(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20220506BHJP
E03C 1/05 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
E03C1/042 B
E03C1/042 F
E03C1/05
(21)【出願番号】P 2018032385
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 三典
(72)【発明者】
【氏名】秋場 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】上原 拓也
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115470(JP,A)
【文献】特開2016-160610(JP,A)
【文献】特開2011-064035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を吐出する吐水口を有し、前方に向けて引き出し可能な吐水部と、
被検知体を検知するセンサと、
前記センサを保持する保持部と、前記吐水部が収納される収納部と、
前記吐水部を着脱可能に保持する固定部と、を有し、収納された前記吐水部の少なくとも上部を覆うケーシングと、
を備え、
前記保持部と前記固定部とは、前記収納部を挟んで前後方向に離間するように配置され、
さらに、前記吐水部が前記収納部に収納された状態において、前記吐水部の前方は前記保持部により覆われ、前記吐水部は前記保持部と前後方向において離間する、水栓装置。
【請求項2】
前記吐水部が前記収納部に収納された状態において、前記吐水部は、前記ケーシングの前記保持部以外の部分とさらに離間する請求項1記載の水栓装置。
【請求項3】
前記保持部は、収納された前記吐水部と対向する対向面を有し、
前記対向面は、前方且つ下方に向けて傾斜した請求項1または2に記載の水栓装置。
【請求項4】
前記吐水部と前記保持部との間の間隙は、前記吐水部の前記上部と前記ケーシングとの間の上下方向における間隙よりも大きい請求項1~3のいずれか1つに記載の水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、差し出された使用者の手をセンサで検知し、自動で吐止水を制御する水栓装置がある。この水栓装置において、センサは、例えば、使用者から見て吐水口の手前側に配置される。これにより、使用者が手洗い等で手を差し出したとき、吐水口の下に手が来るより先にセンサで手を検知でき、より早く吐水を開始できる。
【0003】
また、センサを備えた水栓装置において、吐水部が引き出し可能なプルアウト機能を有するものもある。この水栓装置においては、吐水部にセンサが設けられると、プルアウトに伴い、センサに接続された配線等も引き出される必要があり、構造が複雑になる。そこで、特許文献1では、固定されたセンサの保持部に対して、吐水部を分離させて引き出し可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような水栓装置において、近年、意匠面の観点から、吐水部の少なくとも一部を隠蔽し、吐水部を使用者から見え難くした構成が検討されている。一方で、プルアウト機能を有する吐水部を隠蔽した場合、引き出された吐水部を固定位置に戻す際に、固定位置も見え難くなる。このため、吐水部を戻す際には、使用者が、吐水部を固定位置近くで少しずつ移動させ、固定位置を手探りすることが考えられる。
【0006】
特許文献1に記載された水栓装置では、センサの保持部に吐水部を接触させて、吐水部を固定している。このため、特許文献1の水栓装置において吐水部を隠蔽した場合、固定位置近くで吐水部が移動されると、吐水部がセンサの保持部と接触する。これにより、センサに衝撃が加わり、センサに不具合が生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、吐水部の少なくとも一部を隠蔽しつつ、吐水部の前方にセンサを設けたプルアウト機能を有する水栓装置において、センサに不具合が生じることを抑制できる水栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、水を吐出する吐水口を有し、前方に向けて引き出し可能な吐水部と、被検知体を検知するセンサと、前記センサを保持する保持部と、前記吐水部が収納される収納部と、を有し、収納された前記吐水部の少なくとも上部を覆うケーシングと、を備え、前記吐水部が前記収納部に収納された状態において、前記吐水部の前方は前記保持部により覆われ、前記吐水部は前記保持部と前後方向において離間する、水栓装置である。
【0009】
この水栓装置によれば、吐水部の少なくとも上部がケーシングで覆われることにより、美観を向上できる。また、吐水部の前方に保持部が設けられることで、吐水部に向けて差し出された手などを、より早く検知できる。さらに、吐水部が保持部と前後方向に離間することで、吐水部が収納される際に、吐水部が保持部と接触し難くなる。従って、この水栓装置によれば、美観の向上及び検知の敏速化を可能としつつ、吐水部と保持部との接触によりセンサに不具合が生じることを抑制できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記吐水部が前記収納部に収納された状態において、前記吐水部は、前記ケーシングの前記保持部以外の部分とさらに離間する水栓装置である。
【0011】
この水栓装置によれば、ケーシングの保持部以外の部分からセンサに伝わる衝撃を低減し、センサに不具合が生じることをさらに抑制できる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記保持部は、収納された前記吐水部と対向する対向面を有し、前記対向面は、前方且つ下方に向けて傾斜した水栓装置である。
【0013】
この水栓装置によれば、対向面で水滴が貯まることを抑制できる。これにより、水滴が、保持部の内部に浸入する可能性を低減でき、センサに不具合が生じることをさらに抑制できる。
【0014】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記吐水部と前記保持部との間の間隙は、前記吐水部の前記上部と前記ケーシングとの間の上下方向における間隙よりも大きい水栓装置である。
【0015】
この水栓装置によれば、美観や使い勝手の低下を抑制しつつ、ウォーターハンマー等が発生した際に、吐水部と保持部とが接触する可能性を低減できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の態様によれば、吐水部の少なくとも一部を隠蔽しつつ、吐水部の前方にセンサを設けたプルアウト機能を有する水栓装置において、センサに不具合が生じることを抑制できる水栓装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る水栓装置を設置した洗面化粧台を表す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る水栓装置を表す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る水栓装置を表す正面図である。
【
図4】実施形態に係る水栓装置を表す断面図である。
【
図5】実施形態に係る水栓装置を表す断面図である。
【
図6】実施形態に係る水栓装置を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る水栓装置が設置された洗面化粧台を表す斜視図である。
図1に表した例では、洗面化粧台100は、水栓装置10と、洗面器102と、支持台104と、キャビネット106と、を備える。
【0019】
なお、本願明細書では、水栓装置10と向き合う使用者からみて手前側を「前方」とし、奥側を「後方」とし、上側を「上方」とし、下側を「下方」とし、右側を「右側方」とし、左側を「左側方」とする。
【0020】
洗面器102は、ボウル部122と、バックガード部124と、を有する。ボウル部122は、下方に向かって窪み、不図示の排水口を有する。排水口は、ボウル部122の底部に設けられる。排水口は、排水管に接続され、ボウル部122に吐出された水を排水管に流す。洗面器102は、支持台104の上に設けられ、支持台104により支持される。支持台104は、例えば、内部に物品を収納可能な引き出しや収納空間を有する。
【0021】
キャビネット106は、洗面器102の上方に設けられる。キャビネット106は、例えば、鏡面を有する複数の扉と、それらの扉により隠蔽され、物品を収納可能な収納空間と、を有する。
【0022】
バックガード部124は、ボウル部122の後端から上方に延びる。水栓装置10は、ボウル部122よりも上方に延びる壁面WSに設けられる。水栓装置10は、例えば、洗面器102のバックガード部124に取り付けられ、ボウル部122の上方に配置される。これにより、水栓装置10は、洗面器102のボウル部122に向けて水を吐出する。本願明細書において、「前方」は、換言すれば、壁面WSの向く方向である。
【0023】
水栓装置10は、上記に限ることなく、例えば、洗面器102の後部上方に設けられる取付パネル(バックパネル)などに取り付けてもよいし、洗面所などの壁面に直接取り付けてもよい。水栓装置10は、ボウル部122よりも上方に延びる任意の壁面WSに取り付けることができる。また、水栓装置10の取付位置は、ボウル部122内に水を吐出可能であれば、適宜変更可能である。
【0024】
図2(a)及び
図2(b)は、実施形態に係る水栓装置を表す斜視図である。
図3は、実施形態に係る水栓装置を表す正面図である。
図2(a)、
図2(b)、及び
図3に表したように、水栓装置10は、吐水部20と、ケーシング30と、ホース40と、操作部50と、センサ60と、を備える。
【0025】
吐水部20は、例えば、支持台104の内部空間などにおいて湯水混合部などを介して給水管及び給湯管に接続される。吐水部20は、ボウル部122に向けて、上水(水道水)を吐出する。吐水部20は、いわゆるスパウトである。吐水部20には、水を吐出する吐水口20aが設けられている。
【0026】
操作部50は、吐水部20における吐水及び止水を切り替える。また、操作部50は、吐水部20から吐出される水の流量及び水温を調整する。
【0027】
操作部50は、例えば操作レバー50aを有する。操作部50は、使用者による操作レバー50aの操作に応じて、吐水部20から吐出される水の流量及び温度を調整できる。
【0028】
操作レバー50aは、例えば、前後方向及び左右方向に揺動可能に上端部を操作部50の本体部分に軸支される。例えば、操作レバー50aを前後方向に揺動させることにより、吐水部20から吐出される水の流量が調整され、操作レバー50aを左右方向に揺動させることにより、吐水部20から吐出される水の温度が調整される。
【0029】
センサ60は、被検知体を検知する。被検知体は、例えば、吐水部20に向けて差し出された使用者の手である。センサ60の検知結果に応じて、吐水部20における吐水及び止水が自動で切り替えられる。
【0030】
換言すると、水栓装置10では、吐水部20における吐水及び止水を、手動で切り替えることもできるし、自動で切り替えることも可能である。手動で吐水または止水させる状態と、自動で吐水または止水される状態と、は、例えばケーシング30に設けられたスイッチ36を操作して切り替えることができる。
【0031】
ケーシング30は、壁面WSから前方に突出するように設けられる。吐水部20及び操作部50は、ケーシング30の下部に設けられる。吐水部20は、ケーシング30の下方に向けて水を吐出する。操作部50の操作レバー50aは、ケーシング30から下方に向かって延びる。ケーシング30は、吐水部20及び操作部50の上方を覆う。
【0032】
吐水部20、ケーシング30、及び操作部50は、例えば、それぞれ個別に壁面WS(バックガード部124の前面)に取り付けられる。ホース40は、吐水部20と接続され、吐水部20に水を供給する。ホース40は、可撓性を有する。ホース40は、例えば、吐水部20が壁面WSに取り付けられた状態においては、バックガード部124の裏側の空間に収納される。
【0033】
図2(b)に表したように、吐水部20は、壁面WSから前方へ引き出して使用することができる。吐水部20は、いわゆるプルアウト機能を有する。これにより、吐水部20をハンドシャワーとして用いることができ、ボウル部122の清掃などを行うことができる。
【0034】
図4(a)及び
図4(b)は、実施形態に係る水栓装置を表す断面図である。
図4(a)及び
図4(b)は、
図3のA1-A2線断面を表す。
図5は、実施形態に係る水栓装置を表す断面図である。
図5は、
図4(a)のB1-B2線断面の一部を表す。
なお、
図4(b)では、説明の便宜のため、吐水部20が省略されている。
【0035】
図4(a)及び
図4(b)に表したように、ケーシング30は、収納部32及び保持部34を有する。吐水部20は、収納部32に収納される。収納部32は、ケーシング30の底面の一部が、上方に向けて窪んで形成されている。センサ60は、保持部34によって保持される。例えば、センサ60は、赤外線センサであり、保持部34の底部には、赤外線を透過させるための窓が設けられる。
【0036】
水栓装置10は、吐水部20を着脱可能に固定する固定部24を備える。固定部24は、例えば、収納部32内に配置され、収納部32内において壁面WSに取り付けられる。
【0037】
吐水部20は、収納部32に収納された状態で固定部24に固定され、固定部24を介して壁面WSに取り付けられる。吐水部20を固定部24から取り外して手前側に引き、ホース40をバックガード部124から引き出すことにより、吐水部20を収納部32から引き出すことができる。
【0038】
吐水部20は、具体的には、基部21及び屈曲部22を有する。吐水部20が収納された状態において、基部21は、固定部24と前後方向に並んでいる。基部21が固定部24に固定されることで、吐水部20が固定される。基部21の前方には、屈曲部22が連結されている。屈曲部22は、基部21に対して、下方に向けて屈曲している。吐水口20aは、屈曲部22の先端に設けられている。このように吐水部20が屈曲していることで、吐水部20を引き出す際に、吐水部20を把持し易くなる。
【0039】
吐水部20が収納部32に収納された状態において、吐水部20の少なくとも上部は、ケーシング30により覆われる。
図4(a)に表した例では、基部21と、屈曲部22の上部と、がケーシング30により覆われている。また、吐水部20の前方(屈曲部22上部の前方)は、保持部34により覆われる。
【0040】
吐水部20が収納された状態において、吐水部20は、保持部34と前後方向において離間している。吐水部20は、
図4(a)及び
図5に表したように、ケーシング30の保持部34以外の部分からさらに離間していても良い。
【0041】
保持部34は、収納された吐水部20と対向する対向面34sを有する。また、吐水部20は、保持部34と対向する対向面20sを有する。対向面20sと34sは、例えば、互いに略平行である。対向面20s及び34sは、前方且つ下方に向けて傾斜している。
【0042】
図4(a)に表した、吐水部20と保持部34との間の間隙G1は、例えば、保持部34よりも後方における吐水部20とケーシング30との間の上下方向の間隙G2よりも大きい。また、
図5に表した、吐水部20とケーシング30との間の上下方向における間隙G2は、例えば、吐水部20とケーシング30との間の左右方向における間隙G3と同じである。
【0043】
図6(a)及び
図6(b)は、実施形態に係る水栓装置を表す断面図である。
図6(a)及び
図6(b)は、
図4(a)及び
図4(b)と同様に、
図3のA1-A2線断面を表す。
【0044】
図6(a)及び
図6(b)に表したように、固定部24は、本体部24aと、可動部24bと、を有する。本体部24aは、壁面WS又はケーシング30に取り付けられる。可動部24bは、吐水部20を着脱可能に保持するとともに、保持した吐水部20を収納部32に収納する収納位置(
図4(a)に表した位置)と、保持した吐水部20を収納部32から突出させる突出位置(
図6(a)及び
図6(b)に表した位置)と、に回動可能に本体部24aに軸支されている。
【0045】
本体部24aは、例えば、摩擦力やクリック機構などにより、吐水部20及び可動部24bを収納位置に保持可能であるとともに、吐水部20及び可動部24bを突出位置に保持可能である。
【0046】
実施形態の効果を説明する。
実施形態に係る水栓装置10では、吐水部20の少なくとも上部がケーシング30により覆われるとともに、吐水部20の前方がケーシング30の保持部34により覆われる。このように吐水部20がケーシング30により覆われることで、収納部32に収納された吐水部20が目立たなくなり、水栓装置10の美観を向上できる。また、吐水部20の前方に保持部34が設けられることで、吐水部20に向けて差し出された手などを、より早く検知できる。
さらに、水栓装置10では、吐水部20が収納された状態において、吐水部20は、保持部34と前後方向において離間する。吐水部20が保持部34と前後方向に離間することで、使用者が吐水部20を収納する際に収納部32付近で吐水部20を移動させても、吐水部20が保持部34と接触し難くなる。
従って、本実施形態に係る水栓装置10によれば、美観の向上及び検知の敏速化を可能としつつ、吐水部20と保持部34との接触によりセンサ60に不具合が生じることを抑制できる。
【0047】
より望ましくは、吐水部20が収納された状態において、吐水部20は、ケーシング30の保持部34以外の部分とさらに離間する。この構成によれば、吐水部20を収納する際に、吐水部20と、ケーシング30の保持部34以外の部分と、が接触する可能性を低減できる。このため、保持部34以外の部分からセンサ60に伝わる衝撃を低減し、衝撃によりセンサ60に不具合が生じることをさらに抑制できる。
【0048】
吐水部20が保持部34と離間していると、お湯を使用した際などに、水蒸気が吐水部20と保持部34との間に入り、対向面20s及び34sで結露が発生する。結露が発生すると、対向面34sに水滴が貯まっていく。それらの水滴が、保持部34の傷や隙間等から、保持部34の内部に浸入すると、センサ60の不具合の原因となる。
この対策として、実施形態に係る水栓装置10では、対向面34sが、前方且つ下方に向けて傾斜している。対向面34sがこのように傾斜していることで、対向面34sの水滴が流れ落ちやすくなり、対向面34sで水滴が貯まることを抑制できる。
【0049】
この点について、以下で、より具体的に説明する。
対向面34sで結露が発生すると、最初に、小さな多数の水滴が対向面34sに付着し、その後、水滴が徐々に大きくなっていく。対向面34sは、水平では無いため、ある程度の大きさになった水滴は、重力によって対向面34sを流れていく。流れた水滴は、保持部34から滴下するまでの間、その経路上に存在する他の水滴と結合しながら流れていく。このとき、より多くの水滴と結合した方が、対向面34sに残る水滴が少なくなるため、望ましい。
流れた水滴が他の水滴と結合した際、流れていた方向(流動方向)と直交する方向(直交方向)に水滴の位置が変化したり、水滴の形状が変化したりする。水滴が直交方向に移動すると、滴下するまでの水滴の移動距離が長くなるため、水滴が、他の水滴とより結合し易くなる。また、水滴の直交方向における寸法が大きいと、水滴が、他の水滴とより結合し易くなる。
例えば、対向面34sが鉛直方向に平行な場合、水滴には、対向面34sに沿って下方により大きな力が働く。このため、水滴が流れ出すと、他の水滴と結合した際にも、水滴の直交方向における位置があまり変化せず、勢い良く流れていく。また、水滴の直交方向における寸法も短くなる。従って、水滴が、他の水滴とあまり結合せずに流れていく。
これに対して、対向面34sが鉛直方向から傾斜している場合は、水滴に働く力が小さくなる。このため、水滴が流れる速度を遅くできる。水滴が低速で流れることで、他の水滴と結合した際に、直交方向における位置の変化を大きくできる。また、水滴が対向面34sに沿って広がり易くなるため、直交方向における水滴の寸法も長くなる。この結果、水滴が、より多くの他の水滴と結合しながら流れていき、対向面34sに貯まる水滴の量を減らすことができる。この結果、水滴が、保持部34の内部に浸入する可能性を低減でき、センサ60に不具合が生じることをさらに抑制できる。
【0050】
なお、吐水部20と保持部34との間の間隙G1が小さい場合、水滴は、対向面20sと対向面34sの両方に付着しうる。従って、望ましくは、対向面20sも、対向面34sと同様に、前方且つ下方に向けて傾斜する。こうすることで、対向面34sに水滴が付着することをより一層抑制できる。
【0051】
また、吐水部20には、ウォーターハンマー等による瞬間的な水圧の上昇が加わる場合がある。吐水部20が収納された状態でウォーターハンマーが発生すると、吐水部20が固定された状態であっても、吐水部20が僅かに移動する。このとき、移動した吐水部20と保持部34が接触すると、保持部34へ衝撃が加わる。特に、吐水部20と保持部34が離間している場合、吐水部20が加速されて保持部34に衝突するため、保持部34へ加わる衝撃もより強くなる。ウォーターハンマー等による吐水部20と保持部34との接触を回避するためには、吐水部20とケーシング30との間の間隙を大きくすることが望ましい。
一方で、吐水部20とケーシング30との間の間隙を一様に大きくすると、吐水部20がケーシング30から露出し易くなる。あるいは、吐水部20を覆うために、ケーシング30を大型化する必要がある。このため、水栓装置10の美観や使い勝手が低下する。
そこで、実施形態に係る水栓装置10では、吐水部20と保持部34との間の間隙G1を、吐水部20の上部とケーシング30との間の上下方向における間隙G2よりも大きくしている。吐水部20は、前方に向けて引き出される構成のため、ウォーターハンマー等が発生した際の移動方向も、前方である。このため、間隙G1を大きくすることで、ウォーターハンマー等が発生した際に、吐水部20と保持部34とが接触する可能性を低減できる。また、当該移動方向に垂直な上下方向における間隙G2を、間隙G1よりも小さくすることで、ケーシング30からの吐水部20の露出やケーシング30の大型化を抑制できる。
すなわち、間隙G1を間隙G2よりも大きくすることで、水栓装置10の美観や使い勝手の低下を抑制しつつ、ウォーターハンマー等が発生した際に、吐水部20と保持部34とが接触する可能性を低減できる。
【0052】
ウォーターハンマーによる吐水部20と保持部34との接触を抑制するためには、間隙G1は、1mmより大きく、3mm以下であることが望ましい。また、水栓装置10の美観や使い勝手の向上のためには、間隙G2は、間隙G1より小さく、1mm以上、2mm以下であることが望ましい。
【0053】
また、実施形態に係る水栓装置10では、
図6(a)及び
図6(b)に表したように、固定部24の収納位置と突出位置とを切り替えることができる。そして、吐水部20を引き出す際には、固定部24が突出位置に切り替えられる。
例えば、収納位置にある固定部24に対して、引き出された吐水部20を固定する場合、保持部34の裏側で吐水部20を移動させて固定部24に固定しなければならない。このため、吐水部20が保持部34と接触する可能性が高くなる。
これに対して、固定部24が突出位置にあると、
図6(b)に表したように、吐水部20を、保持部34の下方から、後方且つ上方に向けて移動させることで、固定部24に固定できる。このため、吐水部20を収納する際に、吐水部20と保持部34が接触する可能性をより低減し、センサ60に不具合が生じることをさらに抑制できる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、水栓装置が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0055】
10 水栓装置、 20 吐水部、 20a 吐水口、 21 基部、 22 屈曲部、 24 固定部、 24a 本体部、 24b 可動部、 30 ケーシング、 32 収納部、 34 保持部、 34s 対向面、 36 スイッチ、 40 ホース、 50 操作部、 50a 操作レバー、 60 センサ、 100 洗面化粧台、 102 洗面器、 104 支持台、 106 キャビネット、 122 ボウル部、 124 バックガード部、 G1~G3 間隙、 WS 壁面