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特許7066092センサ装置及びセンサ装置を生産する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】センサ装置及びセンサ装置を生産する方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20220506BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20220506BHJP
   H01L 41/053 20060101ALI20220506BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20220506BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20220506BHJP
   H01L 41/23 20130101ALI20220506BHJP
   H01L 41/29 20130101ALI20220506BHJP
   H01L 41/318 20130101ALI20220506BHJP
【FI】
G01L1/16 B
H01L41/047
H01L41/053
H01L41/113
H01L41/187
H01L41/23
H01L41/29
H01L41/318
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022513212
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2021044524
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2020202072
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】520479629
【氏名又は名称】株式会社CAST
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】小林 牧子
(72)【発明者】
【氏名】中妻 啓
(72)【発明者】
【氏名】田邉 将之
(72)【発明者】
【氏名】堤 喬資
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄也
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-191835(JP,A)
【文献】特開2002-340700(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027615(WO,A1)
【文献】特開2020-068364(JP,A)
【文献】特開2018-089621(JP,A)
【文献】特開平10-241762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0164650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16
H01L 41/047
H01L 41/053
H01L 41/113
H01L 41/187
H01L 41/23
H01L 41/29
H01L 41/318
G01N 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ部と配線部を接続するセンサ装置であって、
前記センサ部は、ゾルゲル複合体圧電センサであって、圧電膜層と、前記圧電膜層の上に形成される電極層と、保護層を備え、
前記保護層は、前記電極層の一部を除いて被覆し、
前記電極層において前記保護層が被覆しない部分は、平坦であり、
前記配線部は、信号線を含み、
前記信号線は、先端に、平坦部分を有する圧着チップを有し、
前記電極層において前記保護層により被覆されていない部分及び前記信号線において被覆されていない部分を覆う外装部を備え、
前記外装部は、前記圧着チップの平坦部分を、前記電極層において前記保護層が被覆しない部分に押し付けて圧着する加圧部を備える、センサ装置。
【請求項2】
前記センサ部は、基材層を備え、
前記圧電膜層は、前記基材層の上に形成され、
前記保護層は、前記基材層の一部を除いて被覆し、
前記配線部は、グラウンド線を含み、
前記グラウンド線は、前記基材層において前記保護層が被覆していない部分に電気的に接合する、請求項1記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記配線部は、一方端が前記センサ部に電気的に接続し、他方端は、延長配線部に電気的に接続し、
前記センサ部、前記配線部及び前記加圧部の耐熱温度は、前記延長配線部の耐熱温度よりも高い、請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
少なくとも前記センサ部を覆うアタッチメント部を備え、
アタッチメント部は、対象物に取り付けるための取付部を備える、請求項1から3のいずれかに記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記アタッチメント部は、当該アタッチメント部において前記対象物と前記センサ部の間の超音波の伝達を保証し、前記アタッチメント部と前記センサ部との間を調整する調整部を備え、
前記調整部は、当該調整部で生じる反射波を遮断する遮断部を備える、請求項4記載のセンサ装置。
【請求項6】
センサ部と配線部を接続するセンサ装置を生産する方法であって、
前記センサ部は、ゾルゲル複合体圧電センサであって、圧電膜層と、前記圧電膜層の上に形成される電極層と、保護層を備え、
前記保護層は、前記電極層の一部を除いて被覆し、
前記電極層において前記保護層が被覆しない部分は、平坦であり、
前記配線部は、信号線を含み、
前記信号線は、先端に、平坦部分を有する圧着チップを有し、
前記センサ装置が備える外装部により、前記電極層において前記保護層により被覆されていない部分及び前記信号線において被覆されていない部分を覆う外装ステップと、
前記外装部が備える加圧部により、前記圧着チップの平坦部分を、前記電極層において前記保護層が被覆しない部分に押し付けて圧着する加圧ステップを含むセンサ装置を生産する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置及びセンサ装置を生産する方法であって、センサ部と配線部を接続するセンサ装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者らは、ゾルゲル複合体圧電センサを提案してきた(特許文献1など参照)。
【0003】
特許文献2には、ゾルゲル複合体圧電センサの配線等を含む構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-068364号公報
【文献】特許第6432097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の配線接合によれば、機械的強度などの安定性・耐久性を担保しようとすると、ゾルゲル複合体圧電センサのフレキシブル性を損なうこととなる可能性が想定される。
【0006】
なお、特許文献1では、配線等を含む構造を明らかにしていない。
【0007】
そこで、本願発明は、フレキシブル性のあるゾルゲル複合体圧電センサの配線に適したセンサ装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の第1の側面は、センサ部と配線部を接続するセンサ装置であって、前記センサ部は、ゾルゲル複合体圧電センサであって、圧電膜層と、前記圧電膜層の上に形成される電極層と、保護層を備え、前記保護層は、前記電極層の一部を除いて被覆し、前記電極層において前記保護層が被覆しない部分は、平坦であり、前記配線部は、信号線を含み、前記信号線は、先端に、平坦部分を有する圧着チップを有し、前記電極層において前記保護層により被覆されていない部分及び前記信号線において被覆されていない部分を覆う外装部を備え、前記外装部は、前記圧着チップの平坦部分を、前記電極層において前記保護層が被覆しない部分に押し付けて圧着する加圧部を備える。
【0009】
本願発明の第2の側面は、第1の側面のセンサ装置であって、前記センサ部は、基材層を備え、前記圧電膜層は、前記基材層の上に形成され、前記保護層は、前記基材層の一部を除いて被覆し、前記配線部は、グラウンド線を含み、前記グラウンド線は、前記基材層において前記保護層が被覆していない部分に電気的に接合する。
【0010】
本願発明の第3の側面は、第1又は第2の側面のセンサ装置であって、前記配線部は、一方端が前記センサ部に電気的に接続し、他方端は、延長配線部に電気的に接続し、前記センサ部、前記配線部及び前記加圧部の耐熱温度は、前記延長配線部の耐熱温度よりも高い。
【0011】
本願発明の第4の側面は、第1から第3のいずれかの側面のセンサ装置であって、少なくとも前記センサ部を覆うアタッチメント部を備え、アタッチメント部は、対象物に取り付けるための取付部を備える。
【0012】
本願発明の第5の側面は、第4の側面のセンサ装置であって、前記アタッチメント部は、当該アタッチメント部において前記対象物と前記センサ部の間の超音波の伝達を保証し、前記アタッチメント部と前記センサ部との間を調整する調整部を備え、前記調整部は、当該調整部で生じる反射波を遮断する遮断部を備える。
【0013】
本願発明の第6の側面は、センサ部と配線部を接続するセンサ装置を生産する方法であって、前記センサ部は、ゾルゲル複合体圧電センサであって、圧電膜層と、前記圧電膜層の上に形成される電極層と、保護層を備え、前記保護層は、前記電極層の一部を除いて被覆し、前記電極層において前記保護層が被覆しない部分は、平坦であり、前記配線部は、信号線を含み、前記信号線は、先端に、平坦部分を有する圧着チップを有し、前記センサ装置が備える外装部により、前記電極層において前記保護層により被覆されていない部分及び前記信号線において被覆されていない部分を覆う外装ステップと、前記外装部が備える加圧部により、前記圧着チップの平坦部分を、前記電極層において前記保護層が被覆しない部分に押し付けて圧着する加圧ステップを含む。
【0014】
本願発明の第7の側面は、第6の側面の方法であって、前記センサ部は、基材層を備え、前記圧電膜層は、前記基材層の上に形成され、前記保護層は、前記基材層の一部を除いて被覆し、前記配線部は、グラウンド線を含み、前記グラウンド線は、前記基材層において前記保護層が被覆していない部分に電気的に接合する。
【0015】
本願発明の第8の側面は、第6又は第7の側面の方法であって、前記配線部は、一方端が前記センサ部に電気的に接続し、他方端は、延長配線部に電気的に接続し、前記センサ部、前記配線部及び前記加圧部の耐熱温度は、前記延長配線部の耐熱温度よりも高い。
【0016】
本願発明の第9の側面は、第6から第8のいずれかの側面の方法であって、少なくとも前記センサ部を覆うアタッチメント部を備え、アタッチメント部は、対象物に取り付けるための取付部を備える。
【0017】
本願発明の第10の側面は、第9の側面の方法であって、前記アタッチメント部は、当該アタッチメント部において前記対象物と前記センサ部の間の超音波の伝達を保証し、前記アタッチメント部と前記センサ部との間を調整する調整部を備え、前記調整部は、当該調整部で生じる反射波を遮断する遮断部を備える。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によれば、センサ部において、感応部分と配線接合部分に一定の距離を設けることができ、フレキシブル性を維持することができる。さらに、外装部及び加圧部を利用して、耐熱性と機械的強度を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願発明のセンサ装置1の外観を示す図である。
図2】(a)センサ部3及び(b)接合部分を具体的に説明するための図である。
図3】センサ装置を実際に作成した過程の一例を示す第1図である。
図4】センサ装置を実際に作成した過程の一例を示す第2図である。
図5】センサ装置を実際に作成した過程の一例を示す第3図である。
図6】センサ装置を実際に作成した過程の一例を示す第4図である。
図7】試作品による測定結果を示す図である。
図8図1のセンサ装置を利用して配管を監視する配管監視システムの一例を示す図である。
図9】アタッチメント部53の具体的な構成の一例を示す第1図である。
図10】アタッチメント部53の具体的な構成の一例を示す第2図である。
図11】配管にアタッチメント部及びセンサ装置を取り付けた状態を示す。
図12】発明者らが行った配管減肉監視実験を説明するための第1図である。
図13】発明者らが行った配管減肉監視実験を説明するための第2図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本願発明のセンサ装置1の外観を示す図である。センサ装置1は、ゾルゲル複合体圧電デバイスに配線を取り付ける構造であり、ゾルゲル複合体圧電デバイスを、例えば、管厚センサ(超音波探触子)、配管つまりセンサ、感圧・振動センサなどの用途で、600℃までの耐熱性と曲率半径10mm程度のフレキシブル性を有したセンサとして利用することができる。
【0022】
ゾルゲル複合体圧電センサは、フレキシブル性・耐熱(耐熱衝撃)性を有した圧電セラミックデバイスである。ゾルゲル複合体圧電センサは、例えば、管厚モニタリング・配管詰まり検出・圧力/振動モニタリング・AE(Acoustic Emission)センサとしての構造物に生じる破壊のモニタリングなど用途で利用することができる。
【0023】
発明者らは、これまで、ゾルゲル複合体圧電センサの耐熱性やフレキシブル性といった特長の実証、作製プロセスの開発などが行なってきた。ゾルゲル複合体圧電センサは、例えば、工場のIoT化に必要なエッジセンサーのうち、特に高温部や狭所など従来センサの適用が困難な箇所への適用が期待されている。センサの製品化にあたっては耐熱性を損なわずに配線等を取り付けまた実用的な耐久性を持たせる必要がある。
【0024】
図1(a)及び(b)は、それぞれ、センサ装置1を横及び上から見た図である。図1(c)は、センサ装置1の斜視図である。
【0025】
図1を参照して、センサ部3と、配線部5と、上外装部7と、下外装部9と、加圧部11と、固定部131及び132と、配線コネクタ部15を備える。
【0026】
センサ部3は、例えばゾルゲル複合体圧電デバイスである(特許文献1など参照)。
【0027】
配線部5は、耐熱配線である。例えばMIケーブル等の耐熱性を有する線材である。センサ装置1の使用環境によりセンサ部3から常温用配線を使用できる箇所までの距離が異なるため、耐熱配線によって高温部分を配線する。
【0028】
上外装部7及び下外装部9(これらを併せたものが外装部の一例)は、それぞれ、センサ部3と配線部5を接合する個所を上及び下から挟んで覆う。固定部131及び132は、上外装部7及び下外装部9を固定する。上外装部7及び下外装部9は、接合の強度を向上させるコネクタであり、センサ部3及び配線部5を機械的強度が担保される方法(圧着、溶接等)により固定される。加圧部11は、配線部5をセンサ部3に取り付ける個所に加圧して圧着する。
【0029】
センサ部3、配線部5、上外装部7、下外装部9、加圧部11、並びに、固定部131及び132は、高温下(例えば常温以上600℃以下の温度)で使用される。
【0030】
配線コネクタ部15は、常温部分の配線延長について、常温用配線で対応するためのコネクタである。延長配線部が接続される。センサ装置1は、高温部分を耐熱配線で配線し、常温部分の配線延長については常温用配線で対応する。これは、一般に耐ノイズ性能や屈曲性、電気信号伝播時の距離減衰などのケーブル性能は常温用配線の方が信号伝送に有利なためである。配線コネクタ部15は、高温配線と常温用配線を接続するためのコネクタ部(接合部)である。なお、配線コネクタ部15を用いずに、配線同士を直接はんだ付けや圧着によって接合してもよい。
【0031】
図2は、(a)センサ部3及び(b)接合部分の各構成を具体的に説明するための図である。なお、図1において対応する構成とは同じ符号を付しているが、各構成を具体的に説明するために、厚さなどについては変更している。
【0032】
図2(a)を参照して、センサ部3は、基材層21と、圧電膜層23と、電極層25と、保護層27を備える。センサ部3は、ゾルゲル複合体圧電センサの中核である圧電膜を含み、超音波送受信、感圧センサ、振動センサ、AEセンサなどに用いる物理信号を取得する。
【0033】
基材層21は、導電性と600℃以上の焼成及び使用に耐える耐熱性を持つ材料から選定する。例えばステンレス等である。
【0034】
圧電膜層23は、基材層21の上に形成された多孔質圧電セラミック膜である。これは、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)・チタン酸ビスマス(BiT)・ニオブ酸リチウムなどのセラミック粉体と、PZT・BiT・チタン酸などの前駆体であるゾルゲル溶液との混合物をゾルゲルスプレー法などによって塗布・焼結し作製することができる。
【0035】
電極層25は、圧電膜層23の上に形成された導電材料のパターンである。例えば、スクリーン印刷・蒸着・スパッタリングその他の印刷法により、銀・アルミ・チタン・白金等の導電材料のパターンを形成することができる。
【0036】
保護層27は、圧電膜層23及び電極層25の表面を保護するための層である。例えば、シリコーン・ゴム・セラミック等を塗布して作成することができる。保護層27は、基本的にセンサ部3の全体を被覆するが、信号線及びグラウンド線を接続するために、電極層25及び基材層21の一部には保護層27を作成しない。
【0037】
グラウンド線取付部31は、グラウンド線を取り付ける個所であり、基材層21において保護層27が存在しない部分に存在する。
【0038】
信号線取付部29は、信号線を取り付ける個所であり、保護層27が電極層25を覆わず、電極層25が外部に露出している部分である。
【0039】
図2(b)を参照して、上外装部7及び下外装部9は、センサ部3と配線部5を接合する個所を上及び下から挟んで覆っている。センサ部3は、しゃもじのような形状をしている。グラウンド線取付部31及び信号線取付部29は、しゃもじの柄の部分に形成されている。他方、へら状に広がった形状の部分は、保護層27により覆われている。上外装部7及び下外装部9は、少なくともグラウンド線取付部31及び信号線取付部29を覆う。センサ部3において上外装部7及び下外装部9が覆わない部分は、保護層27により被覆されている。上外装部7及び下外装部9は、配線部5のうち、少なくとも被覆されていない信号線及びグラウンド線を覆う。配線部5において上外装部7及び下外装部9が覆わない部分は、被覆されている。
【0040】
配線部5には、グラウンド線と信号線が存在する。
【0041】
グラウンド線は、基材層21のグラウンド線取付部31に電気的に接合される。センサ装置1は、基材層21を電極として用いてグラウンド線を接合する。基材層21は、導電性を持つ材料(ステンレス等)である。グラウンド線を溶接・圧着・ハトメ・はんだ付け等により基材層21に電気的に接続する。
【0042】
信号線は、その先端に、導電性の圧着チップ33が溶接・はんだ付け等により取り付けられている。電極層25は平坦であるため、平坦部を有する圧着チップ33を利用して、加圧器具により電極層25に押し付けることで圧着することができる。圧着チップ33は、信号線取付部29における電極層25が露出している部分よりも小さい。圧着チップ33が信号線取付部29に存在する状態で、加圧部11は、絶縁層35を介して圧着チップ33を電極層25に圧着する。加圧部11は、耐熱性、機械的強度(安定性)、取付作業性などを考慮し、例えばネジなどの加圧器具により実現することができる。なお、加圧器具、加圧器具を保持する下外装部、上外装部などがステンレス等の導電性材料で作製される場合は、絶縁のためマイカ板・セラミック板等を用いて絶縁層を設ける。
【0043】
図1及び図2を用いて説明したように、上外装部7、下外装部9、加圧部11、並びに、固定部131及び132により、電極部分であるセンサ部3と耐熱性を有する配線部5を耐熱性と作業性を損なわずに安定して接合することができる。特に、耐熱配線のグラウンド線と基材との機械強度を備えた電気的接合(溶接でも圧着でもよい)に加えて、耐熱配線の信号伝送線とセンサ部との圧着による電気的接合を実現する。特に、圧着による電気的接合を安定して得るために、圧着チップを耐熱配線の信号伝送線先端に取り付ける。そのため、引張や振動などの機械的外力によっても破壊されない構造を持っている。
【0044】
センサ部3は、感応した超音波振動の送受信や圧力等を、信号線取付部29に取り付けられた信号線によって外部に出力する。信号線を取り付ける必要があるため、上外装部7と下外装部9との間には、ある程度の高さや寸法が必要となるが、実用上は、感応部分を被測定物へ取り付ける際の障害にはならない。センサ感応部分と配線接合部分に一定の距離を設けることができ、ゾルゲル複合体圧電センサのフレキシブル性や薄さという特長を損なわないように構成することができる。
【0045】
また、センサ装置1が高温下で使用されることも想定し、センサ部3、配線部5、上外装部7、下外装部9、加圧部11、並びに、固定部131及び132のすべての要素が、耐熱性を有する材料で構成され、各構成を統合することができる。
【0046】
図3図4図5及び図6は、センサ装置を実際に作成した過程の一例を示す。
【0047】
図3(a)は、配線部であるMIケーブルを示す。この例では、ステンレス被覆を持ち、絶縁層にセラミック粉体を利用する2芯MIケーブルである。2本の芯線のうち1本を信号線として超音波・圧力等により圧電センサから出力される電気信号の伝送を担当させ、他方をグラウンド線として回路等の接地(グラウンド)への接続に使用している。また、ステンレス被覆もグラウンドに接続している。
【0048】
図3(b)は、グラウンドの芯線を、MIケーブルの外管に溶接した状態を示す。図3(c)は、MIケーブルの高圧側の信号線の芯線に、圧着チップとしてSUSシートを溶接した状態を示す。図3(d)は、センサ部の基材部とMIケーブルの外管を溶接した状態を示す。
【0049】
図4(a)及び(b)は、センサ部及びMIケーブルを挟んで、上外装部と下外装部をリベットで取り付けた状態を示す。
【0050】
図5(a)及び(b)は、上外装部とセンサ部との間のスペースに絶縁シートを配置した状態を示す。図5(c)は、M2止めネジで芯線(圧着チップ)を加圧して電極層に接触させ、ダブルナットで緩みを防止した状態を示す。
【0051】
図6(a)は、MIケーブルを同軸ケーブルコネクターに取り付けた状態を示す。図6(b)の丸印の部分を、アクリル接着剤で固定する。図6(c)にあるように、この試作品を使用して実験を行うことができる。
【0052】
図7は、試作品による測定結果を示す。この実験では、5mmの厚みを持つ超音波探傷試験片を測定した。超音波パルスエコー波形を良好に取得できており、センサ装置による配線接続構造が有効であることが確認できる。
【0053】
図8は、図1のセンサ装置を利用して配管を監視する配管監視システムの一例を示す。配管51は、センサ装置が検査する対象物の一例である。配管51は、例えば、125A鋼管である。配管51の外側の面には、複数のセンサ装置が取り付けられている。アタッチメント部53は、センサ装置のセンサ部などを覆う。アタッチメント部53を貫通するベルト部55を配管51の外側の面で締めて取り付けることにより、複数のセンサ装置が配管51の外側の面に取り付けられている。
【0054】
図9及び図10は、アタッチメント部53の具体的な構成の一例を示す図である。アタッチメント部53は、センサ装置に、センサ部63及び外装部65(上外装部と下外装部を併せたもの)を覆うように取り付けられる。センサ部63は、図1のセンサ部3と同様である。外装部65は、図1の上外装部7及び下外装部9を併せたものと同様である。
【0055】
アタッチメント部53は、ネジ穴691及び692を備える。2本のネジで、ネジ穴691及び692と、外装部65において上外装部と下外装部を固定するためのネジ穴を利用して、アタッチメント部53と外装部65を固定することができる。センサとセンサ接合部の一体設計を実現することができる。
【0056】
アタッチメント部53は、第1取付部59及び第2取付部61を備える。第1取付部59及び第2取付部61には、それぞれ、ベルトが貫通し、ベルトを締めることにより、センサ装置が検査する対象物に取り付けることができる。ベルトは、例えばオールステンレスホースクランプである。この例では、2本のベルトの組み合わせで取り付けることができる。
【0057】
アタッチメント部53は、調整部57を備える。調整部57は、アタッチメント部53において、対象物とセンサ部63間の超音波の伝達を保証し、アタッチメント部53とセンサ部63との間を調整する。アタッチメント部53は、例えば、ホースクランプアタッチメントであり、アルミブロックなどを含む。調整部57は、例えばゴム板(例えば円柱状)で、センサ部を圧縮する。調整部57は、調整部57で生じる反射波を遮断する遮断部を備える。遮断部は、例えば、絶縁シート(超音波を遮断できる物質)であり、ロックタイトとゴム板の間に挟まれて、ゴム板の反射波を検知することを防ぐ。
【0058】
図11は、配管にアタッチメント部及びセンサ装置を取り付けた状態を示す。
【0059】
図12及び図13は、発明者らが行った配管の減肉を監視する実験を説明するための図である。
【0060】
図12は、(a)実験で使用した超音波の処理装置と、(b)アタッチメント部を利用して配管にセンサ装置を取り付けた状態を示す。図12(b)のセンサ装置の信号線を図12(a)の超音波処理装置に接合して、超音波を発生させて、センサ装置が配管での反射波を検出して厚さを測定することにより、配管の減肉を監視することができる。
【0061】
この実験では、センサ部を固定するためのゴム板の硬度がエコー強度に与える影響を評価するために、自己融着テープとホースバンドにより固定した場合と比較した。測定対象は125A(5inch)SUS配管である。データ名20210208_134115、20210208_134336及び20210208_134552は、それぞれ、ゴム強度が20、30及び40の場合であり、データ名20210208_140724は、自己融着テープとホースバンドで固定した場合である。データ番号1~4は、順に、データ名20210208_134115、20210208_134336、20210208_134552及び20210208_140724に対応する。
【0062】
図13(a)は、時間経過(横軸、マイクロ秒)に対して検出された電圧の振幅(縦軸、ボルト)を示す。図13(b)は、図13(a)において2.8~3.6マイクロ秒付近の拡大したものである。図13(c)は、周波数(横軸、MHz)に対する振幅(縦軸、ボルト)である。
【0063】
図13(d)は、各データ番号(横軸)に対する最大周波数(Hz)(縦軸)である。データ番号1は、最大周波数が5.63Hz、最大振幅が0.37Vであった。データ番号2は、最大周波数が5.45Hz、最大振幅が0.33Vであった。データ番号3は、最大周波数が5.72Hz、最大振幅が0.47Vであった。他方、データ番号4は、最大周波数が3.81Hz、最大振幅が0.17Vであった。
【0064】
いずれのデータ番号でも、超音波を検出することはできている。自己融着テープとホースバンドで固定した場合と比較して、ゴム板を利用して固定することにより、より精度の高い検出ができている。そのため、調整部57としては、ゴム板などの弾性体を利用することにより、精度を向上させることが期待できる。
【符号の説明】
【0065】
1 センサ装置
3 センサ部
5 配線部
7 上外装部
9 下外装部
11 加圧部
131,132 固定部
15 配線コネクタ部
21 基材層
23 圧電膜層
25 電極層
27 保護層
29 信号線取付部
31 グラウンド線取付部
33 圧着チップ
35 絶縁層
51 配管
53 アタッチメント部
55 ベルト部
57 調整部
59 第1取付部
61 第2取付部
63 センサ部
65 外装部
691,692 ネジ穴
【要約】
フレキシブル性のあるゾルゲル複合体圧電センサの配線に適したセンサ装置等を提供する。センサ装置1は、センサ部3と配線部5を接続する。センサ部3は、ゾルゲル複合体圧電センサである。基材層と、基材層の上に形成される圧電膜層と、前記圧電膜層の上に形成される電極層と、保護層を備える。保護層は、基材層と電極層の一部を除き被覆する。配線部5は、信号線とグラウンド線を含む。信号線の先端には、圧着チップが存在する。上外装部7及び下外装部9は、センサ部3と配線部5のうち、少なくとも被覆されていない部分を覆う。加圧部11は、圧着チップを、前記電極層において前記保護層が被覆しない部分に押し付けて圧着する。センサ装置は、例えば、センサ部などを覆うアタッチメントを利用して検査対象に取り付けることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13