列の輪奈の数よりも大きい、請求項2229のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
輪奈の連続的な列のセットの領域内に少なくとも1本の可融性ヤーンを配置するステップをさらに含む、請求項2230のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
輪奈の連続的な列のセットの列内にのみ可融性ヤーンを配置するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
可融性ヤーンが、ポリエステルヤーン、ポリアミドヤーン、またはウレタンベースのヤーンの中から選択される、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
内側編成層および外側編成層を単一ニット構造で設けるステップと、
少なくともシューアッパーのカラー領域内で内側層および外側層を接続するステップと、
外側層を内側層に被せるかまたは内側層を外側層内に挿入してシューアッパーを形成するステップと
をさらに含む、請求項2233のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
輪奈の連続的な列のセットを外側層上に形成するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
2つの層が、輪奈の連続的な列のセットの領域内で重なり合う、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
2つの層が、輪奈の連続的な列のセットの領域内で接続されない、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
2つの層が、アッパーの甲の領域内で重なり合い、かつ、甲の領域内で接続されない、請求項3437のいずれか1つに記載の方法。
【請求項39】
輪奈の連続的な列のセットの領域内に少なくとも1本の弾性ヤーンを設けるステップをさらに含む、請求項2238のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
輪奈の連続的な列のセットの列内にのみ弾性ヤーンを配置するステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
弾性ヤーンが、編成構成要素の別のヤーンよりも高い弾性のものである、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
小型丸編み機を使用してニット構成要素を用意するステップをさらに含む、請求項2241のいずれか1つに記載の方法。
【請求項43】
輪奈の連続的な列のセットによって形成されたアイレットの内側にピンを設置して、シューアッパーのヒートセット中にピンをアイレット内に維持するステップをさらに含む、請求項22~39のいずれか1つに記載の方法。
【請求項44】
シューアッパーをヒートセットするステップをさらに含む、請求項2243のいずれか1つに記載の方法。
【請求項45】
請求項2244のいずれか1つに記載の方法によって得られる、シューアッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体的なアイレットを含む編成シューアッパー(knitted shoe upper)、および、対応する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの置換えの試みにもかかわらず、紐は依然として、着用者の足に靴を固定するための最も都合の良い手段のうちの1つである。紐を案内するために、また、靴の適切な締付けを可能にするために、シューアッパー上にアイレットが必要とされる。通常、アイレットは、シューアッパーの材料における(穿孔された)穴として、または、シューアッパーの材料に取り付けられた追加の要素、例えばラグとして設けられる。
【0003】
このようにしてアイレットを設けることは、穴開けであろうと追加の要素の取付けであろうと、追加の製造ステップを必要とする。例えば、米国特許出願公開第2018/0110283号明細書は、編成構成要素を含むアッパーを開示している。編成構成要素は、噛み合った輪奈に加え、紐穴を形成する1つまたは複数の構造体を含み得る。構造体は、第1の端部、第2の端部、および中央部分を含み得る。第1の端部および第2の端部は、編成構成要素の表面に固着され得る。例えば、いくつかの実施形態では、表面および/または構造体を形成するヤーンに、可融材料が含まれ得る。可融材料は、熱にさらされたときに活性化され(例えば、少なくとも部分的に溶融され)、次いで冷却されることで第1の端部および/または第2の端部を貼り付けることができる。さらに、またはその代わりに、第1の端部および/または第2の端部の固着は、縫い付け、接着剤の使用、結び付け、機械的な挟持、などによる、別の適切な手段で強化され得る。
【0004】
国際公開第2019/001676号パンフレットは、シューアッパーを備える靴、特に運動靴に関し、この靴では、シューアッパーは、少なくとも部分的に編地(knitted fabric)で構成され、また、シューアッパーは、紐による着用者の足での靴の縛り付けを可能にするために、紐を通すための複数の輪奈を有する。着用者の足における靴の紐締めまたは縛り付けを個別に調整するための容易且つ効率的な可能性を提供するために、輪奈の少なくとも一部は、編地で構成され、輪奈は、紐のための通路を形成する管状体の形状を有する。
【0005】
米国特許出願公開第号2018/0255877号明細書は、ソール、アッパー、および再構成可能な締付けシステムを含むフットウェアの品目に関する。アッパーは、ソールに結合され、かつ、内側および外側のクォータ(quarter)を含む。内側および外側のクォータ上には、複数のアイレットが配置される。アイレットのそれぞれは、アッパー内に配置された1対の開口部を含む。複数のアイレットは、各アイレットの開口部の対に通される少なくとも1つの長尺部材をさらに含む。長尺部材は、アッパーの内側表面上に配置される第1のまたは露出されない一連の部分と、アッパーの外側表面上に配置される第2のまたは露出される一連の部分と、を含む。締め具または締め紐が、複数のアイレットのうちの1つのアイレットに選択的に通されてよく、締め具は、長尺部材の第2の部分とアッパーの外側表面との間に通され得る。
【0006】
さらなる従来技術が、中国実用新案出願第203986311号明細書で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2018/0110283号明細書
【文献】国際公開第2019/001676号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第号2018/0255877号明細書
【文献】中国実用新案出願第203986311号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来技術と比較して少ない製造ステップで製造され得る、紐の使用のために構成されたシューアッパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載のシューアッパーによってかなえられる。本発明によるシューアッパーは、連続的な列のセットを含む複数の一体に編成された輪奈(loop)の列を具備する編成構成要素を備え、連続的な列のセット内の各列は、それぞれの列の隣接する輪奈と輪奈係合(interloop)されかつセットに含まれない列の輪奈とは輪奈係合されない、複数の連続的な輪奈を含み、また、連続的な列のセットは、紐を受け入れるように構成されるアイレットの少なくとも一部分を形成する。
【0010】
本発明の文脈において、「列」は、コースまたはウェールであり得、また、編成構成要素は、緯編みまたは経編みされ得る。
【0011】
本発明は、追加の製造ステップを伴わずにシューアッパー内にアイレットを形成することを可能にする。アイレットは、輪奈の連続的な列として設けられ、それらの輪奈は、各列内で輪奈係合され、かつ、セット内の隣接する輪奈の隣接する輪奈とも輪奈係合されるが、連続的な列のセットの一部ではない列とは輪奈係合されない。連続的な列のセットは、紐を受け入れるためのある種の一体的なラグを、編成構成要素内に形成する。アイレットを設けるための追加の製造ステップは、必要とされない。
【0012】
連続的な列のセットは、引返し編み(partial knitting)によって編まれ得る。引返し編みでは、他の輪奈が非編成位置において針内に保持されている間に、編成により輪奈の群が形成される。したがって、輪奈は、周囲の針(編成プログラムによって選択される)が編目を作っている間、保持または停滞され得る。引返し編みは、相応にプログラムされた編み機によって行われ得る。引返し編みは、連続的な列のセットに関係しない列に対して連続的な列のセット内の列に追加の輪奈を設けることによりシューアッパーの隆起したアイレットを一体的な構造体として編成中に直接設けることを可能にする。このようにして、引返し編みは、編み構成要素の表面から突出する湾曲した形状をアイレットに与えることを可能にする。
【0013】
列は、ウェールであってもよい。
【0014】
連続的な列のセット内の第1の列、および、セット内に含まれない第1の隣接する列は、編成構成要素内に第1の開口を形成することができ、この場合、連続的な列のセット内の最後の列、および、セットに含まれない第2の隣接する列は、編成構成要素内に第2の開口を形成することができ、また、第1および第2の開口は、紐が両方の開口を通過することができるように構成され得る。開口は、有利には、編成プロセス中に形成される。穴開けのような追加の製造ステップは、省かれ得る。
【0015】
連続的な列のセット内の第1の列は、アイレットの第1の端部からアイレットの第2の端部まで延在することができ、かつ、第1の数の輪奈を含むことができ、セットに含まれない第2の列は、アイレットの第1の端部に隣接する輪奈とアイレットの第2の端部に隣接する輪奈との間の全ての輪奈を含むことができ、かつ、第2の数の輪奈を含むことができ、第1の数は、第2の数よりも大きくてよい。これは、アイレットを形成する輪奈の列が編成構成要素の表面から突出することを可能にし、それにより、紐を通すことが容易になる。アイレットは、ラグのように突出することができるが、編成構成要素内に一体に形成される。
【0016】
アイレットは、5から15mmの間の幅を有し得る。アイレットは、7から10mmの間の幅を有し得ることが好ましい。連続的な列のセットは、2~10個の列を含み得る。そのような幅は、紐を通すのに最適であるが、それと同時に十分な安定性および引裂き抵抗を有することを、本発明者らは見出した。
【0017】
輪奈の連続的な列のセット内の列は、10から30mmの間の長さを有し得る。輪奈の連続的な列のセット内の列は、15から25mmの間の長さを有し得ることが好ましい。輪奈の連続的な列のセット内の各列は、15~25個の輪奈を含み得る。そのような長さは従来の紐を通すのに最適であることを、本発明者らは見出した。
【0018】
輪奈の連続的な列のセット内の第1の列と最後の列との間に位置する列の輪奈の数は、第1および最後の列の輪奈の数よりも大きくてよい。これは、固体の構造体を編成することに起因してその形状をより良く保つ、より安定性がありかつ強化されたアイレットを提供する。また、これは、より良い見た目を保証し、かつ、縁部が不格好になるのを回避する。また、より丸みを帯びた形状をアイレットに与える。アイレットの縁部には、片畦編み(half-cardigan knit)が使用され得る。
【0019】
編成構成要素は、輪奈の連続的な列のセットの領域内に少なくとも1本の可融性ヤーンを含み得る。これは、耐摩耗性を提供し、かつ、アイレットの変形を軽減する。少なくとも1本の可融性ヤーンは、単独で使用されるか、または、例えばポリエステルヤーンまたは弾性ヤーンなどの他の非可融性ヤーンとの組合わせで使用され得る。この場合、可融性ヤーンは、非可融性ヤーンまたは弾性ヤーンと一緒に普通に編まれてもよく、または、可融性ヤーンは、編成構成要素の外観が可融性ヤーンの存在によって影響されないように、例えば内部表面に向かってプレーティングされてもよい。
【0020】
可融性ヤーンは、輪奈の連続的な列のセットの列内にのみ配置され得る。これは、シューアッパーの全体的なストレッチ性を維持しながら十分な剛性および安定性をアイレットに提供することを可能にする。あるいは、可融性ヤーンは、アイレットの周りの領域であるレースバー(lace bar)の領域に設けられて、この領域に特に支持を提供してもよい。レースバーは、本明細書において説明されるような連続的な列の複数のセットにより、シューアッパーの甲領域の外側および内側上に画定され得る。これらのセット、およびそれらによって形成されるアイレットは、位置合わせされることが好ましい。
【0021】
可融性ヤーンは、ポリエステルヤーン、ポリアミドヤーン、またはウレタンベースのヤーンの中から選択され得る。可融性ヤーンは、TPU、ポリアミド(PA6+PA66)、ポリエステル(スピニングが非常に大きな衝撃を有している間に延伸する)、およびパラフィンで作られ得る。使用される可融性ヤーンは、低融点ヤーン、すなわち好ましくは50から100℃の間の融解温度を有するヤーンであることが、好ましい。あるいは、可融性ヤーンは、ポリアミドまたは可融性ポリステルベースのヤーンの中から選択され得る。
【0022】
シューアッパーは、内側編成層および外側編成層を単一ニット構造で備えることができ、この場合、内側層および外側層は、少なくともシューアッパーのカラー領域内で接続され、外側層が内側層に被せられるか、または、内側層が外側層内に挿入される。これは、シューアッパーの安定性および快適性を高める。さらに、2つの層は、異なる機能を備えてもよい。例えば、内側層は、柔軟な吸湿性の(moisture-wicking)ヤーンから作られてもよく、一方で、外側層は、耐摩耗性のヤーンから作られてもよい。
【0023】
輪奈の連続的な列のセットは、外側層上に配置され得る。これは、容易な紐通しを可能にする。
【0024】
2つの層は、輪奈の連続的な列のセットの領域内で重なり合ってもよい。そうすると、下の層は、アイレットの下の緩衝材として機能し得る。
【0025】
2つの層は、輪奈の連続的な列のセットの領域内で接続されなくてもよい。この領域では、2つの層は、紐が締められるときに相対運動を可能にするために、重なり合うだけでよい。
【0026】
2つの層は、アッパーの甲の領域内で重なり合ってよく、かつ、甲の領域内で接続されなくてもよい。これにより、内側の層またはソックスが足を取り囲みかつ保持する一方で、外側の層またはソックスが紐締めを介して独立に調整され得るので、より良好なフィットが可能になる。このようにして、外側のソックスは、良好な形状を保つ。シューアッパーは、内部および外部のソックスを画定する2つの層を含む、ソックス-イン-ソックス構造であってよい。2つの層は、小型丸編み機によって作られ、特に各層がシングルジャージ層であることが、好ましい。
【0027】
編成構成要素は、輪奈の連続的な列のセットの領域内に、少なくとも1本の弾性ヤーンを備え得る。弾性ヤーンは、アイレットが所望の形状を得てそれを維持するのに役立つ。弾性ヤーンは、可融性ヤーンおよび/もしくは非可融性ヤーンの代わりにまたはそれに加えて使用されてもよい。アイレットに弾性ヤーンのみが加えられる場合、通常は高額である可融性ヤーンの費用が節約され得る。弾性ヤーンはアイレットの形状を維持するのに十分なものであり得ることを、本発明者らは認識した。
【0028】
弾性ヤーンは、輪奈の連続的な列のセットの列内にのみ配置され得る。したがって、弾性ヤーンは、アイレットを特異的に安定させる。あるいは、またはさらに、弾性ヤーンは、シューアッパーのレースバーの端から端まで配置され得る。
【0029】
弾性ヤーンは、編成構成要素の別のヤーンよりも高い弾性のものであり得る。
【0030】
外側層上のアイレットは、さらなる紐輪奈を受け入れるように構成され得る。さらなる紐輪奈は、内側層から外側層のアイレットを通って外に出る。この実施形態では、さらなる紐輪奈は、外側層のアイレットの代わりに紐を受け入れるように構成される。
【0031】
さらなる紐輪奈は、外側層のアイレットと同じように編成され得るが、代わりに内側層上に編成される。このさらなる紐輪奈の長さは、外側層のアイレットよりも長い。
【0032】
これらの編成紐輪奈の両方が、二重輪奈で編成される紐締めシステムを一緒に形成する。このシステムは、一様に分散されるけん引強さを提供することができ、このけん引強さは、アッパー全体にわたってうまく分散される。システムは、足の圧迫を軽減するとともに、引張り強さの向上を実現することができる。結果として、より優れた快適さが得られる。システムはまた、紐締めシステムが配置され得る方向の選択において、より高い融通性を提供し得る。
【0033】
本発明はまた、本明細書において説明されるような本発明によるシューアッパーと、シューアッパーに取り付けられるソール構造体と、を備える靴に関する。
【0034】
本発明はまた、編成構成要素を用意するステップと、連続的な列のセット内の各列が複数の連続的な輪奈を備え、複数の連続的な輪奈がそれぞれの列の隣接する輪奈と輪奈係合されかつセット内に含まれない列の輪奈とは輪奈係合されないように、複数の一体に編成された輪奈の列を編成構成要素に設けるステップと、紐を受け入れるように構成されるアイレットの少なくとも一部分として連続的な列のセットを形成するステップとを含む、シューアッパーを製造する方法を対象とする。
【0035】
本発明によるシューアッパーの述べられた利点はまた、対応する製造方法で実現され、ここでは繰り返されない。これは、方法の以下の実施形態にも当てはまる。必要に応じて、さらなる利点が述べられる。
【0036】
方法は、引返し編みにより連続的な列のセットを編成するステップを、さらに含み得る。
【0037】
方法において、列は、ウェールであり得る。
【0038】
方法は、連続的な列のセット内の第1の列およびセットに含まれない第1の隣接する列を使用して編成構成要素内に第1の開口を形成するステップと、連続的な列のセット内の最後の列およびセット内に含まれない第2の隣接する列を使用して編成構成要素内に第2の開口を形成するステップと、紐が両方の開口を通過することができるように第1および第2の開口を構成するステップと、をさらに含み得る。
【0039】
方法において、連続的な列のセット内の第1の列は、アイレットの第1の端部からアイレットの第2の端部まで延在することができ、かつ、第1の数の輪奈を含むことができ、セットに含まれない第2の列は、アイレットの第1の端部に隣接する輪奈とアイレットの第2の端部に隣接する輪奈との間の全ての輪奈を含むことができ、かつ、第2の数の輪奈を含むことができ、この場合、第1の数は、第2の数よりも大きくてよい。
【0040】
方法において、アイレットは、5から15mmの間の幅を有し得る。
【0041】
方法において、連続的な列のセットは、4~10個の列を含み得る。
【0042】
方法において、輪奈の連続的な列のセット内の列は、10から30mmの間の長さを有し得る。
【0043】
方法において、輪奈の連続的な列のセット内の各列は、15~25個の輪奈を含み得る。
【0044】
方法において、輪奈の連続的な列のセット内の第1の列と最後の列との間に位置する列の輪奈の数は、第1の列および最後の列の輪奈の数よりも大きくてよい。
【0045】
方法は、輪奈の連続的な列のセットの領域内に少なくとも1本の可融性ヤーンを配置するステップを、さらに含み得る。
【0046】
方法は、輪奈の連続的な列のセットの列内にのみ可融性ヤーンを配置するステップを、さらに含み得る。
【0047】
方法において、可融性ヤーンは、ポリエステルヤーン、ポリアミドヤーン、またはウレタンベースのヤーンの中から選択され得る。ヤーンは、熱可塑性ポリウレタン、TPUを含んでもよい。
【0048】
方法は、内側編成層および外側編成層を単一ニット構造で設けるステップと、内側層および外側層を少なくともシューアッパーのカラー領域内で接続してシューアッパーを形成するステップと、外側層を内側層に被せるかまたは内側層を外側層内に挿入してシューアッパーを形成するステップと、をさらに含み得る。2つの層をカラー領域内で接続するステップは、内側層から外側層への移行部が継ぎ目のないものであるように、2つの層を編成する間に一体的に行われ得る。さらに、2つの層は、例えば縫い合わせることにより、別の領域、例えばつま先またはソールの領域内で接続され得る。
【0049】
方法は、輪奈の連続的な列のセットを外側層上に形成するステップを、さらに含み得る。
【0050】
方法において、2つの層は、輪奈の連続的な列のセットの領域内で重なり合ってもよい。
【0051】
方法において、2つの層は、輪奈の連続的な列のセットの領域内で接続されなくてもよい。
【0052】
方法において、2つの層は、アッパーの甲の領域内で重なり合ってよく、かつ、甲の領域内で接続されなくてもよい。
【0053】
方法は、輪奈の連続的な列のセットの領域内に少なくとも1本の弾性ヤーンを設けるステップを、さらに含み得る。述べたように、この場合、可融性ヤーンは省かれ得る。アイレット領域内に可融性ヤーンが存在しない場合、製造方法では、以下で説明されるようにヒートセット中に紐輪奈のそれぞれの内側にピンを設置するステップが必要とされない。ヒートセットは、編成プロセスに由来するヤーンへのトルクを除去するために、また、シューアッパーの形状を安定させるために、なおも行われ得るが、アイレット上の可融性ヤーンを溶融させるための特定のヒートセットステップは、必要とされない。
【0054】
方法は、アッパーをヒートセットするステップを含み得る。ヒートセットは、50~130℃の温度範囲内で行われ得る。この範囲は、ほとんど全ての関連材料を、それらの要素を破壊することなしにカバーする。より具体的には、ヒートセットは、約100℃の温度で行われ得る。ヒートセットは、蒸し箱内で行われ得る。
【0055】
方法は、輪奈の連続的な列のセットの列内にのみ弾性ヤーンを配置するステップを、さらに含み得る。
【0056】
方法において、弾性ヤーンは、編成構成要素の別のヤーンよりも高い弾性のものであり得る。
【0057】
方法は、小型丸編み機を使用してニット構成要素を用意するステップを、さらに含み得る。
【0058】
方法は、輪奈の連続的な列のセットによって形成されたアイレットの内側にピンを設置して、シューアッパーのヒートセット中にピンをアイレット内に維持するステップを、さらに含み得る。これは、アイレットが可融性ヤーンを備える場合に、ヒートセット中にアイレットを安定させかつ成形するのに有利であり得る。
【0059】
方法は、シューアッパーをヒートセットするステップを、さらに含み得る。
【0060】
本発明はまた、本明細書において説明されるような本発明による方法によって得られるシューアッパーに関する。
【0061】
本発明は、以下の実施形態を含む。
【0062】
(1)
シューアッパーであって、
編成構成要素
を備え、この編成構成要素が、
連続的な列のセットを含む複数の一体に編成された輪奈の列
を含み、
連続的な列のセット内の各列が、それぞれの列の隣接する輪奈と輪奈係合されかつセットに含まれない列の輪奈とは輪奈係合されない複数の連続的な輪奈を含み、また、
連続的な列のセットが、紐を受け入れるように構成されるアイレットの少なくとも一部分を形成する、
シューアッパー。
【0063】
(2)
連続的な列のセットが引返し編みによって編まれる、(1)に記載のシューアッパー。
【0064】
(3)
列がウェールである、(1)または(2)に記載のシューアッパー。
【0065】
(4)
連続的な列のセット内の第1の列、およびセットに含まれない第1の隣接する列が、編成構成要素内に第1の開口を形成し、
連続的な列のセット内の最後の列、およびセットに含まれない第2の隣接する列が、編成構成要素内に第2の開口を形成し、
第1および第2の開口が、紐が両方の開口を通過することができるように構成される、
(1)~(3)のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【0066】
(5)
連続的な列のセット内の第1の列が、アイレットの第1の端部からアイレットの第2の端部まで延在し、かつ、第1の数の輪奈を含み、セットに含まれない第2の列が、アイレットの第1の端部に隣接する輪奈とアイレットの第2の端部に隣接する輪奈との間の全ての輪奈を含み、かつ、第2の数の輪奈を含み、第1の数が、第2の数よりも大きい、
(1)~(4)のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【0067】
(6)
アイレットが、5から15mmの間の幅を有する、(1)~(5)のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【0068】
(7)
連続的な列のセットが、2~10個の列を含む、(1)~(6)のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【0069】
(8)
輪奈の連続的な列のセット内の列が、10から30mmの間の長さを有する、(1)~(7)のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【0070】
(9)
輪奈の連続的な列のセット内の各列が、15~25個の輪奈を含む、(1)~(8)のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【0071】
(10)
輪奈の連続的な列のセット内の第1の列と最後の列との間に位置する列の輪奈の数が、第1および最後の列の輪奈の数よりも大きい、(1)~(9)のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【0072】
(11)
編成構成要素が、輪奈の連続的な列のセットの領域内に少なくとも1本の可融性ヤーンを備える、(1)~(10)のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【0073】
(12)
可融性ヤーンが、輪奈の連続的な列のセットの列内にのみ配置される、(11)に記載のシューアッパー。
【0074】
(13)
可融性ヤーンが、ポリエステルヤーン、ポリアミドヤーン、またはウレタンベースのヤーンの中から選択される、(10)または(11)に記載のシューアッパー。
【0075】
(14)
内側編成層および外側編成層を単一ニット構造で備え、内側層および外側層が、少なくともシューアッパーのカラー領域内で接続され、外側層が内側層に被せられるか、または、内側層が外側層内に挿入される、(1)~(13)のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【0076】
(14-1)
内側層および外側層を備え、アイレットが、外側層上に構成され、また、アイレットが、さらなる紐輪奈を受け入れるように構成される、(1)~(13)のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【0077】
(15)
輪奈の連続的な列のセットが、外側層上に配置される、(14)に記載のシューアッパー。
【0078】
(16)
2つの層が、輪奈の連続的な列のセットの領域内で重なり合う、(14)または(15)に記載のシューアッパー。
【0079】
(17)
2つの層が、輪奈の連続的な列のセットの領域内で接続されない、(16)に記載のシューアッパー。
【0080】
(18)
2つの層が、アッパーの甲の領域内で重なり合い、かつ、甲の領域内で接続されない、(14)~(17)のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【0081】
(19)
編成構成要素が、輪奈の連続的な列のセットの領域内に少なくとも1本の弾性ヤーンを備える、(1)~(18)のいずれか1つに記載のシューアッパー。
【0082】
(20)
弾性ヤーンが、輪奈の連続的な列のセットの列内にのみ配置される、(19)に記載のシューアッパー。
【0083】
(21)
弾性ヤーンが、編成構成要素の別のヤーンよりも高い弾性のものである、(19)または(20)に記載のシューアッパー。
【0084】
(22)
(1)~(21)のいずれか1つに記載のシューアッパーと、
シューアッパーに取り付けられたソール構造体と
を備える、靴。
【0085】
(23)
シューアッパーを製造する方法であって、
編成構成要素を用意するステップと、
連続的な列のセット内の各列が複数の連続的な輪奈を備え、複数の連続的な輪奈がそれぞれの列の隣接する輪奈と輪奈係合されかつセットに含まれない列の輪奈とは輪奈係合されないように、連続的な列のセットを含む複数の一体に編成された輪奈の列を編成構成要素に設けるステップと、
紐を受け入れるように構成されるアイレットの少なくとも一部分として連続的な列のセットを形成するステップと
を含む、方法。
【0086】
(24)
引返し編みにより連続的な列のセットを編成するステップをさらに含む、(23)に記載の方法。
【0087】
(25)
列がウェールである、(23)または(24)に記載の方法。
【0088】
(26)
連続的な列のセット内の第1の列およびセットに含まれない第1の隣接する列を使用して編成構成要素内に第1の開口を形成するステップと、
連続的な列のセット内の最後の列およびセットに含まれない第2の隣接する列を使用して編成構成要素内に第2の開口を形成するステップと、
紐が両方の開口を通過することができるように第1および第2の開口を構成するステップと
をさらに含む、(23)~(25)のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
(27)
連続的な列のセット内の第1の列が、アイレットの第1の端部からアイレットの第2の端部まで延在し、かつ、第1の数の輪奈を含み、セットに含まれない第2の列が、アイレットの第1の端部に隣接する輪奈とアイレットの第2の端部に隣接する輪奈との間の全ての輪奈を含み、第1の数が、第2の数よりも大きい、
(23)~(26)のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
(28)
アイレットが、5から15mmの間の幅を有する、(23)~(27)のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
(29)
連続的な列のセットが、2~10個の列を含む、(23)~(28)のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
(30)
輪奈の連続的な列のセット内の列が、10から30mmの間の長さを有する、(23)~(29)のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
(31)
輪奈の連続的な列のセット内の各列が、15~25個の輪奈を含む、(23)~(30)のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
(32)
輪奈の連続的な列のセット内の第1の列と最後の列との間に位置する列の輪奈の数が、第1および最後の列の輪奈の数よりも大きい、(23)~(31)のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
(33)
輪奈の連続的な列のセットの領域内に少なくとも1本の可融性ヤーンを配置するステップをさらに含む、(23)~(32)のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
(34)
輪奈の連続的な列のセットの列内にのみ可融性ヤーンを配置するステップをさらに含む、(33)に記載の方法。
【0097】
(35)
可融性ヤーンが、ポリエステルヤーン、ポリアミドヤーン、またはウレタンベースのヤーンの中から選択される、(33)または(34)に記載の方法。
【0098】
(36)
内側編成層および外側編成層を単一ニット構造で設けるステップと、
少なくともシューアッパーのカラー領域内で内側層および外側層を接続するステップと、
外側層を内側層に被せるかまたは内側層を外側層内に挿入してシューアッパーを形成するステップと
をさらに含む、(23)~(35)のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
(37)
輪奈の連続的な列のセットを外側層上に形成するステップをさらに含む、(36)に記載の方法。
【0100】
(38)
2つの層が、輪奈の連続的な列のセットの領域内で重なり合う、(36)または(37)に記載の方法。
【0101】
(39)
2つの層が、輪奈の連続的な列のセットの領域内で接続されない、(38)に記載の方法。
【0102】
(40)
2つの層が、アッパーの甲の領域内で重なり合い、かつ、甲の領域内で接続されない、(36)~(39)のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
(41)
輪奈の連続的な列のセットの領域内に少なくとも1本の弾性ヤーンを設けるステップをさらに含む、(23)~(40)のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
(42)
輪奈の連続的な列のセットの列内にのみ弾性ヤーンを配置するステップをさらに含む、(41)に記載の方法。
【0105】
(43)
弾性ヤーンが、編成構成要素の別のヤーンよりも高い弾性のものである、(41)または(42)に記載の方法。
【0106】
(44)
小型丸編み機を使用してニット構成要素を用意するステップをさらに含む、(23)~(43)のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
(45)
輪奈の連続的な列のセットによって形成されたアイレットの内側にピンを設置して、シューアッパーのヒートセット中にピンをアイレット内に維持するステップをさらに含む、(22)~(41)のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
(46)
シューアッパーをヒートセットするステップをさらに含む、(23)~(45)のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
(47)
(23)~(46)のいずれか1つに記載の方法によって得られる、シューアッパー。
【0110】
本発明の目下好ましい実施形態が、以下の図を参照しながら、以下の詳細な説明において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
図1A】本発明によるシューアッパー10の一実施形態を示す図である。
図1B】本発明によるシューアッパー10の一実施形態を示す図である。
図2A】本発明によるシューアッパー10の別の実施形態を示す図である。
図2B】本発明によるシューアッパー10の別の実施形態を示す図である。
図3A】本発明によるアイレットの構造の細部を示す図である。
図3B】本発明によるアイレットの構造の細部を示す図である。
図4A】アイレットを安定させるためのピンの使用を示す図である。
図4B図4Aの実施形態に対する代替実施形態を示す図である。
図4C図4Aおよび4Bの実施形態に対する別の代替実施形態を示す図である。
図4D】アイレットを安定させるための櫛-または蜘蛛-様の構造物の使用を示す図である。
図5A図4Dの例で使用される構造物をより詳細に示す図である。
図5B図4Dの例で使用される構造物をより詳細に示す図である。
図5C図4Dの例で使用される構造物をより詳細に示す図である。
図6A】本発明によるアイレット内での弾性ヤーンの使用を示す図である。
図6B】本発明によるアイレット内での弾性ヤーンの使用を示す図である。
図7A】本発明によるアイレットの細部を示す図である。
図7B】本発明によるアイレットの細部を示す図である。
図8A】本発明による靴の一実施形態を示す図である。
図8B】本発明による靴の一実施形態を示す図である。
図8C】本発明による靴の一実施形態を示す図である。
図8D】本発明による靴の一実施形態を示す図である。
図9】本発明によるアイレットを作り出すための例示的な編成シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0112】
図1Aおよび1Bは、本発明によるシューアッパー10の一実施形態を示す。この実施形態では、シューアッパー10は、2つのソックス様の層11および12から作られ、これらのソックス様の層11および12は、それぞれのソックス様の層11および12のカラー領域13において接続される。図1Aおよび1Bの実施形態では、両方の層が、小型丸編み機上で単一の編成プロセスにおいて1つの部分として、すなわち単一ニット構造として作られる。2つのソックス11および12は、連続的な、好ましくはシングルジャージの、円筒状の編地として作り出される。一般に、本発明の文脈において、シューアッパーは、異なる数の層、例えばただ1つの層だけを有し得る。2つの層の場合、層はまた、別々に作られてから例えばリンキング、縫い付け、溶接、接着、等によって継合され得る。また、小型丸編み機の代わりに、中型もしくは大型の丸編み機、または横編み機が使用されてもよい。機械は、1つ、2つ、さらには3つ以上の針床を有し得る。一般に、本発明の文脈において、緯編みまたは経編みが使用され得る。適切な編糸は、ポリエステルのような合成材料をベースとし得るが、綿などの天然糸も同様に使用され得る。
【0113】
図1Aおよび1Bの実施形態に戻ると、層11は、シューアッパー10の外側層であり、一方で、層12は、シューアッパー10の内側層である。外側層11は、内側層12に被せられ、また、両方の層は、例えばリンキング、縫い付け、溶接、または接着により、それらのそれぞれの自由端13および14において継合される。ソックス11および12は、円筒として作られるので、それらのそれぞれの自由端13および14に開口部を備え、これらの開口部もまた、このプロセスによって閉じられる。開口部は、継目がソールによって完全に隠され得るように、層(ソックス)の底部上で長手方向に位置することが好ましい。最終的なシューアッパー10では、接続された自由端は、シューアッパー10のソール領域内に配置されることになり、したがって、目に見えなくなる。内側層12は、外側層11内に挿入される。あるいは、外側層11は、内側層12に被せられ得る。外側層11を内側層12に被せることは、最後に行われ得る。
【0114】
図1Aおよび1Bの実施形態の外側層11は、シューアッパー10の編成構成要素である。この実施形態では、編成構成要素は、シューアッパー10の大部分を構成する。他の実施形態では、編成構成要素は、より小さく、かつ、シューアッパー10の一部分のみを構成し得る。シューアッパーの他の部分は、様々な材料、例えば皮革、人工皮革、織物、不織物、メッシュ、等から作られ得る。
【0115】
編成構成要素、すなわち外側層11は、複数の一体に編成された輪奈の列を備える。一般に、輪奈の列が得られるように少なくとも1本のヤーンを輪奈係合することにより、編地が得られる。本発明の文脈において、列は、コースまたはウェールのいずれかであり得る。編成構成要素11は、連続的な列のセットを含み、連続的な列のセット内の各列は、それぞれの列の隣接する輪奈と輪奈係合されかつセットに含まれない列の輪奈とは輪奈係合されない複数の連続的な輪奈を含む。したがって、このセットの列の輪奈は、同じ列内の輪奈にまたは隣接する列の隣接する輪奈にのみ接続されるが、セットに含まれない列の輪奈には接続されない。このようにして、連続的な列のセットは、紐16を受け入れるように構成されるアイレットの少なくとも一部分を形成する。図1Aおよび1Bの実施形態では、それらのアイレットのうちの3つが、参照番号15によって示されている。図1Aは、紐を含まないシューアッパー10を示し、図1Bでは、紐16が、アイレット15に通されている。図1Aおよび1Bの例では、引返し編みにより、連続的な列のセットが得られる。引返し編みでは、他の輪奈が非編成位置に保持されている間に、編成により輪奈の群が形成される。引返し編みは、相応にプログラムされた編み機によって行われ得る。引返し編みは、シューアッパーのアイレットを一体的な構造体として編成中に直接設けることを可能にする。
【0116】
図2Aおよび2Bは、図1Aおよび1Bと同様のシューアッパー10の実施形態を示す。シューアッパー10は、ソックス-イン-ソックス構造であり、図2Aおよび2Bの実施形態では、ソックスは、具体的には内側ソックスを外側ソックスの中に入れることにより、一方のソックスが他方のソックスの中に入れられている。図1Bに示されるように、内側および外側のソックスのそれぞれの自由端における開口部は、ソックスの底部上で、すなわちソール領域において、長手方向継目21によって閉じられる。
【0117】
図3Aおよび3Bは、本発明によるアイレット15の構造の細部を示し、ここで、図3Aは、シングルジャージ編成構成要素11の前面を示し、図3Bは、シングルジャージ編成構成要素11の背面を示し、前面上のアイレット15の2つの領域は、長方形31によって強調されている。図3Aに示されるように、アイレット15は、輪奈の列によって形成される。これらの列のうちの3つが、参照番号31によって例示的に示されている。これらの列31の輪奈は、それぞれの列の輪奈と輪奈係合されるが、連続的な列のセットに関係する隣接する列31の輪奈とも輪奈係合される。アイレット15を構成する輪奈の列は、連続的な列のセットを形成する。編成構成要素11はまた、セットに含まれない他の輪奈の列を含む。これらの列のうちの3つが、参照番号32によって例示的に示されている。アイレット15を構成する輪奈の連続的な列のセット内の列31は、列32と輪奈係合されない。このようにして、アイレット15の両側に2つの開口部が作り出され、それらの開口部に紐が通され得る。
【0118】
アイレット15に安定性を提供するために、アイレット15を構成する輪奈の連続的な列のセットの列内に可融性ヤーンが配置され得る。可融性ヤーンを活性化するために、シューアッパー10は、例えば約100℃の温度の蒸し箱にシューアッパー10を入れることにより、ヒートセットされる。ヒートセット中にアイレットを安定させるために、輪奈の連続的な列のセットによって形成されたアイレット15の中にピンが入れられ得る。これは、図4Aに示されており、図4Aでは、それらのピンのうちの3つが、参照番号41によって例示的に示されている。ピン41は、金属、またはアッパーおよび特に可融性ヤーンのヒートセット中の熱に抵抗することが可能な任意の他の材料から作られ得る。好ましい実施形態では、ピン41は、52mmの長さおよび5mmの直径を有する。
【0119】
図4Bは、図4Aに示されたピンの代替実施形態を示す。この例におけるピンは、様々な長さを有し、かつ、対応する保持器43内に提供されている。
【0120】
図4Cは、目下好ましいものであるピン41のさらに別の実施形態を示す。この例におけるピン41は、軟質材料から作られる。軟質材料は、各ピン41(またはフィンガ)が、しなやかでありかつ屈曲し、各アイレットに容易に挿入され、また各アイレットになじむことを可能にする。ピン41は、(外側および内側上の)紐穴の両方のセットを通して配置されるのに十分な長さである。例示的な実施形態では、5つのピンが、共通の基部44によって接続される。したがって、例えば、これらの構造物のうちの2つだけが、1つの靴に必要とされる。当然ながら、他の実施形態では、異なる数のピン41が、共通の基部上に設けられ得る。
【0121】
図4Dに示された代替実施形態では、櫛-または蜘蛛-様の構造物42が、ヒートセット中のアイレット15を安定させるために使用される。この構造物は、図5A、5Bおよび5Cにより詳細に示されており、図5Aは、正面図を示し、図5Bは、側面図を示し、図5Cは、斜視図を示す。構造物42は、そこからピン41が突出する本体51を備える。構造物は、複数のピン41を対応するアイレット15内に同時にかつ単一ステップで挿入することを可能にする。構造物42は、3D印刷プロセスによって得られ得る。
【0122】
図6Aおよび6Bは、弾性ヤーンがアイレット15に追加されている、本発明によるシューアッパー10の一実施形態を示す。この実施形態では、アイレット15は、可融性ヤーンを含まない。弾性ヤーンは、シューアッパー10をヒートセットしてシューアッパー10の形状を安定させる場合でも、アイレットを安定させるのに十分である。この場合、アイレット15上の可融性ヤーンを溶融させるための特定のヒートセットステップは、必要とされない。また、ヒートセット中にアイレット15内にピンを入れることは、必要とされない。
【0123】
図7Aおよび7Bは、本発明によるシューアッパーのアイレット15の細部を示す。アイレット15を構成する輪奈の連続的な列のセットは、第1の列71を含む。この列の輪奈は、セットのうちの隣接する列の対応する輪奈と輪奈係合されるが、セットに含まれない隣接する列72の輪奈とは輪奈係合されない。このようにして、紐が通され得る開口73が作り出される。アイレット15は、反対側に同様の開口を備える。図7Aおよび7Bに示されたシューアッパーは、上記で説明されたようにソックス-イン-ソックス構造に基づく。外側層11は、内側層12を覆う。図7Aの例示的な実施形態では、外側層11はいくつかの開口部を備え、それらの開口部を通して内側層12が目に見える。
【0124】
図8A、8B、8Cおよび8Dは、本発明による靴80の一実施形態を示す。靴は、本明細書において説明されたような本発明によるシューアッパー10と、シューアッパー10に取り付けられたソール構造体81とを備える。ソール構造体81は、PUソール材料をシューアッパー10上に直接射出することにより、シューアッパー10に取り付けられる。本発明の文脈において、ソール81をアッパー10に取り付ける他の手段が、当然ながら考えられる。
【0125】
シューアッパー10は、連続的な列のセットを含む輪奈の列のセットによって形成された複数のアイレット15を具備するニット要素を備え、連続的な列のセット内の各列は、それぞれの列の隣接する輪奈と輪奈係合されかつセットに含まれない列の輪奈とは輪奈係合されない、複数の連続的な輪奈を含む。図8Dに示されるように、アイレット15は、紐16を受け入れるように構成される。
【0126】
図9は、本明細書において説明されたような編成構成要素内にアイレット51を得るための例示的な編成シーケンスを示す。編成シーケンスは、適切なプログラムとして編み機に提供されてよく、また、アイレット15は、引返し編みによって得られ得る。
【符号の説明】
【0127】
10 シューアッパー
11 ソックス様の層、外側層
12 ソックス様の層、内側層
13 カラー領域、自由端
14 自由端
15 アイレット
16 紐
21 長手方向継目
31 長方形、列
32 列
41 ピン
43 保持器
42 構造
44 基部
51 本体
71 第1の列
72 列
73 開口
80 靴
81 ソール構造体
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図9