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特許7065976マルチコピー遺伝子を用いたツツガムシ病の診断方法
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  • 特許-マルチコピー遺伝子を用いたツツガムシ病の診断方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】マルチコピー遺伝子を用いたツツガムシ病の診断方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20220502BHJP
   C12Q 1/689 20180101ALI20220502BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220502BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12Q1/689 Z
C12N15/11 Z ZNA
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020537467
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 KR2018012785
(87)【国際公開番号】W WO2019135477
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2018-0002282
(32)【優先日】2018-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515121092
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック コーポレーション ファウンデイション, チョソン ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION, CHOSUN UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】キム ドン ミン
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/166287(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0184460(US,A1)
【文献】国際公開第2011/162441(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0028689(KR,A)
【文献】PLOS (2014), Vol.8, No.8, e3064(p.1-15)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から得られた試料中のオリエンティア・ツツガムシのマルチコピー遺伝子を、前記マルチコピー遺伝子の塩基配列を増幅させることのできるプライマー対を用いて検出する、ツツガムシ病の診断のためにオリエンティア・ツツガムシのマルチコピー遺伝子を検出する方法であって、
前記プライマー対が、マルチコピー遺伝子tchAに関する、配列番号1~2の対、配列番号3~4の対、配列番号5~6の対、配列番号7~8の対、配列番号9~10の対、及び配列番号11~12の対の塩基配列からなる群から選択されたいずれか一以上の対の塩基配列を含む、方法
【請求項2】
前記プライマー対が、さらに、マルチコピー遺伝子traB、traE、及び/又はtrbCに関する、配列番号13~14の対、配列番号15~16の対、配列番号17~18の対、配列番号19~20の対、配列番号21~22の対、配列番号23~24の対、配列番号25~26の対、配列番号27~28の対、配列番号29~30の対、配列番号31~32の対、配列番号33~34の対、及び配列番号35~36の対の塩基配列からなる群から選択されたいずれか一以上の対の塩基配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マルチコピー遺伝子tchAに関する、配列番号1~2の対、配列番号3~4の対、配列番号5~6の対、配列番号7~8の対、配列番号9~10の対、及び配列番号11~12の対の塩基配列を含むことを特徴とする、ツツガムシ病の診断用プライマー対。
【請求項4】
さらに、マルチコピー遺伝子traB、traE、及びtrbCに関する、配列番号13~14の対、配列番号15~16の対、配列番号17~18の対、配列番号19~20の対、配列番号21~22の対、配列番号23~24の対、配列番号25~26の対、配列番号27~28の対、配列番号29~30の対、配列番号31~32の対、配列番号33~34の対、及び配列番号35~36の対の塩基配列を含むことを特徴とする、請求項3に記載のツツガムシ病の診断用プライマー対。
【請求項5】
(a)患者から得られた試料からDNAを分離する段階;
(b)前記分離されたDNAを鋳型として、マルチコピー遺伝子tchAに関する、配列番号1~2の対、配列番号3~4の対、配列番号5~6の対、配列番号7~8の対、配列番号9~10の対、及び配列番号11~12の対の塩基配列を含むプライマー対を用いてPCRを行う段階;及び
(c)前記PCR産物を分離する段階を含むことを特徴とする、ツツガムシ病の診断のためにオリエンティア・ツツガムシのマルチコピー遺伝子を検出する方法。
【請求項6】
前記プライマー対が、さらに、マルチコピー遺伝子traB、traE、及びtrbCに関する、配列番号13~14の対、配列番号15~16の対、配列番号17~18の対、配列番号19~20の対、配列番号21~22の対、配列番号23~24の対、配列番号25~26の対、配列番号27~28の対、配列番号29~30の対、配列番号31~32の対、配列番号33~34の対、及び配列番号35~36の対の塩基配列を含む、請求項5に記載のツツガムシ病の診断のためにオリエンティア・ツツガムシのマルチコピー遺伝子を検出する方法。
【請求項7】
マルチコピー遺伝子tchAに関する、配列番号1~2の対、配列番号3~4の対、配列番号5~6の対、配列番号7~8の対、配列番号9~10の対、及び配列番号11~12の対の塩基配列を含むプライマー対を含むことを特徴とする、ツツガムシ病の診断用PCRキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコピー遺伝子を用いたツツガムシ病の診断方法に関するものであって、好ましくはツツガムシ病の原因菌であるオリエンティア・ツツガムシ(Orientia tsutsugamushi)菌のマルチコピー遺伝子の塩基配列を増幅させることのできるプライマー及びこれを用いたツツガムシ病を診断する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ツツガムシ病は、急性発熱性疾患としてオリエンティア・ツツガムシによって感染した毛ダニの幼虫に刺されて感染し、全身の血管炎による特徴的な臨床症状を呈する。主な宿主はげっ歯類であり、ダニは宿主であり媒介体である。主要な秋の劣性疾患として、韓国では1951年に初めて報告されて以来、韓国全域で9月から11月の間に発生しており、特に、韓国の秋に発生する患者の30%がツツガムシ病と診断されるほど一般的な病気である。
【0003】
症状は、感染した毛ダニの幼虫に刺された後、1~3週間の潜伏期間を経た後、初期症状として発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛を伴うこともあり、紅斑性の斑点や丘疹性の発疹が胸、腹、胴或いは上下肢及び珍しい場合は顔や手のひら、足の裏に現れる。毛ダニに刺されたところには発症から数日内に黒いかさぶたで覆われる痂皮(eschar)が生じ、ほとんどの場合、痛みやかゆみなどの症状はなく、痂皮の確認は迅速な診断に有用である。
【0004】
だいたい症状の経過が重くなく、抗生物質の治療によく反応するが、診断が遅れる場合、肺炎、急性腎不全、髄膜炎、脳炎、上部胃腸管出血、多器官機能不全、さらには心筋梗塞や中風の形で現れることがあり、これらの合併症により一部の患者においては死に至ることがある。
【0005】
それ故、迅速且つ正確な診断が患者の予後を改善するために不可欠である。
【0006】
ツツガムシ病の診断は、患者の血液からオリエンティア・ツツガムシを培養、分離して確認する方法、患者の血清中からオリエンティア・ツツガムシに対する抗体を検出する方法がある。但し、菌体を培養して病気を診断する方法は、培養に必要な時間が数週以上要求されており、実際の患者の診断目的としてふさわしくない。
【0007】
主に診断に使用される検査方法は、間接免疫蛍光抗体法(IFA)、受身赤血球凝集法(PHA)及び免疫クロマトグラフィー(Immonochromatography)が最も一般的に使用されている。
【0008】
これらの抗体を用いた診断法は、症状の発生1~2週間以後に検出される場合が多く、敏感度が非常に低く、偽陽性が多く、診断にあまり役立たない欠点がある。
【0009】
例えば、図1を参照すると、疾病管理本部に開示されているツツガムシ病を診断する方法のうち間接免疫蛍光抗体法(IFA)を用いた診断はIFA IgG抗体が1:256以上になると、ツツガムシ病確定と判定する。
【0010】
しかし、抗体が上昇して診断されるのに数週がかかることがあり敏感度も46.7%と比較的低く、症状の発生から1週間で来院した場合、全体の患者の42.1%だけがツツガムシ病と診断されることができ、より迅速且つ判定が容易な新たな診断法が求められている。
【0011】
代替診断法としてPCR(Polymerase Chain reaction)に基づいた検出法が提案されている。PCRは、DNAの望む部分のコピー(copy)の数を幾何級数的に増幅させることのできる分子生物学的方法である。DNAのどの部分でも、その配列さえ分かればPCRにより増幅することができる。
【0012】
PCR法は、従来の方法によって行われるコンベンショナル(conventional)PCRと、これを変形してコンベンショナルPCR法より100倍さらに敏感なネスティッド(nested)PCR法、PCR反応のリアルタイムモニタリング(monitoring)が可能で、2時間以内に結果を速成で確認できるリアルタイム(real time)PCR法などがある。
【0013】
従来はツツガムシ病のPCR診断方法において、46kDa、57kDa、groELなど、多様な標的タンパク遺伝子(target protein gene)を用いたPCRが試みられており、コンベンショナルPCRよりはネスティッドPCR及びリアルタイムPCRが主に用いられていた。ツツガムシ病の診断においてコンベンショナルPCRを行う場合、敏感度が10%以内で非常に低いという欠点があり、ネスティッドPCRの場合、PCRを2回行って敏感度を向上させることができるが、他のPCRに比べて検査時間がさらにかかる欠点とPCRを2回行うので遺伝子の汚染(contamination)により偽陽性率が高くなる欠点がある。
【0014】
但し、PCR反応のリアルタイムでモニタリングするリアルタイムPCRを行って検査を速成で診断する方法があるが、検査装置が非常に高価であるため、医療機関で普遍的に使用されるには難しいのが実情である。
【0015】
したがって、高い敏感度と特異度を示しながら、一般に検査方法が簡単且つコストが低い診断方法の開発が切実である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記のような問題点を解決するために案出されたものであって、本発明は、オリエンティア・ツツガムシ菌のマルチコピー遺伝子を用いてツツガムシ病を診断する方法を提供することを主目的とする。
【0017】
好ましくは、マルチコピー遺伝子の塩基配列を増幅することのできるプライマー対を用いてツツガムシ病を診断する方法を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明の第二の目的は、特定の塩基配列を含むプライマー対を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明の第三の目的は、特定の塩基配列からなるプライマー対を含むPCR診断キットを提供することを目的とする。
【0020】
好ましくは、本発明は、敏感度と特異度が優れた特定の塩基配列からなるプライマー対を提供することにより、ツツガムシ菌を迅速に診断することのできるPCT診断キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した第一の目的を達成するために、本発明は、オリエンティア・ツツガムシ菌のマルチコピー遺伝子の塩基配列を増幅することのできる特定の塩基配列を含むプライマーを開示する。本発明のプライマーは配列番号1~配列番号36の塩基配列からなる群の中から選ばれた1種以上の塩基配列を含む。
【0022】
好ましくは、本発明のプライマー対は、配列番号1~配列番号36の塩基配列からなる群の中から選ばれた2種以上の塩基配列を含む。
【0023】
さらに好ましくは、前記プライマー対は、配列番号1及び配列番号2の塩基配列を含むことができる。
【0024】
本発明の第二の目的を達成するために、本発明のツツガムシ病の診断方法は、マルチコピー遺伝子(multicopy gene)の塩基配列を増幅させることのできるプライマー対を用いて検出することができる。
【0025】
上記の診断方法は、(a)試料からDNAを分離する段階、(b)前記分離されたDNAを鋳型として配列番号1~配列番号36のプライマー対を用いてPCRを行う段階、及び(c)前記PCR産物を分離する段階を含むことができる。
【0026】
本発明の第三の目的を達成するために、ツツガムシ診断用PCRキットは、配列番号1~配列番号36の塩基配列からなる群から選択されたプライマー対を含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る特定の塩基配列を含むプライマー対は、マルチコピー遺伝子に対する高い特異性を有する。
【0028】
また、本発明に係るツツガムシ病の診断方法は、特定の塩基配列を含むプライマー対を用いてPCR反応によって高い敏感度と特異性で検出することができるので、高い信頼性により迅速且つ容易に臨床診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、間接免疫蛍光抗体法を用いた診断方法による検出敏感度のグラフである。
図2図2は、本発明に係るPCR検出方法を用いたツツガムシ病の診断方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明を詳細に説明する。
【0031】
本発明のツツガムシ病の診断方法は、オリエンティア・ツツガムシ菌のマルチコピー遺伝子の塩基配列を増幅させることのできるプライマー対を用いて検出することができる。
【0032】
前記マルチコピー遺伝子(multicopy gene)は、オリエンティア・ツツガムシ遺伝子内の複数の位置に繰り返し存在する遺伝子をいい、好ましくは14種のTra-linked遺伝子の塩基配列を含むことができ、さらに好ましくはtraB、traE、traC及びTchA遺伝子の塩基配列を含むことができる。
【0033】
また、前記マルチコピー遺伝子は、PCRの標的遺伝子(Target gene)である。
【0034】
従来の診断方法で用いられていた47kDa、56kDa、groEl-STGなどの標的タンパク遺伝子は、全体の遺伝子の内部のある位置にのみ存在するのに比べて、マルチコピー遺伝子は、様々な位置に繰り返し存在するため、PCRを行って塩基配列を増幅時にPCR効率が高くなるので、ツツガムシ病の診断の精度を高めることができる。
【0035】
本発明のツツガムシ診断用プライマーは配列番号1~配列番号36の塩基配列からなる群の中から選ばれた1種以上の塩基配列を含む。
【0036】
また、本発明のツツガムシ診断用のプライマー対は、配列番号1~配列番号36の塩基配列からなる群の中から選ばれた2種以上の塩基配列を含む。
【0037】
前記プライマー対は、配列番号1及び配列番号2の塩基配列を含むことができる。
【0038】
通常、前記プライマー対は、互いに相補的な塩基配列を持たない2つのプライマー(primer)をいう。
【0039】
プライマーは、特定の遺伝子配列に対して相補的な短い単線の遺伝子配列(oligonucleotide)でDNA合成の起点となり、PCR検査、DNAシークエンシング(DNA sequencing)などに用いられる。また、プライマーは、PCR検査の最も重要な要素であり、精度を決定する。前記プライマーはオリエンティア・ツツガムシ(Orientia tsutsugamushi)保寧(Boryong)菌株に感染した患者の血液から増幅した保寧(Boryong)菌株のマルチコピー遺伝子の塩基配列に基づいて設計し、マルチコピー遺伝子と相補的な塩基配列を有する。
【0040】
また、前記ツツガムシ病の診断方法は、(a)試料からDNAを分離する段階、(b)前記分離されたDNAを鋳型として配列番号1~配列番号36のプライマー対を用いてPCRを行う段階、及び(c)前記PCR産物を分離する段階を含むことができる。
【0041】
前記(a)段階でのDNA抽出は、当業界で通常使用される方法によって行われることができ、商業的に販売されているDNA抽出キットを用いて行うことができる。
【0042】
前記(b)段階でPCRは、分離されたDNAを鋳型とし、本発明のプライマー対がDNA重合酵素を用いて相補的DNA鎖(DNA strand)を合成してPCR反応を行うことができる。
【0043】
また、前記(b)段階で一対のプライマーで増幅される産物内の塩基配列に基づいてプローブ(Probe)をさらに含んでリアルタイムPCR反応を行うことができる。
【0044】
前記プローブとは、塩基配列と特異的に結合することのできる数個乃至数百個の塩基からなる核酸断片を意味し、ラベリングされており、特定の核酸が存在するかどうかを確認することができる。プローブは、好ましくは、5’-末端及び3’-末端にそれぞれ蛍光物質が標識されることができる。
【0045】
また、さらに好ましくは、前記5’-末端に標識された蛍光物質は、6-カルボキシフルオレセイン(6-carboxyfluorescein、FAM)、ヘキサクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(hexachloro-6-carboxyfluorescein、HEX)、テトラクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(tetrachloro-6-carboxyfluorescein)、及びCyanine-5(Cy5)、6-カルボキシ-4,5-ジクロロ-2,7-ジメトキシフルオレセイン(6-Carboxy-4’,5’-Dichloro-2’,7’-Dimethoxyfluorescein、6-JOE)、テトラクロロフルオレセイン(tetrachlorofluorescein、TET)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(tertramethylrhodamine isothiacyanate、Texas Red)、5-カルボキシ-x-ローダミン(5-carboxy-X-rhodamine、ROX)、6-カルボキシテトラメチル-ローダミン(6-carboxytetramethyl-rhodamine、TAMRA)からなる群から選ばれ、前記3’-末端に標識された蛍光物質は、6-カルボキシテトラメチル-ローダミン(6-carboxytetramethyl-rhodamine、TAMRA)またはblack holequencher-1,2,3(BHQ-1,2,3)であることができ、これに限定されるものではない。
【0046】
前記PCRは、重合酵素連鎖重合反応(polymerase chain reaction)の略語であって、DNAまたはRNAの特定領域を試験管内で大量に増幅する技術であり、当業界で公知の複数の成分を含むPCR反応混合液を用いて行われることができる。前記PCR反応混合液には、本発明で提供されるPCRプライマー対以外に、適量のDNA重合酵素、dNTP、PCR緩衝溶液及び水(dH2O)を含むことができる。
【0047】
また、PCR緩衝溶液は、トリス-HCl(tris-HCl)、MgCl2、KCl等を含むことができる。
【0048】
PCRは、通常、3つの反応段階からなっている。第一番目はDNAの変性段階で、二本鎖のDNAを、温度を加えて一本鎖のDNAに分離させる段階であり、第二番目はプライマーの結合段階で、一本鎖に変性したDNAとプライマーを共存させた後、温度を下げるとプライマー対がそれぞれ相補的な一本鎖の鋳型DNAに結合される段階であり、第三番目は伸長反応で4種類の基質(dNTP)が共存する状態でDNA重合酵素を作用させてプライマーを伸長させる段階からなっている。
【0049】
前記PCRは、通常のPCR反応を用いることができ、好ましくは、最も一般的なコンベンショナル(Conventional)PCR、2回のPCRを同時にまたは連続して行うデュプレックス(duplex)PCR及びネスティッド(nested)PCR、リアルタイムで結果を確認することのできる高価なリアルタイム(Real time)PCRのいずれをも用いることができ、最も好ましくはコンベンショナルPCRまたはリアルタイムPCRを用いることができる。
【0050】
前記リアルタイム(Real time)PCRは、PCR増幅産物の増加をリアルタイムでモニタリングして確認することができるので、追加的な電気泳動分析方法を用いなくてもよく、エンドポイント(End point)でPCR増幅産物を確認する既存のPCR法に比べて、迅速且つ容易にPCRを解析することができ、汚染の危険性が少ない。
【0051】
リアルタイムPCR増幅産物の検出方法は、標的配列(target sequence)に特異的であり、蛍光染料(dye)が結合されたプローブ(Probe)を用い、検出特異性が高く、似た配列までも区別して検出することができる。
【0052】
また、前記(c)段階では、当業界で広く公知された方法によってPCR産物を分離することができる。好ましくは、アガロースゲル(agarose gel)またはポリアクリルアミドゲル(polyacrylamide gel)電気泳動または蛍光分析装置(ABI prism 3100 genetic analyzer-elecropherogram)によって確認することができる。電気泳動後、エチジウムブロマイド(ethidium bromide)染色で電気泳動の結果を分析することができる。
【0053】
本発明のツツガムシ病の診断用PCRキットは、配列番号1~配列番号36の塩基配列からなる群から選択されたプライマー対を含むことができる。
【0054】
また、前記検出用PCRキットには、前記マルチコピー遺伝子の塩基配列を増幅することのできるプライマー対以外にも、重合酵素連鎖重合反応に関与する酵素、dNTP、緩衝溶液を含むことができ、PCR産物の増幅かどうかを確認することのできる電気泳動の実行に必要な構成成分であるミネラルオイル、標準マーカー、染色試薬であるブロモフェノールブルーまたはキシレンFFなどのPCR用の材料を含むことができる。
【0055】
以下、本発明を次の実施例によって菌の検出、診断方法についてより具体的に説明する。
【0056】
次の実施例は単に本発明を詳細に説明するためのもので、これらによって本発明の内容及び範囲が実施例によって限定されるものではないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明である。
【0057】
<実施例>
1.プライマーの作製
韓国で一般的なツツガムシ保寧(Boryong)菌株に感染した患者の血液から増幅されたマルチコピー遺伝子(multicopy gene)に基づいて設計された。
【0058】
さらに好ましくは、前記プライマーはGenbank Accession No.AM494475.1:O.tsutsugamushi Boryoung complete genome thcA gene(conserved hypothetical protein)に対して正方向のプライマー(position14-34)と逆方向のプライマー(position171-151)で作製し、それぞれ配列番号1~配列番号36で表記した。
【0059】
また、プローブ(probe)は、Taqman probe(position58-78)で作製し、配列番号37と38で表記した。
【0060】
本発明の実施例によって作製されたプライマー及びプローブを下記の表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
前記プライマーはマルチコピー遺伝子であるtchA、traB、traE、trbCと相補的な塩基配列を有することができる。
【0063】
また、前記プライマーの配列の長さはそれぞれ19nt~30nt、GC含量は20~60%であり、Tm値は50~70℃となるように作製した。
【0064】
2.検体の準備
2007年から2008年の間に、朝鮮大学校病院に来院した患者を対象に、当時痂皮または半球真性発疹などがあり、頭痛、全身脆弱感、筋肉痛、咳、吐き気、腹痛などの2種類以上の臨床症状を持っている患者の血液サンプルを採取し、遺伝子を抽出して検査に用いた。
【0065】
血液検体において間接免疫蛍光検査法(IFA)でオリエンティア・ツツガムシに対するlgG抗体が4倍以上上昇した場合をツツガムシ病の確定診断と定義し、ツツガムシ病と確定診断された患者52人の血液を陽性対照群とし、ツツガムシではない他の疾患と診断された患者20人の血液を陰性対照群として使用した。
【0066】
3.オリエンティア・ツツガムシの検出
作製したプライマー及び診断方法の有効性を確認するために準備した陽性対照群と陰性対照群の検体を対象としてDNAを検出して、図2に示すようにPCRを行った。
【0067】
患者から全血を採取し、白血球軟層を分離した後、QIA amp DNAミニキット(Qiagen、Germany)を用いてDNAを分離した。分離方法は、キットに同梱されたマニュアル(manual)により実施し、分離したDNAはオリエンティア・ツツガムシ菌の検出のための鋳型(template)として使用した。
【0068】
抽出されたDNAを鋳型としてコンベンショナルPCR、ネスティッドPCR及びリアルタイムPCRを行った。
【0069】
このとき、実験に使用したプライマーとしては、本発明の配列番号1~配列番号36の塩基配列を持つプライマーと配列番号37及び38の塩基配列を持つプローブを用いた。
【0070】
コンベンショナルPCR及びネスティッドPCRはAccuPowerTM PCR PreMix(1U Top polymerase、250μm dNTP、10 mM Tris-HCl(pH9.0;Bioneer)に2μl鋳型DNA、それぞれ1μlずつ10pmole/μl正方向プライマー及び逆方向プライマー、16μlの滅菌3次蒸留水を添加して総20μlの反応液を調製した後、チューブをよく混合してBiosystems VeritiTM 96-well Thermal cycle(Applied Biosystems)にセットした後、PCRを行った。
【0071】
また、リアルタイムPCRは、1μlの2pmole/μlプローブを含んで上記と同様の方法で反応液を調製した後、チューブをよく混合してBIONEER ExicyclerTM 96Real-Time Quantitative Thermal Block(Applied BIONNER)にセットした後、PCRを行い、プローブの5’と3’-末端にFAM(6-carboxyFluo-rescein)とBHQ-1(Black Hole Quencher-1)で標識して使用した。
【0072】
PCR実行条件は、表2に示した。
【0073】
PCR終了後、0.5ng/ml EtBr(ethidium bromide、Bioneer)を入れた1.5% agarose gel(Seakem LE agarose、Cambrex Bio Science)をバイオニア電気泳動装置(Bioneer)にロードし、100V(1X TEA、Bioneer)の条件で40分間PCR増幅産物を電気泳動を行い、その結果を観察した。
【0074】
PCR検査の結果、陰性対照群に対するPCR増幅産物は、電気泳動させた時にどこにもバンドが観察されなかった。また、本発明のプライマー対によるPCR増幅産物の大きさは表3に示されており、その大きさのバンドを確認することにより、オリエンティア・ツツガムシが検出されるかどうかを確認することとし、PCR増幅産物は、間接免疫蛍光検査法と一致する結果が導出されることが確認できた。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
<比較例>
1.従来の方法によるオリエンティア・ツツガムシの検出
本発明のプライマー及び診断方法の有効性を比較するために下記のように比較実験を行った。
【0078】
鋳型DNAは、前記血液検体から分離したものを同様に使用し、それぞれの実験は、ツツガムシ菌の検出に一般的に使用される標的タンパク遺伝子である56kDa、47kDaに対するコンベンショナルPCRとネスティッドPCRを行っており、その結果を表4に示す。
【0079】
それぞれのPCRに使用したプライマー対は、参考文献に基づいて作製するか、直接デザインして使用し、実施例3と同様の方法でPCRを実施した。
【0080】
47kDa遺伝子を増幅させるためのプライマー対は、参考文献(Jiang J、Chan TC、Temenak JJ、Dasch GA、Ching WM、Richards AL.Development of a quantitative realtime polymerase chain reaction assay specific for Orientia tsutsugamushi.Am J Trop Med Hyg.2004 Apr;70(4):351-6.)を参照して作製した。
【0081】
また、56kDa遺伝子を増幅させるためのプライマー対は、参考文献(Kim DM、Yun NR、Yang TY、Lee JH、Yang JT、Shim SK、et al.Usefulness of nested PCR for the diagnosis of scrub typhus in clinical practice:Aprospective study.Am J Trop Med Hyg.2006 Sep;75(3):542-5.)を参照して作製した。
【0082】
【表4】
【0083】
<結果>ツツガムシ病の診断方法の有効性確認
本発明のプライマーを用いた実施例3と比較例のオリエンティア・ツツガムシの検出方法において、オリエンティア・ツツガムシの検出敏感度(sensitivity)、特異度(specificity)及び検出時間を測定した結果を表5に示す。
【0084】
表5から分かるように、実施例3のTraB遺伝子を標的としてコンベンショナル(C)-PCRを行った場合、比較例1の56kDa、47kDa遺伝子を標的としたネスティッド(N)-PCRに比べて少ない時間が所要された。
【0085】
また、実施例3のTraB1、TraB2遺伝子を標的としてコンベンショナル(C)-PCRを行った場合、それぞれ82.7%と88.5%の敏感度を示した。
【0086】
特に、Tch遺伝子を標的として用いる場合には、コンベンショナルPCR(C-PCR)を行った場合、90.4%の敏感度を示し、リアルタイムPCR(Q-PCR)を行った場合、検出時間が1~2時間に過ぎないにも関わらず敏感度が98.1%を示した。
【0087】
よって、下記表5に示すように、本発明のプライマー対は、本発明が達成しようとした目的及び効果を達成した。
【0088】
上記の結果によれば、本発明に係るプライマー対を用いたPCR検出方法は、オリエンティア・ツツガムシの感染の有無を確認するのに十分な敏感度を提供できることが確認できる。
【0089】
【表5】
【0090】
以上により、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述しており、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は、単に正確な実施の例示であるだけで、これにより本発明の範囲が制限されるものではなく、本発明の実質的な範囲は、添付された請求項によって定義されるといえる。
図1
図2
【配列表】
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