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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20220502BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020536107
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2018082831
(87)【国際公開番号】W WO2019129455
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】102017223814.3
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス キューンヘーファー
(72)【発明者】
【氏名】マークス ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン カーステン ヴェーバー
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015115423(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010050819(DE,A1)
【文献】国際公開第2007/138772(WO,A1)
【文献】特開2002-059854(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061391(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014117406(DE,A1)
【文献】特開平11-091605(JP,A)
【文献】特開平06-329042(JP,A)
【文献】特開平04-372470(JP,A)
【文献】特開平06-098410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常動作状態において、電気モータ(12a~e)の動作を制御するために設けられている主制御ユニット(10a~e)と、前記主制御ユニット(10a~e)に依存することなく動作可能である補助制御ユニット(14a~e)とを備える、電動操舵アシストを提供するための操舵装置であって、
前記主制御ユニット(10a~e)は、通常動作状態において、パワーエレクトロニクス(16a~e)を駆動制御することによって、前記電気モータ(12a~e)のアシストトルクを設定するために設けられており、
前記補助制御ユニット(14a~e)は、通常動作状態において、受動的な動作モードにあり、前記主制御ユニット(10a~e)の障害及び/又は故障が発生しているエラー動作状態においてのみ、前記電気モータ(12a~e)の動作を制御するために設けられており、
前記補助制御ユニット(14a~e)は、非常時及び/又は緊急時動作を開始するために、前記主制御ユニット(10a~e)をエラー動作状態において置き換え、前記電気モータ(12a~e)の動作の制御を引き継ぐために設けられており、
前記補助制御ユニット(14a~e)は、エラー動作状態において、前記パワーエレクトロニクス(16a~e)を駆動制御し、これによって、前記電気モータ(12a~e)の前記アシストトルクの下降勾配が達成されるように、前記電気モータ(12a~e)を動作させるために設けられていることを特徴とする、操舵装置。
【請求項2】
前記主制御ユニット(10a~e)は、通常動作状態において動作信号(50a)を提供するために設けられており、前記補助制御ユニット(14a~e)は、前記動作信号(50a)の欠如に依存して前記主制御ユニット(10a~e)の障害及び/又は故障の発生を特定するために設けられている、請求項1に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記動作信号(50a)は、不連続な信号であり、前記主制御ユニット(10a~e)は、前記動作信号(50a)を規則的な時間間隔で提供するために設けられている、請求項2に記載の操舵装置。
【請求項4】
前記主制御ユニット(10a~e)は、前記動作信号(50a)を少なくとも1msかつ最大で100msの時間間隔で提供するために設けられている、請求項2又は3に記載の操舵装置。
【請求項5】
前記補助制御ユニット(14a~c)の計算能力は、前記主制御ユニット(10a~c)の計算能力よりも少なくとも50%低い、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の操舵装置。
【請求項6】
前記電気モータ(12b~e)の少なくとも1つの相を分離するためのスイッチングユニット(18b)を備え、前記補助制御ユニット(14b~e)は、エラー動作状態において前記スイッチングユニット(18b~e)を駆動制御するために設けられている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の操舵装置。
【請求項7】
制御ユニット(20a;20b;20c;20e)を含み、前記制御ユニット(20a;20b;20c;20e)は、少なくともエラー動作状態において前記補助制御ユニット(14a~e)の駆動制御信号(52a)に依存して前記主制御ユニット(10a~e)による前記電気モータ(12a~e)の動作を阻止するために設けられている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の操舵装置。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の操舵装置を備えた操舵システム(22a)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による操舵装置に関する。さらに、本発明は、請求項11による操舵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーステアリングの形態の電動操舵アシストを備えた操舵システムは、従来技術から公知であり、ここでは、操舵アシストの生成のために電気モータが使用される。安全構想として、例えば、操舵システムの電気及び/又は電子コンポーネントにエラーが発生した場合、通常、機械的なフォールバックレベルが用いられる。このフォールバックレベルは、故障した操舵アシストでも操舵を可能にし、統御可能でかつ安全な動作を保証するために設けられている。純粋な機械的動作への変更は、電気モータの動作を制御するための高水準のソフトウェアを用いた主制御ユニットの遮断によって、及び/又は、電気モータに接続されたパワーエレクトロニクスの非アクティブ状態によって、実現される。しかしながら、操舵アシストの突発的な遮断は、操舵システムのステアリング操作に大きなトルク変化を引き起こし、このことは、運転者にとって大きな苛立ちになりかねず、事故のリスクを高める。
【0003】
この理由から、例えば独国特許出願公開第102010050820号明細書(DE102010050820A1)においては、主制御ユニットにエラーが発生した場合に、監視コンピュータの形態の補助制御ユニットを用いて電気モータの動作を制御することが提案されている。このケースにおいては、補助制御ユニットは、一方では通常動作状態における主制御ユニットの監視のために用いられ、他方ではエラー動作状態における電気モータ又はパワーエレクトロニクスの駆動制御のために用いられる。
【0004】
さらに、独国特許出願公開第102008048952明細書(DE102008048952A1)においては、パワーエレクトロニクスを駆動制御する主制御ユニットと、付加的な補助制御ユニットとを備えた操舵システムが開示されている。この付加的な補助ユニットは、通常動作の際には、主制御ユニットに関するセンサデータの監視及び/又は処理のために用いられ、主制御ユニットにエラーが発生した場合には、非常時用のパワーエレクトロニクスを駆動制御して、過酷な遮断を防ぎ、これによって、運転者の苛立ちを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102010050820号明細書(DE102010050820A1)
【文献】独国特許出願公開第102010050820号明細書(DE102008048952A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、補助制御ユニットの二重機能により、両ケースにおいて計算量が大幅に増加することになり、同時に融通性及び動作信頼性が制限される。
【0007】
従って、本発明の課題は、特に融通性に関して改善された特性を有する、特に効率的な操舵装置を提供することにある。この課題は、請求項1の特徴及び請求項11の特徴によって解決され、それに対して、本発明の好適な実施形態及び発展形態は、従属請求項から読み取ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の開示
本発明は、特に電動操舵アシストを提供するための操舵装置であって、少なくとも1つの通常動作状態において、少なくとも1つの電気モータの動作を制御するために設けられている少なくとも1つの主制御ユニットと、特に通常動作状態とは異なる、主制御ユニットの障害及び/又は故障が発生している少なくとも1つのエラー動作状態において、特に少なくとも一時的に電気モータの動作を制御するために設けられている少なくとも1つの補助制御ユニットと、を備える操舵装置を基礎としている。
【0009】
主制御ユニットは、特に通常動作状態において、補助制御ユニットに依存することなく動作可能であり、補助制御ユニットは、通常動作状態において受動的な動作モードにあることが提案される。この実施形態により、特に、操舵装置の融通性を高めることができる。その上さらに、計算労力を最小限にすることができ、及び/又は、制御アルゴリズムを簡素化することができる。さらに、好適には、エラー動作状態における運転者の苛立ちを防止することができるため、動作信頼性を高めることができる。さらに、好適には、効率、特に電力効率、制御効率、エネルギー効率、スペース効率、及び/又は、コスト効率を最適化することができる。
【0010】
「操舵装置」とは、特に、この関係において、特に車両、好適には自動車の操舵システムの少なくとも一部、特にサブアセンブリを意味するものと理解されたい。操舵システムは、この場合、好適には、特に機械的な支配率を有する従来の操舵システムとして構成され、従って、特に、ステアバイワイヤ方式の操舵システムとして構成された操舵システムとは異なる。さらに、操舵装置は、特に電気モータも含み得る。その上さらに、操舵装置は、さらなる部品及び/又はアセンブリ、例えば、少なくとも1つの操舵ハンドル、好適には電気モータの動作、特に駆動制御及び/又は給電のためのインバータユニット及び/又は出力段として構成された少なくとも1つのパワーエレクトロニクス、及び/又は、電気モータのロータ位置を検出するための及び/又は操舵ハンドルからの操舵角情報を検出するための少なくとも1つのセンサユニットを含み得る。さらに、電気モータは、特にサーボモータとして、好適にはブラシレスモータとして、特に好適には非同期モータとして又は永久励磁同期モータとして構成されている。好適には、電気モータは、ここでは電動アシストパワーステアリングの一部であり、特に電動操舵アシストの生成のために設けられている。電気モータは、ここでは、例えば、6相、9相又は12相の電気モータとして構成されてもよい。しかしながら、好適には、電気モータは、三相電気モータ及び/又は標準的な電気モータとして構成されていることが提案される。「設けられる」とは、特に、専用にプログラミングされ、設計され、及び/又は、装備されることを意味するものと理解されたい。1つの対象が所定の機能のために設けられているということのもとでは、特に、当該対象がこの所定の機能を、少なくとも1つの適用及び/又は動作状態において充足及び/又は実行することを意味するものと理解されたい。
【0011】
さらに、「制御ユニット」とは、特に、情報入力端、情報処理部及び情報出力端を有する電子ユニットを意味するものと理解されたい。好適には、制御ユニット、特に主制御ユニット及び/又は補助制御ユニットは、さらに、少なくとも1つの計算ユニット及び/又は例えばマイクロプロセッサの形態のプロセッサ、少なくとも1つの動作メモリ、少なくとも1つの入力及び/又は出力手段、少なくとも1つの動作プログラム、少なくとも1つの開ループ制御ルーチン、少なくとも1つの閉ループ制御ルーチン、少なくとも1つの計算ルーチン、及び/又は、少なくとも1つの処理ルーチンを有する。主制御ユニットは、特に、電気モータの動作を制御するために高水準のソフトウェアを含む。好適には、主制御ユニットは、通常動作状態において、特にパワーエレクトロニクスの駆動制御によって、電気モータのモータトルク、好適には、電気モータのアシストトルクを設定するために設けられている。補助制御ユニットは、特に、主制御ユニットとの作用接続路を有し、特に、主制御ユニットをエラー動作状態において置き換え、電気モータの動作の制御を引き継ぐために設けられている。好適には、主制御ユニットは通常動作状態において、補助制御ユニットはエラー動作状態において、電気モータの動作を制御するために、少なくとも部分的に同一の及び/又は同一の、特に既存のアセンブリ及び接続線路を使用し、好適には電気モータの同相で動作するために設けられている。さらに、補助制御ユニットは、好適には、主制御ユニットに依存することなく動作可能である。特に、補助制御ユニットは、少なくとも好適には、専ら、エラー動作状態において、特にパワーエレクトロニクスの駆動制御により、電気モータのモータトルク、好適には電気モータのアシストトルクを変更するために及び/又は変化させるために設けられている。三相電気モータを使用する場合、主制御ユニット及び補助制御ユニットを用いた電気モータの制御により、ここでは特に、冗長性を達成することができ、さらに好適には、仮想の6相動作又は2×3相動作を達成することができる。さらに、補助制御ユニットは、好適には少なくとも、非常時及び/又は緊急時動作を開始及び/又は提供するために設けられている。さらに、主制御ユニット及び/又は補助制御ユニットは、好適には操舵装置の制御機器内に統合されている。
【0012】
その上さらに、「主制御ユニットの障害及び/又は故障」とは、特に、主制御ユニット自体の障害及び/又は故障、及び/又は、主制御ユニットと相互作用する例えばエネルギー供給部などの周辺アセンブリの障害及び/又は故障、並びに、これにより引き起こされる主制御ユニットの障害を意味するものと理解されたい。さらに、「主制御ユニットは、補助制御ユニットに依存することなく動作可能である」との表現は、特に、電気モータの動作の制御が、通常動作状態において、主制御ユニットにより、特に補助制御ユニットに依存することなく行われることを意味するものと理解されたい。このケースにおいては、主制御ユニットは、特に自立的に構成されており、特に補助制御ユニットの監視のために設けられていない。同様に、「補助制御ユニットは、主制御ユニットに依存することなく動作可能である」との表現は、特に、電気モータの動作の制御は、エラー動作状態において、補助制御ユニットにより、特に主制御ユニットに依存することなく行われることを意味するものと理解されたい。このケースにおいては、補助制御ユニットは、特に自立的に構成されており、特に主制御ユニットの監視のために設けられていない。さらに特に、「受動的な動作モード」は、特に省エネの静止動作モード及び/又は特に省エネの待機動作モードを意味するものと理解されたい。これらのモードにおいては、補助制御ユニットは、特に非動作状態及び/又は非アクティブ状態であり、特に、アクティブな機能は知覚されない。
【0013】
さらに、主制御ユニットは、通常動作状態において、動作信号、特に動作状態を提供し、特に、補助制御ユニットに、特に例えば光学式及び/又は誘導式のように無線で、及び/又は、有線で伝送するために設けられていることが提案される。補助制御ユニットは、特に、動作信号を検出及び/又は評価するために設けられている。さらに、補助制御ユニットは、特に、動作信号の欠如に依存して主制御ユニットの障害及び/又は故障を特定し、特に、エラー動作状態に結合されたエラー動作モードを開始するために設けられている。このエラー動作モードにおいて、電気モータの動作を制御するために、補助制御ユニットは設けられている。この目的のために、好適には、主制御ユニットは、補助制御ユニットと電気的に接続されている。これにより、好適には、特に補助制御ユニットが受動的な動作モードにある動作状態においても、エラー動作状態を簡単に検出することができる。さらに、好適には、補助制御ユニットを用いた主制御ユニットの計算労力が集中する監視を省くことができる。
【0014】
動作信号は、例えば連続的な信号であってもよいが、特別に高いエネルギー効率は、特に動作信号が不連続な信号で、主制御ユニットは、動作信号を規則的な時間間隔で提供するために設けられている場合に達成することができる。
【0015】
好適には、主制御ユニットは、動作信号を少なくとも1ms、好適には少なくとも5ms、及び/又は、最大で100ms、好適には最大で50msの時間間隔で提供し、補助制御ユニットに伝送するために設けられている。これにより、特に、動作信頼性を高めることができ、エラー動作状態の確実な検出を保証すると同時に有利なエネルギー効率を達成することができる。
【0016】
補助制御ユニットの計算能力が、主制御ユニットの計算能力よりも低い場合には、特に、補助制御ユニットのための追加コストを削減することができる。好適には、補助制御ユニットの計算能力は、この場合、主制御ユニットの計算能力よりも少なくとも10%、好適には少なくとも25%、より好適には少なくとも50%、特に好適には少なくとも75%低い。
【0017】
補助制御ユニットは、特に、電気モータのモータトルク、特にアシストトルクの段階的な減少が達成され、特に操舵アシストが段階的に低減されるように、電気モータを、エラー動作状態において動作させるために、特に阻止及び/又は制動するために設けられていてもよい。しかしながら、本発明の好適な実施形態によれば、補助制御ユニットは、電気モータの少なくとも1つのモータトルク、特にアシストトルクの下降勾配が達成されるように、電気モータを、エラー動作状態において動作させるために、特に阻止及び/又は制動するために設けられていることが提案される。好適には、補助制御ユニットは、この場合、電気モータのモータトルク、特にアシストトルクが連続的にかつ特に突発的に低減しないように、電気モータを、エラー動作状態において動作させるために設けられている。従って、好適には、提供される操舵アシストは連続的に低減され、これによって、特に、純粋な機械的動作への好適で滑らかな切り替え及び/又は目立たない切り替えが達成され、運転者の苛立ちを防止することができる。
【0018】
本発明のさらなる実施形態においては、補助制御ユニットは、電気モータの通常動作状態と同等のモータトルク、特にアシストトルクが生成可能であるように、電気モータを、エラー動作状態において動作させるために設けられていることが提案される。好適には、補助制御ユニットは、この場合、有利には完全なモータトルク、特にアシストトルクを提供し得るように、電気モータを、エラー動作状態において主制御ユニットと同等の方法により動作させるために設けられている。好適には、補助制御ユニットはさらに、エラー動作状態において、特にパワーエレクトロニクスの駆動制御によって、電気モータのモータトルク、好適には電気モータのアシストトルクを設定するために設けられている。この目的のために、補助制御ユニットは、特に、電気モータの動作を制御するために高水準のソフトウェアを含み得る。これにより、好適には、運転者の苛立ちをさらに低減することができる。なぜなら、エラー動作状態においてさえも、運転者に快適な操舵を可能にさせる操舵アシストを提供することができるからである。さらに、好適には、動作信頼性を高めることができる。なぜなら、主制御ユニットに割り当てられた制御パスも、補助制御ユニットに割り当てられたさらなる制御パスも、相互に依存しておらず、同時に電気モータの動作に関して十分に安全であるからである。
【0019】
さらに、操舵装置は、電気モータを動作させるための少なくとも1つのパワーエレクトロニクス、特に、前述したパワーエレクトロニクスを含み、ここで、補助制御ユニットは、エラー動作状態においてパワーエレクトロニクスを、特に、例えば別個のドライバエレクトロニクスなどを介して間接的に、又は、好適には直接的に駆動制御するために設けられていることが提案される。これにより、特に、好適な高い動作信頼性を達成することができ、及び/又は、好適で簡単な制御アルゴリズムを提供することができる。
【0020】
代替的又は付加的に、操舵装置は、電気モータの少なくとも1つの相を分離するための、好適には電気モータの個々の相を選択的に分離するための少なくとも1つのスイッチングユニットを含み、ここで、補助制御ユニットは、エラー動作状態においてスイッチングユニットを、特に間接的又は好適には直接的に駆動制御するために設けられていることが提案される。好適には、このスイッチングユニットは、ここでは複数のスイッチング素子を含み、ここで、好適には、スイッチング素子の数は、相の数に適合化されており、特に、電気モータの各相にスイッチング素子の正確に1つが割り当てられているように適合化されている。さらに、スイッチングユニットは、好適には、回路技術的にパワーエレクトロニクスと電気モータとの間に配置されている。これにより、好適には、補助制御ユニットの計算能力をさらに低減することができ、それによって、好適には、補助制御ユニットを、最小の追加コストに関する最小のチップセットで提供することができる。
【0021】
その上さらに、操舵装置は、少なくとも1つの制御ユニット、例えばパワーエレクトロニクス用のさらなるスイッチングユニット、レベル変換器、電力減衰器、電力増幅器、及び/又は、別個のドライバエレクトロニクスを含み、当該制御ユニットは、少なくともエラー動作状態において補助制御ユニットの駆動制御信号に依存して主制御ユニットによる電気モータの動作を阻止するために設けられていることが提案される。これにより、特に動作信頼性を高めることができる。なぜなら、主制御ユニットを、エラーの際に好適には、残余のアセンブリから分離することができるからである。
【0022】
操舵装置は、ここでは、上述の適用及び実施形態に限定されるものではない。特に、操舵装置は、本明細書において説明される機能を満たすために、本明細書において挙げられた個々の要素、部品及びユニットの数とは異なる数を有することが可能である。
【0023】
さらなる利点は、以下の図面についての説明から得られる。これらの図面には、本発明の実施例が示されている。これらの図面、説明及び特許請求の範囲は、複数の特徴の組合せを含む。当業者は、また、これらの特徴を便宜的に個別に観察し、有意なさらなる組合せに統合し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】操舵装置を備えた例示的な操舵システムの簡略図。
図2】操舵装置の電気モータの駆動制御部の概略図。
図3a】エラー動作状態における電気モータのモータトルクの下降勾配の例示的な図。
図3b】エラー動作状態における電気モータのモータトルクの下降勾配の例示的な図。
図4】電動操舵アシストを提供する操舵装置のさらなる実施例を示した図。
図5】電動操舵アシストを提供する操舵装置のさらなる実施例を示した図。
図6】電動操舵アシストを提供する操舵装置のさらなる実施例を示した図。
図7】電動操舵アシストを提供する操舵装置のさらなる実施例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施例の説明
図1は、例示的な操舵システム22aを簡略図において示している。この操舵システム22aは、機械的な支配率を有する従来の操舵システムとして構成されている。さらに、この操舵システム22aは、電動アシスト操舵システムとして構成され、従って、電動補助力アシストを有する。さらに、操舵システム22aは、車両(図示せず)、特に自動車において使用するために設けられている。
【0026】
操舵システム22aは、取り付けられた状態において、車両の車輪24aとの作用接続部を有し、車両の走行方向に作用するために設けられている。
【0027】
操舵システム22aは、操舵装置を含む。この操舵装置は、本実施例のケースにおいては、例示的にステアリングホイールとして形成された操舵ハンドル26aを含み、この操舵ハンドル26aは、手動の操舵トルクを付加するために設けられている。従って、操舵ハンドル26aは、操舵設定量の導入のために用いられ、特に、車両の走行方向の手動による、特に運転者による制御のために用いられる。
【0028】
その上さらに、操舵装置は、ステアリングギア28aを有し、このステアリングギア28aは、本実施例のケースにおいては、それ自体公知のラックアンドピニオン式ステアリングギアとして構成されている。このステアリングギア28aは、ステアリングピニオン30aと、当該ステアリングピニオン30aに機械的に結合された歯付きラック32aとを含む。ステアリングギア28aは、車輪24aの旋回運動及び/又は回転運動を引き起こすために、特に、操舵設定量を車輪24aの操舵運動に置き換えるために設けられている。
【0029】
操舵ハンドル26aとステアリングギア28aとの機械的な結合のために、操舵装置は、さらに、ステアリングコラム34aを含む。このステアリングコラム34aは、少なくとも1つのねじり要素(図示せず)、本実施例のケースにおいては、特にトーションバーを含み、このねじり要素は、操舵設定量に依存したねじれのために設けられている。
【0030】
さらに、操舵装置は、操舵アシストを生成及び/又は提供するための電気的に構成されたアシストユニット36aを備える。このアシストユニット36aは、アシストトルクをステアリングギア28aに導入し、特に運転者によって付加された手動による操舵トルクをアシストするために設けられている。
【0031】
この目的のために、アシストユニット36aは、本実施例のケースにおいては、特に永久励磁同期モータとして構成された電気モータ12aを含む。この電気モータ12aは、多相電気モータとして、本実施例のケースにおいては三相電気モータとして構成されている。この電気モータ12aは、ステアリングギア28a、特に歯付きラック32aと作用接続を形成している。電気モータ12aは、モータトルク、特にアシストトルクの生成のために設けられている。電気モータ12aは、ここでは電動アシストパワーステアリングの一部であり、特に電動操舵アシストの生成のために用いられる。しかしながら、基本的には、電気モータは、6相又は12相の電気モータとして構成されてもよい。
【0032】
さらに、操舵装置は、第1のセンサユニット38aを有する。この第1のセンサユニット38aは、少なくとも1つの例えばトルクセンサとして構成された角度センサ40aを含み、操舵ハンドル26aからの操舵角情報41aの検出のために設けられている。本実施例のケースにおいては、第1のセンサユニット38aは、ねじり要素の領域に配置されており、特にねじれ要素に関連付けられたトルク信号の形態の操舵角情報41aの検出のために設けられている。このトルク信号は、ここでは、特に運転者によって付加された手動による操舵トルクの尺度量である。しかしながら、好適には、第1のセンサユニット38aは、少なくとも2つの角度センサを有することもでき、これにより、特に有利な冗長性を達成することができる。
【0033】
さらに、操舵装置は、第2のセンサユニット42aを有する。この第2のセンサユニット42aは、少なくとも1つのロータ位置センサ44a、46aを含み、本実施例のケースにおいては、好適には、2つのロータ位置センサ44a,46aを含む(特に図2を参照)。第2のセンサユニット42aは、電気モータ12aの領域に配置されており、電気モータ12aのロータ位置信号47aの検出のために設けられている。しかしながら、基本的には、第2のセンサユニットは、正確に1つのロータ位置センサ又は少なくとも3つのロータ位置センサを有していてもよい。
【0034】
その上さらに、操舵装置は、制御機器48aを有している。この制御機器48aは、第1のセンサユニット38a、第2のセンサユニット42a及びアシストユニット36aとの作用接続部を有する。制御機器48aは、電気モータ12aの駆動制御のために、従って、特に操舵角情報41a及びロータ位置信号47aに依存した特にモータトルクの設定のために設けられている。
【0035】
図2は、制御機器48aの簡略化された概略構造、特に、電気モータ12aの駆動制御のための簡略化された基本的なブロック回路図を示している。
【0036】
操舵装置は、主制御ユニット10aを含む。この主制御ユニット10aは、本実施例のケースにおいては、制御機器48aに統合されている。しかしながら、基本的には、主制御ユニットは、制御機器とは別個に構成されていてもよい。主制御ユニット10aは、例えばマイクロプロセッサの形態の少なくとも1つのプロセッサ(図示せず)を含む。さらに、主制御ユニット10aは、少なくとも1つの動作メモリ(図示せず)を含み得る。さらに、主制御ユニット10aは、少なくとも1つの計算ルーチン、少なくとも1つの開ループ制御ルーチン、及び、少なくとも1つの処理ルーチンを備え、動作メモリに格納された少なくとも1つの動作プログラムを含む。主制御ユニット10aは、さらに、第1のセンサユニット38a及び第2のセンサユニット42a、特にロータ位置センサ44a,46aのうちの第1のロータ位置センサ44aとの電気的な接続路を有する。
【0037】
その上さらに、操舵装置は、出力段として構成されているそれ自体公知のパワーエレクトロニクス16aを含む。このパワーエレクトロニクス16aは、本実施例のケースにおいては、制御機器48aに統合されている。しかしながら、基本的には、パワーエレクトロニクスは、制御機器とは別個に構成されていてもよい。パワーエレクトロニクス16aは、主制御ユニット10a及び電気モータ12aとの電気的な接続路を有する。パワーエレクトロニクス16aは、主制御ユニット10aと電気モータ12aとの間に配置されている。パワーエレクトロニクス16aは、エネルギー源の整流された脈動電圧を相電流に変換し、各センタータップを介して電気モータ12aに、特にこの電気モータ12aの各相に供給するために設けられている。しかしながら、基本的には、パワーエレクトロニクスを省くか、又は、パワーエレクトロニクスを主制御ユニット及び/又は補助制御ユニットに統合することも考えられる。
【0038】
通常動作状態においては、主制御ユニット10aは、電気モータ12aの動作を制御するために設けられている。ここでは、主制御ユニット10aは、操舵角情報41a及びロータ位置信号47aを受信し、パワーエレクトロニクス16aの駆動制御により電気モータ12aのモータトルクを設定するために設けられている。
【0039】
操舵システムは、運転者及び/又は車両案内への直接的な影響を及ぼす保安部品に係る車両コンポーネントであるため、主制御ユニット10a自体及び/又は主制御ユニット10aと相互作用する例えばエネルギー供給部などの周辺アセンブリの障害及び/又は故障並びにこれによって生じる主制御ユニット10aの障害が発生するエラー動作状態においては、対応する安全構想が必要になる。この安全構想として、例えば、少なくとも、操舵ハンドル26a、ステアリングコラム34a及びステアリングギア28aを含み、故障した操舵アシストであっても操舵を可能にする機械的なフォールバックレベルを用いることができる。しかしながら、機械的動作への変更の際の操舵アシストの突発的な遮断は、操舵ハンドル26aにおける大きなトルク変化を引き起こし、このことは、運転者にとって大きな苛立ちになりかねず、事故のリスクを高める。
【0040】
特に、この種のケースにおいて運転者の苛立ちを防止するために、操舵装置は、補助制御ユニット14aを含む。この補助制御ユニット14aは、本実施例のケースにおいては、制御機器48aに統合されている。補助制御ユニット14aは、例えばマイクロプロセッサの形態の少なくとも1つのプロセッサ(図示せず)を含む。さらに、補助制御ユニット14aは、さらなる動作メモリに格納されたさらなる動作プログラムを備える少なくとも1つのさらなる動作メモリ(図示せず)を含む。
【0041】
補助制御ユニット14aは、主制御ユニット10aとは別個に構成されている。さらに、補助制御ユニット14aは、主制御ユニット10aとは構造的に異なっている。この場合、補助制御ユニット14aの計算能力は、主制御ユニット10aの計算能力よりも少なくとも50%低い。しかしながら、基本的には、補助制御ユニットは、制御機器とは別個に構成されてもよい。さらに、補助制御ユニットの計算能力も、主制御ユニットの計算能力と同一又はほぼ同一であってもよい。
【0042】
補助制御ユニット14aは、さらに、主制御ユニット10aとパワーエレクトロニクス16aとの電気的な接続路を有する。さらに、補助制御ユニット14aは、第2のセンサユニット42a、特にロータ位置センサ44a,46aのうちの第2のロータ位置センサ46aとの電気的な接続路を有する。しかしながら、本実施例のケースにおいては、補助制御ユニット14aは、第1のセンサユニット38aとの電気的な接続路がない。ただし、基本的には、補助制御ユニットは、例えば以下の実施例のいくつかにおいて示されるように、第1のセンサユニットとの電気的な接続路を有していてもよい。
【0043】
その上さらに、補助制御ユニット14a及び主制御ユニット10aは、相互に依存することなく動作可能である。補助制御ユニット14aは、通常動作状態においては純粋に受動的な動作モードにあり、エラー動作状態においては専ら電気モータ12aの動作を制御するために設けられている。本実施例のケースにおいては、補助制御ユニット14aは、非常時及び/又は緊急時動作を開始するために、主制御ユニット10aを、エラー動作状態において置き換え、電気モータ12aの動作の制御を引き継ぐために設けられている。補助制御ユニット14aは、さらに、電気モータ12aの動作を制御するために、主制御ユニット10aと少なくとも部分的に同一の及び/又は同一の、特に既存のアセンブリ及び接続線路を使用し、主制御ユニット10aと同一の、電気モータ12aの相を動作させるために設けられている。三相電気モータ12aを使用する場合、これによって冗長性を達成することができ、さらに好適には、仮想の6相動作又は2×3相動作を達成することができる。本実施例のケースにおいては、補助制御ユニット14aは、エラー動作状態においてパワーエレクトロニクス16aを直接駆動制御し、これによって、電気モータ12aのモータトルク、特にアシストトルクの下降勾配が達成されかつ操舵ハンドル26aにおける操舵運動が好適に減衰されるように、電気モータ12aを動作させるために設けられている。特に、この場合、補助制御ユニット14aによって、電気モータ12aのモータトルク、ひいては提供される操舵アシストが連続的に低減され、特に突発的に低減されず、これによって、特に、機械的動作への好適で滑らかな切り替え及び/又は目立たない切り替えが達成され、運転者の苛立ちを防止することができる。
【0044】
主制御ユニット10aのエラー動作状態、特に障害及び/又は故障を特定するために、主制御ユニット10aは、通常動作状態において、動作信号50aを提供し、特に補助制御ユニット14aに伝送するように設けられている。この動作信号50aは、本実施例のケースにおいては、不連続な信号であり、1msから100msの間の規則的な時間間隔で主制御ユニット10aから補助制御ユニット14aに伝送される。通常動作状態において特に受動的な補助制御ユニット14aは、動作信号50aを検出するために設けられている。主制御ユニット10aの障害及び/又は故障のケースにおいては、動作信号50aはもはや主制御ユニット10aによって生成されず、そのため、補助制御ユニット14aは、動作信号50aの欠如に基づき、主制御ユニット10aの障害及び/又は故障を特定し、特に、補助制御ユニット14aが電気モータ12aの動作の制御を引き継ぐ、エラー動作状態に結合されたエラー動作モードを開始することができる。しかしながら、基本的には、動作信号は、連続的な信号にも対応し得る。
【0045】
その上さらに、操舵装置は、本実施例のケースにおいては制御ユニット20aを含む。この制御ユニット20aは、本実施例のケースにおいては制御機器48aに統合されている。しかしながら、基本的には、制御ユニットは、制御機器とは別個に構成されてもよい。制御ユニット20aは、補助制御ユニット14aとの電気的な接続路を有する。さらに、制御ユニット20aは、主制御ユニット10a及びパワーエレクトロニクス16aとの電気的な接続路を有する。本実施例のケースにおいては、制御ユニット20aは、主制御ユニット10aとパワーエレクトロニクス16aとの間に配置されている。制御ユニット20aは、パワーエレクトロニクス16a用の例えばスイッチングユニットとして、レベル変換器として、電力減衰器として、電力増幅器として、及び/又は、別個のドライバエレクトロニクスとして構成されてもよい。制御ユニット20aは、少なくともエラー動作状態において、補助制御ユニット14aの駆動制御信号52aに依存して、主制御ユニット10aによる電気モータ12aの動作を阻止するために設けられている。本実施例のケースにおいては、制御ユニット20aは、この場合、少なくとも、主制御ユニット10aをパワーエレクトロニクス16aから切り離すために設けられており、これにより、特に動作信頼性を高めることができる。なぜなら、主制御ユニット10aを、エラーの際に残余のアセンブリから分離させることができるからである。しかしながら、基本的には、制御ユニットを完全に省くことも考えられる。さらに、制御ユニットは、例えばパワーエレクトロニクス用のドライバエレクトロニクスの形態で、パワーエレクトロニクス、主制御ユニット及び/又は補助制御ユニットに統合されてもよい。
【0046】
その上さらに、操舵装置及び/又は制御機器48aは、例えばエネルギー供給回路及び/又は電気モータ12aの少なくとも1つの相の分離のためのスイッチングユニットなどのさらなる部品及び/又はアセンブリを含み得る。
【0047】
図3a及び図3bは、それぞれ電気モータ12aのモータトルクの例示的な経過を示している。縦軸54aは、それぞれ変化量軸として形成されており、操舵アシストの程度を%で示している。横軸56aは、それぞれ時間軸として形成されている。特性曲線58aは、それぞれ電気モータ12aのモータトルクを示している。
【0048】
図3aにおいては、時点t1において、主制御ユニット10aの障害及び/又は故障が発生している。次いで、補助制御ユニット14aは、電気モータ12aのモータトルクの下降勾配が達成され、それによって、操舵アシストが連続的に低減されるように電気モータ12aを動作させるために設けられている。電気モータ12aのモータトルクの下降勾配を特徴付ける持続時間T1は、この場合、0.5秒及び5秒の間である。強調表示された領域は、操舵アシストの突発的な喪失領域(sudden loss of assistance=sLoA)を特徴付ける。
【0049】
図3bは、図3aに対する代替案を示している。このケースにおいては、時点t2において、主制御ユニット10aの障害及び/又は故障が発生している。次いで、補助制御ユニット14aは、電気モータ12aのモータトルクの段階的な減少が達成され、それによって、操舵アシストが段階的に低減されるように電気モータ12aを動作させるために設けられている。本実施例のケースにおいては、補助制御ユニット14aは、時点t2から電気モータ12aのモータトルク、ひいては操舵アシストを、さらなる持続時間T2にわたって値xまで低減するために設けられている。特にモータトルクが消滅するまでの電気モータ12aのモータトルクの減少を特徴付けるさらなる持続時間T2は、3秒及び5秒の間である。値xは、最大モータトルクの15%及び30%の間にある。図3bにおいて例示的に1つの段のみが示されている場合であっても、電気モータのモータトルクの段階的な減少を達成するために、補助制御ユニットは、電気モータを複数の段で駆動制御するために設けてもよい。
【0050】
図4乃至図7には、本発明のさらなる実施例が示されている。以下の説明及び図面は、実質的に実施例間の相違に絞られており、この場合、名称が同一の部品、特に同一の参照符号の部品に関しては、基本的に、他の実施例、特に図1乃至図3bの実施例の図面及び/又は説明を参照することも可能である。これらの実施例との区別のために、図1乃至図3bの実施例の参照符号には文字aが後付けされている。この文字aは、図4乃至図7の実施例においては文字b乃至eに置き換えられている。
【0051】
図4は、さらなる操舵装置を備えた本発明のさらなる実施例をより詳細な図面において示している。図4の実施例には、文字bが後付けされている。
【0052】
操舵装置は、ここでは、先の実施例と同様に、主制御ユニット10b、補助制御ユニット14b、電気モータ12b、パワーエレクトロニクス16b、第1のセンサユニット38b、第2のセンサユニット42b、及び、本実施例のケースにおいては、特にパワーエレクトロニクス16b用の別個のドライバエレクトロニクスの形態の制御ユニット20bを含む。
【0053】
さらに、主制御ユニット10bは、車両バスシステム70bへの付加的な接続部を有する。
【0054】
その上さらに、操舵装置は、このケースにおいてはスイッチングユニット18bを含む。このスイッチングユニット18bは、補助制御ユニット14bとの電気的な接続路を有する。さらに、スイッチングユニット18bは、パワーエレクトロニクス16b及び電気モータ12bとの電気的な接続路を有する。本実施例のケースにおいては、スイッチングユニット18bは、パワーエレクトロニクス16bと電気モータ12bとの間に配置されている。スイッチングユニット18bは、電気モータ12bの個々の相を選択的に分離するために設けられている。この目的のために、スイッチングユニット18bは、複数のスイッチング素子(図示せず)を含み、この場合、本実施例のケースにおいては、電気モータ12bの各相にこれらのスイッチング素子の正確に1つが割り当てられている。
【0055】
このケースにおいては、補助制御ユニット14bは、特に付加的又は代替的に、パワーエレクトロニクス16bの駆動制御のために、エラー動作状態においてスイッチングユニット18bを駆動制御し、これによって、電気モータ12bのモータトルク、特にアシストトルクの少なくとも1つの下降勾配が達成されるように電気モータ12bを動作させるために設けられている。
【0056】
図4には、付加的に、操舵装置のエネルギー供給回路60bが示されている。このケースにおいては、主制御ユニット10b及びパワーエレクトロニクス16bは、例えば、エネルギー源62bとの車両搭載電源網の形態の直接的な接続路を有し、補助制御ユニット14bは、同一のエネルギー源62bとの間接的な接続路を有する。エネルギー源62bへの補助制御ユニット14bの接続部のために、エネルギー供給回路60bは、例えば少なくとも1つの接続スイッチ64b、少なくとも1つの電圧レギュレータ66b及び/又は少なくとも1つのコンデンサ68を含み得る。
【0057】
図5には、本発明のさらなる実施例が示されている。この図5の実施例においては、文字cが後付けされている。図5のさらなる実施例は、少なくとも実質的に、操舵装置のパワーエレクトロニクス16cへの操舵装置の補助制御ユニット14cの接続部によって、先の実施例とは異なっている。
【0058】
このケースにおいては、補助制御ユニット14cは、少なくとも、エラー動作状態における電気モータ12cの動作を制御するために、パワーエレクトロニクス16cと間接的に接続されている。
【0059】
この目的のために、操舵装置は、さらなる制御ユニット72cを含み、このさらなる制御ユニット72cは、補助制御ユニット14cとパワーエレクトロニクス16cとの間に配置されている。さらなる制御ユニット72cは、パワーエレクトロニクス16c用の例えばスイッチングユニットとして、レベル変換器として、電力減衰器として、電力増幅器として、及び/又は、別個のドライバエレクトロニクスとして構成されてもよい。さらなる制御ユニット72cは、エラー動作状態において、補助制御ユニット14cのさらなる駆動制御信号74cに依存して、操舵装置の電気モータ12cの動作を、補助制御ユニット14cによって可能にするために及び/又は最適化するために設けられており、これにより、主制御ユニット10cの障害及び/又は故障の際に、特に高い動作信頼性を達成することができる。好適には、さらなる制御ユニット72cは、ここでは、特に主制御ユニット10cとパワーエレクトロニクス16cとの間に配置された切り替えスイッチとしての制御ユニット20cと相互作用することができる。制御ユニット20c及びさらなる制御ユニット72cは、このケースにおいては、主制御ユニット10c及び補助制御ユニット14cによるパワーエレクトロニクス16cの交互の駆動制御のために用いられる。
【0060】
その上さらに、補助制御ユニット14cは、このケースにおいては、接続線路76cを用いてパワーエレクトロニクス16c内の電流を検出するために設けられており、これにより、電気モータ12cのモータトルクの少なくとも一時的な制御を達成することができる。
【0061】
図6には、本発明のさらなる実施例が示されている。この図6の実施例においては、文字dが後付けされている。図6のさらなる実施例は、少なくとも実質的に、操舵装置の補助制御ユニット14dの実施形態によって、先の実施例とは異なっている。
【0062】
このケースにおいては、補助制御ユニット14dの計算能力は、主制御ユニット10dの計算能力と同一又はほぼ同一である。補助制御ユニット14dは、主制御ユニット10dをエラー動作状態において置き換え、電気モータ12dの動作の制御を引き継ぐために設けられている。この場合、補助制御ユニット14dは、エラー動作状態においてパワーエレクトロニクス16dを駆動制御し、これによって、電気モータ12dの通常動作状態と同等のモータトルク、特にアシストトルクが生成可能であるように電気モータ12dを動作させるために設けられている。従って、補助制御ユニット14dは、電気モータ12dをエラー動作状態において主制御ユニット10dと同等の方法で動作させるために、即ち、完全なアシストトルクを提供し得るように設けられている。
【0063】
この目的のために、補助制御ユニット14dは、操舵ハンドルからの操舵角情報、特にトルク信号の検出のために第1のセンサユニット38dとの電気的な接続路を有する。
【0064】
図7は、本発明のさらなる実施例を示している。図7の実施例には、文字eが後付けされている。
【0065】
このケースにおいては、補助制御ユニット14eも同様に、エラー動作状態においてパワーエレクトロニクス16eを駆動制御し、これによって、電気モータ12eの通常動作状態と同等のモータトルク、特にアシストトルクが生成可能であるように電気モータ12eを動作させるために設けられている。いずれにせよ、補助制御ユニット14eは、この場合、パワーエレクトロニクス16eの直接的な駆動制御のために設けられている。この場合、パワーエレクトロニクス16e用のドライバエレクトロニクス(図示せず)は、補助制御ユニット14eに統合されている。これにより、好適にはワンチップ解決手段を用いた場合でもパワーエレクトロニクス16e用のドライバエレクトロニクスをエラーパスとしてカバーすることができる。
【0066】
さらに、このケースにおいては、主制御ユニット10eが制御ユニット20eの駆動制御のために設けられており、これにより、操舵装置の融通性及び/又は主制御ユニット10eの制御信号の制御をさらに向上させることができる。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7