(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】検査装置、ブリスター包装機及びブリスターパックの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20220502BHJP
B65B 9/04 20060101ALI20220502BHJP
B65B 57/00 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
G01N21/892 A
B65B9/04
B65B57/00 H
(21)【出願番号】P 2021065178
(22)【出願日】2021-04-07
【審査請求日】2022-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】田口 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】小田 将蔵
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-145522(JP,A)
【文献】特開2017-132490(JP,A)
【文献】特開2007-327752(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105857766(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 9/00 - B65B 9/24
B65B 47/00 - B65B 47/10
B65B 57/00 - B65B 57/20
G01N 21/00 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被検査物に対し所定の光を照射可能な照射手段と、
像面湾曲が補正される所定の光学系と、該光学系を介して前記被検査物を撮像可能な撮像素子と、前記被検査物から入射する光を前記光学系へ向けて反射可能なミラーとを有した撮像手段と、
前記撮像手段を制御可能な撮像制御手段と、
前記撮像手段により取得された画像データを基に前記被検査物の良否判定を実行可能な良否判定手段とを備え、
前記撮像制御手段は、
前記被検査物の第1検査領域が前記ミラーを介さず合焦可能な前記撮像手段の第1合焦範囲内に位置する第1のタイミングで、該第1検査領域を前記撮像手段により撮像する第1撮像処理と、
前記第1撮像処理において前記第1合焦範囲から外れる前記被検査物の第2検査領域が前記ミラーを介して合焦可能な前記撮像手段の第2合焦範囲内に位置する第2のタイミングで、該第2検査領域を前記撮像手段により撮像する第2撮像処理とを実行可能に構成されていることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第2のタイミングは、前記被検査物の搬送方向における前記ミラーの位置と同一位置に、前記被検査物の第2検査領域が位置するタイミングであることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記ミラーは、前記第2のタイミングにおいて、前記被検査物の第2検査領域の法線方向と平行する光路を通り前記第2検査領域から入射する光を前記光学系へ向けて反射可能に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記ミラーの向き及び/又は位置を調整可能なミラー調整手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の検査装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、前記被検査物から入射する光を前記光学系へ向けて反射可能な第2のミラーを備え、
前記撮像制御手段は、前記被検査物の第3検査領域が前記ミラーを介して合焦可能な前記撮像手段の第3合焦範囲内に位置する第3のタイミングで、該第3検査領域を前記撮像手段により撮像する第3撮像処理を実行可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の検査装置を備えたことを特徴とするブリスター包装機。
【請求項7】
容器フィルムに成形されたポケット部に所定の内容物が収容され、該ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムが取着されてなるブリスターパックの製造方法であって、
帯状に搬送される前記容器フィルムに対し前記ポケット部を成形するポケット部成形工程と、
前記ポケット部に前記内容物を充填する充填工程と、
前記ポケット部に前記内容物が充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着工程と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状体から前記ブリスターパックを切離す切離工程と、
前記ポケット部が成形された容器フィルムを被検査物として検査する検査工程とを備え、
前記検査工程において、
前記ポケット部が成形された容器フィルムに対し所定の光を照射する照射工程と、
像面湾曲が補正される所定の光学系と、前記容器フィルムから入射する光を前記光学系へ向けて反射可能なミラーとを有した撮像手段を用いて、前記光が照射された容器フィルムを撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において取得された画像データを基に前記容器フィルムの良否判定を行う良否判定工程とを備え、
前記撮像工程においては、
前記容器フィルムの第1検査領域が前記ミラーを介さず合焦可能な前記撮像手段の第1合焦範囲内に位置する第1のタイミングで、該第1検査領域を前記撮像手段により撮像する第1撮像工程と、
前記第1撮像工程において前記第1合焦範囲から外れる前記容器フィルムの第2検査領域が前記ミラーを介して合焦可能な前記撮像手段の第2合焦範囲内に位置する第2のタイミングで、該第2検査領域を前記撮像手段により撮像する第2撮像工程とを備えたことを特徴とするブリスターパックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスターパック等の包装容器を検査するための検査装置、ブリスター包装機及びブリスターパックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品や食料品、電子部品などを包装する包装容器として、ブリスターパックが広く利用されている。中でも、医薬品の分野において、錠剤やカプセル等を包装するために用いられるPTP(プレススルーパッケージ)シートがよく知られている。
【0003】
PTPシートは、錠剤などの内容物を収容するためのポケット部が成形された容器フィルムと、その容器フィルムにポケット部の開口側を密封するように取着されたカバーフィルムとから構成されており、ポケット部を外側から押圧し、そこに収容された内容物によって蓋となるカバーフィルムを突き破ることで、該内容物を取出すことができる。
【0004】
かかるPTPシートは、帯状の容器フィルムに対しポケット部を成形するポケット部成形工程、該ポケット部に内容物を充填する充填工程、該ポケット部の開口側を密封するように容器フィルムに対しカバーフィルムを取着する取着工程、該帯状の両フィルムが取着されてなる帯状のPTPフィルムから最終製品となるPTPシートを切り離す切離工程等を経て製造される。
【0005】
ここで、ポケット部の成形に際しては、例えば真空成形、圧空成形、プラグ成形、プラグアシスト圧空成形など、部分的に加熱軟化された帯状の容器フィルムの一部を延伸加工するのが一般的である。そのため、このポケット部成形工程においては、ポケット部をはじめ、その周囲のフランジ部等においても、種々の成形不良が生じるおそれがある。
【0006】
例えば容器フィルムと加熱ヒータとが過度に接触する等して、容器フィルムがケロイド状に変形したり、容器フィルムに皺や孔が形成されるなどといった成形不良が発生するおそれがある。また、ポケット部やフランジ部の厚みが過度に厚肉化又は薄肉化されるなどの成形不良が発生するおそれもある。結果として、外観品質の低下は勿論のこと、ガスバリア性の低下など種々の不具合が発生するおそれがある。
【0007】
これに対し、ブリスタシートのポケット部に充填された錠剤を撮像して得られた一つの検査濃淡画像に基づいて、錠剤の外観と、ブリスタシートのシート部とを併せて検査する検査装置なども提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-1187321号公報
【文献】特開平7-146254号公報
【文献】特開2007-147433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に係る構成、すなわちブリスタシートのシート部の領域と、それよりも錠剤の厚み分だけ高い領域となる錠剤の表面とを1台のカメラで撮像する構成のように、被検査物における複数の領域の高さが異なっていても、その高低差が、1台のカメラの合焦範囲(被写界深度)に収まっていれば、錠剤についても、シート部についても、ピント(焦点)の合った撮像が可能となる。
【0010】
ところが、被検査物における高さの異なる複数の検査領域を合焦範囲に収めるためには、高低差が十分に小さい場合を除き、絞りを十分に小さくする(例えばピンホールカメラに近いものを用いる)必要があることから、長い露光時間が求められる。
【0011】
一方、ブリスタシート等の生産工程において、容器フィルム等の被検査物の検査を行う場合には、被検査物の搬送中に短時間で撮像を終わらせることが求められるため、長い露光時間を確保することは極めて難しい。
【0012】
これに対し、近年では、被検査物における高さの異なる複数の検査領域からの光をハーフミラー等により分離し、それらを異なるレンズを介して結像させることにより、1台のカメラで、高さの異なる複数の検査領域についてピントの合った検査画像を取得可能にした技術(例えば特許文献2参照)や、複数のミラーを組み合わせて、被検査物の各検査領域からカメラまでの光路長が全ての検査領域で一致するように調整することにより、1台のカメラで、高さの異なる複数の検査領域についてピントの合った検査画像を取得可能にした技術(例えば特許文献3参照)なども見受けられる。
【0013】
しかしながら、上記特許文献2,3のような従来技術は、光学系の構造が複雑で、被検査物毎の専用設計が必要になることから、汎用性に乏しく高価なものとなるおそれがある。
【0014】
尚、上記課題は、錠剤等を包装するPTP包装のみならず、所定の内容物を包装する他のブリスター包装の分野においても生じ得るものである。
【0015】
本発明は、上記事情等に鑑みてなされたものであり、その目的は、検査精度の向上や構造の簡素化等を図ることのできる検査装置、ブリスター包装機及びブリスターパックの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0017】
手段1.搬送される被検査物に対し所定の光を照射可能な照射手段と、
像面湾曲が補正される所定の光学系と、該光学系を介して前記被検査物を撮像可能な撮像素子と、前記被検査物から入射する光を前記光学系へ向けて反射可能なミラーとを有した撮像手段と、
前記撮像手段を制御可能な撮像制御手段と、
前記撮像手段により取得された画像データを基に前記被検査物の良否判定を実行可能な良否判定手段とを備え、
前記撮像制御手段は、
前記被検査物の第1検査領域(例えば容器のフランジ部)が前記ミラーを介さず合焦可能な前記撮像手段の第1合焦範囲内に位置する第1のタイミングで、該第1検査領域を前記撮像手段により撮像する第1撮像処理と、
前記第1撮像処理において前記第1合焦範囲から外れる前記被検査物の第2検査領域(例えば容器の底部)が前記ミラーを介して合焦可能な前記撮像手段の第2合焦範囲内に位置する第2のタイミングで、該第2検査領域を前記撮像手段により撮像する第2撮像処理とを実行可能に構成されていることを特徴とする検査装置。
【0018】
尚、以下の手段においても同様であるが、上記「搬送」には、被検査物を連続的に搬送する連続搬送や、被検査物を間欠的に搬送する間欠搬送などが含まれる。
【0019】
上記「所定の光」には、可視光は勿論のこと、紫外光や赤外光なども含まれる。
【0020】
上記「像面湾曲 (field curvature)」とは、光学系の前側と後側で、光学系に平行な合焦面が平面から平面に対応しないという収差である。
【0021】
上記「所定の光学系」には、例えば1つの光学部材(単一レンズ等)から構成されたものや、複数の光学部材から構成されたもの(レンズ群ユニット等)などが含まれる。
【0022】
上記「被検査物から入射する光」には、被検査物から反射される反射光や、被検査物を透過する透過光などが含まれる。
【0023】
上記「ミラー」は、少なくとも前記光学系の画角の範囲内を通る光路と交わる位置、かつ、前記光学系の光軸(画角中心線)と交わらない位置に配置されている。
【0024】
上記手段1に係る撮像手段は、像面湾曲が補正される所定の光学系と、被検査物から入射する光を前記光学系へ向けて反射可能なミラーとを有している。
【0025】
像面湾曲が補正される所定の光学系を備えることにより、像側の撮像素子の平面に対して、物体側の合焦面も平面となる。このため、仮に上記ミラーを省略した構成の下では、撮像手段から、該撮像手段の合焦範囲の中央部の高さ位置までの距離(光路長)が、撮像手段の視野中央(光学系の光軸)位置においては距離L0(
図7参照)となるが、撮像手段の視野の端においては、距離L0よりも長い距離L1となる。
【0026】
かかる構成の下、上記ミラーを備え、該ミラーを介して被検査物から入射する光の光路を屈折させることで、少なくとも高さ位置(撮像手段の光軸方向における位置)が、ミラーを介さずピント(焦点)の合う第1合焦範囲とは異なる位置(第1合焦範囲よりも低い位置又は高い位置)に、ミラーを介してピントの合う第2合焦範囲を設定することができる。
【0027】
そして、ミラーを介さず直接撮像してもピントが合う被検査物の第1検査領域(例えば容器のフランジ部)については、該第1検査領域が第1合焦範囲内に位置する第1のタイミングで、該第1検査領域を撮像手段により撮像する(第1撮像処理)。
【0028】
一方、ミラーを介してピントが合う(ミラーを介さない直接の撮像ではピントが合わない)被検査物の第2検査領域(例えば容器の底部)については、該第2検査領域が第2合焦範囲内に位置する第2のタイミングで、該第2検査領域を撮像手段により撮像する(第2撮像処理)。
【0029】
このように第1撮像処理により取得した第1検査画像と、第2撮像処理により取得した第2検査画像とを基に、良否判定手段は被検査物(第1検査領域及び第2検査領域)について良否判定を行う。
【0030】
結果として、1台の撮像手段で、複数のミラーを用いることなく、1枚のミラーを用いるだけで、被検査物における高さの異なる複数の検査領域について、それぞれピントの合った画像データを取得することができ、検査精度の向上を図ることができる。
【0031】
ひいては、検査装置の構造やピント調整作業の簡素化を図ると共に、安価に製造でき、汎用性を高めることができる。
【0032】
手段2.前記第2のタイミングは、前記被検査物の搬送方向における前記ミラーの位置と同一位置(例えば水平搬送される被検査物に対しミラーの真下位置)に、前記被検査物の第2検査領域が位置するタイミングであることを特徴とする手段1に記載の検査装置。
【0033】
上記手段2によれば、被検査物の搬送方向におけるミラーの位置と同一位置においては、ミラーを介してピントが合う第2合焦範囲と、ミラーを介さずピントが合う第1合焦範囲との高低差が最大となる。結果として、より高低差の大きい被検査物が検査可能となり、汎用性を高めることができる。
【0034】
手段3.前記ミラーは、前記第2のタイミングにおいて、前記被検査物の第2検査領域(被撮像面)の法線方向と平行する光路を通り前記第2検査領域から入射する光を前記光学系へ向けて反射可能に配置されていることを特徴とする手段1又は2に記載の検査装置。
【0035】
上記手段3によれば、第2検査領域(被撮像面)を正面から撮像することができ、検査精度の向上を図ることができる。
【0036】
手段4.前記ミラーの向き及び/又は位置(高さ位置等)を調整可能なミラー調整手段を備えていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の検査装置。
【0037】
上記手段4によれば、ミラーの向きや位置を調整することにより、第2合焦範囲の高さ位置や、検査対象とする第2検査領域を変更(例えば容器の底部から側壁部へ変更)することができる。結果として、形状や大きさの異なる様々な被検査物や種々の検査目的等に対応することが可能となり、汎用性を高めることができる。
【0038】
手段5.前記撮像手段は、前記被検査物から入射する光を前記光学系へ向けて反射可能な第2のミラーを備え、
前記撮像制御手段は、前記被検査物の第3検査領域(例えば容器の側壁部)が前記ミラーを介して合焦可能な前記撮像手段の第3合焦範囲内に位置する第3のタイミングで、該第3検査領域を前記撮像手段により撮像する第3撮像処理を実行可能に構成されていることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の検査装置。
【0039】
上記手段5によれば、より大きな高低差を有する被検査物や、より形状が複雑な被検査物など、様々な被検査物に対応することが容易となり、汎用性を高めることができる。
【0040】
手段6.手段1乃至5のいずれかに記載の検査装置を備えたことを特徴とするブリスター包装機。
【0041】
上記手段5のように、上記検査装置をブリスター包装機(例えばPTP包装機)に備えることで、ブリスターパック(例えばPTPシート)の製造過程において不良品を効率的に除外できる等のメリットが生じる。また、ブリスター包装機は、上記検査装置によって不良と判定されたブリスターパックを排出する排出手段を備える構成としてもよい。
【0042】
尚、上記「ブリスターパック」には、例えば錠剤等を収容するPTPシート、食料品等を収容するポーションパック、電子部品等を収容するキャリアテープなどが含まれる。
【0043】
より具体的なブリスター包装機の構成として、以下のような構成が挙げられる。
【0044】
「前記被検査物としての容器フィルムに成形されたポケット部に所定の内容物が収容され、該ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムが取着されてなるブリスターパックを製造するためのブリスター包装機であって、
前記容器フィルムを搬送する搬送手段と、
帯状に搬送される前記容器フィルムに対し前記ポケット部を成形するポケット部成形手段と、
前記ポケット部に前記内容物を充填する充填手段と、
前記ポケット部に前記内容物が充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状体(帯状のブリスターフィルム)から前記ブリスターパックを切離す切離手段(シート単位に打抜く打抜手段を含む)と、
手段1乃至5のいずれかに記載の検査装置とを備えたことを特徴とするブリスター包装機。」。
【0045】
尚、仮に姿勢の定まらない容器フィルムを検査する場合には、ポケット部の位置を特定する処理を実行しなければならないのは勿論のこと、非円形状のポケット部の場合には、画像データから検査対象となるポケット部の中心位置を算出し、該ポケット部の中心位置に、予め記憶したパターンマッチング用の基準画像の中心を合わせた上で、該基準画像を所定角度ずつ回転させていき、両者が一致するか否かをその都度判定するといった処理を行わなければならず、ポケット部に係る検査が非常に処理数が多く、手間のかかるものとなるおそれがある。
【0046】
これに対し、上記手段6のように、ブリスター包装機上に上記検査装置を備えることにより、撮像手段に対する容器フィルムの位置や姿勢、向きが一定となるため、検査に際し検査対象の位置合わせや向き調整等を行う必要がなく、検査の高速化を図ることができる。結果として、1つのポケット部にかかる処理数が格段に減り、検査処理速度を格段に速めることができる。
【0047】
さらに、上記手段6に係る構成の下、
「前記検査装置よりも下流側に前記充填手段を配置し、
前記検査装置による検査結果に基づき前記充填手段の動作を制御し、前記ポケット部に対する前記内容物の充填の可否を切換可能な充填制御手段を備えた」構成としてもよい。
【0048】
かかる構成により、例えば成形不良のポケット部に対しては内容物を充填しないようにすることも可能となる。これにより、ポケット部の成形不良に起因してブリスターパックが廃棄される場合において、該ブリスターパックとともに内容物までも廃棄されてしまうといった不具合の発生を防止することができる。また、内容物を再利用するために、ポケット部に一旦充填した内容物を取出す等の面倒な作業を行う必要がなくなる。結果として、生産性の低下抑制を図ることができる。
【0049】
手段7.容器フィルムに成形されたポケット部に所定の内容物が収容され、該ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムが取着されてなるブリスターパックの製造方法であって、
帯状に搬送される前記容器フィルムに対し前記ポケット部を成形するポケット部成形工程と、
前記ポケット部に前記内容物を充填する充填工程と、
前記ポケット部に前記内容物が充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着工程と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状体(帯状のブリスターフィルム)から前記ブリスターパックを切離す切離工程(シート単位に打抜く打抜工程を含む)と、
前記ポケット部が成形された容器フィルムを被検査物として検査する検査工程とを備え、
前記検査工程において、
前記ポケット部が成形された容器フィルムに対し所定の光を照射する照射工程と、
像面湾曲が補正される所定の光学系と、前記容器フィルムから入射する光を前記光学系へ向けて反射可能なミラーとを有した撮像手段を用いて、前記光が照射された容器フィルムを撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において取得された画像データを基に前記容器フィルムの良否判定を行う良否判定工程とを備え、
前記撮像工程においては、
前記容器フィルムの第1検査領域(例えばフランジ部)が前記ミラーを介さず合焦可能な前記撮像手段の第1合焦範囲内に位置する第1のタイミングで、該第1検査領域を前記撮像手段により撮像する第1撮像工程と、
前記第1撮像工程において前記第1合焦範囲から外れる前記容器フィルムの第2検査領域(例えばポケット部の底部)が前記ミラーを介して合焦可能な前記撮像手段の第2合焦範囲内に位置する第2のタイミングで、該第2検査領域を前記撮像手段により撮像する第2撮像工程とを備えたことを特徴とするブリスターパックの製造方法。
【0050】
上記手段7によれば、上記手段1,6と同様の作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図5】検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】像面湾曲が補正されるレンズを用いた場合の合焦範囲を説明するための模式図である。
【
図8】ミラーを配置した場合の合焦範囲を説明するための模式図である。
【
図9】フランジ部検査ルーチンを示すフローチャートである。
【
図10】第1撮像処理の実行タイミングにおけるカメラ51と容器フィルム3の位置関係を説明するための模式図である。
【
図11】ポケット部検査ルーチンを示すフローチャートである。
【
図12】第2撮像処理の実行タイミングにおけるカメラ51と容器フィルム3の位置関係を説明するための模式図である。
【
図13】第1撮像処理により取得された画像データを模式的に示す部分拡大図である。
【
図14】第2撮像処理により取得された画像データを模式的に示す部分拡大図である。
【
図15】別の実施形態に係るブリスターパックを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、ブリスターパックとしてのPTPシート1について説明する。
【0053】
図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
【0054】
容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の無色透明な熱可塑性樹脂材料により形成され、透光性を有している。一方、カバーフィルム4は、例えばポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。
【0055】
PTPシート1は、平面視略矩形状に形成されている。PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。つまり、計10個のポケット部2が形成されている。各ポケット部2には、内容物としての錠剤5が1つずつ収容されている。
【0056】
ポケット部2は、カバーフィルム4と相対向するように配置される平面視略円形状の底部2aと、該底部2aの周囲に連接しかつ該底部2aとフランジ部3bとを繋ぐ略円筒形状の側壁部2bとから構成されている。尚、本実施形態におけるフランジ部3bとは、容器フィルム3のうち、ポケット部2が形成されておらず、カバーフィルム4が取着される略平坦な部位(ポケット部非成形領域)を指す。
【0057】
本実施形態における底部2aは、緩やかに湾曲した断面略円弧状に成形されているが、これに限らず、底部2aが平坦状に成形された構成としてもよい。また、底部2a及び側壁部2bが交わる角部2cが明らかでないような、より曲率の大きい断面円弧状に成形された構成としてもよい。
【0058】
PTPシート1(
図1参照)は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(
図3参照)が矩形シート状に打抜かれることにより製造される。容器フィルム3が本実施形態における被検査物を構成する。
【0059】
次に、上記PTPシート1を製造するブリスター包装機としてのPTP包装機11の概略構成について
図4を参照して説明する。
【0060】
PTP包装機11の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール13に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール13の下流側において間欠送りロール14に掛装されている。間欠送りロール14は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0061】
ガイドロール13と間欠送りロール14との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、加熱装置15とポケット部成形装置16とが順に配設されている。加熱装置15及びポケット部成形装置16によって、本実施形態におけるポケット部成形手段が構成される。
【0062】
加熱装置15は、容器フィルム3の搬送経路を挟むように、上部ヒータプレート15a及び下部ヒータプレート15bを備えている。ヒータプレート15a,15bは、それぞれ図示しない加熱用ヒータを有し、容器フィルム3に対し接近又は離間する動作を行うよう構成されている。そして、間欠的に搬送される容器フィルム3は、その一時停止中に、両ヒータプレート15a,15bにより挟まれることで、ポケット部2の成形予定部が部分的に加熱され、この加熱された部分が軟化状態となる。
【0063】
ポケット部成形装置16は、容器フィルム3の搬送経路を挟むように、上型16a及び下型16bを備え、プラグアシスト圧空成形法によりポケット部2を成形可能に構成されている。そして、加熱装置15によって加熱され比較的柔軟になった容器フィルム3の所定位置にポケット部成形装置16によって複数のポケット部2が一度に成形される(ポケット部成形工程)。これに代えて、真空成形法、圧空成形法、プラグ成形法など他の成形方法を採用してもよい。
【0064】
尚、ポケット部2の成形は、間欠送りロール14による容器フィルム3の搬送動作間のインターバル中に行われる。また、本実施形態では、ポケット部成形装置16の一回の動作によって、2枚分のPTPシート1に対応する計20個のポケット部2が同時に成形される構成となっている。すなわち容器フィルム3のフィルム幅方向(Y軸方向)に対し5つ、かつ、フィルム搬送方向(X軸方向)に対し4つのポケット部2が同時に成形される構成となっている。勿論、これとは異なる個数のポケット部2が同時に成形される構成としてもよい。
【0065】
間欠送りロール14から送り出された容器フィルム3は、テンションロール18、ガイドロール19及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。
【0066】
フィルム受けロール20は、一定回転するモータに連結されているため、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール14とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の弛みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。
【0067】
ガイドロール19とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、検査装置21と錠剤充填装置22とが順に配設されている。
【0068】
検査装置21は、ポケット部成形装置16によってポケット部2が成形された後の容器フィルム3の状態について検査(検査工程)を行うためのものである。検査装置21の詳細な構成については後述する。
【0069】
錠剤充填装置22は、ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する充填手段としての機能を有する。錠剤充填装置22は、フィルム受けロール20による容器フィルム3の搬送動作と同期して、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5が充填される(充填工程)。錠剤充填装置22の動作は、後述する充填制御手段としての充填制御装置82によって制御される。
【0070】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール24によって加熱ロール25の方へと案内されている。加熱ロール25は、フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。
【0071】
そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ロール20,25間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3にカバーフィルム4が貼着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる(取着工程)。これにより、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状体としてのPTPフィルム6が製造される。フィルム受けロール20及び加熱ロール25により本実施形態における取着手段が構成される。
【0072】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。
【0073】
間欠送りロール28は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、フィルム受けロール20と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム6の弛みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0074】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。
【0075】
間欠送りロール32は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の弛みを防止する。
【0076】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット成形装置33及び刻印装置34が順に配設されている。スリット成形装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用スリットを成形する機能を有する。刻印装置34は、PTPフィルム6の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す機能を有する。
【0077】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。
【0078】
間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6をPTPシート1単位にその外縁を打抜くシート打抜手段(切離手段)としての機能を有する。
【0079】
シート打抜装置37によって打抜かれたPTPシート1は、取出しコンベア38によって搬送され、完成品用ホッパ39に一旦貯留される(切離工程)。但し、PTPシート1を選択的に排出可能な排出手段としての不良シート排出機構40に対し後述する充填制御装置82から不良品信号が入力されると、不良品のPTPシート1は、不良シート排出機構40によって別途排出され、図示しない不良品ホッパに移送される。
【0080】
連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残ったスクラップ部42は、テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。ここで、連続送りロール36は従動ロールが圧接されており、スクラップ部42を挟持しながら搬送動作を行う。
【0081】
裁断装置41は、スクラップ部42を所定寸法に裁断する機能を有する。裁断されたスクラップ部42はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0082】
尚、搬送手段を構成する上記各ロール14,19,20,28,31,32などは、そのロール表面とポケット部2とが対向する位置関係となっているが、各ロール14等の表面には、ポケット部2が収容される凹部が形成されているため、基本的には、ポケット部2が潰れてしまうことがない。また、ポケット部2が各ロール14等の凹部に収容されながら送り動作が行われることで、間欠送り動作や連続送り動作が確実に行われる。
【0083】
次に検査装置21の構成について詳しく説明する。
図4~
図6に示すように、検査装置21は、照射手段としての照明装置50、撮像手段としてのカメラ51、及び、これらを制御する検査制御部52を備えている。
【0084】
照明装置50は、水平方向に搬送される容器フィルム3の法線方向一方側(本実施形態では、ポケット部2の突出側である下側)に配置されている。
【0085】
照明装置50は、光照射部50aと、これを覆う拡散板50bとを有しており、面発光可能に構成されている。本実施形態における照明装置50は、容器フィルム3の所定範囲に対し紫外光を照射する。
【0086】
一方、カメラ51は、水平方向に搬送される容器フィルム3の法線方向他方側(本実施形態では、ポケット部2の開口側である上側)に配置されている。
【0087】
カメラ51は、撮像素子51a、所定の光学系としてのレンズ51b、バンドパスフィルタ51c、ミラー51dなどを有している。カメラ51は、レンズ51bの光軸CLが容器フィルム3(ポケット部2の底部2aやフランジ部3b)の法線方向、すなわち容器フィルム3と直交する鉛直方向(Z軸方向)に沿うように配置されている。
【0088】
本実施形態の撮像素子51aは、照明装置50から照射される紫外光の波長領域に感度を有する公知のCCDエリアセンサを採用している。CCDエリアセンサは、複数の受光素子が行列状に二次元配列された受光面を有する。勿論、撮像素子51aは、これに限定されるものではなく、紫外光の波長領域に感度を持つ他のセンサを採用してもよい。例えばCMOSセンサ等を採用してもよい。
【0089】
本実施形態のレンズ51bには、像面湾曲が補正されるレンズが用いられている。像面湾曲とは、レンズの像側と物体側で、該レンズに平行な合焦面が平面から平面に対応しないという収差である。
【0090】
つまり、像面湾曲が補正されるレンズ51bを用いることにより、像側の平面(撮像素子51aの受光面)に対して、物体側(容器フィルム3側)も合焦面が平面となる。例えば
図7に示すように、仮にミラー51dを省略した構成の下では、カメラ51から、該カメラ51の合焦範囲(第1合焦範囲GW1)の中央部の高さ位置までの距離(光路長)が、カメラ51の視野中央(レンズ51bの光軸CL)位置においては距離L0となるが、カメラ51の視野(画角=2×θ1)の端においては、距離L0よりも長い距離L1となる。
【0091】
かかる構成の下、本実施形態では、上記ミラー51dが配置されている。ミラー51dは、矩形平板状をなし、フィルム幅方向(Y軸方向)に対し容器フィルム3のフィルム幅と略同一の長さを有している。
【0092】
また、ミラー51dは、
図8のX-Z平面において、その中心位置Mがカメラ51(レンズ51b)に対し角度θ1で入射する光の光路と交わる位置に配置されている。但し、本実施形態では、レンズ51bの画角が「2×θ1」となっている。つまり、ミラー51dは、フィルム搬送方向(X軸方向)におけるレンズ51bの画角の端を通る光路と交わる位置に配置されている。
【0093】
尚、
図8のX-Z平面において、「L0」は、カメラ51の視野中央(光軸CL)位置に沿ってカメラ51(レンズ51b)に入射する透過光の光路、並びに、該透過光が辿る第1合焦範囲GW1の中央部の高さ位置からカメラ51までの光路長を示している。
【0094】
「L1」は、ミラー51dを省略した場合に、カメラ51(レンズ51b)に対し角度θ1で入射する透過光の仮想光路、並びに、該透過光が辿る第1合焦範囲GW1の中央部の高さ位置からカメラ51までの光路長を示している。
【0095】
「L2」は、ミラー51dを配置した場合に、カメラ51(レンズ51b)に対し角度θ1で入射する透過光の屈折光路、並びに、該透過光が辿る第2合焦範囲GW2の中央部の高さ位置からカメラ51までの光路長を示している。
【0096】
「θ1」は、カメラ51(レンズ51b)に対し入射する透過光の入射角を示している。「θ2」は、上記屈折光路L2のうち、第2合焦範囲GW2の中央部の高さ位置からミラー51dまでの物体側区間と、上記仮想光路L1との傾き角を示している。本実施形態(
図8)では、上記入射角θ1と上記傾き角θ2が同一角に設定されている。つまり、ミラー51dの中心位置Mの真下位置からZ軸方向に沿って入射する透過光がミラー51dにて反射し入射角θ1でカメラ51に対し入射するように設定されている。
【0097】
「H1」は、光軸CL方向(Z軸方向)における、カメラ51からミラー51dの中心位置Mまでの距離(高低差)を示している。
【0098】
「H2」は、光軸CL方向(Z軸方向)における、カメラ51から第1合焦範囲GW1の中央部の高さ位置までの距離(高低差)を示している。
【0099】
「H3」は、光軸CL方向(Z軸方向)における、カメラ51から第2合焦範囲GW2の中央部の高さ位置までの距離(高低差)を示している。
【0100】
「ΔGW」は、第1合焦範囲GW1の中央部の高さ位置と、第2合焦範囲GW2の中央部の高さ位置との高低差を示している。尚、高低差ΔGWは、上述したレンズ51bの画角「2×θ1」や、カメラ51とミラー51dとの高低差H1、仮想光路L1に対する屈折光路L2の物体側区間の傾き角θ2などにより一義的に定まる。
【0101】
上記のようにミラー51dを配置し、透過光の光路を屈折させることで、ミラー51dを介してピントが合う第2合焦範囲GW2を設定することができる。
図8に示すように、第2合焦範囲GW2は、ミラー51dの中心位置Mを中心とした半径Lb(=L1-La)の円弧を中央部とする円弧状の合焦範囲である。そして、ミラー51dの中心位置Mの真下位置が、第2合焦範囲GW2の最下端部となり、上記高低差ΔGWが最大となる。
【0102】
バンドパスフィルタ51cは、紫外光のみがレンズ51bへ入るように設けられたものである。これにより、照明装置50から照射される紫外光のうち、容器フィルム3を透過した紫外光のみがカメラ51により二次元撮像されることとなる。
【0103】
また、このようにカメラ51によって取得された透過画像データは、容器フィルム3における紫外光の透過率の差異に基づき各画素(各座標位置)で輝度の異なる輝度画像データとなる。
【0104】
特に本実施形態では、バンドパスフィルタ51cとして、例えば容器フィルム3の透過率がおよそ30±10パーセントとなる波長253±20nmの紫外光のみを通すものが用いられている。これは、ポケット部2の底部2aやフランジ部3bなど、容器フィルム3を透過する光の透過率が高すぎても低すぎても、その薄肉部位と厚肉部位における光の透過率に差が生じにくくなるおそれがあるためである。
【0105】
尚、本実施形態におけるカメラ51の視野(撮像範囲)は、少なくとも容器フィルム3のフィルム搬送方向(X軸方向)所定位置に位置する1列のポケット列を含む範囲、すなわち容器フィルム3のフィルム幅方向(Y軸方向)に対し5つのポケット部2を含み、かつ、フィルム搬送方向(X軸方向)に対し1つのポケット部2を含む範囲を一度に撮像可能に設定されている。
【0106】
検査制御部52は、いわゆるコンピュータシステムにより構成されており、画像メモリ53、算出結果記憶装置54、判定用メモリ55、カメラタイミング制御部56、照明制御部57、及び、これらと電気的に接続されたマイクロコンピュータ58を備えている。
【0107】
画像メモリ53は、カメラ51により取得された透過画像データをはじめ、検査時にマスク処理されたマスキング画像データや、二値化処理された二値化画像データなどの各種画像データを記憶するものである。
【0108】
算出結果記憶装置54は、検査結果データや、該検査結果データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶するものである。
【0109】
判定用メモリ55は、検査に用いられる各種情報を記憶するためのものである。これら各種情報として、例えばPTPシート1、ポケット部2及び錠剤5の形状及び寸法や、検査範囲(5個のポケット部2からなる1列のポケット列を含む略矩形状の範囲)を画定するための検査枠の形状及び寸法並びにカメラ51との相対位置関係、ポケット部2の領域を画定するためのポケット枠の形状及び寸法並びにカメラ51(又は検査枠)との相対位置関係、二値化処理における輝度閾値、容器フィルム3(ポケット部2及びフランジ部3b)の良否判定を行うための判定基準などが設定記憶されている。
【0110】
カメラタイミング制御部56は、カメラ51による撮像処理の実行タイミングを制御するためのものである。かかるタイミングは、PTP包装機11に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて制御される。従って、検査制御部52が本実施形態における撮像制御手段を構成する。
【0111】
照明制御部57は、照明装置50を制御するためのものであり、カメラ51による撮像処理の実行タイミングに合わせて、光照射部50aを点灯させ、容器フィルム3の所定範囲に対し紫外光を照射させる。
【0112】
これにより、容器フィルム3が所定量搬送される毎に、該容器フィルム3に対し照明装置50から紫外光が照射されると共に、該容器フィルム3を透過した紫外光をカメラ51により撮像する処理が実行される。そして、カメラ51により取得された透過画像データは、カメラ51内部においてデジタル信号(画像信号)に変換された上で、デジタル信号の形で検査制御部52(画像メモリ53)に取り込まれる。
【0113】
マイクロコンピュータ58は、演算手段としてのCPU58aや、各種プログラムを記憶するROM58b、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAM58cなどを備え、検査制御部52における各種制御を司る。
【0114】
マイクロコンピュータ58は、検査を実行するための各種処理プログラムを判定用メモリ55の記憶内容などを使用しつつ実行する。また、マイクロコンピュータ58は、後述する充填制御装置82との間で信号を送受信可能に構成され、例えば検査結果などを充填制御装置82へ出力可能に構成されている。
【0115】
次いで、充填制御装置82について説明する。充填制御装置82は、錠剤充填装置22による錠剤5の充填に関する制御を行うためのものであり、CPUやRAMなどを有するコンピュータシステムによって構成されている。
【0116】
特に本実施形態に係る充填制御装置82は、検査装置21による検査結果に基づき、所定のポケット部2に対し錠剤5を充填するか否かを切換え制御可能に構成されている。
【0117】
具体的に、充填制御装置82は、検査装置21から所定のPTPシート1(10個のポケット部2の状態、及び、フランジ部3bの状態)に関する検査結果が入力され、かかる検査結果が良品判定結果である場合には、かかるPTPシート1に含まれる10個すべてのポケット部2に対し錠剤5を充填するように錠剤充填装置22を制御する。
【0118】
一方、所定のPTPシート1に関する検査結果が不良判定結果である場合には、かかるPTPシート1に含まれる10個すべてのポケット部2に対し錠剤5を充填しないように錠剤充填装置22を制御する。同時に、不良シート排出機構40に対し不良品信号を出力する。その結果、不良シート排出機構40によって、不良品信号に係るPTPシート1(不良シート)が排出される。
【0119】
次に、検査装置21によって行われるフランジ部検査及びポケット部検査の流れについて説明する。
【0120】
まずフランジ部検査について
図9のフローチャートを参照して説明する。
図9に示すフランジ部検査に係る検査ルーチン(フランジ部検査ルーチン)は、フィルム幅方向に沿って並ぶ1列のポケット列(5個のポケット部2)を含む所定の検査範囲毎に行われる処理である。以下、詳しく説明する。尚、この検査範囲のうちのフランジ部3bに対応する領域が本実施形態における第1検査領域に相当する。
【0121】
図10に示すように、ポケット部2の成形された容器フィルム3のフィルム搬送方向所定位置(本実施形態では、フィルム搬送方向におけるポケット部2の底部2aの中央位置)が、フィルム搬送方向におけるカメラ51(レンズ51bの光軸CL)の真下位置P1に到達すると、少なくともフランジ部3bがカメラ51の視野(撮像範囲)内の第1合焦範囲GW1内に位置した状態となる。
【0122】
このタイミングで、検査制御部52は、検査画像取得処理を実行する(ステップS1)。具体的には、まず上記検査範囲を含む容器フィルム3の所定範囲に対し照明装置50から紫外光を照射する照射処理(照射工程)を実行すると共に、上記検査範囲を含む所定範囲をカメラ51により撮像する第1撮像処理(第1撮像工程)を実行する。
【0123】
尚、
図13に示すように、このタイミングでカメラ51により撮像され取得された透過画像データにおいては、容器フィルム3のフランジ部3bにピント(焦点)が合い、ポケット部2の底部2aはピントがずれた状態となっている。このため、フランジ部3b上に存在する異物K1が明瞭に認識可能となっている一方、実際にはポケット部2の底部2aに存在している異物K2(
図14参照)については、不明瞭で認識できない状態となっている。
【0124】
このような容器フィルム3の透過画像データが画像メモリ53に取り込まれると、該透過画像データを基に、上記検査枠を用いて、1列のポケット列(5個のポケット部2)を含む所定の検査範囲に係る画像データをフランジ部検査に係る検査画像として取得する。
【0125】
尚、検査画像に対し各種加工処理を施す構成としてもよい。例えば照明装置50からカメラ51の撮像範囲全体に対し光を均一に照射することは技術的に限界があることから、位置の相違により生じる光強度(輝度)のばらつきを補正するシェーディング補正を行う構成としてもよい。
【0126】
検査画像が取得されると、検査制御部52は、続くステップS2においてマスク処理を実行する。具体的には、ステップS1にて取得した検査画像上の5個のポケット部2の位置に合わせてそれぞれ上記ポケット枠を設定すると共に、該ポケット枠により特定されたポケット部2に対応する領域に対しマスクをかける処理を行う。
【0127】
尚、本実施形態において、ポケット枠の設定位置は、上記検査枠との相対位置関係により予め定められている。そのため、本実施形態では、ポケット枠の設定位置が検査画像に応じてその都度、位置調整されることはないが、これに限らず、位置ずれの発生等を考慮して、検査画像から得られる情報を基にポケット枠の設定位置を適宜、調整する構成としてもよい。
【0128】
続くステップS3において、検査制御部52は不良領域特定処理を実行する。本実施形態では、まずステップS2においてマスク処理した検査画像の各画素の輝度値が、該画素毎に予め設定された所定の判定基準を満たすか否か(所定の許容範囲内にあるか否か)を判定し、該判定基準から外れた画素を不良領域として特定する。
【0129】
例えば許容範囲の上限値及び下限値をそれぞれ輝度閾値とした二値化処理を行う。これにより、薄肉不良箇所や孔あき不良箇所など光透過率の高い部位が許容範囲の上限値を超える「明部」として検出される。一方、異物K1(
図13参照)が存在する箇所や、ケロイド不良箇所など光透過率の低い部位が許容範囲の下限値を下回る「暗部」として検出される。
【0130】
続くステップS4において、検査制御部52は塊処理を実行する。具体的には、ステップS3にて取得した「暗部」及び「明部」についてそれぞれの連結成分を特定すると共に、不良領域として特定された「暗部」及び「明部」の連結成分の面積値Pの合計値である総不良面積Pxを取得する。
【0131】
そして、ステップS5において、検査制御部52は、ステップS4にて算出した総不良面積Pxが予め設定した判定基準Po以下であるか否かを判定する。つまり、総不良面積Pxが許容範囲内であるか否かを判定することにより、フランジ部3bに関する良否判定を行う。従って、かかるステップS5の良否判定処理(良否判定工程)を実行する機能により、本実施形態における良否判定手段が構成されることとなる。
【0132】
これに限らず、ここで、例えば不良領域として特定された「暗部」や「明部」の連結成分のうち、最大面積のものが許容範囲内にあるか否かを判定する方法や、「暗部」や「明部」の連結成分のばらつき度合い(分布状況)を判定する方法など、他の方法により良否判定を行う構成としてもよい。勿論、その大小に関係なく、不良領域が1箇所でも存在すれば、不良品判定する構成としてもよい。
【0133】
ステップS5において総不良面積Pxが判定基準Po以下であると肯定判定された場合には、ステップS6において、該検査範囲を「良品」と判定し、本検査ルーチンを終了する。
【0134】
一方、ステップS5において否定判定された場合には、ステップS7において、該検査範囲を「不良品」と判定し、本検査ルーチンを終了する。
【0135】
尚、ステップS6の良品判定処理、及び、ステップS7の不良品判定処理において、検査制御部52は、該検査範囲に対応する検査結果を算出結果記憶装置54に記憶すると共に、充填制御装置82に出力する。
【0136】
次にポケット部検査について
図11のフローチャートを参照して説明する。
図11に示すポケット部検査に係る検査ルーチン(ポケット部検査ルーチン)は、上記フランジ部検査ルーチンと同様、フィルム幅方向に沿って並ぶ1列のポケット列(5個のポケット部2)を含む所定の検査範囲毎に行われる処理である。以下、詳しく説明する。尚、この検査範囲のうちの5個のポケット部2の底部2aに対応する領域が本実施形態における第2検査領域に相当する。以下、詳しく説明する。
【0137】
図12に示すように、ポケット部2の成形された容器フィルム3のフィルム搬送方向所定位置(本実施形態では、フィルム搬送方向におけるポケット部2の底部2aの中央位置)が、フィルム搬送方向におけるミラー51dの真下位置P2に到達すると、少なくともポケット部2の底部2aがカメラ51の視野(撮像範囲)内の第2合焦範囲GW2内に位置した状態となる。
【0138】
このタイミングで、検査制御部52は、検査画像取得処理を実行する(ステップS11)。具体的には、まず上記検査範囲を含む容器フィルム3の所定範囲に対し照明装置50から紫外光を照射する照射処理(照射工程)を実行すると共に、上記検査範囲を含む所定範囲(撮像範囲)をカメラ51により撮像する第2撮像処理(第2撮像工程)を実行する。
【0139】
尚、
図14に示すように、このタイミングでカメラ51により撮像され取得された透過画像データにおいては、ポケット部2の底部2aにピント(焦点)が合い、容器フィルム3のフランジ部3bはピントがずれた状態となっている。このため、ポケット部2の底部2aに存在する異物K2が明瞭に認識可能となっている一方、実際にはフランジ部3b上に存在している異物K1については、不明瞭で認識できない状態となっている。
【0140】
このような容器フィルム3の透過画像データが画像メモリ53に取り込まれると、該透過画像データを基に、上記検査枠を用いて、1列のポケット列(5個のポケット部2)を含む所定の検査範囲に係る画像データをポケット部検査に係る検査画像として取得する。
【0141】
尚、上記フランジ部検査ルーチンと同様、検査画像に対し各種加工処理を施す構成としてもよい。例えば光強度(輝度)のばらつきを補正するシェーディング補正を行う構成としてもよい。
【0142】
検査画像が取得されると、検査制御部52は、続くステップS12においてマスク処理を実行する。具体的には、ステップS11にて取得した検査画像上の5個のポケット部2の位置に合わせてそれぞれ上記ポケット枠を設定すると共に、該ポケット枠により特定されたポケット部2以外の領域、すなわちフランジ部3bに対応する領域に対しマスクをかける処理を行う。
【0143】
次に、検査制御部52は、ステップS13において、全ポケット部2のポケット良品フラグの値に「0」を設定する。
【0144】
尚、「ポケット良品フラグ」は、対応するポケット部2の良否判定結果を示すためのものであり、算出結果記憶装置54に設定される。そして、所定のポケット部2が良品判定された場合には、これに対応するポケット良品フラグの値に「1」が設定される。
【0145】
続くステップS14において、検査制御部52は、算出結果記憶装置54に設定されたポケット番号カウンタの値Cに初期値である「1」を設定する。
【0146】
尚、「ポケット番号」とは、1つの検査範囲内における5個のポケット部2それぞれ対応して設定された通し番号であり、ポケット番号カウンタの値C(以下、単に「ポケット番号C」という)によりポケット部2の位置を特定することができる。
【0147】
そして、検査制御部52は、ステップS15において、ポケット番号Cが一検査範囲あたりのポケット数N(本実施形態では「5」)以下であるか否かを判定する。
【0148】
ここで肯定判定された場合にはステップS16へ移行し、検査制御部52は、現在のポケット番号Cのポケット部2に係るポケット検査画像を抽出する処理を実行する。
【0149】
具体的には、ステップS12にてマスク処理された検査画像(マスキング画像データ)における、現在のポケット番号C(例えばC=1)に対応するポケット部2に係るポケット枠内の濃淡画像をポケット検査画像として抽出する。
【0150】
続くステップS17において、検査制御部52は不良領域特定処理を実行する。本実施形態では、まずステップS16において抽出したポケット検査画像の各画素の輝度値が、該画素毎に予め設定された所定の判定基準を満たすか否か(所定の許容範囲内にあるか否か)を判定し、該判定基準から外れた画素を不良領域として特定する。
【0151】
例えば上記フランジ部検査ルーチンと同様、許容範囲の上限値及び下限値をそれぞれ輝度閾値とした二値化処理を行う。これにより、薄肉不良箇所や孔あき不良箇所など光透過率の高い部位が許容範囲の上限値を超える「明部」として検出される。一方、異物K2(
図14参照)が存在する箇所や、ケロイド不良箇所など光透過率の低い部位が許容範囲の下限値を下回る「暗部」として検出される。
【0152】
続くステップS18において、検査制御部52は塊処理を実行する。具体的には、ステップS17にて取得した「暗部」及び「明部」についてそれぞれの連結成分を特定すると共に、不良領域として特定された「暗部」及び「明部」の連結成分の面積値Pの合計値である総不良面積Pxを取得する。
【0153】
そして、ステップS19において、検査制御部52は、ステップS18にて算出した総不良面積Pxが予め設定した判定基準Po以下であるか否かを判定する。つまり、総不良面積Pxが許容範囲内であるか否かを判定することにより、該ポケット部2に関する良否判定を行う。従って、かかるステップS19の良否判定処理(良否判定工程)を実行する機能により、本実施形態における良否判定手段が構成されることとなる。
【0154】
これに限らず、ここで、例えば上記フランジ部検査ルーチンと同様、不良領域として特定された「暗部」や「明部」の連結成分のうち、最大面積のものが許容範囲内にあるか否かを判定する方法や、「暗部」や「明部」の連結成分のばらつき度合い(分布状況)を判定する方法など、他の方法により良否判定を行う構成としてもよい。勿論、その大小に関係なく、不良領域が1箇所でも存在すれば、不良品判定する構成としてもよい。
【0155】
ステップS19において総不良面積Pxが判定基準Po以下であると肯定判定された場合にはステップS20へ移行する。一方、ここで否定判定された場合には、現在のポケット番号Cに対応するポケット部2が不良品であるとみなし、そのままステップS21へ移行する。
【0156】
ステップS20において、検査制御部52は、現在のポケット番号Cに対応するポケット部2が良品であるとみなし、該ポケット番号Cに対応したポケット良品フラグの値に「1」を設定し、ステップS21へ移行する。
【0157】
ステップS21において、検査制御部52は、現在のポケット番号Cに「1」を加えた後、ステップS15へ戻る。
【0158】
ここで、新たに設定したポケット番号Cが未だポケット数N以下である場合には、再度ステップS16へ移行し、上記一連の処理を繰り返し実行する。
【0159】
一方、新たに設定したポケット番号Cがポケット数Nを超えたと判定された場合には、すべてのポケット部2に関する良否判定処理が終了したとみなし、ステップS22へ移行する。
【0160】
ステップS22において、検査制御部52は、検査範囲内の全ポケット部2のポケット良品フラグの値が「1」であるか否かを判定する。
【0161】
ここで肯定判定された場合、すなわち検査範囲内のすべてのポケット部2が「良品」で、「不良品」判定されたポケット部2が1つも存在しない場合には、ステップS23において、該検査範囲を「良品」と判定し、本検査ルーチンを終了する。
【0162】
一方、ステップS22において否定判定された場合、すなわち検査範囲内に「不良品」判定されたポケット部2が1つでも存在する場合には、ステップS24において、該検査範囲を「不良品」と判定し、本検査ルーチンを終了する。
【0163】
尚、ステップS23の良品判定処理、及び、ステップS24の不良品判定処理において、検査制御部52は、該検査範囲に対応する検査結果を算出結果記憶装置54に記憶すると共に、充填制御装置82に出力する。
【0164】
以上詳述したように、本実施形態に係るカメラ51は、像面湾曲が補正されるレンズ51bと、容器フィルム3から入射する透過光をレンズ51bへ向けて反射可能なミラー51dとを備え、ミラー51dを介さずピントの合う第1合焦範囲GW1に加え、これよりも低い位置に、ミラー51dを介してピントの合う第2合焦範囲GW2が設定されている。
【0165】
そして、ミラー51dを介さず直接撮像してもピントが合う容器フィルム3のフランジ部3bについては、該フランジ部3bが第1合焦範囲GW1内に位置する第1のタイミング(本実施形態では、フィルム搬送方向におけるポケット部2の底部2aの中央位置が、フィルム搬送方向におけるカメラ51の真下位置P1を通過するタイミング)で、該フランジ部3bを含む検査範囲を撮像する第1撮像処理を実行する。
【0166】
一方、ミラー51dを介してピントが合う(ミラー51dを介さない直接の撮像ではピントが合わない)ポケット部2の底部2aについては、該ポケット部2の底部2aが第2合焦範囲GW2内に位置する第2のタイミング(本実施形態では、フィルム搬送方向におけるポケット部2の底部2aの中央位置が、フィルム搬送方向におけるミラー51dの真下位置P2を通過するタイミング)で、該ポケット部2の底部2aを含む検査範囲を撮像する第2撮像処理を実行する。
【0167】
そして、第1撮像処理により取得した第1検査画像(フランジ部検査用画像)を基にフランジ部検査を実行し良否判定を行うと共に、第2撮像処理により取得した第2検査画像(ポケット部検査用画像)を基にポケット部検査を実行し良否判定を行う。
【0168】
結果として、1台のカメラ51で、複数のミラーを用いることなく、1枚のミラー51dを用いるだけで、容器フィルム3における高さの異なる複数の検査領域(フランジ部3b及びポケット部2の底部2a)について、それぞれピントの合った画像データ(フランジ部検査用画像、ポケット部検査用画像)を取得することができ、検査精度の向上を図ることができる。
【0169】
ひいては、検査装置21の構造やピント調整作業の簡素化を図ると共に、安価に製造でき、汎用性を高めることができる。
【0170】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0171】
(a)検査対象とする包装容器の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ブリスターパックの一例として、錠剤5等の内容物を収容するPTPシート1が例示されている。
【0172】
これに限らず、例えば容器フィルムからカバーフィルムを引き剥がして内容物を取出すピールオープン式のブリスターパック(食料品等を収容するポーションパックなど)や、電子部品等の内容物を収容し搬送するブリスターパック(キャリアテープなど)、容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されず台紙等が組み付けられるタイプのブリスターパックなど、各種ブリスターパックを検査対象とすることができる。
【0173】
(b)容器フィルムにおけるポケット部の形状、大きさ、深さ、個数、配列など、ポケット部の構成は上記実施形態に限定されるものではなく、内容物の種別や形状、用途などに応じて適宜選択することができる。例えばポケット部2の底部2aが平面視で略三角形状、略楕円形状、略四角形状、略菱形状等であってもよい。
【0174】
例えば
図15に示すようなブリスターパック100を被検査物とすることもできる。ブリスターパック100は、ポケット部101を有している。ポケット部101は、平面視矩形状の底部101aと、該底部101aの周囲に連接した矩形枠状の側壁部101bとから構成されている。
【0175】
(c)容器フィルムやカバーフィルムの材質や層構造等は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、容器フィルム3がPPやPVC等の無色透明な熱可塑性樹脂材料により形成され、透光性を有している。
【0176】
これに限らず、例えば容器フィルム3が無色半透明の樹脂材料や、有色透明又は有色半透明の樹脂材料は勿論のこと、不透明材料(不透明樹脂材料や金属材料など)により形成された構成としてもよい。金属材料としては、例えばアルミラミネートフィルムなど、アルミニウムを主材料としたものなどが一例に挙げられる。
【0177】
尚、不透明材料により形成された容器フィルム3の検査に関しては、上記実施形態のように透過光を利用した透過光検査に代えて又は加えて、後述する反射光を利用した反射光検査を実施してもよい。
【0178】
(d)上記実施形態では、錠剤5等の内容物の充填まで行うPTP包装機(ブリスター包装機)11内に、検査装置21を配置した構成となっている。これに限らず、例えば容器フィルム3の製造と、内容物の包装とを別々に行う製造ラインなどにおいては、容器フィルム3の製造装置に検査装置21を備えた構成としてもよい。また、容器フィルム3の製造装置とは別にオフラインで、ポケット部2の成形された容器フィルム3を検査する検査装置を備えた構成としてもよい。また、かかる場合に、容器フィルム3を搬送可能な搬送手段を検査装置21に備えた構成としてもよい。
【0179】
(e)PTP包装機11における検査装置21の配置位置は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、容器フィルム3が水平搬送される位置に検査装置21が配置された構成となっているが、これに限らず、例えば容器フィルム3が上下方向に搬送される位置や、容器フィルム3が斜めに搬送される位置に検査装置21が配置された構成としてもよい。
【0180】
(f)照射手段と撮像手段の配置構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、他の異なる構成を採用してもよい。
【0181】
(f-1)例えば上記実施形態では、照明装置50が容器フィルム3の下側(ポケット部2の突出側)に配置され、カメラ51が容器フィルム3の上側(ポケット部2の開口側)に配置された構成となっている。
【0182】
これに限らず、照明装置50とカメラ51の位置関係を上下逆にして、容器フィルム3の上側(ポケット部2の開口側)から光を照射し、容器フィルム3の下側(ポケット部2の突出側)から透過光を撮像する構成としてもよい。
【0183】
この際、下側に位置するポケット部2の底部2aの高さ位置に合わせてカメラ51の第1合焦範囲GW1を設定し、上側に位置する容器フィルム3のフランジ3bの高さ位置に合わせてカメラ51の第2合焦範囲GW2を設定した構成としてもよい。つまり、ポケット部2の底部2aを第1検査領域とし、容器フィルム3のフランジ3bを第2検査領域としてもよい。
【0184】
(f-2)照明装置50が容器フィルム3の下側(ポケット部2の突出側)に配置され、カメラ51が容器フィルム3の上側(ポケット部2の開口側)に配置された上記実施形態に係る配置構成のまま、ポケット部2の底部2aの高さ位置に合わせて第1合焦範囲GW1を設定すると共に、上記実施形態よりも上記傾き角θ2の値を大きくして(θ2>θ1)、第1合焦範囲GW1よりも上方位置にある第2合焦範囲GW2内に容器フィルム3のフランジ3bが位置するタイミングで第2撮像処理を行う構成としてもよい。
【0185】
但し、ミラー51dを介してピントの合う光路L2の物体側区間が、容器フィルム3のフランジ3bの法線方向(Z軸方向)や、ポケット部2の底部2aの法線方向(Z軸方向)と平行する光路を通るタイミングで撮像が行われることが好ましいため、上記実施形態に係る構成の方がより好ましい。つまり、第2撮像処理を実行するタイミングは、フィルム搬送方向におけるミラー51dの位置と同一位置に、ポケット部2の底部2aや容器フィルム3のフランジ3bが位置するタイミングであることが好ましい。
【0186】
(f-3)水平搬送される容器フィルム3の表裏を反転させ、容器フィルム3の下側に配置された照明装置50からポケット部2の開口側に光を照射し、容器フィルム3の上側に配置されたカメラ51によって、ポケット部2の突出側に透過した光を撮像する構成としてもよい。
【0187】
この際、上側に位置するポケット部2の底部2aの高さ位置に合わせて第1合焦範囲GW1を設定し、下側に位置する容器フィルム3のフランジ3bの高さ位置に合わせて第2合焦範囲GW2を設定した構成としてもよい。
【0188】
又は、容器フィルム3のフランジ3bの高さ位置に合わせて第1合焦範囲GW1を設定すると共に、上記実施形態よりも上記傾き角θ2の値を大きくして(θ2>θ1)、第1合焦範囲GW1よりも上方位置にある第2合焦範囲GW2内にポケット部2の底部2aが位置するタイミングで第2撮像処理を行う構成としてもよい。
【0189】
(f-4)例えば不透明材料により形成された容器フィルム3の検査においては、照射手段及び撮像手段の両者を、ポケット部2の突出側又は開口側の一方側に配置し、照射手段から照射され容器フィルム3にて反射した反射光を撮像する構成としてもよい。
【0190】
反射光を利用した反射光検査を行う場合においても、上記実施形態に係るカメラ51を用いることにより、容器フィルム3における高さの異なる複数の検査領域について、それぞれピントの合った画像データを取得することができる。
【0191】
(g)被検査物の検査領域は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、容器フィルム3のフランジ3bを第1検査領域とし、ポケット部2の底部2aを第2検査領域として、容器フィルム3の良否判定を行う構成となっている。
【0192】
これに限らず、ポケット部2の底部2aを第1検査領域とし、ポケット部2の側壁部2bを第2検査領域として、容器フィルム3の良否判定を行う構成としてもよい。
【0193】
この際、第1検査領域としてのポケット部2の底部2aの高さ位置に合わせて第1合焦範囲GW1を設定すると共に、上記実施形態よりも上記傾き角θ2の値を大きくして(θ2>θ1)、第1合焦範囲GW1よりも上方位置にある第2合焦範囲GW2内に、第2検査領域としてのポケット部2の側壁部2bが位置するタイミングで第2撮像処理を行う構成としてもよい。
【0194】
但し、ミラー51dを介してピントの合う光路L2の物体側区間が、ポケット部2の側壁部2bの内面の法線方向と平行する光路を通るタイミングで第2撮像処理が行われることが好ましい。
【0195】
(h)撮像手段に係る構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、像面湾曲が補正される所定の光学系として、単一のレンズ51bを採用しているが、これに限らず、複数の光学部材から構成されたレンズユニット等を採用してもよい。
【0196】
また、ミラーに係る構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態に係るミラー51dは、レンズ51bの画角の端を通る光路と交わる位置に配置されている。これに限らず、ミラー51dは、少なくともレンズ51bの画角の範囲内を通る光路と交わる位置、かつ、レンズ51bの光軸CLと交わらない位置に配置されていればよい。つまり、レンズ51bの画角2θが2×θ1より大きく設定された構成としてもよい(2θ>2×θ1)。
【0197】
(i)上記実施形態では、特に言及していないが、ミラー51dの向き及び/又は位置(高さ位置等)を調整可能なミラー調整手段としてのミラー調整機構を備えた構成としてもよい。
【0198】
例えば矩形平板状をなすミラー51dの4つの各コーナー部を個別に上下動可能なアクチュエータを備えた構成としてもよい。また、所定の回動軸を中心にミラー51dを回動させることにより傾き調整を行う機構を設けると共に、該機構を上下動させることにより高さ調整を行う機構を設けた構成としてもよい。勿論、上下方向又は左右方向へ移動させるだけの機構や、傾き調整のみを行う機構を備えた構成としてもよい。
【0199】
(j)カメラ51が、ミラー51dに加え、第2のミラーを備えた構成としてもよい。例えばカメラ51の光軸CLの位置よりもフィルム搬送方向下流側にミラー51dに備え、フィルム搬送方向上流側に第2のミラーを配置した構成としてもよい。
【0200】
そして、容器フィルム3のフランジ3bの高さ位置に合わせて第1合焦範囲GW1を設定し、ポケット部2の底部2aの高さ位置に合わせて第2合焦範囲GW2を設定し、第3検査領域としてポケット部2の側壁部2bの高さ位置に合わせて第3合焦範囲を設定してもよい。さらに、第2のミラーを介して合焦可能なカメラ51の第3合焦範囲内にポケット部2の側壁部2bが位置する第3のタイミングで、容器フィルム3を撮像する第3撮像処理を実行可能に構成されている。
【0201】
(k)照射手段に係る構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態において、照明装置50は、紫外光を照射するように構成されているが、容器フィルム3の材質や色などに応じて、照明装置50から照射される光の波長を適宜変更してもよい。勿論、ここでバンドパスフィルタ51aを省略し、照明装置50から照射され容器フィルム3を透過した光が直接レンズ51bに入射する構成としてもよい。
【0202】
例えば容器フィルム3がアルミニウム等からなる不透明材料によって構成されている場合には、照明装置50から赤外光を照射することとしてもよい。また、容器フィルム3が色の付いた半透明材料によって構成される場合には、照明装置50から白色光などの可視光を照射してもよい。
【0203】
(l)上記実施形態では、第1撮像処理により取得した第1検査画像(フランジ部検査用画像)を基にフランジ部検査を実行し、第2撮像処理により取得した第2検査画像(ポケット部検査用画像)を基にポケット部検査を実行する構成となっている。
【0204】
これに限らず、第1撮像処理により取得した第1検査画像と、第2撮像処理により取得した第2検査画像とを基に、所定の検査範囲に係る画像データを生成し、該画像データを基に、フランジ部検査及びポケット部検査をそれぞれ実行する構成としてもよい。
【0205】
(m)上記実施形態では、容器フィルム3のフィルム幅方向に対し5つのポケット部2を含み、かつ、フィルム搬送方向に対し1つのポケット部2を含む範囲、すなわち1列のポケット列を含む範囲が一検査ルーチンに係る撮像範囲や検査範囲に設定されている。
【0206】
これに限らず、複数列(例えば4列)のポケット列を含む範囲を一検査ルーチンに係る撮像範囲や検査範囲に設定してもよい。また、1枚のPTPシート1に対応する範囲(10個のポケット部2を含む範囲)を一検査ルーチンに係る撮像範囲や検査範囲に設定してもよい。
【0207】
(n)照射手段に係る構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、容器フィルム3の透過率がおよそ30±10パーセントとなる波長253±20nmの紫外光が検査に用いられる構成となっているが、これとは異なる波長の光を用いて検査を行う構成としてもよい。例えば可視光であってもよい。また、反射光を撮像して検査を行う構成においては、赤外光等を利用してもよい。
【0208】
(o)検査方法は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、容器フィルム3の良否判定を行う際に、検査画像を二値化して不良領域を特定するように構成されている。
【0209】
これに限らず、例えばポケット部2の底部2aに係る検査画像と、予め取得した良品のポケット部2の底部2aに係る検査画像とをパターンマッチング等の手法により比較し、その一致度により良否判定を行う構成としてもよい。
【0210】
また、ニューラルネットワークを学習して構築したAIモデルを用いて、容器フィルム3の良否判定を行う構成としてもよい。例えば容器フィルム3(ポケット部2やフランジ部3b)を撮像して得られた検査画像と、その検査画像をAIモデルにより再構成して得た再構成検査画像とを比較して良否判定を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0211】
1…PTPシート、2…ポケット部、2a…底部、3…容器フィルム、3b…フランジ部、4…カバーフィルム、5…錠剤、11…PTP包装機、15…加熱装置、16…ポケット部成形装置、21…検査装置、50…照明装置、51…カメラ、51a…撮像素子、51b…レンズ、51d…ミラー、52…検査制御部。
【要約】
【課題】検査精度の向上や装置の簡素化等を図ることのできる検査装置、ブリスター包装機及びブリスターパックの製造方法を提供する。
【解決手段】検査装置21は、搬送される容器フィルム3に光を照射する照明装置50と、その透過光を撮像するカメラ51とを備える。カメラ51は、像面湾曲が補正されるレンズ51bと、これを介して撮像する撮像素子51aと、入射する光をレンズ51bへ向けて反射可能なミラー51dとを有している。そして、ミラー51dを介さずピントが合う容器フィルム3のフランジ部3bが第1合焦範囲内に位置するタイミングで第1撮像処理を実行する。一方、ミラー51dを介してピントが合うポケット部2の底部が第2合焦範囲GW2内に位置するタイミングで第2撮像処理を実行する。そして、第1撮像処理により取得した検査画像を基にフランジ部3bを検査し、第2撮像処理により取得した検査画像を基にポケット部2を検査する。
【選択図】
図6