(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】メカノケミカル的に改質された成分を含むエンジニアードコンクリートバインダ組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20220502BHJP
C04B 7/345 20060101ALI20220502BHJP
C04B 14/06 20060101ALI20220502BHJP
C04B 14/36 20060101ALI20220502BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20220502BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20220502BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B7/345
C04B14/06 Z
C04B14/36
C04B18/08 Z
C04B18/14 A
C04B22/14 A
(21)【出願番号】P 2021519010
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 IB2018056628
(87)【国際公開番号】W WO2019239203
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】201831022452
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520494471
【氏名又は名称】サロード グリーンバック エルエルピー
【氏名又は名称原語表記】SAROD GREENBACK LLP
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】バウリー,ビノード クマール
(72)【発明者】
【氏名】バウリー,サロージ
(72)【発明者】
【氏名】バウリー,マルヴィカ
(72)【発明者】
【氏名】カダバ,ラグナンダン
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-510442(JP,A)
【文献】特開昭56-084349(JP,A)
【文献】特開平11-310442(JP,A)
【文献】特開平09-175846(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1683090(KR,B1)
【文献】欧州特許出願公開第00254501(EP,A1)
【文献】特開昭58-026055(JP,A)
【文献】特表平04-506201(JP,A)
【文献】米国特許第05352288(US,A)
【文献】特表2012-505150(JP,A)
【文献】米国特許第07101430(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第104402270(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02, C04B40/00-40/06, C04B103/00-111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートバインダ組成物であって、
任意選択のポゾラン材料とともに水硬性材料を含む第1のセットのセメント系材料と、
ポゾラン材料およびポゾラン活性剤材料を含む第2のセットのセメント系材料と
を含み、前記第2のセットのセメント系材料は、前記第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(D1)の1/3以下のモード平均粒径(D2)を有
し、
前記第1のセットのセメント系材料が、3000~4000cm
2
/gの範囲のブレーン粉末度、および70~80μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有し、
前記第2のセットのセメント系材料が、10000~15000cm
2
/gの範囲のブレーン粉末度、および20~30μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有し、
前記ポゾラン活性剤材料が、硫酸ナトリウム、スラグ砂、石灰、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記第2のセットのセメント系材料が、70~97重量%のポゾラン材料および3~30重量%のポゾラン活性剤材料を含み、
前記ポゾラン材料が、前記コンクリートバインダ組成物の50重量%超の量で存在する、
コンクリートバインダ組成物。
【請求項2】
前記ポゾラン材料が、
前記コンクリートバインダ組成物の
最大80重量%
の量で存在する、請求項1に記載の
コンクリートバインダ組成物。
【請求項3】
前記ポゾラン材料が、フライアッシュ、高炉スラグ、火山灰材料、石英材料、ポンドアッシュ、化学的改質フライアッシュ、化学的改質高炉スラグ、化学的改質石英、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の
コンクリートバインダ組成物。
【請求項4】
前記水硬性材料が、ポルトランドセメント、改質ポルトランドセメント、またはメーソンリーセメント、高炉スラグ微粉末、水硬性水和石灰、白色セメント、アルミン酸カルシウムセメント、ケイ酸塩セメント、リン酸塩セメント、高アルミナセメント、オキシ塩化マグネシウムセメント、油井セメント、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の
コンクリートバインダ組成物。
【請求項5】
マイクロシリカ、ナノシリカ、メタカオリン、カーボンナノチューブ(CNT)ベースの添加剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される添加剤をさらに含む、請求項1に記載の
コンクリートバインダ組成物。
【請求項6】
前記第2のセットのセメント系材料が、前記第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(Dl)の1/3~1/5の範囲のモード平均粒径(D2)を有する、請求項1に記載の
コンクリートバインダ組成物。
【請求項7】
前記ポゾラン活性剤材料が、ポゾラン材料の外面上の被覆として提供される、請求項1に記載の
コンクリートバインダ組成物。
【請求項8】
前記ポゾラン活性剤材料のモード平均粒径が、前記ポゾラン材料のモード平均粒径よりも小さい、請求項
1に記載の
コンクリートバインダ組成物。
【請求項9】
コンクリートバインダ組成物を調製する方法であって、
第1の量の第1のセットのセメント系材料を第2の量の第2のセットのセメント系材料と混合して、
コンクリートバインダ組成物を得ることを含み、
前記第1のセットのセメント系材料は、任意選択のポゾラン材料とともに水硬性材料を含み、
前記第2のセットのセメント系材料は、ポゾラン材料およびポゾラン活性剤材料を含み、該第2のセットのセメント系材料は、前記第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(D1)の1/3以下のモード平均粒径(D2)を有
し、
前記第1のセットのセメント系材料が、3000~4000cm
2
/gの範囲のブレーン粉末度、および70~80μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有し、
前記第2のセットのセメント系材料が、10000~15000cm
2
/gの範囲のブレーン粉末度、および20~30μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有し、
前記ポゾラン活性剤材料が、硫酸ナトリウム、スラグ砂、石灰、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記第2のセットのセメント系材料が、70~97重量%のポゾラン材料および3~30重量%のポゾラン活性剤材料を含み、
前記ポゾラン材料が、前記コンクリートバインダ組成物の50重量%超の量で存在する、
方法。
【請求項10】
ポゾラン材料が、
コンクリートバインダ組成物の
最大80重量%
の量で存在する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポゾラン材料が、フライアッシュ、高炉スラグ、火山灰材料、石英材料、ポンドアッシュ、化学的改質フライアッシュ、化学的改質高炉スラグ、化学的改質石英、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記水硬性材料が、ポルトランドセメント、改質ポルトランドセメント、またはメーソンリーセメント、高炉スラグ微粉末、水硬性水和石灰、白色セメント、アルミン酸カルシウムセメント、ケイ酸塩セメント、リン酸塩セメント、高アルミナセメント、オキシ塩化マグネシウムセメント、油井セメント、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
コンクリートバインダ組成物を得るために、マイクロシリカ、ナノシリカ、メタカオリン、カーボンナノチューブ(CNT)ベースの添加剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される添加剤を添加することをさらに含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のセットのセメント系材料が、前記第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(D1)の1/3~1/5の範囲のモード平均粒径(D2)を有する、請求項
9に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のセットのセメント系材料が、
・ポゾラン材料とポゾラン活性剤材料を混合して混合物を得ること、および
・そのようにして得られた混合物を粉砕して、第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(D1)の1/3以下のモード平均粒径(D2)を有する第2のセットのセメント系材料を得ること
によって得られる、請求項
9に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のセットのセメント系材料が、
・ポゾラン材料とポゾラン活性剤材料の両方が第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(D1)の1/3以下のモード平均粒径を有する、ポゾラン材料とポゾラン活性剤材料を混合すること
によって得られる、請求項
9に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のセットのセメント系材料が、
・ポゾラン材料の外面にポゾラン活性剤材料の被覆を提供すること
によって得られる、請求項
9に記載の方法:
【請求項18】
前記ポゾラン活性剤材料のモード平均粒径が、前記ポゾラン材料のモード平均粒径より小さい、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトで高密度のエンジニアードコンクリートバインダ組成物(engineered concrete binder composition)およびその製造方法に関する。より具体的には、エンジニアードコンクリートバインダ組成物は、少なくとも1つのメカノケミカル的に改質された成分(mechano-chemically modified component)を含む。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、世界中で最も一般的かつ大量にされている建設資材の1つである。これは主に、セメントと共に粗骨材および細骨材を含む複合材料である。水を加えてスラリーを得て、このコンクリートスラリーを様々な建設目的に使用する。コンクリートの用途には、道路や舗装の敷設、建物、高層ビル、ダム、立体駐車場などの建設が含まれるが、これらに限定されない。
【0003】
しかしながら、コンクリートの使用は、セメントの生産が温室効果ガス排出の大きな原因であるため、環境に好ましくないプロセスである。そのため、現在、セメントの代わりに他のいくつかの成分が使用されており、コンクリートの特性を損なうことなく、より環境に優しいコンクリート混合物を得る努力がなされている。
【0004】
セメントの代替として使用される化合物の中には、ポゾラン材料が含まれる。ポゾランには、本質的に珪酸またはアルミニウムを含む幅広いクラスの化合物が含まれる。ポゾラン材料のいくつかの例には、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、高炉水砕スラグ、メタカオリンなどが含まれる。これらの材料はそれ自体ではコンクリートに何の特性も与えないが、ポゾラン材料が非常に細かく粉砕されている場合、コンクリート成分(水酸化カルシウムおよび水)と反応してセメント特性を高めることができる。
【0005】
最も望まれるコンクリートの特性には、時間経過による劣化に耐えるコンクリートの能力である耐久性;取り扱い、凝結および仕上げの容易さである作業性;ならびに高い圧力および重量に耐える能力である強度が含まれる。コンクリートの強度は、その用途を決定する上で非常に重要な特性である。たとえば、コンクリートの圧縮強度要件は、住宅用コンクリートの2500psi(17MPa)から商業用構造物の4000psi(28MPa)以上までさまざまである。特定の適用では、10,000psi(70MPa)までおよびそれを超える高い強度が指定されている。
【0006】
コンクリートの強度特性は、コンクリートが凝結した後に数日かけて硬化するにつれて発達する。コンクリートの強度が発達する段階では、コンクリートは必要な全圧要件に耐えることができないため自由に使用することはできない。これは、建設工事が遅くなり、建設物の使用が遅れるため、問題となる。
【0007】
特許文献1は、水和の初期段階にセメント/水ペーストの重量の約40%~約60%に相当する量のエトリンガイトを生成する水和性セメント粉末を提供し、前記粉末は、重量で、約18%~約65%の高アルミナセメント、約16%~約35%の硫酸カルシウム、0%~約65%のポルトランドセメント、および0%~約8.5%の外来石灰を含み、前記ポルトランドセメントおよび外来石灰は、セメント粉末の水和中における約3.5%~約8.5%の酸化カルシウムの代替的または補完的な供給源である。
【0008】
特許文献2は、酸化カルシウム材料、ポゾラン材料、およびアルカリ金属触媒を含むコンクリート組成物を提供して、低コストで高圧縮強度のセメント混合物を得る。
【0009】
特許文献3は、非常に早期に凝結する超高強度セメントを形成する方法を提供する。この方法は、SiO2、Al2O3、CaO、Fe2O3、およびSO3を含む原材料の混合物を形成することを含む。この混合物を、高濃度のC4A3Sを含むクリンカーを生成するのに十分な時間、1,000℃~1200℃の間の高温に加熱する。
【0010】
早期凝結および高初期強度のコンクリート混合物を得るための努力において、出願人は、特許文献4において、クリンカーファクターが全体的に低減されたたコンクリートバインダ組成物を以前に提案しており、そのコンクリートバインダ組成物は、10~60重量%の比率の少なくとも1つの一次バインダと、40~90重量%の比率の少なくとも1つの二次バインダとを含み、一次バインダは自発的水和特性を有する一次材料群から選択され、二次バインダは誘導水和特性を有する二次材料群から選択され、一次材料群および二次材料群がマクロ-ミクロ-ナノ粒子格子配列を形成して、最終コンクリート材料の強度特性および耐久性指数を増大させる。特許文献4の全内容が本明細書に組み込まれる。出願人はさらに、インド特許出願第201731027025号において、少なくとも1つの水硬性材料、少なくとも1つのポゾラン材料、および任意選択で少なくとも1つの添加剤を含み、水硬性材料の量(W1)は組成物の20~60重量%の範囲であり、ポゾラン材料の量(W2)は組成物の40~90重量%の範囲であり、少なくとも1つの添加剤の量(W3)は組成物の0~15重量%の範囲であり、水硬性材料およびポゾラン材料のそれぞれは、第1の画分、第2の画分、および第3の画分を含み、第1の画分は、3000~4000cm2/gの範囲のブレーン粉末度および70~80μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有し;第2の画分は、10000~15000cm2/gの範囲のブレーン粉末度および20~30μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有し;第3の画分は40000~50000cm2/gの範囲のブレーン粉末度および3~8μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有する、エンジニアードコンクリートバインダ組成物を提案した。インド特許出願第201731027025号の全内容が本明細書に組み込まれる。
【0011】
早期凝結で高初期強度のコンクリート混合物を得るための努力がなされてきたが、それらは、製造のための追加のステップおよびいくつかの他の成分の追加を伴うことが多いため、不十分であった。それによって、これらの組成物が高価になり、また特にドライパッケージドコンクリートが必要な場合に使用が困難になる。したがって、使用に適しかつ安価である、簡易化された早期凝結で高初期強度のコンクリート混合物を得る必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第4,350,533号
【文献】米国特許第5,352,288号
【文献】米国特許第4,957,556号
【文献】インド特許第292690号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
当技術分野における前述の必要性および欠点を考慮して、一態様では、本発明は、高い初期強度特性を有するコンパクトで高密度の建設材料を調製する組成物およびプロセスを提供する。
【0014】
本発明の一態様によれば、任意選択でポゾラン材料と共に、水硬性材料を含む第1のセットのセメント系材料(cementitious material)と、ポゾラン材料およびポゾラン活性剤材料を含む第2のセットのセメント系材料とを含み、第2のセットのセメント系材料は、第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(D1)の3分の1(1/3)以下のモード平均粒径(D2)を有する、エンジニアードコンクリートバインダ組成物が提供される。
【0015】
さらに、本発明の一態様によれば、エンジニアードコンクリートバインダ組成物は、3000~4000cm2/gの範囲のブレーン粉末度および70~80μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有する第1のセットのセメント系材料と、10000~15000cm2/gの範囲のブレーン粉末度および20~30μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有する第2のセットのセメント系材料とを含む。
【0016】
本発明の一態様によれば、エンジニアードコンクリートバインダ組成物は、70~97重量%のポゾラン材料および3~30重量%のポゾラン活性剤材料を含む第2のセットのセメント系材料を含む。
【0017】
さらに、本発明の一態様では、エンジニアードコンクリートバインダ組成物を調製するためのプロセスも提供され、そのプロセスは、第1の量の第1のセットのセメント系材料を第2の量の第2のセットのセメント系材料と混合して、エンジニアードコンクリートバインダ組成物を得ることを含み、第1のセットのセメント系材料は、任意選択でポゾラン材料と共に、水硬性材料を含み、第2のセットのセメント系材料は、ポゾラン材料およびポゾラン活性剤材料を含み、第2のセットのセメント系材料は、第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(Dl)の1/3以下のモード平均粒径(D2)を有する。
【0018】
本発明のエンジニアードコンクリートバインダ組成物およびその調製方法は、様々なコンクリート業界標準で要求される機械的特性、化学的特性、凝結時間特性、初期強度特性のすべて、ならびに製造コストを満たす。したがって、本発明は、改善された強度および凝結特性を提供すると同時に、コンクリート産業における通常のポルトランドセメントの代わりにポゾラン材料の最大利用を提供する。
【0019】
これは、本開示を特徴付ける新規性の様々な特徴に加えて本発明の他の態様と共に、本明細書に添付される特許請求の範囲において特に指摘され、本発明の一部を形成する。本開示、その操作上の利点、およびその使用によって達成される特定の目的をよりよく理解するために、本発明の例示的な実施形態を説明する付随の説明事項を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
例示の目的で本明細書に詳細に記載されている例示的な実施形態は多くの変化を受ける。しかしながら、本発明は、コンパクトで高密度の建設材料を製造する方法に限定されないことを強調すべきである。状況が示唆しまたは好都合にし得る場合は、同等物の様々な省略および置換が企図されることが理解されるが、これらは、本発明の精神または範囲から逸脱することなくその適用または実施をカバーすることが意図される。
【0021】
特に明記しない限り、明細書および特許請求の範囲で使用される用語は、インフラ建設およびセメント/コンクリート産業の分野で一般的に使用される意味を有する。具体的には、次の用語は以下の意味を有する。
【0022】
本明細書における「a」および「an」という用語は、数量の制限を意味するのではなく、むしろ言及されるアイテムの少なくとも1つの存在を示す。
【0023】
「有する」、「含む」、「含まれる」という用語、およびそれらの変形は、構成要素の存在を意味する。
【0024】
「機械的改質粒子」という用語は、本明細書では、所望の力およびエネルギーを加えることによって、予め必要な粒度(prerequisite particle size)に機械的に改質された材料の粒子を意味すると理解される。
【0025】
「粒度調整プロセス(gradation process)」という用語は、本明細書では、選択された建設原材料の物理的粒度調整のプロセスを意味すると理解される。具体的には、本発明では、そのような「粒度調整プロセス」は、最小細骨材画分を生成するように適合させる。
【0026】
「格子空隙充填材(lattice void filler)」という用語は、本明細書では、粒子が、建設材料の混合物中の格子空隙(ボイド)を埋めることができる充填材(フィラー)として機能することを意味すると理解される。
【0027】
コンクリートの「強度」または「圧縮強度」という用語は、建物やその他の構造物を設計する際にエンジニアが使用する最も一般的な性能指標である。圧縮強度は、圧縮試験機で円筒形のコンクリート試験片を破壊することによって測定される。圧縮強度は、破壊荷重を荷重に抵抗する断面積で割って計算され、米国慣用単位のポンド力/平方インチ(psi)またはSI単位のメガパスカル(MPa)の単位で報告される。
【0028】
本明細書において以下で言及されるポゾラン材料という用語は、当技術分野で理解されるように、水の存在下で結合する能力を有する材料を意味することに留意されたい。
【0029】
本明細書で提供されるモード平均粒径(mode average particle diameter)は、PSD分析から得られる粒径頻度分布曲線のピークであると理解される。簡単に言えば、モードは粒径頻度分布曲線に見られる最も高いピークである。モードは、粒径頻度分布曲線で最も一般的に見られる粒子径(または粒子径範囲)を表す。
【0030】
最小細骨材のモード平均粒径は、本明細書では、建設原材料中に存在する最小微粒子のモード平均粒径を意味する。したがって、最小細骨材のモード平均粒径は、格子空隙充填材が建設原材料の最小粒子であるという明確な考えを提供する。
【0031】
さらに、粒度分布(PSD)分析は、本明細書では、所定の建設原材料中に存在する様々な粒度範囲の比率/割合についての見解の数学的表現を意味する。一般に、体積、面積、長さ、および量は、建設原材料中に存在する粒子量を決定するための標準寸法として使用される。ただし、建設原材料サンプルの体積は、所定の建設原材料サンプル中に存在する様々な粒度範囲の比率を見つける最も簡単な寸法および/または方法と考えられる。
【0032】
ポゾラン材料は、セメント画分の代わりにコンクリート混合物の一部として添加される。これらの材料はセメントのような結合特性を有していないが、非常に細かいレベルに粉砕されると、ポゾランはコンクリート中の水酸化カルシウムおよび水と反応し始める。しかしながら、この反応は非常に遅いプロセスであり、コンクリート凝結の後期でのみ発生が見られる。これは、粒子のサイズが比較的大きく、水硬性材料の一次水和によって放出される利用可能なCa(OH)2相の利用可能性が低いせいで、ポゾラン材料の大部分がセメントの初期凝結段階で不活性状態のままであることを意味する。したがって、ポゾラン材料の特性が使用されないままであるため、コンクリート混合物に使用されるセメントの割合も増加する。
【0033】
本発明は、コンクリート混合物のポゾラン成分の特性を最もよく利用するために、コンクリートのメカノケミカル改質(mechano-chemical modification)を採用することによって、この問題に対する解決策を提供する。本発明に開示される組成物およびプロセスは、より少ない量のセメントを使用することによってコンクリートバインダ混合物の初期強度特性を高めるのを助け、それにより、費用効果が高く、環境に優しく、さらにメカノケミカル改質されていないコンクリートと比較して優れた特性を有するという利点を有する。
【0034】
本発明は、ポゾラン成分が粒度調整プロセスを通して特定の粒度で得られるような、水硬性材料成分、ポゾラン成分およびポゾラン活性剤を含む特定組成を有する組成物を提示する。
【0035】
本発明の実施形態では、任意選択でポゾラン材料と共に、水硬性材料を含む第1のセットのセメント系材料と、ポゾラン材料およびポゾラン活性剤材料を含む第2のセットのセメント系材料とを含み、第2のセットのセメント系材料は、第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(D1)の1/3以下のモード平均粒径(D2)を有する、エンジニアードコンクリートバインダ組成物が提供される。
【0036】
さらに、本発明の別の実施形態では、エンジニアードコンクリートバインダ組成物は、3000~4000cm2/gの範囲のブレーン粉末度および70~80μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有する第1のセットのセメント系材料を含む。
【0037】
一実施形態では、エンジニアードコンクリートバインダ組成物は、3000~3500cm2/g、3500~4000cm2/g、3000~3200cm2/g、3200~3400cm2/g、3200~3800cm2/g、または3800~4000cm2/gのうちの少なくとも1つの範囲のブレーン粉末度を有する第1のセットのセメント系材料を含む。さらに、エンジニアードコンクリートバインダの第1のセットのセメント系材料は、70~80μm、75~80μm、70~75μm、または72~80μmのうちの少なくとも1つの範囲のモード平均粒径(MAPS)を含む。
【0038】
本発明のさらなる実施において、エンジニアードコンクリートバインダ組成物は、10000~15000cm2/gの範囲のブレーン粉末度および20~30μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有する第2のセットのセメント系材料を含む。第2のセットのセメント系材料は、10000~12000cm2/g、12000~15000cm2/g、または13000~15000cm2/gの範囲のブレーン粉末度、および20~25μm、25~20μm、22~28μm、または24~29μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)をさらに含み得る。
【0039】
本主題の実施において、本明細書に記載のエンジニアードコンクリートバインダ組成物は、70~97重量%のポゾラン材料および3~30重量%のポゾラン活性剤材料を含む第2のセットのセメント系材料を含む。さらなる実施において、第2のセットのセメント系材料は、75~97重量%のポゾラン材料および3~25重量%のポゾラン活性剤材料;80~97重量%のポゾラン材料および3~20重量%のポゾラン活性剤材料;90~97重量%のポゾラン材料および3~10重量%のポゾラン活性剤材料;のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0040】
第2のセットのセメント系材料は、第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(D1)の1/3~1/5の範囲のモード平均粒径(D2)を有し得る。さらに、一実施形態では、ポゾラン活性剤材料のモード平均粒径は、ポゾラン材料のモード平均粒径よりも小さい。
【0041】
さらに、ポゾラン材料は、エンジニアードコンクリートバインダ組成物の24~80重量%の範囲の量で存在し得る。別の実施形態では、エンジニアードコンクリートバインダ組成物は、組成物の24~70重量%、24~50重量%、24~30重量%、または50~30重量%の範囲の量のポゾラン材料を含む。
【0042】
本発明の一実施形態では、ポゾラン材料は、フライアッシュ、高炉スラグ、火山灰材料、石英材料、ポンドアッシュ(pond ash)、化学的改質フライアッシュ、化学的改質高炉スラグ、化学的改質石英およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。さらに、ポゾラン材料は好ましくはフライアッシュである。
【0043】
本発明の一実施形態では、ポゾラン活性剤材料は、硫酸ナトリウム、スラグ砂、石灰、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。ポゾラン活性剤材料は、本主題の1つの実施において、ポゾラン材料の外面上の被覆(coat)として提供される。
【0044】
さらに、本明細書に開示されるコンクリートバインダ組成物はまた、水硬性材料が組成物の20~60重量%の範囲の量で存在することを含む。別の実施形態では、コンクリートバインダ組成物は、バインダ組成物の20~30重量%、20~40重量%、20~50重量%、または30~60重量%の範囲の量の水硬性材料を含む。
【0045】
さらに、本主題の1つの実施において、エンジニアードコンクリートバインダ組成物は、ポルトランドセメント、改質ポルトランドセメント、またはメーソンリーセメント(masonry cement)、高炉スラグ微粉末、水硬性水和石灰、白色セメント、アルミン酸カルシウムセメント、ケイ酸塩セメント、リン酸塩セメント、高アルミナセメント、オキシ塩化マグネシウムセメント、油井セメント、およびそれらの組み合わせを含む群より選択される水硬性材料を含む。
【0046】
さらに、本明細書に記載の組成物は、マイクロシリカ、ナノシリカ、メタカオリン、カーボンナノチューブ(CNT)ベースの添加剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの添加剤を含む。
【0047】
したがって、エンジニアードコンクリートバインダ組成物において、第2のセットのセメント系材料を構成するポゾラン材料はメカノケミカル活性化によって得られ、バインダが、粉砕中に、そのプロセスに導入される化学物質と組み合わせて、ボールミルで指定された期間粉砕される。これは、化学物質を伴うポゾランの一種の混合粉砕(inter-grinding)メカニズムである。ポゾラン活性剤(硫酸ナトリウム-Na2SO4、石灰、またはスラグなど)の添加は、フライアッシュなどのポゾラン材料を活性化して水酸化カルシウムなどとのポゾラン反応を引き起こし、その化学物質は、それ自体でフライアッシュ/ポゾランと反応することは意図されなかった。
【0048】
第1の量の第1のセットのセメント系材料を第2の量の第2のセットのセメント系材料と混合してエンジニアードコンクリートバインダ組成物を得ることを含む、エンジニアードコンクリートバインダ組成物を調製するプロセスも提供され、第1のセットのセメント系材料は、任意選択でポゾラン材料と共に、水硬性材料を含み、第2のセットのセメント系材料は、ポゾラン材料およびポゾラン活性剤材料を含み、第2のセットのセメント系材料は、第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(Dl)の1/3以下のモード平均粒径(D2)を有する。
【0049】
さらに、この方法は、そのモード平均粒径(D2)を有する第2のセットのセメント系材料を得るステップを含む。したがって、第2のセットのセメント系材料のモード平均粒径は、PSD曲線分析の解釈によって決定される。次に、第2のセットのセメント系材料は、そのモード平均粒径(D2)が、第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(D1)の1/3~1/5の範囲になるまで、制御された方法で機械的改質プロセスを受ける。
【0050】
前記機械的改質プロセスでは、所望の力およびエネルギーを加えることによって、粒度を予め必要な粒度に変更することができる。より具体的には、粉砕、破砕、ミリング、過熱蒸気を用いたスチームジェットミリング、電気力による粒子破壊、磁力による粒子破壊などの機械の適用を含むプロセスのいずれかを介して粒度を所望のサイズレベルに変更することを、材料の粒度を所望のサイズレベルに変更するための機械の適用例として考慮すべきである。
【0051】
実装例では、第1のセットのセメント系材料は、3000~4000cm2/gの範囲のブレーン粉末度および70~80μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を含む。さらに、第1のセットのセメント系材料は、3000~3500cm2/g、3500~4000cm2/g、3000~3200cm2/g、3200~3400cm2/g、3200~3800cm2/g、または3800~4000cm2/gのうちの少なくとも1つの範囲のブレーン粉末度を含む。さらに、エンジニアードコンクリートバインダの第1のセットのセメント系材料は、70~80μm、75~80μm、70~75μm、または72~80μmのうちの少なくとも1つの範囲のモード平均粒径(MAPS)を含む。
【0052】
本明細書に記載の方法では、第2のセットのセメント系材料は、10000~15000cm2/gの範囲のブレーン粉末度、および20~30μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を含む。さらに、本主題の実施形態では、第2のセットのセメント系材料は、10000~12000cm2/g、12000~15000cm2/g、または13000~15000cm2/gの範囲のブレーン粉末度、および20~25μm、25~20μm、22~28μm、または24~29μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)をさらに含み得る。
【0053】
本主題の実施において、本明細書に記載のエンジニアードコンクリートバインダ組成物は、70~97重量%のポゾラン材料および3~30重量%のポゾラン活性剤材料を含む第2のセットのセメント系材料を含む。さらなる実施において、第2のセットのセメント系材料は、75~97重量%のポゾラン材料および3~25重量%のポゾラン活性剤;80~97重量%のポゾラン材料および3~20重量%のポゾラン活性剤材料;90~97重量%のポゾラン材料および3~10重量%のポゾラン活性剤材料;のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0054】
例示的な実施形態では、ポゾラン材料は、フライアッシュ、高炉スラグ、火山灰材料、石英材料、ポンドアッシュ、化学的改質フライアッシュ、化学的改質高炉スラグ、化学的改質石英、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。さらに、ポゾラン材料は好ましくはフライアッシュである。
【0055】
さらに、ポゾラン活性剤材料は、硫酸ナトリウム、スラグ砂、石灰、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。ポゾラン活性剤材料は、本主題の1つの実施において、ポゾラン材料の外面上の被覆として提供される。
【0056】
一実施形態では、エンジニアードコンクリートバインダ組成物を調製するプロセスは、水硬性材料が組成物の20~60重量%の範囲の量で存在することを含む。別の実施形態では、コンクリートバインダ組成物は、バインダ組成物の20~30重量%、20~40重量%、20~50重量%、または30~60重量%の範囲の量の水硬性材料を含む。
【0057】
さらに、本発明の一実施形態では、水硬性材料は、ポルトランドセメント、改質ポルトランドセメント、またはメーソンリーセメント、高炉スラグ微粉末、水硬性水和石灰、白色セメント、アルミン酸カルシウムセメント、ケイ酸塩セメント、リン酸塩セメント、高アルミナセメント、オキシ塩化マグネシウムセメント、油井セメント、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0058】
本明細書に開示される方法はまた、マイクロシリカ、ナノシリカ、メタカオリン、カーボンナノチューブ(CNT)ベースの添加剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの添加剤を添加して、エンジニアードコンクリートバインダ組成物を得るステップを含む。
【0059】
エンジニアードバインダコンクリート組成物を調製するための本プロセスは、コンクリート組成物の初期強度特性が著しく向上し、その結果、組成物の耐久性および寿命が著しく改善されるメカノケミカル改質法を含む。本組成物の初期強度特性を引き起こすために、本明細書に開示されるプロセスは、ポゾラン材料とポゾラン活性剤材料を混合して混合物を得るステップ;およびそのように得られた混合物を粉砕して、第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(D1)の1/3以下のモード平均粒径(D2)を有する第2のセットのセメント系材料を得るステップをさらに含む。
【0060】
第2のセメント系材料はまた、ポゾラン材料とポゾラン活性剤材料の両方が第1のセットのセメント系材料のモード平均粒径(D1)の1/3以下のモード平均粒径を有する、ポゾラン材料とポゾラン活性剤材料とを混合することによって得ることもできる。さらに、第2のセットのセメント系材料は、ポゾラン材料の外面にポゾラン活性剤材料の被覆を提供することによって得ることができる。
【0061】
主題をその特定の好ましい実施形態に言及してかなり詳細に説明したが、他の実施形態も可能である。ここで、実施例をもって開示を説明するが、これは開示の実施を説明することを意図し、限定的に解釈して本開示の範囲に対する何らかの限定を暗示することを意図するものではない。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を、開示される方法および組成物の実施に使用することができるが、例示的な方法、デバイスおよび材料は、本明細書に記載される。そのような方法および条件は変化する可能性があるため、この開示は特定の方法、および記載されている実験条件に限定されないことを理解されたい。
【0062】
実装例では、エンジニアードコンクリートバインダ組成物のメカノケミカル改質は、水硬性材料のPCE/PCP、石灰、スラグ砂、およびポゾラン材料のフライアッシュ、およびポゾラン活性剤の硫酸ナトリウムを使用して実施される。材料を40RPMで2時間粉砕する。各画分の粒度が、PCE/PCPを含む水硬性材料が3000~4000cm2/gの範囲のブレーン粉末度および70~80μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有するように決定される。ポゾラン材料および活性剤を含む画分は、10000~15000cm2/gの範囲のブレーン粉末度および20~30μmの範囲のモード平均粒径(MAPS)を有する。次に、組成物を立方体に打設し(cast)、その後、1、3、7、14、28、および56日間の強度および耐久性について試験した。
【0063】
例示的な実施形態では、水硬性材料、ポゾラン材料、およびポゾラン活性剤の割合は、エンジニアードコンクリートバインダ組成物を用いて打設した各サンプル立方体で変化する。たとえば、1つの立方体は、ポゾラン活性剤は含まないで50%の水硬性材料と50%のポゾラン材料を含み、別の立方体は50%の水硬性材料と50%のポゾラン誘導体を含み、そのポゾラン誘導体は96%のポゾラン材料と3%のポゾラン活性剤を含む。これは表1および表2に示され、エンジニアードコンクリートバインダ組成物の組成が様々であり、たとえば、対照組成物は、主にポゾランフライアッシュとOPCを含むが、ポゾラン活性剤材料の硫酸ナトリウムを含まない。組成物CA1~CA4は、表1に示されるように、フライアッシュ、硫酸ナトリウムを様々な比率で他の成分と共に含み、また様々な割合のOPCも含み得る。次に、すべての組成物の針入度(penetration)およびコンシステンシーを試験し、表2に示すように強度を定期的に試験する。
【0064】
【0065】
【0066】
表2に示すように、ポゾラン活性剤材料を添加しても混合物のコンシステンシーは変化せず、これは、この場合にコンシステンシーが強度の増減に影響を与えないことを示す重要業績評価指標である。興味深いことに、試験(CA)サンプルと対照の初期強度特性に有意な違いがある。1日目、および特に3日目と7日目の試験サンプルの強度特性は、対照サンプルよりもはるかに高い(表2の列6、7、8)。たとえば、どちらも50%OPCおよび50%CAで構成されている対照1とCA1-50を比較すると、CA1-50は7日目までに25.16Mpaの圧縮強度を示すが、対照1は17.69Mpaの強度しか示さない。これは、対照サンプル1に対してCA1-50の初期強度特性が42.2%増大したことを示す。
【0067】
上記の例によって示されるように、本コンクリートバインダ組成物およびそれを調製するプロセスは、広範な実験の後に得られた。様々な成分の特定の粒度、ならびにポゾランおよびポゾラン活性剤の特定の化学成分を有する上記のバインダ組成物は、過度の実験および観察なしに達成されたわけではない。規定されたモード平均粒径を有するこの連続した一連の異なる粒度は、様々な機械的粒度調節プロセス(mechanical particle size modification process)を介して達成される。連続した一連の異なるモード平均粒径を有する異なる粒度のこの最適化は、マイクロレベルからナノレベルまでの範囲の粒子格子構造の格子空隙の緻密(コンパクト)な充填を提供する。この混合物は、粒子格子構造の最大空隙を埋めるための完全な粒子化学を提供し、またコンクリート材料の初期凝結および後期凝結に関連する化学を改善する。
【0068】
さらに、コンクリート組成物の化学的改質は、微細な粒度によってもたらされる特性を強化し、そこでは、硫酸ナトリウムなどの活性剤が、フライアッシュなどのポゾラン材料と、一次水和プロセスにより遊離されるCa(OH)2相との反応を開始させ、凝結後1日以内にコンクリート組成物の初期強度を高める。
【0069】
したがって、本明細書に記載のコンクリート組成物の機械的改質に加えて、特定のポゾラン活性剤を使用する化学的改質は、ポゾランとCa(OH)2相との間の反応が早期に起こり、コンクリート組成物の早期凝結が開始されることを確実にする。これは、早期凝結特性を表示しない対照サンプルで示されているように、機械的改質だけでは不可能である。
【0070】
本発明を実施する現在好ましい形態を含む特定の方法に関して本発明を説明したが、当業者は、本発明の精神および範囲内にある上記の実施形態の多数の変形および順列があることを理解するであろう。本発明は、その適用において、本明細書に記載の構成要素の構造および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。前述の変形および修正は、本発明の範囲内である。したがって、これらの実施形態の多くの変形が本発明の範囲内で想定される。
【0071】
本発明の特定の実施形態の前述の説明は、説明の目的で提示されている。それらは、網羅的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではなく、明らかに、上記の教示を考慮して多くの修正および変形が可能である。実施形態は、本発明の原理およびその実際の適用を最もよく説明し、それにより、当業者が本発明、および考えられる特定の用途に適した様々な修正を加えた様々な実施形態を最もよく利用できるようにするために選択および説明された。状況が示唆しまたは好都合にし得る場合は、同等物の様々な省略および置換が企図されることが理解されるが、そのような省略および置換は、本発明の精神または範囲から逸脱することなくその適用または実施をカバーすることが意図される。