(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】紫外線硬化型粘着剤組成物、および粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/14 20060101AFI20220506BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20220506BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220506BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220506BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J133/06
C09J11/08
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2021131138
(22)【出願日】2021-08-11
【審査請求日】2021-09-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村田 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】渡部 辰矢
(72)【発明者】
【氏名】春田 一成
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102175(JP,A)
【文献】特許第6347341(JP,B1)
【文献】特開平7-278516(JP,A)
【文献】特開2019-218480(JP,A)
【文献】特開平7-278523(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138609(WO,A1)
【文献】特開2014-196446(JP,A)
【文献】特開2012-31358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
7/00- 7/50
9/00-201/10
C08C 19/00- 19/44
C08F 6/00-249/00
301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線反応性基を有する共重合体(A)を含み、
前記共重合体(A)は、重量平均分子量が40万~150万であり、且つ、
アルキル基を有する単量体単位(a1)、カルボキシル基を有する単量体単位(a2)、および紫外線反応性基を有する単量体単位(a3)を有する共重合体であり、
単量体単位(a3)の含有率は、全単量体単位の合計100質量%中に、0.01~5質量%であり、
カルボキシル基を有する単量体単位(a2)は、下記一般式(1)で表される単量体単位(a2-1)、および下記一般式(2)で表される単量体単位(a2-2)の少なくともいずれかを有することを特徴とする紫外線硬化型粘着剤組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R
11は、水素原子またはメチル基、mは2~10の整数、nは1~5の整数を示す。)
【化2】
(一般式(2)中、R
21は、水素原子またはメチル基、R
3は2価の炭化水素基、pは1~5の整数を示す。)
【請求項2】
紫外線反応性基を有する単量体単位(a3)は、ベンゾフェノン基を有することを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型粘着剤組成物。
【請求項3】
さらに有機溶剤を含む、請求項1または2記載の紫外線硬化型粘着剤組成物。
【請求項4】
さらに粘着付与樹脂を含み、
前記粘着付与樹脂は、ロジン系粘着付与樹脂、合成炭化水素系粘着付与樹脂、およびテルペンフェノール系粘着付与樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~3いずれか1項記載の紫外線硬化型粘着剤組成物。
【請求項5】
さらにポリオレフィンを含む、請求項1~4いずれか1項記載の紫外線硬化型粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項記載の粘着剤組成物から形成された層を紫外線硬化してなる粘着剤層を有する粘着シート。
【請求項7】
前記紫外線硬化してなる粘着剤層は、厚みが1~20μmである、請求項6記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型粘着剤組成物、および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートは、取り扱いが容易であることからラベルや接着用途として幅広い分野で使用されている。近年、コストダウンや環境負荷軽減の観点や、電子デバイスの軽量薄膜化により、様々な用途で粘着剤層の薄膜化が求められている。しかしながら、粘着シートの粘着力は、粘着剤層の膜厚の減少に伴って低下することが一般的である。このため、薄膜条件でも高い粘着力を有する粘着シートの開発が強く望まれている。さらに、様々な用途で使用するためには、ステンレス板のような高極性被着体やポリオレフィンのような低極性被着体のどちらにも強い粘着力を示し、さらに保持力と、曲面接着性にも優れていることが必要である。
【0003】
一方、近年では紫外線による架橋反応を用いた粘着剤の開発が活発であり、様々な目的に合わせて開発が進められている。しかし、これまでは主に紫外線照射後の架橋密度の向上による凝集力向上に焦点が当てられ、粘着力が犠牲になる場合が多かった。
紫外線硬化型粘着剤組成物として、特許文献1には、ラジカル重合性希釈剤とアクリルポリマーおよび塩素化ポリオレフィンを所定量含むことで、低極性被着体に対し強い粘着力を示す紫外線硬化型粘着シートが提案されている。
特許文献2には、2種類の紫外線反応性基を側鎖に有する共重合体と高濃度の粘着付与樹脂を配合する紫外線硬化型粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-031358号公報
【文献】特表2016-501290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来の粘着シートでは、紫外線照射後の粘着力と凝集力の両立が困難であり、とくに薄膜条件での高極性被着体および低極性被着体のいずれに対する粘着力が充分ではない。加えて保持力と曲面接着性をも満足することはできていないのが現状である。
【0006】
本発明は、薄膜であっても高極性被着体および低極性被着体のいずれに対しても、高い粘着力を示すとともに、保持力と、曲面接着性も優れる紫外線硬化型粘着剤組成物、および粘着シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紫外線硬化型粘着剤組成物は、紫外線反応性基を有する共重合体(A)を含み、前記共重合体(A)は、重量平均分子量が40万~150万であり、且つ、アルキル基を有する単量体単位(a1)、カルボキシル基を有する単量体単位(a2)、および紫外線反応性基を有する単量体単位(a3)を有する共重合体であり、カルボキシル基を有する単量体単位(a2)は、下記一般式(1)で表される(a2-1)、および下記一般式(2)で表される(a2-2)の少なくともいずれかを有することを特徴とする。
【化1】
(一般式(1)中、R
11は、水素原子またはメチル基、mは2~10の整数、nは1~5の整数を示す。)
【化2】
(一般式(2)中、R
21は、水素原子またはメチル基、R
3は二価の炭化水素基、pは1~5の整数を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明により、薄膜であっても高極性被着体および低極性被着体のいずれに対しても、高い粘着力を示すとともに、さらに保持力、曲面接着性も優れる紫外線硬化型粘着剤組成物、および粘着シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について詳細に説明する前に用語を定義する。まず、シート、フィルムおよびテープは同義語である。「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」等は、「アクリル又はメタクリル」、「アクリレート又はメタクリレート」、「アクリロイル又はメタクリロイル」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、単量体は、それぞれ、エチレン性不飽和基含有化合物を意味する。重合後の単量体を単量体単位、重合前は単量体という。被着体は、粘着シートを貼り付ける相手方をいう。
尚、本明細書では、アルキル基を有する単量体単位(a1)、カルボキシル基を有する単量体単位(a2)、紫外線反応性基を有する単量体単位(a3)、一般式(1)で表される単量体単位(a2-1)、および一般式(2)で表される単量体単位(a2-2)をそれぞれ単量体単位(a1)、単量体単位(a2)、単量体単位(a3)、単量体単位(a2-1)、および単量体単位(a2-2)と称することがある。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0010】
《紫外線硬化型粘着剤組成物》
本発明の粘着剤組成物は紫外線反応性基を有する共重合体(A)を含み、前記共重合体(A)は、重量平均分子量が40万~150万であり、且つ、アルキル基を有する単量体単位(a1)、カルボキシル基を有する単量体単位(a2)、および紫外線反応性基を有する単量体単位(a3)を有する共重合体であり、カルボキシル基を有する単量体単位(a2)は、下記一般式(1)で表される(a2-1)、および下記一般式(2)で表される(a2-2)の少なくともいずれかを有する。
【化3】
(一般式(1)中、R
11は、水素原子またはメチル基、mは2~10の整数、nは1~5の整数を示す。)
【化4】
(一般式(2)中、R
21は、水素原子またはメチル基、R
3は二価の炭化水素基、pは1~5の整数を示す。)
【0011】
上記の本発明によれば、紫外線反応性基を有する共重合体に、さらに一般式(1)または(2)で示すカルボキシル基を有する単量体単位を有し、かつ適度な分子量に設計することで、紫外線照射後に凝集力を保持しつつ共重合体に柔軟性を付与することができる。よって薄膜でありながら高極性被着体および低極性被着体のいずれに対しても、高い粘着力を示すとともに、保持力と、曲面接着性をも達成できる。加えて、さらに粘着付与樹脂を用いる場合には、粘着付与樹脂との適度な相溶性により、低極性被着体との密着性をより向上させることができ、更なる粘着力向上が可能である。
【0012】
また、本発明の粘着剤組成物は、共重合体(A)以外に、必要に応じ、有機溶剤、粘着付与樹脂、ポリオレフィン、光開始剤、重合禁止剤等を用いてもよい。
有機溶剤を含むことで、乾燥性および塗工性をより一層向上できるために好ましい。また、粘着付与樹脂およびポリオフィンを含むことで低極性被着体との密着性をより向上させるために好ましい。
【0013】
<共重合体(A)>
共重合体(A)は、重量平均分子量が40万~150万であり、且つ、アルキル基を有する単量体単位(a1)、カルボキシル基を有する単量体単位(a2)、および紫外線反応性基を有する単量体単位(a3)を必須単位として有し、必要に応じてその他単量体単位を任意に有する共重合体である。
また、カルボキシル基を有する単量体単位(a2)は、下記一般式(1)で表される単量体単位(a2-1)、および下記一般式(2)で表される単量体単位(a2-2)の少なくともいずれかを有する。
本発明の粘着剤組成物は、少なくとも共重合体(A)を含むことを特徴とし、共重合体(A)そのものを粘着剤として用いてもよい。
【0014】
重量平均分子量は、50万~130万がより好ましく、60万~120万がさらに好ましい。Mwを40万~150万の範囲にすることで、粘着力、保持力、および曲面接着性に優れるものとすることができる。
なお、本発明で重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0015】
共重合体(A)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、3.0~8.0が好ましく、4.0~8.0がより好ましく、4.0~7.0がさらに好ましい。分子量分布を3.0~8.0の範囲にすることで、粘着力、保持力、曲面接着性の全てを満足することが容易になる。
【0016】
共重合体(A)の酸価は、0.1~24.0mgKOH/gであることが好ましく、0.2~20.0mgKOH/gがより好ましい。共重合体(A)の酸価が0.1~24.0mgKOH/gであることで、粘着剤層の凝集力付与と柔軟性付与をバランスよく行うことができ、粘着力、保持力、曲面接着性の全てを満足することがより容易になる。
【0017】
なお、本明細書において、各単量体単位の含有率は、各単量体単位を共重合体(A)にもたらす単量体の質量%である。
【0018】
[単量体単位(a1)]
単量体単位(a1)は、アルキル基を有する単量体単位であり、アルキル基を有する単量体(a’1)を重合して形成される。
単量体(a’1)は、炭素数4~7のアルキル基を有する単量体(a’1-1)、および炭素数8~12のアルキル基を有する単量体(a’1-2)、およびその他のアルキル基を有する単量体に分類され、単量体(a’1)は、炭素数4~7のアルキル基を有する単量体(a’1-1)、および炭素数8~12のアルキル基を有する単量体(a’1-2)を含有することが高極性の被着体および低極性の被着体に対する粘着力の両立、粘着付与樹脂との相溶性の点から好ましい。
単量体単位(a1)の含有率は、単量体単位の合計100質量%中に、60~99質量%使用することが好ましく、70~98質量%がより好ましい。60~99質量%使用することで、粘着力と保持力、曲線接着性の両立がより容易になる。
【0019】
炭素数4~7のアルキル基を有する単量体単位(a1-1)と炭素数8~12のアルキル基を有する単量体(a1-2)の含有割合は、質量比で、(a1-1)/(a1-2)=99/1~20/80が好ましく、98/2~50/50がより好ましく、95/5~60/40がさらに好ましい。この比率で使用することで、高極性の被着体に対する粘着力および低極性の被着体に対する粘着力をより両立することができ、粘着付与樹脂との相溶性を向上させ、さらに粘着力を向上することができる。
【0020】
炭素数4~7のアルキル基を有する単量体(a’1-1)としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート等が上げられる。これらの中でも、粘着力と保持力の両立の観点でn-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
炭素数8~12のアルキル基を有する単量体(a’1-2)としては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、粘着力と保持力の両立の観点で2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0022】
その他アルキル基を有する単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレートおよびイソオクタデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他アルキル基を有する単量体を用いる場合、その含有率は、単量体混合物100質量%中、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0023】
[単量体単位(a2)]
単量体単位(a2)は、カルボキシル基を有する単量体単位であり、下記一般式(1)で表される単量体単位(a2-1)、および下記一般式(2)で表される単量体単位(a2-2)の少なくともいずれかを有する。なかでも、一般式(2)で表される単量体単位(a2-2)を有することが、高極性被着体と低極性被着体への粘着力の両立の点で好ましい。
【化5】
(一般式(1)中、R
11は、水素原子またはメチル基、mは2~10の整数、nは1~5の整数を示す。)
【化6】
(一般式(2)中、R
21は、水素原子またはメチル基、R
3は二価の炭化水素基、pは1~5の整数を示す。)
【0024】
単量体単位(a2)は、一般式(11)で表される単量体(a’2-1)および一般式(21)で表される単量体(a’2-2)の少なくともいずれかを用いて重合し、形成される。
【0025】
単量体単位(a2)の含有率は、単量体単位の合計100質量%中に、0.1~10質量%であることが好ましく、0.2~8質量%がより好ましい。0.1~10質量%であることで、粘着力、保持力、曲線接着性の全てを満足することがより容易になる。
【0026】
(単量体単位(a2-1))
単量体単位(a2-1)は、一般式(1)で表される単量体単位であり、下記一般式(11)で示す単量体(a’2-1)を重合して形成される単量体単位である。
【化7】
(一般式(11)中、R
1は水素原子またはメチル基、mは2~10の整数、nは1~5の整数を示す。)
【0027】
一般式(11)において、mは2~10の整数を示す。mは、粘着力、保持力、曲面接着性のバランスの観点から、2~10の整数であるが、好ましくは2~8の整数、さらに好ましくは3~5の整数である。nは1~5の整数を示す。前記nは、粘着力、保持力、曲面接着性のバランスの観点から、1~5の整数であるが、好ましくは2~4の整数である。
【0028】
単量体(a’2-1)は、常法により製造したものであっても、市販の単量体から適宜選択したものであってもよい。
単量体(a’2-1)は、例えば、β-ヒドロキシエチルアクリレートやω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、例えば「β-CEA」(ダイセル・オルネクス社製)や「アロニックスM-5300」(東亞合成社製)の商品名として市販されているものを用いることができる。
【0029】
(単量体単位(a2-2))
単量体単位(a2-2)は、一般式(2)で表される単量体単位であり、下記一般式(21)で示す単量体(a’2-2)を重合して形成される単量体単位である。
【化8】
(一般式(21)中、R
2は水素原子またはメチル基、R
3は二価の炭化水素基、pは1~5の整数を示す。)
【0030】
一般式(21)において、pは1~5の整数を示す。pは、粘着力と保持力、曲面接着性の両立の観点から、1~5の整数であるが、好ましくは1~3の整数である。R3は二価の炭化水素基を示す。
二価の炭化水素基としては、アルキレン基等の飽和脂肪族炭化水素基、シクロアルキレン基等の飽和脂環族炭化水素基、フェニレン基等の芳香族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、または不飽和脂環族炭化水素基などが挙げられる。
これらの中でも、柔軟性付与による粘着力向上の観点で飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0031】
単量体(a’2-2)は、常法により製造したものであっても、市販の単量体から適宜選択したものであってもよい。
単量体(a’2-2)は、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフマル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸等が挙げられる。これらの単量体は、例えば「ライトエステルHO-MS」、「HOA-MS(N)」、「ライトアクリレートHOA-HH(N)」および「HOA-MPL(N)」(共栄社化学社製)の商品名として市販されているものを用いることができる。
【0032】
単量体単位(a2)は、単量体単位(a2-1)、および単量体単位(a2-2)以外のその他カルボキシル基を有する単量体単位(a2-3)を有してもよい。
その他カルボキシル基を有する単量体単位(a2-3)は、その他カルボキシル基を有する単量体(a’2-3)を重合して形成される単量体単位であり、単量体(a’2-3)としては、例えば(メタ)アクリル酸などが挙げられる。
【0033】
単量体単位(a2)として、単量体単位(a2-1)または単量体単位(a2-2)を有することで、共重合体の柔軟性を調整して薄膜にもかかわらず粘着力を向上させるとともに、末端のカルボン酸に由来する高極性部位と適度な長さの側鎖に由来する疎水性部位とのバランスにより、粘着付与樹脂との相溶性に優れ、高極性被着体と低極性被着体それぞれへの密着性を向上させ高極性被着体と低極性被着体の粘着力の両立が可能となる。
【0034】
単量体単位(a2-1)および単量体単位(a2-2)以外の単量体単位(a2-3)の含有率は少ないほど好ましいが、単量体単位(a2)の合計100質量%中に、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
40質量%以下であることで、高極性被着体と低極性被着体への粘着力の両立が容易になるために好ましい。
【0035】
[単量体単位(a3)]
単量体単位(a3)は、紫外線反応性基を有する単量体単位であり、紫外線反応性基を有する単量体(a’3)を用いて重合してもよく、または、前駆体となる共重合体(A’)を合成後に、付加反応を行い、紫外線反応性基を導入してもよい。
紫外線反応性基の構造としては特に限定されず、エチレン性不飽和基、またはベンゾフェノン基が好ましく挙げられ、紫外線反応性に優れ、紫外線硬化後の粘着剤層の曲面密着性が優れることから、ベンゾフェノン基を有することが好ましい。
【0036】
紫外線反応性基を有する単量体(a’3)としては、ベンゾフェノン基を有する単量体、ベンゾイン基を有する単量体、チオキサントン基及びマレイミド基を有する単量体などが挙げられる。中でも、紫外線の照射による励起状態において共重合体(A)の分子間に架橋構造を効率的に形成させることができるため、ベンゾフェノン基を有する単量体が好ましい。紫外線反応性基は、分子内に単独で含まれていても二種以上が含まれていてもよい。
【0037】
ベンゾフェノン基を有する単量体は、例えば、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-メチル-2-アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン等が挙げられる。中でも、紫外線反応性、および入手容易性から4-アクリロイルオキシベンゾフェノンおよび4-メタクリロイルオキシベンゾフェノンが好ましい。
【0038】
前駆体となる共重合体(A’)を合成後に、付加反応を行い、紫外線反応性基を導入する方法は、特に制限はなく、従来公知の方法を、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、第一工程として、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基等の官能基を有する単量体単位を有する共重合体(A’)を作製した後、第二工程として、共重合体(A’)の有する水酸基、エポキシ基、カルボキシル基等の官能基と反応可能な、官能基を有する単量体を付加反応させることによって、共重合体側鎖に紫外線反応性基を導入することができる。
具体的には、方法(i);水酸基を有する単量体と、単量体(a’1)と、単量体(a’2)と、必要に応じてその他単量体とを共重合することによって得られた共重合体(A’)の側鎖水酸基の一部に、イソシアネート基を有する単量体等を付加反応させ、紫外線反応性基としてエチレン性不飽和基を有する単量体単位を有する共重合体を得る方法、方法(ii);エポキシ基を有する単量体と、単量体(a’1)と、単量体(a’2)と、必要に応じてその他単量体とを共重合することによって得られた共重合体(A’)の側鎖エポキシ基の一部に、カルボキシル基を有する単量体を付加反応させ、紫外線反応性基としてエチレン性不飽和基を有する単量体単位を有する共重合体を得る方法、方法(iii);カルボキシル基を有する単量体である単量体(a’2)と、単量体(a’1)と、必要に応じてその他単量体とを共重合することによって得られた共重合体(A’)の側鎖カルボキシル基の一部に、エポキシ基を有する単量体を付加反応させ、紫外線反応性基としてエチレン性不飽和基を有する単量体単位を有する共重合体を得る方法等が挙げられる。
なお、方法(iii)の場合、エポキシ基との付加反応に用いられずに残ったカルボキシル基を有する構成単位が、本明細書における構成単位(a2)に該当する。そのため、本発明における共重合体(A)は、単量体(a’2)が有するカルボキシル基の全てが付加反応することはなく、必ず単量体単位(a2-1)、または単量体単位(a2-2)を有するように、用いる単量体(a’2)およびエポキシ基を有する単量体の配合量を調整する。
【0039】
「方法(i)」
前駆体となる共重合体(A’)を構成するために用いられる、水酸基を有する単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、酸3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリルレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。これらの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0040】
水酸基と反応可能な、イソシアネート基を有する単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)、メタクリロイルオキシエチルイソチオシアネート、アクリロイルオキシエチルイソチオシアネート、メタクリロイルイソチオシアネート、アクリロイルイソチオシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート(MAI)、イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート(TMI)などが挙げられる。
【0041】
「方法(ii)」
前駆体となる共重合体(A’)を構成するために用いられる、エポキシ基を有する単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、および3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
エポキシ基と反応可能な、カルボキシル基を有する単量体(a’2)としては、特に制限はなく、前述のカルボキシル基を有する単量体(a’2)に例示した単量体と同じものを用いることができる。
【0043】
「方法(iii)」
前駆体となる共重合体(A’)を構成するために用いられる、カルボキシル基を有する単量体(a’2)としては、特に制限はなく、前述のカルボキシル基を有する単量体(a’2)に例示した単量体と同じものを用いることができる。
【0044】
カルボキシル基と反応可能な、エポキシ基を有する単量体としては、特に制限はなく、前述の方法(ii)で説明したエポキシ基を有する単量体と同じものを用いることができる。
【0045】
紫外線反応性基を有する単量体単位(a3)の含有率は、全単量体単位の合計100質量%中に、0.01~5質量%であることが好ましく、0.01~1質量%がより好ましく、0.02~0.6質量%がさらに好ましい。0.01質量%以上とすることでより粘着力と保持力が優れ、5質量%以下とすることでより優れた曲面接着性を発現できる。
【0046】
[その他単量体単位]
紫外線反応性基を有する共重合体(A)は、アルキル基を有する単量体単位(a1)、カルボキシル基を有する単量体単位(a2)、および紫外線反応性基を有する単量体単位(a3)以外に、必要に応じその他単量体単位を有していてもよい。
その他単量体単位は、粘着剤組成物の粘着力や保持力、曲面接着性を損なわない範囲で有することができる。
例えば、脂肪族環式構造を有する単量体単位、芳香環を有する単量体単位、アミド結合を有する単量体単位、エポキシ基を有する単量体単位、アミノ基を有する単量体単位、アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有する単量体単位、およびその他ビニル単量体単位等が挙げられる。これらの中でも、低極性被着体に対する粘着力や粘着付与樹脂との相溶性向上の観点から、脂肪族環式構造を有する単量体単位を有することが好ましい。
【0047】
脂肪族環式構造を有する単量体単位を形成するための、脂肪族環式構造を有する単量体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、ロジンアクリレート等が挙げられる。これらの中でも低極性被着体に対する粘着力や粘着付与樹脂との相溶性向上の観点から、立体的な脂肪族環式構造を有するジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートまたはロジンアクリレートを有することが好ましい。
市販されているロジンアクリレートとしては、ビームセット101(荒川化学工業社製、1-アクリル酸-3-デヒドロアビエチン酸-2-ヒドロキシプロピル)等が挙げられる。
【0048】
芳香環を有する単量体単位を形成するための、芳香環を有する単量体としては、例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびエチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香環を有する単量体を用いる場合、芳香環を有する単量体単位の含有率は、単量体単位の合計100質量%中に、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0049】
アミド結合を有する単量体単位を形成するための、アミド結合を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、およびアクリロイルモルホリン等の複素環含有化合物等が挙げられる。
【0050】
エポキシ基を有する単量体単位を形成するための、エポキシ基を有する単量体としては、単量体単位(a3)の、方法(ii)の説明で例示したエポキシ基を有する単量体と同じものを用いることができる。
【0051】
アミノ基を有する単量体単位を形成するための、アミノ基を有する単量体としては、例えばモノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、およびモノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のモノアルキルアミノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
アミド結合を有する単量体、エポキシ基を有する単量体およびアミノ基を有する単量体を用いる場合、その含有率は、単量体単位の合計100質量%中に、それぞれ0.1~1質量%であることが好ましい。
【0053】
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有する単量体単位を形成するための、アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有する単量体としては、例えば2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有する単量体を用いる場合、その含有率は、単量体単位の合計100質量%中に、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0054】
水酸基を有する単量体単位を形成するための、水酸基を有する単量体としては、単量体単位(a3)の、方法(i)の説明で例示した水酸基を有する単量体と同じものを用いることができる。
水酸基を有する単量体を用いる場合、その含有率は、単量体単位の合計100質量%中に、0.1~1質量%であることが好ましい。
【0055】
その他ビニル単量体単位を形成するための、その他ビニル単量体としては、スチレン、酢酸ビニル、およびアクリロニトリルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
その他ビニル単量体を用いる場合、その含有率は、単量体単位の合計100質量%中に、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0056】
[共重合体(A)の製造]
共重合体(A)の製造方法としては、単量体(a’1)、単量体(a’2)、および単量体(a’3)を含む単量体混合物を共重合する方法、または、前述の方法(i)~(iii)に例示したような、単量体(a’1)、単量体(a’2)、および必要に応じて官能基を有する単量体を含む単量体混合物を共重合して前駆体となる共重合体(A’)を製造後に、共重合体(A’)が有する側鎖の官能基と反応可能な、他の官能基を有する単量体との付加反応を行い、紫外線反応性基を導入する方法などが挙げられる。
単量体混合物を共重合する方法は、特に限定されず、例えば、単量体混合物に重合開始剤を加え、溶液重合する方法が挙げられる。前記溶液重合に使用する溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、およびイソプロパノール等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0057】
溶液重合は、単量体混合物100質量部に対して重合開始剤を0.001~1質量部程度加えて重合を行うことが好ましい。通常、重合は、窒素気流下で、50℃~90℃程度の温度で6時間~20時間行うことができる。また、重合の際、連鎖移動剤を使用して共重合体の重量平均分子量を適宜調整することができる。
【0058】
連鎖移動剤は、例えばn-ドデシルメルカプタン、メルカプトイソブチルアルコール、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、グリシジルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー、四塩化炭素、クロロホルム、およびハイドロキノン等が挙げられる。連鎖移動剤は、単量体混合物100質量部に対して0.01~1質量部程度を使用できる。
【0059】
重合開始剤は、アゾ系化合物および有機過酸化物が一般的である。
アゾ系化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル
)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,
4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチ
ルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビ
ス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、および2,2’-アゾビス(2-(2-
イミダゾリン-2-イル)プロパン)等が挙げられる。
有機過酸化物は、例えば過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒド
ロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキ
シジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパ
ーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチ
ルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド
等が挙げられる。
【0060】
<有機溶剤>
本発明の粘着剤組成物は、さらに有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤を含むことで、塗工性をより良化することができる。とくに、分子量が高い共重合体を含有する粘着組成物であっても、塗工することが可能となるために好ましい。
有機溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、およびイソプロパノール等が挙げられる。
【0061】
有機溶剤を用いる場合、有機溶剤の含有率としては、乾燥性および塗工性をより一層向上できる点から、粘着剤組成物100質量%中、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることが好ましい。また、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。環境負荷の点では、含有率は、少ない方が望ましい。
【0062】
<粘着付与樹脂>
本発明の粘着剤組成物は、さらに粘着付与樹脂を含んでもよい。粘着剤組成物は、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、合成炭化水素系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂等が挙げられ、この中でもロジン系粘着付与樹脂、合成炭化水素系粘着付与樹脂およびテルペンフェノール系粘着付与樹脂より選ばれる少なくとも1種の粘着付与樹脂を含むことが好ましい。これらの粘着付与樹脂を含むことで、粘着力をより向上できる。
さらに、ロジン系粘着付与樹脂と合成炭化水素系粘着付与樹脂を併用して用いることで、相溶性と高極性被着体、低極性被着体への粘着力の両立がより容易になるために好ましい。
ロジン系粘着付与樹脂と合成炭化水素系粘着付与樹脂を併用して用いる場合、その含有比率は特に制限されないが、ロジン系粘着付与樹脂/合成炭化水素系粘着付与樹脂=0.1~5が好ましく、0.4~2.4がより好ましく、0.4~1がさらに好ましい。
【0063】
ロジン系粘着付与樹脂は、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンの未変性ロジンをアルコールなどでエステル化したロジンエステルや、未変性ロジンを変性した不均化ロジン、重合ロジン、水添ロジンなどの変性ロジン、これら変性ロジンをさらにアルコールなどでエステル化した不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、水添ロジンエステルなどの変性ロジンエステル、未変性ロジンにフェノールを付加したロジンフェノール等が好ましい。これらの中でも粘着力および透明性がより向上するためロジンエステル、および変性ロジンエステルが好ましい。なお、ロジンエステルおよび変性ロジンエステルには、エステル化に用いたアルコールなどの水酸基の一部が未反応で残存している場合もある。エステル化に用いるアルコールは、メタノールなどの単官能アルコール、エチレングリコールなどの2官能アルコール、グリセリンなどの3官能アルコール、およびペンタエリスリトールなどの4官能アルコールが挙げられるが、アクリル系共重合体との相溶性を考慮すると3官能以下のアルコールが好ましい。
【0064】
合成炭化水素系粘着付与樹脂は、例えば、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。これらの中でもアクリル系重合体との相溶性が良く粘着性能がより向上できる点から、スチレン系樹脂が好ましい。
【0065】
本発明の粘着剤組成物で用いられる粘着付与樹脂としては、高極性被着体と低極性被着体の粘着力を両立するという観点で、ロジン系粘着付与樹脂、合成炭化水素系粘着付与樹脂が好ましく、合成炭化水素系粘着付与樹脂がより好ましい。
【0066】
粘着付与樹脂の軟化点は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、軟化点の上限は、170℃が好ましく、160℃がより好ましく、155℃がさらに好ましい。粘着付与樹脂の軟化点が80~170℃であることで粘着力と保持力を高いレベルで両立し易くなる。なお、軟化点は、JISK5902に規定されている乾球法にしたがって測定した軟化温度である。
【0067】
粘着付与樹脂は共重合体(A)100質量部に対して10~50質量部使用することが好ましく、15~40質量部がより好ましい。粘着付与樹脂を10~50質量部用いることで粘着力、凝集力、および曲面接着性により優れたものとすることができる。
【0068】
<ポリオレフィン>
本発明の粘着剤組成物は、さらにポリオレフィンを含むことができる。ポリオレフィンを含むことで、ポリオレフィン製の低極性被着体に対する粘着力を向上できる。
【0069】
ポリオレフィンは、塩素化されているポリオレフィン(以下、塩素化ポリオレフィン)と、塩素化されていないポリオレフィン(以下、非塩素化ポリオレフィン)に分類されるが、塩素化ポリオレフィンは、例えば、塩素化ポリプロピレン、酸変性塩素化ポリプロピレン、アクリル変性塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化エチレン酢酸ビニルコポリマー等が挙げられる。これらの中でも、溶解性に優れポリオレフィン製被着体への粘着力が高いという点から塩素化ポリプロピレン、酸変性塩素化ポリプロピレン、アクリル変性塩素化ポリプロピレンが好ましく、塩素化ポリプロピレンがより好ましい。
塩素化ポリオレフィンの塩素含有率は、ポリオレフィン製の低極性被着体に対する粘着力向上効果が高いという点から、20%以上45%以下が好ましく、28%以上45%以下がより好ましい。
【0070】
また、非塩素化ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、αオレフィン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリブテン、マレイン化ポリプロピレン、マレイン化ポリブテン、ポリブタジエンおよびその水素化物、ポリイソプレンおよびその水素化物、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化ポリイソプレン、ポリブタジエンポリオールおよびその水素化物、ポリイソプレンポリオールおよびその水素化物、プロセスオイルや流動パラフィン等の潤滑油等が挙げられる。
これらの中でも、溶解性に優れポリオレフィン製被着体への粘着力が高いという点からαオレフィン-ポリプロピレンコポリマー、マレイン化ポリプロピレン、ポリブテン、潤滑油が好ましい。潤滑油としては、パラフィン系潤滑油、ナフテン系潤滑油等が好ましい。
本発明の粘着剤組成物に用いられるポリオレフィンとしては、溶解性に優れポリオレフィン製被着体への粘着力が高いという点から塩素化ポリオレフィンが好ましく、その中でも塩素化ポリプロピレンがより好ましい。
【0071】
ポリオレフィンは、共重合体(A)100質量部に対して0.01~10質量部使用することが好ましく、0.02~5質量部がより好ましい。ポリオレフィンを0.01~10質量部用いることで低極性被着体に対する粘着力と凝集力、曲面接着性をより容易に両立することができる。
【0072】
本発明の粘着剤組成物は、さらに任意成分として、光開始剤、重合禁止剤、硬化剤、単官能単量体、多官能単量体、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤を含むことができる。
【0073】
本発明の粘着剤組成物は、光硬化性の向上等を目的として、必要に応じて任意の光開始剤を含有させることができる。例えば、紫外線反応性基としてベンゾフェノン基を有する共重合体を含む紫外線硬化型粘着剤組成物のように、共重合体が紫外線照射により単独で硬化する場合には、光開始剤の使用は任意である。
【0074】
光開始剤の例としては、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1- オン、2 -ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4- モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2- メチル-1-プロパン-1- オン、ビスアシルフォスフィンオキシド、アシルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ベンゾインアルキルエーテル(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、n-ブチルベンゾインエーテルなど)、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジル、ベンゾイル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン類(2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2 ,4-ジイソプロピルチオキサントン) 、ジベンゾスベロン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビス( ジメチルアミノ) ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンザルアセトン、ビアセチル、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、テトラメチルチウラムジスルフィド、α,α’-アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、3,3 ’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォルメート、2,2-ジエトキシアセトフェノン、アシロキシムエステル、塩素化アセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、4’-イソプロピル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、フェニルグリオキシル酸メチル、o-ベンゾイル安息香酸メチル、p-ジメチルアミノ安息香酸メチル、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾ- ル、10-ブチル-2-クロロアクリドン、カンファーキノン、3-ケトクマリン、アントラキノン類(例えば、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、α-クロロアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノンなど)、アセナフセン、4,4’-ジメトキシベンジル、4,4’-ジクロロベンジルなどが挙げられる。光開始剤の市販の例としては、BASF社のイルガキュアおよびオムニラッド、メルク社のダロキュア、ベルシコール社のベルシキュアの商標名で販売されているものが挙げられる。
【0075】
これらの光開始剤と、増感剤とを併用してもよい。光開始剤の使用量は、共重合体(A)100質量部に対し、1質量部以下が好ましい。
【0076】
本発明の粘着剤組成物は、任意の重合禁止剤を含むことができる。重合禁止剤の例としては、3,5-bis-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル(メトキノン)、p-tert-ブチルカテコールメトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール、フェノチアジン、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジフェニルアミン、ジニトロベンゼン等を用いることができる。
【0077】
本発明の粘着剤組成物は、任意の単官能単量体を含むことができる。単官能単量体としては特に制限はなく、例えば、前述のアルキル基を有する単量体(a’1)、カルボキシル基を有する単量体(a’2)、紫外線反応性基を有する単量体(a’3)、その他単量体に例示した単量体と同じものを用いることができる。
【0078】
本発明の粘着剤組成物は、任意の多官能単量体を含むことができる。多官能単量体としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,1 2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ( メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ アクリレート、ジビニルベンゼン等の、2官能性モノマー; トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ) アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の、3官能性以上の多官能性モノマー;その他、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等;が挙げられる。
【0079】
《粘着シート》
粘着シートは、本発明の粘着剤組成物から形成された層を紫外線硬化してなる粘着剤層を有する。粘着シートは、基材、および粘着剤層を備えていることが好ましい。また別の態様として、芯材の両面に粘着剤層を有する両面粘着シート、または基材および芯材を有さず粘着剤層のみで構成されたキャスト粘着シートも好ましい。前記粘着剤層は、粘着剤組成物を基材上に塗工し、乾燥後、紫外線を照射し、紫外線硬化することで形成できる。または、粘着剤組成物を剥離性シート上に塗工し、乾燥して粘着剤層を形成し紫外線を照射後、紫外線硬化し、基材を貼り合わせることで形成できる。なお粘着剤層の基材と接しない面に剥離性シートを貼り合わせて保管するのが通常である。
【0080】
前記粘着剤組成物を塗工する際に、溶液重合で説明した溶剤を添加して粘度を調整することができる。
【0081】
前記基材は、例えばセロハン、プラスチック、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス、および木材等が好ましい。基材の形状は、板状およびフィルム状を選択できるが、取り扱いが容易であるフィルム状が好ましい。基材は、単独または2種以上の積層体を使用できる。
【0082】
前記プラスチックは、例えばポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリアリレート、ポリアクリル、ポリフェニレンサルファイドム、ポリスチレン、ポリアミド、およびポリイミド;等が挙げられる。
【0083】
粘着剤組成物の塗工方法は、特に制限は無く、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、およびスピンコーター等が挙げられる。
塗工に際して乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥装置は、特に制限は無く、例えば熱風乾燥機、赤外線ヒーターおよび減圧法等が挙げられる。乾燥温度は、通常60~160℃程度である。
【0084】
粘着剤組成物の塗工後、層を紫外線照射することにより、紫外線硬化物である粘着剤層が得られるが、紫外線照射する方法としては、例えば、キセノンランプ、キセノン-水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ等の公知の紫外線光照射装置を用いる方法が挙げられる
【0085】
紫外線の積算光量としては、好ましくは10~200mJ/cm2、より好ましくは20~150mJ/cm2の範囲であることが良い。なお紫外線の積算光量は、へレウス株式会社製UVチェッカー「UV Power Puck II」を用いてUV-Cの波長域において測定した値を基準とする。
【0086】
粘着剤層の厚さは、1~20μmであることが好ましいが、1~15μmがより好ましく、3~10μmであることがさらに好ましい。本発明の紫外線硬化型粘着剤組成物を用いることで、1~20μmといった薄膜であっても、高極性被着体および低極性被着体のいずれに対する粘着力も優れた効果を有し、さらに保持力と、曲面接着性も良好である。
【0087】
本発明の粘着シートは、ポリオレフィンを始めとするプラスチック、ガラス、ダンボール、および金属等といった高極性から低極性まで被着体を選ばずに様々な用途で使用できる。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例をもって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例で「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を意味する。
また、表中の配合量は、質量部であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0089】
なお、共重合体の重量平均分子量(Mw)と酸価の測定は、次の方法により行なった。
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量の測定はGPCを用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
装置名:島津製作所製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL4本、東ソー社製HXL-H1本を直列に連結した。
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
【0090】
<酸価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した後、0.1N-アルコール性水酸化カリウム溶液にて滴定した。酸価(単位:mgKOH/g)は次式により求めた。なお、酸価は乾燥した試料の数値とした。
酸価={(5.61×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
S:試料の採取量(g)
a:0.1N-アルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1N-アルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
【0091】
(実施例1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート75.9部、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート(東亞合成社製、アロニックスM-5300)4部、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン0.1部、酢酸エチル70部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.015部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し反応溶液の不揮発分が30%となるように酢酸エチルを追加し、重量平均分子量90万の共重合体(A-1)溶液を得た。
【0092】
この共重合体(A-1)における単量体単位の含有率は、用いた単量体の含有率と同じである。よって、単量体単位(a1)として2-エチルヘキシルアクリレートとn-ブチルアクリレートの合計:95.9質量%、単量体単位(a2)としてω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート:4.0質量%、単量体単位(a3)として、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン:0.1質量%である。
【0093】
(実施例2~19、比較例1~4)
組成および配合量(質量部)を表1および表2記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例1~19、比較例1~4の共重合体(A-2~A-19、A’-1~4)溶液を得た。
共重合体(A-1~A-19、A’-1~4)における単量体単位の含有率は、用いた単量体の含有率と同じである。
【0094】
【0095】
【0096】
表1および2の略号を以下に記載する。
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
BA:n-ブチルアクリレート
M5300:ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート(東亞合成社製、アロニックスM-5300)、一般式(11)のR1が水素原子、m=5、n=2
βCEA:β-カルボキシエチルアクリレート(ダイセル・オルネクス社製、β-CEA)、一般式(11)のR1が水素原子、m=2、n=1
HOA-MS(N):2-アクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学社製、HOA-MS(N))、一般式(21)のR2が水素原子、R3がエチル基、p=2
HOA-HH:2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(共栄社化学社製、ライトアクリレートHOA-HH)、一般式(21)のR2が水素原子、R3がヘキシル基、p=2
AA:アクリル酸
ABP:4-アクリロイルオキシベンゾフェノン
CHA:シクロヘキシルアクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
ACMO:アクリロイルモルフォリン
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
【0097】
(実施例20)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート75.8部、β-カルボキシエチルアクリレート(ダイセル・オルネクス社製、β-CEA)4.1部、酢酸エチル70部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.015部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続し前駆体である共重合体(A’-20)溶液を得た。その後、反応容器内の給気を窒素から空気に切り替え、グリシジルメタクリレート0.1部、酢酸エチル30部、トリスジメチルアミノメチルフェノール0.08部、およびハイドロキノン0.08部を投入し、内部を空気で置換しながら6時間加熱攪拌後、反応容器を冷却し反応溶液の不揮発分が30%となるように酢酸エチルを追加し、重量平均分子量90万の共重合体(A-20)溶液を得た。
【0098】
この共重合体(A-20)における単量体単位の質量比は、単量体単位(a1)として2-エチルヘキシルアクリレートとn-ブチルアクリレートの合計:95.8質量%、単量体単位(a2)としてグリシジルメタクリレートの付加反応に用いられなかったβ-カルボキシエチルアクリレート:4.0質量%、単量体単位(a3)として、β-カルボキシエチルアクリレートと、β-カルボキシエチルアクリレートのカルボキシル基に付加反応したグリシジルメタクリレートの合計;0.2質量%である。
【0099】
(実施例21)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート75.9部、β-カルボキシエチルアクリレート(ダイセル・オルネクス社製、β-CEA)4部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、酢酸エチル70部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.015部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続し前駆体(A’-21)溶液を得た。その後、反応容器内の給気を窒素から空気に切り替え、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナート0.1部、酢酸エチル30部、ハイドロキノン0.08部を仕込み、IRにてイソシアネート基に基づく2270cm-1のピークの消失を確認するまで反応を行った。ピーク消失の確認後、冷却して反応溶液の不揮発分が30%となるように酢酸エチルを追加し、共重合体(A-21)溶液を得た。
【0100】
この共重合体(A-21)における単量体単位の質量比は、単量体単位(a1)として2-エチルヘキシルアクリレートとn-ブチルアクリレートの合計:95.8質量%、単量体単位(a2)としてβ-カルボキシエチルアクリレート:4.0質量%、単量体単位(a3)として、ヒドロキシエチルアクリレートと、ヒドロキシエチルアクリレートの水酸基に付加反応した2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートの合計:0.18質量%、その他単量体単位として、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートの付加反応に用いられなかったヒドロキシエチルアクリレート:0.02質量%である。
【0101】
(実施例22)
不揮発分30%の共重合体(A-3)溶液を粘着剤組成物として用いた。
粘着剤組成物を、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚さが10μmになるようにコンマコーターで塗工を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、紫外線照射装置を用いて、積算光量50mJ/m2(高圧水銀ランプ、照射強度120W/cm2)となるように照射した後、この粘着剤層に、厚さ25μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製、以下、PETシートという)を貼り合せることで「剥離性シート/粘着剤層/PETシート」という構成の粘着シートを得た。
【0102】
(実施例23)
共重合体(A-1)100部に対して、ロジン系粘着付与樹脂であるペンセルD-125(荒川化学社製)10部(不揮発分換算)、合成炭化水素系粘着付与樹脂であるFTR6100(三井化学社製)10部、ポリオレフィンであるスーパークロン360T(日本製紙社製)を1部配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分を30%に調整して粘着剤組成物を得た。
【0103】
得られた粘着剤組成物を、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚さが10μmになるようにコンマコーターで塗工を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、紫外線照射装置を用いて、積算光量50mJ/m2(高圧水銀ランプ、照射強度120W/cm2)となるように照射した後、この粘着剤層に、厚さ25μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製、以下、PETシートという)を貼り合せることで「剥離性シート/粘着剤層/PETシート」という構成の粘着シートを得た。
【0104】
(実施例24~32、34~42、46、48~56、比較例5~9)
組成および配合量(質量部)を表3~5記載の通りに変更した以外は実施例23と同様にして、実施例24~32、34~42、46、48~56および比較例5~9の粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0105】
(実施例33)
共重合体(A-10)100部を含む共重合体(A-10)溶液に、硬化剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体1.0部(不揮発分換算)、ロジン系粘着付与樹脂であるペンセルD-125(荒川化学社製)10部、合成炭化水素系粘着付与樹脂であるFTR6100(三井化学社製)10部、ポリオレフィンであるスーパークロン360T(日本製紙社製)を1部配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分を30%に調整した。
【0106】
得られた粘着剤組成物を、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚さが10μmになるようにコンマコーターで塗工を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、紫外線照射装置を用いて、積算光量50mJ/m2 (高圧水銀ランプ、照射強度120W/cm2)となるように照射した後、この粘着剤層に、厚さ25μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製、以下、PETシートという)を貼り合せ、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成することで「剥離性シート/粘着剤層/PETシート」という構成の粘着シートを得た。
【0107】
(実施例44)
組成および配合量(質量部)を表4記載の通りに変更した以外は実施例33と同様にして、実施例44の粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0108】
(実施例43)
共重合体(A-20)100部を含む共重合体(A-20)溶液に、光開始剤としてイルガキュア184(BASF社製、Omnirad184)を0.1部、ロジン系粘着付与樹脂であるペンセルD-125(荒川化学社製)10部、合成炭化水素系粘着付与樹脂であるFTR6100(三井化学社製)10部、ポリオレフィンであるスーパークロン360T(日本製紙社製)を1部配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分を30%に調整した。
【0109】
得られた粘着剤組成物を、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚さが10μmになるようにコンマコーターで塗工を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、紫外線照射装置を用いて、積算光量50mJ/m2 (高圧水銀ランプ、照射強度120W/cm2)となるように照射した後、この粘着剤層に、厚さ25μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製、以下、PETシートという)を貼り合せることで「剥離性シート/粘着剤層/PETシート」という構成の粘着シートを得た。
【0110】
(実施例45、47)
組成および配合量(質量部)を表4記載の通りに変更した以外は実施例43と同様にして、実施例45、47の粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0111】
《粘着シートの評価》
得られた粘着シートを以下の方法で評価した。結果を表3~5に示す。
(1)粘着力
得られた粘着シートを幅25mm・縦100mmの大きさに準備した。23℃、相対湿度50%雰囲気下、前記粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層をステンレス(SUS)板に貼り付け、2kgロールで1往復圧着した。24時間放置した後に引張試験機を用いて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験において粘着力を測定し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。(JIS Z 0237:2000に準拠)
A:「粘着力が12N以上であり、非常に良好。」
B:「粘着力が10N以上12N未満であり、良好。」
C:「粘着力が6N以上10N未満であり、実用可。」
D:「粘着力が6N未満であり、実用不可。」
上記同様にポリプロピレン(PP)板に対して粘着力を測定し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
A:「粘着力が12N以上であり、非常に良好。」
B:「粘着力が10N以上12N未満であり、良好。」
C:「粘着力が6N以上10N未満であり、実用可。」
D:「粘着力が6N未満であり、実用不可。」
【0112】
(2)保持力
得られた粘着シートを幅25mm・長さ100mmの大きさに切り取り試料とした。次いで23℃-50%RH雰囲気下、JIS Z 0237に準拠して、試料から剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層の先端部幅25mm・長さ25mm部分を研磨したステンレス(SUS)板に貼着し、2kgロールで1往復圧着した後、70℃雰囲気で1kgの荷重をかけ、7万秒保持した。評価は、SUS板から試料が落下した場合はその秒数を示す。試料が落下しなかった場合は、粘着剤層とSUS板の接着先端部が、荷重により下にずれたmm数を示す。評価基準を以下に示す。
A:「試料のずれが0.05mm未満、非常に良好。」
B:「試料のずれが0.05mm以上0.2mm未満であり、良好。」
C:「試料のずれが0.2mm以上で落下なし、実用可。」
D:「試料が落下、実用不可。」
【0113】
(3)曲面接着性
得られた粘着シートを23℃-50%RHの恒温恒湿室にて、長さ25mm×幅15mmの測定試料を準備した。当該測定試料から剥離シートを剥がし露出した粘着剤層を、10mmφの円筒状ポリプロピレン(PP)樹脂の円周方向に貼り付け、72時間放置した。その後さらに80℃雰囲気下で24時間放置後、貼り付けられた測定試料の末端部分の剥がれた状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
A:「末端部分に剥がれがなく、優れている。」
B:「末端部分に剥がれが長さ3mm未満であり、良好。」
C:「末端部分の剥がれが長さ3mm以上8mm未満であり、実用可。」
D:「末端部分の剥がれが長さ8mm以上であり、実用不可。」
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
表3~5の略号を以下に記載する。
<硬化剤>
TDI/TMP:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(不揮発分37.5%)
<粘着付与樹脂>
D-125:ペンセルD-125(荒川化学社製、ロジン系粘着付与樹脂)
FTR6100:FTR6100(三井化学社製、合成炭化水素系粘着付与樹脂(スチレン系粘着付与樹脂))
T115:YSポリスターT115(ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール系粘着付与樹脂)
PX1000:YSレジンPX1000(ヤスハラケミカル社製、テルペン系粘着付与樹脂)
<ポリオレフィン>
360T:スーパークロン360T(日本製紙社製、塩素化ポリプロピレン、塩素含有率31%)
930:スーパークロン930(日本製紙社製、塩素化ポリプロピレン、塩素含有率21%)
<光開始剤>
IRG184:イルガキュア184(BASF社製、Omnirad184、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
【0118】
表3~5に示すように本発明の粘着シートは、高極性被着体であるステンレス板と低極性被着体であるポリプロピレン板の両方に対する粘着力に優れ、さらに保持力、曲面接着性に優れていることが確認できた。これに対し、比較例粘着シートでは、いずれかの項目が不良となっており、実用上問題があり、実用不可であることが分かる。
【要約】
【課題】薄膜であっても高極性被着体および低極性被着体のいずれに対しても、高い粘着力を示すとともに、保持力、曲面接着性も優れる粘着剤、および粘着シートを提供すること。
【解決手段】紫外線反応性基を有する共重合体(A)を含み、前記共重合体(A)は、重量平均分子量が40万~150万であり、且つ、アルキル基を有する単量体単位(a1)、カルボキシル基を有する単量体単位(a2)、紫外線反応性基を有する単量体単位(a3)を有する共重合体であり、カルボキシル基を有する単量体単位(a2)は、一般式(1)で表される(a2-1)および一般式(2)で表される(a2-2)の少なくともいずれかを有することを特徴とする紫外線硬化型粘着剤組成物により解決される。
【選択図】なし