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特許7065987粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置および方法
<図1>
  • 特許-粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置および方法 図1
  • 特許-粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置および方法 図2
  • 特許-粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置および方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/08 20060101AFI20220502BHJP
   A23L 3/26 20060101ALI20220502BHJP
   A23K 30/00 20160101ALI20220502BHJP
【FI】
A61L2/08 108
A23L3/26
A23K30/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020543959
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2019054242
(87)【国際公開番号】W WO2019162342
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-05
(31)【優先権主張番号】18157711.5
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501003320
【氏名又は名称】ビューラー・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Buehler AG
【住所又は居所原語表記】Gupfenstrasse 5, CH-9240 Uzwil, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アラスデアー キュリー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヘアシェ
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212156(JP,A)
【文献】特開2001-321139(JP,A)
【文献】特開2008-056282(JP,A)
【文献】実開昭58-192206(JP,U)
【文献】特表2017-508522(JP,A)
【文献】特開2016-077433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0216106(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0071818(US,A1)
【文献】特開2011-201600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00-2/28
A23L 3/26
A23K 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置(10)であって、
-外側ケーシング(40)、
-物品入口(43)、
-物品出口(44)、
-物品を前記物品入口(43)から物品案内方向(R)に沿って当該装置(10)を通し前記物品出口(44)まで案内可能な物品案内通路(41)、
-前記外側ケーシング(40)内に配置された、電子線を発生させるための少なくとも1つの電子源(20)、
-前記物品案内通路(41)内に配置された、電子線により前記物品を低温殺菌可能および/または滅菌可能な処理ゾーン(19)
を有する装置(10)において、
当該装置(10)は、前記外側ケーシング(40)内に配置されかつ前記物品案内通路(41)を包囲する少なくとも1つの内部遮蔽部(51,52)を有しており、該内部遮蔽部(51,52)は、処理に際して発生する放射線を遮蔽するための少なくとも1つの遮蔽部材(54,55,56,57)を備えており、前記外側ケーシング(40)は、少なくとも1つの開口(60,61)を有しており、該開口(60,61)は、該開口(60,61)に対応して配置された少なくとも1つの閉鎖部材(62,62’,63,63’)により閉鎖可能であり、前記閉鎖部材(62,62’,63,63’)は内側(64)に少なくとも1つの前記遮蔽部材(55,57)を有していることを特徴とする、装置(10)。
【請求項2】
前記物品は、自由落下中に、前記物品案内通路(41)内で低温殺菌可能および/または滅菌可能である、請求項1記載の装置(10)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの閉鎖部材(62,62’,63,63’)は、扉(62,62’,63,63’)である、請求項1または2記載の装置(10)。
【請求項4】
前記物品案内通路(41)は、前記内部遮蔽部(51,52)がラビリンス状に包囲する少なくとも1つの通路区間(45,46)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項5】
前記物品案内通路(41)は、前記物品入口(43)から前記処理ゾーン(19)に向かって前記物品を案内可能な物品入口通路(45)を有しており、少なくとも1つの内部遮蔽部(51)が、前記物品入口通路(45)をラビリンス状に包囲している、請求項記載の装置(10)。
【請求項6】
前記物品案内通路(41)は、前記処理ゾーン(19)から前記物品出口(44)に向かって前記物品を案内可能な物品出口通路(46)を有しており、少なくとも1つの内部遮蔽部(52)が、前記物品出口通路(46)をラビリンス状に包囲している、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項7】
少なくとも1つの前記遮蔽部(51,52)は、静止している第1の遮蔽部材(54,56)を有しており、前記閉鎖部材(62)の前記遮蔽部材(55,57)は、第2の遮蔽部材(55,57)を形成しており、前記第1の遮蔽部材(54,56)および前記第2の遮蔽部材(55,57)は、前記閉鎖部材(62,62’,63,63’)が、該閉鎖部材(62,62’,63,63’)に対応して配置された前記開口(60,61)を閉鎖する前記閉鎖部材(62,62’,63,63’)の閉鎖位置において、共同して、前記物品案内通路(41)をラビリンス状に包囲する、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項8】
前記遮蔽部材(55,57)は、鉛から成る少なくとも1つの内層と、別の材料から成る2つの外層とを備えた多層構造を有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項9】
前記外層は、ステンレス鋼またはプラスチックから成る、請求項8記載の装置(10)。
【請求項10】
前記物品案内通路(41)は、壁部材(14,11,16)により画定されており、該壁部材(14,11,16)のうち少なくとも1つが、前記外側ケーシング(40)に、直接的にまたは間接的に結合されているまたは可動に結合可能である、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの壁部材(14,11,16)が、前記外側ケーシング(40)と解離可能に結合されているまたは可動に結合可能である、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の装置(10)を用いて粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する方法であって、以下のステップ、すなわち:
a)前記電子源(20)により電子線を発生させるステップ、
b)前記処理ゾーン(19)内で電子線により、前記物品を低温殺菌および/または滅菌するステップ
を有する、方法。
【請求項13】
前記物品を自由落下中に低温殺菌および/または滅菌する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記物品は、1m/s~5m/sの範囲内の速度で前記処理ゾーン(19)を移動する、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
前記電子線の電子は、80keV~300keVの範囲内のエネルギを有している、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記物品は、5ms~25msの範囲内の処理時間の間、前記電子線に晒される、請求項12から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記物品は前記電子線により、1kGy~45kGyの範囲内の放射線量に晒される、請求項12から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記処理ゾーン(19)において前記電子線は、1015-1・cm-2~2.77・1015-1・cm-2の範囲内にある平均電流密度を有している、請求項12から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記物品は
物、朝食用シリアル、スナック、ナッツ、アーモンド、ピーナッツバター、カカオ豆、チョコレート、チョコレート液、チョコレートパウダー、チョコレートチップ、カカオ製品、豆果、コーヒー、種子、スパイス、ブレンド茶、ドライフルーツ、ピスタチオ、ドライプロテイン製品、ベーカリー製品、砂糖、ジャガイモ製品、麺類、ベビーフード、乾燥卵製品、ダイズ製品、増粘剤、酵母、酵母エキス、ゼラチンまたは酵素を含む食品、
ペレットと、反芻動物、家禽、水生動物または家畜用飼料と、混合飼料とを含むペットフード、
ETを含むプラスチック
から成る群から選択されている、請求項12から18までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線を用いて粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置および方法に関する。
【0002】
ここおよび以下では、とりわけ粒体および/または薄片から成る物品を粒子状と呼び、この場合、粒子は例えば球状、板状の形状または角張った形状を有していてよい。粉砕された粒子であってもよい。低温殺菌および/または滅菌により、例えば微生物を少なくとも大部分は死滅させるか、または無害化することができる。特に、有害な微生物の削減が少なくとも1オーダ、好適には少なくとも5オーダ、特に好適には少なくとも7オーダだけ達成され得る。
【0003】
請求項1の上位概念に記載の装置は、例えば欧州特許第1080623号明細書から公知である。この装置は、種物を個別化して透明カーテンを形成することができる振動コンベヤを有している。次いでこのカーテンは、電子加速器により形成された、例えば種物を滅菌することができる電子場を通される。種物を電子加速器の出射窓から遠ざけるためには、格子が使用される。
【0004】
米国特許第5801387号明細書からは、請求項1の上位概念に記載の別の装置が公知である。この発明による構成では、粒子状の物品が振動コンベヤにより水平空気流中に供給され、次いで電子線に晒される。次いで真空ポンプおよびフィルタを用いて分粒が行われる。
【0005】
さらに独国特許出願公開第102012209434号明細書に開示された装置は、流動可能な生産物を、振動コンベヤ装置および回転ブラシローラを用いて個別化すると共に回転させる。次いで粒子は、自由落下しながら電子場を通過する。
【0006】
欧州特許第0513135号明細書に開示された装置は、種物をロータリフィーダにより鉛直落下シャフト内へ導入し、種物はそこを垂直落下する際に、電子線を照射される。
【0007】
欧州特許第0705531号明細書から公知の別の装置は、種物を調量装置(詳述せず)により処理室内へ導入し、種物は処理室内で垂直に電子線を通り落下する。
【0008】
粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する別の装置および方法が、本出願人のPCT国際特許出願である欧州特許第2017070842号明細書に開示されている。この装置は、電子線を発生させる少なくとも1つの電子源および物品を電子線により低温殺菌可能かつ/または滅菌可能な処理ゾーンを有している。第1の態様においてこの装置はさらに、物品を搬送しかつ個別化するために励振可能な第1の振動面を有しており、この場合、第1の振動面は複数の溝を有しており、物品は、溝内で搬送可能でありかつ溝により個別化可能である。第2の態様においてこの装置は、処理ゾーンの領域に物品通路を有しており、物品通路内で物品は電子線により低温殺菌可能および/または滅菌可能であり、この場合、この装置は流体が通流可能な少なくとも1つの副通路を有しており、副通路は、電子源と物品通路との間に少なくとも部分的に延在しておりかつ物品通路から流体分離されている。さらに、粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置に挿入するカセットが開示されている。
【0009】
処理ゾーンにおける物品の処理に際しては、周辺環境、特にオペレータにとって有害であり得る放射線が生じる場合がある。さらに、物品が特に処理ゾーンの傍らで装置内を案内される限り、放射線は、物品自体にもネガティブな影響を及ぼす恐れがある。
【0010】
本発明の課題は、従来技術から周知の欠点を克服することにある。特に、物品の処理に際して生じる放射線を可能な限り抑制する装置および方法を提供したい。とりわけ、処理ゾーンの傍らの物品と、装置の周辺環境、特に装置のオペレータも、放射線から可能な限り防護されることが望ましい。
【0011】
粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌するための本発明による装置は、外側ケーシング、物品入口、物品出口、物品を物品入口から物品案内方向に沿って当該装置を通し物品出口まで案内可能な物品案内通路、ケーシング内に配置された、電子線を発生させるための少なくとも1つの電子源ならびに物品案内通路内に配置された、電子線により物品を特に自由落下中に低温殺菌可能および/または滅菌可能な処理ゾーンを有している。この場合、「低温殺菌」もしくは「低温殺菌する」とは特に、5log、好適には6log、特に好適には7log以上の細菌数の減少を意味する。「滅菌」もしくは「滅菌する」とは特に、完全な除菌を意味する。物品の個々の粒子の飛行軌道が粒子の速度、粒子に作用する重力および場合により物品を包囲しているプロセスガスのみにより決定される場合に、物品は「自由落下中」であると言う。特に、自由落下中の物品の粒子は、所定の面上を滑って処理ゾーンを通るわけではない。プロセスガスは、例えば空気であってよい。ただしプロセスガスとして、オゾン形成を防ぐ、例えば窒素等のガスを使用することも考えられる。
【0012】
本発明に基づき、当該装置は、外側ケーシング内に配置されかつ物品案内通路を特に物品案内方向に沿って包囲する少なくとも1つの内部遮蔽部を有しており、内部遮蔽部は、処理に際して発生する放射線を遮蔽するための少なくとも1つの遮蔽部材を備えている。
【0013】
本発明の枠内では、外側のケーシング内に配置された別の遮蔽部も内部遮蔽部を意味し、別の遮蔽部の遮蔽部材は、外側のケーシングにせいぜい部分的にしかまたは全く属さない。有利には、当該装置の外側ケーシングも同様に、処理に際して発生する放射線に対する遮蔽部を形成する。
【0014】
内部遮蔽部に基づき、処理に際して生じる放射線に基づくリスクが、外側ケーシングのみ構造により可能な場合に比べ、大幅に低下されることになる。これにより、物品は当該装置の内部でも、つまり処理ゾーンの傍らでも、有害である可能性のある放射線から防護され得るようになっている。さらに、当該装置の周辺環境、特に当該装置のオペレータも、生じ得る放射線のリスクからより効果的に防護され得るようになっている。
【0015】
好適には、物品案内通路は、遮蔽部がラビリンス状に、つまり迷路を成すように重なり合って包囲している少なくとも1つの通路区間を有している。ここおよび以下では、遮蔽部によるラビリンス状の包囲とは、遮蔽部材が、処理ゾーン内に生じる放射線の、処理ゾーンから当該装置の周辺環境への、つまり当該装置の外側ケーシングの外側の空間領域への直線的な拡散を防ぐことができるように形成されかつ配置されていることを意味する。これにより、遮蔽効果がさらに改善され得る。
【0016】
好適なのは、物品案内通路が、物品入口から処理ゾーンに向かって物品を案内可能な物品入口通路を有している場合であり、この場合は少なくとも1つの内部遮蔽部が、物品入口通路をラビリンス状に包囲している。この場合、ラビリンス状の包囲とは、上述のように解される。これにより、処理ゾーン内に発生する放射線が、物品が処理ゾーンに到達する前に既に物品に当たるということを防ぐことができる。
【0017】
同様に好適なのは、物品案内通路が、処理ゾーンから物品出口に向かって物品を案内可能な物品出口通路を有している場合であり、この場合も少なくとも1つの内部遮蔽部が、物品出口通路をラビリンス状に包囲している。これにより、処理ゾーン内に発生する放射線が、物品が処理ゾーンを既に離れていてもなお物品に当たるということが回避される。
【0018】
別の利点として、ケーシングは少なくとも1つの開口を有しており、開口は、この開口に対応して配置された少なくとも1つの閉鎖部材により閉鎖可能であり、この場合、閉鎖部材は内側に少なくとも1つの遮蔽部材を有している。閉鎖部材の閉鎖位置において、閉鎖部材は、閉鎖部材に対応して配置された開口を閉鎖する。閉鎖部材は、例えば扉であってよい。このことは、閉鎖部材の閉鎖位置では開口の領域においても、当該装置からの放射線の出射のリスクが低下されることを可能にする。閉鎖部材が開放されると、当該装置のコンポーネントの多くに接近可能である。例えば、電子源と処理ゾーンとの間に配置された防護シートを保持するカセット(以下でさらに説明する)に簡単に接近することができる。簡単に接近可能であることにより、必要に応じて防護シートのクリーニングおよび交換が容易になる。
【0019】
遮蔽部が静止している第1の遮蔽部材を有しており、閉鎖部材の遮蔽部材が第2の遮蔽部材を形成していると実用的であり、この場合、第1の遮蔽部材および第2の遮蔽部材は、閉鎖部材の閉鎖位置において、共同して、物品案内通路を特にラビリンス状に包囲する。
【0020】
遮蔽部材は、例えば鉛を含有しているか、または鉛から成っていてよい。1つの好適な実施形態では、遮蔽部材は、鉛から成る少なくとも1つの内層と、別の材料から成る2つの外層とを備えた多層構造を有している。外層は、好適には処理される物品、特に食品と接触してよい材料から成っていることが望ましい。例えば外層は、ステンレス鋼またはプラスチックから成っていてよい。
【0021】
さらに、物品案内通路は壁部材により画定されており、壁部材のうち少なくとも1つおよび好適には全てが可動であるかまたはそれどころかケーシングと解離可能に直接的にまたは間接的に結合されているまたは結合可能であると有利である。このことは、例えば壁部材が故障したかまたはクリーニングされねばならない場合、または当該装置により処理される様々な物品用に様々な壁部材が必要とされる場合の、解離可能な壁部材の交換を簡単にする。物品案内通路の壁部材とは、とりわけ以下でさらに詳しく説明する任意の閉鎖部材、振動面、滑落面および防護シートをも意味する。
【0022】
少なくとも1つの電子源は、自体公知であってよい。当該装置は、1つまたは複数の電子源を有していてよい。複数の電子源が存在する場合、これらの電子源は互いに対向して位置しているか、または物品の流れ方向に対して相前後して配置されていてよい。
【0023】
さらに、当該装置が複数の処理ゾーンを有していることも、本発明の枠内で考えられる。このようにして、より効率的な低温殺菌および/または滅菌が達成され得る。択一的に、物品は同一の処理ゾーンを複数回通り、案内されてもよい。
【0024】
当該装置は、冒頭で既に述べた、本出願人のPCT国際特許出願である欧州特許第2017070842号明細書に開示された、以下の1つまたは複数の特徴を有していてもよい。
【0025】
I. 粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置であって、
-物品を搬送しかつ個別化するために励振可能な、好適には実質的に水平方向に向けられた第1の振動面と、
-電子線を発生させる少なくとも1つの電子源と、
-第1の振動面の下流側に配置されており、物品を特に自由落下中に電子線により低温殺菌可能かつ/または滅菌可能な処理ゾーンと
を有しており、
第1の振動面は複数の溝を有しており、溝内で物品を搬送可能でありかつ溝により物品を個別化可能である。
【0026】
II. 特徴コンビネーションI記載の装置において、当該装置は、第1の振動面の下流側および処理ゾーンの上流側に、傾斜した滑落面を有しており、滑落面は、物品が滑落面上で処理ゾーンに向かって滑落することができるように形成されかつ配置されている。
【0027】
III. 特徴コンビネーションII記載の装置において、滑落面は、少なくとも1つの溝、好適には複数の溝を有しており、溝は、物品が溝内で滑落しかつ個別化され得るように形成されかつ配置されている。
【0028】
IV. 特徴コンビネーションIIおよびIII記載の装置において、滑落面は、水平線に対して45°~85°、好適には55°~75°、特に好適には60°~70°の範囲内の角度で下方に向かって傾斜させられている。
【0029】
V. 特徴コンビネーションIからIVまでのいずれか1つに記載の装置において、当該装置は、第1の振動面の下流側および処理ゾーンの上流側、特に滑落面の上流側に、変向面を有しており、変向面は、物品が変向面上で変向され、第1の振動面から滑落面にかつ/または処理ゾーンに向かって滑落することができるように形成されかつ配置されている。
【0030】
VI. 特徴コンビネーションV記載の装置において、変向面は、少なくとも1つの溝、好適には複数の溝を有しており、溝は、物品が溝内で滑落し得るように形成されかつ配置されている。
【0031】
VII. 特徴コンビネーションIからVIまでのいずれか1つに記載の装置において、当該装置は、第1の振動面の上流側に、実質的に平らな、かつ好適には実質的に水平方向に向けられた、励振可能な第2の振動面を有している。
【0032】
VIII. 粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する装置であって、
-電子線を発生させる少なくとも1つの電子源と、
-物品を特に自由落下中に電子線により低温殺菌可能かつ/または滅菌可能な処理ゾーンと
を有しており、
特に特徴コンビネーションIからVIIまでのいずれか1つに記載の装置は、処理ゾーンの領域に物品通路を有しており、物品通路内で物品は電子線により低温殺菌可能かつ/または滅菌可能であり、
当該装置は、流体が通流可能な少なくとも1つの副通路を有しており、副通路は、電子源と物品通路との間に少なくとも部分的に延びておりかつ物品通路から流体分離されている。
【0033】
IX. 特徴コンビネーションXIIIに記載の装置において、電子源と物品通路との間には、電子線に対して少なくとも部分的に透過性でありかつ特に金属から、好適にはチタンから成る防護シートが配置されている。
【0034】
X. 特徴コンビネーションIXに記載の装置において、防護シートは、物品通路を副通路から隔離している。
【0035】
XI. 特徴コンビネーションIXまたはXに記載の装置において、副通路は、電子源と防護シートとの間に少なくとも部分的に配置されている。
【0036】
XII. 特徴コンビネーションIXからXIまでのいずれか1つに記載の装置において、当該装置は、カセットを収容するためのカセット収容部を有しており、カセットは、物品通路および少なくとも1つの副通路を少なくとも部分的に画定していると共に、防護シートを収容するためのシート収容部を有しており、電子源は、カセットから離反する方向に可動であるように、カセット収容部に対して相対的に可動に、特に旋回可能かつ/または摺動可能に配置されている。
【0037】
XIII. 特徴コンビネーションXIIに記載の装置において、カセットは、カセット収容部に挿入されており、カセット収容部は、物品通路および少なくとも1つの副通路を少なくとも部分的に画定しておりかつ防護シートを収容するシート収容部を有している。
【0038】
XIV. 特徴コンビネーションIからXIIIまでのいずれか1つに記載の装置において、当該装置は、処理ゾーンの下流側に、物品を包囲するプロセスガスを吸い取るための吸取り装置を有している。
【0039】
XV. 特徴コンビネーションIからXIVまでのいずれか1つに記載の装置において、当該装置は処理ゾーンの下流側に、測定ユニットおよび放出ユニットを含む選別装置を有しており、測定ユニットおよび放出ユニットは、物品の個々の粒子が測定ユニットにより測定された粒子の少なくとも1つの特性に基づき放出ユニットにより放出可能であるように形成されている。
【0040】
XVI. 特徴コンビネーションIからXVまでのいずれか1つに記載の装置において、当該装置は、物品に洗浄ガスを吹き付けるために処理ゾーンの下流側に配置された、少なくとも1つのガス出口開口を有している。
【0041】
上および以下で用いた「下流側」および「上流側」という用語は、物品案内方向、つまり装置を規定通りに作動させた場合の、粒子状の物品の流れ方向に関する。したがって、装置が規定通りに作動している場合に物品が第2のユニットの後で第1のユニットを通過する場合には、第1のユニットを第2のユニットの下流側と言う。同様に、装置が規定通りに作動している場合に物品が第2のユニットの前に第1のユニットを通過する場合には、第1のユニットを第2のユニットの上流側と言う。
【0042】
1つの別の態様では、本発明は、粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌する方法にも関する。この方法には以下のステップが含まれる。すなわち:
a)電子線を発生させるステップ、
b)処理ゾーン内で電子線により、特に自由落下中の物品を低温殺菌および/または滅菌するステップ。
【0043】
多くの物品、特に複数のスパイスに関して、物品が、1m/s~5m/s、好適には2m/s~4m/s、特に好適には2m/s~3m/sの範囲内の速度で処理ゾーンを通って移動すると有利である、ということが判った。この速度は、例えば上述したように、上流側に配置された滑落面の長さおよび傾斜角度に基づき調整可能である。物品の速度が高くなるほど、達成可能な処理量も多くなる。
【0044】
自由落下の場合、速度は処理量とは無関係であり、例えば同一速度において100kg/h~1000kg/hの範囲内の処理量が達成され得る。処理量は、振動面の振動ならびに場合によりあり得る変向面および滑落面の寸法および向きに左右され得る。さらに、物品の速度上昇に伴い、粒子と電子源または既に上述した防護シートとの衝突の確率が低下する。しかしまた他方では、物品が十分に長く電子線内に残留して低温殺菌および/または滅菌され得るようにするために、速度は極度に大きく選択されてはならない。
【0045】
電子線の電子は、好適には、80keV~300keV、好適には140keV~280keV、特に好適には180keV~260keVの範囲内のエネルギを有している。より低い電子エネルギは、十分な低温殺菌および/または滅菌を生ぜしめないと考えられる。より高い電子エネルギによっても、大幅に高度な低温殺菌および/または滅菌を達成することはできなかった。
【0046】
有利には、物品は、5ms~25msの範囲内の処理時間の間、電子線に晒される。それというのも、十分な低温殺菌および/または滅菌のためには、ある程度の最短処理時間が必要だからである。極度に長い処理時間は、低温殺菌および/または滅菌の程度を大幅に向上させることはないということが判っており、さらに処理量も低下させると考えられる。
【0047】
同様に有利には、物品は電子線により、1kGy~45kGy、好適には8kGy~30kGy、特に好適には10kGy~16kGyの範囲内の放射線量に晒される。
【0048】
処理ゾーン内の電子電流密度は、好適には1015-1・cm-2~2.77・1015-1・cm-2の範囲内である。
【0049】
当該方法はさらに、冒頭で既に述べた、本出願人のPCT国際特許出願である欧州特許第2017070842号明細書に開示された、以下の1つまたは複数の特徴を有していてもよい。
【0050】
XVII. 粒子状の物品を、特に上で開示したような装置を用いて低温殺菌および/または滅菌する方法であって、以下のステップ、すなわち:
a)励振させられ、かつ物品が搬送されると共に個別化される複数の溝を有する、好適には実質的に水平方向に向けられた第1の振動面を介して物品を搬送しかつ個別化するステップ、
b)電子線を発生させるステップ、
c)処理ゾーン内で電子線により、特に自由落下中の物品を低温殺菌および/または滅菌するステップ
を含む。
【0051】
XVIII. 粒子状の物品を、特に上で開示したような装置を用いて低温殺菌および/または滅菌する方法であって、以下のステップ、すなわち:
b)電子線を発生させるステップ、
c)処理ゾーン内で電子線により、特に自由落下中の物品を低温殺菌および/または滅菌するステップ
を含み、
特に特徴コンビネーションXVIIに記載の方法では、
物品は処理ゾーンの領域内で物品通路を通流し、物品通路内で物品は電子線により低温殺菌および/または滅菌され、
流体が、電子源と物品通路との間に少なくとも部分的に延びておりかつ物品通路から流体分離された少なくとも1つの副通路を通流することを特徴とする。
【0052】
XIX. 特徴コンビネーションXVIIIに記載の方法において、防護シートは、物品通路を副通路から隔離している。
【0053】
XX. 特徴コンビネーションXVIIIまたはXIXに記載の方法において、副通路は、電子源と防護シートとの間に少なくとも部分的に配置されている。
【0054】
XXI. 特徴コンビネーションXVIIからXXまでのいずれか1つに記載の方法において、物品を包囲するプロセスガスは、低温殺菌および/または滅菌後に、特に低温殺菌および/または滅菌中の物品の速度の1~3倍、好適には1~1.5倍の吸取り速度で吸い取られる。
【0055】
物品は例えば、例えばダイズ等の穀物、朝食用シリアル、スナック、例えばドライココナッツ等のナッツ、アーモンド、ピーナッツバター、カカオ豆、チョコレート、チョコレート液、チョコレートパウダー、チョコレートチップ、カカオ製品、豆果、コーヒー、例えばパンプキンシード等の種子、スパイス(例えば特にスライスしたターメリック等)、ブレンド茶、ドライフルーツ、ピスタチオ、ドライプロテイン製品、ベーカリー製品、砂糖、ジャガイモ製品、麺類、ベビーフード、乾燥卵製品、例えばダイズ豆等のダイズ製品、増粘剤、酵母、酵母エキス、ゼラチンまたは酵素等の食品であってよい。
【0056】
択一的に、物品は、反芻動物、家禽、水生動物(特に魚)または家畜用の例えばペレット、飼料または混合飼料等のペットフードであってもよい。
【0057】
しかしまた同様に、物品は例えば薄片またはペレットの形態の、例えばPET等のプラスチックであることも、本発明の枠内で考えられる。
【0058】
以下に、本発明を1つの実施例および複数の図面に基づき、より詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明による装置を示す斜視図である。
図2】扉が開かれた装置を示す正面図である。
図3】扉が開かれた装置を示す背面図である。
【0060】
図1図3に示す装置10は、例えばスパイス、ゴマ、アーモンドまたは皮を剥いたピスタチオ等の粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌するために設けられている。装置10は、外側ケーシング40、物品入口43、物品出口44および物品案内通路41を有しており、物品案内通路41において物品を、物品入口43から物品案内方向Rに沿って装置10を通して物品出口44まで案内可能である。装置10の外側ケーシング40の外側には、配電盤キャビネット141と、後述する電子源20への供給用の2つの発生器142とを備えた電気架台140およびプラットホーム143が位置している。
【0061】
装置10は、図2および図3ではさらに調量装置(ここには図示せず)を有しており、調量装置により、物品が励振可能な第1の振動面14上に向けて調量され得る。この第1の振動面14を介して、物品の処理量を制御することができると共に、既に事前個別化を行うこともできる。装置10は第1の振動面14の下流側に、励振可能な第2の振動面11を有している。これにより、物品をさらに下流側に運んで個別化することができるようになっている。振動面11の下流側には、傾斜した滑落面16が位置している。装置10はさらに下流側に、処理ゾーン19を有している。そこで物品は自由落下しながら、互いに対向して位置する2つの電子源20から生ぜしめられる電子線により低温殺菌および/または滅菌される。装置10はさらに、物品を包囲するプロセスガスを下流側で処理ゾーン19から吸い取ることができる、吸取り装置25を有している。振動面14および11ならびに滑落面16は、物品案内通路41を画定するいくつかの壁部材を形成している。
【0062】
本発明に基づき、装置10は、外側ケーシング40内に配置されかつ物品案内通路41を物品案内方向Rに沿って包囲する複数の内部遮蔽部51,52を有しており、内部遮蔽部51,52は、処理ゾーン19内での処理に際して生じる放射線を遮蔽するために役立ち、例えば鉛から成っていてよい遮蔽部材54,55,56,57を備えている。
【0063】
物品案内通路41は2つの通路区間45,46、とりわけ物品を物品入口43から処理ゾーン19へ案内可能な物品入口通路45および物品を処理ゾーン19から物品出口44へ案内可能な物品出口通路46を有しており、内部遮蔽部51,52が物品入口通路45と物品出口通路46をラビリンス状に、つまり放射線に対して迷路を成すように重なり合って包囲している。以下でさらに詳しくするように、物品入口通路45を包囲している内部遮蔽部51は、遮蔽部材54および55を有しており、物品出口通路46を包囲している内部遮蔽部52は、遮蔽部材56および57を有している。
【0064】
装置10の外側ケーシング40は、複数の開口、つまりとりわけ前側の開口60(図2に図示)と後ろ側の開口61(図3に図示)とを有している。前側の開口60は、閉鎖位置において第1の扉62と第2の扉62’とにより閉鎖可能であり、後ろ側の開口61は、閉鎖位置において第3の扉63と第4の扉63’とにより閉鎖可能である。扉62,62’,63,63’は内側64に、遮蔽部材55および57を有している。装置10はさらに、静的な遮蔽部材54および56を有している。図1に示した扉62,62’,63,63’の閉鎖位置では、遮蔽部材54,55,56,57は共同して、物品案内通路41(物品入口通路45と物品出口通路46)をラビリンス状に、つまり放射線に対して迷路を成すように重なり合って包囲している。
【0065】
装置10を用いて粒子状の物品を低温殺菌および/または滅菌するためには、以下のステップを実施する。
【0066】
第1の振動面14を介して物品の処理量を制御し、かつ事前個別化を行う。第2の振動面11上で物品をさらに運び、個別化する。電子源20を用いて電子線を発生させる。次いで電子線により、処理ゾーン19内で自由落下する物品の低温殺菌および/または滅菌を行う。
【0067】
スパイスの場合、物品は有利には2.5m/sの速度で処理ゾーン19を通り、移動する。この速度は、滑落面16の長さおよび傾斜角度に基づき調整可能である。電子線の電子は、80keV~300keVの範囲内にある、例えば250keVのエネルギを有している。処理ゾーン19において電子線は、1015-1・cm-2~2.77・1015-1・cm-2の範囲内にある平均電流密度を有している。物品は、5ms~25msの範囲内の、例えば15msであってよい処理時間の間、電子線に晒される。これにより物品は、1kGy~45kGyの範囲内の、例えば12kGyであってよい放射線量に晒される。物品を包囲しているプロセスガスは、処理ゾーン19内での低温殺菌および/または滅菌後に吸取り装置25により、特に低温殺菌および/または滅菌中の物品の速度の1~1.5倍の好適な吸取り速度で吸い取られる。
【0068】
内部遮蔽部51,52に基づき、処理ゾーン19内での処理に際して生じる放射線に基づくリスクが、外側ケーシング40のみの構造により可能な場合と比べ、大幅に低下されることになる。これにより、物品は装置10の内部でも、つまり処理ゾーン19の傍らでも、有害であり得る放射線から防護され得るようになっている。さらに、装置10の周辺環境、特に装置10のオペレータも、生じ得る放射線のリスクからより効果的に防護され得るようになっている。扉62,62’,63,63’が開かれると、装置の多くのコンポーネント-特に処理ゾーン19の領域に配置された、電子線が透過するチタン製の2つの防護シート23を保持するカセット24-に接近することができる。
図1
図2
図3