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特許7066091希土類元素及び/又はアクチノイドの吸着材、それを用いた希土類元素及び/又はアクチノイドの回収方法並びにそれを用いたスカンジウム又はアクチノイドの分離方法
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  • 特許-希土類元素及び/又はアクチノイドの吸着材、それを用いた希土類元素及び/又はアクチノイドの回収方法並びにそれを用いたスカンジウム又はアクチノイドの分離方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】希土類元素及び/又はアクチノイドの吸着材、それを用いた希土類元素及び/又はアクチノイドの回収方法並びにそれを用いたスカンジウム又はアクチノイドの分離方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 59/00 20060101AFI20220506BHJP
   C22B 60/02 20060101ALI20220506BHJP
   C22B 3/24 20060101ALI20220506BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20220506BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20220506BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C22B59/00
C22B60/02
C22B3/24 101
B01J20/22 B
B01J20/34 G
B01D15/00 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017141453
(22)【出願日】2017-07-21
(65)【公開番号】P2019019400
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000180586
【氏名又は名称】株式会社ケミクレア
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】松村 達郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英哉
(72)【発明者】
【氏名】渡部 創
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正行
(72)【発明者】
【氏名】小藤 博英
(72)【発明者】
【氏名】国井 茂
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴昌
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-152382(JP,A)
【文献】特開2016-186108(JP,A)
【文献】特開2014-105200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表されるニトリロトリアセトアミドを含浸させたスチレン-ジビニルベンゼン共重合体を被覆したシリカ粒子を含む、希土類元素及び/又はアクチノイドの吸着材。

(式(A)中、Rはそれぞれ独立して、炭素数1~20の炭化水素基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、トリアジル基、チアン基、又は水素原子を表す。)
【請求項2】
希土類元素及び/又はアクチノイドを含む第1酸性水溶液に、請求項1に記載の吸着材を接触させる固液接触工程を含む、希土類元素及び/又はアクチノイドの回収方法。
【請求項3】
前記第1酸性水溶液が、塩化物イオン(Cl)及び硝酸イオン(NO )から選択される1以上の陰イオンを含む、請求項2に記載の希土類元素及び/又はアクチノイドの回収方法。
【請求項4】
さらに前記固液接触工程で接触させた前記第1酸性水溶液と吸着材を分離する分液工程、及び前記分液工程で分離した吸着材と、第2酸性水溶液とを接触させる溶離工程を含む、請求項2又は3に記載の希土類元素及び/又はアクチノイドの回収方法。
【請求項5】
前記溶離工程で接触させる第2酸性水溶液の水素イオン濃度が、0.1~8.0Mである、請求項4に記載の希土類元素及び/又はアクチノイドの回収方法。
【請求項6】
スカンジウム及びスカンジウム以外の希土類元素を含み、濃度が3.0~8.0Mである塩酸又は硝酸の第1酸性水溶液を、請求項1に記載の吸着材に接触させる固液接触工程を含む、スカンジウムとスカンジウム以外の希土類元素の分離方法。
【請求項7】
アクチノイド及びスカンジウム以外の希土類元素を含み、濃度が0.001~1.0Mである塩酸又は硝酸の第1酸性水溶液を、請求項1に記載の吸着材に接触させる固液接触工程を含む、アクチノイドとスカンジウム以外の希土類元素の分離方法。
【請求項8】
さらに前記固液接触工程で接触させた前記第1酸性水溶液と吸着材を分離する分液工程、及び前記分液工程で分離した吸着材と、第2酸性水溶液とを接触させる溶離工程を含む、請求項6又は7に記載の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリロトリアセトアミドを用いた希土類元素及び/又はアクチノイドの回収並びにスカンジウム又はアクチノイドの分離に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素(レアアース)の1つであるスカンジウムは、微量添加することによって金属材料や半導体材料の機能や物性を飛躍的に高めることができるため、構造材、電子材料、磁性材料、機能性材料等に利用され、様々な工業製品において非常に重要な役割を果たしている。例えば、アルミニウム-スカンジウム合金は、高機能素材として航空宇宙用部品、スポーツ用品(自転車、野球のバット、射撃等)等に利用されており、また、酸化スカンジウムをジルコニア磁器に添加することによって、ひび割れを防ぐ効果があることも知られている。
【0003】
一方、スカンジウムは、濃縮された鉱物が存在せず、他の金属鉱石の副産物として産出されており、加えてその産出国が限られているため、供給が不安定な元素である。特に近年、固体酸化物燃料電池の電解質の添加剤として需要が急増し、市場から枯渇したため、その安定的な確保が重要な課題となっている。
【0004】
また、スカンジウムは、化学的性質がその他の希土類元素やアクチノイドと非常に似ているため、これらの混合物からスカンジウムだけを分離することは極めて困難であることが知られている。
スカンジウムを回収又は精製する方法としては、スカンジウムを含む水溶液とトリオクチルホスフィンオキシドを含む有機溶媒とを混合して有機溶媒中にスカンジウムを抽出し、その有機溶媒と、水、塩酸、硫酸、シュウ酸の何れか1種類以上を含有する逆抽出試液とを混合し、有機溶媒からスカンジウムを逆抽出する方法(特許文献1参照)や抽出剤として特定のアミド誘導体を利用する方法(特許文献2参照)、スカンジウム及び/又はランタノイドを含む酸性水溶液を、特定のニトリロ三酢酸トリアミドの存在下で有機溶媒に接触させる方法(特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/190879号
【文献】特開2013-189675号公報
【文献】特開2016-186108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術において、液液処理は廃液の量が多く環境への負担が懸念されること、工業製品への利用のために分離する金属の純度を上げることについて未だ改善の余地を残している。
本発明の目的は、希土類元素及び/又はアクチノイドを効率よく吸着するための吸着材、それを用いた希土類元素及び/又はアクチノイドの回収方法並びにそれを用いたスカンジウム又はアクチノイドの分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、希土類元素及び/又はアクチノイドを含む酸性水溶液を、特定のニトリロトリアセトアミドを含浸させた吸着材に接触させることにより、希土類元素及び/又はアクチノイドを吸着材に吸着し、その後脱離させることにより、効率良く分離することができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の第1の態様は、下記一般式(A)で表されるニトリロトリアセトアミドを含浸させた担体を含む、希土類元素及び/又はアクチノイドの吸着材である。
【化1】
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して、窒素原子もしくは硫黄原子を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基、又は水素原子を表す。)
また、本発明の第2の態様は、希土類元素及び/又はアクチノイドを含む第1酸性水溶液に、前記吸着材を接触させる固液接触工程を含む、希土類元素及び/又はアクチノイドの回収方法である。
前記第1酸性水溶液は、塩化物イオン及び硝酸イオンから選択される1以上の陰イオンを含んでいてもよい。
さらに、前記回収方法は前記固液接触工程の後に溶離工程を含んでいてもよい。
また、本発明の第3の態様は、スカンジウム及びスカンジウム以外の希土類元素を含み、濃度3.0~8.0Mの塩酸又は硝酸の第1酸性水溶液に、前記吸着材を接触させる固液接触工程を含む、スカンジウムのスカンジウム以外の希土類元素からの分離方法である。
また、本発明の第4の態様は、アクチノイド及びスカンジウム以外の希土類元素を含み、濃度0.001~1.0Mの塩酸又は硝酸の第1酸性水溶液に、前記吸着材を接触させる固液接触工程を含む、アクチノイドのスカンジウム以外の希土類元素からの分離方法である。
さらに、前記分離方法は前記固液接触工程の後に溶離工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、処理廃液の量を低減し、分離する金属の純度を上げることができる。また、固液分離処理に用いる装置は、液液処理に用いる装置よりも構造がシンプルであるため、初期コストを抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ニトリロトリアセトアミドを含浸させた担体を含む吸着材による3価の希土類元素の分配係数(Kd)と硝酸濃度(M)との関係を表したグラフである。
図2】ニトリロトリアセトアミドを含浸させた担体を含む吸着材による3価のアメリシウムイオン(Am(III))、3価のキュリウムイオン(Cm(III))、及び3価のユウロピウムイオン(Eu(III))の分配係数(Kd)と硝酸濃度(M)との関係を表したグラフである。
図3】ニトリロトリアセトアミドを含浸させた担体を含む吸着材による抽出クロマトグラフィーによる濃度プロファイルを表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<希土類元素及び/又はアクチノイドの吸着材>
本発明の一態様である希土類元素及び/又はアクチノイドの吸着材は、下記一般式(A)で表されるニトリロトリアセトアミド(以下、「NTAアミド」と略す場合がある。)を含浸させた吸着材である。一般式(A)で表されるNTAアミドの具体的種類は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0011】
【化2】
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して、窒素原子もしくは硫黄原子を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基、又は水素原子を表す。)
【0012】
Rは炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましく、「炭化水素基」は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素-炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。さらに、Rは窒素原子や硫黄原子を含んだ炭化水素基でもよい。また、Rは同一の炭化水素基に限定されず、異なる炭化水素基であってもよい。Rの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上であり、好ましくは18以下、より好ましくは15以下である。
Rとしては、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、2-エチルへキシル基、2,2-ジメチルへキシル基、フェニル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、トリアジル基、チアン基等が挙げられる。
一般式(A)で表されるNTAアミドとしては、以下の式で表されるものが挙げられる。
【0013】
【化3】
【0014】
一般式(A)で表されるNTAアミドの使用量(存在量)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、含浸させる担体の質量を基準(担体に含浸している場合の含浸率)とした場合、通常0.1~80パーセント(%)の範囲であり、好ましくは1%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上であり、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。上記範囲内であると、希土類元素及び/又はアクチノイドを効率良く吸着し易くなる。
【0015】
前記吸着材においてNTAアミドを含浸させる物体は、ポリマーで被覆される担体が好ましい。
担体は、特に限定されず、水との固液抽出や吸着クロマトグラフィーに利用される公知のものを適宜選択することができる。具体的には、シリカ、シリカゲル、二酸化ケイ素等のシリカ系担体、ジビニルベンゼン、スチレン、エステル等を含む樹脂を用いることができる。この中でも、NTAアミドの含浸率が高いことからシリカ系担体が好ましく、二酸化ケイ素(SiO)が特に好ましい。また、担体は多孔質であることが好ましい。
この担体の大きさは、長径で通常10~100μmであり、好ましくは30~50μmである。担体が多孔質である場合、細孔の大きさは、通常50~800nmであり、好ましくは400~600nmである。細孔の大きさが上記範囲内であれば、溶液を吸着材内
部まで接触させることが容易となるので好ましい。また、その形状は、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、偏平状、等が挙げられる。これらの物性を満たす担体としては、旭化成社製シリカ粒子や富士シリシア化学製シリカ粒子、等がある。
【0016】
また、NTAアミドの含浸率を高めるため、担体表面にスチレンジビニルベンゼン等のポリマーを塗布して用いることが特に好ましい。
前記ポリマーを担体に被覆する方法は、特に限定されず、常法に従って行えばよい。例えば担体上での架橋反応による重合を用いることができる。ポリマーの担体表面における添着率は、熱重量測定法で測定される熱分解量より求められ、通常10~25%であり、好ましくは15~20%である。ポリマーの担体における添着率が上記範囲内であれば、NTAアミドを効率よく含浸できるので好ましい。
【0017】
<希土類元素及び/又はアクチノイドの回収方法>
本発明の一態様である希土類元素及び/又はアクチノイドの回収方法(以下、「本発明の回収方法」と略す場合がある。)は、希土類元素及び/又はアクチノイドを含む酸性水溶液とNTAアミドを含浸させた担体を含む前記吸着材を接触させる固液接触工程(以下、「固液接触工程」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。
本発明者らは、希土類元素及び/又はアクチノイドの効率的な吸着方法を求めて検討を重ねた結果、希土類元素及び/又はアクチノイドを含む第1酸性水溶液を、一般式(A)で表されるNTAアミドを含浸する担体を含む吸着材に接触させることにより、希土類元素及び/又はアクチノイドを吸着材に吸着させて、効率良く回収することができることを見出した。
希土類元素及び/又はアクチノイドを効率良く回収することができるメカニズムは以下のように考えられる。
NTAアミドは、水に対しても有機溶媒に対しても親和性が高く、また希土類元素及び/又はアクチノイドとの結合に非常に適した構造を有していると考えられる(窒素原子と3つのアミド基が、希土類元素及び/又はアクチノイドと結合に有効に作用するものと考えられる。)。そのため、吸着材と第1酸性水溶液の固液接触によって、NTAアミドが希土類元素及び/又はアクチノイドと会合し、第1酸性水溶液中の希土類元素及び/又はアクチノイドが吸着材に吸着して、回収されるものと考えられる。
また、NTAアミドは、希土類元素及び/又はアクチノイドを溶離し易いという優れた特長も有している。即ち、希土類元素及び/又はアクチノイドが吸着した吸着材を硫酸水溶液等の第2酸性水溶液に接触させることによって、第2酸性水溶液に希土類元素及び/又はアクチノイドを溶離させて回収することが可能となるのである。
さらに、NTAアミドは、例えば陰イオン濃度(酸濃度)によって、それぞれの元素に対する親和性が変化するため、特定の元素を選択的に吸着することも可能となる。そのため、例えばスカンジウムとイットリウムのように従来分離が困難であった元素同士を、効率的に分離することが可能となり、工業廃液の処理や希土類元素(レアアース)の生産に応用することができる。
【0018】
本発明の回収方法は、希土類元素及び/又はアクチノイドの回収方法であるが、回収対象元素の具体的種類は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
希土類元素は、スカンジウム(Sc)、ランタノイド及びイットリウム(Y)の総称である。よって「スカンジウム以外の希土類元素」とはランタノイド及びイットリウム(Y)を示している。
ここで、「ランタノイド」とは、ランタノイドに属する金属元素を意味し、酸性水溶液や有機溶媒中の酸化数、状態等は特に限定されないものとする。
なお、ランタノイドは、具体的にはランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、
ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)である。アクチノイドは、具体的にはアクチニウム(Ac)、トリウム(Th)、プロトアクチニウム(Pa)、ウラン(U)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)である。
回収対象元素としては、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)が好ましく、スカンジウム(Sc)が特に好ましい。上記のものであると、特に効率良く回収することができる。
なお、希土類元素及び/又はアクチノイドの酸化数は、通常1~6価であり、それぞれの元素に応じた安定な酸化数を有しているが、3価、4価、5価が好ましく、3価が特に好ましい。
また、回収対象元素は、希土類元素及び/又はアクチノイドから選ばれる1種類に限られず、2種類以上であってもよい。
【0019】
(第1酸性水溶液)
第1酸性水溶液は、希土類元素及び/又はアクチノイドを含む第1酸性水溶液を含んでいれば調達方法は特に限定されず、希土類元素及び/又はアクチノイドを含む酸性水溶液を入手しても、或いは希土類元素及び/又はアクチノイドを含む酸性水溶液を自ら調製してもよい。
また、希土類元素及び/又はアクチノイドを含む酸性水溶液を自ら調製する場合の調製方法も特に限定されず、希土類元素及び/又はアクチノイドを含む水溶液に酸を添加しても、或いは希土類元素及び/又はアクチノイドを溶解させるために酸性水溶液を用意し、それに希土類元素及び/又はアクチノイドを含んだものを添加してもよい。
【0020】
第1酸性水溶液は、回収対象元素である希土類元素及び/又はアクチノイドを含むものであれば、その他の元素を含むものであってもよい。その他の元素としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属元素、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)等のアルカリ土類金属元素、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の遷移金属元素等が挙げられる。
【0021】
第1酸性水溶液の陰イオン濃度(酸濃度)は、通常0.0001~8.0Mの範囲であり、好ましくは0.001M以上、より好ましくは0.01M以上、さらに好ましくは0.02M以上であり、好ましくは7.0M以下、より好ましくは6.0M以下、さらに好ましくは4.0M以下である。
また、スカンジウム(Sc)を回収対象元素とする場合の酸性水溶液の陰イオン濃度(酸濃度)は、好ましくは0.001M以上、より好ましくは0.01M以上、さらに好ましくは0.02M以上であり、好ましくは7.0M以下、より好ましくは6.0M以下、さらに好ましくは4.0M以下である。
また、ランタン(La)を回収対象元素とする場合の酸性水溶液の陰イオン濃度(酸濃度)は、好ましくは0.1M以上、より好ましくは0.5M以上、さらに好ましくは1M以上であり、好ましくは3M未満、より好ましくは2.5M以下、さらに好ましくは2M以下である。
また、セリウム(Ce)を回収対象元素とする場合の酸性水溶液の陰イオン濃度(酸濃度)は、好ましくは0.1M以上、より好ましくは0.5M以上、さらに好ましくは1M以上であり、好ましくは3M未満、より好ましくは2.5M以下、さらに好ましくは2M以下である。
また、アメリシウム(Am)を回収対象元素とする場合の酸性水溶液の陰イオン濃度(酸濃度)は、好ましくは0.001M以上、より好ましくは0.01M以上、さらに好ま
しくは0.02M以上であり、好ましくは2.0M以下、より好ましくは1.0M以下、さらに好ましくは0.2M以下である。
また、キュリウム(Cm)を回収対象元素とする場合の酸性水溶液の陰イオン濃度(酸濃度)は、好ましくは0.001M以上、より好ましくは0.01M以上、さらに好ましくは0.02M以上であり、好ましくは2.0M以下、より好ましくは1.0M以下、さらに好ましくは0.2M以下である。
【0022】
第1酸性水溶液に使用する酸の具体的種類は、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。なお、塩酸を使用する場合、第1酸性水溶液は塩化物イオン(Cl)を含み、硫酸を使用する場合、第1酸性水溶液は硫酸イオン(SO 2-)を含み、硝酸を使用する場合、第1酸性水溶液は硝酸イオン(NO )を含むと表現することができる。スカンジウムを分離する場合、この中でも硝酸を使用すること、即ち第1酸性水溶液は硝酸イオン(NO )を含むことが好ましい。
【0023】
第1酸性水溶液における回収対象元素である希土類元素及び/又はアクチノイドの濃度は、それぞれ通常0M(mol/dm)より大きく、0.5M以下の範囲であり、好ましくは0.1M以下、より好ましくは0.05M以下、さらに好ましくは0.01M以下である。上記範囲内であると、希土類元素及び/又はアクチノイドを効率良く吸着し易くなる。
【0024】
(固液接触工程)
固液接触工程は、前記希土類元素及び/又はアクチノイドを含む第1酸性水溶液をNTAアミドを含浸させた担体を含む吸着材に接触させる工程である。
【0025】
固液接触工程の操作手順は、特に限定されず、固液抽出または吸着に利用される公知の操作手順を適宜選択することができる。例えば、任意の容器に希土類元素及び/又はアクチノイドを含む第1酸性水溶液と吸着材を投入し、振とう機等を用いて第1酸性水溶液と吸着材を十分に混合した後、遠心分離によって相分離させて、分離を行うことが挙げられる。また、容器の代わりにカラム等の吸着装置や分液漏斗等の公知の吸着装置又は分離器具を用いることもできる。
なお、第1酸性水溶液と吸着材を振とうする場合の振とう時間は、通常10秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは60秒以上、さらに好ましくは120秒以上である。上記範囲内であると、希土類元素及び/又はアクチノイドをより効率良く吸着することができる。
固液接触工程は、1回に限られず、接触と分液を複数回繰り返してもよい。固液接触工程の回数は、通常1回~20回の範囲であり、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上、さらに好ましくは4回以上であり、好ましくは15回以下、より好ましくは10回以下、さらに好ましくは5回以下である。上記範囲内であると、希土類元素及び/又はアクチノイドを効率良く回収し易くなる。
【0026】
接触させる吸着材と第1酸性水溶液の固液比(吸着材/酸性水溶液)は、目的に応じて適宜選択することができるが、通常吸着材1g当たり0.01mL~100mLの範囲であり、好ましくは吸着材1g当たり0.02mL以上、より好ましくは0.1mL以上、さらに好ましくは0.2mL以上であり、好ましくは50mL以下、より好ましくは30mL以下、さらに好ましくは10mL以下である。上記範囲内であると、希土類元素及び/又はアクチノイドを効率良く吸着し易くなる。
【0027】
本発明の回収方法は、前述の固液接触工程を含むものであれば、その他の工程を含むものであってもよい。例えば、固液接触工程で接触させた第1酸性水溶液と吸着材を分離する分液工程、前記分液工程で分離した吸着材に第2酸性水溶液を接触させる溶離工程(以
下、「溶離工程」と略す場合がある。)等が挙げられる。以下、溶離工程の詳細について説明する。
【0028】
(溶離工程)
溶離工程は、分液工程で分離した吸着材に第2酸性水溶液を接触させる工程である。第2酸性水溶液は、原則として回収対象元素を含んでいないものを使用する。溶離工程で接触させる第2酸性水溶液の水素イオン濃度等は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
溶離工程で接触させる第2酸性水溶液の水素イオン濃度は、通常0.1~8.0Mの範囲であり、好ましくは1.0M以上、より好ましくは2.0M以上、さらに好ましくは4.0M以上であり、好ましくは7.0M以下、より好ましくは6.0M以下、さらに好ましくは5M.0以下である。
また、スカンジウム(Sc)を溶離する場合の第2酸性水溶液の水素イオン濃度は、好ましくは1.0M以上、より好ましくは2.0M以上、さらに好ましくは4.0M以上であり、好ましくは7.0M以下、より好ましくは6.0M以下、さらに好ましくは5.0M以下である。
また、ランタン(La)を溶離する場合の第2酸性水溶液の水素イオン濃度は、好ましくは0.1M以上、より好ましくは0.2M以上、さらに好ましくは0.3M以上であり、好ましくは4.0M以下、より好ましくは3.0M以下、さらに好ましくは2.0M以下である。
また、セリウム(Ce)を溶離する場合の第2酸性水溶液の水素イオン濃度は、好ましくは0.1M以上、より好ましくは0.2M以上、さらに好ましくは0.3M以上であり、好ましくは4.0M以下、より好ましくは3.0M以下、さらに好ましくは2.0M以下である。
また、アメリシウム(Am)を溶離する場合の第2酸性水溶液の水素イオン濃度は、好ましくは1.0M以上、より好ましくは2.0M以上、さらに好ましくは4.0M以上であり、好ましく7.0M以下、より好ましくは6.0M以下、さらに好ましくは5.0M以下である。
また、キュリウム(Cm)を溶離する場合の第2酸性水溶液の水素イオン濃度は、好ましくは1.0M以上、より好ましくは2.0M以上、さらに好ましくは4.0M以上であり、好ましく7.0M以下、より好ましくは6.0M以下、さらに好ましくは5.0M以下である。
溶離工程で接触させる第2酸性水溶液に使用する酸の具体的種類は、特に限定されないが、塩酸、硫酸等の無機酸が挙げられる。なお、塩酸を使用する場合、第2酸性水溶液は塩化物イオン(Cl)を含み、硫酸を使用する場合、第2酸性水溶液は硫酸イオン(SO 2-)を含むと表現することができる。スカンジウムを溶離する場合、この中でも硫酸を使用すること、即ち第2酸性水溶液は硫酸イオン(SO 2-)を含むことが好ましい。
【0029】
溶離工程の操作手順は、特に限定されず、溶離に利用される公知の操作手順を適宜選択することができる。
【0030】
溶離工程において接触させる吸着材と第2酸性水溶液の固液比(吸着材/酸性水溶液)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、通常吸着材1g当たり0.01mL~100mLの範囲であり、好ましくは吸着材1g当たり0.02mL以上、より好ましくは0.1mL以上、さらに好ましくは0.2mL以上であり、好ましくは50mL以下、より好ましくは20mL以下、さらに好ましくは10mL以下である。上記範囲内であると、希土類元素及び/又はアクチノイドを効率良く溶離し易くなる。
【0031】
<スカンジウムと、スカンジウム以外の希土類元素の分離方法>
前述のように、NTAアミドは、例えば水素イオン濃度や陰イオン濃度によって、それぞれの元素に対する親和性が変化するため、特定の元素を選択的に分離することも可能となる。従って、第1酸性水溶液にスカンジウム及びスカンジウム以外の希土類元素が含まれる場合、第1酸性水溶液の陰イオン濃度(酸濃度)を3.0~8.0Mとすることで、スカンジウムを吸着材に吸着させ、スカンジウム以外の希土類元素と分離することにも利用することができる。
第1酸性水溶液の陰イオン濃度の範囲は、好ましくは3.5M以上、より好ましくは4.0M以上、好ましくは7.0M以下、より好ましくは6.0M以下である。
【0032】
<アクチノイドと、スカンジウム以外の希土類元素の分離方法>
別の態様では、第1酸性水溶液にアクチノイド及びスカンジウム以外の希土類元素が含まれる場合、第1酸性水溶液の陰イオン濃度(酸濃度)を0.001M~1.0Mとすることで、アクチノイドを吸着材に吸着させ、スカンジウム以外の希土類元素と分離することにも利用することができる。
第1酸性水溶液の陰イオン濃度の範囲は、好ましくは0.01M以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.05M以上、好ましくは1.0M以下、より好ましくは0.5M以下、さらに好ましくは0.1M以下である。
【0033】
吸着させない元素としては、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)等が挙げられる。
スカンジウム(Sc)とユウロピウム(Eu)又はガドリニウム(Gd)との分離は特に困難であるが、スカンジウム(Sc)とユウロピウム(Eu)又はガドリニウム(Gd)とは、分配係数(後述の実施例2を参照。)に差が出る、即ち十分な分離係数(後述の実施例2を参照。)が得られることを本発明者らは明らかとしている。特に分配係数と分離係数が高くなるように、分離装置、酸濃度、添加剤等を選択することによって、これらを効率良く分離することができる。
分離効率を高めるために、第1酸性水溶液は添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、硝酸アンモニウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム等が挙げられる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0036】
<ニトリロトリアセトアミドを含浸させる担体の調製>
直径40~60μmで細孔径600nmの球形シリカ粒子をガラスフラスコに入れてロータリーエバポレーターにセットし、フラスコを減圧ポンプにて減圧した。モノマー(m/p-ホルミルスチレン及びm/p-ジビニルベンゼン)、重合開始剤(α,α-アゾビスイソブチロニトリル及び1,1‘-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリル)、並びに希釈剤(1,2,3-トリクロロプロパン及びm-キシレン)の混合物を前記フラスコにゴムチューブを通して吸引させた。混合物がシリカ粒子の細孔に完全に染み渡るようにフラスコを継続的に回転させた後、フラスコを窒素ガスで満たした。フラスコはシリ
コーンオイルバスに、90℃に昇温して20時間保持した。グラフト化した材料(SiO-P)はアセトン及び熱湯で洗った後、50℃で一晩乾燥させた。熱重量分析で測定される共重合体(ホルミルスチレン-ジビニルベンゼン)のSiO-P粒子における添着率は、17.6wt%であった。
【0037】
<ニトリロトリアセトアミドを含浸させた吸着材の調製方法>
スチレン-ジビニルベンゼンを被覆したシリカ粒子(SiO-P)をメタノールで3回洗い、60℃で一晩乾燥させた。2.5gの純度99%の下記式(B)で表されるニトリロトリアセトアミド(以下、「NTAアミド」と略す場合がある。)をコニカルフラスコに入れて60cmのジクロロメタンに溶解して希釈し、続いて10gの乾燥した粒子(SiO-P)を加え混合物を25℃で2時間勢いよく回転させた。その後ロータリーエバポレーターを用いて50℃で減圧することで希釈剤を除去した。残りを50℃真空にて一晩乾燥させることで、シリカをベースとしてNTAアミドを含浸させた吸着材が得られた。含浸の工程においてNTAアミドのロスはないので、この吸着材は0.25gのNTAアミド及び1.0gのSiO-Pを含んでおり、NTAアミドの含浸率は20質量%であった。
【0038】
【化4】
【0039】
<実施例1:スカンジウム及びスカンジウム以外の希土類元素(RE)の回収>
3価のスカンジウムイオン(Sc(III))及び3価のスカンジウム以外の希土類元素イオン(便宜的に「RE(III)」と表示する。)をそれぞれ濃度約100ppm含んだ0.15Mの硝酸水溶液(フィード液)と、上記の方法により調製した吸着材をそれぞれ準備した。
準備した吸着材0.5gを内径1cm、高さ10cmのカラムに充填(7.85cm)し、0.15Mの硝酸を3mL流し、コンディショニングを行った。その後、フィード液を0.5mL流し、次に、0.15Mの硝酸(洗浄用硝酸水溶液)を10mL流して洗浄した後、4Mの硫酸を15mL流して金属イオンを溶離しさせた。流出液をそれぞれ1mL毎にサンプリングし、ICP-AES(SPS3500 セイコーインスツル株式会社)によりSc(III)、及びRE(III)の濃度を定量した。
各溶液中のSc(III)、及びRE(III)の濃度と酸溶液量との関係から、Sc(III)、及びRE(III)の回収率を決定した。結果を表1に示す。なお、回収率は、下記式(1)により算出した。
表1の結果から、本実施例の吸着材はスカンジウム及びスカンジウム以外の希土類元素に対して優れた溶離能を持つことがわかる。
【0040】
【数1】
【0041】
【表1】
【0042】
<実施例2:スカンジウムとスカンジウム以外の希土類元素(RE)の分配係数>
3価のスカンジウムイオン(Sc(III))、3価のスカンジウム以外の希土類元素イオン(RE(III))を濃度約20ppm含んだ各濃度の硝酸水溶液と、上記の方法により調製した吸着材をそれぞれ準備した。なお、硝酸として多摩化学工業株式会社製の超高純度分析用試薬TAMAPURE-AA-100を、希釈水として超純水製造装置(Milli-Q Merck Millipore社製)を用いて調製した超純水を、n-ドデカンとして和光純薬株式会社製の特級試薬を用いた。
【0043】
濃度が0.1、0.25、0.5、1、2、3、4Mの硝酸水溶液5mlと準備した吸着材0.1gを容器に投入し、振とう機(YS-8D 株式会社ヤヨイ社製)を用いて、室温(25℃±1℃)で180分間振とうした。その後、5分間遠心分離(CN-820
アズワン株式会社製)を行って分離させ、水相の溶液をサンプリングし、溶液中の金属イオン濃度をICP-AES(SPS3500 セイコーインスツル株式会社)により定量した。得られた値からSc(III)、及びRE(III)の分配係数(Kd)を算出した。算出した値と硝酸濃度との関係を図1に示す。
なお、分配係数(Kd)、分離係数(SFSc/RE)は、下記式(2)及び(3)により算出した。
【0044】
【数2】
【0045】
図1の結果から、Sc(III)の分配係数は、何れの硝酸濃度においてもRE(III)よりも大きいことが明らかである。また、いずれの濃度であっても、Sc(III)とRE(III)の分離係数(SFSc/RE)はそれぞれ、60以上となり、Sc(III)とRE(III)との分離が可能であることがわかる。
【0046】
<実施例3:アクチノイドとスカンジウム以外の希土類元素(RE)の分配係数>
3価のアクチノイドイオン(An(III))であるアメリシウムイオン(Am(III))およびキュリウムイオン(Cm(III))と、3価のスカンジウム以外の希土類
元素イオン(RE(III))であるユウロピウムイオン(Eu(III))を濃度約10ppb含んだ各濃度の硝酸水溶液と、上記の方法により調製した吸着材をそれぞれ準備した。なお、硝酸として多摩化学工業株式会社製の超高純度分析用試薬TAMAPURE-AA-100を、希釈水として超純水製造装置(Milli-Q Merck Millipore社製)を用いて調製した超純水を、n-ドデカンとして和光純薬株式会社製の特級試薬を用いた。
濃度が0.03、0.1、0.3、1Mの硝酸水溶液4mlと準備した吸着材0.3gを容器に投入し、振とう機(YS-8D 株式会社ヤヨイ社製)を用いて、室温(25℃±1℃)で10分間振とうした。その後、5分間遠心分離(CN-820 アズワン株式会社製)を行って分離させ、水相の溶液をサンプリングし、溶液中の金属イオンの放射能濃度を放射能測定装置 (セイコー EG&G製GCD-20180X)で測定した。得られた値からAm(III)、Cm(III)、及びEu(III)の分配係数(Kd)、およびAm(III)とEu(III)の分離係数(SFAm/Eu)を上記式(2)及び(3)により算出した。算出した分配係数と硝酸濃度との関係を図2に示す。
また、分離係数を下記表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
一般的に、固液分離では分離係数が2.0以上であれば、分離が可能であるため、表2の結果から、Am(III)とEu(III)は分離可能であることがわかる。
【0049】
<実施例4:スカンジウムと、スカンジウム以外の希土類元素(RE)との分離>
Sc(III)及びRE(III)をそれぞれ濃度約1ppm含んだ4Mの硝酸水溶液(フィード液)と、上記の方法により調製した吸着材をそれぞれ準備した。
準備した吸着材0.5gを内径1cm、高さ10cmのカラムに充填(7.85cm)し、0.05Mの硝酸を3mL流し、コンディショニングを行った。その後、前記フィード液を55mL流し、次に、4Mの硝酸水溶液(洗浄用硝酸水溶液)15mLを流した。その後、4M硫酸を10mL流して、金属イオンを溶離した。流出液をそれぞれ1mL毎にサンプリングし、ICP-AES(SPS3500 セイコーインスツル株式会社)によりSc(III)、及びRE(III)の濃度を定量した。なお、流速は0.5cm/minにて行った。各溶液中のSc(III)、及びRE(III)の濃度(C/C;濃度/フィード液の濃度)と酸溶液との関係を図3に示す。
図3の結果から、本実施例の吸着材はスカンジウムに対して十分な吸着能、及び分離能を持つことがわかる。
図1
図2
図3