(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】すくみ足の患者向けの治療的電気刺激療法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2020505161
(86)(22)【出願日】2018-04-11
(86)【国際出願番号】 US2018027144
(87)【国際公開番号】W WO2019027512
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-02-17
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジエンピーン
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ,スティーブン・エム
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0165481(US,A1)
【文献】Arun Singh et al.,Freezing of gait-related oscillatory activity in the human subthalamic nucleus,Basal Ganglia,2013年03月01日,Volume 3, Issue 1(2013),p25-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者がすくみ足(freezing of gait)に関連付けられる運動を行っている間に前記患者の脳の生体電気信号を検知するように構成された1つまたは複数の電極と、
1つまたは複数のプロセッサであって、
前記生体電気信号に基づいて、前記患者がすくみ足の発現を経験していない間に前記患者がすくみ足になりやすいことを判定し、
前記判定に基づいて、すくみ足に関連付けられる運動が検出されるとすくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を前記患者に送達するよう医療装置をプログラムするように構成された、
1つまたは複数のプロセッサと
を備え、
前記患者がすくみ足になりやすいことを前記生体電気信号に基づいて判定するために、前記1つまたは複数のプロセッサは、
前記患者が動いている間に検知された前記生体電気信号の振幅が、前記患者が運動していない間に検知された前記生体電気信号の振幅よりも実質的に小さいと判定されると、前記患者がすくみ足になりやすいと判定するようにさらに構成されており、
前記1つまたは複数のプロセッサが、
前記医療装置による第1の周波数での第1の電気刺激治療の前記患者への送達を制御し、
すくみ足に関連付けられる運動を検出し、
すくみ足に関連付けられる運動が検出されたのに応答して、前記医療装置による前記第1の周波数での前記第1の電気刺激治療の前記患者への送達を制御することから、前記医療装置による第2の周波数での第2の電気刺激治療の前記患者への送達を制御することへと切り換えるようにさらに構成されている、
医療システム。
【請求項2】
患者の脳の前記生体電気信号を検知するために、前記1つまたは複数の電極が、
前記患者が運動していない間に前記生体電気信号を検知し、
前記患者がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に前記生体電気信号を検知するようにさらに構成された、
請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
すくみ足に関連付けられる運動が、方向転換運動(turning movement)、足踏み(stepping)運動、または起立(standing)運動から足踏み運動への移行のうちの少なくとも1つを含む、請求項1
又は2のいずれかに記載の医療システム。
【請求項4】
前記患者の前記脳の前記生体電気信号が、約11ヘルツ~約30ヘルツの周波数を含む前記患者の前記脳のベータ信号である、請求項1から
3のいずれかに記載の医療システム。
【請求項5】
患者の脳の前記生体電気信号を検知するために、前記1つまたは複数の電極が、前記患者の前記脳の局所フィールド電位(LFP)を検知するようにさらに構成されている、請求項1から
4のいずれかに記載の医療システム。
【請求項6】
前記生体電気信号が、前記患者のすくみ足に関連付けられるバイオマーカである、請求項1から
5のいずれかに記載の医療システム。
【請求項7】
前記第1の周波数が約130ヘルツ~約185ヘルツの範囲から選択され、
前記第2の周波数が約60ヘルツ~約70ヘルツの範囲から選択される、
請求項
1に記載の医療システム。
【請求項8】
前記第2の電気刺激治療が、前記患者のパーキンソン病によるすくみ足を抑制するように構成され、
前記第1の電気刺激治療が、すくみ足以外の、前記患者のパーキンソン病の1つまたは複数の症状を抑制するように構成される、
請求項
1または7に記載の医療システム。
【請求項9】
前記1つまたは複数のプロセッサが、
すくみ足に関連付けられる運動の中止を検出し、
すくみ足に関連付けられる運動の中止が検出されたのに応答して、前記第2の周波数での前記第2の電気刺激治療の前記患者への送達から、前記第1の周波数での前記第1の電気刺激治療の前記患者への送達へと切り換えるようにさらに構成されている、
請求項1から
8のいずれかに記載の医療システム。
【請求項10】
命令を含む一時的でないコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、実行されると、1つまたは複数のプロセッサに、
患者がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間、1つまたは複数の電極を介して前記患者の脳の生体電気信号を検知させ、
前記生体電気信号に基づいて、前記患者がすくみ足の発現を経験していない間に前記患者がすくみ足になりやすいことを判定させ、
前記判定に基づいて、すくみ足に関連付けられる運動が検出されるとすくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を前記患者に送達するよう医療装置をプログラムさせ、
前記患者がすくみ足になりやすいことを前記生体電気信号に基づいて判定するために、前記1つまたは複数のプロセッサは、
前記患者が動いている間に検知された前記生体電気信号の振幅が、前記患者が運動していない間に検知された前記生体電気信号の振幅よりも実質的に小さいと判定されると、前記患者がすくみ足になりやすいと判定し、
前記命令がさらに、前記1つまたは複数のプロセッサに、
第1の周波数で第1の電気刺激治療を前記患者に送達するよう前記医療装置を制御させ、
すくみ足に関連付けられる運動を検出させ、
すくみ足に関連付けられる運動が検出されたのに応答して、前記第1の周波数で前記第1の電気刺激治療を前記患者に送達するよう前記医療装置を制御することから、第2の周波数で第2の電気刺激治療を前記患者に送達するよう前記医療装置を制御することへと切り換えさせる、
コンピュータ可読媒体。
【請求項11】
患者がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に前記患者の脳の生体電気信号を検知するための手段と、
前記生体電気信号に基づいて、前記患者がすくみ足の発現を経験していない間に前記患者がすくみ足になりやすいことを判定するための手段と、
前記判定に基づいて、すくみ足に関連付けられる運動が検出されるとすくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を前記患者に送達するよう医療装置をプログラムするための手段と
を備え、
更に、
前記患者がすくみ足になりやすいことを前記生体電気信号に基づいて判定するための、
前記患者が動いている間に検知された前記生体電気信号の振幅が、前記患者が運動していない間に検知された前記生体電気信号の振幅よりも実質的に小さいと判定されると、前記患者がすくみ足になりやすいと判定するための手段と、
第1の周波数で第1の電気刺激治療を前記患者に送達するよう前記医療装置を制御するための手段と、
すくみ足に関連付けられる運動を検出するための手段と、
すくみ足に関連付けられる運動が検出されたのに応答して、前記第1の周波数で前記第1の電気刺激治療を前記患者に送達するよう前記医療装置を制御することから、第2の周波数で第2の電気刺激治療を前記患者に送達するよう前記医療装置を制御することへと切り換えるための手段と、
を備える、医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、一般に医療装置に関し、より詳細には電気刺激治療を送達する医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]種々の病状を治療するために、医療装置が使用される場合がある。たとえば、医療用電気刺激装置は、埋込み型の電極を介して電気刺激治療を患者に送達することができる。電気刺激治療には、神経組織、筋肉組織もしくは脳組織、または患者の体内の他の組織を刺激することが含まれ得る。電気刺激装置は、患者の体内に完全に埋め込まれる場合がある。たとえば、電気刺激装置は、埋込み可能な電気刺激発生装置と、電極を保持する埋込み可能な1つまたは複数のリードとを含む場合がある。別法として、電気刺激装置はリードのない刺激装置を備える場合もある。場合によっては、埋込み可能電極は、1つまたは複数の経皮リード、または完全に埋込み型のリードにより、外部の電気刺激発生装置に結合されることもある。
【0003】
[0003]疾患によるものであれ外傷によるものであれ、運動障害または他の神経変性疾患にかかっている患者は、硬直、動作緩慢(すなわち身体運動の遅さ)、周期性運動過多(たとえば振戦)、非周期性運動過多(たとえばチック)、または無動(すなわち身体運動の消失)など、筋制御および運動上の問題を経験することがある。運動障害は、数ある病状の中でもとりわけパーキンソン病、多発性硬化症、および脳性麻痺の患者に見られる場合がある。医療装置により、患者の脳、脊髄、脚の筋肉または腕の筋肉など、患者の体内の1つまたは複数の部位に電気刺激および/または流体(たとえば医薬品)を送達することは、運動障害に関連付けられる症状を軽減し、場合によっては解消する助けとなる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明の一実施例は、例えば、すくみ足の患者向けの治療的電気刺激療法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0004]本開示では、いくつかの例において、患者がすくみ足の発現を示していない場合に、患者が歩行運動中にすくみ足を発現しやすいかどうかを判定する技法を説明する。たとえば、埋込み可能医療装置(IMD)により、患者がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に患者の脳の生体電気信号を検知することができ、次いで、患者がすくみ足の発現を実際に経験していない可能性があるとしても、生体電気信号に基づいて、患者がすくみ足を発現しやすいことを判定することができる。
【0006】
[0005]本開示の技法の別の例では、すくみ足を患っている患者の体内にIMDが埋め込まれる。IMDは、すくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を送達するための、治療パラメータの第1のセットを記憶する。IMDは、すくみ足以外のパーキンソン病の症状を抑制するように構成された電気刺激治療を送達するための、治療パラメータの第2のセットもさらに記憶する。患者がすくみ足に関連付けられる運動を行っていることが検出されると、IMDは、すくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療の送達をアクティブにするか、またはすくみ足以外のパーキンソン病の症状を抑制するように構成された電気刺激治療の送達から、すくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療の送達へと切り換えることができる。
【0007】
[0006]一例において、本開示では、1つまたは複数のプロセッサによって、また1つまたは複数の電極を介して、患者がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に患者の脳の生体電気信号を検知するステップと、1つまたは複数のプロセッサによって、また生体電気信号に基づいて、患者がすくみ足の発現を経験していない間に患者がすくみ足になりやすいことを判定するステップと、1つまたは複数のプロセッサによって、また判定に基づいて、すくみ足に関連付けられる運動が検出されるとすくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を患者に送達するよう医療装置をプログラムするステップとを含む方法を説明する。
【0008】
[0007]別の例において、本開示では、患者がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に患者の脳の生体電気信号を検知するように構成された1つまたは複数の電極と、1つまたは複数のプロセッサであって、生体電気信号に基づいて、患者がすくみ足の発現を経験していない間に患者がすくみ足になりやすいことを判定し、判定に基づいて、すくみ足に関連付けられる運動が検出されるとすくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を患者に送達するよう医療装置をプログラムするように構成された、1つまたは複数のプロセッサとを含む、医療システムを説明する。
【0009】
[0008]別の例において、本開示では、命令を含む一時的でないコンピュータ可読媒体であって、命令は、実行されると、1つまたは複数のプロセッサに、患者がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間、1つまたは複数の電極を介して患者の脳の生体電気信号を検知させ、生体電気信号に基づいて、患者がすくみ足の発現を経験していない間に患者がすくみ足になりやすいことを判定させ、判定に基づいて、すくみ足に関連付けられる運動が検出されるとすくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を患者に送達するよう医療装置をプログラムさせる、コンピュータ可読媒体を説明する。
【0010】
[0009]別の例において、本開示では、患者がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に患者の脳の生体電気信号を検知するための手段と、生体電気信号に基づいて、患者がすくみ足の発現を経験していない間に患者がすくみ足になりやすいことを判定するための手段と、判定に基づいて、すくみ足に関連付けられる運動が検出されるとすくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を患者に送達するよう医療装置をプログラムするための手段とを含む、医療システムを説明する。
【0011】
[0010]本開示の技法の1つまたは複数の例の詳細を、添付図面および以下の説明において述べる。技法の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、また特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】[0011]本開示の技法による、電気刺激治療を送達するための例示的な治療送達システムを示す概念図である。
【
図2】[0012]本開示の技法による、電気刺激治療を送達するための例示的医療装置の構成要素を示す機能ブロック図である。
【
図3】[0013]例示的な医療装置プログラマの構成要素を示す機能ブロック図である。
【
図4】[0014]本開示の技法による、患者の脳に電気刺激治療を送達するための例示的技法を示すフローチャートである。
【
図5】[0015]本開示の技法による、患者の脳に電気刺激治療を送達するための例示的技法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0016]患者の脳の生体電気信号を監視して、患者がすくみ足を患っているかどうか、またはすくみ足を患いやすいかどうかを客観的に判定するためのシステム、装置、および技法について説明する。パーキンソン病を患っている患者は、運動中のすくみ足の発現など、歩行およびバランスの問題を経験する場合がある。すくみ足は、患者の運動制御が乱され、それによって患者の運動機能または歩行機能が一時的に妨げられる病状である。すくみ足を患っている患者は、予測不能なときに、かつ/または予測不能な継続時間にわたって発生するすくみ足の発現を経験する場合がある。しかし、パーキンソン病を患っているすべての患者がすくみ足を経験するとは限らない。たとえば、患者の中には、すくみ足を経験することなく、またはすくみ足に加えて、動作緩慢、硬直、振戦、および/または他の望ましくない症状など、パーキンソン病の他の症状を経験する者もいる。
【0014】
[0017]高周波脳深部刺激療法(DBS)(たとえば周波数が約130ヘルツ~約185ヘルツの範囲で選択されたDBS)は、動作緩慢、硬直もしくは振戦、および/または他の症状など、すくみ足以外のパーキンソン病の症状を効果的に抑制することができる。しかし、高周波DBSはすくみ足の抑制には効果的でない場合がある。したがって、すくみ足、およびパーキンソン病の他の望ましくない症状を患っている患者には、患者の症状のそれぞれを効果的に処置するために、様々な時点で様々なDBS治療が必要となり得る。さらに、DBSの治療パラメータを設定するプログラミングセッション中、患者がすくみ足の発現を経験しているのを臨床医が同時に確認しない限り、患者がすくみ足を患っているかどうかを臨床医が判定するのは困難な場合がある。
【0015】
[0018]本開示の技法によれば、患者の脳の生体電気信号を検知することにより、患者がすくみ足の発現を経験していないときでも患者がすくみ足を患っているかどうか、またはすくみ足を患いやすいかどうかを客観的に判定するためのシステム、装置、および技法が説明される。本開示の技法の一例では、IMDは、患者がすくみ足の発現を経験していないときに患者の脳の生体電気信号を監視し、検知された生体電気信号に基づいて、患者がすくみ足を患っているかどうか、またはすくみ足を患いやすいかどうかを判定するように構成される。たとえば、すくみ足を患っている患者の脳の生体電気信号は、患者がすくみ足に関連付けられる運動へと移行するとき、パターンの変更を示す場合がある。すくみ足に関連付けられるこうした運動は、患者のすくみ足に付随する運動、またはすくみ足の発現による乱れまたは妨害の影響を受けやすい運動であり得る。すくみ足に関連付けられる運動のいくつかの例には、足踏み(stepping)、方向転換、歩行、起立から足踏みへの移行、または腕振りが含まれる。すくみ足に関連付けられる運動の他の例には、患者が直立して自身の足を動かす任意の運動または動作が含まれる。対照的に、すくみ足を患っていない患者の脳の同じ生体電気信号は、すくみ足に関連付けられる運動中、これらのパターン変化を示し得ない。
【0016】
[0019]一例として、IMDは、患者が運動していない間の患者の脳の局所フィールド電位のベータ周波数帯域の振幅と、患者が方向転換、足踏み、または起立から足踏みへの移行など、すくみ足に関連付けられる運動を行っている間のベータ周波数帯域の振幅とを比較することができる。患者がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間のベータ周波数帯域の振幅が、患者が運動していない間のベータ周波数帯域の振幅と比較して実質的に小さいことが検出されると、IMDは、患者がすくみ足を発現しやすいと判定する。したがって、本開示の技法を実装するシステムを用いると、患者がすくみ足の発現を示していない場合でも、脳の生体電気信号を確認することにより、患者がすくみ足を患っているかどうか、またはすくみ足を患いやすいかどうかを客観的に判定することが可能になり得る。
【0017】
[0020]さらに、すくみ足になりやすい患者の場合、その患者のIMDは、すくみ足に関連付けられる運動が検出されるまで、すくみ足以外のパーキンソン病の症状を抑制するように構成された第1の治療を送達することができる。IMDは、すくみ足に関連付けられる運動が検出されたのに応答して、すくみ足に関連付けられる運動が検出されなくなるまですくみ足を抑制するように構成された第2の治療が送達されるよう、治療を一時的に調節することができる。別の例では、IMDは、すくみ足に関連付けられる運動が検出されたのに応答して、患者に送達される電気刺激治療の1つまたは複数の治療パラメータを一時的に調節することができる。
【0018】
[0021]一例として、すくみ足を患っている患者に埋込み可能なIMDは、複数のDBS治療設定を記憶することができる。IMDは、DBS治療を第1の周波数で送達して、動作緩慢、硬直、または振戦など、すくみ足以外のパーキンソン病の症状に対する治療を行う。起立から歩行または方向転換への移行など、すくみ足に関連付けられる患者の運動が検出されると、IMDは、第1の周波数でのDBS治療の送達から、すくみ足を抑制する第2の周波数でのDBS治療の送達に切り換える。患者がすくみ足に関連付けられる運動を止めたことが検出されると、IMDは、第2の周波数でのDBS治療の送達から第1の周波数でのDBS治療の送達に切り換えて、望ましくない他の症状のための治療を再開する。したがって、本明細書の技法によるシステムは、患者がすくみ足を抑制するように構成された治療を必要としているときのみこうした治療を提供し、そうでない場合、患者がすくみ足の治療を必要としていないときは、パーキンソン病の他の望ましくない症状を抑制するのに効果的な治療を提供することができる。
【0019】
[0022]
図1は、本開示の例による例示的な治療システム10を示す概念図である。
図1では、例示的治療システム10は電気刺激治療を送達して、たとえば患者12の運動障害など、患者の病状を治療または処置することができる。システム10を介したDBSの送達によって治療される運動障害の一例には、パーキンソン病が含まれ得る。患者12は、普通は人間の患者であることになる。しかし、場合によっては、他の哺乳動物または非哺乳動物の人間でない患者に治療システム10を適用してもよい。
【0020】
[0023]説明を簡単にするために、本開示の例は運動障害の治療に関して主に説明されることになり、具体的には、たとえばパーキンソン病を患っている患者が呈する症状の発現を軽減または防止することによる、パーキンソン病の治療に関して主に説明されることになる。上記のように、こうした症状には硬直、無動、動作緩慢、ジスキネジア、および/または安静時振戦が含まれ得る。しかし、本明細書に記載の技法を利用することにより、パーキンソン病以外の1つまたは複数の患者の疾患を治療することも企図される。たとえば、記載された技法を利用して、精神疾患、気分障害、発作性疾患、または他の神経変性疾患などであるがこれらに限定はされない患者の他の疾患の症状を処置または治療することができる。一例では、こうした技法を利用して、アルツハイマー病を処置するための治療を患者に提供することができる。
【0021】
[0024]治療システム10は、医療装置プログラマ14と、埋込み可能医療装置(IMD)16と、リード延長部18と、電極24、26の各セットを備えた1つまたは複数のリード20Aおよび20B(総称して「リード20」)とを含む。IMD16は刺激治療モジュールを含み、この刺激治療モジュールは、電気刺激治療を発生させて、リード20Aの電極24およびリード20Bの電極26のサブセットを介して患者12の脳28の1つまたは複数の領域に電気刺激治療を送達する刺激発生装置を含む。
図1に示した例では、脳28内部の組織、たとえば脳28の硬膜下の組織部位にIMD16が直接的に電気刺激治療を与えるので、治療システム10を脳深部刺激療法(DBS)システムと呼ぶことができる。他の例では、リード20は、脳28の表面(たとえば脳28の皮質表面)に治療を送達するように位置決めされてもよい。
【0022】
[0025]いくつかの例では、脳28の前核(AN)、視床、または皮質など、脳28の1つまたは複数の領域に刺激を送達することにより、患者12の疾患を処置するのに効果的な治療が行われる。いくつかの例では、IMD16は、たとえば脳28の皮質の1つまたは複数の組織部位に電気刺激治療を送達することにより、患者12に皮質刺激治療を提供することができる。IMD16がパーキンソン病の治療のために電気刺激治療を脳28に送達する場合、標的刺激部位には、たとえば視床下核(STN)、淡蒼球内節(GPi)、淡蒼球外節(GPe)、脚橋被蓋核(PPN)、視床、黒質網様部(SNr)、内包、および/または運動皮質を含めた1つまたは複数の基底核部位が含まれ得る。
図1に示した例では、IMD16は患者12の鎖骨の上の皮下ポケットに埋め込むことができる。他の例では、IMD16は、患者12の腹部もしくは臀部の皮下ポケット、または患者12の頭蓋の近くの皮下ポケットなど、患者12の他の領域に埋め込むことができる。埋込み型のリード延長部18が、(ヘッダとも呼ばれる)コネクタブロック30によってIMD16に結合され、このコネクタブロック30は、たとえば、リード延長部18の各電気接点に電気的に結合する電気接点を含むことができる。電気接点により、リード20によって保持されている電極24、26がIMD16に電気的に結合される。リード延長部18は、患者12の胸腔内のIMD16の埋込み部位から、患者12の首に沿って、また患者12の頭蓋を通って辿らされ、脳28へとアクセスする。一般に、IMD16は体液による腐食および劣化に耐える生体適合材料で構築される。IMD16は、プロセッサ、治療モジュール、メモリなどの構成要素を実質的に封入する密封ハウジング34を備えることができる。
【0023】
[0026]リード20Aおよび20Bは、脳28の1つまたは複数の領域に電気刺激治療を送達するために脳28の右半球および左半球のそれぞれに埋め込むことができ、これら1つまたは複数の領域は、治療システム10が処置するために埋め込まれた患者の病状のタイプなど、多くの要因に基づいて選択され得る。リード20およびIMD16の他の埋込み部位も企図される。たとえば、IMD16は頭蓋32の上、または頭蓋32の内部に埋め込まれてもよく、あるいはリード20は同じ半球内に埋め込まれてもよく、あるいはIMD16は脳28の一方または両方の半球に埋め込まれた単一のリードに結合されてもよい。
【0024】
[0027]リード20は、脳28の内部の1つまたは複数の標的組織部位に電気刺激治療を送達して、患者12の疾患に関連付けられた患者の症状を処置するように位置決めすることができる。リード20は、頭蓋32の各穴を通して脳28の所望の箇所に電極24、26を位置決めするように埋め込むことができる。リード20は、治療中、電極24、26が脳28内部の標的組織部位に電気刺激治療を行うことができるように、脳28内部の任意の箇所に配置することができる。たとえばパーキンソン病の場合、たとえば、リード20は、たとえば視床下核(STN)、淡蒼球内節(GPi)、淡蒼球外節(GPe)、脚橋被蓋核(PPN)、視床、黒質網様部(SNr)、内包、および/または運動皮質を含めた1つまたは複数の基底核部位に電気刺激治療を送達するように埋め込むことができる。
【0025】
[0028]リード20は、
図1では共通のリード延長部18に結合されているように示してあるが、他の例では、リード20は個別のリード延長部によってIMD16に結合されてもよく、IMD16に直接結合されてもよい。さらに、
図1には、リード延長部18を介してIMD16に結合された2つのリード20Aおよび20Bを含むシステム10が示してあるが、いくつかの例では、システム10は1つのリードを含む場合もあり、3つ以上のリードを含む場合もある。
【0026】
[0029]リード20は、電気刺激治療を送達して、運動障害に加えて、発作性疾患または精神疾患などの複数の神経疾患または神経障害を治療することができる。運動障害の例には、筋制御の低下、動作障害、または硬直、動作緩慢、周期性運動過多、非周期性運動過多、ジストニア、振戦、無動などの他の運動上の問題が含まれる。運動障害は、パーキンソン病またはハンチントン病などの患者の疾患の状態に関連付けられる場合がある。精神疾患の例には、MDD、双極性障害、不安障害、心的外傷後ストレス障害、気分変調性障害、およびOCDが含まれる。上述のように、本開示の例は主にパーキンソン病の治療に関して説明されるが、脳28に治療を送達することによる患者の他の疾患の治療も企図される。
【0027】
[0030]リード20は、患者12の頭蓋骨の各穿頭孔を介して、または頭蓋32の共通の穿頭孔を介してなど、任意の適した技法によって脳28の所望の箇所に埋め込むことができる。リード20は、治療中、リード20の電極24、26が電気刺激治療を標的組織に提供することができるように、脳28内部の任意の箇所に配置することができる。IMD16の治療モジュール内の刺激発生装置(図示せず)から発生する電気刺激治療は、患者の疾患に関連付けられる事象の発症を防止し、または疾患の症状を緩和する助けとなり得る。
【0028】
[0031]
図1に示した例では、リード20の電極24、26はリング電極として示されている。リング電極は、プログラムするのが比較的簡単である場合があり、通常はリード20に隣接する任意の組織に電場を送達することができる。他の例では、リード20の電極24、26は異なる構成を有してもよい。たとえば、リード20の電極24、26は、形状設定された電場を生成することができる、複雑な電極アレイ幾何形状を有してもよい。複雑な電極アレイ幾何形状は、リング電極ではなく、各リード20の外辺部の周りに複数の電極(たとえば部分的なリング電極またはセグメント化電極)を含んでもよい。この方式では、電気刺激治療はリード20から特定の方向に方向付けられて治療の有効性を高め、大量の組織を刺激することから起こり得る不都合な副作用を抑制することができる。
【0029】
[0032]いくつかの例では、IMD16の外部ハウジング34は、1つまたは複数の刺激電極および/または検知電極を含むことができる。たとえば、ハウジング34は、IMD16が患者12に埋め込まれるときに患者12の組織に対して露出させられた導電性材料を含んでもよく、あるいはハウジング34に電極が取り付けられてもよい。代替例では、リード20は、
図1に示す細長い円筒形以外の形状を有してもよい。たとえば、リード20はパドルリードでもよく、球形のリードでもよく、屈曲可能リードでもよく、患者12の治療に効果的な任意の他のタイプの形状でもよい。
【0030】
[0033]IMD16は、1つまたは複数の刺激治療プログラムに従って、患者12の脳28に電気刺激治療を送達することができる。治療プログラムは、IMD16から患者12の脳28へと生成および送達される治療についての1つまたは複数の電気刺激治療パラメータ値を定義することができる。たとえば、IMD16が電気パルスの形をとる電気刺激治療を送達する場合、刺激治療は、パルス振幅、パルス速度すなわちパルス周波数、パルス幅などの選択されたパルスパラメータによって特徴付けることができる。たとえば、IMD16が正弦波の形をとる電気刺激治療を送達する場合、刺激治療は、波形振幅、サイクル周波数などの選択されたパラメータによって特徴付けることができる。加えて、刺激の送達に様々な電極を利用することができる場合、治療は様々な電極の組合せによってさらに特徴付けられる場合があり、この電極の組合せには、選択された電極およびそれらの各極性が含まれ得る。患者の疾患を処置または治療するのを助ける刺激治療の正確な治療パラメータ値は、関係する特定の標的刺激部位(たとえば脳の領域)、ならびに個々の患者および患者の病状に特有である場合がある。
【0031】
[0034]治療を送達して患者12の疾患を処置することに加えて、治療システム10は、患者12の1つまたは複数の生体電気脳信号を監視する。たとえば、IMD16は、脳28の1つまたは複数の領域内の生体電気脳信号を検知する検知モジュールを含むことができる。
図1に示した例では、電極24、26によって生成された信号は、各リード20A、20B内部の導体を介してIMD16内の検知モジュールへと伝えられる。以下により詳細に説明するように、いくつかの例では、IMD16のプロセッサにより、患者12の脳28内部の生体電気信号が検知され、また電極24、26を介して電気刺激治療を脳28に送達するのが制御され得る。たとえばIMD16は、患者12の脳28の、約11ヘルツ~約30ヘルツの周波数からなるベータ信号を検知することができる。
【0032】
[0035]いくつかの例では、IMD16の検知モジュールは、電極24、26、または患者12の脳信号を監視するように位置決めされた他の電極から生体電気信号を受け取ることができる。電極24、26を使用して、脳28内部の脳信号を検知するだけでなく、治療モジュールから脳28内部の標的部位へと電気刺激治療を送達することもできる。しかし、IMD16は、別個の検知電極を使用して生体電気脳信号を検知する場合もある。いくつかの例では、IMD16の検知モジュールは、電気刺激治療を脳28に送達するのにも使用される電極24、26のうちの1つまたは複数を介して生体電気脳信号を検知することができる。他の例では、電極24、26のうちの1つまたは複数は生体電気脳信号を検知するために使用することができ、1つまたは複数の異なる電極24、26は電気刺激治療を送達するために使用することができる。
【0033】
[0036]IMD16は、IMD16によって使用される特定の刺激電極および検知電極に応じて、脳信号を監視し、脳28の同じ領域または脳28の様々な領域に電気刺激治療を送達することができる。いくつかの例では、生体電気脳信号を検知するために使用される電極は、電気刺激治療を送達するために使用されるのと同じリードに位置付けられている場合があり、他の例では、生体電気脳信号を検知するために使用される電極は、電気刺激治療を送達するために使用される電極とは異なるリードに位置付けられている場合がある。いくつかの例では、患者12の脳信号は外部電極、たとえば頭皮の電極で監視することができる。さらに、いくつかの例では、脳28の生体電気脳信号を検知する検知モジュール(たとえば脳28内部の活動を示す電気信号を生成する検知モジュール)は、IMD16の外部ハウジング34とは物理的に別個のハウジングに入っている。しかし、
図1に示した例、および説明を簡単にするために本明細書で主に参照する例では、IMD16の検知モジュールと治療モジュールとは、共通の外部ハウジング34の内部に封入されている。
【0034】
[0037]IMD16によって監視される生体電気脳信号は、脳組織間の電位差の合計によって生じる電流の変化を反映することができる。監視される生体電気脳信号の例には、患者の脳の1つまたは複数の領域内で検知される脳波(EEG)信号、皮質脳波(ECoG)信号、局所フィールド電位(LFP)、および/または患者の脳内の単一細胞からの活動電位が含まれるが、これらに限定はされない。
【0035】
[0038]外部プログラマ14は、必要に応じてIMD16と無線通信して、治療情報を提供または取得する。プログラマ14は、ユーザ、たとえば臨床医および/または患者12がIMD16と通信するために使用することができる外部コンピューティング装置である。たとえば、プログラマ14は、IMD16と通信してIMD16用の1つまたは複数の治療プログラムをプログラムするために臨床医が使用する臨床医プログラマでもよい。別法として、プログラマ14は、患者12がプログラムを選択し、かつ/または治療パラメータを閲覧および修正することを可能にする患者プログラマでもよい。臨床医プログラマは、患者プログラマよりも多くのプログラミング機能を含むことができる。言い換えれば、訓練されていない患者が好ましくない変更をIMD16に加えることを防止するために、より複雑な、または慎重な扱いを要する作業は、臨床医プログラマによってしか可能でない場合がある。
【0036】
[0039]プログラマ14は、ユーザが閲覧することができるディスプレイと、プログラマ14への入力を可能にするインターフェース(すなわちユーザ入力機構)とを備えるハンドヘルド型のコンピューティング装置でもよい。たとえば、プログラマ14は、ユーザに情報を提示する小型のディスプレイ画面(たとえば液晶表示装置(LCD)または発光ダイオード(LED)ディスプレイ)を含むことができる。加えて、プログラマ14は、ユーザがプログラマ14のユーザインターフェースを見て回り、入力を行うことを可能にするタッチスクリーンディスプレイ、キーパッド、ボタン、ポイント用周辺装置、または別の入力機構を含むことができる。プログラマ14がボタンおよびキーパッドを含む場合、ボタンがある一定の機能を実施する専用のもの、すなわち電源ボタンである場合もあり、ボタンおよびキーパッドが、ユーザが現在閲覧しているユーザインターフェースのセクションに応じて機能が変化するソフトキーである場合もある。
【0037】
[0040]他の例では、プログラマ14は専用のコンピューティング装置ではなく、より大型のワークステーションであっても、別の多機能装置内の個別のアプリケーションであってもよい。たとえば、多機能装置はノートブックコンピュータでもよく、タブレットコンピュータでもよく、ワークステーションでもよく、携帯電話でもよく、携帯情報端末でもよく、別のコンピューティング装置がセキュアな医療装置プログラマ14として機能することを可能にするアプリケーションを実行できるコンピューティング装置でもよい。コンピューティング装置に結合された無線アダプタにより、コンピューティング装置とIMD16との間のセキュアな通信を可能にすることができる。
【0038】
[0041]プログラマ14が臨床医によって使用されるように構成されているとき、プログラマ14を使用して、初期プログラミング情報をIMD16に送信することができる。この初期情報には、リード20のタイプ、リード20の電極24、26の構成、脳28内部のリード20の位置、治療パラメータ値を定義する初期プログラムなどのハードウェア情報、およびIMD16にプログラムするのに有用であり得る任意の他の情報が含まれ得る。プログラマ14は、機能テスト(たとえばリード20の電極24、26のインピーダンスの測定)を完了できる場合もある。
【0039】
[0042]臨床医は、プログラマ14を用いて、IMD16内に治療プログラムを記憶させることもできる。プログラミングセッション中、臨床医は、発作性疾患(または患者の他の病状)に関連付けられる症状に対処するのに効果的な治療を患者12に提供することができる、1つまたは複数の治療プログラムを決定することができる。たとえば、臨床医は、刺激を脳28に送達する1つまたは複数の電極の組合せを選択することができる。プログラミングセッション中、評価されている特定のプログラムの有効性に関して、患者12が臨床医にフィードバックを提供してもよく、あるいは患者の1つまたは複数の生理的パラメータ(たとえば心拍数、呼吸数、または筋活動)に基づいて、臨床医が有効性を評価してもよい。プログラマ14は、有益である可能性のある治療パラメータ値を特定するための体系的なシステムを提供することにより、治療プログラムの作成/特定において臨床医を補助することができる。
【0040】
[0043]プログラマ14は、患者12によって使用されるようにも構成することができる。患者プログラマとして構成されたとき、プログラマ14は、患者12がIMD16の重要な機能、または患者12にとって害になり得るアプリケーションを変更することを防止するために、(臨床医プログラマと比較して)限定的な機能性を有する場合がある。この方式では、プログラマ14は、患者12がいくつかの治療パラメータの値を調節し、または特定の治療パラメータについて値が取り得る範囲を設定することのみを可能にし得る。
【0041】
[0044]プログラマ14は、治療が送達されているとき、患者の入力が治療の変更をトリガしたとき、またはプログラマ14もしくはIMD16内の電源を交換もしくは充電する必要があるとき、患者12に通知を与えることもできる。たとえば、プログラマ14は、たとえば患者の状態を示し、または治療パラメータを手動で修正するために、アラート用LEDを含む場合もあり、プログラマディスプレイを介して患者12にメッセージを送る場合もあり、患者の入力が受け取られたことを確認する可聴音または体性感覚キューを生成する場合もある。
【0042】
[0045]プログラマ14が臨床医向けに構成されていようと患者向けに構成されていようと、プログラマ14は、無線通信を介してIMD16と、また任意選択で別のコンピューティング装置と通信するように構成される。プログラマ14は、たとえば当技術分野で知られている高周波(RF)テレメトリ技法を使用して、無線通信によってIMD16と通信することができる。プログラマ14は、802.11もしくはBluetooth(登録商標)規格セットによるRF通信、IRDA規格セットによる赤外線(IR)通信、または他の標準テレメトリプロトコルもしくは独自テレメトリプロトコルなどの種々のローカル無線通信技法のうちのいずれかを使用して、有線接続または無線接続により、別のプログラマまたはコンピューティング装置と通信することもできる。プログラマ14は、磁気ディスクもしくは光学ディスク、メモリカードまたはメモリスティックなどのリムーバブルメディアの交換により、他のプログラミング装置またはコンピューティング装置と通信することもできる。さらに、プログラマ14は、当技術分野で知られているリモートテレメトリ技法によってIMD16および別のプログラマと通信し、たとえばローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、公衆交換電話網(PSTN)、または携帯電話ネットワークを介して通信することができる。
【0043】
[0046]治療システム10は、数ヶ月、または数年間にわたる長期的な刺激治療を患者12に提供するために、埋め込まれる場合もある。しかし、システム10は、完全な埋込み前に治療を評価するために、試験的に利用することもできる。一時的に実施される場合、システム10のいくつかの構成要素は、患者12の内部に埋め込まれなくてもよい。たとえば、患者12はIMD16ではなく、試験的刺激装置などの外部医療装置を装着することもできる。外部医療装置は、経皮延長部を介して経皮リードまたは埋込み型リードに結合することができる。DBSシステム10が患者12に効果的な治療を提供していることが試験的刺激装置によって示された場合、臨床医は、比較的長期の治療のために、長期的な刺激装置を患者12に埋め込むことができる。
【0044】
[0047]本開示の技法の一例では、IMD16は、リード20Aおよび20Bを介して患者12の脳28の生体電気信号を検知する。一例では、IMD16は、リード20Aおよび20Bを介して、患者12の脳28の視床下核の局所フィールド電位を直接記録することができる。こうした局所フィールド電位は、視床下核(STN)、淡蒼球内節(GPi)、淡蒼球外節(GPe)、および/または基底核の他の区域において検出されてもよい。この例では、すくみ足を患っている、またはすくみ足を患いやすい患者12の脳28の局所フィールド電位は、患者がすくみ足に関連付けられる運動へと移行するとき、ベータ周波数(たとえば約11ヘルツ~約30ヘルツの間)の変化を示す。さらに、すくみ足を患っていない患者12の脳28の局所フィールド電位はこうした変化を示し得ない。このように、患者の脳の局所フィールド電位のベータ周波数は、すくみ足のバイオマーカであると言うことができる。他の世界では、局所フィールド電位のベータ周波数応答は、患者がすくみ足の発現を目下経験していない場合であっても、患者がすくみ足を患っているか否か、またはすくみ足を患いやすいか否かについての指標として機能することができる。
【0045】
[0048]
図1には、埋込み型のリード20A~20Bに沿って設けられたセンサを使用するIMD16が示してあるが、他の例では、IMD16は外部センサ31を用いて局所フィールド電位を記録する。本明細書に記載のように、すくみ足を患っている患者の局所フィールド電位の振幅は、患者が運動へと移行するとき、パターンの変更を示す。たとえば、すくみ足を患っている患者のベータ帯域(たとえば約13ヘルツ~約30ヘルツ)内の局所フィールド電位の振幅は、患者がすくみ足の発現を経験していないときでも、患者が起立から足踏みへと移行すると著しく小さくなる。対照的に、すくみ足を患っていない患者の局所フィールド電位の振幅は、これらのパターン変更を示さない。たとえば、すくみ足を患っていない患者の脳のベータ帯域内の局所フィールド電位の振幅は、患者が起立から足踏みへと活動を移行させたとき、大きく変化しない。本開示の技法を用いると、患者がすくみ足の発現を実際に示していない場合に、患者の視床下核の局所フィールド電位の振幅を比較することにより、患者がすくみ足を患っているかどうか、またはすくみ足を患いやすいかどうかを客観的に判定することが可能になり得る。
【0046】
[0049]上記のことの一例として、1つまたは複数のプロセッサが、リード20A~20Bに沿って設けられた1つまたは複数の電極24、26を介して、ベータ信号などの患者12の脳28の生体電気信号を監視する。いくつかの例では、1つまたは複数のプロセッサはIMD16の内部に位置付けられるが、他の例では、1つまたは複数のプロセッサは外部プログラマ14の内部に位置付けられる。患者12が運動していない間、1つまたは複数のプロセッサは、1つまたは複数の電極24、26を介して生体電気信号の第1の振幅を検知する。さらに、1つまたは複数のプロセッサは、患者が歩行、方向転換、または足踏みしているときなど、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に、1つまたは複数の電極24、26を介して生体電気信号の第2の振幅を検知する。1つまたは複数のプロセッサは、第1の振幅と第2の振幅の差に基づいて、患者がすくみ足を患っているかどうか、またはすくみ足を患いやすいかどうかを判定する。たとえば、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に検知された生体電気信号の第2の振幅が、患者12が運動していない間に検知された生体電気信号の第1の振幅よりも実質的に小さいと1つまたは複数のプロセッサが判定した場合、1つまたは複数のプロセッサは、患者12がすくみ足を患っている、またはすくみ足を患いやすいと判定する。対照的に、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に検知された生体電気信号の第2の振幅が、患者12が運動していない間に検知された生体電気信号の第1の振幅とほぼ同じであると1つまたは複数のプロセッサが判定した場合、1つまたは複数のプロセッサは、患者12がすくみ足を患っていないと判定する。いくつかの例では、1つまたは複数のプロセッサは、患者がすくみ足を患っているか否か、またはすくみ足を患いやすいか否かの判定をプログラマ14のディスプレイに出力する。
【0047】
[0050]患者がすくみ足を患っている、またはすくみ足を患いやすいことが判定されると、1つまたは複数のプロセッサは、すくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を定義する治療パラメータをIMD16にプログラムすることができる。以下に説明するように、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っていることが検出されると、IMD16は、すくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を送達して、すくみ足を抑制するためのリアルタイムの治療を提供する。すくみ足を抑制するために、いくつかの例では、治療は、患者12のすくみ足の発現の重篤さを緩和または抑制するように構成される。すくみ足を抑制するために、他の例では、治療は、患者12が経験している発生中のすくみ足の発現を終了させるように構成される。すくみ足を抑制するために、他の例では、治療は、患者12のすくみ足の発現が継続する時間の長さを短縮し、または最小限に抑えるように構成される。すくみ足を抑制するために、他の例では、治療は、患者12がすくみ足の発現を経験する可能性を低減するように構成される。すくみ足を抑制するために、他の例では、治療は、患者12にすくみ足が発現する回数を時間とともに減少させるように構成される。
【0048】
[0051]一例として、患者12は、上述のようにすくみ足を患っていると判定される。IMD16は、複数のDBS治療設定をメモリに記憶している。たとえば、IMD16は、動作緩慢、硬直、または振戦など、すくみ足以外のパーキンソン病の症状を治療するための第1のDBS治療設定を記憶する。一例では、すくみ足以外のパーキンソン病の症状を治療するための第1のDBS治療は、約130ヘルツ~約185ヘルツの範囲から選択される第1の周波数をさらに含むことができる。さらに、いくつかの例では、すくみ足以外のパーキンソン病の症状を治療するための第1のDBS治療は、他の例では、たとえば約300マイクロ秒のパルス幅など、約10マイクロ秒~約450マイクロ秒のパルス幅を含むことができる。電流が制御される例示的なシステムでは、すくみ足以外のパーキンソン病の症状を治療するための第1のDBS治療は、たとえば約10ミリアンペアなど、約0.1ミリアンペア~約25ミリアンペアの電流振幅を含むことができる。電圧が制御される例示的なシステムでは、すくみ足以外のパーキンソン病の症状を治療するための第1のDBS治療は、たとえば約10ボルトの電圧振幅など、約0.1ボルト~約25ボルトの電圧振幅を含むことができる。記載された治療パラメータについての他の値も企図される。
【0049】
[0052]さらに、IMD16は、患者12のすくみ足を治療するための第2のDBS治療設定を記憶する。一例では、すくみ足を治療するための第2のDBS治療設定は、たとえば約60ヘルツ~約70ヘルツの範囲など、約60ヘルツ~約100ヘルツの範囲から選択された第2の周波数を含む。さらに、すくみ足を治療するための第2のDBS治療設定は、いくつかの例では、たとえば約300マイクロ秒のパルス幅など、約10マイクロ秒~約450マイクロ秒のパルス幅をさらに含むことができる。電流が 制御される例示的なシステムでは、すくみ足を治療するための第2のDBS治療設定は、いくつかの例では、たとえば約10ミリアンペアの電流振幅など、約0.1ミリアンペア~約25ミリアンペアの電流振幅をさらに含むことができる。電圧が制御される例示的なシステムでは、すくみ足を治療するための第2のDBS治療設定は、たとえば約10ボルトの電圧振幅など、約0.1ボルト~約25ボルトの電圧振幅をさらに含むことができる。
【0050】
[0053]通常使用中、IMD16は、第1の周波数でDBS治療を送達して、動作緩慢、硬直、または振戦など、すくみ足以外の患者12のパーキンソン病の症状を治療する。さらに、IMD16は、1つまたは複数のセンサを介して、運動に関して患者12を監視する。いくつかの例では、1つまたは複数のセンサは外部センサ31を含み、外部センサ31は加速度計、圧力センサ、または磁力計を含む場合がある。他の例では、1つまたは複数のセンサは、電極24、26などの埋込み可能センサを含む。起立から足踏み、歩行、または方向転換への移行など、すくみ足に関連付けられる患者の運動が検出されると、IMDは、パーキンソン病の他の症状を治療するように構成された第1の周波数でのDBS治療の送達から、すくみ足を治療するように構成された第2の周波数でのDBS治療の送達へと切り換える。
【0051】
[0054]さらに、患者がすくみ足に関連付けられる運動を止めたことが検出されると、IMD16は、すくみ足を治療するように構成された第2の周波数でのDBS治療の送達から、パーキンソン病の他の望ましくない症状を治療するように構成された第1の周波数でのDBS治療の送達へと切り換える。
【0052】
[0055]このように、通常動作中、IMD16は、動作緩慢、硬直、または振戦など、すくみ足以外の患者12のパーキンソン病の症状を抑制する治療を患者12に提供することができる。さらに、IMD16は、患者12がすくみ足に関連付けられる運動へと移行していることを検出し、それに応じて、すくみ足を抑制する治療の提供へとリアルタイムで切り換えることができる。患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行わなくなったことが検出されると、IMD16は、その他の症状を抑制する治療を患者12に提供するのを再開することができる。したがって、IMD16は、すくみ足を検出することができない他のシステムよりも、患者12に提供される治療の送達において柔軟性が高くなり得る。
【0053】
[0056]
図2は、例示的なIMD16の構成要素を示す機能ブロック図である。
図2に示した例では、IMD16は、メモリ40、プロセッサ42、刺激発生装置44、検知モジュール46、スイッチモジュール48、テレメトリモジュール50、および電源52を含む。プロセッサ42は、任意の1つまたは複数のマイクロプロセッサ、制御装置、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、およびディスクリート論理回路を含むことができる。プロセッサ42を含め、本明細書に記載のプロセッサに帰属する機能は、ハードウェア装置によって提供され、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはこれらの任意の組合せとして具体化されてもよい。
【0054】
[0057]
図2に示した例では、検知モジュール46は、電極24、26の選択された組合せにより、患者12の脳28の生理的信号を検知する。検知モジュール46は、特定の領域、たとえば脳24の前核、視床、または皮質の電気的活動を、選択された電極24、26を介して測定する回路を含むことができる。パーキンソン病の治療においては、検知モジュール46は、視床下核(STN)、淡蒼球内節(GPi)、淡蒼球外節(GPe)、および/または基底核の他の区域の電気的活動を測定するように構成され得る。
【0055】
[0058]検知モジュール46は、実質的に連続的に、または限定はされないが約250ヘルツ~約1000ヘルツ、もしくは約500ヘルツ~約1000ヘルツなど、約1ヘルツ~約1000ヘルツの周波数などの規則的な間隔で、生体電気脳信号を標本化することができる。検知モジュール46は2つの電極24、26の間の電圧差を決定するための回路を含み、この電圧差は、一般に、脳24の特定の領域内の電気的活動を示す。電極26、24のうちの一方は基準電極として機能してもよく、検知モジュール46が患者12に埋め込まれている場合、検知モジュール46がIMD16とは別個になっている例では、IMD16のハウジングまたは検知モジュールが、生体電気脳信号を検知するために使用することができる1つまたは複数の電極を含んでもよい。
【0056】
[0059]検知モジュール46の出力はプロセッサ42によって受け取ることができる。場合によっては、プロセッサ42は、たとえば処理のために出力をデジタル値に変換する、かつ/または生体電気脳信号を増幅するなど、生体電気信号を追加的に処理してもよい。加えて、いくつかの例では、検知モジュール46またはプロセッサ42は、患者12の体内で生成される心臓信号による雑音など、望ましくないアーチファクトを信号から除去するために、選択された電極24、26からの信号をフィルタリングすることができる。
図2では、検知モジュール46は刺激発生装置44およびプロセッサ42と共通の外部ハウジングに組み込まれているが、他の例では、検知モジュール46はIMD16の外部ハウジングとは別個の外部ハウジングに入っており、有線通信技法または無線通信技法によってプロセッサ42と通信する。他の例では、生体電気脳信号は外部電極(たとえば頭皮の電極)を介して検知されてもよい。
【0057】
[0060]いくつかの例では、検知モジュール46は、検知された脳信号の特定の周波数帯域の出力レベルに同調させ、それを抽出するための回路を含むことができる。したがって、プロセッサ34が信号をデジタル化する前に、検知された脳信号の特定の周波数帯域の出力レベルを抽出することができる。信号がデジタル化される前に特定の周波数帯域の出力レベルを同調および抽出することにより、信号がデジタル化される前に検知脳信号の特定の周波数帯域の出力レベルを抽出する回路を含まないシステムと比較して、比較的低速で周波数領域分析アルゴリズムを実行することが可能になり得る。いくつかの例では、検知モジュール46は、2つ以上のチャネルを含んで、異なる周波数帯域の同時的な動きを監視する、すなわち、検知された脳信号の2つ以上の周波数帯域の出力レベルを抽出することができる。これらの周波数帯域には、アルファ周波数帯域(たとえば8ヘルツ~12ヘルツ、ベータ周波数帯域(たとえば約12ヘルツ~約35ヘルツ)、ガンマ周波数帯域(たとえば約35ヘルツ~約200ヘルツの間)、または他の周波数帯域が含まれる場合がある。
【0058】
[0061]いくつかの例では、検知モジュール26は、チョッパ安定化とヘテロダイン信号処理とを統合するアーキテクチャを含んで、低雑音増幅器をサポートすることができる。いくつかの例では、検知モジュール26は、チョッパ安定化型スーパーヘテロダイン計装増幅器と、信号分析ユニットとを含む周波数選択性信号監視装置を含むことができる。周波数選択性信号監視装置に含まれ得る例示的な増幅器が、本発明の譲受人に譲渡された、「FREQUENCY SELECTIVE MONITORING OF PHYSIOLOGICAL SIGNALS」と題し、2008年9月25日出願の、Denisonらの米国特許公開第2009/0082691号により詳細に記載されている。Denisonらの米国特許公開第2009/0082691号。
【0059】
[0062]Denisonらの米国特許公開第2009/0082691号に記載されているように、周波数選択性信号監視装置は、ヘテロダイン式のチョッパ安定化型増幅器アーキテクチャを利用して、生体電気脳信号の選択された周波数帯域を、分析のためにベースバンドに変換することができる。生体電気脳信号は、ベータ周波数などの特定の周波数帯域内の生体電気脳信号の振幅を検出し、それに応答して本明細書に記載の技法のうちのいくつかに従って電気刺激治療を送達するために、1つまたは複数の選択された周波数帯域において分析され得る。周波数選択性信号監視装置は、生理的信号を受け取る生理的検知素子と、第1の周波数の信号を変調させる変調器を含む計装増幅器と、変調された信号を増幅する増幅器と、第1の周波数とは異なる第2の周波数の増幅信号を復調する復調器とを備える生理的信号監視装置を提供することができる。信号分析ユニットが、選択された周波数帯域における信号の特性を分析することができる。第2の周波数は、復調器が、信号の選択された周波数帯域を実質的にベースバンドの中心に置くように選択され得る。
【0060】
[0063]いくつかの例では、検知モジュール46は、IMD16が治療を患者14に送達するのと実質的に同時に脳信号を検知することができる。他の例では、検知モジュール46は脳信号を検知し、IMD16はそれとは異なる時点で治療を送達することができる。
【0061】
[0064]いくつかの例では、検知モジュール46は、患者12の脳28の監視された生理的信号と組み合わせて、すくみ足に関連付けられる運動を示す、生体電気脳信号以外の患者の1つまたは複数の生理的パラメータを監視することができる。患者の適した生理的パラメータには、(たとえば筋電図検査(EMG)によって検知される)筋緊張、(たとえば眼電図検査(EOG)またはEEGによって検知される)眼球運動、および体温が含まれ得るが、これらに限定はされない。いくつかの例では、アクティグラフィによって患者の運動を監視することができる。一例では、プロセッサ40は患者12の筋緊張を反映するEMG信号を監視して、すくみ足に関連付けられる患者の身体運動を特定することができる。別法として、または追加的に、プロセッサ40は、たとえば単一軸または複数軸の1つまたは複数の加速度計装置などの1つまたは複数のモーションセンサにより、すくみ足に関連付けられる患者の身体運動を監視してもよい。
【0062】
[0065]メモリ40は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリなどの任意の揮発性媒体または不揮発性媒体を含むことができる。メモリ40は、プロセッサ42によって実行されると本明細書に記載の種々の機能をIMD16に実施させるコンピュータ可読命令を記憶することができる。いくつかの例では、メモリ40は、たとえばプロセッサ42などの1つまたは複数のプロセッサに本開示に記載の例示的技法のうちの1つまたは複数を実施させる命令を含む、一時的でないコンピュータ可読記憶媒体であると考えることができる。「一時的でない」という用語は、記憶媒体が搬送波または伝搬信号で具体化されていないことを意味することができる。しかし、「一時的でない」という用語を、メモリ40が移動不能であることを意味すると解釈すべきではない。一例として、メモリ40はIMD16から取り出され、別の装置に移動されてもよい。いくつかの例では、一時的でない記憶媒体は、時間とともに変化し得るデータを(たとえばRAMに)記憶することができる。
【0063】
[0066]
図2に示した例では、リード20Aの電極24のセットは4つの電極を含み、リード20Bの電極26のセットは4つの電極を含む。プロセッサ42は、選択された電極24、26の組合せで生体電気脳信号を検知するようにスイッチモジュール48を制御する。具体的には、スイッチモジュール48は、たとえば患者12の脳28の特定の部分において生体電気脳信号を選択的に検知するために、検知モジュール46と選択された電極24、26との間の電気的接続を作り出し、または遮断することができる。プロセッサ42は、刺激発生装置44によって生成された刺激信号を選択された電極24、26の組合せに印加するようにスイッチモジュール48を制御することもできる。具体的には、スイッチモジュール48は、リード20の内部の選択された導体に刺激信号を結合することができ、これらの選択された導体により、選択された電極24、26の間に刺激信号が送達される。スイッチモジュール48は、選択された電極22A、22Bに刺激エネルギーを選択的に結合し、また選択された電極24、26を用いて生体電気脳信号を選択的に検知するように構成された、スイッチアレイ、スイッチマトリクス、マルチプレクサ、または任意の他のタイプのスイッチングモジュールでもよい。したがって、刺激発生装置44は、スイッチモジュール48およびリード20内部の導体を介して電極24、26に結合される。しかし、いくつかの例では、IMD16はスイッチモジュール48を含まない。いくつかの例では、IMD16は、(たとえば単一の刺激発生装置の代わりに)それぞれの個々の電極について個別の電流ソースおよび電流シンクを含むことができ、したがって、スイッチモジュール48は必要でない場合がある。
【0064】
[0067]刺激発生装置44は、単一チャネルの刺激発生装置でもよく、複数チャネルの刺激発生装置でもよい。たとえば、刺激発生装置44は、単一の電極の組合せにより、単一の刺激パルスもしくは刺激サイクル、複数の刺激パルス、または連続信号を所与の時点で送達できる場合もあり、複数の電極の組合せにより、複数の刺激パルスまたは正弦波形を所与の時点で送達できる場合もある。しかし、いくつかの例では、刺激発生装置44およびスイッチモジュール48は、時間的に交互になる形で複数のチャネルを送達するように構成される場合がある。たとえば、スイッチモジュール48は、刺激エネルギーの複数のプログラムまたはチャネルを患者12に送達するために、刺激発生装置44の出力を、異なる時間に異なる電極の組合せの間で時間分割するように機能することができる。
【0065】
[0068]一例では、メモリ42は、刺激発生装置44向けに、患者12に送達すべき電気刺激治療を定義する複数の電気刺激治療パラメータセットを記憶することができる。たとえば、プロセッサ40は、メモリ42に記憶された第1の電気刺激治療パラメータセットに基づいて、動作緩慢、硬直、または振戦などのすくみ足以外のパーキンソン病の症状を治療するように構成された第1の電気刺激治療を患者12に送達するよう刺激発生装置44を制御することができる。いくつかの例では、第1の電気刺激治療は、約130ヘルツ~約185ヘルツの範囲から選択された周波数を有する。別の例として、プロセッサ40は、メモリ42に記憶された第2の電気刺激治療パラメータセットに基づいて、すくみ足を治療するように構成された第2の電気刺激治療を患者12に送達するよう刺激発生装置44を制御することができる。いくつかの例では、第2の電気刺激治療は、たとえば約60ヘルツ~約70ヘルツなど、約60ヘルツ~約100ヘルツの範囲から選択された周波数を有する。
【0066】
[0069]テレメトリモジュール50は、プロセッサ42の制御下で、IMD16と外部プログラマ14、または別のコンピューティング装置との間の無線通信を支援することができる。IMD16のプロセッサ42は、たとえば生体電気脳信号、特定の睡眠段階の発作可能性測定基準、患者12の発作可能性プロファイルなどを、テレメトリモジュール50を介してプログラマ14または別の外部装置の内部のテレメトリモジュールへと送信することができる。IMD16のテレメトリモジュール50、ならびにプログラマ14などの本明細書に記載の他の装置およびシステムのテレメトリモジュールは、高周波(RF)通信技法によって通信を行うことができる。加えて、テレメトリモジュール50は、IMD16とプログラマ14との近接誘導相互作用(proximal inductive interaction)により、外部プログラマ14と通信することができる。したがって、テレメトリモジュール50は、連続的に、周期的間隔で、またはIMD16もしくはプログラマ14からの要求に応じて、外部プログラマ14に情報を送ることができる。
【0067】
[0070]電源52は、IMD16の種々の構成要素に動作電力を送達する。電源52は、小型の充電可能バッテリまたは充電不可能バッテリと、動作電力を生成する電力生成回路とを含むことができる。充電は、外部の充電器とIMD16内の誘導充電コイルとの間の近接誘導相互作用によって実現することができる。いくつかの例では、必要電力は、IMD16が患者の運動を利用し、運動エネルギー・スカベンジング装置を実装して充電可能バッテリを少しずつ充電することを可能にするのに十分に小さい場合がある。他の例では、限られた期間において従来型のバッテリが使用される場合がある。
【0068】
[0071]本開示の技法によれば、プロセッサ40は、検知モジュール46と、リード20A~20Bに沿って設けられた1つまたは複数の電極24、26とを介して、ベータ信号など、患者12の脳28の生体電気信号を監視する。患者12が運動していない間、プロセッサ40は、検知モジュール46および1つまたは複数の電極24、26を介して生体電気信号の第1の振幅を検知する。さらに、1つまたは複数のプロセッサは、患者が歩行、方向転換、または足踏みしているときなど、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に、検知モジュール46および1つまたは複数の電極24、26を介して生体電気信号の第2の振幅を検知する。プロセッサ40は、第1の振幅と第2の振幅の差に基づいて、患者12がすくみ足を患っているかどうか、またはすくみ足を患いやすいかどうかを判定する。たとえば、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に検知された生体電気信号の第2の振幅が、患者12が運動していない間に検知された生体電気信号の第1の振幅よりも実質的に小さいとプロセッサ40が判定した場合、プロセッサ40は、患者12がすくみ足を患っている、またはすくみ足を患いやすいと判定する。対照的に、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に検知された生体電気信号の第2の振幅が、患者12が運動していない間に検知された生体電気信号の第1の振幅とほぼ同じであるとプロセッサ40が判定した場合、プロセッサ40は、患者12がすくみ足を患っていないと判定する。いくつかの例では、プロセッサ40は、患者12がすくみ足を患っているか否か、またはすくみ足を患いやすいか否かの判定を、テレメトリモジュール50を介してプログラマ14のディスプレイに送信する。
【0069】
[0072]患者12がすくみ足を患っている、またはすくみ足を患いやすいと判定されると、プロセッサ40は、すくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を定義する治療パラメータを、メモリ42に記憶させる。以下に説明するように、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っていることが検出されると、プロセッサ40は、すくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を送達するよう刺激発生装置44を制御して、すくみ足を抑制するリアルタイムの治療を提供する。
【0070】
[0073]一例として、患者12は、上述のようにすくみ足を患っていると判定される。プロセッサ40は、複数のDBS治療設定をメモリ42に記憶させる。たとえば、プロセッサ40は、動作緩慢、硬直、または振戦など、すくみ足以外の患者12のパーキンソン病の症状を治療するための第1の周波数を含む第1のDBS治療設定をメモリ42に記憶させる。一例では、第1の周波数は約130ヘルツ~約185ヘルツの範囲から選択される。さらに、プロセッサ40は、患者12のすくみ足を治療するための第2の周波数を含む第2のDBS治療設定をメモリ42に記憶させる。一例では、第2の周波数は、たとえば約60ヘルツ~約70ヘルツの範囲など、約60ヘルツ~約100ヘルツの範囲から選択される。
【0071】
[0074]通常使用中、プロセッサ40は、第1の周波数でDBS治療を送達して、動作緩慢、硬直、または振戦など、すくみ足以外の患者12のパーキンソン病の症状を治療するよう刺激発生装置44を制御する。さらに、プロセッサ40は、センサ31を介して、運動に関して患者12を監視する。起立から足踏み、歩行、または方向転換への移行など、すくみ足に関連付けられる患者12の運動が検出されると、プロセッサ40は、すくみ足以外のパーキンソン病の症状を治療するように構成された第1の周波数でのDBS治療の送達からすくみ足を治療するように構成された第2の周波数でのDBS治療の送達へと切り換えるよう刺激発生装置44を制御する。
【0072】
[0075]さらに、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を止めたことが検出されると、プロセッサ40は、すくみ足を治療するように構成された第2の周波数でのDBS治療の送達からすくみ足以外のパーキンソン病の症状を治療するように構成された第1の周波数でのDBS治療の送達へと切り換えるよう刺激発生装置44を制御する。
【0073】
[0076]
図3は、プロセッサ60、メモリ62、テレメトリモジュール64、ユーザインターフェース66、および電源68を含む、例示的な外部医療装置プログラマ14の概念的なブロック図である。プロセッサ60はユーザインターフェース66およびテレメトリモジュール64を制御し、メモリ62に情報および命令を記憶し、またメモリ62から情報および命令を取得する。プログラマ14は、臨床医プログラマまたは患者プログラマとして使用されるように構成することができる。プロセッサ60は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、または他の同等の集積論理回路もしくはディスクリート論理回路を含めた1つまたは複数のプロセッサの任意の組合せを備えることができる。したがって、プロセッサ60は、ハードウェアにおいてであれ、ソフトウェアにおいてであれ、ファームウェアにおいてであれ、あるいはこれらの任意の組合せにおいてであれ、任意の適した構造を含んで、本明細書でプロセッサ60に帰属される機能を実施することができる。
【0074】
[0077]臨床医または患者12などのユーザは、ユーザインターフェース66を介してプログラマ14と相互作用することができる。ユーザインターフェース66は、LCDもしくはLEDディスプレイ、または他のタイプの画面などのディスプレイ(図示せず)を含んで、患者12の発作性疾患の治療に関する情報を提示する。ユーザインターフェース66は、ユーザから入力を受け取る入力機構も含むことができる。入力機構には、たとえばボタン、キーパッド(たとえば英数字キーパッド)、ポイント用周辺装置、またはユーザがプログラマ14のプロセッサ60によって提示されるユーザインターフェースを見て回り、入力を行うことを可能にする別の入力機構が含まれ得る。
【0075】
[0078]メモリ62は、ユーザインターフェース66およびテレメトリモジュール64を動作させ、また電源68を管理するための命令を含むことができる。メモリ62は、治療中にIMD16から取得した任意の治療データ、および検知した生体電気脳信号も記憶することができる。臨床医は、将来の治療を計画するために、この治療データを使用して患者の病状の経過を判断することができる。メモリ62は、RAM、ROM、EEPROM、またはフラッシュメモリなど、任意の揮発性メモリまたは不揮発性メモリを含むことができる。メモリ62は、メモリを更新し、またはメモリ容量を増加させるために使用することができるリムーバブルメモリ部分も含む場合がある。リムーバブルメモリにより、プログラマ14が異なる患者によって使用される前に、慎重な扱いを要する患者データを消去することも可能になり得る。
【0076】
[0079]いくつかの例では、メモリ62は、本開示に記載の例示的技法のうちの1つまたは複数をたとえばプロセッサ60などの1つまたは複数のプロセッサに実施させる命令を含む、一時的でないコンピュータ可読記憶媒体であると考えることができる。「一時的でない」という用語は、記憶媒体が搬送波または伝搬信号で具体化されていないことを意味することができる。しかし、「一時的でない」という用語を、メモリ62が移動不能であることを意味すると解釈すべきではない。一例として、メモリ62はプログラマ14から取り出され、別の装置に移動されてもよい。いくつかの例では、一時的でない記憶媒体は、時間とともに変化し得るデータを(たとえばRAMに)記憶することができる。
【0077】
[0080]プログラマ14の無線テレメトリは、外部プログラマ14とIMD16とのRF通信または近接誘導相互作用によって実現することができる。この無線通信は、テレメトリモジュール64を使用することによって可能になる。したがって、テレメトリモジュール64は、IMD16の中に収容されたテレメトリモジュールと同様のものでもよい。代替例では、プログラマ14は、赤外線通信、または有線接続を介した直接的な通信が可能な場合がある。このように、他の外部装置は、セキュアな無線接続を確立する必要なしにプログラマ14と通信することが可能な場合がある。
【0078】
[0081]電源68は、プログラマ14の構成要素に動作電力を送達することができる。電源68は、バッテリと、動作電力を生成するための電力生成回路とを含むことができる。いくつかの例では、バッテリは、長時間の動作を可能にするために充電可能であってもよい。
【0079】
[0082]
図4は、本開示の技法による、電気刺激治療を患者の脳に送達する例示的技法を示すフローチャートである。便宜上、
図4は
図1に関して説明している。
図4の例では、IMD16のプロセッサ40および外部プログラマ14のプロセッサ60のうちの1つまたは複数が、患者12がすくみ足を患っているかどうか、またはすくみ足を患いやすいかどうかを判定し、それに応じて治療を送達するようIMD16をプログラムする。一例では、この評価はIMD16のプロセッサ40によって実施される。別の例では、評価は外部プログラマ14のプロセッサ60によって実施される。さらに別の例では、各機能性の一部または全部は、IMD16のプロセッサ40と外部プログラマ14のプロセッサ60との間で分担される。
【0080】
[0083]いくつかの例では、IMD16は外科手技中に患者12に埋め込まれる。外科手技の後、外来診療セッションにおいて、臨床医は外部プログラマ14を使用して、患者12に治療を送達するようIMD16をプログラムすることができる。さらに、この外来診療セッション中、臨床医は本開示の技法に従って、患者12がすくみ足を患っているかどうか、またはすくみ足を患いやすいかどうかを判定することができる。一例として、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間、プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数が、検知モジュール46、ならびにリード20Aおよび20Bに沿って設けられた1つまたは複数の電極24、26を介して、患者12の脳28の生体電気信号を検知する(400)。いくつかの例では、プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数は、約11ヘルツ~約30ヘルツ以内の周波数を含む、患者12の脳28のベータ信号を検知する。いくつかの例では、すくみ足に関連付けられる運動は、方向転換運動、足踏み運動、または起立から足踏みへの移行である。
【0081】
[0084]プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数は、検知された生体電気信号に基づいて、患者がすくみ足になりやすいと判定する(402)。たとえば、患者12が運動していない間、プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数は、検知モジュール46および1つまたは複数の電極24、26を介して、生体電気信号の第1の振幅を検知する。さらに、プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数は、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に、検知モジュール46および1つまたは複数の電極24、26を介して生体電気信号の第2の振幅を検知する。プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数は、第1の振幅と第2の振幅の差に基づいて、患者がすくみ足を患っているかどうか、またはすくみ足を患いやすいかどうかを判定する。たとえば、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に検知された生体電気信号の第2の振幅が、患者12が運動していない間に検知された生体電気信号の第1の振幅からのプログラム可能閾値よりも小さいとプロセッサ40、60のうちの1つまたは複数が判定した場合、プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数は、患者12がすくみ足を患っている、またはすくみ足を患いやすいと判定する。いくつかの例では、臨床医は、患者12がいくつかの運動作業および静止作業を実施し、作業中の患者12の神経学的応答を測定するトレーニング段階から、プログラム可能閾値を決定する。この例では、臨床医は患者12の神経学的応答を評価して、患者12がすくみ足を患っているかどうか、またはすくみ足を患いやすいかどうかを判定する。対照的に、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っている間に検知された生体電気信号の第2の振幅が、患者12が運動していない間に検知された生体電気信号の第1の振幅とほぼ同じであるとプロセッサ40、60のうちの1つまたは複数が判定した場合、プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数は、患者12がすくみ足を患っていないと判定する。いくつかの例では、プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数は、患者がすくみ足を患っているか否か、またはすくみ足を患いやすいか否かの判定をプログラマ14のディスプレイに出力する。
【0082】
[0085]患者12がすくみ足を患っている、またはすくみ足を患いやすいと判定されると、プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数は、臨床医が使用する外部プログラマ14のユーザインターフェース66のディスプレイに、その判定を出力する。それに応答して、臨床医は、患者12のすくみ足を抑制するように構成された電気刺激治療を送達するよう、外部プログラマ14を介してIMD16をプログラムすることができる(404)。一例では、臨床医は、IMD16のメモリに複数のDBS治療設定をプログラムする。たとえば臨床医は、動作緩慢、硬直、または振戦などのすくみ足以外のパーキンソン病の症状を治療するための第1の周波数を含む第1のDBS治療設定をIMD16にプログラムすることができる。一例では、第1の周波数は約130ヘルツ~約185ヘルツの範囲から選択される。さらに、臨床医は、すくみ足を治療するための第2の周波数を含む第2のDBS治療設定をIMD16にプログラムすることができる。一例では、第2の周波数は、たとえば約60ヘルツ~約70ヘルツの範囲など、約60ヘルツ~約100ヘルツの範囲から選択される。
【0083】
[0086]通常使用中、プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数は、IMD16による、また患者12への、第1の周波数での第1の電気刺激治療の送達を制御する(406)。プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数は、すくみ足に関連付けられる患者12の運動を検出する(408)。いくつかの例では、プロセッサ40、60は、1つまたは複数の加速度計、磁力計、または圧力センサなどの1つまたは複数のセンサを介して、すくみ足に関連付けられる運動を検出する。他の例では、プロセッサ40、60は、リード20A~20Bの電極24、26などを介して患者の1つまたは複数の生体電気信号を検知することにより、すくみ足に関連付けられる運動を検出する。さらに他の例では、プロセッサ40、60は、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を開始している、または目下開始しようとしていることを示す入力を、患者プログラマ14を介して患者12から受け取ることにより、すくみ足に関連付けられる運動を検出する。いくつかの例では、すくみ足に関連付けられる運動は、足踏み運動、方向転換運動、または起立から足踏みへの移行である。
【0084】
[0087]すくみ足に関連付けられる運動が検出されたのに応答して、プロセッサ40、60のうちの1つまたは複数は、第1の電気刺激治療の送達から第2の電気刺激治療の送達へと切り換えるようIMD16を制御する(410)。したがって、すくみ足に関連付けられる運動が検出される前は、プロセッサ40、60は動作緩慢、硬直、または振戦などのすくみ足以外のパーキンソン病の症状を抑制するように構成された第1の電気刺激治療をIMD16に送達させる。しかし、こうした第1の電気刺激治療は、患者12のすくみ足の抑制に効果的でない場合がある。したがって、すくみ足に関連付けられる運動が検出されている間、プロセッサ40、60は、治療が患者12のすくみ足の発現を抑制するのに効果的になるよう、IMD16に治療を調節させる。この調節には、周波数、パルス幅、振幅、電極24、26の組合せ、および/または患者12の脳28内部の組織の標的領域など、電気刺激治療の1つまたは複数の刺激パラメータの調節が含まる場合がある。
【0085】
[0088]いくつかの例では、プロセッサ40、60は、すくみ足以外のパーキンソン病の症状を抑制するように構成された第1の電気刺激治療の送達をIMD16に再開させる。たとえば、1つまたは複数のセンサにより、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行わなくなったことが検出されると、プロセッサ40、60は、すくみ足以外のパーキンソン病の症状を抑制するように構成された第1の電気刺激治療の送達をIMD16に再開させる。さらに別の例では、患者プログラマ14を介して患者12から入力を受け取ったのに応答して、プロセッサ40、60は、すくみ足以外のパーキンソン病の症状を抑制するように構成された第1の電気刺激治療の送達をIMD16に再開させる。したがって、このように、患者がすくみ足に関連付けられる活動または運動を開始すると、IMD16は、治療をリアルタイムで調節して、すくみ足を抑制することができる。さらに、患者12がすくみ足に関連付けられる活動または運動を行っておらず、したがってすくみ足を抑制するための特定の治療を必要としていない可能性があるとき、IMD16は、パーキンソン病の他の症状を抑制するのに効果的な治療を提供することができる。
【0086】
[0089]
図5は、本開示の技法による、患者の脳に電気刺激治療を送達する例示的技法を示すフローチャートである。便宜上、
図5は
図1に関して説明している。
[0090]
図5に示すように、プロセッサ40は、刺激発生装置44およびリード20A~20Bに沿って設けられた電極24、26を介した、第1の電気刺激治療の患者12への送達を制御する(500)。一例では、第1の電気刺激は、すくみ足以外の疾患の症状を抑制するように構成される。たとえば、第1の電気刺激は、動作緩慢、硬直、または振戦などのすくみ足以外の患者12のパーキンソン病の症状を抑制するように構成することができる。いくつかの例では、第1の電気刺激は、約130ヘルツ~約185ヘルツの範囲から選択される第1の周波数を有する。
【0087】
[0091]第1の電気刺激を送達している間、プロセッサ40は、1つまたは複数のセンサを介して、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っているかどうかを検出する(502)。一例では、1つまたは複数のセンサは1つまたは複数の加速度計を含む。患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っていることをプロセッサ40が検出しなかった場合(502の「いいえ」ブロック)、プロセッサ40は、患者12への第1の電気刺激の送達の制御を継続する(500)。
【0088】
[0092]プロセッサ40が、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を行っていることを検出した場合(502の「はい」ブロック)、プロセッサ40は、刺激発生装置44、およびリード20A~20Bに沿って設けられた電極24、26を介した、第2の電気刺激治療の患者12への送達を制御する(504)。一例では、第2の電気刺激治療はすくみ足を抑制するように構成される。いくつかの例では、第2の電気刺激治療は、たとえば約60ヘルツ~約70ヘルツの範囲など、約60ヘルツ~約100ヘルツの範囲から選択される第2の周波数を有する。
【0089】
[0093]第2の電気刺激治療を送達している間、プロセッサ40は、1つまたは複数のセンサを介して、患者12がすくみ足に関連付けられる運動を中止したかどうかを検出する(506)。患者12がすくみ足に関連付けられる運動を継続していることをプロセッサ40が検出した場合(506の「いいえ」ブロック)、プロセッサ40は、第2の電気刺激治療の患者12への送達の制御を継続する(504)。患者12がすくみ足に関連付けられる運動を中止したことをプロセッサ40が検出した場合(506の「はい」ブロック)、プロセッサ40は、第1の電気刺激治療の患者12への送達を制御する(500)。
【0090】
[0094]本開示に記載の技法は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組合せで少なくとも部分的に実装することができる。たとえば、記載された技法の種々の態様は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または任意の他の同等の集積論理回路もしくはディスクリート論理回路、およびこうした構成要素の任意の組合せを含めた、1つまたは複数のプロセッサに実装されてもよい。一般に、「プロセッサ」または「処理回路」という用語は、単独の、または他の論理回路もしくは任意の他の同等の回路と組み合わせた、前述の論理回路のうちのいずれかを指すことができる。ハードウェアを備える制御ユニットが、本開示の技法のうちの1つまたは複数を実施する場合もある。
【0091】
[0095]こうしたハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアは、同じ装置内または別個の装置内に実装されて、本開示に記載の種々の動作および機能をサポートすることができる。加えて、記載されたユニット、モジュール、または構成要素のいずれも、一緒に実装されてもよく、単品であるが連携可能な論理装置として別々に実装されてもよい。モジュールまたはユニットとしての様々な特徴の描写は、様々な機能的側面を強調するものであり、こうしたモジュールまたはユニットを個別のハードウェア構成要素またはソフトウェア構成要素によって実現しなければならないことを必ずしも示唆するものではない。むしろ、1つまたは複数のモジュールまたはユニットに関連付けられた機能性は、個別のハードウェア構成要素またはソフトウェア構成要素によって実施される場合もあり、共通の、または個別のハードウェア構成要素またはソフトウェア構成要素に組み込まれる場合もある。
【0092】
[0096]本開示に記載の技法は、コンピュータ可読記憶媒体など、命令を含むコンピュータ可読媒体に具体化または符号化することもできる。コンピュータ可読記憶媒体に組み込まれ、または符号化された命令は、たとえば命令が実行されると、プログラム可能プロセッサまたは他のプロセッサに、本発明の方法を実施させることができる。コンピュータ可読記憶媒体には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、プログラマブルリードオンリメモリ(PROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、ハードディスク、CD-ROM、フロッピーディスク、カセット、磁気媒体、光学媒体、または他のコンピュータ可読媒体が含まれ得る。
【0093】
[0097]種々の例が説明されてきた。上記その他の例は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲に含まれる。