(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】超音波観測装置、超音波観測システム、超音波観測装置の作動方法、及び超音波観測装置の作動プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/08 20060101AFI20220502BHJP
A61B 8/12 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
A61B8/08
A61B8/12
(21)【出願番号】P 2020565054
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2019000246
(87)【国際公開番号】W WO2020144745
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 渓
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-79977(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163793(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/029651(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作入力に応じて、超音波振動子にプッシュパルスを送信させるプッシュパルス制御部と、
前記操作入力に応じた所定の期間内における前記超音波振動子の移動量に基づいて、トラックパルスの送信のパラメータを
設定し
、超音波画像内に設定したシアウェーブ検出位置に向けて、前記超音波振動子に前記トラックパルスを送信させるトラックパルス制御部と、
を備える超音波観測装置。
【請求項2】
前記トラックパルス制御部は、前記超音波振動子の移動量が第1の閾値を超える場合、前記トラックパルスの送信を停止する請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項3】
当該超音波観測装置に接続された超音波内視鏡が有する前記超音波振動子の振動子特性に応じて、前記第1の閾値を設定する閾値設定部を備える請求項2に記載の超音波観測装置。
【請求項4】
前記プッシュパルス制御部は、前記超音波振動子の移動量が第2の閾値を超える場合、前記プッシュパルスの送信を停止する請求項
1に記載の超音波観測装置。
【請求項5】
前記トラックパルスの送信パラメータは、送信遅延量、送信開口素子位置、又は送信重み付け量の少なくともいずれか1つを含む請求項
1に記載の超音波観測装置。
【請求項6】
前記第1の閾値は、3つの独立な成分を有する請求項2に記載の超音波観測装置。
【請求項7】
請求項
1に記載の超音波観測装置と、
被検体に挿入される挿入部の先端に位置し、前記被検体へ超音波を送信し、前記被検体において反射された超音波を受信する前記超音波振動子を有する超音波内視鏡と、
を備える超音波観測システム。
【請求項8】
前記挿入部の先端に位置し、任意の3次元座標系において、少なくとも1次元方向における前記超音波振動子の移動量を計測する計測部を備える請求項7に記載の超音波観測システム。
【請求項9】
前記超音波内視鏡は、
前記挿入部の先端に位置し、前記被検体の体内を撮像する撮像部を備え、
前記超音波観測装置は、前記撮像部が撮像した画像を比較することにより、前記超音波振動子の移動量を算出する移動量算出部を備える請求項
7に記載の超音波観測システム。
【請求項10】
プッシュパルス制御部が、
操作入力に応じて、超音波振動子にプッシュパルスを送信させ、
トラックパルス制御部が、前記操作入力に応じた所定の期間における前記超音波振動子の移動量に基づいて、トラックパルスの送信のパラメータを
設定し
、超音波画像内に設定したシアウェーブ検出位置に向けて、前記超音波振動子に前記トラックパルスを送信させる超音波観測装置の作動方法。
【請求項11】
プッシュパルス制御部が、
操作入力に応じて、超音波振動子にプッシュパルスを送信させ、
トラックパルス制御部が、前記操作入力に応じた所定の期間における前記超音波振動子の移動量に基づいて、トラックパルスの送信のパラメータを
設定し
、超音波画像内に設定したシアウェーブ検出位置に向けて、前記超音波振動子に前記トラックパルスを送信させる処理を超音波観測装置に実行させる超音波観測装置の作動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波観測装置、超音波観測システム、超音波観測装置の作動方法、及び超音波観測装置の作動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野において、超音波振動子が観測対象である被検体に対して超音波を送受信して得られた超音波信号に基づいて、超音波画像を生成する超音波観測装置が用いられている。
【0003】
超音波観測装置には、超音波画像内に関心領域(ROI:Region of Interest)を設定し、関心領域にプッシュパルスを送信して剪断波を発生させ、剪断波の伝搬状況を検出するトラックパルスを送受信し、関心領域内の弾性特性を高精度に計測するものがある(例えば、特許文献1参照)。この計測方法は、シアウェーブエラストグラフィと呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、超音波内視鏡を用いたシアウェーブエラストグラフィでは、被検体内において超音波振動子の位置を固定することができないため、プッシュパルス送信後、トラックパルスを送信するまでの間に超音波振動子の位置がずれて正確な観察ができない場合がある。
【0006】
特許文献1には、Bモード画像を用いて超音波振動子の移動量を算出し、算出した移動量が閾値より大きい場合には、プッシュパルスの送信を停止する技術が開示されている。しかしながら、プッシュパルスの送信後はBモード画像を生成することができないため、この技術では、プッシュパルス送信後の超音波振動子の移動量を算出することができない。従って、この技術を用いても、プッシュパルス送信後における超音波振動子の位置ずれの影響を低減させることはできない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、プッシュパルス送信後における超音波振動子の位置ずれによる影響を低減した超音波観測装置、超音波観測システム、超音波観測装置の作動方法、及び超音波観測装置の作動プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、操作者による操作入力に応じて、超音波振動子にプッシュパルスを送信させるプッシュパルス制御部と、前記操作入力に応じた所定の期間内における前記超音波振動子の移動量に基づいて、トラックパルスの送信のパラメータを補正し、前記操作者が超音波画像内に設定したシアウェーブ検出位置に向けて、前記超音波振動子に前記トラックパルスを送信させるトラックパルス制御部と、を備える。
【0009】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記トラックパルス制御部は、前記超音波振動子の移動量が第1の閾値を超える場合、前記トラックパルスの送信を停止する。
【0010】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、当該超音波観測装置に接続された超音波内視鏡が有する前記超音波振動子の振動子特性に応じて、前記第1の閾値を設定する閾値設定部を備える。
【0011】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記プッシュパルス制御部は、前記超音波振動子の移動量が第2の閾値を超える場合、前記プッシュパルスの送信を停止する。
【0012】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記トラックパルスの送信パラメータは、送信遅延量、送信開口素子位置、又は送信重み付け量の少なくともいずれか1つを含む。
【0013】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記第1の閾値は、3つの独立な成分を有する。
【0014】
また、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、超音波観測装置と、被検体に挿入される挿入部の先端に位置し、前記被検体へ超音波を送信し、前記被検体において反射された超音波を受信する前記超音波振動子を有する超音波内視鏡と、を備える。
【0015】
また、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、前記被検体に挿入される挿入部の先端に位置し、任意の3次元座標系において、少なくとも1次元方向における前記超音波振動子の移動量を計測する計測部を備える。
【0016】
また、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、前記超音波内視鏡は、前記被検体に挿入される挿入部の先端に位置し、前記被検体の体内を撮像する撮像部を備え、前記超音波観測装置は、前記撮像部が撮像した画像を比較することにより、前記超音波振動子の移動量を算出する移動量算出部を備える。
【0017】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置の作動方法は、プッシュパルス制御部が、操作者による操作入力に応じて、超音波振動子にプッシュパルスを送信させ、トラックパルス制御部が、前記操作入力に応じた所定の期間における前記超音波振動子の移動量に基づいて、トラックパルスの送信のパラメータを補正し、前記操作者が超音波画像内に設定したシアウェーブ検出位置に向けて、前記超音波振動子に前記トラックパルスを送信させる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置の作動プログラムは、プッシュパルス制御部が、操作者による操作入力に応じて、超音波振動子にプッシュパルスを送信させ、トラックパルス制御部が、前記操作入力に応じた所定の期間における前記超音波振動子の移動量に基づいて、トラックパルスの送信のパラメータを補正し、前記操作者が超音波画像内に設定したシアウェーブ検出位置に向けて、前記超音波振動子に前記トラックパルスを送信させる処理を超音波観測装置に実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プッシュパルス送信後における超音波振動子の位置ずれによる影響を低減した超音波観測装置、超音波観測システム、超音波観測装置の作動方法、及び超音波観測装置の作動プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る超音波観測装置を含む超音波観測システム全体の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す超音波観測装置の処理を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、超音波振動子と観測対象との相対的な位置関係を説明するための図である。
【
図4】
図4は、トラックパルス送信時の超音波振動子と観測対象との相対的な位置関係を説明するための図である。
【
図5】
図5は、トラックパルスの他の補正方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施の形態の変形例1に係る超音波観測装置の処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態の変形例2に係る超音波観測装置を含む超音波観測システム全体の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明に係る超音波観測装置、超音波観測システム、超音波観測装置の作動方法、及び超音波観測装置の作動プログラムの実施の形態を説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。シアウェーブエラストグラフィによる観測が可能な超音波観測装置、超音波観測システム、超音波観測装置の作動方法、及び超音波観測装置の作動プログラム一般に適用することができる。
【0022】
また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0023】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る超音波観測装置を含む超音波観測システム全体の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、超音波観測システム1は、観測対象である被検体へ超音波を送信し、該被検体で反射された超音波を受信する超音波内視鏡2と、超音波内視鏡2が取得した超音波信号に基づいて超音波画像を生成する超音波観測装置3と、超音波観測装置3が生成した超音波画像を表示する表示装置4と、を備える。
【0024】
超音波内視鏡2は、被検体に挿入される挿入部の先端には、被検体の体内を撮像する撮像部21と、超音波を送受信する超音波振動子22と、超音波振動子22の移動量を計測する計測部23と、が配置されている。
【0025】
撮像部21は、撮像光学系及び撮像素子を有し、被検体の消化管(食道、胃、十二指腸、大腸)、又は呼吸器(気管、気管支)へ挿入され、消化管、呼吸器やその周囲臓器(膵臓、胆嚢、胆管、胆道、リンパ節、縦隔臓器、血管等)を撮像することが可能である。また、超音波内視鏡2は、撮像時に被検体へ照射する照明光を導くライトガイドを有する。このライトガイドは、先端部が超音波内視鏡2の被検体への挿入部の先端まで達している一方、基端部が照明光を発生する光源装置に接続されている。なお、超音波内視鏡2は、撮像部を備えていない構成であってもよい。
【0026】
超音波振動子22は、超音波観測装置3から受信した電気的なパルス信号を超音波パルス(音響パルス)に変換して被検体へ照射するとともに、被検体で反射された超音波エコーを電圧変化で表現する電気的なエコー信号(超音波信号)に変換して出力する。超音波振動子22は、例えばコンベックス型であるが、ラジアル型又はリニア型であってもよい。また、超音波内視鏡2は、超音波振動子22をメカ的に走査させるものであってもよいし、超音波振動子22として複数の圧電素子をアレイ状に設け、送受信にかかわる圧電素子を電子的に切り替えたり、各圧電素子の送受信に遅延をかけたりすることで、電子的に走査させるものであってもよい。
【0027】
計測部23は、超音波振動子22の近傍に配置されている加速度センサ、又は角速度センサを含み、任意の3次元座標系において、少なくとも1次元方向における超音波振動子22の移動量を計測する。3次元座標系は、例えば、超音波振動子22の走査方向(超音波内視鏡2の挿入部の長手方向)であるアジマス方向、コンベックス型の超音波振動子22がアーチ状に膨らんでいる方向である厚み方向、アジマス方向及び厚み方向に直交するエレベーション方向である。計測部23は、アジマス方向、厚み方向、及びエレベーション方向における超音波振動子22の移動量をそれぞれ計測する。
【0028】
超音波観測装置3は、送受信部31と、信号処理部32と、画像生成部33と、閾値設定部34と、関心領域設定部35と、シアウェーブ検出位置設定部36と、プッシュパルス制御部37と、トラックパルス制御部38と、表示制御部39と、制御部40と、記憶部41と、を備える。
【0029】
送受信部31は、超音波内視鏡2の撮像部21、超音波振動子22、及び計測部23との間で電気信号の送受信を行う。送受信部31は、撮像部21と電気的に接続され、撮像タイミング等の撮像情報を撮像部21に送信するとともに、撮像部21が生成した撮像信号を受信する。また、送受信部31は、超音波振動子22と電気的に接続され、電気的なパルス信号を超音波振動子22へ送信するとともに、超音波振動子22から電気的な受信信号であるエコー信号を受信する。具体的には、送受信部31は、予め設定された波形及び送信タイミングに基づいて電気的なパルス信号を生成し、この生成したパルス信号を超音波振動子22へ送信する。また、送受信部31は、計測部23と電気的に接続され、超音波振動子22の移動量に関する情報を取得する。さらに、送受信部31は、超音波内視鏡2から超音波内視鏡2の識別ID等の情報を取得する。
【0030】
送受信部31は、エコー信号を増幅する。送受信部31は、受信深度が大きいエコー信号ほど高い増幅率で増幅するSTC(Sensitivity Time Control)補正を行う。なお、深度とは、超音波画像における各画素の超音波振動子22からの距離に相当する。送受信部31は、増幅後のエコー信号に対してフィルタリング等の処理を施した後、A/D変換することによって時間ドメインのデジタル高周波(RF:Radio Frequency)信号(以下、RFデータともいう)を生成して出力する。
【0031】
信号処理部32は、送受信部31から受信したRFデータをもとにデジタルのBモード用受信データを生成する。具体的には、信号処理部32は、RFデータに対してバンドパスフィルタ、包絡線検波、対数変換等公知の処理を施し、デジタルのBモード用受信データを生成する。対数変換では、RFデータを基準電圧で除した量の常用対数をとってデシベル値で表現する。信号処理部32は、生成したBモード用受信データを、画像生成部33へ出力する。信号処理部32は、CPU(Central Processing Unit)や各種演算回路等を用いて実現される。
【0032】
画像生成部33は、信号処理部32から受信したBモード用受信データに基づいて超音波画像のデータを生成する。超音波画像は、超音波内視鏡2の挿入部の長手方向に直交する断面を撮像した断面画像である。画像生成部33は、Bモード用受信データに対してゲイン処理、コントラスト処理等の公知の技術を用いた画像処理を行うとともに、表示装置4における画像の表示レンジに応じて定まるデータステップ幅に応じたデータの間引き等を行うことによって超音波画像のデータであるBモード画像データを生成する。Bモード画像は、色空間としてRGB表色系を採用した場合の変数であるR(赤)、G(緑)、B(青)の値を一致させたグレースケール画像である。超音波画像において、RGBの値が輝度値であり、輝度値が大きい部分は白く、輝度値が小さい部分は黒く表現される。
【0033】
画像生成部33は、信号処理部32からのBモード用受信データに対して走査範囲を空間的に正しく表現できるよう並べ直す座標変換を施した後、Bモード用受信データ間の補間処理を施すことによってBモード用受信データ間の空隙を埋め、Bモード画像データを生成する。画像生成部33は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0034】
閾値設定部34は、超音波観測装置3に接続された超音波内視鏡2が有する超音波振動子22の振動子特性に応じて、第1の閾値であるトラックパルス送信閾値を設定する。具体的には、閾値設定部34は、超音波内視鏡2の識別IDに紐付けられた超音波振動子22の振動子特性を記憶部41から読み出し、読み出した情報に応じて、トラックパルス送信閾値を設定する。振動子特性とは、例えば指向角や素子数等である。閾値設定部34は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0035】
関心領域設定部35は、操作者の操作入力に応じて、超音波画像内に関心領域(ROI)を設定する。関心領域設定部35は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0036】
シアウェーブ検出位置設定部36は、操作者の操作入力に応じて、関心領域内にシアウェーブ検出位置を設定する。シアウェーブ検出位置は、シアウェーブエラストグラフィにより操作者が弾性情報を取得しようとする位置である。シアウェーブ検出位置設定部36は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0037】
プッシュパルス制御部37は、操作者による操作入力に応じて、超音波振動子22にプッシュパルスを送信させる。プッシュパルス制御部37は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0038】
トラックパルス制御部38は、操作入力に応じて定まる所定の期間内における超音波振動子22の移動量に基づいて、トラックパルスの送信のパラメータを補正し、超音波振動子22にトラックパルスをシアウェーブ検出位置に向けて送信させる。トラックパルス制御部38は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0039】
所定の期間の開始時点は、操作者がシアウェーブエラストグラフィの計測を開始する操作入力行うことにより超音波観測システム1がプッシュパルスを送信した時点であってよいが、操作者が操作入力を行った時点であってもよい。所定の期間の終了時点は、プッシュパルスとトラックパルスとの間に設けられる遅延時間に応じて定められる。遅延時間は、シアウェーブ検出位置に応じて定められる。
【0040】
トラックパルスの送信パラメータは、送信遅延量、送信開口素子位置、又は送信重み付け量の少なくともいずれか1つを含む。送信遅延量は、トラックパルスのプッシュパルスに対する遅延時間の長さである。送信開口素子位置は、トラックパルスの送信に用いる圧電素子の位置である。送信重み付け量は、トラックパルスを送信する際の各圧電素子における超音波パルスの送信強度の重み付けを表す。
【0041】
また、トラックパルス制御部38は、超音波振動子22の移動量がトラックパルス送信閾値を超える場合、トラックパルスの送信を停止する。
【0042】
表示制御部39は、撮像部21が生成した撮像信号に基づく内視鏡画像のデータ、超音波振動子22が生成した電気的なエコー信号に対応する超音波画像のデータを表示装置4に出力して表示させる。さらに、表示制御部39は、内視鏡画像のデータ及び超音波画像のデータに種々の情報を重畳して表示装置4に出力して表示させる。表示制御部39は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0043】
制御部40は、超音波観測システム1全体を制御する。制御部40は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。制御部40は、記憶部41が記憶、格納する情報を記憶部41から読み出し、超音波観測装置3の作動方法に関連した各種演算処理を実行することによって超音波観測装置3を統括して制御する。なお、制御部40を信号処理部32、画像生成部33、閾値設定部34、関心領域設定部35、シアウェーブ検出位置設定部36、プッシュパルス制御部37、トラックパルス制御部38、表示制御部39等と共通のCPU等を用いて構成することも可能である。
【0044】
記憶部41は、超音波観測システム1を処理させるための各種プログラム、及び超音波観測システム1の処理に必要な各種パラメータ等を含むデータ等を記憶する。記憶部41は、例えば、超音波画像の書出し位置(超音波の送信開始位置)の初期位置(音線番号)を記憶している。
【0045】
また、記憶部41は、超音波観測システム1の作動方法を実行するための作動プログラムを含む各種プログラムを記憶する。作動プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶して広く流通させることも可能である。なお、上述した各種プログラムは、通信ネットワークを介してダウンロードすることによって取得することも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等によって実現されるものであり、有線、無線を問わない。
【0046】
以上の構成を有する記憶部41は、各種プログラム等が予めインストールされたROM(Read Only Memory)、及び各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を用いて実現される。
【0047】
表示装置4は、超音波観測装置3に接続されている。表示装置4は、液晶又は有機EL(Electro Luminescence)等からなる表示パネルを用いて構成される。表示装置4は、例えば、超音波観測装置3が出力する超音波画像や、操作にかかる各種情報を表示する。
【0048】
次に、超音波観測システム1の処理について詳細に説明する。
図2は、
図1に示す超音波観測装置の処理を示すフローチャートである。まず、超音波観測システム1の電源がオンにされると、超音波観測装置3の送受信部31は、超音波内視鏡2から識別IDを読み出す。そして、閾値設定部34は、超音波内視鏡2の識別IDに紐付けられた超音波振動子22の振動子特性を記憶部41から読み出し、読み出した情報に応じて、トラックパルス送信閾値を設定する(ステップS1)。
【0049】
そして、送受信部31は、超音波振動子22から超音波信号を受信する(ステップS2)。
【0050】
すると、画像生成部33が超音波信号に基づいて、超音波画像のデータを生成し、表示制御部39が超音波画像を表示装置4に表示させる(ステップS3)。
【0051】
続いて、操作者は、表示装置4に表示されている超音波画像内に関心領域を設定する(ステップS4)。具体的には、操作者の操作入力に応じて、関心領域設定部35は、超音波画像内に関心領域を設定する。
図3は、超音波振動子と観測対象との相対的な位置関係を説明するための図である。
図3に示すように、観察対象Oに関心領域Rが設定される。
【0052】
さらに、操作者は、関心領域R内にシアウェーブ検出位置Pを設定する(ステップS5)。具体的には、操作者の指示入力に応じて、シアウェーブ検出位置設定部36は、関心領域R内にシアウェーブ検出位置Pを設定する。
【0053】
その後、制御部40は、操作者によりシアウェーブエラストグラフィの計測開始の操作入力があったか否かを判定する(ステップS6)。
【0054】
制御部40が、計測開始の操作入力があったと判定した場合(ステップS6:Yes)、プッシュパルス制御部37は、プッシュパルスPPを送信する(ステップS7)。なお、ここでは、計測開始の操作入力があったと同時にプッシュパルスが送信されるものとし、この時点が所定の期間の開始時点である。そして、所定の期間の長さは、シアウェーブ検出位置に応じて定められる。
【0055】
すると、記憶部41は、制御部40による制御のもと、計測部23の計測結果に基づいて、プッシュパルスPP送信からの超音波振動子22の移動量を記録する(ステップS8)。
【0056】
そして、プッシュパルスPP送信から所定の期間が経過すると、制御部40は、記憶部41に記録された超音波振動子22の移動量を読み出し、所定の期間における超音波振動子22の移動量がトラックパルス送信閾値以下であるか否かを判定する(ステップS9)。
図4は、トラックパルス送信時の超音波振動子と観測対象との相対的な位置関係を説明するための図である。
図4に示すように、トラックパルス送信時の超音波振動子22の位置は、移動量Mだけ
図3に示すプッシュパルスPP送信時の位置からずれているとする。移動量Mは、例えば超音波振動子22が3次元的に移動した量の絶対値であり、
図4に示す矢印の長さに相当する。
【0057】
制御部40が、超音波振動子22の移動量がトラックパルス送信閾値以下であると判定した場合(ステップS9:Yes)、トラックパルス制御部38は、超音波振動子22の移動量Mに基づいて、トラックパルスの送信パラメータを設定する(ステップS10)。超音波振動子22が移動していない場合、
図3に示すように、シアウェーブ検出位置に向けてトラックパルスTP1を送信すればよい。しかしながら、超音波振動子22が移動量Mだけ移動している場合、
図4に示すように、トラックパルスを送信する角度を変更し、シアウェーブ検出位置に向けてトラックパルスTP2を送信すると、シアウェーブ検出位置の弾性情報を正確に計測することができる。すなわち、トラックパルス制御部38は、トラックパルスTP2が送信されるように、トラックパルスの送信パラメータを補正する。
【0058】
すると、送受信部31は、トラックパルス制御部38の制御のもと、設定した送信パラメータでトラックパルスを送受信する(ステップS11)。
【0059】
その後、表示制御部39は、受信した計測結果に基づいて制御部40が算出したシアウェーブ検出位置の弾性情報を例えば数値で表示装置4に表示させる(ステップS12)。
【0060】
ステップS6において、制御部40が、計測開始の操作入力がなかったと判定した場合(ステップS6:No)、超音波観測装置3は、ステップS2に戻り処理を繰り返す。
【0061】
ステップS9において、制御部40が、超音波振動子22の移動量Mがトラックパルス送信閾値を超えたと判定した場合(ステップS9:No)、トラックパルス制御部38は、トラックパルスの送信を停止する。
【0062】
そして、表示制御部39は、超音波振動子22の移動量Mが大きくトラックパルスを送信できなかったことを表す警告を表示装置4に表示させ(ステップS13)、超音波観測装置3は、ステップS2に戻り処理を繰り返す。
【0063】
以上説明したように、実施の形態によれば、超音波振動子22の移動量Mに基づいて、トラックパルスの送信パラメータを補正するため、プッシュパルスPP送信後における超音波振動子22の移動による影響を低減することができる。さらに、実施の形態によれば、超音波振動子22の移動量Mが大きすぎて正確な計測が行えない場合には、表示装置4に警告を表示し、計測をやり直すことができる。
【0064】
なお、上述した実施の形態では、トラックパルスを送信する角度を変更する例を説明したが、これに限られない。
図5は、トラックパルスの他の補正方法を説明するための図である。
図5に示すように、トラックパルス制御部38は、トラックパルスを送信する圧電素子の位置を補正し、トラックパルスTP1と平行なトラックパルスTP3をシアウェーブ検出位置に向けて送信してもよい。
【0065】
(変形例1)
変形例1に係る超音波観測装置の構成は、
図1に示す超音波観測装置3と同一であってよいので、説明を省略する。変形例1において、以下で説明する各構成における処理が実施の形態と異なる。
【0066】
閾値設定部34は、超音波観測装置3に接続された超音波内視鏡2が有する超音波振動子22の振動子特性に応じて、第2の閾値であるプッシュパルス送信閾値を設定する。
【0067】
プッシュパルス制御部37は、超音波振動子22の移動量がプッシュパルス送信閾値を超える場合、プッシュパルスの送信を停止する。
【0068】
図6は、実施の形態の変形例1に係る超音波観測装置の処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、ステップS6において、制御部40が、計測開始の操作入力があったと判定した場合(ステップS6:Yes)、制御部40は、計測部23の計測結果に基づいて、所定の期間における超音波振動子22の移動量がプッシュパルス送信閾値以下であるか否かを判定する(ステップS21)。なお、この場合の所定の期間は、操作入力が行われた時点の超音波振動子22の移動量を判定可能な長さであればよく、ごく短い期間であってよい。
【0069】
制御部40が、超音波振動子22の移動量がプッシュパルス送信閾値以下であると判定した場合(ステップS21:Yes)、ステップS7に進む。
【0070】
一方、ステップS21において、制御部40が、超音波振動子22の移動量がプッシュパルス送信閾値を超えたと判定した場合(ステップS21:No)、プッシュパルス制御部37は、プッシュパルスの送信を停止する。
【0071】
そして、表示制御部39は、超音波振動子22の移動量が大きくプッシュパルスを送信できなかったことを表す警告を表示装置4に表示させ(ステップS22)、超音波観測装置3は、ステップS2に戻り処理を繰り返す。
【0072】
以上説明したように、変形例1によれば、プッシュパルスを送信する時点において、超音波振動子22の移動量が大きすぎて正確な計測が行えない場合には、表示装置4に警告を表示し、計測をやり直すことができる。
【0073】
(変形例2)
図7は、実施の形態の変形例2に係る超音波観測装置を含む超音波観測システム全体の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、超音波観測システム1Aの超音波観測装置3Aは、超音波振動子22の移動量を算出する移動量算出部42Aを備える。
【0074】
移動量算出部42Aは、
図2に示すステップS9におけるトラックパルスを送信するか否かの判定において、撮像部21が撮像した画像(光学画像)を比較することにより、超音波振動子22の移動量を算出する。移動量算出部42Aは、撮像部21が撮像した光学画像において、色味が変わる点を特徴点として抽出し、光学画像間の特徴点の動きから超音波振動子22の移動量を算出する。ただし、移動量算出部42Aは、他の公知の方法によって、光学画像から超音波振動子22の移動量を算出してもよい。このように、光学画像から超音波振動子22を算出する場合、超音波内視鏡2は、計測部23を有していなくてもよい。
【0075】
また、移動量算出部42Aは、
図6に示すステップS21におけるプッシュパルスを送信するか否かの判定において、撮像部21が撮像した画像(光学画像)を比較することにより、超音波振動子22の移動量を算出してもよい。
【0076】
また、移動量算出部42Aは、
図6に示すステップS21におけるプッシュパルスを送信するか否かの判定において、超音波振動子22が生成した超音波信号に基づいて生成される超音波画像を比較することにより、超音波振動子22の移動量を算出してもよい。プッシュパルスを送信する前であれば、超音波画像を生成することができるため、超音波振動子22の移動量の算出に超音波画像を用いてもよい。移動量算出部42Aは、超音波画像において、輝度値が変わる点を特徴点として抽出し、超音波画像間の特徴点の動きから超音波振動子22の移動量を算出する。ただし、移動量算出部42Aは、他の公知の方法によって、超音波画像から超音波振動子22の移動量を算出してもよい。
【0077】
以上説明した変形例2のように、超音波振動子22の移動量を求める際に、計測部を用いない場合、超音波内視鏡2は、計測部23を有していなくてもよい。
【0078】
なお、上述した実施の形態では、移動量Mは、超音波振動子22が3次元的に移動した量の絶対値として説明したが、これに限られない。移動量は、アジマス方向、厚み方向、及びエレベーション方向にそれぞれ独立した値を有するベクトル量として定義してもよい。この場合、第1の閾値及び第2の閾値は、アジマス方向、厚み方向、及びエレベーション方向にそれぞれ独立した値を有していてもよい。例えば、コンベックス型の超音波振動子22において、超音波を送信する角度により補正が可能なアジマス方向においては、第1の閾値及び第2の閾値の値が他の方向より大きくてもよい。このように、第1の閾値及び第2の閾値は、3つの独立な成分を有していてもよい。
【0079】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表し、かつ記述した特定の詳細及び代表的な実施の形態に限定されるものではない。従って、添付のクレーム及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1、1A 超音波観測システム
2 超音波内視鏡
3、3A 超音波観測装置
4 表示装置
21 撮像部
22 超音波振動子
23 計測部
31 送受信部
32 信号処理部
33 画像生成部
34 閾値設定部
35 関心領域設定部
36 シアウェーブ検出位置設定部
37 プッシュパルス制御部
38 トラックパルス制御部
39 表示制御部
40 制御部
41 記憶部
42A 移動量算出部