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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】ポリ塩化ビニル樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20220506BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20220506BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220506BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20220506BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L53/00
C08K3/013
C08K3/01
C08F293/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018107846
(22)【出願日】2018-06-05
(65)【公開番号】P2019210380
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】持舘 和臣
(72)【発明者】
【氏名】伊地智 純平
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-98675(JP,A)
【文献】特開平11-231566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)100質量部に対して、下記成分(B)を0.5~10質量部含有することを特徴とする、ポリ塩化ビニル樹脂組成物。

(A) ポリ塩化ビニル樹脂

(B) オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体であって、
(I)オルガノポリシロキサン基を含むセグメントと、(II)オルガノポリシロキサン基を含まないセグメントとを質量比((I)/(II))として60/40~80/20で含み、
(I)前記オルガノポリシロキサン基を含むセグメントは、(b-1)下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン基含有単量体と(b-2)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とを質量比((b-1)/(b-2))として40/60~60/40で重合させてなり、
(II)オルガノポリシロキサン基を含まないセグメントは、(b-3)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を重合させてなることを特徴とする、オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体。

【化1】

(式(1)において、nは5~500の整数を表す。)
【請求項2】
前記成分(A)100質量部に対して、(C)可塑剤を5~150質量部含有することを特徴とする、請求項1記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(A)100質量部に対して、(D)充填剤を50~150質量部含有することを特徴とする、請求項1または2記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観、防汚性および熱安定性に優れるポリ塩化ビニル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル樹脂は、汎用樹脂として幅広い分野で使用されている。中でも壁紙、化粧フィルム、樹脂サッシ等の人の目に触れる用途においては、防汚性が要求される。また、ポリ塩化ビニル樹脂は成形加工中の熱履歴により塩化水素が脱離し、加工機を腐蝕するため、熱安定性が要求される。
【0003】
特許文献1において、ポリ塩化ビニル樹脂に、オルガノポリシロキサンを添加することで、防汚性を付与する方法が開示されている。しかし、ポリ塩化ビニル樹脂とオルガノポリシロキサンは、非相容であるため、成形品表面からオルガノポリシロキサンのブリードアウトが生じる欠点を有している。
【0004】
特許文献2において、ポリ塩化ビニル樹脂に、オルガノポリシロキサン基含有単量体と、メタクリル酸メチル単量体と、アクリル酸-2-エチルヘキシル単量体との共重合体を添加することで、ポリ塩化ビニル樹脂に防汚性を付与する方法が開示されている。これにより、ポリ塩化ビニル樹脂と該共重合体との相容性は改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-6044号公報
【文献】特開平9-143326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2記載の共重合体は、オルガノポリシロキサン基含有単量体と、他の単量体とがランダムに配列した共重合体であるため、表面移行性に乏しく、防汚性が不十分であることが判明してきた。
【0007】
本発明の課題は、外観、防汚性および熱安定性に優れたポリ塩化ビニル樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のものである。
(1) 下記成分(A)100質量部に対して、下記成分(B)を0.5~10質量部含有することを特徴とする、ポリ塩化ビニル樹脂組成物。

(A) ポリ塩化ビニル樹脂

(B) オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体であって、
(I)オルガノポリシロキサン基を含むセグメントと、(II)オルガノポリシロキサン基を含まないセグメントとを質量比((I)/(II))として60/40~80/20で含み、
(I)前記オルガノポリシロキサン基を含むセグメントは、(b-1)下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン基含有単量体と(b-2)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とを質量比((b-1)/(b-2))として40/60~60/40で重合させてなり、
(II)オルガノポリシロキサン基を含まないセグメントは、(b-3)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を重合させてなることを特徴とする、オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体。

【化1】

(式(1)において、nは5~500の整数を表す。)
【0009】
(2) 前記成分(A)100質量部に対して、(C)可塑剤を5~150質量部含有することを特徴とする、(1)のポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【0010】
(3) 前記成分(A)100質量部に対して、(D)充填剤を50~150質量部含有することを特徴とする、(1)または(2)のポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外観、防汚性および熱安定性に優れたポリ塩化ビニル樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
<(A)ポリ塩化ビニル樹脂>
ポリ塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル単量体の単独重合体あるいは他の単量体との共重合体が挙げられる。ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は500~5,000の範囲にあることが好ましい。
ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度を500以上とすることによって、強度が向上する傾向がある。ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度を5,000以下とすることによって加工性が向上する傾向がある。
【0013】
ポリ塩化ビニル樹脂の製造方法については特に制限されず、公知の塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法によって得ることができる。
【0014】
<(B)オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体>
オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体は、(I)オルガノポリシロキサン基を含むセグメントと、(II)オルガノポリシロキサン基を含まないセグメントを有している。各セグメント(I)(II)は、ポリマーペルオキシド由来の炭素数1~18の直鎖アルキレン基または分岐アルキレン基で結合されている。
【0015】
<(I)オルガノポリシロキサン基を含むセグメント>
オルガノポリシロキサン基を含むセグメントは、(b-1)式(1)で表されるオルガノポリシロキサン基含有単量体および、(b-2)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を重合させてなる。
【0016】
【化1】
【0017】
式(1)において、nは5~500の整数を表す。本発明の観点からは、nは50以上が好ましく、また、300以下が好ましく、200以下が特に好ましい。
【0018】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、一種類を用いることができ、あるいは二種類以上を用いることができる。
【0019】
<(II)オルガノポリシロキサン基を含まないセグメント>
オルガノポリシロキサン基を含まないセグメントは、(b-3)(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合させてなる。
【0020】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、一種類を用いることができ、あるいは二種類以上を用いることができる。
【0021】
オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体において、(I)オルガノポリシロキサン基を含むセグメントと、(II)オルガノポリシロキサン基を含まないセグメントの構成比率((I)/(II))は、質量比で60/40~80/20とする。(I)オルガノポリシロキサン基を含むセグメントの質量比が60より低いと、防汚性が低下する傾向にあるので、60以上とする。また、(I)オルガノポリシロキサン基を含むセグメントの比率が80を超えると、外観が低下する傾向にあるので、80以下とする。
【0022】
(I)オルガノポリシロキサン基を含むセグメントにおいて、オルガノポリシロキサン基含有単量体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体との構成比率((b-1)/(b-2))は、質量比で、40/60~60/40が好ましい。オルガノポリシロキサン基含有単量体の比率が40未満であると、防汚性が低下する。オルガノポリシロキサン基含有単量体の比率が60を超えると、外観が低下する。
【0023】
(b-1)オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体は、次のような第1工程および第2工程からなる製法によって製造することができる。
第1工程は、ポリマーペルオキシドを重合開始剤として、オルガノポリシロキサン基を含むセグメントを形成する単量体を重合し、ペルオキシ結合含有重合体を得る工程である。
第2工程は、得られたペルオキシ結合含有重合体を重合開始剤として、オルガノポリシロキサン基を含まないセグメントを形成する単量体を重合する工程である。
【0024】
ポリマーペルオキシドとは、1分子中に2個以上のペルオキシ結合を持つ化合物である。ポリマーペルオキシドとしては、例えば、下記式で表されるものを利用することができる。
【0025】
【化2】


(式中、mは2~20の整数を表す。)
【0026】
【化3】


(式中、lは2~20の整数を表す。)
【0027】
ポリマーペルオキシドは、それぞれ単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体は、前記ポリマーペルオキシドを用いて、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法によって得ることができる。
【0029】
得られたオルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体は、下記に示す溶剤中に溶解または、分散させたもの、あるいは界面活性剤等を添加して水に分散させてエマルションとして使用できる。また、微粉末状にしても使用できる。
【0030】
重合溶媒および希釈溶剤としては、オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体を溶解または、分散できる溶剤であれば特に制限はないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチルセロソロブ、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、イソパラフィン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体の量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、0.5~10質量部が好ましく、1~6質量部がより好ましい。オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体が0.5質量部より少ないと、防汚性が低下する傾向にある。オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体が10質量部を超えると、外観が低下する傾向にある。
【0032】
<(C)可塑剤>
本発明において使用される可塑剤としては特に制限はなく、従来ポリ塩化ビニル樹脂に使用されるものの中から任意に選択して使用することができる。このような可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレート、トリオクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、ピロメリテート等の芳香族多塩基酸のアルキルエステル;ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジブチルアゼレート、ジオクチルアゼレート、ジイソノニルアゼレート等の脂肪族多塩基酸のアルキルエステル;トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸等の多価カルボン酸とエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール等の多価アルコールとの重縮合体の末端を、一価アルコール又は一価カルボン酸で封鎖したもの等のポリエステル系可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化トール油脂肪酸2-エチルヘキシル等のエポキシ系可塑剤;塩素化パラフィンなどが挙げられる。
【0033】
これらの可塑剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよく、これらのうちではジオクチルフタレートやジイソノニルフタレートなどのフタル酸系可塑剤が、ブリードが少ない点で好ましい。可塑剤の配合量としては、可塑化効果が発揮され、得られる成形品の弾性、伸びが充分であり、硬度が高すぎない範囲の量である限り、特に制限はないが、過剰な場合、機械的物性が低下する傾向にある。このため、ポリ塩化ビニル樹脂
100質量部に対し5~150質量部が好ましく、10~100質量部がより好ましく、10~80質量部がさらに好ましい。
【0034】
<(D)充填剤>
本発明において使用される充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、マイカ、合成珪酸、珪石粉、硫酸バリウムなどが挙げられる。これらの中でも炭酸カルシウムがより好ましい。炭酸カルシウムは、粒子径、粉体性状、製造方法などは特に限定されないが、ポリ塩化ビニル樹脂に対する分散性を考慮すると、粒子径は0.5μm~10μmが好ましい。これらの充填剤はポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して50~150質量部が好ましく、難燃性を考慮すると、100~140質量部がより好ましい。
【0035】
<その他の添加剤>
本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、発泡剤、安定剤、酸化防止剤、加工助剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤等のその他の添加剤を添加することができる。
【0036】
本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物は、防汚性に優れる。このため、壁紙、化粧フィルム、樹脂サッシの材質として利用することができる。
【実施例
【0037】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
<オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体>
(製造例1~5、7~9)
撹拌機、温度計、コンデンサーを備えた500ml四つ口フラスコに、表1、表2に示す溶剤、開始剤、オルガノポリシロキサン基を含むセグメントを形成する単量体を仕込み、70℃で3時間重合反応を行った。続いて、表1に示す、オルガノポリシロキサン基を含まないセグメントを形成する単量体を仕込み、80℃で3時間重合反応を行い、オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体を得た。
【0038】
<オルガノポリシロキサン基含有ランダム共重合体>
(製造例6)
撹拌機、温度計、コンデンサーを備えた500ml四つ口フラスコに、表2に示す溶剤、開始剤、単量体を仕込み、70℃で6時間重合反応を行い、オルガノポリシロキサン基含有ランダム共重合体を得た。
【0039】
<ポリ塩化ビニル樹脂組成物>
(実施例1~5、比較例1~6)
各成分を表3、表4に示す各組成で、撹拌機により25℃で3分間混合した。続いてこの混合物を壁紙原紙に塗布し、ギアオーブンにより220℃で5分間加熱を行い、試験片を得た。
【0040】
各性能の評価方法は次の通りである。
<外観>
試験片表面を目視により観察し、ブリードアウト等の外観不良の有無を評価した。
【0041】
<防汚性(水性汚れ)>
水性サインペン(ぺんてる製水性サインペン)で、試験片上に2mm間隔で5本の線を引き24時間静置した後、水を含ませた綿布で汚れをふき取り、目視により汚れの残り具合を観察し、下記基準で点数化した。

5:汚れが残らない
4:ほとんど汚れが残らない
3:やや汚れが残る
2:かなり汚れが残る
1:汚れが強く残る
【0042】
<防汚性(油性汚れ)>
油性サインペン(ゼブラ製マッキーケア極細)で、試験片上に2mm間隔で5本の線を引き24時間静置した後、エタノールを含ませた綿布で汚れをふき取り、目視により汚れの残り具合を観察し、下記基準で点数化した。
なお、水性汚れ、油性汚れ共に4点以上を合格とした。

5:汚れが残らない
4:ほとんど汚れが残らない
3:やや汚れが残る
2:かなり汚れが残る
1:汚れが強く残る
【0043】
<熱安定性>
ポリ塩化ビニル樹脂の塩化水素の脱離に起因してポリエンが生成することで変色するため、変色の度合いを熱安定性の指標とした。白色の試験片を180℃に設定したギアオーブン中に1時間放置し(加工機の不具合による長時間の滞留を想定した)、目視により、変色(白色、褐色、暗褐色、黒色)の具合を観察した。なお、褐色までを合格とした。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表1、表2に示す材料の詳細は、次の通りである。
MEK: メチルエチルケトン
PPO:
【化4】


PV: 日油製tert-ブチルペルオキシピバレート

FM0721:JNC製サイラプレーンFM0721
(式(1)の構造:n=64)
FM0725:JNC製サイラプレーンFM0725
(式(1)の構造:n=131)
FM0711:JNC製サイラプレーンFM0711
(式(1)の構造:n=10)
MMA: メタクリル酸メチル
BMA: メタクリル酸-n-ブチル
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
表3、表4に示す材料の詳細は、次の通りである。

ポリ塩化ビニル樹脂: カネカ製PSL-675
可塑剤: 大八化学工業製ジイソノニルフタレート
炭酸カルシウム: 白石カルシウム製ホワイトンSB青
発泡剤: 永和化成工業製ビニホールAC#3C-K2
安定剤: アデカ製FL-103N
【0050】
表1、3の結果から明らかなように、実施例1~4は、いずれも外観、防汚性、熱安定性に優れていた。
【0051】
一方、表1、表2、表4から判るように、比較例1~6では、これらの性能のバランスが不十分であった。
【0052】
具体的には、比較例1は、オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体が過少なため、防汚性に劣っていた。
比較例2は、オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体が過剰なため、外観および熱安定性に劣っていた。
【0053】
比較例3は、オルガノポリシロキサン基含有共重合体がランダム共重合体のため、防汚性および熱安定性に劣っていた。
比較例4は、オルガノポリシロキサン基を含むセグメントとオルガノポリシロキサン基を含まないセグメントの比率が適していないため、防汚性に劣っていた。
【0054】
比較例5は、オルガノポリシロキサン基含有単量体が過剰なため、外観に劣っていた。
比較例6は、オルガノポリシロキサン基含有単量体が過少なため、防汚性に劣っていた。
【0055】
以下、本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物の好適な配合例について説明する。
ただし、配合例1~6において、ポリ塩化ビニル樹脂としてはカネカ製PSL-675を使用し、オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体としては製造例1を使用し、可塑剤としては大八化学工業製ジイソノニルフタレートを使用し、炭酸カルシウムとしては白石カルシウム製ホワイトンSB青を使用し、発泡剤としては永和化成工業製ビニホールAC#3C-K2を使用し、安定剤としてはアデカ製FL-103Nを使用した。
【0056】
<配合例1>
ポリ塩化ビニル樹脂: 100質量部
オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体: 2質量部
可塑剤: 50質量部
炭酸カルシウム: 100質量部
発泡剤: 3質量部
安定剤: 5質量部
ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]:
0.1質量部
【0057】
<配合例2>
ポリ塩化ビニル樹脂: 100質量部
オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体: 2質量部
可塑剤: 50質量部
炭酸カルシウム: 100質量部
発泡剤: 3質量部
ジブチル錫ジステアレート: 3質量部
【0058】
<配合例3>
ポリ塩化ビニル樹脂: 100質量部
オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体: 2質量部
エポキシ化大豆油: 50質量部
炭酸カルシウム: 100質量部
発泡剤: 3質量部
安定剤: 5質量部
【0059】
<配合例4>
ポリ塩化ビニル樹脂: 100質量部
オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体: 2質量部
可塑剤: 50質量部
炭酸カルシウム: 100質量部
発泡剤: 3質量部
ジンクステアレート: 1質量部
トリフェニルホスフィン: 1質量部
【0060】
<配合例5>
ポリ塩化ビニル樹脂: 100質量部
オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体: 2質量部
可塑剤: 50質量部
炭酸カルシウム: 100質量部
発泡剤: 3質量部
ジンクステアレート: 1質量部
ジペンタエリスリトールのアジピン酸エステル: 1質量部
【0061】
<配合例6>
ポリ塩化ビニル樹脂: 100質量部
オルガノポリシロキサン基含有ブロック共重合体: 2質量部
可塑剤: 50質量部
炭酸カルシウム: 100質量部
発泡剤: 3質量部
ジンクステアレート: 1質量部
ジベンゾイルメタン: 1質量部
【0062】
配合例1~6で得られたポリ塩化ビニル樹脂組成物は、いずれも外観、防汚性、熱安定性に優れていた。