(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】マイクロマシニング型のミラーデバイス、ミラーシステム、ならびにマイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 26/00 20060101AFI20220502BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20220502BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
G02B26/00
B81B3/00
B81C1/00
(21)【出願番号】P 2020542014
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2019051690
(87)【国際公開番号】W WO2019149605
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】102018201512.0
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018201965.7
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン フーバー
(72)【発明者】
【氏名】マーク シュミート
(72)【発明者】
【氏名】ラインホルト レーデル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シェリング
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ダニエル クレマー
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-158670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00
B81B 3/00
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロマシニング型のミラーデバイス(
200-600)であって、
平坦に形成された第1のミラー素子(10)と、
平坦に形成された第2のミラー素子(20)と、を備え、
前記第1および第2のミラー素子(10,20)は、実質的に面平行に配置されており、
前記第1のミラー素子(10)と前記第2のミラー素子(20)との間の介在空間(40)は、前記第1および/または第2のミラー素子(10,20)よりも低い屈折率を有し、
前記第1および第2のミラー素子(10,20)は、少なくとも1つの支持構造体(
230-630)によって相互に局所的に離間されて配置されており、
前記少なくとも1つの支持構造体(
230-630)は、前記第1および第2のミラー素子(10,20)に対して垂直に配置された軸線方向(A)で当該第1および第2のミラー素子(10,20)と部分的に重なり、
前記少なくとも1つの支持構造体(
230-630)は、前記第1および/または第2のミラー素子(10,20)が形成されている材料とは異なる材料を含むか当該材料から形成されて
おり、
前記第1および/または第2のミラー素子(10,20)は、同じ材料から形成されており、
前記支持構造体(230-630)は、前記第1および/または第2のミラー素子(10,20)の外面(14,24)から突出する少なくとも1つの区間(232;332;432;532)を有し、
前記第1および/または第2のミラー素子(10,20)の前記外面(14,24)は、それぞれ、前記第1のミラー素子(10)と前記第2のミラー素子(20)との間の前記介在空間(40)とは反対側にあり、少なくとも、ストッパあるいは静止摩擦防止としてそれぞれ機能する、前記少なくとも1つの支持構造体(230-630)の前記少なくとも1つの区間(232;332;432;532)は、電気絶縁材料から形成されている、
ミラーデバイス(
200-600)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの支持構造体(
230-630)の材料は、前記第1のミラー素子(10)および/または前記第2のミラー素子(20)の材料とは異なる厚さおよび/または機械的張力を有する、請求項1記載のミラーデバイス(
200-600)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの支持構造体(
230-630)は、前記第1のミラー素子(10)および前記第2のミラー素子(20)を、前記少なくとも1つの支持構造体(
230-630)によって相互に電気的に絶縁されたそれぞれ少なくとも2つの部分区間(11,12,21,22)に分割する、請求項1または2記載のミラーデバイス(200-600)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの支持構造体(330;530;630)の横方向の伸張部は、前記第1および/または第2のミラー素子(10,20)の横方向の伸張部と部分的に重なる、請求項1から3までのいずれか1項記載のミラーデバイス(300;500;600)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの支持構造体(430)は、少なくとも2つの異なる材料(434,436)から形成されている、請求項1から
4までのいずれか1項記載のミラーデバイス(400)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの支持構造体(630)は、流体が前記支持構造体(630)、前記第1および第2のミラー素子(10
,20)を通過できる流体通路開口(638)を有する、請求項1から
5までのいずれか1項記載のミラーデバイス(600)。
【請求項7】
前記第1のミラー素子(10)と前記第2のミラー素子(20)との間の前記介在空間(40)には、ガスまたは真空が配置されている、請求項1から
6までのいずれか1項記載のミラーデバイス(
200-600)。
【請求項8】
ミラーシステム(1000)であって、
請求項1から
6までのいずれか1項記載のミラーデバイス(
200-600)と、
第1および/または第2のミラー素子(10
,20)の相互に電気的に絶縁された少なくとも2つの部分区間(11,12,21,22)に異なる電位が印加されるように構成された接触デバイス(1050)と、を備えた、ミラーシステム(1000)。
【請求項9】
請求項1記載の特徴を備えるマイクロマシニング型のミラーデバイス
(200-600)を製造する方法であって、
誘電体層(71)と、
前記誘電体層(71)上に配置された第1の光屈折層(72)と、
前記第1の光屈折層(72)上に配置された犠牲層(73)と、
前記犠牲層(73)上に配置された第2の光屈折層(74)と、
を有する層スタック(70)を提供するステップ(S01)と、
前記第1の光屈折層(72)、前記犠牲層(73)、および前記第2の光屈折層(74)のそれぞれ一部を除去するステップ(S02)であって、それにより、連結凹部(76)は、前記層スタック(70)内で、当該凹部(76)が前記第1および第2の光屈折層(72,74)に対して垂直に配置された軸線方向(A)で前記第1および第2の光屈折層(72,74)と部分的に重なるように形成される、ステップ(S02)と、
前記凹部(76)が開口する前記層スタック(70)の片面側に、前記第1および/または第2の光屈折層(72,74)の材料とは異なる材料からなる充填層(78)を堆積するステップ(S03)と、
前記層スタック(70)の元の外層の外側にある、前記充填層(78)の一部を除去するステップ(S04)と、
前記マイクロマシニング型のミラーデバイス(200-600)の前記第1および第2の光屈折層(72,74)を相互に面平行なミラー素子(10,20)として提供するために前記犠牲層(73)を除去するステップ(S06)と、を含
み、
前記第1および/または第2のミラー素子(10,20)は、同じ材料から形成されており、
前記マイクロマシニング型のミラーデバイス(200-600)の前記支持構造体(230-630)は、前記第1および/または第2のミラー素子(10,20)の外面(14,24)から突出する少なくとも1つの区間(232;332;432;532)を有して形成されており、
前記第1および/または第2のミラー素子(10,20)の前記外面(14,24)は、それぞれ、前記第1のミラー素子(10)と前記第2のミラー素子(20)との間の介在空間とは反対側にあり、
少なくとも、ストッパとしてまたは静止摩擦防止としてそれぞれ機能する、前記少なくとも1つの支持構造体(230-630)の前記少なくとも1つの区間(232;332;432;532)は、電気絶縁材料から形成されている、
方法。
【請求項10】
前記除去するステップ(S02)は、前記第1および第2の光屈折層(72,74)をそれぞれ少なくとも2つの相互に離間された部分区間(11,12,21,22)に分割するように前記連結凹部(76)が形成されるように行われる、請求項
9記載の方法。
【請求項11】
前記層スタック(70)は、前記第2の光屈折層(74)上に配置された保護層(75)と共に提供され、前記保護層(75)は、前記層スタック(70)の片側で前記層スタック(70)の元の外層を形成し、
前記保護層(75)の一部も前記凹部(76)の形成のために除去され、
前記保護層(75)は、前記充填層(78)の一部を除去するステップ(S04)の際に、エッチングストップおよび/または研磨ストップとして機能し、
前記方法は、前記充填層(78)の一部を除去する前記ステップ(S04)の後で、前記保護層(75)を除去するステップ(S05)を含む、請求項
9または
10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロマシニング型のミラーデバイス、ミラーシステム、ならびにマイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する方法に関する。さらに、本発明によるミラーデバイスおよび/または本発明によるミラーシステムを使用する、ファブリーペロー原理による干渉計が提供される。
【0002】
背景技術
小型化の可能性を備えた調整可能なスペクトルフィルタは、例えばファブリーペロー干渉計(FPI)としてMEMS技術を使用して実現することができる。ここで、光波長の範囲内の距離(キャビティ長)を有しかつ2つの面平行な高反射ミラーデバイスからなるキャビティは、半波長の整数倍に対応するキャビティ長の波長に対してのみ強い透過率を示すという事実が活用される。キャビティ長は、例えば、静電的または圧電的動作によって変化し得る。これにより、スペクトル的に調整可能なフィルタ素子が生じる。そのような分光計の性能に影響を与える重要な要因は、2つのミラーデバイスの平行性にある。この平行性は、2つのミラーデバイス間に可及的に高い精巧さで定められるキャビティを生じさせるためにも、可及的に高くすべきであろう。
【0003】
可及的に広い波長範囲をねらうことができるファブリーペロー干渉計を実現するためには、複数の条件を満たす必要がある。基本的な基準は、干渉計の2つのミラー素子が、測定すべき波長範囲全体にわたって高反射性であることにある。小型化された干渉計で頻繁に使用されるミラーデバイスの実施形態は、高屈折率材料と低屈折率材料とが交互に重なった層からなる誘電体層システム、特にブラッグ反射器(英語表記;「distributed bragg reflectors」、略してDBR)であり、これらの層の光学的な厚さは、それぞれ理想的には、ねらうべき範囲の中心波長の4分の1である。
【0004】
ミラー層の最大反射率は、DBRミラー層の可及的に高い屈折率跳躍的変化によって達成される。この非常に高い屈折率跳躍的変化は、例えば、シリコン-空気-多層ミラースタックを用いて達成できる。この場合、ミラーデバイス内部におけるミラー層の相互平行性を保証するためには、本明細書でミラー素子と称される周囲の高屈折層の距離を一定に保つ支持構造体が役に立つ。
【0005】
米国特許出願公開第2014/0111811号明細書では、2つのミラーデバイス、すなわち反射素子が相互に離間されたアンカー構造体を含む調整可能なファブリーペロー干渉計が開示されている。これらのミラーデバイスの剛性は、支持要素の密度を介して設定することができる。両ミラーデバイスは、1つの同じ基板に接続されている。これまでは、高屈折率層、すなわちミラー素子の一部または介在層の一部が、支持構造体として使用されてきた。
【0006】
発明の開示
本発明は、請求項1の特徴を有するミラーデバイス、請求項8の特徴を有するミラーシステム、ならびに請求項9による方法を開示する。
【0007】
本発明によれば、マイクロマシニング型のミラーデバイスが提供され、このデバイスは、
平坦に形成された第1のミラー素子と、
平坦に形成された第2のミラー素子と、を備え、
第1および第2のミラー素子は、実質的に面平行に配置されており、
第1および第2のミラー素子の間の介在空間は、第1および/または第2のミラー素子よりも低い屈折率を有し、
第1および第2のミラー素子は、少なくとも1つの支持構造体によって相互に局所的に離間されて配置されており、
少なくとも1つの支持構造体は、第1および第2のミラー素子に対して垂直に配置された軸線方向で当該第1および第2のミラー素子と部分的に重なり、
少なくとも1つの支持構造体は、第1および/または第2のミラー素子が形成されている材料とは異なる材料を含むか当該材料から形成されている。
【0008】
ミラーデバイスとは、特に、ファブリーペロー干渉計において光線を反射するデバイスを意味するものと理解されたい。
【0009】
さらに、本発明による少なくとも1つのミラーデバイスと、少なくとも1つのミラーデバイスの第1および/または第2のミラー素子の相互に電気的に絶縁された少なくとも2つの部分区間に異なる電位が印加されるように構成された接触デバイスと、を備えたミラーシステムが提供される。
【0010】
さらに、マイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する方法が提供され、この方法は、
-誘電体層と、
-誘電体層上に配置された第1の光屈折層と、
-第1の光屈折層上に配置された犠牲層と、
-犠牲層上に配置された第2の光屈折層と、
を有する層スタックを提供するステップと、
第1の光屈折層、第2の犠牲層、および第2の光屈折層のそれぞれ一部を除去するステップであって、それにより、連結凹部は、層スタック内で、当該凹部が第1および第2の光屈折層に対して垂直に配置された軸線方向で第1および第2の光屈折層と部分的に重なるように形成される、ステップと、
凹部が開口する層スタックの片面側に、第1および/または第2の光屈折層の材料とは異なる材料からなる充填層を堆積するステップと、
層スタックの元の外層の外側にある、充填層の一部を除去するステップと、
第1および第2の光屈折層を相互に面平行なミラー素子として提供する、特に解放するために、誘電体層および犠牲層を除去するステップと、を含む。
【0011】
犠牲層は、同様に誘電体層として表すことができ、例えば二酸化ケイ素からなり得る。
【0012】
特に好適には、第1のミラー素子と第2のミラー素子との間の距離は、ミラーデバイスが光学フィルタとして用いられるべき中心波長の4分の1に対応する。
【0013】
発明の利点
少なくとも1つの支持構造体は、1つ以上の別個の支持要素からなるか、または1つ以上の別個の支持要素を有することができる。少なくとも1つの支持構造体が、軸方向で第1のミラー素子とも重なり、第2のミラー素子とも部分的に重なることにより、機械的に特に良好な接続が実現され、その際、少なくとも1つの支持構造体は、負荷に基づくミラー素子の変形を同時に低減させる。
【0014】
好適には、第1および第2のミラー素子は、同じ材料から形成されており、それに対して、少なくとも1つの支持構造体は、専らミラー素子が形成されている材料とは異なる複数の材料もしくは厳密に1つの材料から形成されている。
【0015】
一方では少なくとも1つの支持構造体に対し、他方ではミラー素子に対し、異なる材料を使用することは、一方では支持構造体の電気的および機械的特性を、他方ではミラー素子の光学的特性を別個に最適化することができる。特に好適には、少なくとも1つの支持構造体は、1つ以上の電気絶縁材料から形成され、それに対して、第1および/または第2のミラー素子は、導電性材料または半導電性材料から形成されており、それにより、ミラー素子の部分区間は、別個の電極として機能することができる。その上さらに、支持構造体の材料は、ミラー素子の材料とは異なる厚さおよび/または異なる機械的張力を有することができ、これによってミラーデバイス全体の堅牢性を高めることができる。
【0016】
好適な実施形態および発展形態は、従属請求項ならびに図面を参照した説明から明らかになる。
【0017】
好適な発展形態によれば、支持構造体の材料は、第1のミラー素子および/または第2のミラー素子の材料とは異なる厚さおよび/または機械的張力を有する。このようにして、例えば、ミラーデバイス全体の剛性、ひいては堅牢性が、プラスの影響を受けることができる。
【0018】
好適な発展形態によれば、少なくとも1つの支持構造体は、第1のミラー素子および第2のミラー素子を、少なくとも1つの支持構造体によって相互に電気的に絶縁されたそれぞれ少なくとも2つの部分区間に分割する。
【0019】
第1および第2のミラー素子の少なくとも2つの部分区間の電気的な分離により、マイクロマシニング型のミラーデバイスのための複数の用途上および設計上の可能性が開かれる。例えば、相互に電気的に絶縁された異なる部分区間は、異なる電位に置くことができ、かつ/または異なる電流および電圧を印加することができる別個の電極として使用することができる。
【0020】
例えば、部分区間には、ミラーデバイスを活動化するために、すなわち、例えばミラーデバイスを配向するために使用することができる電圧が印加可能である。これにより、活動化されたミラーデバイスと、例えば1つの同じ干渉計内部のさらなるミラーデバイスとの間の距離を変更することができ、これにより、干渉計がスペクトル的に調整可能となる。
【0021】
第1および第2のミラー素子のさらなる部分区間は、例えば、ミラーデバイスの偏向を検出するために使用される電圧が印加可能である。さらなる部分区間では、例えば無電界空間内でのミラーデバイスの変形を回避するために、無電界空間を、あるいは広範囲に及ぶ無電界空間を達成することができる。
【0022】
好適な発展形態によれば、支持構造体は、第1および/または第2のミラー素子の外面から突出する少なくとも1つの区間を有する。それにより、この区間は、ストッパとも、あるいは静止摩擦防止バンプ(英語表記;「anti-static-friction bump」略して「anti-stiction bump」)とも称される。特に好適には、少なくとも1つの支持構造体は、複数のそのようなストッパを有するか、またはそれぞれがこの種の少なくとも1つのストッパを有する複数の支持構造体が設けられている。
【0023】
そのようなストッパは、基板へのミラーデバイスの貼り付きまたは固着を防止するかまたはそのことへの確率を低減することができる。特に好適には、ストッパとして機能する少なくとも1つの支持構造体の少なくともそれぞれの区間は、電気絶縁材料(絶縁体)から形成されている。このケースでは、例えば干渉計の内部において、ミラーデバイスを使用する場合、ミラー素子と電極との溶接を防止することができる。
【0024】
ミラー素子の外面とは、特に、第1のミラー素子と第2のミラー素子との間の介在空間とは反対側の各ミラー素子の片面を意味するものと理解されたい。少なくとも1つのミラー素子の外面は、ミラーデバイスによって反射されるべき光が入射する表面も表す。
【0025】
さらなる好適な発展形態によれば、少なくとも1つの支持構造体の横方向の伸張部は、第1および/または第2のミラー素子の横方向の伸張部と部分的に重なる。このようにして、少なくとも1つの支持構造体と第1および/または第2のミラー素子との間のより良好な機械的接続を達成することができる。横方向または横断方向の伸張部とは、特に、第1および第2のミラー素子に平行であると考えることができる平面内に存在する方向への伸張部を意味するものと理解されたい。したがって、この方向は、ミラー素子にも垂直に配置された軸方向に垂直に配置されている。
【0026】
さらなる好適な発展形態によれば、少なくとも1つの支持構造体は、少なくとも2つの異なる材料から形成されている。例えば、少なくとも1つの支持構造体の第1の材料は、ミラー素子と接触接続することができ、それに対して、支持構造体の第2の材料は、支持構造体の剛性を高め、ひいては第1のミラー素子と第2のミラー素子との間の距離をミラーデバイスの光学特性の改善のために一定に維持するために、支持構造体の安定化すべきコアとして形成され、配置されている。
【0027】
さらなる好適な発展形態によれば、少なくとも1つの支持構造体は、流体がそれを通って支持構造体、第1および第2のミラー素子を通過できる流体通路を有する。このようにして、ミラーデバイスの2つの異なる側の間の熱および/または雰囲気バランスを改善することができ、これによって、ミラーデバイスに対する外部からの引張力、圧縮力および変形力を低減することができる。
【0028】
さらなる好適な発展形態によれば、第1のミラー素子と第2のミラー素子との間の介在空間に、ガスまたは真空が配置されている。好適には、介在空間には、特に好適には、例えば空気(つまりガスまたはガス混合気)および真空の場合のように、1近傍にある低屈折率を有する材料が配置されている。一方ではミラー素子間の介在空間の屈折率と、他方では第1および/または第2のミラー素子の屈折率との間のより高い屈折率コントラストは、ミラーデバイスが高い反射を有し、ミラー内の一定の層数のもとで達成可能な最大反射が高められる波長範囲を拡大する。したがって、このように構成されたミラーデバイスを備えたミラーシステム、特に干渉計は、さらに多岐にわたって使用可能である。
【0029】
好適な発展形態によれば、このミラーシステムは、干渉計、特にファブリーペロー干渉計であり、干渉計のミラーデバイスのうちの少なくとも1つは、本発明によるミラーデバイスである。
【0030】
本発明による方法の好適な発展形態によれば、第1の光屈折層、犠牲層、および第2の光屈折層のそれぞれ一部を除去するステップは、第1および第2の光屈折層(つまり後のミラー素子)をそれぞれ少なくとも2つの相互に離間された部分区間に分割するように連結凹部が形成されるように行われる。このことは、上記において部分区間の電気絶縁に関連して説明した利点を有する。
【0031】
本発明による方法の好適な発展形態によれば、層スタックは、第2の光屈折層上に配置された保護層と共に提供され、この保護層は、層スタックの片側で層スタックの元の外層を形成する。ここでは、保護層の一部も凹部の形成のために除去される。この保護層は、充填層の一部を除去するステップの際に、エッチングストップおよび/または研磨ストップとして機能し得る。すなわち、使用されるエッチング方法および/または研磨装置に対して、充填層よりも耐性を高められ得る。保護層は、充填層の一部を除去するステップの後で除去され得る。
【0032】
以下では本発明を、図面の概略図に示された実施例に基づきより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】一実施形態によるマイクロマシニング型のミラーデバイスの概略的断面図を詳細図で示した図
【
図2】さらなる実施形態によるマイクロマシニング型のミラーデバイスの概略的断面図を詳細図で示した図
【
図3】さらに別の実施形態によるマイクロマシニング型のミラーデバイスの概略的断面図を詳細図で示した図
【
図4】さらに別の実施形態によるマイクロマシニング型のミラーデバイスの概略的断面図を詳細図で示した図
【
図5】さらに別の実施形態によるマイクロマシニング型のミラーデバイスの概略的断面図を詳細図で示した図
【
図6】さらに別の実施形態によるマイクロマシニング型のミラーデバイスの概略的断面図を詳細図で示した図
【
図7】
図1~
図6のうちの1つによるマイクロマシニング型のミラーデバイスからの断面の概略的平面図
【
図8】さらなる実施形態によるミラーシステムを説明するための概略的ブロック図
【
図9】マイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する方法を説明するための概略的フローチャート
【
図10】マイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する本発明による方法の中間製品の横断面の概略的詳細図
【
図11】マイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する本発明による方法の中間製品の横断面の概略的詳細図
【
図12】マイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する本発明による方法の中間製品の横断面の概略的詳細図
【
図13】マイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する本発明による方法の中間製品の横断面の概略的詳細図
【
図14】マイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する本発明による方法の中間製品の横断面の概略的詳細図
【
図15】マイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する本発明による方法の中間製品の横断面の概略的詳細図
【0034】
すべての図面において、同一のもしくは機能が同じ素子およびデバイスには、(別段の明記がない限り)同じ参照符号が付されている。方法ステップの番号付けは、明瞭化に用いられ、特に、別段の明記がない限り、所定の時間的順序を示唆すべきものではない。特に、複数の方法ステップは、同時に実施することも可能である。
【0035】
実施例の説明
図1は、マイクロマシニング型のミラーデバイス100の概略的断面図を詳細図で示す。このミラーデバイス100は、平坦に形成された第1のミラー素子10ならびに平坦に形成された第2のミラー素子20を有し、これらは、実質的にまたは完全に、相互に面平行に配置されている。第1のミラー素子10と第2のミラー素子20との間の介在空間40は、第1のミラー素子10および/または第2のミラー素子20自体よりも低い屈折率を有する。このように、ミラーデバイス100は、マイクロマシニング型のブラッグミラーとして機能する。
【0036】
ミラーデバイス100は、例えば、介在空間40が雰囲気に対して開放され、それによって、動作中に1近傍にある屈折率を有する空気で充填されるように構成されてもよい。代替的に、ミラーデバイス100は、介在空間40が気密に密閉されるように構成されてもよい。このケースでは、空間40は、ガスまたはガス混合気、例えば空気で充填されてもよい。代替的に、介在空間40内は真空に形成されてもよく、その屈折率は同様に1近傍にある。
【0037】
ミラー素子10,20は、介在空間40の屈折率よりも高い屈折率を有する。好適には、第1のミラー素子10のみならず第2のミラー素子20も、同じ高屈折率材料から形成されてもよい。高屈折率材料として、例えば、その屈折率が3より大きい材料であることが考えられる。ミラー素子10,20は、例えば、約3.5の屈折率を有するシリコンから形成されてもよいし、あるいは約3.5の屈折率を有するシリコンを有していてもよい。しかしながら、例えばゲルマニウムまたは炭化ケイ素などの他の材料も、第1および/または第2のミラー素子10、20のための材料として考えられる。
【0038】
マイクロマシニング型のミラーデバイス100は、さらに、第1および第2のミラー素子10,20を少なくとも相互に局所的に離間させる支持構造体130を有する。換言すれば、少なくとも1つの支持構造体130は、その位置において、第1のミラー素子10と第2のミラー素子20との間で定められた所望の距離を確保するように配置されている。
【0039】
少なくとも1つの支持構造体130は、任意付加的に、第1のミラー素子10を第1の部分区間11と第2の部分区間12とに分割するように形成され、さらに当該少なくとも1つの支持構造体130によって、第2のミラー素子20が第1の部分区間21と第2の部分区間22とに分割されるように形成されている。この少なくとも1つの支持構造体130は、さらに任意選択的に、第1のミラー素子10の第1および第2の部分区間11,12が相互に電気的に絶縁され、第2のミラー素子20の第1の部分区間21および第2の部分区間22が相互に電気的に絶縁されるように形成されている。例えば、少なくとも1つの支持構造体130は、完全に電気絶縁材料、例えば、高濃度シリコン窒化物、炭化ケイ素(SiC)、炭窒化ケイ素(SiCN)などから形成されてもよい。
【0040】
以下では、ミラーデバイス100を、ミラー素子10,20の部分区間11,12,21,22が少なくとも1つの支持構造体130によって相互に電気的に絶縁されているとの前提にしたがって説明する。しかしながら、少なくとも1つの支持構造体130、または複数の支持構造体130のうちの少なくとも1つは、導電性または半導電性に構成されてもよいことを理解されたい。それにより、部分区間11,12,21,22の電気的絶縁性は、全く存在しないか部分的にのみ存在する。
【0041】
ミラー素子の相互に電気的に絶縁された部分区間は、例えば、基準対象からのミラーデバイスの距離の直接の容量検出を可能にし、あるいはミラーデバイス自体の電極のセグメント化を可能にする。
【0042】
ここでは、第1のミラー素子10の第1の部分区間11および第2のミラー素子20の第1の部分区間21は、例えばミラーデバイス100の図示されていない縁部で相互に電気的に接続形成されることが想定されてもよい。付加的または代替的に、第1のミラー素子10の第2の部分区間12および第2のミラー素子20の第2の部分区間22は、例えばミラーデバイス100の図示されていない縁部で相互に電気的に接続形成されることが想定されてもよい。
【0043】
少なくとも1つの支持構造体130は、第1および第2のミラー素子10,20に対して垂直に配置された軸線方向Aで当該第1のミラー素子10のみならず、第2のミラー素子20とも部分的に重なる。換言すれば、少なくとも1つの支持構造体130は、第1のミラー素子10のみならず、第2のミラー素子20も縦貫している。さらに換言すれば、少なくとも1つの支持構造体は、少なくとも第2のミラー素子20とは反対側の第1のミラー素子10の外側から、少なくとも第1のミラー素子10とは反対側の第2のミラー素子20の外側まで延在している。軸方向Aは、ミラーデバイスのための光軸として使用することができるように表されている。
【0044】
図1のミラーデバイス100における少なくとも1つの支持構造体130は、横方向に連続的に形成されており、すなわち、少なくとも1つの支持構造体130は、特に、第1のミラー素子10の第1の部分区間11と第2の部分区間12との間に中空空間を有してなく、さらに第2のミラー素子20の第1の部分区間21と第2の部分区間22との間に中空空間を有していない。したがって、この支持構造体130は、特に高い剛性で形成されており、これにより、ミラー素子10,20の変形を防止または低減することができる。
【0045】
さらに、
図1の少なくとも1つの支持構造体130は、軸方向にも連続的に形成されている。この支持構造体130は、第1のミラー素子10の外面のみならず、第2のミラー素子20の外面もそれぞれ各ミラー素子10,20と同一表面になるように形成されているが、この構成からの逸脱も可能である。
【0046】
図2は、さらなる実施形態によるマイクロマシニング型のミラーデバイス200の概略的断面図を詳細図で示す。このミラーデバイス200は、ミラーデバイス100の変形形態を表す。ミラーデバイス200は、ミラーデバイス100に関連して上記で説明したのと同様に構成されているが、ミラーデバイス200の少なくとも1つの支持構造体230が、第2のミラー素子20の外面24に、当該外面24から突出する区間232を有している点で相違している。
【0047】
この区間232は、ストッパとしても、あるいは静止摩擦防止バンプ(英語表記;「anti-static-friction bump」略して「anti-stiction bump」)としても表すことができ、上述した利点を有している。
【0048】
図3は、さらに別の実施形態によるマイクロマシニング型のミラーデバイス300の概略的断面図を詳細図で示す。このミラーデバイス300も、ミラーデバイス100の変形形態である。ミラーデバイス300は、ミラーデバイス100の少なくとも1つの支持構造体130に代わるミラーデバイス300の少なくとも1つの支持構造体330の設計においてミラーデバイス100とはさらに異なっている。
【0049】
少なくとも1つの支持構造体330は、より良好な機械的接続を保証するために、第1のミラー素子10のみならず、第2のミラー素子20も横方向もしくは横断方向に部分的に重なるように形成されている。これに依存することなく、任意選択的に、少なくとも1つの支持構造体330は、付加的に、第2のミラー素子20の第2の外面24から突出する区間332を有するように形成され、それによって、第2のミラー素子20を特に良好に取り囲むだけでなく、それと同時に、当該区間332により、ストッパもしくは静止摩擦防止バンプも提供される。
【0050】
図4は、さらに別の実施形態によるマイクロマシニング型のミラーデバイス400の概略的断面図を詳細図で示す。このミラーデバイス400も、ミラーデバイス100の変形形態であり、ミラーデバイス400の場合、ミラーデバイス100の支持構造体130に代わる支持構造体430の設計においてミラーデバイス100とは異なっている。
【0051】
支持構造体430は、2つの異なる材料から形成されており、この場合、2つの材料のうちの少なくとも1つは、電気絶縁材料である。この電気絶縁材料434は、第1および第2のミラー素子10,20と直接接触接続しているが、それに対して、第2の材料は、第1の材料434と直接接触接続するだけであり、第1のミラー素子10の外面14を除いて、完全に第1の材料434によって取り囲まれている。したがって、第2の材料436は、支持構造体430のコアと称することができ、例えば、支持構造体430全体により大きな剛性を与えるために、第1の材料434よりも高い剛性で形成されてもよい。
【0052】
第2の材料436は、電気絶縁的に形成されてもよいが、必ずしも電気絶縁的に形成される必要はない。したがって、一方では、第1の材料434に反映される支持構造体430の電気的特性が、そして他方では、第1の材料434と第2の材料436との組み合わせに反映される支持構造体430の機械的に安定化すべき特性が広範囲に及んで相互に別個に最適化可能になる。
【0053】
少なくとも1つの支持構造体430の場合でも、区間432は、第2のミラー素子20の外面24から突出するかまたは突き出し、例えば、一種のストッパもしくは静止摩擦防止バンプとして使用可能なように設けられてもよい。
【0054】
図5は、さらに別の実施形態によるマイクロマシニング型のミラーデバイス500の概略的断面図を詳細図で示す。このミラーデバイス500は、ミラーデバイス100の変形形態として表すことができ、この場合、ミラーデバイス500は、支持構造体130に代わる支持構造体530によってミラーデバイス100とは異なっている。
【0055】
少なくとも1つの支持構造体530は、例えば第1のミラー素子10の外面14上で、ミラーデバイス500の外側に開口する盲孔もしくは凹部538を有する。好適には、少なくとも1つの支持構造体530は、第1のミラー素子10の外面14上に、ミラー素子10の外面14を超えて突き出し横方向で第1および第2のミラー素子10,20と部分的に重なる区間534を有する。このようにして、少なくとも1つの支持構造体530の第1および第2のミラー素子10,20への機械的接続をさらに改善することができる。さらに、少なくとも1つの支持構造体530は、第2のミラー素子20の外面24から突き出す区間532を有することもできる。
【0056】
さらに、支持構造体530は、より良好な機械的接続を保証するために、第1のミラー素子10のみならず、第2のミラー素子20も横方向もしくは横断方向に部分的に重なるように形成されてもよい。
【0057】
図6は、さらに別の実施形態によるマイクロマシニング型のミラーデバイス600の概略的断面図を示す。このミラーデバイス600は、ミラーデバイス500の変形形態であり、支持構造体630がミラーデバイス500の支持構造体530に代わる点でミラーデバイス500とは異なっている。少なくとも1つの支持構造体630は、当該少なくとも1つの支持構造体630が盲孔538を有する代わりに支持構造体630を完全に縦貫する流体通路638を有しているという相違点を除いて、ミラーデバイス500の少なくとも1つの支持構造体530と同様に構成されている。
【0058】
少なくとも1つの支持構造体630は、少なくとも1つの局所的に制限された流体通路638を有するように形成されてもよい。代替的に、少なくとも1つの支持構造体630は、流体通路638が支持構造体630全体に沿って延在するように形成されてもよい。
【0059】
前述のミラーデバイス100-600の様々な素子は、もちろん相互に組み合わせ可能である。例えば、ミラーデバイス100,200,300および400は、より良好な機械的接続を可能にするために、第1のミラー素子10の外面14から突出する区間534を有することもできる。さらに、ミラーデバイス100~400の支持構造体130,230,330,430は、
図5および6に示され、対応するテキスト頁に説明されているように、盲孔538または流体通路638を有することもできる。
【0060】
その他に、支持構造体130,230,330,530および630は、
図4に示され、このことが当該
図4を参照して上記で説明されたように、3つ以上の材料から形成されてもよい。
【0061】
図3に示され、上記で当該
図3を参照して説明されたように、支持構造体130,230,430,530,630の、第1および/または第2のミラー素子10,20との横方向の部分的な重なりは、特に介在空間40の領域においても設けることができることを理解されたい。
【0062】
図7は、第1のミラー素子10の外面14上のマイクロマシニング型のミラーデバイス100-600の可能な好適実施形態からの断面の概略的平面図を示す。
図7では、第1のミラー素子10の第1の部分区間11、支持構造体130~630、および第1のミラー素子10の第2の部分区間12(および相応に、
図7では見えない第2のミラー素子20の部分区間21,22)は、第1の部分区間11が横方向で第2の部分区間12によってほぼ完全に取り囲まれるように構成されていることが明らかであり、この場合、第1のミラー素子10のウェブ13は、第1の部分区間11と電気的に接続され、第2の部分区間12から電気的に絶縁されている。そのため、第1の部分区間11のみならず、第2の部分区間12も好適にはミラーデバイス100-600の縁部において電気的に接触接続することができる。
【0063】
好適には、平面図における第1のミラー素子10の少なくとも1つの支持構造体130~630は、実質的に(特にウェブ13を除いて)円形形状を有し、そのため、第1の部分区間11は、第2の部分区間12内でも実質的に円形形状に形成されている。このようにして、第1の部分区間11の領域内で、特に均一な電場が存在もしくは形成され、これによって、例えば活動化および/または検出の際に不所望な電気的影響が低減または回避され得る。
【0064】
ミラーシステム(
図8も参照)が例えば、本発明によるミラーデバイス100-600のうちの2つを有するならば、
図7に示されているような環状電極に基づいて、2つのミラーデバイスは、双方向に活動化され、順次連続して移動され得る。つまり、面状の電極のケースでは、そうでなければ、2つのミラーデバイスの間に、面状の圧力負荷のように振る舞い、ひいてはミラーデバイスのたるみと平行性の低下につながりかねない張力が作用するであろう。このことは、ミラーデバイスのスペクトル透過幅を増加させ、ひいては2つのミラーデバイス100-600によって形成される干渉計の解像度を低下させかねない。
【0065】
干渉計の2つのミラーデバイス間に電圧が印加されるケースでは、容量検出についてもほぼ同様のことが当てはまる。つまり、このケースでは、面状の電極のもとで、張力が引き起こされ、上述のように、
図7の第1の部分区間11に相応する光学的関連領域において、干渉計ミラーの平行性の低下が引き起こされる。したがって、本明細書に記載される実施形態は、干渉計のミラーデバイス間のミラー平行性の低下を引き起こすことなく、容量検出、特に干渉計の2つのミラーデバイス間の光学ギャップの直接測定を可能にする。
【0066】
もちろん、さらなるセグメント化、例えば、相互に実質的に互いに同心である3つ以上の部分区間11,12でのセグメント化も考えられる。このことは、例えば、光学的に関連する最も内側の部分区間11内に完全な無電界空間もしくは広範囲に及ぶ無電界空間を生成するために使用することができる。このことは、例えば、
図7に示されているように、最も内側の部分区間11を広範囲に及んで取り囲む中央部分区間12内に第1の電位が印加され、さらに第1の部分区間11のみならず第2の部分区間12も実質的に円形に取り囲む(
図7では図示されず)第3の部分区間に、第1の電位に比べて逆の極性を有する第2の電位が印加されるにことによって達成することができる。
【0067】
本発明によるミラーデバイス100-600は、少なくとも1つの電気絶縁支持構造体130-630に対して付加的または代替的に、ミラー素子10,20の部分区間による電気絶縁が行われない少なくとも1つのさらなる支持構造体も有することが想定されてもよい。このことは、例えば、これらの付加的な支持構造体が部分区間を相互に完全に分離しないことによって達成することができ、かつ/または支持構造体自体が導電性であるかまたは半導体として形成されていること、特に第1および/または第2のミラー素子10,20と同じ材料から形成されていることによって達成することができる。
【0068】
部分区間の電気絶縁を行わないこれらのさらなる支持構造体は、補助支持構造体とも称され得る。これらの補助支持構造体は、例えば、規則的または不規則的な格子の形態で配置することができる。例えば、補助支持構造体は、好適にはミラー素子10,20の部分区間のうちの1つにわたって延在する六角形のハニカムパターンの形態で形成されてもよい。例えば、
図7に示された実施形態では、そのような第1の補助支持構造体は、第1の部分区間11に全面的に配置されてもよく、かつ/または第2の補助支持構造体は、第1のミラー素子10の第2の部分区間12と第2のミラー素子20の第2の部分区間22とに全面的に配置されてもよい。
【0069】
本明細書に記載される支持構造体および補助支持構造体の大きな利点は、張力によって引き起こされる変形に対する機械的剛性である。これまで公知の支持構造体(「アンカー構造体」)には、ミラーデバイスの引張応力が当該応力を部分的に緩和させるアンカー構造体の変形に頻繁に結び付くという本質的な欠点がある。この変形は、各アンカー構造体周りの領域内で、(ミラー素子に対応する)部分層の離間間隔がブラッグミラーで設定されている波長にもはや対応しなくなることに結び付く。これにより、ブラッグミラーの、すなわちミラーデバイスの光学特性は悪化する。それとは対照的に、本明細書に記載される支持構造体および補助支持構造体は、そのような変形に対してより高い剛性を有し得るという明らかな利点を有し、これによって、不所望に離間されたミラー素子10,20による光学面の損失が最小限に抑えられる。
【0070】
補助支持構造体は、少なくとも部分的または完全に連続した壁部構造体として実現されてもよいし、かつ/または相互に別個で離間された柱状構造体として実現されてもよい。六角形の格子状配置構成は、特に高い機械的安定性を提供する。支持構造体および/または補助支持構造体は、忠実な構造体または中空/折り畳み型の構造体として実施されてもよい。これらの支持構造体および/または補助支持構造体は、層応力が膜構造に適合するように形成されてもよい。
【0071】
図8は、さらなる実施形態によるミラーシステム1000を説明するための概略的ブロック図を示す。このミラーシステム1000は、例えば、干渉計、特にファブリーペロー干渉計であり得る。このミラーシステム1000は、少なくとも2つの誘電体もしくは半導体ミラーデバイスを用いて構成されており、それらのうちの少なくとも1つは、本発明によるミラーデバイス100-600である。
【0072】
これらのミラーデバイスのうちの少なくとも1つ、特に本発明によるミラーデバイス100-600は、少なくとも1つの他のミラーデバイスに対して可動である。
【0073】
図8は、これらのミラーデバイスの幾何学的配置構成を意味するものではない。これらのミラーデバイスは、好適には、共通の基板にもしくは基板上に配置され、従来技術で既に公知のようにファブリーペロー干渉計を形成するために、相互に実質的に(または完全に)平行に配向されている。
【0074】
2つのミラーデバイス間の距離を変更することにより(特に、可動のミラーデバイスを移動させることにより)、ミラーシステム1000は、例えば、調整可能なスペクトルフィルタとして作動させることができる。ミラーデバイス間の距離を変更するために、例えば上記で
図7を参照してより詳細に説明したように、本発明による少なくとも1つのミラーデバイス100-600に対し、ミラーシステム1000の接触デバイス1050を用いることにより、第1の電位が当該ミラーデバイス100-600の第1の部分区間11に印加され、さらに第2の電位が当該ミラーデバイス100-600の第2の部分区間に印加され得る。
【0075】
接触デバイス1050は、ミラーシステム1000の少なくとも1つのさらなるミラーデバイスに対し、少なくとも1つの電位を印加するように構成することもできる。好適には、ミラーシステム1000におけるすべてのミラーデバイスは、本発明によるミラーデバイス100-600であり、接触デバイス1050は、当該ミラーシステム1000の少なくとも2つのミラーデバイス100-600の様々な部分区間11,12,21,22に異なる電位を印加するように構成されている。
【0076】
図9は、マイクロマシニング型のミラーデバイス、特に本発明によるマイクロマシニング型のミラーデバイス100-600を製造する方法を説明するための概略的フローチャートを示す。以下では
図9による方法が、
図10~
図15に基づき、これらの図中の参照符号を参照してより詳細に説明される。
図9による方法は、本発明によるミラーデバイス100-600に関連して説明されるすべての変形形態および発展形態にしたがって適合化可能であり、その逆もまた同様である。
【0077】
図10~
図15は、マイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する本発明による方法の中間製品の断面の概略的詳細図を示す。
【0078】
ステップS01では、誘電体層71、誘電体層71上に配置された第1の光屈折層72、第1の光屈折層72上に配置された犠牲層73、犠牲層73上に配置された第2の光屈折層74を含む層スタック70が提供される。任意選択的に、第2の光屈折層74上に配置された保護層75を備えた層スタック70aを提供することも可能である。同様に、誘電体層71は、実施形態に応じて犠牲層として用いることも可能である。
【0079】
換言すれば、層スタック70は、次の順序で相互に配置された、第1の誘電体層71、第1の光屈折層72、犠牲層73、第2の光屈折層74、および任意選択的に保護層75を含む。光屈折層72,74は、特に高屈折率の層、すなわち空気よりも高い屈折率を有する層である。
【0080】
誘電体層71および/または犠牲層73は、この方法の後の過程で容易に除去することができ、例えば二酸化ケイ素SiO2からなり得る層である。以下のとおりそこからミラー素子が製造される第1および/または第2の光屈折層72,74は、例えば、シリコン、特にポリシリコンなどの材料からなるが、ここでは、例えばゲルマニウムまたは炭化ケイ素などの他の材料も考えられ、それらは、後において犠牲層73および場合によっては誘電体層71も除去する犠牲層-エッチングプロセスと互換性がある。
【0081】
任意選択的な保護層75は、さらなる処理において有利であり得る。これは、例えば二酸化ケイ素(SiO2)からなり得る。
【0082】
図10は、方法ステップS01実施後の本方法の中間生成物を示す。
【0083】
以下では、
図11~
図15に基づき、個々の支持構造体130-630がどのように製造できるかを(常に断面図で)説明するが、ここでは、平面図で見て、少なくとも1つの支持構造体130-630が、例えば、
図7に示され、かつ/または当該
図7を参照してより詳細に説明されたように形成されてもよいことを理解されたい。さらに、例えば、相互に電気絶縁された複数の部分区間11,12,21,22を同時に形成するために、複数の支持構造体130~630を同じように同時に形成することができることを理解されたい。
【0084】
ステップS02では、それぞれ、第1の光屈折層72、犠牲層73、および第2の光屈折層74の一部が除去され、それによって、連結凹部76は、当該凹部76が第1および第2の光屈折層72,74を、それぞれ各少なくとも2つの離間された部分区間11,12,21,22に分割するように形成される。
【0085】
層72-74の除去は、同様に
図1において支持構造体130に関連して説明したように、凹部76が、第1および第2の光屈折層72,74に対して垂直に配置された軸線方向Aで当該第1および第2の光屈折層72,74と部分的に重なるように実施される。
【0086】
凹部76の形成は、例えばリソグラフィおよび/またはエッチングによって行うことができる。凹部は、特に、平面図で見て、丸い孔または溝として形成されてもよい。
【0087】
誘電体層71と犠牲層73、および任意選択的に任意選択的な保護層75も、後の支持構造体を形成するための充填層のコンフォーマルな堆積の後で、後の支持構造体と第1および第2の光屈折層72,74(後のミラー素子)との良好な機械的接続をより大きな接触面によって可能にするために、等方的なエッチングもしくは部分的に等方的なエッチングが可能である。可能な最終結果は、例えば
図3に示され、当該
図3を参照してより詳細に説明されている。
【0088】
任意選択的に、凹部76を基本的に形成するステップS02の後もしくはその最中に、例えば、さらなる方法ステップにおいて、誘電体層71を凹部76からエッチングすることができ、それにより、後の支持構造体は、ストッパ、例えば
図2に示され、当該
図2を参照して説明されるようなストッパ232を伴って形成される。
【0089】
ステップS01において、保護層75を備えた層スタック70が提供されているのであれば、それに応じて、収集すべき凹部も、保護層75を貫通して形成される。ステップS02実施後の本方法の中間生成物は、
図11に示されている。ここでは、凹部76が、断面図で見て盲孔として示されていることが明らかである。
【0090】
ミラー素子10,20の相互に離間された部分区間11,12,21,22を電気的に分離するために、後の支持構造体の形状を部分的に予め設定する凹部76は、細長い構造体、例えば細長い通路として形成することができる。
【0091】
好適には、凹部76は、平面図で見て、このことが
図7を参照して第1の部分区間11と第2の部分区間12との間の少なくとも1つの支持構造体130~630に関連して説明されたように成形される。代替的に、凹部76、または複数の凹部76は、柱状または任意の他の形状でも形成することができる。
【0092】
ステップS03では、基板上に複数の層を堆積させるために、凹部76が開いている、
図11において符号77で示される、層スタック70の片側に、充填層78が、例えば気相堆積プロセスまたは他の公知のプロセスを用いて被着される。
図12に示されているように、既存の凹部76に基づき、この充填層78は、層スタック70上に平坦に配置されるだけでなく、むしろこの凹部76を完全にもしくは部分的に充填する。
図12は、方法ステップS03後の本発明による方法の中間生成物を概略的に示している。この充填層78は、光屈折層72,74の1つの材料(もしくは複数の材料)とは異なる材料からなるか、またはそのような材料を有する。
【0093】
上記では、少なくとも1つの支持構造体がミラー素子の様々な部分区間11,12,21,22を相互に電気絶縁すると有利であることを詳細に説明してきた。この目的のために、充填層78は、電気絶縁層78として、すなわち、電気絶縁材料もしくは材料混合物からなる電気絶縁層78として形成されてもよい。
【0094】
充填層78を堆積させるステップS03では、可及的にコンフォーマルな堆積が好ましい。堆積された充填層の層厚さは、可及的に少ない微細構成を生成するために、すなわち、凹部76の可及的に均一な充填を生じさせるために、凹部76の少なくとも半分の幅であることが好ましい。充填層78は、好適には、シリコンベースまたはアルミニウムベースの絶縁体、例えば、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、または酸化アルミニウムからなる。
【0095】
ステップS04では、層スタックの元の外面の外側にある付加的な層78の少なくとも一部が除去される。特に、完全に平らに材料を除去することができる。ステップS01において、任意選択的な保護層75を備えた層スタック70が提供されているのであれば、
図13に示されているように、保護層75を超えて突出している充填層78の一部が除去される。
【0096】
充填層78の突出部分を除去するステップS04は、好適には、エッチングおよび/または研磨によって行われる。保護層75は、それが形成されている限り、ここではエッチングストップまたは研磨ストップとして機能し得る。保護層75の形成は、特に、選択されたプロセスが十分な選択性を有している場合、すなわち、当該プロセスが充填層78に十分良好に作用すると同時に第2の光屈折層74をまったく攻撃しないかごくわずかな程度でしか攻撃しない場合には省くことができる。
【0097】
図13は、ステップS04を実施した後のマイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する本発明による方法の中間製品の断面の概略的詳細図を示す。
【0098】
任意選択的な保護層75が提供されず、かつ層スタック70の元の外面がほぼ第2の光屈折層74によって提供されているならば、それに応じてこの元の外面、すなわち第2の光屈折層74の外側にある、すなわちそこから突き出た充填層78の部分が削除される。
【0099】
任意選択的なステップS05では、保護層75が方法ステップS04の後で除去される。
【0100】
図13は、任意選択的なステップS05を実行した後のマイクロマシニング型のミラーデバイスを製造する方法の中間製品の概略断面図を示している。
【0101】
ステップS06では、最終的に、例えば、ここでは図示されていない犠牲層-エッチングプロセスによる犠牲層-エッチング過程を介して、誘電体層および/または犠牲層73が除去される。それにより、光屈折層72,74は、相互に離間された(および任意選択的に相互に電気絶縁された)部分区間11,12,21,22を有するミラー素子10,20として提供される。一部の実施形態では、光屈折層72,74は、相互に離間された(および任意選択的に相互に電気絶縁された)部分区間11,12,21,22を有するミラー素子10,20として解放され得る。
【0102】
したがって、残っている充填層78は、
図15に示されているように、支持構造体30として機能する。
【0103】
図1によるミラーデバイス100を製造するために、例えば、第1および第2のミラー素子10,20の各外面14,24を越えて突出する充填層78の区間を除去することができる。
【0104】
上記では、好適な実施例に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は、それらの実施例に限定されるものではなく、むしろ多岐にわたって様々な変更が可能である。特に、本発明は、発明の本質から逸脱することなく、様々な方法で変更または修正することができる。