(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】天井埋込型空気調和機および設置方法
(51)【国際特許分類】
F24F 13/20 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
F24F1/0007 401C
(21)【出願番号】P 2020572576
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020007964
(87)【国際公開番号】W WO2021171463
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】特許業務法人エム・アイ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊希
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-320888(JP,A)
【文献】特許第6103018(JP,B1)
【文献】特開平10-148390(JP,A)
【文献】特開2011-257026(JP,A)
【文献】特開平10-205805(JP,A)
【文献】特開2015-045466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-1/68、13/08、13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンと、
熱交換器と、
ワイヤガイド固定部を備える化粧パネルと、
前記化粧パネルに取付けられ、吸込みグリル可動部を備えた吸込みグリルと、
前記吸込みグリルを昇降可能とする吊りワイヤを駆動するための昇降モータと、
を有する室内機を備え、
前記ワイヤガイド固定部は、前記化粧パネルの内側開口の角部を挟んで複数配置された、天井埋込型空気調和機。
【請求項2】
前記化粧パネルに固定された吸込みグリル固定部を備え、前記吸込みグリル固定部と前記吸込みグリル可動部には室内側に配置される格子を備える、請求項1に記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項3】
前記吸込みグリル可動部は
、吹出口に隣接する方向に長辺を有する矩形であり、前記吊りワイヤにより前記吸込みグリルに一体化される、請求項1に記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項4】
前記吸込みグリル可動部は、4隅に前記吊りワイヤを保持するための吊りワイヤ保持機構を備える、請求項1に記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項5】
前記ワイヤガイド固定部には、ワイヤガイドが固定され、前記ワイヤガイドは、前記吊りワイヤが挿通される中空円筒状の頂部が滑らかな凸面に形成されたガイド部材を備える、請求項1に記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項6】
前記ワイヤガイドは、90°回転した位置に形成された前記ワイヤガイド固定部に固定される、請求項5に記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項7】
前記ワイヤガイドは、前記ワイヤガイド固定部に着脱自在に固定される、請求項5に記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項8】
前記内側開口を挟んで対向する第1の縁部には前記吊りワイヤが固定され、対向する第2の縁部には前記吊りワイヤが挿通されるワイヤガイドが固定され、前記吊りワイヤ保持機構は、前記吊りワイヤを横方向にガイドするガイドプーリである、請求項4に記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項9】
前記吸込みグリル可動部に形成された第1の格子は、前記吸込みグリルに形成された第2の格子の方向に延び、前記化粧パネルの室内側に向けて配置される前記吸込みグリルの面積を増大する、請求項1に記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項10】
室内空気を循環させるためのファンと、ファンモータと、熱交換媒体が通され、前記室内空気と熱交換する熱交換器と、吸込みグリルを昇降可能とする吊りワイヤを駆動するための昇降モータとを備えた室内機を含む天井埋込型空気調和機を、室内に設置する方法であって、前記方法は、
前記室内機の室内側に配置され、前記室内空気を流すための連続する延びた縁部で画成された内側開口に向かって突出して形成されると共に前記内側開口の角部を挟んで複数配置されたワイヤガイド固定部を備える化粧パネルを筐体に固定する工程と、
前記化粧パネルに取付けられると共に、前記化粧パネルの吹出口に隣接して形成され、吊りワイヤにより昇降可能な可動部を備えた吸込みグリルの前記可動部を、前記吊りワイヤが前記ワイヤガイド固定部の垂直方向下側となる位置に、前記吸込みグリルの残りの部分の格子の方向と一致するように前記化粧パネルに対して回転させる工程と
を含む、天井埋込型空気調和機を設置する設置方法。
【請求項11】
前記可動部は、前記吹出口に隣接する方向に長辺を有する矩形であり、前記吊りワイヤを巻取り、前記可動部を前記吸込みグリルに一体化する工程を含む、請求項10に記載の設置方法。
【請求項12】
さらに天井埋込型空気調和機のメンテナンスのため、前記吊りワイヤを巻き出して、前記可動部を天井から所定の位置まで降下可能に前記吸込みグリルに保持する工程を含む、請求項10に記載の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井埋込型空気調和機に関し、より詳細には天井埋込型空気調和機の室内機への吸込みグリルの取付け方向を変更することが可能な天井埋込型空気調和機およびその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニット本体の下部に化粧パネルを装着する天井埋込型空気調和機(以下、空気調和機という。)においては、天井に据え付けられる空調機本体に対し、格子が形成された吸込みグリルを室内側に取付けて空気調和機の見た目を改善すると共に、空気調和機の内部のメンテナンス性を確保することが行われている。天井埋込型の空気調和機は、天井内に空気調和機の本体が据え付けられるので、フィルタ、吸込みグリルの清掃、点検または交換を容易にするため、吸込みグリルを空気調和機から昇降自在に構成する空気調和機が提案されている(特許第6430855号明細書)。
【0003】
特許文献1では、化粧パネルの内部に昇降用モータを設け、このモータに巻回されたワイヤの他端を吸込みグリルに固定して、吸込みグリルを昇降自在に支持する。吸込みグリルを昇降させる場合には、空気調和機の本体内に配置されたモータを駆動させて吸込みグリルおよび吸込みグリルに支持されたフィルタを昇降することが記載されている。
【0004】
また、吸込みグリルを昇降する技術としては、例えば特許第3812027号明細書(特許文献2)および特許第5320189号明細書(特許文献3)にも記載されている。特許文献2では、吸込みグリルを化粧パネルに収納する際にスムースな収納を可能とする機構が提案されている。
【0005】
さらに特許文献3では、メンテナンスのために昇降される吸込みグリルを軽量化するために、枠体および塵埃補修部のみを昇降する機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6430855号明細書
【文献】特許第3812027号明細書
【文献】特許第5320189号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、天井埋込型の空気調和機は、室内の中央近くの天井に設置されるため、空気調和能力の他、デザイン性も要求される。空気調和機のデザイン性向上を目的として、吸込みグリルを化粧パネル外周に設けられた吹出口付近まで拡大することが考えられる。しかしながら、吸込みグリルを吹出口付近まで拡大すると、吸込みグリルが大型化するため重量が増加し、吸込みグリルを昇降させる昇降モータの出力が不足する懸念がある。
【0008】
そこで、昇降させる部分を軽量化するために、吸込みグリルの全体ではなく、吸込みグリルの一部を昇降可能に構成し、吸込みグリルの一部を昇降させることも可能である。例えば、吸込みグリルが正方形に形成される場合、吸込みグリルのうちフィルタおよびワイヤ取付部を含む矩形部分を可動に構成し、矩形形部分を昇降させることで、吸込みグリルが全体として大型化しても、その可動部分を昇降させることで、昇降モータが出力不足となることを回避することができる。
【0009】
上記構成を採用する場合、天井埋込型の空気調和機は、その本体の配置位置や配管の構造に応じて化粧パネルと共に施工される。このため本体の施工性を阻害しないよう、吸込みグリルは、その格子方向が化粧パネルに対して90°回転した状態でも本体に取り付けられるようにしておく必要がある。この際、吸込みグリルの可動部を長方形として形成した場合、吸込みグリルを90°回転して施工すると、吸込みグリル上の昇降用ワイヤのワイヤ取付部と、化粧パネル側に形成されるワイヤガイドとが位置ずれを生じるため、化粧パネルに吸込みグリルの可動部を格納できなくなるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するべく、吸込みグリルの設置方向によらず、昇降する吸込みグリルを格納することが可能な天井埋込型空気調和機およびその設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の例示的実施形態によれば、
ファンと、
熱交換器と、
ワイヤガイド固定部を備える化粧パネルと、
前記化粧パネルに取付けられ、吸込みグリル可動部を備えた吸込みグリルと、
前記吸込みグリルを昇降可能とする吊りワイヤを駆動するための昇降モータと、
を有する室内機を備え、
前記ワイヤガイド固定部は、前記化粧パネルの内側開口の角部を挟んで複数配置された、天井埋込型空気調和機が提供される。
【0012】
さらに本発明の例示的実施形態によれば、
室内空気を循環させるためのファンと、ファンモータと、熱交換媒体が通され、前記室内空気と熱交換する熱交換器と、吸込みグリルを昇降可能とする吊りワイヤを駆動するための昇降モータとを備えた室内機を含む天井埋込型空気調和機を、室内に設置する方法であって、前記方法は、
前記室内機の室内側に配置され、前記室内空気を流すための内側開口に向かって突出して形成されると共に前記内側開口の角部を挟んで複数配置されたワイヤガイド固定部を備える化粧パネルを筐体に固定する工程と、
前記化粧パネルに取付けられると共に、前記化粧パネルの吹出口に隣接して形成され、吊りワイヤにより昇降可能な可動部を備えた吸込みグリルの前記可動部を、前記吊りワイヤが前記ワイヤガイド固定部の垂直方向下側となる位置に前記吸込みグリルの残りの部分の格子方向と一致するように前記化粧パネルに対して回転させる工程とを含む、天井埋込型空気調和機を設置する設置方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吸込みグリルの設置方向によらず、昇降する吸込みグリルを格納できる天井埋込型空気調和機および設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態の空気調和機の室内機100の概略的な断面図。
【
図2】
図2は、例示的な実施形態の室内機100が昇降モータ113を動作させて、吸込みグリル可動部109bを所定位置まで降下させた状態200を示す斜視図。
【
図3】
図3は、本実施形態の室内機100に対して、吸込みグリル固定部109aが90°時計方向に回転した状態で化粧パネル107に取付けられた状態300を示す図。
【
図4】
図4は、筐体102側から見た場合の本実施形態の化粧パネル107の筐体内側構造を示す斜視図。
【
図5】
図5は、本実施形態の化粧パネル107と、吸込みグリル可動部109bとの位置を、室内機100の内側から見下ろしたものと仮定した場合の実施形態を示す図。
【
図6】
図6は、
図5の実施形態から見て吸込みグリル固定部109aが90°時計方向に回転した状態で化粧パネル107に取付けられた場合の例示的な実施形態を示す図。
【
図7】
図7は、本実施形態の変更例の室内機700の変更例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態を、実施形態を以て説明するが、本発明は実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本明細書に添付した図面は、本発明の理解を容易にするために使用され、本発明を限定することを意図したものではない。さらに、本発明において、角度を記載する場合には、記載された数値を中心として±20%の範囲の許容度を有する。さらに、用語「近く」、「近接して」、または「隣接して」は、当業者において「近く」、「近接して」、または「隣接して」と理解される通常の意味で使用され、必ずしも実際に接していることを意味するものではない。さらに、本開示において用語「角」は、鋭角、鈍角、直角など、平面上で少なくとも正多角形を形成することができる角度で縁部が集合する部位を言う。
【0016】
図1は、本実施形態の空気調和機の室内機100の概略的な断面図を示す。
図1に示す室内機100は、室内機100の筐体102内に、熱交換器103と、ファン105と、ファン105を駆動するためのファンモータ106とを収容する。室内空気は、矢線Aの方向へと流れ、ファン105が生成する気流にしたがって熱交換器103へと向けられ、熱交換器103内を循環する冷媒と熱交換する。
【0017】
熱交換後の調和空気は、吹出口108から矢線Bの方向へと室内に向けて排出される。熱交換器103の下方には、ドレンパン104が配置されており、熱交換器103のドレン水などを回収している。
【0018】
筐体102の室内側には、化粧パネル107が設置され、化粧パネル107の室内側には、吸込みグリル109が着脱自在に設置されている。吸込みグリル109は、昇降モータ113により昇降自在に保持された吸込みグリル可動部109bと、その両端に配置された吸込みグリル固定部109aとを含んでいる。また、吸込みグリル固定部109aと吸込みグリル可動部109bには、化粧パネル107のデザインとして格子109cが形成されている。例示的な実施形態における吸込みグリル固定部109aの外側縁部は、デザイン性の観点から吹出口108の近くにまで延長して形成される。
【0019】
吸込みグリル固定部109aの内側部分は、矩形、より具体的には長方形に形成した吸込みグリル可動部109bとして吸込みグリル固定部109aとは別体に形成されており、これに対応して吸込みグリル固定部109aの内側部分には、吸込みグリル可動部109bを収容するための収容部115が形成されている。吸込みグリル可動部109bには、吸込みグリル可動部109bの4隅の適切な位置に形成されたワイヤ取付け部110a~110dが形成されている。なお、
図1には、紙面手前側に配置されたワイヤ取付部110a、110b(図示せず)のみを示している。ワイヤ取付部110a、110bには、吸込みグリル可動部109bを昇降自在に保持するための吊りワイヤ112がワイヤ保持機構を介して固定されている。吸込みグリル可動部109bの室内機100に向いた面には、フィルタ111が載置されている。
【0020】
筐体102の内部には、昇降モータ113と、ドラム114とが配置されている。昇降モータ113は、ドラム114を回動して、吊りワイヤ112の他端に固定された吸込みグリル可動部109bを昇降する。また、昇降モータ113は、室内機100の通常運転時には、吸込みグリル固定部109aと、吸込みグリル可動部109bとが一体化する位置まで、吸込みグリル可動部109bを引き上げる。
【0021】
図1に示した実施形態では昇降モータ113は、筐体102の左右に配置されているが、昇降モータ113は例えば特許文献1の構成により、筐体102の一方に配置されてもよい。また、吊りワイヤ112は、一方の側の2本が一の昇降モータ113により、他方の側の2本が1の昇降モータ113と同期駆動される他の昇降モータ113により駆動されてもよい。さらに、吊りワイヤ112は、4本が1の昇降モータ113により巻取り・巻出しが行われてもよいし、4本をそれぞれ独立した昇降モータ113で巻上げ・巻出しする構成とすることもできる。
【0022】
一方、室内機100のフィルタ交換、清掃、点検、または部品交換などの際には、室内機100を制御するためのリモコン(図示せず)からの指令に応答して昇降モータ113が起動され、吸込みグリル可動部109bを、所定の高さまで下降し、作業者が筐体102の内部にアクセスできる配置とする。
【0023】
例示的な本実施形態では、吸込みグリル固定部109aは、デザイン性の観点から化粧パネル107の4方向に形成された吹出口108の近くまで延長して形成されている。このため、本実施形態の吸込みグリル109は、全体として従来の吸込みグリルに比較して面積が大きくなり、重量も増加する。吸込みグリル固定部109aの重量が増加すると、昇降モータ113の駆動トルクが不足することも想定され、室内機100のデザイン性向上のため、昇降用モータの設計変更を行うのでは、設計変更のコスト増加が、デザイン性向上のメリットを損なうことになる。
【0024】
このため、吸込みグリル固定部109aを大面積化しても、従来と同一の昇降モータ113を使用することができる構成とすることが好ましい。例示的な1実施形態では、上記のトレードオフを改善するため、吸込みグリル固定部109aの一部分を吸込みグリル可動部109bとして別体に構成し、吸込みグリル可動部109bを吊りワイヤ112により昇降させる構成を採用する。
【0025】
吸込みグリル可動部109bは、例示的な1実施形態では概ね長方形とされ、吸込みグリル可動部109bの筐体102側にフィルタ111が設置される。また、吸込みグリル可動部109bの4隅の適切な位置には、吊りワイヤ112を固定するためのワイヤ取付部110a~110bといった吊りワイヤ保持機構を配置する。この結果、デザイン性改善のため、吸込みグリル固定部109aを大面積化しても、昇降モータ113の能力を大面積化に伴う重量増加に応じて設計変更せずとも済み、最小コストで、室内機100のデザイン性が改善できる。
【0026】
図2は、例示的な実施形態の室内機100が昇降モータ113を動作させて、吸込みグリル可動部109bを所定位置まで降下させた状態200を示す斜視図である。筐体102は、天井内側の収容スペースに収容されている。また、筐体102には、空気調和を行うため冷媒を供給・排出するための配管120が接続されていて、室外機(図示せず)からの熱交換媒体を熱交換器103に供給して室内空気の空気調和を行う。
【0027】
化粧パネル107は、筐体102の下側で、天井パネルのレベルに位置決めされていて、天井パネルと、室内機取付部分との間のギャップを隠し、室内機100のデザイン性を向上する。
図2に示すように、メンテナンスなどの際には吸込みグリル可動部109bが吊りワイヤ112により所定の高さまで降下され、フィルタ111の交換、筐体102内部の清掃その他のメンテナンスが可能とされている。
【0028】
化粧パネル107の吸込みグリル可動部109bの長辺側の外側部分には、吸込みグリル固定部109aが固定されていて、長方形の吸込みグリル可動部109bと協働して、吸込みグリル全体を吹出口108に隣接するまで延長することを可能としている。また、吸込みグリル固定部109aの内側部分は、複数の連続する縁部116で画成された化粧パネル107の内側空間の縁部位置となるように構成される。
【0029】
吊りワイヤ112は、吸込みグリル可動部109bから垂直方向上側へと、化粧パネル107の筐体102に向く面に形成されたワイヤガイド固定部107aに固定されたワイヤガイド107bまで延びる。さらに、吊りワイヤ112は、その他端がドラム114へと巻取り自在に連結されていて、吸込みグリル可動部109bの昇降および化粧パネル107への設置を可能とする。
【0030】
吸込みグリル可動部109bの4隅の近くには、吊りワイヤ保持機構として機能するワイヤ取付部110aが配設されており、吊りワイヤ112の一端がワイヤ取付部110aに固定されている。吸込みグリル可動部109bは、昇降モータ113が起動されるとドラム114を回動させ、吊りワイヤ1102の巻取り・巻出しに連動して、昇降自在とされている。
【0031】
吸込みグリル固定部109aは、化粧パネル107に着脱自在に設置されており、その中央部には、吸込みグリル可動部109bを収容する収容部115が形成されている。本実施形態では、吸込みグリル固定部109aは、紙面の斜め上下方向に延びる配置として化粧パネル107に設置されている。これに対応して、吸込みグリル可動部109bは、吸込みグリル固定部109aの延長方向に沿った長辺と、それに直交する短辺を備え、吊りワイヤ112が巻き取られると、吸込みグリル固定部109aに形成された収容部115に収容され、吸込みグリル固定部109aと、吸込みグリル可動部109bとが一体となって、室内機100の室内側から見たデザイン性を向上する。
【0032】
室内機100の内部にアクセスする作業の終了後、例えばリモコンを操作することにより、昇降モータ113を起動し、吊りワイヤ112を巻上げ、吸込みグリル固定部109aに形成された収容部115に吸込みグリル可動部109bを収容する。この場合、化粧パネル107の適切な位置に昇降モータ113を停止させるスイッチまたはセンサを設けておき、吸込みグリル可動部109bが所定の位置まで引き上げられると、昇降モータ113を自動的に停止させるようにしてもよい。また、吸込みグリル可動部109bを収容部115が収容した後、適切なラッチ機構を操作して、吸込みグリル可動部109bを吸込みグリル固定部109aに固定してもよい。
【0033】
図3は、本実施形態の室内機100に対して、異なる配置で吸込みグリル固定部109aを取り付けた状態300を示す。
図3においては、吸込みグリル固定部109aの固定部分が、
図2の実施形態に対して90°時計回りに回転されて化粧パネル107に取付けられていることに留意されたい。
図3に示すように、室内機100を室内に設置する場合、吸込みグリル固定部109aは、施工場所の状況やデザイン性などの要請に応じて90°回転したいずれかの方向となるように設置する必要がある。
【0034】
図3に示した実施形態は、
図2に示した実施形態とは90°回転した状態で吸込みグリル固定部109aが化粧パネル107に固定されている。また、この時、吸込みグリル可動部109bは、吸込みグリル固定部109aの固定された部分と格子109cの方向が同一となるように施工することがデザイン性の上で好ましい。このため、
図3に示されるように、
図3に示した例示的な実施形態では、吸込みグリル固定部109aに形成された収容部115の方向は、
図2に比較して90°反時計回りに回転しており、これに対応して、吸込みグリル可動部109bの方向も、90°反時計周りに回転している。
【0035】
図2および
図3から理解されるように、吊りワイヤ112は、化粧パネル107に配置されたワイヤガイド107bを通して駆動されるため、吸込みグリル固定部109aの化粧パネル107に対する設置方向が回転すると、ワイヤ取付部110aは、
図2に示したワイヤガイド固定部107a、すなわちワイヤガイド107bに相対する位置がずれる。
【0036】
この状態のまま、吊りワイヤ112を巻き取ると、吊りワイヤ112は、位置がずれたワイヤガイド107bの方に引っ張られながら上昇し、この結果、吊りワイヤ112が大きく屈曲し、吸込みグリル可動部109bが吸込みグリル固定部109aの収容部115に近づくにつれて、巻上げトルクが増加し、昇降モータ113、吊りワイヤ112およびワイヤガイド107bに対して大きな負荷を与える。この結果、昇降モータ113の能力を考慮して吸込みグリル可動部109bを昇降させる構成としても、昇降モータ113の能力が不足することも想定される。
【0037】
このため、本実施形態では、吸込みグリル固定部109aの設置方向によらず、吸込みグリル可動部109bを収容することができる様、ワイヤガイド固定部107aを化粧パネル107に形成する。
【0038】
図4は、筐体102側から見た場合の本実施形態の化粧パネル107の筐体内側構造を示す斜視図である。
図4(A)は、化粧パネル107の内側構造を示し、
図4(B)は、
図4(A)のサークル130の領域を拡大して、本実施形態のワイヤガイド固定部107a、ワイヤガイド107bを示した拡大図である。
【0039】
図4(A)に示すように、化粧パネル107には、4方向に吹出口108が形成されている。また、化粧パネル107には、室内空気を吸込むための内側開口を形成するための縁部116が、化粧パネル107の内側に周方向に連続して形成されている。本実施形態のワイヤガイド固定部107aは、角部で集合する縁部116にそれぞれ形成され、吸込みグリル固定部109aの取付け方向による吸込みグリル可動部109bの化粧パネル107に対する方向変化に対応することができるように配置されている。
【0040】
図4(B)は、
図4(A)のサークル130で示されたワイヤガイド固定部107aの形成された部分を拡大し、吸込みグリル可動部109bのワイヤ取付部110aとの位置関係を示した図である。
図4(B)に示すように、化粧パネル107の縁部116の角部領域には、第1のワイヤガイド固定部107aが形成され、第1のワイヤガイド固定部107aは、ガイド部材107cを備えるワイヤガイド107bを収容する。ワイヤガイド107bは、第1のワイヤガイド固定部107aに対して取付け螺子107dで固定されている。ワイヤガイド固定部107aは、吊りワイヤ112が吸込みグリル可動部109bまで延びるように縁部116から内側に突出して形成されている。
【0041】
ガイド部材107cは、中空円筒の形状とされており、少なくともその上端部が吊りワイヤ112が擦れずにスムースに移動するように、凸面状に面取りされている。吊りワイヤ112は、ドラム(図示せず)からガイド部材107cの内側を通って化粧パネル107の下面を超え、垂直方向下側へと吸込みグリル可動部109bまで延び、さらに吸込みグリル可動部109bに形成されたワイヤ取付部110aに固定されている。
【0042】
図4に示した配置とすることで、吊りワイヤ112をスムースに移動させることが可能となると共に、吸込みグリル固定部109aに形成された収容部115に吸込みグリル可動部109bを確実に収容することが可能となる。また、
図4(B)に示されるように、第2のワイヤガイド固定部107a2は、化粧パネル107の内側開口を画成する縁部116が集合して角を形成する位置で、第1のワイヤガイド固定部107a1から90°回転した配置で角部の近傍において内側空間に突出して形成されている。なお、用語「近傍」とは、矩形に形成された吸込みグリル可動部109bに形成されたワイヤ取付部110aが90°回転した場合に、垂直方向に重合する程度で、角(コーナ)近くに形成されることを意味する。
【0043】
このため、デザイン性や施工性の関係から吸込みグリル固定部109aが、
図2に示した配置ではなく、
図3に示すように配置された場合でも、例示的な実施形態では吸込みグリル可動部109bのワイヤ取付部110aの位置に適合するワイヤガイド固定部107aが存在する。なお、化粧パネル107は、ワイヤガイド107bを収容するワイヤガイド固定部107aが形成されていればよく、現場の施工状況に応じて、ワイヤガイド107bを、吸込みグリル可動部109bのワイヤ取付部110aの位置に適合するワイヤガイド固定部107aに固定することで、柔軟な施工性が提供できる。
【0044】
図5は、本実施形態の化粧パネル107と、吸込みグリル可動部109bとの位置を、室内機100の内側から見下ろしたものと仮定した場合の実施形態を示す。
図5(A)に示すように、化粧パネル107は、化粧パネル107の内側開口を画成する縁部116を備えていて、室内空気の吸込みを可能としている。また、ワイヤガイド固定部107a1~107a8は、化粧パネル107の縁部116から内側開口に向かって突出するように内側開口を挟んで対向する縁部116の両側に形成されている。この結果、例示的な実施形態では縁部116が集合する角には、それぞれ2個、例えばワイヤガイド固定部107a1およびワイヤガイド固定部107a7が配置される。
【0045】
一方、
図5(B)に示すように吸込みグリル可動部109bのワイヤ取付部110aは、ワイヤガイド固定部107a1、107a2、107a3、107a4に対応する位置に配置されてい。吊りワイヤ112は、ワイヤ取付部110a1から延びてワイヤガイド固定部107a1に配置されたワイヤガイド107bに形成されたガイド部材107cを通ってドラム(図示せず)へと連結される。同様に、吊りワイヤ112は、それぞれワイヤガイド取付部110a2~110a4からワイヤガイド固定部107a2~107a4にそれぞれ配置されたガイド部材107cを通ってドラム(図示せず)へと連結される。
【0046】
ここで、昇降モータ113について再度説明すると、吊りワイヤ112を昇降させるための昇降モータ113は、
図4の左右両側に配置することもできるし、4本の吊りワイヤ112を同時に駆動する単一の昇降モータ113を使用して吸込みグリル可動部109bを昇降させることもできる。さらには、特定の用途に応じて吊りワイヤ1121本ごとにそれぞれ対応する昇降モータ113を配置することもできる。
【0047】
図6は、
図5の実施形態から見て吸込みグリル固定部109aが90°時計方向に回転した状態で化粧パネル107に取付けられた場合の例示的な実施形態を示す。
図6に示した実施形態では、
図6(B)に示すワイヤ取付部110a1~110a4からそれぞれ延びた吊りワイヤ112は、
図6(A)に示すように、それぞれその垂直上方に存在する化粧パネル107のワイヤガイド固定部107a5、107a6、107a7、107a8にそれぞれ配置されたガイド部材107cを通される。
【0048】
その後、吊りワイヤ112は、ドラム114へと他端が巻取り可能に連結される。この結果、吸込みグリル固定部109aが90°回転した状態で化粧パネル107に取付けられた場合でも、いずれの方向にでも吸込みグリル可動部109bを設置することができる。
【0049】
以上、説明した実施形態によれば、天井埋込型空気調和機の室内機100のデザイン性を改善しつつ、室内機100に対して吸込みグリル固定部109aを設置する場合の施工性を改善することができる。
【0050】
以下、例示的な本実施形態における室内機100を室内に設置する場合の施工方法について説明する。
【0051】
室内機100を天井に設置した後、化粧パネル107を筐体102に固定する。その後、吸込みグリル固定部109aの固定部分を化粧パネル107に設置場所その他の状況を考慮して取付ける。
【0052】
さらに、吸込みグリル可動部109bの方向を、既設の吸込みグリル固定部109aの格子109cの方向を考慮して、好ましくは既設の吸込みグリル固定部109aの格子109cの方向に一致するように90°異なる位置から選択して決定し、ワイヤガイド107bの設置位置を調節する。その後、吊りワイヤ112をドラム114からガイド部材107cを通して吸込みグリル可動部109bに固定する。
【0053】
設置終了後、リモコンの操作などにより昇降モータ113を駆動して、吸込みグリル固定部109aのレベルまで吸込みグリル可動部109bを上昇させ、必要に応じてラッチ機構を使用して吸込みグリル可動部109bの一体性を改善し、吸込みグリル固定部109aの設置を終了する。
【0054】
メンテナンスを行う場合には、リモコンを操作して吊りワイヤ112を巻出し、吸込みグリル可動部109bを天井から所定の位置まで降下させ、フィルタ交換、清掃そのためのメンテナンスを行う。メンテナンス後、再度昇降モータ113を駆動して、吸込みグリル可動部109bを吸込みグリル固定部109aに一体化させる。
【0055】
以上のように施工することにより、吸込みグリル固定部109aの設置方向によらず、吸込みグリル可動部109bを、昇降モータ113、吊りワイヤ112、ワイヤガイド107bに負担をかけることなくスムースに設置することができる。なお、吸込みグリル可動部109bが仮に正方形であっても本実施形態は不都合なく実施することができる点に留意されたい。
【0056】
<変形例>
図7には、本実施形態の変更例の室内機700の変更例を示す。
図7に示した変更例において、
図1に示した実施形態と共通する部材については同一の参照符号を使用し、それらの説明を省略する。
図7に示す室内機700では、化粧パネル107の適切な位置に吊りワイヤ112の一端を着脱自在に固定する固定部材が形成されている。また、吸込みグリル可動部109bの4隅の適切な位置には、吊りワイヤ112をガイドするための吊りワイヤ保持機構として機能するガイドプーリ110bが設置されている。
【0057】
一方、室内機700には、昇降モータ113が設置されていて、昇降モータ113にはドラム114が回転自在に配設されている。ドラム114には、紙面左方向から吸込みグリル可動部109bのガイドプーリ110bに架け渡された吊りワイヤ112が回巻されていて、昇降モータ113が起動されると、
図7において、吸込みグリル可動部109bを、吸込みグリル固定部109aの方へと引き上げ、吸込みグリル固定部109aと一体化させる。
【0058】
図7に示した実施形態では、紙面奥側に向かって他の昇降モータ113を設置し、紙面奥側に通された吊りワイヤ112を2の昇降モータ113で巻取り・巻出ししてもよい。また、1の昇降モータ113で、紙面手前側を通る吊りワイヤ112および紙面奥側を通る吊りワイヤ112を巻取り・巻出しして、吸込みグリル可動部109bの昇降を行うこともできる。
【0059】
1の昇降モータ113を使用することにより、紙面手前側と、紙面奥側をそれぞれ通る吊りワイヤ112の同期的な巻取り・巻出しが可能となると共に、メンテナンス時の消費電力も抑制することができる。
【0060】
また、吸込みグリル固定部109aの取付方向の変更に対応する場合には、化粧パネル107の内側開口を画成する縁部116の一方にワイヤガイド固定部107aを形成し、当該縁部116に対向する縁部116には、吊りワイヤ112の他端を固定する固定部材が形成されている。この時、例えば対応する位置に形成されたワイヤガイド固定部107aを固定部材として供用することができる。
【0061】
また、90°回転した縁部116のペアについても同様に、対向する1の縁部116には、ワイヤガイド固定部107aを形成し、他の1の縁部116には、吊りワイヤ112の他端を着脱自在に固定する固定部材が形成される。
【0062】
変更例において吸込みグリル固定部109aの設置方向が90°変更された場合、まず、90°回転した位置に形成された固定部材またはワイヤガイド固定部107aに吊りワイヤ112を固定する。その後、吊りワイヤ112は、吸込みグリル可動部109bのガイドプーリ110bを通り、吊りワイヤ112を固定した第1の縁部116に対向する第2の縁部116に形成されたワイヤガイド固定部107aのガイド部材107cを通ってドラム114まで延ばされる。
【0063】
フィルタ交換その他の作業が終了した後、吊りワイヤ112を、昇降モータ113の起動に応答して、巻き取ることで吸込みグリル可動部109bが吸込みグリル固定部109aに収容される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したとおり、本発明によれば、吸込みグリルの設置方向によらず、吸込みグリルを効率的に設置することが可能な空気調和機を提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
100 :室内機
102 :筐体
103 :熱交換器
105 :ファン
106 :ファンモータ
107 :化粧パネル
107a :ワイヤガイド固定部
107b :ワイヤガイド
107c :ガイド部材
108 :吹出口
109 :吸込みグリル
109a :吸込みグリル固定部
109b :吸込みグリル可動部
109c :格子
110a :ワイヤ取付部
110b :ガイドプーリ
112 :吊りワイヤ
113 :昇降モータ
114 :ドラム
116 :縁部