IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宝山鋼鉄股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特許7065998鋼板コーティング厚さの測定方法及びシステム
<>
  • 特許-鋼板コーティング厚さの測定方法及びシステム 図1
  • 特許-鋼板コーティング厚さの測定方法及びシステム 図2
  • 特許-鋼板コーティング厚さの測定方法及びシステム 図3
  • 特許-鋼板コーティング厚さの測定方法及びシステム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】鋼板コーティング厚さの測定方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B21C 51/00 20060101AFI20220502BHJP
   B21B 38/04 20060101ALI20220502BHJP
   G01B 11/06 20060101ALI20220502BHJP
   G01B 11/04 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
B21C51/00 R
B21B38/04 B
B21B38/04 A
B21B38/04 Z
B21C51/00 K
B21C51/00 J
G01B11/06 101Z
G01B11/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020551993
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 CN2019080450
(87)【国際公開番号】W WO2019185028
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】201810270900.6
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512171021
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BAOSHAN IRON & STEEL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.885,Fujin Road,Baoshan District Shanghai,201900,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン,フゥアピン
(72)【発明者】
【氏名】シィアォ,ウェン
(72)【発明者】
【氏名】リィー,グゥオパァォ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,パァォヂィン
(72)【発明者】
【氏名】スゥン,ウンシュァン
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン,シィンチィァン
(72)【発明者】
【氏名】ハァン,ダァン
(72)【発明者】
【氏名】ツゥイ,グアンフゥア
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ニィンヂィァン
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-275243(JP,A)
【文献】特開平02-178172(JP,A)
【文献】特開昭49-040267(JP,A)
【文献】特開昭54-125054(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105651192(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 51/00
B21B 38/04
G01B 11/06
G01B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板コーティング厚さの測定方法において、
コーティングを塗布する前に、帯鋼の厚さT帯鋼を測定し、鋼コイルを形成するための帯鋼の長さLを測定し、コーティングを塗布した後、帯鋼を巻き取って鋼コイルを形成し、コーティング付き鋼コイルの外径R、コーティング付き鋼コイルの内径Rを測定するステップと、
次式によってコーティング厚さTコーティングを得るステップと、
【数1】
ここで、R,R,L,T帯鋼及びTコーティングの単位が同一である、
を含み、
両面のコーティング厚さの和と帯鋼の厚さとの比が8.5~10.0%であり、
前記測定するステップは、
前記帯鋼の長さLがL≧500mであり、かつ、前記帯鋼の長さLを測定するための帯鋼長さ測定装置の測定精度ΔLがΔL≦±3‰×Lを取り、
前記コーティング付き鋼コイルの外径Rを測定するための鋼コイル寸法測定装置の測定精度ΔRがΔR≦±3‰×Rを取り、
前記コーティング付き鋼コイルの内径R を測定するための鋼コイル寸法測定装置の測定精度ΔR がΔR ≦±3‰×R を取り、
前記帯鋼の厚さT 帯鋼 を測定するための帯鋼厚さ測定装置の測定精度ΔT 帯鋼 がΔT 帯鋼 ≦±3‰×T 帯鋼 を取る場合に、開始される、
ことを特徴とする鋼板コーティング厚さの測定方法。
【請求項2】
次式によってコーティング厚さの測定精度ΔTコーティングを得るステップ、
【数2】
さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の鋼板コーティング厚さの測定方法。
【請求項3】
前記帯鋼厚さ測定装置は、X線厚み計であり、及び/又は前記帯鋼長さ測定装置は、ドップラー原理に基づくレーザー速度計であり、及び/又は前記鋼コイル寸法測定装置は、レーザー距離計であることを特徴とする請求項1に記載の鋼板コーティング厚さの測定方法。
【請求項4】
鋼板コーティング厚さの測定システムにおいて、
帯鋼の搬送方向に沿ってコーティングマシンの上流に設けられ、コーティングを塗布する前に帯鋼の厚さT帯鋼を測定するための帯鋼厚さ測定装置と、
帯鋼の搬送方向に沿って巻き取り機の上流に設けられ、鋼コイルを形成する帯鋼の長さLを測定するための帯鋼長さ測定装置と、
帯鋼の搬送方向に沿って前記巻き取り機の下流に設けられ、前記コーティング付き鋼コイルが通過する領域の周囲にあり、コーティング付き鋼コイルの外径R及びコーティング付き鋼コイルの内径Rを測定するための鋼コイル寸法測定装置と、
前記帯鋼厚さ測定装置、前記帯鋼長さ測定装置、及び前記鋼コイル寸法測定装置にそれぞれ接続され、当該各測定装置から伝送される前記T帯鋼,L,R,Rのデータを受信して、該データによってコーティング厚さTコーティングを計算し出力する制御装置と、
を備え
前記帯鋼長さ測定装置の測定精度ΔLがΔL≦±3‰×Lを取り、
前記コーティング付き鋼コイルの外径Rを測定するための前記鋼コイル寸法測定装置の測定精度ΔRがΔR≦±3‰×Rを取り、
前記コーティング付き鋼コイルの内径R を測定するための前記鋼コイル寸法測定装置の測定精度ΔR がΔR ≦±3‰×R を取り、
前記帯鋼厚さ測定装置の測定精度ΔT 帯鋼 がΔT 帯鋼 ≦±3‰×T 帯鋼 を取る、
ことを特徴とする鋼板コーティング厚さの測定システム。
【請求項5】
前記帯鋼厚さ測定装置は、X線厚み計であり、及び/又は前記帯鋼長さ測定装置は、ドップラー原理に基づくレーザー速度計であり、及び/又は前記鋼コイル寸法測定装置は、レーザー距離計であることを特徴とする請求項に記載の鋼板コーティング厚さの測定システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さの測定方法及びシステムに関し、特に、コーティング厚さの測定方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
方向性けい素鋼の製造プロセスにおいては、MgO又はAl等の酸化物分離剤を塗布する必要がある。酸化物分離剤を塗布する目的は、(1)鋼帯間の高温焼鈍時の接着を防止することと、(2)高温焼鈍が約1100℃に上がる時、MgOと鋼帯表面のSiO酸化膜とが化学的に反応してケイ酸マグネシウムの下地層を形成し、高温純化焼鈍時に脱硫と脱窒反応を促進させることができることである。酸化物分離剤の塗布及び脱炭焼鈍は通常同一の作業ライン上において完了し、主な工程は調液、撹拌、塗布及び乾燥等を含み、方向性けい素鋼製品の品質に重要な影響を与える。その中で、コーティング厚さの制御は最も肝心であり、コーティングが厚過ぎる又は薄過ぎると最終製品の表面欠陥が多くなり、帯鋼の局部に皺が生じひいては磁気性能の不良を引き起こしてしまう。したがって、方向性けい素鋼を生産するプロセスにおいて、分離剤のコーティング厚さを精確に制御する必要がある。
【0003】
酸化物分離剤は、乾燥された後、粉末の形態を呈し、帯鋼との粘着力が弱いため、その厚さの測定が非常に困難である。従来技術では、酸化物分離剤のコーティング厚さの測定方法は主に以下の2つがある。
【0004】
1つはオンライン測定方法であり、即ち、酸化物分離剤でのβ線の反射強度と鋼板でのβ線の反射強度との相違により、分離剤のコーティング厚さを算出する。しかしながら、実際の生産プロセスにおいて、該方法は測定の精確性及び安定性が悪い。主な原因については、一方では、分離剤粉末が測定プローブを汚染し易く、プローブが粉塵環境に大きく影響され、測定システムを頻繁にメンテナンス・校正する必要があり、他方では、分離剤のコーティングがしま模様で平坦でない状態を呈し、且つ帯鋼と伴に高速に運行するので、測定システムがβ線の反射信号を精確に捉え難く、測定誤差が大きくなりやすい。また、β線放射源は特定の減衰周期を有し、定期的に放射源を取り替える必要があり、測定とメンテナンスのコストが高い。
【0005】
もう1つはオフライン測定方法であり、即ち、分離剤を塗布した後の帯鋼サンプルを採取し、一定面積の分離剤粉末を掻き取り、オフラインで分離剤粉末の重さを量ってから、単位面積あたりの分離剤のコーティングの重さに換算する。該方法の測定精度は比較的高いが、サンプリング、サンプルの配送及び秤量等がすべて手動で完成するため、サンプリングプロセスの標準化作業への要求が高い。もし粉末の掻き取りが不完全、又は掻き取り面積が広過ぎ、ひいては粉末を掻き取る過程において汗がサンプルに不注意に滴入すると、いずれも測定結果の誤りを引き起こしてしまう。したがって、該方法の人的コストと管理コストが高く、コーティング厚さ測定システムのキャリブレーションに多く用いられる。このほか、該方法がオフライン測定方法であるため、即時性とオンライン性が悪く、コーティング厚さの快速な調節を行うことは困難である。
【0006】
これにより、鋼板のコーティング厚さをリアルタイムに測定可能であって、測定コストが低く、測定精度が高い鋼板のコーティング厚さを測定する方法が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の1つは、鋼板のコーティング厚さをリアルタイムに測定可能であって、測定コストが低く、測定精度が高い鋼板コーティング厚さの測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、鋼板コーティング厚さの測定方法において、
コーティングを塗布する前に、帯鋼の厚さT帯鋼を測定し、鋼コイルを形成するための帯鋼の長さLを測定し、コーティングを塗布した後、帯鋼を巻き取って鋼コイルを形成し、コーティング付き鋼コイルの外径R、コーティング付き鋼コイルの内径Rを測定するステップと、
次式によってコーティング厚さTコーティングを得るステップと、
【数1】

ここで、R,R,L,T帯鋼及びTコーティングの単位は同一である、
を含む鋼板コーティング厚さの測定方法を提供する。
【0009】
上記の測定方法において、帯鋼の長さLは、測定対象の帯鋼の総長さであってもよく、巻き取って鋼コイルを形成した帯鋼の長さ、即ち巻き取り長さであってもよい。相応に、測定されるRとRは、巻き取りが完了した後、測定を行ってもよく、巻き取る過程においてリアルタイムに測定してもよい。
【0010】
さらには、帯鋼の長さL≧500mであり、両面のコーティング厚さの和と帯鋼の厚さとの比が8.5~10.0%である。
【0011】
さらには、本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法においては、次式によってコーティング厚さの測定精度ΔTコーティングを得るステップをさらに含む。
【数2】

ここで、ΔTコーティングはTコーティングの測定精度、ΔRはRの測定精度、ΔRはRの測定精度、ΔT帯鋼はT帯鋼の測定精度、ΔLはLの測定精度であり、ΔR,ΔR0,ΔT帯鋼及びΔLは測定装置の測定精度である。
【0012】
さらには、本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法においては、ΔL≦±5‰×Lを取る。
さらには、本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法においては、ΔL≦±3‰×Lを取る。
上記好ましい技術案において、コーティング厚さの測定精度を高めるために、ΔL≦±3‰×Lを取る。
【0013】
さらには、本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法においては、ΔR≦±5‰×R及びΔR≦±5‰×Rを取る。
さらには、本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法においては、ΔR≦±3‰×R及びΔR≦±3‰×Rを取る。
上記好ましい技術案において、コーティング厚さの測定精度を高めるために、ΔR≦±3‰×R及びΔR≦±3‰×Rを取る。
【0014】
さらには、本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法においては、ΔT帯鋼≦±5‰×T帯鋼を取る。
さらには、本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法においては、ΔT帯鋼≦±3‰×T帯鋼を取る。
上記好ましい技術案において、コーティング厚さの測定精度を高めるために、ΔT帯鋼は≦±3‰×T帯鋼を取る。
【0015】
さらには、本発明は、鋼板コーティング厚さの許容誤差範囲、R、R、L又はT帯鋼の理論値若しくは前もって推定した数値に基づいて、上記測定精度要求を満たす測定機器を選択することで、測定要求又は生産ニーズを満たすことができる。
【0016】
相応に、本発明の別の目的は、上記鋼板コーティング厚さの測定方法に用いられ、鋼板のコーティング厚さをリアルタイムに測定可能であって、測定コストが低く、測定精度が高い測定システムを提供することにある。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明は、鋼板コーティング厚さの測定方法に用いられる測定システムにおいて、
帯鋼の搬送方向に沿ってコーティングマシンの上流に設けられ、コーティングを塗布する前に帯鋼の厚さT帯鋼を測定するための帯鋼厚さ測定装置と、
帯鋼の搬送方向に沿って巻き取り機の上流に設けられ、鋼コイルを形成した帯鋼の長さLを測定するための帯鋼長さ測定装置と、
帯鋼の搬送方向に沿って巻き取り機の下流に設けられ、且つコーティング付き鋼コイルが通過する領域の周囲にあり、コーティング付き鋼コイルの外径R及びコーティング付き鋼コイルの内径Rを測定するための鋼コイル寸法測定装置と、
前記帯鋼厚さ測定装置、前記帯鋼長さ測定装置、及び前記鋼コイル寸法測定装置にそれぞれ接続され、当該各測定装置から伝送される前記T帯鋼,L,R,Rのデータを受信して、該データによってコーティング厚さTコーティングを計算し出力する制御装置と、
を備える測定システムを提供する。
【0018】
上記技術案では、本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法に用いられる測定システムは、鋼板コーティング厚さをリアルタイムに測定可能であるので、鋼板コーティング厚さのオンライン測定を実現可能であって、測定データをタイムリーに得ることができる。
【0019】
さらには、本発明に係る測定システムにおいて、前記制御装置は、次式によってコーティング厚さの測定精度ΔTコーティングをさらに計算して出力する。
【数3】

ここで、ΔTコーティングはTコーティングの測定精度、ΔRはRの測定精度、ΔRはRの測定精度、ΔT帯鋼はT帯鋼の測定精度、ΔLはLの測定精度であり、ΔR,ΔR,ΔT帯鋼及びΔLは測定装置の測定精度である。
【0020】
さらには、本発明に係る測定システムにおいて、前記帯鋼厚さ測定装置はX線厚み計、及び/又は前記帯鋼長さ測定装置はドップラー原理に基づくレーザー速度計、及び/又は前記鋼コイル寸法測定装置はレーザー距離計である。
【0021】
本発明に係る測定システムにおいて、コーティング厚さの測定精度を高めるために、帯鋼厚さ測定装置は、X線厚み計であることが好ましく、帯鋼長さ測定装置は、ドップラー原理に基づくレーザー速度計であることが好ましく、鋼コイル寸法測定装置は、レーザー距離計であることが好ましい。なお、X線厚み計、レーザー速度計及びレーザー距離計のいずれも従来技術においてよく用いられる計器であり、その構造の特徴についてここでは説明しない。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法及びシステムは、従来技術に比べて次のような有益な効果を奏する。
(1)本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法及びシステムは、鋼板のコーティング厚さをリアルタイムに測定でき、且つ測定コストが低く、測定精度が高いことによって、鋼製品の品質を引き上げ、コーティング原料の消耗を低減させることに有利である。
(2)本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法及びシステムは、異なる類型のコーティングの厚さを測定でき、汎用性が高く、特に、従来の方法を用いて正確に測定し難い粉末状コーティングの厚さ、例えば、方向性けい素鋼の製造プロセスにおけるMgO又はAl等の酸化物分離剤コーティングの厚さの測定に適する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法に用いられる測定システムの一実施形態の構造を示す図である。
図2】本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法の一実施形態における測定ステップを示す図である。
図3】実施例42の帯鋼のコーティング厚さの測定値が巻き取り長さにつれて変化する関係を示す図である。
図4】本発明に係る測定方法により測定して得られたコーティング厚さと従来技術におけるオフライン測定方法により測定して得られたコーティング厚さとの間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図及び具体的な実施例を参照して本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法及びシステムについて解釈・説明するが、該解釈・説明は本発明の技術案に対して不当な限定にはならない。
【0025】
図1は、本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法に用いられる測定システムの一実施形態の構造を示す図である。図1に示すように、本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法に用いられる測定システムは、帯鋼厚さ測定装置3と、帯鋼長さ測定装置4と、鋼コイル寸法測定装置5と、を備える。帯鋼厚さ測定装置3は、X線厚み計であってもよく、それは帯鋼1の搬送方向に沿ってコーティングマシン2の上流に設けられ、コーティングを塗布していない帯鋼1の厚さT帯鋼の測定に用いられ、その具体的な取付位置は焼鈍・コーティング工程に設けられてもよく、コーティング工程前の冷間圧延工程の出口に設けられてもよい。帯鋼長さ測定装置4は、鋼コイルを形成した帯鋼1の長さLを測定するためのレーザー速度計であってもよく、その具体的な取付位置は、コーティングマシン2の前に設けられてもよく、コーティングマシン2の後且つ巻き取り機6の前に設けられてもよく、後者の場合には即ち図中の装置41である。鋼コイル寸法測定装置5は、コーティング付き鋼コイルの外径R及びコーティング付き鋼コイルの内径Rを測定するためのレーザー距離計であってもよく、その具体的な取付位置は、巻き取り機6の巻き取った鋼コイルの周囲の何れかの位置に設けられてもよく、即ち、図中の鋼コイル寸法測定装置5、装置51又は装置52である。また、本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法に用いられる測定システムは、帯鋼厚さ測定装置3、帯鋼長さ測定装置4及び鋼コイル寸法測定装置5にそれぞれ接続され、測定装置から伝送されるT帯鋼、L、R、Rのデータを受信して、コーティング厚さTコーティングを計算し出力する制御装置(図示せず)をさらに備える。
【0026】
なお、X線厚み計、レーザー速度計及びレーザー距離計のいずれも従来技術においてよく用いられる計器であり、その構造の特徴について、ここでは説明しない。
【0027】
図2は、本発明に係る鋼板コーティング厚さの測定方法の一実施形態における測定ステップを示す図である。図2に示すように、ステップ11では、帯鋼厚さ測定装置3を用いて帯鋼の厚さT帯鋼を測定し、帯鋼長さ測定装置4を用いて鋼コイルを形成した帯鋼の長さLを測定し、鋼コイル寸法測定装置5を用いてコーティング付き鋼コイルの外径R及びコーティング付き鋼コイルの内径Rを測定する。ステップ12では、次式によってコーティング厚さTコーティングを計算する。
【数4】

ここで、R,R,L,T帯鋼及びTコーティングの単位パラメータがともに同一である。また、次式によってコーティング厚さの測定精度ΔTコーティングを計算する。
【数5】

ここで、ΔTコーティングはコーティング厚さTコーティングの測定精度、ΔRはRの測定精度、ΔRはRの測定精度、ΔT帯鋼はT帯鋼の測定精度、ΔLはLの測定精度である。また、ΔR,ΔR0,ΔT帯鋼及びΔLは測定装置の測定精度である。ステップ13では、制御装置(図示せず)を用いてコーティング厚さ及びコーティング厚さの測定精度を表示する。
【実施例
【0028】
以下、本発明の技術案を具体的な実施例のデータを用いてさらに述べ、本発明の有益な効果を証明する。
(実施例1~5)
実施例1~5の帯鋼を焼鈍した後、2ローラ型コーティングマシンを用いてAlを塗布し、Alを乾燥した後、帯鋼を巻き取る。帯鋼の運転速度は50~120m/min、コーティングを塗布する前の帯鋼の厚さは0.14~0.35mm、鋼コイルを形成した帯鋼の長さは6000~16000m、コーティング付き鋼コイルの重さは14~21tである。X線厚み計を用いてコーティングを塗布する前の帯鋼の厚さT帯鋼を測定し、レーザー速度計を用いて鋼コイルを形成した帯鋼の長さLを測定し、レーザー距離計を用いてコーティング付き鋼コイルの外径R及びコーティング付き鋼コイルの内径Rを測定する。ここで、X線厚み計の測定精度は±0.14μm、レーザー速度計の測定精度は±0.5‰×L、レーザー距離計の測定精度は±1mmである。そして、次式によってコーティング厚さTコーティングを計算する。
【数6】

ここで、コーティング付き鋼コイルの外径R、コーティング付き鋼コイルの内径R、鋼コイルを形成した帯鋼の長さL、コーティングを塗布する前の帯鋼の厚さT帯鋼及びコーティングの厚さTコーティングの単位をともに同じように換算している。また、次式によってコーティング厚さの測定精度ΔTコーティングを計算する。
【数7】
ここで、ΔTコーティングはコーティング厚さTコーティングの測定精度、ΔRはコーティング付き鋼コイルの外径Rの測定精度、ΔRはコーティング付き鋼コイルの内径Rの測定精度、ΔT帯鋼はコーティングを塗布する前の帯鋼の厚さT帯鋼の測定精度、ΔLは鋼コイルを形成した帯鋼の長さLの測定精度である。
【0029】
表1には、実施例1~5で測定して得られたコーティング付き鋼コイルの外径R、コーティング付き鋼コイルの内径R、鋼コイルを形成した帯鋼の長さL、コーティングを塗布する前の帯鋼の厚さT帯鋼の数値、計算して得られたコーティングの厚さTコーティング、及びコーティング厚さの測定精度ΔTコーティングの各数値が記載されている。
【表1】
【0030】
(実施例6~41)
実施例6~41の帯鋼を焼鈍した後、2ローラ型コーティングマシンを用いてAlを塗布し、Alを乾燥した後、帯鋼を巻き取る。X線厚み計を用いてコーティングを塗布する前の帯鋼の厚さT帯鋼を測定し、レーザー速度計を用いて鋼コイルを形成した帯鋼の長さLを測定し、レーザー距離計を用いてコーティング付き鋼コイルの外径R及びコーティング付き鋼コイルの内径Rを測定する。ここで、X線厚み計の測定精度は±0.14μm、レーザー速度計の測定精度は±0.5‰×L、レーザー距離計の測定精度は±1mmである。そして、次式によってコーティング厚さTコーティングを計算する。
【数8】

ここで、コーティング付き鋼コイルの外径R、コーティング付き鋼コイルの内径R、鋼コイルを形成した帯鋼の長さL、コーティングを塗布していない帯鋼の厚さT帯鋼及びコーティング厚さTコーティングの単位がともに同一である。既知の値として、実施例6~41中のコーティングを塗布していない帯鋼の厚さT帯鋼の理論値が0.285mm、コーティング付き鋼コイル内径Rの理論値が508mm、コーティング付き鋼コイル外径Rの理論値が1835mm、鋼コイルを形成した帯鋼長さLの理論値が8000mである場合、次式によってコーティング厚さTコーティングの理論値が20.2μmと計算することができる。(所謂理論値とは、本発明ではコーティング厚さの測定偏差を検証するために用いた一群の既知量である)。
【数9】
【0031】
表2-1には、実施例6~14中のコーティング付き鋼コイルの外径Rの測定偏差及びこの偏差でのコーティング厚さの測定偏差が記載されている。表2-2には、実施例15~23中のコーティング付き鋼コイルの内径Rの測定偏差及びこの偏差でのコーティング厚さの測定偏差が記載されている。表2-3には、実施例24~32中の鋼コイルを形成するための帯鋼長さLの測定偏差及びこの偏差でのコーティング厚さの測定偏差が記載されている。表2-4には、実施例33~41中のコーティングを塗布していない帯鋼の厚さT帯鋼の測定偏差及びこの偏差でのコーティング厚さの測定偏差が記載されている。
【0032】
ここで、コーティング厚さの測定偏差は、本発明の測定方法を用いて得られたTコーティングと鋼板コーティング厚さの理論値とによって計算して得たものである。即ち、実施例6~41は、選択した測定計器に測定誤差がある場合に、計算して得られたコーティング厚さの測定が正確であるかどうか、及び理論値とのギャップを検証することを目的とする。
【0033】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0034】
これらの中で、実施例6のコーティング厚さの測定偏差が最も大きい(-6.67%)。実施例10,19,28,37のコーティング厚さの測定偏差が最も小さい(0.00%)。当該分野で周知のように、鋼板コーティング厚さの測定偏差が10%以下である場合には、精度が高いことに属するため、本発明の測定方法は高精度である。
【0035】
表2-1、表2-2、表2-3及び表2-4から分かるように、たとえ測定計器に少しばかりの偏差が現れても、実施例6~41のコーティング厚さの測定偏差も正常な生産要求を満たすことができる。
【0036】
(実施例42)
実施例42の帯鋼を焼鈍した後、2ローラ型コーティングマシンを用いてMgOを塗布し、MgOを乾燥した後、巻き取る。帯鋼の運転速度は85m/minである。X線厚み計を用いてコーティングを塗布していない帯鋼の厚さT帯鋼を測定し、レーザー速度計を用いて鋼コイルを形成した帯鋼の長さLを測定し、レーザー距離計を用いてコーティング付き鋼コイルの外径R及びコーティング付き鋼コイルの内径Rを測定する。ここで、X線厚み計の測定精度は±0.14μm、レーザー速度計の測定精度は±0.5‰×L、レーザー距離計の測定精度は±1mmである。そして、次式によってコーティング厚さTコーティングを計算する。
【数10】

ここで、コーティング付き鋼コイルの外径R、コーティング付き鋼コイルの内径R、鋼コイルを形成した帯鋼の長さL、コーティングを塗布していない帯鋼の厚さT帯鋼及びコーティング厚さTコーティングの単位がともに同一である。
【0037】
図3は、実施例42の帯鋼のコーティング厚さの測定値が巻き取り長さにつれて変化する関係を示す図である。巻き取り長さが500m未満の場合、帯鋼コイルの巻き取り量が少ないため、測定して得られたコーティング厚さTコーティングのデータはある程度実際と合わない。巻き取り長さが約500mを超えた場合、両面のコーティング厚さの和と帯鋼の厚さとの比が8.5~10.0%の間にあり、コーティング厚さの測定値Tコーティングが安定する傾向があることが分かる。
【0038】
図4は、本発明に係る測定方法で測定して得られたコーティング厚さと従来技術におけるオフライン測定方法で測定して得られたコーティング厚さとの間の関係を図である。なお、図中、両面のコーティング厚さの和と帯鋼の厚さとの比の各点のデータは、最初の500m分の帯鋼を巻き取った場合のデータを取り除いてから計算して得られた両面のコーティング厚さの和と帯鋼の厚さとの比であり、複数回の測定の平均値である。オフライン実測でのコーティング厚さは、オフラインで一定面積の分離剤粉末を掻き取って、分離剤粉末の重さを量って、単位面積あたりの分離剤のコーティングの重さに換算する。相関係数R_sqの値は95.1%(R_sqは0~1の間にあり、通常、この値が0.7以上に達した場合、両パラメータ間が相関性を有すると見なされ、この値が1に近いほど相関性が良いことを示す)であることが分かる。両面のコーティング厚さ和と帯鋼の厚さとの比と、オフライン実測でのコーティングの厚さとの両者の相関性が良いことは、本発明に係る測定方法を用いて測定して得られたコーティングの厚さの測定精度が生産要求を満たすことができることを示している。
【0039】
なお、本発明の保護範囲における従来技術の部分が本明細書に示された実施例に限定されるものではなく、あらゆる本発明の技術案とは矛盾しない従来技術は、先行特許文献、先行に開示された出版物、先行に開示された使用等々を含むが、これらに限定されるものではなく、いずれも本発明の保護範囲に取り入れることができる。
【0040】
また、本発明において各技術的特徴の組み合わせは、本発明の請求項に記載された組み合わせ、又は具体的な実施例に記載された組み合わせに限定されるものではなく、本発明に係る全ての技術的特徴は、相互間に矛盾が生じない限り、任意の方法で自由に組み合わせたり結合したりすることができる。
【0041】
また、上述した実施例は、本発明の具体的な実施形態に過ぎないことに留意すべきである。本発明が上記の実施例に限定されないことは明らかであり、それに従って行われる類似の変化や変形は、当業者が本発明に開示された内容から直接得られる又は容易に想到できるものであり、いずれも本発明の保護範囲に属する。
図1
図2
図3
図4